説明

煙感知器

【課題】外観デザインの向上及び感知性能の向上を図ることが可能な煙感知器を提供する。
【解決手段】正面視円形状であり、かつ、正面中央部分を、径内方向側ほど背面側に近付くように凹入した凹入部15、及び、正面外周部分を、径外方向側ほど背面側に近付くように傾斜させた傾斜部16を有するハウジング1と、凹入部15から正面側に突出する状態で、ハウジング1に支持された煙センサ4と、正面視円形状であり、凹入部15に対して離間した状態で対向するようにハウジング1の正面側に支持されて、煙センサ4を正面側から覆い込むと共に、凹入部15と協働して煙センサ4に煙を誘導する煙流路7を構成する前カバー3と、を備え、前カバー3に、前カバー3の外周部の全周に亘って凹入部15と傾斜部16との境界bよりも径外方向に突出する鍔部33を備え、前カバー3を、外周側から煙センサ4側に向うに従って凹入部15と離間させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正面視円形状の煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、煙感知器について、検知性能の向上だけでなく、外観デザインの向上にも開発力が注がれている。例えば、特許文献1に記載の煙感知器(熱煙複合式感知器)は、正面視円形状、かつ、側面視における正面側(取付面と反対側)の形状が略円弧形状、即ち、全体として、球面の一部を切り取ったような形状に形成してある。このような外観デザインであると、正面視四角形状のものや、正面視円形状かつ側面視ダルマ形状(煙センサ部分が正面側へ突出している形状)のようなものと比較して、全体としてスマートな印象を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−266265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、煙にはある程度の流速があり、障害物に対してその形状に沿って流れる傾向がある。しかし、特許文献1に記載の煙感知器は、本体ケースの内部空間に、煙センサ(文献では、「ラビリンス体」、「防虫メッシュ」、及び、「光学素子部」)を収容し、本体ケースの外周回りに、周方向に沿って煙流入用の流入孔を開口してある。つまり、球面状に連続する面に流入口、周方向に流入口を設けた形状である。このため、特許文献1に記載のような煙感知器であると、煙が煙感知器の外形(球面形状)に沿って流れてしまい、煙流入口を通り過ぎ、煙が煙感知器内部に流入し難くなる虞がある。このような場合、煙の感知が遅れたり、煙の濃度を正確に感知できなかったりする可能性がある。
【0005】
上記実情を鑑み、本発明は、外観デザインを向上しつつも、感知性能を向上させる煙感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る煙感知器の第一特徴構成は、正面視円形状、かつ、側面視における正面側の形状が略円弧形状の煙感知器であって、正面視円形状であり、かつ、正面中央部分を、径内方向に向うに従って背面側に近付くように凹入して形成した凹入部、及び、前記凹入部と隣り合う正面外周部分を、径外方向に向うに従って背面側に近付くように傾斜させて形成した傾斜部を有するハウジングと、前記凹入部から正面側に突出する状態で、前記ハウジングに支持された煙センサと、正面視円形状であり、前記凹入部に対して離間した状態で対向するように前記ハウジングの正面側に支持されて、前記煙センサを正面側から覆い込むと共に、前記凹入部と協働して、前記煙センサに煙を誘導する煙流路を構成する前カバーと、を備え、前記前カバーに、前記前カバーの外周部の全周に亘って、前記凹入部と前記傾斜部との境界よりも径外方向に突出する鍔部を備えると共に、外周側から前記煙センサ側に向うに従って前記前カバーと前記凹入部とが離間し、前記煙流路が広がるように構成してある点にある。
【0007】
