説明

煙道ガスの再循環を伴うガスタービン発電プラントでの気体成分の制御

【課題】煙道ガスの再循環を伴うガスタービン発電プラントを稼動する方法を提供する。
【解決手段】当該方法では、煙道ガス流中及び/又は再循環した煙道ガスの混合後の前記ガスタービン6の吸引流中の少なくとも1つの構成要素の目標濃度が、前記ガスタービンの運転状態に応じて決定される。さらに、煙道ガス流中及び/又は吸引流中の前記少なくとも1つの構成要素の実際の濃度が測定され、当該再循環流を制御するための制御要素が、前記目標濃度と実際の濃度との偏差に応じて制御される。さらに、煙道ガスの再循環を伴うガスタービン発電プラントに関する。当該方法を実施するため、制御装置が、当該少なくとも1つの構成要素の実際の濃度を測定する測定装置36,37,38を有する。この制御装置内では、煙道ガス流中又は前記ガスタービン6の吸引流の少なくとも1つの構成要素の目標濃度が算定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙道ガスの再循環を伴うガスタービンのガス成分を制御するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
煙道ガスの再循環は、基本的にはガスタービンの様々な目的に対して使用され得る技術である。すなわち、例えば、放出の制御、二酸化炭素の回収のための煙道ガス容積の低減等に対して使用され得る。1つのガスタービンの煙道ガスの再循環の場合、当該煙道ガスの大部分が、煙道ガス流の全体から分岐され、一般には、冷却及び浄化後に当該ガスタービンの流入質量流又は当該タービンの圧縮機に再び供給される。この場合、戻された煙道ガス流が、新鮮空気と混合され、引き続き、当該混合物が、圧縮機に供給される。
【0003】
発電プラントの出力損失及び効率損失を二酸化炭素の回収によって低減するため、煙道ガス中の二酸化炭素の分圧が、煙道ガスの再循環によって増大され得る。さらに、ガスタービンの吸引ガス中の酸素濃度を低減し、これによって窒素酸化物(NO)の放出を低減する目的で、煙道ガスの再循環が提唱された。
【0004】
煙道ガスの再循環のため、例えば米国特許第7536252号明細書は、ターボ機械の煙道ガスの再循環流を制御する方法を記す。当該煙道ガスの再循環流が、煙道ガスの再循環システムを通じてターボ機械の流入口に供給される。この方法の場合、煙道ガスの再循環の目標割合が決定される。当該目標割合は、ターボ機械の流入口の流れでの煙道ガス流の割合を意味し、実際の値が、目標の値に設定される。
【0005】
再循環率と再循環した煙道ガスを冷却する温度とが、負荷に応じて制御されることによって、煙道ガスの再循環を伴う発電プラント及びこのような発電プラントを稼動する方法が、欧州特許第2248999号明細書から公知である。この明細書及びその他の公知の刊行物は、再循環率を利用する、すなわちターボ機械の吸引質量流に対する再循環した煙道ガスの比又はターボ機械の吸引質量流での再循環した煙道ガスの割合を利用する。実際には、言及したこの方法では、当該割合又は当該比を高い信頼性で決定するという課題がある。吸引質量流と再循環質量流との双方が、単に多大な労力を伴い且つ不正確に測定可能であるにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7536252号明細書
【特許文献2】欧州特許第2248999号明細書
【特許文献3】欧州特許第0718470号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、煙道ガスの再循環を伴うガスタービン発電プラントの稼動及びこの煙道ガスの再循環の制御を高い信頼性で実施するための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この課題は、独立請求項に記載の構成によって解決される。本発明の本質は、ガスタービン工程のガス流の少なくとも1つの構成要素の含有量又は濃度(成分量濃度又は質量濃度)が煙道ガスの再循環用のサーボコンポーネントを制御するために直接利用される。
【0009】