本特徴構成のように、煙感知器を、正面視円形状、かつ、側面視における正面側の形状が略円弧形状に構成することで、スマートな印象を与えられると共に、ハウジングに設けた凹入部に煙センサを配設することで、煙センサのハウジングからの突出量を少なく抑えられ、薄型の煙感知器とすることができる。
【0008】
また、本構成によると、ハウジングに傾斜部を備えると共に、前カバーに、前カバーの外周部の全周に亘って凹入部と傾斜部との境界よりも径外方向に突出する鍔部を備えている。したがって、例えば、取付面に沿って流れてきた煙は、傾斜部によってハウジングの形状に沿って取付面(天上面)側から正面側に誘導される。その後、煙は、鍔部にぶつかり、そのまま流れ去ることなく円滑に煙流路に流入する。さらに、本構成であれば、煙流路が、外周側(入り口側)から煙センサに近付くに従って広がっているので、煙は、何れかの方向から煙流路に一旦入りさえすれば、内部の広い空間で煙センサの外周回りに万遍なく拡散され、煙の流れ方向にあまり影響を受けることなく、適切かつ円滑に煙センサにまで到達する。これらの結果、確実に煙を感知することが可能となる。
【0009】
つまり、本構成であれば、側面視では鍔部の突出分だけ円弧形状から若干遠ざかる外観とはなるものの、略円弧形状であるので、デザインの向上が図られ、その他の構成により、煙感知性能を向上させられる。
【0010】
本発明に係る煙感知器の第二特徴構成は、前記前カバーの正面中央部分は、正面側へ膨出する形状であり、かつ、前記前カバーのうち最も正面側に膨出した部分は、前記傾斜部を径内方向に延長して得られる面よりも、前記凹入部の側に位置する点にある。
【0011】
本特徴構成であると、前カバーのうち最も正面側に膨出した部分が、傾斜部を径内方向に延長して得られる面よりも、凹入部の側に位置するので、前カバーの側面視における厚みが薄くなって、ハウジングに対する存在感が小さくなると共に、傾斜部と前カバーとの連続感が演出される。よって、鍔部の突出が目立たなくなると共に、煙感知器全体としても薄型のものとなって、外観デザインが向上する。
【0012】
本発明に係る煙感知器の第三特徴構成は、前記煙センサは、発光部と受光部とを備えた光電式のセンサであり、前記前カバーを、前記前カバーまたは前記ハウジングに備えられた支持部によって前記ハウジングの正面側に支持し、前記支持部を、正面視で、前記発光部の近傍または前記受光部の近傍に位置させてある点にある。
【0013】
本特徴構成によると、支持部が、そもそも煙の入り口がない発光部の近傍または受光部の近傍に位置するので、煙センサへの煙の流入が阻害されにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る煙感知器の斜視図である。
【図2】天井面に取り付けた状態の煙感知器の側面図である。
【図3】煙感知器の正面図である。
【図4】煙感知器の背面図である。
【図5】正面側から観た煙感知器の分解斜視図である。
【図6】背面側から観た煙感知器の分解斜視図である。
【図7】図3におけるVII−VII方向の断面図である。
【図8】導入凹部及び収納凹部付近の背面図である。
【図9】収納凹部の断面斜視図である。
【図10】図8におけるX−X方向の断面図である。
【図11】煙感知器の煙検知性能に関する実証データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
〔全体構成について〕
煙感知器は、煙センサ4(図5及び図6参照)、不図示のCOセンサ及び不図示のガスセンサを備えており、天井面Cに取り付けられて、煙の発生と一酸化炭素ガスの発生、及び、都市ガス等のガス漏れ、を検知可能な複合型の煙感知器である。また、煙センサ4は、正面視円形状であって、内部に発光部42と受光部43とを備えた光学式のセンサである。以下、天井面Cに煙感知器を取り付けた状態において、天井面Cの側となる側を「裏面」,「後」,「背面」等と称し、天井面Cと反対側となる側を「表面」,「前」,「正面」等と称する。天井面Cに取り付けられるものであるので、正面視で上下の区別は特にない。