ガスタービン、廃熱回収ボイラ及び煙道ガスをガスタービンの吸引流中に再循環させる第1煙道ガス流と周囲に対して放出する第2煙道ガス流とに分岐させる煙道ガス分流器並びに再循環流を制御する制御要素を有し、煙道ガスの再循環を伴うガスタービン発電プラントを稼動するこの方法では、煙道ガス流中及び/又は再循環した煙道ガスの混合後のガスタービンの吸引流中の少なくとも1つの構成要素の目標濃度が、ガスタービンの運転状態に応じて決定される。さらに、煙道ガス流中及び/又は吸引流中の当該少なくとも1つの構成要素の実際の濃度が測定され、再循環流を制御するための制御要素が、目標濃度と実際の濃度との偏差に応じて制御される。
【0010】
当該方法の構成は、吸引流中の酸素濃度が、サーボコンポーネントによって制御されることを特徴とする。この場合、再循環される第1煙道ガス流中の濃度、周囲に放出される第2煙道ガス流中の濃度又は再循環流の分岐前の煙道ガス流の濃度が制御され得る。
【0011】
当該方法の別の構成は、複数の煙道ガス流のうちの1つの煙道ガス流中の二酸化炭素濃度が制御されることを特徴とする。さらに、二酸化炭素濃度及び酸素濃度が制御され得る。
【0012】
当該方法の別の構成によれば、再循環した煙道ガスの混合後のガスタービンの吸引流中の酸素濃度が制御される。
【0013】
当該方法の別の構成は、再循環した煙道ガスの混合後のガスタービンの吸引流中の二酸化炭素濃度が制御される。さらに、再循環した煙道ガスの混合後のガスタービンの吸引流中の二酸化炭素濃度及び酸素濃度が制御され得る。
【0014】
酸素濃度及び二酸化炭素濃度の制御が提唱されている当該場合では、当該両制御パラメータの重み付けが有益である。何故なら、2つのパラメータが、1つの補正変数だけによって影響されるからである。例えば、酸素濃度及び二酸化炭素濃度が同じに重み付けされ得る。別の例では、完全な燃焼を保証するため、酸素濃度が、二酸化炭素濃度より例えば2倍又は3倍強く重み付けされ得る。
【0015】
原理的には、酸素濃度と二酸化炭素濃度とが互いに結合されている。例えば、燃料成分、特に燃料の水素含有量が変化するか、又は、酸素が、燃焼ガスに混合される場合は、両パラメータの制御が有益である。
【0016】
煙道ガス流中の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度と循環した煙道ガスの混合後のガスタービンの吸引流中の当該濃度との制御の組み合わせが提唱されている。この方法に対しては、当該両制御パラメータの重み付けが有益である。何故なら、2つ又はそれより多いパラメータが、1つの補正変数だけによって影響されるからである。
【0017】
別の構成では、当該方法は、目標濃度がガスタービン発電プラントの出力に応じて決定されることを特徴とする。当該出力の代わりに、(例えば、ISO2314にしたがう)タービンの流入口の温度、高温ガスの温度、タービンの流出口の温度、圧縮機の流出口の圧力又は圧縮機の調整可能な案内羽根の位置のような、別の重要な運転パラメータの依存性又はこれらの運転パラメータの組み合わせの依存性も利用され得る。さらに、目標濃度が、周囲の条件に応じて、特に周囲の温度又は圧縮機の流入口の温度に応じて決定され得る。この場合、当該目標濃度は、例えば言及したこれらのパラメータのうちの1つのパラメータの関数又は言及したこれらのパラメータの組み合わせの関数である。
【0018】
最大の煙道ガスの再循環は、安定で完全な全焼のために必要な酸素濃度によって制限されている。この関係では、安定で完全な燃焼は、一酸化炭素の放出及びUHC(未燃炭化水素)の放出が、安全な限界値の下にあること及び燃焼室の振動が安全な範囲内にあることを意味する。当該安全な一酸化炭素の放出及び未燃炭化水素の放出は、一般にppmの範囲内(多くの場合は一桁のppmの範囲内)にある。酸素の欠乏時に急勾配で増大しうる当該振動は、燃焼室の圧力の10%未満でなければならない。一般に、当該振動は、燃焼室の圧力の1〜2%未満である。一酸化炭素の放出若しくは未燃炭化水素の放出又は限界値を超えた燃焼室の振動の場合、第1煙道ガス流が、制御要素によって再制御される。例えば、一酸化炭素の放出、未燃炭化水素の放出又は燃焼室の振動の限界値が超えられた直後に、第1煙道ガス流が低減される。
【0019】
当該方法の構成では、二酸化炭素又は酸素の目標濃度が、一酸化炭素の放出、未燃炭化水素の放出若しくは燃焼室の振動又は2つ又は全ての3つのパラメータの組み合わせに応じて補正される。
【0020】
別の好適な方法は、循環した煙道ガスが煙道ガス再冷却器内で再冷却温度に冷却されることを特徴とする。この場合、この再冷却温度は、出力の関数として決定される。当該出力の代わりに、タービンの流入口の温度、高温ガスの温度、タービンの流出口の温度、圧縮機の流出口の圧力又は圧縮機の調整可能な案内羽根の位置のような、別の重要な運転パラメータの依存性又はこれらの運転パラメータの組み合わせの依存性も利用され得る。さらに、当該再冷却温度は、周囲の条件に応じて、特に周囲の温度に応じて決定され得る。この場合、当該再冷却温度は、例えば言及したこれらのパラメータのうちの1つのパラメータの関数又は言及したこれらのパラメータの組み合わせの関数である。
【0021】
ガスタービンの吸引流の成分の安定で迅速な制御を保証するため、周囲とガスタービンの吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の吸引圧力損失及び煙道ガス分流器と周囲との間の煙道ガス圧力損失が測定され、当該測定から圧力差を算定することがさらに提唱される。当該圧力差は、煙道ガス分流器と混合地点との間で煙道ガスを再循環させるための追加の煙道ガス送風機又はブースターなしに算定可能である。この代わりに、煙道ガス分流器とガスタービンの吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の圧力差が直接測定されてもよい。制御要素の制御が、当該圧力差に応じて補正される。
【0022】
当該制御補正は、ガスタービンの遷移動作時、特に迅速な遷移時に有益である。何故なら、吸引質量流が、例えば圧縮機の調整可能な案内羽根を閉じることによって低減されるからである。これによって、当該吸引圧力損失及び吸引フィルタによる圧力損失がより小さくなり、ガスタービンの流入口の前方の低圧がより小さくなる。当該吸引質量流の減少と同時に、例えばガスタービンの後方に連結された二酸化炭素回収システムによる圧力損失のような煙道ガス圧力損失が減少する。当該圧力損失は、部分負荷と完全負荷との間で2〜3の係数だけ変化する。完全負荷の場合、これらの両圧力損失の和は、一般には煙道ガスの再循環に必要な圧力差の30〜50%の範囲内にある。その結果、制御要素の設定を変更しない場合は、圧力差の変化が、再循環流を著しく変動させる結果、煙道ガス流の成分でもある吸引流の成分を著しく変動させる。さらに、追加の煙道ガス送風機を全く備えず且つ圧力差だけによって稼動する再循環システムが考えられる。これに応じて、この再循環システムは、圧力差の変動に対してさらに敏感である。
【0023】
当該方法の1つの実施の形態では、制御可能な煙道ガス送風機が、再循環流を制御するための制御要素として使用される。当該煙道ガス送風機の出力が、例えば煙道ガス分流器とガスタービンの吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の圧力差に応じて制御され得る。一般に、煙道ガス送風機の出力は、煙道ガス分流器とガスタービンの吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の圧力差に反比例するように制御される。
【0024】
当該方法の別の実施の形態では、フラップ及び/弁が、再循環流を制御する制御要素として使用される。一般に、煙道ガスの再循環のための流れ方向に沿ったフラップ又は弁の開口量は、煙道ガス分流器とガスタービンの吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の圧力差に反比例するように制御される。この場合、煙道ガス分流器自体が、制御要素として、例えばフラップとして構成されてもよい。
【0025】
さらに、組み合わせた制御方法が提唱される。この制御方法の場合、煙道ガス分流器とガスタービンの吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の圧力差に応じて、制御可能な煙道ガス送風機とフラップ及び/又は弁とが、再循環流を制御する制御要素として使用される。
【0026】