【0017】
煙感知器は、図1乃至図3に示すごとく、正面視で円形状であり、側面視で正面側の外形状が略円弧形状である。煙感知器は、煙センサ4、COセンサ、及び、ガスセンサが内装された「ハウジング」としてのフロントケース1を備えている。フロントケース1の背面側はリアケース2によって形成されている。フロントケース1及びリアケース2は、樹脂製であって、射出成形によって形成してある。フロントケース1及びリアケース2は、図3及び図4に示すごとく、正面視円形状である。
【0018】
〔フロントケース及びリアケースについて〕
フロントケース1は、図5乃至図7に示すごとく、正面中央部分を背面側に凹入した凹入部15と、凹入部15と隣り合う正面外周部分である傾斜部16と、を備えている。凹入部15は、径内方向に向うに従って背面側に近付くように、背面側へ膨出する球面状に凹入してある。傾斜部16は、径外方向に向うに従って背面側に近付くように、球面状に傾斜させてある。即ち、傾斜部16は、正面側に膨出する球面から、背面側に膨出する球面(凹入部15)を差し引いた形状となっている。図5及び図7に示すごとく、傾斜部16の背面側の端部から背面側に向けて筒状に立上り部分を設けてある。この立上り部分の背面側の端部にリアケース2を嵌め込む。
【0019】
図6及び図7に示すごとく、フロントケース1の背面側(煙感知器内部側)には、背面側へ立ち上げられた連続壁であるスピーカ収容部11やセンサ収容部12等を備えている。スピーカ収容部11は、フロントケース1とリアケース2とを組付けたとき(以下、単に「組付け時」と称する)に、リアケース2の正面側(煙感知器内部側)に形成されたスピーカ収容部28(図5参照)と協働して不図示のスピーカを収容する空間を構成する。同様に、センサ収容部12は、フロントケース1とリアケース2とを組付けたときに、リアケース2の正面側(煙感知器内部側)に形成されたセンサ収容部29(図5参照)と協働してCOセンサ及びガスセンサを収容する空間を構成する。リアケース2も、樹脂製であって、射出成形によって形成してある。
【0020】
図5及び図7に示すごとく、リアケース2の正面側に、複数の筒状の基板取付ボス部26を備えている。予め煙センサ4を固定した基板5を、基板取付ボス部26の先端部に載置し、正面側からネジ等を締め込んで、基板5をリアケース2に固定する。基板取付ボス部26の位置及び基板5の正面視形状は、基板5を固定したときに煙センサ4が正面視でリアケース2の中心部分に位置するように、設定してある。
【0021】
図5乃至図7に示すごとく、凹入部15の中心部分(径内側部分)には、正面視円形状である煙センサ4の円形状に対応させて円形状の開口15aを設けてある。また、図6に示すごとく、フロントケース1の背面側には、複数の筒状のフロントボス部17を備えている。さらに、図5に示すごとく、リアケース2の正面側のうち組付け時にフロントボス部17に対応する位置に、複数の筒状のリアボス部27を備えている。
【0022】
組付け時には、基板5を取り付けた状態のリアケース2に対して、スピーカ収容部28にスピーカを収容し、センサ収容部29にCOセンサ及びガスセンサを収容する。そして、フロントケース1とリアケース2とを位置合わせすると、図7に示すごとく、フロントボス部17の先端面とリアボス部27の先端面とが同位置になるので、リアケース2の側からネジ等を締め込んで、フロントケース1とリアケース2とを固結する。
【0023】
このとき、煙センサ4が開口15aを貫通し、煙センサ4が正面側に露出される。詳しくは、図7に示すごとく、側面視において、煙センサ4の煙導入口41のうち背面側の端部は、開口部15aと略同位置となる。また、煙センサ4の正面側の面は、「凹入部15と傾斜部16との境界」である境界ラインbよりも、正面側に突出している。即ち、側面視において、少なくとも煙導入口41の全てが開口部15aよりも正面側に露出し、かつ、煙導入口41の背面側の一部が境界ラインbよりも背面側に引退している状態となっている。なお、境界ラインbは、フロントケース1において最も正面側に位置する環状の境界線を示すこととなる。