一般に、煙道ガス流の少なくとも1つの構成要素の濃度を測定する測定地点とガスタービンの流入口との間に設置されている再循環用の配管、廃熱回収ボイラ、再冷却器又は熱交換器の大きい容積及び圧力損失を低減するための、これらの容積内の緩やかな流速に起因して、1つの構成要素の所定の濃度を有する煙道ガスが1つの測定地点を流れ過ぎる時点とこの煙道ガスがガスタービンの流入口に到達する時点との間に、特定の期間が経過する。測定地点の位置、発電プラントの配置及び稼動時点に応じて、当該期間は、数秒〜数分に達する。安定な制御を保証するためには、当該期間を制御中に考慮することが有益である。このため、当該方法の構成は、煙道ガスがガス成分の測定地点からガスタービンの流入口に到達するのに必要な時間に比例する時間遅延を伴って稼動することを特徴とする。
【0027】
当該時間遅延に対するガスタービンの運転状態の影響を考慮するため、当該方法の別の構成では、当該時間遅延が、ガスタービンの出力及び/又は圧縮機の調整可能な案内羽根の位置に比例する。
【0028】
1つの構成では、ガスタービン用の酸素が少ない吸引ガスを提供して、NOの放出を低減するために、煙道ガスの再循環が実施される。別の構成では、水素が多い燃焼ガスを安定に燃焼できるようにするため、ガスタービン用の酸素が少ない吸引ガスが、煙道ガスの再循環によって提供される。さらに、別の方法は、第2煙道ガス流が周囲に対して放出する前に二酸化炭素回収システムによって管理され、二酸化炭素がこの第2煙道ガス流から回収されることを特徴とする。制御された高い二酸化炭素濃度を有する煙道ガス流が、当該方法によって二酸化炭素回収システムに供給される。このため、発電プラント全体の出力損失及び効率損失が、当該二酸化炭素の回収によって最小限に抑えられる。
【0029】
当該方法に加えて、煙道ガスの再循環を伴うこの方法を実施するためのガスタービン発電プラントが、本発明の対象である。このような発電プラントは、制御装置、廃熱回収ボイラ及び煙道ガスをガスタービンの吸引流中に再循環させる第1煙道ガス流と周囲に対して放出する第2煙道ガス流とに分岐させる煙道ガス分流器並びに第1煙道ガス流を制御する制御要素を有するガスタービンを備える。当該発電プラントは、煙道ガス流中及び/又は再循環した煙道ガスの混合後のガスタービンの吸引流中の少なくとも1つの構成要素の目標濃度が制御装置内で運転状態に応じて決定され、且つ、当該煙道ガス流中及び/又は当該第1煙道ガス流の混合後の吸引流中の当該少なくとも1つの構成要素の実際の濃度を測定する測定装置を有することを特徴とする。当該目標濃度の、ガスタービンの運転状態への当該依存性は、例えば関数又はテーブルによって与えられ得る。
【0030】
ガスタービン発電プラントの1つの実施の形態によれば、発電プラントが、煙道ガス分流器とガスタービンの吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間に圧力差測定部を有する。この代わりに、ガスタービン発電プラントは、周囲とガスタービンの吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の圧力損失を測定する吸引圧力損失測定部及び煙道ガス分流器と周囲との間の圧力損失を測定する煙道ガス圧力損失測定部を有する。煙道ガスの再循環に対する圧力差が、当該両圧力損失の和から算定される。
【0031】
説明した全ての利点は、本発明の範囲から離れることなしに挙げられているそれぞれの組み合わせで適用可能であるだけではなくて、その他の組み合わせ又は単独の構成でも適用可能である。例えば、煙道ガス送風機を使用する代わりに、ブースターが設けられ得る。制御要素の制御は、全体として簡単に説明してある。当該制御は、調整や制御の代表例である。二点制御や比例制御装置、積分制御装置又はIP制御装置による制御のような、様々な制御手段が、当業者に公知である。
【0032】
その他の実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】煙道ガスの再循環を伴うガスタービン発電プラントの概略的に示す。
【図2】再循環に対する流入圧力損失、煙道ガス圧力損失及び圧力差並びにタービンの圧縮機の流入口での二酸化炭素濃度の、無負荷後の時間に対する変化を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、ガスタービン発電プラントの主な要素を概略的に示す。ガスタービン6が、圧縮機1(コンプレッサ)を有する。この圧縮機1内で圧縮された燃焼空気が、燃焼室4に供給され、この燃焼室4で燃料5と一緒に燃焼される。引き続き、高温の燃焼ガスが、タービン7内で膨張する。次いで、タービン7内で発生した有効エネルギーが、例えば同じ軸上に配置された第1発電機25によって電気エネルギーに変換される。
【0035】
廃熱回収ボイラ9(Heat recovery steam generator, HRSG)内に依然として含まれているエネルギーを最適に利用するため、タービン7から流出する高温の煙道ガス8が、蒸気タービン13用の生蒸気30又はその他の設備用の生蒸気30を生成するために使用される。次いで、蒸気タービン13内で発生した有効エネルギーが、例えば同じ軸上に配置された第2発電機26によって電気エネルギーに変換される。この例では、当該水蒸気循環経路39が、凝縮器14及び給水管16によって簡略化して且つ専ら概略的に示されている。様々な圧力段、給水ポンプ等は、本発明の対象ではないので、これらは図示していない。
【0036】
当該設備の場合、廃熱回収ボイラ9からの煙道ガスの一部が、この廃熱回収ボイラ9の後方の制御され得る煙道ガス分流器29内で第1煙道ガス部分流21と第2煙道ガス部分流20とに分岐される。第1煙道ガス部分流21が、ガスタービン6の吸引管内に戻され、この吸引管で周囲空気2と混合される。戻されなかった第2煙道ガス部分流20が、通常通りに煙道ガス再冷却器23内でさらに冷却され、二酸化炭素回収システム18に供給される。二酸化炭素が少ない煙道ガス22が、二酸化炭素回収システム18から煙突32を通じて周囲に放出される。二酸化炭素回収システム18と煙道ガス管との圧力損失に負けないため、煙道ガス送風機10が設けられてもよい。二酸化炭素回収システム18内に回収されている二酸化炭素31が、通常通りに圧縮機内で圧縮され、貯蔵又はさらなる処理のために導出される。蒸気タービン13から分岐される蒸気、一般には中圧蒸気又は低圧蒸気が、蒸気抽出部15を通じて二酸化炭素回収システム18に供給される。当該蒸気は、二酸化炭素回収システム18内のエネルギー放出後に水蒸気回収経路に再び戻される。この示された例では、当該蒸気が、凝縮されて凝縮液返送管17を通じて給水管に供給される。
【0037】
第2煙道ガス部分流が、直接に煙道ガスバイパス24を通じて煙突32に供給されてもよい。
【0038】
戻された第1煙道ガス部分流21が、凝縮器を装備可能な煙道ガス再冷却器27内で周囲温度に冷却される。第1煙道ガス部分流21用のブースター又は煙道ガス送風機11が、当該煙道ガス再冷却器27の下流に配置され得る。当該戻された第1煙道ガス部分流21が、周囲空気2と混合された後に、当該混合物が、吸引流として圧縮機の流入口3を通じてガスタービン6に供給される。この場合、再循環した当該第1煙道ガス部分流が混合される前に、新鮮な周囲空気2が、大きい流入口横断面を有する空気フィルタ28を通じて最初に供給される。
【0039】
ガスタービン6の吸引流が、圧縮機の調整可能な案内羽根33を通じて制御される。主に、吸引流及びその結果生じる煙道ガス流が、周囲とタービン6の吸引流中に再循環した煙道ガスとの間の吸引圧力損失Δpin及び煙道ガス分流器29と周囲との間の煙道ガス圧力損失Δpoutを決定する。これらの2つの位置間の圧力差が、再循環した煙道ガスの量に対する主な影響を有する。より正確に、より迅速に制御するため、周囲と吸引流中に再循環した煙道ガスとの間の吸引圧力損失Δpinが、吸引圧力測定部35によって測定され、煙道ガス分流器29と周囲との間の煙道ガス圧力損失Δpoutが、煙道ガス圧力測定部34によって測定される。当該測定される圧力差が、制御装置に伝達される(制御装置及び測定配線は図示せず)。当該圧力差Δpresの変化を考慮するため、再循環した第1煙道ガス部分流21に対する圧力差Δpresの影響が、この制御装置内で適合され、煙道ガス送風機11の出力が適合され、及び/又は、煙道ガス分流器29の位置が適合される。当該制御装置と煙道ガス送風機11とは、煙道ガスの再循環用のこの煙道ガス送風機のための信号交換を通じて接続されている。当該制御装置と煙道ガス分流器29とは、この煙道ガス分流器のための信号交換を通じて接続されている。