【0024】
〔トップカバーについて〕
図5乃至図7に示すごとく、リアケース2が組付けられたフロントケース1に対して、正面側から、「前カバー」としてのトップカバー3を取り付ける。トップカバー3は正面視円形状に形成してある。トップカバー3の背面側に十字形状に形成された当たり部(図6参照)が、煙センサ4の正面側の面に当接して、トップカバー3は、凹入部15に対して離間した状態で対向するように位置決めされる。
【0025】
トップカバー3の背面側には、図6に示すごとく、周方向に沿って均等に配置された「支持部」としての支持脚31を四箇所備えている。そして、フロントケース1のうち支持脚31の位置に対応する位置に係止孔18を四箇所形成してある。支持脚31を係止孔18に係止させることによって、トップカバー3をフロントケース1に固定する。トップカバー3は、このようにしてフロントケース1に固定され、煙センサ4を正面側から覆い込むと共に、凹入部15と協働して煙センサ4に煙を誘導する環状の煙流路7を構成する。煙流路7は360°全ての方向に開放されており、煙は、煙流路7の外周の何れの方向からも、煙流路7に流入可能である。
【0026】
トップカバー3は、図2,図3,図7に示すごとく、正面分を正面側へ球面状に膨出して形成した中央部32と、中央部32の外周部分を径外方向に延長して形成された鍔部33とを備えている。中央部32の膨出形状の曲率半径は、「傾斜部を径内方向に延長して得られる面」としての延長面f(球面形状)の曲率半径よりも大きく設定してあり、かつ、トップカバー3の正面側中心部であって、「前カバーのうち最も正面側に膨出した部分」に相当する最頂部32aは、延長面fよりも凹入部15の側に位置する。また、中央部32の裏面は、正面形状に対応して正面側へ膨出する形状に形成してあり、外周側から煙センサ4側に向うに従ってトップカバー3の裏面と凹入部15の表面とが離間し、煙流路7が広がる。
【0027】
このように、煙流路7が、外周側(入り口側)から煙センサ4に近付くに従って広がっているので、煙は、何れかの方向から煙流路7に一旦入りさえすれば、図7に示すごとく、内部の広い空間で煙センサ4の外周回りに万遍なく拡散され、煙の流れ方向にあまり影響を受けることなく、適切かつ円滑に煙導入口41にまで到達する。
【0028】
鍔部33は、図2,図3,図7に示すごとく、境界ラインbよりも径外方向に幅wだけ突出させてある。鍔部33の裏面は、径外方向に平行、または、傾斜部16に沿う側へ少し傾斜させてある。また、鍔部33と境界ラインbとは、距離hだけ離間している。天井面Cから傾斜部16に沿って流れてきた煙は、鍔部33にぶつかって、そのまま流れ去ることがない。つまり、煙は鍔部33に受け止められ、確実に煙流路7の内部に流入する。
【0029】
鍔部33の突出量によって外観形状に対する印象に多少の差は出るものの、中央部32の曲率半径を延長面fの曲率半径よりも大きく設定し、かつ、最頂部32aを延長面fよりも凹入部15の側に位置させることで、少なくとも、トップカバー3の側面視における厚みが薄くなると共に、傾斜部16とトップカバー3との連続感が演出される。よって、トップカバー3の装置全体に対する存在感が小さくなり、かつ、煙感知器全体としても薄型のものとなって、外観デザインが向上する。
【0030】
ところで、支持脚31は、トップカバー3のうち凹入部15の範囲内に形成してあり、トップカバー3をフロントケース1に取り付けた状態では、煙流路7の奥まった箇所に位置することとなって、外観視でほとんど目立たず、外観デザインに影響を与えない。さらに、図3に示すごとく、四箇所の支持脚31のうち少なくとも二箇所の位置は、正面視で、煙センサ4の発光部42の近傍と、受光部43の近傍と、になるように設定してある。つまり、支持脚31は、そもそも煙導入口41が設けられない発光部42の近傍または受光部43の近傍に位置するので、煙センサ4への煙の流入が阻害されにくい。特に図示はしないが、残りの二箇所の支持脚31も、煙導入口41と煙導入口41との間の外壁面の近傍となるように配置されている。