【0040】
圧力測定部34,35の代わりに、当該圧力差Δpresは直接測定されてもよく、又は、当該圧力差Δpresは、圧縮機の調整可能な案内羽根33の位置の関数として近似されてもよい。
【0041】
ガスタービン6の流入口の流れ中の酸素の濃度を制御できるようにするため、当該濃度が、流入口の流れの酸素測定部36によって測定される。さらに、この示された例では、煙道ガス流の酸素測定部37が設けられている。煙道ガス経路内と廃熱回収ボイラ9内との煙道ガス流の良好な混合に起因して、この廃熱回収ボイラの後方の煙道ガス流の酸素測定38が、1つ又は少数の測定ゾンデだけによって正確に実施可能である。しかしながら、大きい容積に起因して、ガスタービンの煙道ガス成分が、時間遅延を伴って初めて測定される。当該時間遅延を伴う測定は、ガスタービン6の遷移動作時に制御誤差を引き起こしうる。それ故に、1つの実施の形態では、廃熱回収ボイラの後方の煙道ガス流の酸素測定部38が、静的な動作のために利用され、遷移動作時には、タービン7からの流出口の直後の煙道ガス流の酸素測定部37又は流入口の流れの酸素測定部36が利用される。
【0042】
代わりに又は組み合わせて、流入口の流れの二酸化炭素測定部36又は煙道ガス流の二酸化炭素測定部37及び/又は廃熱回収ボイラの後方の煙道ガス流の二酸化炭素測定部38が設けられてもよい。
【0043】
この示された例では、制御装置が、ガスタービンのための信号交換を通じてこのガスタービンを制御する。さらに、この示された例では、水蒸気循環経路が、この水蒸気循環経路のための信号交換を通じて制御され、二酸化炭素回収システムが、この二酸化炭素回収システムのための信号交換を通じて制御される。
【0044】
代わりに、発電プラントの個々の主な要素、すなわちガスタービン、蒸気タービン及び二酸化炭素回収システムが、固有の制御装置を有する。これらの制御装置は、互いに通信されるか又は上位に配置された1つの制御装置によって制御される。当該上位に配置された制御装置は、上述した制御装置である。この場合、当該要素のこれらの制御装置は図示されていない。
【0045】
この例は、簡単な燃焼室4を有するガスタービン6を示す。例えば欧州特許第0718470号明細書から公知であるように、本発明は、限定することなしに複数のガスタービンを連続して連結したものに対しても使用可能である。
【0046】
周囲とガスタービン6の吸引流中に循環した煙道ガスの混合場所との間の吸引圧力損失Δpin及び煙道ガス分流器29と周囲との間の煙道ガス圧力損失Δpout並びにその結果生じる吸引圧力損失Δpinと煙道ガス圧力損失Δpoutとの間の時間tに対する圧力差Δpresが、迅速な遷移の例としての無負荷に対して図2中に単位なしで図示されている。この場合、当該圧力損失及び圧力差は、完全負荷時に結果として生じる圧力差によって規格化されている。この例では、ガスタービンの負荷が、時点tに対して解除される。すなわち、発電機25が、配電網から分離される。当該負荷の解除に対する応答として、制御装置が、圧縮機の調整可能な案内羽根33を閉じる。これによって、吸引流が減少される。これに応じて、吸引圧力損失Δpinが減少される。廃熱回収ボイラ9と煙道ガス管と二酸化炭素回収システムとの大きい容積に起因して、煙道ガス分流器29と周囲との間の煙道ガス圧力損失Δpoutが、少しの遅延を伴って降下する。
【0047】
さらに、図2中には、流入口の流れの二酸化炭素濃度の、時間tに対する変化が示されている。ガスタービンの高温の煙道ガス8の二酸化炭素濃度が、実際に時間遅延なしに負荷の解除後により小さくなる時でも、再循環速度が一定であるという仮定のもとでは、流入口の流れ中の二酸化炭素濃度は、最初の時点tまで一定である。0.5〜3分の範囲内の明らかな時間遅延を伴って初めて、流入口の流れ中の二酸化炭素濃度が低下し始める。
【0048】
変化する圧力挙動に応じて、制御装置が最初に、煙道ガス分流器29の位置を適合させる必要があるか又は第1煙道ガス部分流用の煙道ガス送風機11の出力を適合させる必要がある。変化された二酸化炭素濃度を有する煙道ガスが、ガスタービン6の流入口に到達した直後に、当該制御装置が、補正のために煙道ガス分流器29の位置を適合させる必要があるか又は第1煙道ガス部分流用の煙道ガス送風機11の出力を再び適合させる必要がある。
【符号の説明】
【0049】
1 圧縮機
2 周囲空気
3 圧縮機の流入口
4 燃焼室
5 燃料
6 ガスタービン
7 タービン
8 煙道ガス
9 廃熱回収ボイラ(heat recovery steam generator, HRSG)
10 (二酸化炭素回収システムのための)第2煙道ガス部分流用の煙道ガス送風機
11 第1煙道ガス部分流用の煙道ガス送風機(煙道ガスの再循環部)
12 バイパスフラップ又は弁
13 蒸気タービン
14 凝縮器
15 二酸化炭素回収システム用の蒸気抽出部
16 給水管
17 凝縮液返送管
18 二酸化炭素回収システム
19 廃熱回収ボイラからの煙道ガス
20 第2煙道ガス部分流(二酸化炭素回収システムのための煙道ガス管)
21 第1煙道ガス部分流(煙道ガスの再循環部)
22 二酸化炭素が少ない煙道ガス
23 (第2煙道ガス部分流用の)煙道ガス再冷却器
24 煙突のための煙道ガスバイパス
25 第1発電機
26 第2発電機
27 (第1煙道ガス部分流用の)煙道ガス再冷却器
28 フィルタ
29 煙道ガス分流器
30 生蒸気
31 回収二酸化炭素
32 煙突
33 圧縮機の調整可能な案内羽根
34 煙道ガス圧力測定部
35 流入口圧力測定部、吸引圧力測定部
36 流入口の流れの二酸化炭素及び/又は酸素測定部
37 ガスタービンの煙道ガスの二酸化炭素及び/又は酸素測定部
38 廃熱回収ボイラの煙道ガスの二酸化炭素及び/又は酸素測定部
39 水蒸気循環経路
CO2 二酸化炭素濃度
Δpin 吸引圧力損失
Δpout 煙道ガス圧力損失
Δpres 圧力差
t 時間
遷移の開始時点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスの再循環を伴うガスタービン発電プラントを稼動する方法であって、このガスタービン発電プラントは、ガスタービン(6)、廃熱回収ボイラ(9)及び前記煙道ガス(19)を前記ガスタービン(6)の吸引流中に再循環させる第1煙道ガス流(21)と周囲に対して放出する第2煙道ガス流(20)とに分岐させる煙道ガス分流器(29)並びに前記第1煙道ガス流(21)を制御する制御要素(11,29)を有する当該方法において、
煙道ガス流中及び/又は再循環した煙道ガスの混合後の前記ガスタービンの吸引流中の少なくとも1つの構成要素の目標濃度が、前記ガスタービンの運転状態に応じて決定される、煙道ガス流中及び/又は吸引流中の前記少なくとも1つの構成要素の実際の濃度が測定され、前記第1煙道ガス流(21)を制御するための前記制御要素(11,29)が、前記目標濃度と実際の濃度との偏差に応じて制御されることを特徴とする方法。
【請求項2】
煙道ガス流中及び/又は再循環した煙道ガスの混合後の前記ガスタービンの吸引流中の酸素濃度及び/又は二酸化炭素濃度が制御されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標濃度は、出力及び/又は周囲条件に応じて決定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記循環した煙道ガスは、煙道ガス再冷却器(27)内で再冷却温度に冷却され、この再冷却温度は、出力及び/又は周囲条件の関数として決定される請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記煙道ガスの再循環に対する圧力差(Δpres)を算定するため、周囲と前記ガスタービン(6)の吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の吸引圧力損失(Δpin)及び前記煙道ガス分流器(29)と周囲との間の煙道ガス圧力損失(Δpout)が測定され、及び/又は、前記煙道ガス分流器(29)と前記ガスタービン(6)の吸引流中に循環した煙道ガスの混合地点との間の前記圧力差(Δpres)が直接測定され、前記制御要素(11,29)の制御が、前記圧力差(Δpres)に応じて補正されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