【0031】
図1乃至図3に示すごとく、フロントケース1の正面側には、ライトガイド1Aや、音響口13、ガス流入口14、スイッチ1B、が備えられている。ライトガイド1Aは、傾斜部16に設けられた環状の発光部材であり、点灯、点滅等によって、視覚的に警報を発する。音響口13は、スピーカ収容部11に対応する位置において、傾斜部16からフロントケース1の外周側部に亘ってスリット状に開口され、スピーカが発した警報音を外部に開放する。ガス流入口14は、センサ収容部12に対応する位置において、傾斜部16からフロントケース1の外周面に亘ってスリット状に開口され、COガス等の流入を許容する。また、傾斜部16とフロントケース1の外周側部とに亘る位置に、押し操作可能なスイッチ1Bを備えてある。スイッチ1Bを押すと、警報状態が解除され、スピーカ音やライドガイドの発光が止まる。
【0032】
〔天井面への取り付けについて〕
煙感知器の天井面Cへの取り付け方法を説明する。天井面Cには、図2に示すごとく、予め取付ベースSを固定してある。リアケース2の背面からは、フック形状の端子金具tを突出させてある。そして、端子金具tを取付ベースSのうちの不図示の差し込み孔に差し込み、回転させると、端子金具tがその差し込み孔に係止し、煙感知器が取付ベースSに固定される。端子金具tによって、取付ベースSから、基板5に取り付けられた各部品に対して電力が供給される。
【0033】
〔煙感知性能の実証について〕
煙感知器の煙感知性能の実証実験を行ったので、図11に基づいて以下に説明する。本発明の構成を採用したことにより煙性能が向上したことを確認すべく、本発明の構成を採用していない煙感知器についても対比実験を行った。この対比される煙感知器は、鍔部33を有していない以外は、本発明に係る煙感知器と同じ構成を有する。詳細には、対比される煙感知器のトップカバー3には、図7に示す延長面fよりも径方向外側の部分(鍔部33及び中央部32の外周の一部)が備えられていない。
【0034】
本実証実験は、一定濃度の煙を一方向から他方向に直線的に流し続けている容器に、正面側を下向きにした状態で煙感知器を投入して、煙センサ4から出力を得るものであって、以下の手順で行う。
[手順1]
実証開始後15秒後に、煙感知器を容器に投入し、センサ出力を得る。なお、センサ出力は煙濃度と対応している。
[手順2]
60秒経過したら、煙感知器を容器から取り出し、装置内に入った煙を完全に排出させる。
[手順3]
30秒間経過したら、煙感知器の煙の流れる方向に対する角度を45°回転させて、再び煙感知器を容器に投入し、センサ出力を得る。
【0035】
上述の[手順1]から[手順3]9回繰り返して、全周方向(45°毎に360°)からの煙に対する煙感知性能を確認した。図11(a)が鍔部33を備えていない煙感知器の実証データであり、図11(b)が本発明に係る煙感知器の実証データである。
【0036】
図11(a)から明らかなように、本発明の構成を有さない煙感知器では、うまく煙が流入せず、煙が感知できていない。本発明の構成を有さない煙感知器は、ほとんど煙を感知できなかったので、0°から180°までで実験を終了した。これに対して、図11(b)に示すごとく、本発明の構成を有する煙感知器であると、360°何れの方向からの煙であっても、即座かつ正確に感知していることが分かる。
【0037】
また、特に実証データは示さないが、本発明の構成を備えた煙感知器において、鍔部33の幅w(図7参照)、及び、境界ラインbと鍔部33の裏面との距離h(図7参照)を、各種変更して本実証実験を行った。この実証により、幅wは2mm以上、距離hは3mm以上であると、好適な煙検知が可能であることが分かった。なお、図11(a)のデータは、幅wが2mm、距離hが3.8mmのものを使用している。幅wが2mm程度であれば、鍔部33の突出が目立たず、煙感知器の側面視円弧形状の外観を損ねることもない。
【0038】
〔リアケースの裏面構造について〕
煙感知器は、機器単体でも使用可能であるが、接続線Lによって外部機器と接続して使用することも可能である。煙感知器には、基板5に接続された出力コネクタ6を配備してある(図9,図10参照)。外部機器と接続する場合は、接続線Lの一方の端部を外部機器に接続し、接続線Lの他方の端部に取り付けた接続コネクタLcを出力コネクタ6に差し込む。これにより、接続線Lを介して、煙センサ4やCOセンサ等の出力を外部機器に出力することができ、他の煙感知器と連係して外部機器による集中管理や、外部機器へのセンサ出力データの書き出し等が可能である。
【0039】
しかしながら、このような天井付けの煙感知器においては、天井面Cにおいて発生した結露水が接続線Lを伝って出力コネクタ6にまで至り、機器内部の故障が誘発される虞がある。そこで、以下の構成を採用し、結露水が出力コネクタ6にまで至ることを防止している。
【0040】
図2,図8,図9,図10に示すごとく、リアケース2の背面部21のうち、出力コネクタ6に対向する部分を内部側に凹入して、有底の穴である第一凹部22を形成してある。第一凹部22の底部22aの一部を開口して開口部22bを設けてある。開口部22bによって、出力コネクタ6の差し込み口は底部22aの側に向けて露出されている。出力コネクタ6を使用しないときは、図4,図6に示すごとく、第一凹部22をコネクタカバー2Aによって閉塞する。
【0041】
また、背面部21のうち、周方向において第一凹部22に隣接する部分を、内部側に凹入して第二凹部23を形成してある。第二凹部23は、周方向に長い有底の長穴である。さらに、背面部21における第一凹部22と第二凹部23との間の部分を内部側に凹入して、第一凹部22と第二凹部23とを連通可能な連通凹部24を形成してある。
【0042】
図9及び図10に示すごとく、第一凹部22の底部22aと第二凹部23の底部23aとは平面状に形成してある。連通凹部24の底部24aは、第一凹部22の側から第二凹部23の側へ向うに従って正面側に傾斜する傾斜形状に形成してある。つまり、連通凹部24の凹入深さは、少なくとも第一凹部22の凹入深さD1及び第二凹部23の凹入深さD2よりも浅い。
【0043】
そして、連通凹部24のうち第一凹部22の側の端部において、連通凹部24の幅に亘ると共に、底部24aから背面部21の表面にまで至る壁であるノックアウト25をリアケース2に一体的に備えている。初期状態では、ノックアウト25が存在するので、第一凹部22と第二凹部23とは連通していないが、ノックアウト25をニッパー等の治具でリアケース2から分断すると、第一凹部22と第二凹部23とは連通凹部24を介して連通する。また、連通凹部24の底部24aの中間箇所に、連通凹部24の幅に亘って背面部21の側に突出する突起部24bを備えている。
【0044】
煙感知器を外部機器と接続するときは、ノックアウト25を分断する。そして、図10に示すごとく、接続コネクタLcを出力コネクタ6に差し込む。そして、接続線Lの余り部分を、連通凹部24を通して第二凹部23に引き込み、第二凹部23の内部にその接続線Lの余り部分を束ねて収納する。
【0045】
このような構成とすることで、天井付近で発生した結露水が接続線Lを伝って垂れてきた場合は、結露水は、第一凹部22には到達せず、第二凹部23に溜まる。第二凹部23の底部23aには、その外周に沿って溝23bが掘り込んである。結露水は、溝23bに接触すると、毛細管現象によって底部23aの全体に亘って拡散される。したがって、結露水の外気に対する接触面積が広くなって結露水の蒸発が促進され、結露水は短い時間で効率よく散逸する。
【0046】
仮に、結露水の量が多く、第二凹部23に結露水が溜まってしまったとしても、上述したように、連通凹部24の凹入深さが少なくとも第二凹部23の凹入深さD2よりも浅いので、結露水は連通凹部24によって堰き止められ、第一凹部22には侵入しない。そもそも、第二凹部23は接続線Lの余り部分を収容できる程度に広く形成してあるので、結露水が連通凹部24を乗り越えて第一凹部22に侵入することはない。
【0047】
さらに、底部24aに突起部24bを備えているので、図10に示すごとく、接続線Lは突起部24bと接触しやすい。この結果、仮に、連通凹部24に収容された接続線Lを伝って第二凹部23の側から第一凹部22の側へ結露水が移行しようとしても、その結露水は突起部24bに接触して、底部24aのうち突起部24bよりも第二凹部23の側へ流れ落ちる。そして、底部24aが傾斜形状に形成されているので、この結露水は第二凹部23に流れ、連通凹部24と第二凹部23との境目の溝23b部に接触して拡散される。
【0048】
このように、結露水を煙感知器の外部に排出することなく、迅速に散逸させられる。
【0049】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態においては、傾斜面は球面形状に形成したが、これに限られず、傾斜面は、直線状の傾斜面であっても良い。
【0050】
(2)上述の実施形態においては、外部から電力を供給する例を示したが、これに限られず、電池式の煙感知器であっても良い。
【0051】
(3)上述の実施形態においては、各部の形状を細かく定義したが、多少は形状が異なっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、天井設置用の複合型の煙感知器に限らず、壁設置用の煙感知器や、煙感知のみを行う煙感知器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 フロントケース(ハウジング)
3 トップカバー(前カバー)
4 煙センサ
7 煙流路
15 凹入部
16 傾斜部
31 支持脚(支持部)
32a 最頂部(前カバーのうち最も正面側に膨出した部分)
33 鍔部
42 発光部
43 受光部
b 境界ライン(凹入部と傾斜部との境界)
f 延長面(傾斜部を径内方向に延長して得られる面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視円形状、かつ、側面視における正面側の形状が略円弧形状の煙感知器であって、
正面視円形状であり、かつ、正面中央部分を、径内方向に向うに従って背面側に近付くように凹入して形成した凹入部、及び、前記凹入部と隣り合う正面外周部分を、径外方向に向うに従って背面側に近付くように傾斜させて形成した傾斜部を有するハウジングと、
前記凹入部から正面側に突出する状態で、前記ハウジングに支持された煙センサと、
正面視円形状であり、前記凹入部に対して離間した状態で対向するように前記ハウジングの正面側に支持されて、前記煙センサを正面側から覆い込むと共に、前記凹入部と協働して、前記煙センサに煙を誘導する煙流路を構成する前カバーと、を備え、
前記前カバーに、前記前カバーの外周部の全周に亘って、前記凹入部と前記傾斜部との境界よりも径外方向に突出する鍔部を備えると共に、
外周側から前記煙センサ側に向うに従って前記前カバーと前記凹入部とが離間し、前記煙流路が広がるように構成してある煙感知器。
【請求項2】
前記前カバーの正面中央部分は、正面側へ膨出する形状であり、かつ、前記前カバーのうち最も正面側に膨出した部分は、前記傾斜部を径内方向に延長して得られる面よりも、前記凹入部の側に位置する請求項1に記載の煙感知器。
【請求項3】
前記煙センサは、発光部と受光部とを備えた光電式のセンサであり、
前記前カバーを、前記前カバーまたは前記ハウジングに備えられた支持部によって前記ハウジングの正面側に支持し、
前記支持部を、正面視で、前記発光部の近傍または前記受光部の近傍に位置させてある請求項1または2に記載の煙感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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