制御可能な煙道ガス送風機(11)が、再循環流を制御する制御要素として使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記煙道ガス送風機(11)の出力が、前記煙道ガス分流器(29)と再循環した前記第1煙道ガス流(21)の混合地点との間の前記圧力差(Δpres)に反比例して増大されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
フラップ(29)及び/又は弁が、前記再循環流を制御する制御要素として使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記煙道ガスの再循環のための流れ方向に沿った前記フラップ又は前記弁の開口量は、前記煙道ガス分流器(29)と前記ガスタービン(6)の吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の圧力差(Δpres)に反比例して増大されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御要素の制御は、前記煙道ガスがガス成分の測定地点から前記ガスタービン(6)の流入口に到達するのに必要な時間に比例する時間遅延を伴って稼動することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記時間遅延は、前記ガスタービン(6)の出力及び/又は圧縮機の調整可能な案内羽根(33)の位置に比例する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2煙道ガス流(20)は、周囲に対して放出する前に二酸化炭素回収システム(18)によって管理され、二酸化炭素が、この第2煙道ガス流(20)から回収されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
再循環した前記第1煙道ガス流は、二酸化炭素の放出、未燃炭化水素の放出及び/又は前記ガスタービン(6)の燃焼室の振動に応じて前記制御要素(11,29)によって再制御されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
煙道ガスの再循環を伴うガスタービン発電プラントであって、このガスタービン発電プラントは、制御装置、廃熱回収ボイラ(9)及び前記煙道ガス(19)をガスタービン(6)の吸引流中に再循環させる第1煙道ガス流(21)と周囲に対して放出する第2煙道ガス流(20)とに分岐させる煙道ガス分流器(29)並びに前記第1煙道ガス流(21)を制御する制御要素を有する前記ガスタービン(6)を備える当該ガスタービン発電プラントにおいて、
煙道ガス流中及び/又は再循環した煙道ガスの混合後の前記ガスタービンの吸引流中の少なくとも1つの構成要素の目標濃度が、前記制御装置内で運転状態に応じて予め設定されていて、且つ、前記煙道ガス流中及び/又は前記第1煙道ガス流の混合後の吸引流中の前記少なくとも1つの構成要素の実際の濃度を測定する測定装置(36,37,38)を有することを特徴とするガスタービン発電プラント。
【請求項15】
圧力差測定部が、煙道ガス分流器(29)とガスタービン(6)の吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間に設けられていて、及び/又は、前記煙道ガスの再循環に対する圧力差(Δpres)を当該両圧力損失(Δpin,Δpout)の和から算定するため、前記ガスタービン発電プラントは、周囲と前記ガスタービン(6)の吸引流中に再循環した煙道ガスの混合地点との間の吸引圧力損失(Δpin)を測定する吸引圧力損失測定部(35)及び前記煙道ガス分流器(29)と周囲との間の煙道ガス圧力損失(Δpout)を測定する煙道ガス圧力損失測定部(34)を有することを特徴とする請求項14に記載のガスタービン発電プラント。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−154330(P2012−154330A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10845(P2012−10845)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland