説明

煙道ガス再循環を備えるコンバインドサイクル発電プラント

【課題】安定した、クリーンな燃焼を維持しながら高い煙道ガス再循環率を許容し、かつ煙道ガス再循環運転のためのフレキシブルな運転方法を提供する。
【解決手段】ガスタービン6と、煙道ガス再循環システムを備えた熱回収蒸気発生器(HRSG)とを有するコンバインドサイクル発電プラント(CCPP)を運転する方法において、煙道ガス再循環システムによってガスタービン6の圧縮機入口空気3へ再循環させられる煙道ガスの煙道ガス再循環率(rFRG)を、燃焼圧力及び/又は高温ガス温度(Thot)に関連して制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙道ガス再循環を備えるコンバインドサイクル発電プラントを運転する方法及びこの方な方法を実施するためのプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの発生が温暖化につながり、温室効果ガス発生のさらなる増大は地球温暖化を加速させることが明らかになっている。CO2(二酸化炭素)は主たる温室効果ガスとして認められ、NOxは、対流圏にオゾンを発生することによって間接的な温室効果ガスとして温室効果に著しく寄与すると考えられている。従って、CCS(炭素捕捉及び貯蔵)と、NOx排出の低減とは、地球温暖化を低減しかつ制御するための潜在的な主要な手段であると考えられている。
【0003】
NOx排出の低減は、煙道ガスの触媒浄化によって、又は、好適には燃焼中のNOx発生の低減によって行われる。
【0004】
発電プラント効率を高めるために、より高い高温ガス温度のための継続的な努力がなされてきた。しかしながら、燃焼温度が高くなると、NOx排出も増大する。この効果に対抗するために、煙道ガス再循環が提案されている。
【0005】
CCSは、CO2捕捉、圧縮、搬送及び貯蔵のプロセスとして定義される。捕捉は、CO2が、炭素ベースの燃料の燃焼後に煙道ガスから除去されるプロセス、又は燃焼前の炭素の除去及び処理として定義される。煙道ガス又は煙道ガス流からCO2を除去するための、あらゆる吸収剤、吸着剤又はその他の手段の再生は、捕捉プロセスの一部であると考えられている。
【0006】
バックエンドCO2捕捉又はポスト燃焼捕捉は、CCPP(コンバインドサイクル発電プラント)を含む化石燃料発電プラントのための商業的に期待される技術である。ポスト燃焼捕捉において、CO2は煙道ガスから除去される。残りの煙道ガスは大気中へ放出され、CO2は搬送及び貯蔵のために圧縮される。吸収、吸着、膜分離、及び低温分離等の、煙道ガスからCO2を除去するために知られている複数の技術がある。ポスト燃焼捕捉を備える発電プラントは、本発明の主体である。
【0007】
CO2捕捉のための全ての公知の技術は、比較的大きな量のエネルギを必要とする。慣用のCCPPの煙道ガスにおけるわずか約4%の比較的低いCO2濃度により、CO2捕捉システム(CO2捕捉プラント又はCO2捕捉機器とも呼ばれる)は、比較的より高いCO2濃度を有する石炭だきプラント等の他のタイプの化石発電プラントの場合よりも、捕捉されたCO2のkg当たりでコストが高くエネルギ消費も多い。
【0008】
CCPP煙道ガスにおけるCO2濃度は、燃料組成、ガスタービンの形式及び負荷に依存し、実質的にガスタービンの運転条件に依存して変化する。CO2濃度のこの変化は、CO2捕捉システムの性能、効率及び操作性にとって不利である恐れがある。
【0009】
CCPPの煙道ガスにおけるCO2濃度を高めるために、2つの主な概念が知られている。1つは、ガスの再循環であり、これは例えばO.Bolland及びS.Saetherによって、"NEW CONCEPTS FOR NATURAL GAS FIRED POWER PLANTS WHICH SIMPLIFY THE RECOVERY OF CARBON DIOXIDE"(Energy Convers. Mgmt Vol.33, No.5-8, pp467-475,1992)に記載されている。もう1つは、プラントの連続配列であり、この場合、第1のCCPPの煙道ガスは冷却され、第2のCCPPのための入口ガスとして使用され、第2のCCPPの煙道ガスにおける増大したCO2を備えた煙道ガスを得る。このような配列は、例えば米国特許出願公開第2008/0060346号明細書に記載されている。これらの方法は、周囲へ放出される煙道ガスの総量を低減し、CO2濃度を増大し、これにより、吸収器の所要の流れ容量と、捕捉システムの電力消費と、捕捉システムのための支出とを低減し、CO2システムの効率を高める。しかしながら、煙道ガス再循環は、ガスタービンの入口ガスにおける酸素濃度を低減し、燃焼に影響する。NOx排出に対する好ましい影響の他に、低減された酸素濃度は、不完全な不安定の燃焼につながり、極めて望ましくない高いCO排出を生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0060346号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】O.Bolland,S.Saether,"NEW CONCEPTS FOR NATURAL GAS FIRED POWER PLANTS WHICH SIMPLIFY THE RECOVERY OF CARBON DIOXIDE"(Energy Convers. Mgmt Vol.33, No.5-8, pp467-475,1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な課題は、煙道ガス再循環を備えるガスタービンと、1つの熱回収蒸気発生器(HRSG)と、1つの蒸気タービンとが設けられたコンバインドサイクル発電プラント(CCPP)のための低CO排出及び低NOx排出運転方法、及びこの方法に従って運転するように設計されたプラントを提供することである。
【0013】
1つの課題は、安定した、クリーンな燃焼を維持しながら高い煙道ガス再循環率を許容し、かつ煙道ガス再循環運転のためのフレキシブルな運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の本質は、COのバーンアウト、すなわちCO2を形成するための酸素とのCOの反応は、高い燃焼圧力によって促進されるという発見を利用することである。この効果を利用するために、煙道ガス再循環率が燃焼圧力に関連しているような運転方法が提案される。煙道ガス再循環率rFRGは、ガスタービンの煙道ガス質量流量の合計に対する、圧縮機入口へ再循環される、ガスタービンからの煙道ガス質量流量の比として定義される。煙道ガス再循環のNOx低減効果と組み合わせて、これは、低いNOx及び低いCO排出につながる運転方法を可能にする。
【0015】
CO排出に影響する別の要因は、燃焼温度又は高温ガス温度である。より改良されたアプローチでは、再循環率は、燃焼圧力及び高温ガス温度に関連して与えられる。
【0016】
例えば適切な冷却空気圧力として、燃焼圧力に比例した圧縮機出口圧力又は別の圧力を、燃焼圧力に代わりに使用することができる。通常、測定するのが容易であるため、圧縮機出口圧力が使用される。さらに、圧縮機出口温度は、圧力比に比例しており、従って使用することもできる。圧縮機出口温度を使用する場合、通常、周囲温度に応じて修正される。
【0017】
1つの実施の形態において、燃焼圧力及び/又は高温ガス温度に関連した、許容可能な煙道ガス再循環率を提供する制御範囲が提案される。煙道ガス再循環率のための目標値は、燃焼圧力及び/又は高温ガス温度に関連して計算される。実際の煙道ガス再循環率は、精密制御によって修正され、この精密制御は、CO排出量に応じて煙道ガス再循環率を調節する。CO排出量は、この制御方法のためにオンラインで測定される。
【0018】
1つの実施の形態において、煙道ガス再循環率を調節するために、二点制御が使用される。CO排出量が第1のしきい値を超えると、再循環率が減じられる。CO2排出量が第2のしきい値よりも低下すると、再循環率は増大される。しきい値の代わりに、再循環率の所要の修正を計算するために使用される、再循環率の修正関数を使用することもできる。修正関数は、燃焼圧力に基づき計算された目標再循環率と、CO排出量を所望のレベルにもたらすために必要とされる実際の再循環率とのオフセットを提供する。CO排出量と目標CO排出値との差に比例するオフセットを提供する単純な比例制御を、修正のために使用することができる。別の実施の形態において、しきい値又は修正関数は、CCPPの相対負荷にも依存している。
【0019】
選択肢として、煙道ガスの測定された未燃炭化水素排出量に関連する再循環率が、提案される。CO排出量に関連する制御と同様に、二点制御を使用することができる。択一的に、やはりCO制御と同様に、未燃炭化水素排出量に応じた、再循環率の修正関数を使用することもできる。修正関数は、燃焼圧力に基づき計算された目標再循環率と、未燃炭化水素排出量を所望のレベルにするために必要とされる再循環率とのオフセットを提供する。通常、未燃炭化水素排出力と目標の未燃炭化水素排出値との差に比例するオフセットを与える単純な比例制御を、修正のために使用することができる。別の実施の形態において、しきい値又は修正関数は、CCPPの相対負荷にも依存している。
【0020】
さらに、圧縮機入口ガスに残っている実際のO2濃度は、燃焼プロセスに対する著しい影響を有しており、煙道ガス再循環率を調節するために使用することができる。入口空気におけるO2濃度を制御パラメータとして使用する代わりに、燃焼器入口における煙道ガスO2濃度の評価を許容する、別のガス流におけるO2及び/又はCO2の使用が可能である。例えば、タービンの煙道ガスにおけるCO2濃度を使用することができる。さらに、再循環される煙道ガスにおける残留酸素濃度又は冷却空気流における酸素濃度を使用することができる。これらの濃度の組合せの使用も可能である。
【0021】
これらのパラメータのための最適な目標値は、特定のプラント設計に依存しており、周囲条件及びプラント負荷に関連している。全体効率に対するそれらの影響は、プラントの運転条件に依存する。
【0022】
所要のO2濃度は燃焼圧力及び温度に依存する。従って、所要のO2濃度は、燃焼圧力及び/又は高温ガス温度に関連して計算することもできる。この所要のO2濃度に基づき、煙道ガス再循環率は、ガスタービンの入口流体が所要のO2濃度を有するように制御することができる。
【0023】
最大再循環率は、しばしば、安定した完全燃焼のために要求される酸素濃度によって制限される。ここでいう安定した完全燃焼は、CO及び未燃炭化水素(UHC)の排出量が、ppmのオーダ又は一桁のppmである、CO及び未燃炭化水素排出量のために設定された所要のレベルよりも低く、燃焼脈動が通常設計値の範囲であることを意味する。排出レベルは、通常、保証値によって規定されている。脈動のための設計値は、ガスタービン、運転箇所、及び燃焼器設計、並びに脈動周波数に依存する。設計値は、燃焼器圧力の10%よりも十分に低くなっているべきである。通常、設計値は、燃焼器圧力の1又は2%よりも低い。1つの実施の形態において、再循環率は脈動に応じて調節又は精密調整される。例えば、再循環率のための目標値は、圧縮機出口圧力又は圧縮機圧力比に基づいて計算される。目標値は、高い燃焼脈動の場合には減じられ、極めて低い燃焼脈動においては増大させられる。これらの調節は、通常、圧力依存目標値の周辺の範囲内でのみ許容及び実行される。
【0024】
運転柔軟性を高め、かつより高い再循環率が、ベース負荷及び部分負荷における煙道ガスにおけるCO2濃度をさらに増大させることができるために、別の実施の形態において、圧縮機入口ガスの酸素富化が提案される。このために、酸素又は酸素富化空気がガスタービンの圧縮機入口ガスに混合される。1つの実施の形態において、酸素の混合は、圧縮機出口圧力に反比例する。
【0025】
第1の近似において、捕捉システムの比エネルギ消費は、煙道ガスのCO2濃度に比例する。これに関して、捕捉システム比エネルギ消費は、煙道ガスからCO2の1つの質量単位を除去するために必要とされるエネルギとして定義される。煙道ガスにおけるCO2濃度は再循環率に比例するので、最適化目標は、高い再循環率である。
【0026】
より高い再循環率は、CO2濃度を高めるだけでなく、CO2捕捉システムを硫化する煙道ガス質量及び体積流量の減少にもつながる。より低い流量は、システムの圧力降下をも低減し、このことは、全体の性能にとって有利であるか又はより小さな、よりコストの低い機器の使用を許容する。設計条件下でのベース負荷において、煙道ガス再循環率は最大化される。煙道ガス再循環率は、ガスタービンの運転のために必要とされる最大酸素濃度によって制限される。典型的な再循環率は、ベース負荷運転の場合に30%〜50%のオーダである。
【0027】
ガスタービンの部分負荷運転において、慣用のガスタービン煙道ガスにおけるCO2濃度は、ベース負荷運転におけるよりも低く、燃焼のための酸素消費が増大する。
【0028】
CO2生成の差を考慮するために、燃焼圧力に関連する目標CO2又は目標残留酸素含有量が、別の実施の形態において使用される。
【0029】
部分負荷において生じる恐れがある火炎消火又は部分消火は、冷却空気質量流量及び冷却空気温度にも依存する。ほとんどのガスタービン設計の場合、冷却空気温度及び質量流量は、圧縮機入口条件と、可変入口案内羽根の位置とに関連している。従って、所要の最大酸素濃度に対する、入口条件及び/又は可変入口案内羽根の位置の影響を考慮する、付加的な関数の使用が提案される。再循環率はこれに従って修正され、例えば再循環率は、火炎に対する冷却空気の消火効果が高い場合には低い冷却空気温度のために減じられ、冷却空気の消火効果がより低い場合には高い冷却空気温度のために増大される。
【0030】
上述の制御方法の組合せが考えられる。特に、燃焼圧力に依存した再循環率、又は燃焼圧力に依存した、目標入口酸素濃度の関数は、CO排出量、及び/又は未燃炭化水素排出量、及び/又は脈動等の燃焼パラメータの測定に基づく修正と組み合わせることができる。
【0031】
煙道ガス再循環率は、最適なプラント熱力学及び経済的性能を目標として、酸素濃度が最小所要レベルを満たすように保たれた、酸素又は酸素富化ガスの混合と組み合わせて、最適値にまで増大させることができる。酸素又は酸素富化空気の混合は、ASU(空気分離ユニット)のトレードオフと、減じられた排出量による利益とを考慮して正当化されるまで、適用することができる。
【0032】
1つの実施の形態において、圧縮機入口ガスに対する、酸素又は酸素富化空気の混合は、入口における酸素濃度を制御するために行われる。圧縮機入口における目標酸素濃度は、例えば、燃焼圧力の関数として与えられる。
【0033】
別の実施の形態において、圧縮機入口ガスに対する、酸素又は酸素富化空気の混合は、CO又は未燃炭化水素に関連して行われる。CO及び/又は未燃炭化水素排出量が第1のしきい値よりも増大すると、酸素又は酸素富化空気の混合が増大される。CO及び/又は未燃炭化水素排出量第2のしきい値よりも低いならば、混合は低減される。しきい値の代わりに、CO及び/又は未燃炭化水素排出量に依存した混合の修正関数を使用することもできる。別の実施の形態において、しきい値又は修正値は、CCPPの相対負荷にも依存している。
【0034】
燃焼が不完全であると通常増大する火炎又は燃焼器脈動は、測定することができ、同様に、酸素又は酸素富化空気の混合のための制御パラメータとして使用することができる。1つの実施の形態において、二点制御は、煙道ガス再循環率を調節するために使用される。脈動レベルが第1のしきい値よりも増大すると、混合が増大される。脈動レベルが第2のしきい値よりも低いと、混合は低減される。燃焼器に応じて、特定の脈動周波数範囲を、脈動に依存した混合制御のために使用することができる。しきい値の代わりに、脈動レベルに依存した再循環率の修正関数を使用することもできる。通常、単純な比例制御を修正のために使用することができ、この比例制御は、測定された脈動と目標脈動値との差に比例した、煙道ガス再循環率のオフセットを与える。
【0035】
制御パラメータとして燃焼器脈動を使用する制御方法のために、少なくとも1つの対応する脈動測定装置が燃焼器に接続されなければならない。
【0036】
CO又は未燃炭化水素排出量を制御パラメータとして使用する制御方法のために、少なくとも1つの対応する測定装置がガスタービンの下流に装着されなければならない。
【0037】
別の実施の形態において、再循環率は、酸素又は酸素富化空気の混合の制御と組み合われる。これらの制御方法を組み合わせるための様々な異なる可能性が考えられる。
【0038】
例えば、再循環率は、NOxを最小限に抑制するために及び/又はCO2捕捉システムにおける流れを最適化するために圧力に関連して与えることができ、混合を、安定した完全燃焼を制御するために使用することができる。第2の例において、酸素又は酸素富化空気の混合は、ASUの寸法により一定レベルに保たれ、再循環率は安定した完全燃焼を制御するために使用される。
【0039】
さらに、煙道ガス流量は、負荷が低減されるにつれて小さくなる。ガスタービンのより小さな煙道ガス質量流量と組み合わされた再循環率の増大は、発電プラントから出る煙道ガス質量流量の著しい低下につながることができる。従って、CO2捕捉ユニットへ送られる煙道ガス流は、CO2捕捉との運転のために減じられる。しかしながら、設計に応じて、最適な質量流量又は流速がCO2捕捉システムにおいて維持されるべきである。この最適な流量は再循環率を制限することができる。従って、CO2捕捉システムの設計に応じて、CO2捕捉システムを通る最適な流量を維持するために、低い負荷においては再循環率の減少が必要とされることができる。CO2捕捉ユニットに依存して、流量に対する顕著な最大効率なしに、捕捉ユニットの効率はほとんど流量から独立している。しかしながら、流量は、通常、最小流量によっても依然として制限され、この最小流量よりも低いと、不安定な流れが生じる恐れがあり、このことは、CO2捕捉システムにおける振動につながる恐れがある。この場合、最小流量を保証するために、制御は単純化される。
【0040】
ベース負荷運転の間、プラント電力は、ガスタービン入口温度を増大させながら、低下する。従って、目標再冷却温度は、通常、できるだけ低い。目標再冷却温度は、通常、再冷却器の能力によって制限される。大きな低温ヒートシンク、例えば低い周囲温度及び/又は低温冷却水、が利用可能である場合にのみ、又はプラントの凍結危険性又はその他の運転パラメータが運転を制限する場合、再冷却温度は、より高い目標温度に制御される。
【0041】
部分負荷において、合計質量流量が低減された場合、合計再循環質量流量も重畳は減少し、再冷却器は、通常、ベース負荷におけるよりも低い温度に冷却する能力を有している。しかしながら、ほとんどのプラント設計の場合、ガスタービンの圧縮機入口温度を増大することは、ある負荷設定点における部分負荷効率を増大することができる。
【0042】
通常、CCPPの効率は負荷に比例する。一定の絶対負荷で運転する場合、相対負荷は、ガスタービンの入口温度が増大するにつれて、増大する。この増大による効率増大は、入口温度の増大によって生ぜしめられる効率損失よりも高い。
【0043】
再冷却器の出口温度は、再循環された煙道ガスを冷却し、従って、圧縮機入口温度がガスタービンの運転限界の範囲にある限り、再冷却温度を、より高いガスタービン圧縮機入口温度を実現するために、部分負荷において高めることができる。従って、負荷及び再循環率に依存する再冷却温度が提案される。再循環率に応じて、再循環温度は、再冷却された煙道ガスとの周囲空気の混合の後、現在の電力出力で最善の効率につながる入口温度が得られるように、制御される。
【0044】
CO2捕捉を備えたプラントの場合、冷却後のCO2捕捉プラントへの煙道ガス温度も、より低温の限界を考慮して、CO2捕捉システムのために最適化される。
【0045】
CO2捕捉システム自体は、2つ以上の捕捉トレインから成ることができる。部分負荷運転を最適化するために、少なくとも1つの捕捉トレインをシャットダウンすることが有利であることができる。その結果、最適な再循環率は、作動中の捕捉トレインに関連することができる。CCPP運転との捕捉システム運転の一体化は、全体のプラント効率のために有利である。
【0046】
第1の制御ステップにおいて、作動中の捕捉トレインの数はプラント負荷に合わせて調節される。第2のステップにおいて、再循環率は、特定の負荷におけるプラント効率を最適化するために、作動中の捕捉トレインの特定の数に関連して、調節される。このために、2つの選択的な最適化方式が提案される。再循環率は、捕捉システムの作動中のトレインのための最適なレベルに煙道ガスのCO2濃度を制御するために使用されるか、又は最適な速度に捕捉トレインにおける流速を保つために使用される。
【0047】
方法の他に、この方法に従って運転するためのプラントは発明の一部である。最適化された運転のために設計されたプラントは、少なくとも1つのガスタービンと、煙道ガスの第1の部分流を圧縮機入口ガス流に向かって送る煙道ガスダクトを備えた煙道ガス再循環システムと、再循環率を制御するための少なくとも1つの制御機構と、再循環煙道ガスを冷却するための温度制御を備えた再循環機と、少なくとも1つの燃焼圧力測定部と、少なくとも1つのCO2及び/又は酸素濃度測定装置とを有している。燃焼圧力測定装置の代わりに、圧縮機出口圧力測定装置又は圧縮機出口温度装置を使用することができる。
【0048】
通常、再循環システムは、煙道ガス再循環ライン又はダクト、再循環率を制御するための制御機構、及び再循環煙道ガス冷却器を有している。再循環のために、煙道ガス流は、HRSGの下流において少なくとも2つの部分流に分割される。第1の部分流は、煙道ガス再循環ラインを介してガスタービンの入口へ戻され、第2の部分流は、環境への解放のために煙突へ送られる。CCSの場合、第2の部分流は、CO2捕捉システムを介して煙突へ送られる。CCSの場合、CO2捕捉システムの周囲のバイパスが、運転の柔軟性を高めるために設けられていてよい。これにより、再循環率と、CO2捕捉ユニットへの煙道ガス流とのあらゆる組合せを選択肢、煙道ガス流を煙突へ送ることができる。
【0049】
再循環率を制御するために、排出流量及び/又は再循環流量を、少なくとも1つの制御機構によって制御することができる。これは、例えば、スプリッタの下流における煙道ガスラインのうちの一方又は両方における、制御機構と組み合わされた制御可能なダンパ又は固定されたスプリッタであることができる。
【0050】
上述のように、再循環させられた第1の部分流は、通常、ガスタービンの圧縮機に導入するために周囲空気と混合される前に、再冷却器によってさらに冷却されなければならない。1つの実施の形態において、再循環率を制御するための制御機構、例えばフラップ又は弁は、この制御機構における熱負荷を減じるためにこの再冷却器の下流に装着されている。
【0051】
別の実施の形態において、ブロワが、再循環ライン及び/又は排気ガスラインに装着されている。ブロワは、許容可能な圧力降下が増大させられるので、機器寸法を減じるために有利であることができる。実用的な機器寸法は、捕捉システム及び再循環ラインに亘る合理的な圧力降下によってのみ実現することができる。ガスタービン及びHRSG設計による制限を克服することができる。
【0052】
ブロワは、通常、ブロワの消費電力と、ブロワが耐えなければならない熱負荷とを低減する冷却器の下流に配置されている。さらに、ブロワは、安定した煙道ガス温度の下で作動し、ブロワが冷却器の上流に配置されている設計と比較して、より小さな体積が流れる。
【0053】
さらに、ブロワの電力消費を最小限にするために、変速制御が提案される。従って、ブロワは、再循環率を制御するために使用することができる。本来圧力降下を生じる、可変ダンパ、フラップ又は制御弁を回避することができる。従って、システムの合計圧力降下を、変速ブロワの使用によって低減することができる。択一的に、制御可能なブレード又は案内羽根を備えたブロワも考えられる。煙道ガス及び再循環システムにおける設計及び圧力に応じて、ブロワの代わりに、ブースタを使用することができる。
【0054】
圧縮機入口ガス又は燃焼器入口ガスの連続的な酸素富化を許容するために、プラントの実施の形態は、所要の酸素を発生するための空気分離ユニット又はメンブレンベースの酸素富化ユニットを有している。
【0055】
上述のガスタービンは、例えば欧州特許第0620363号明細書又は欧州特許第0718470号明細書から公知の単一燃焼ガスタービン又は順次燃焼ガスタービンであることができる。CO排出に対する高い燃焼圧力の有利な効果を保証するために、順次燃焼ガスタービンは、第2の燃焼室における圧力が全負荷運転において15baraよりも高くなるように設計されているべきである。
【0056】
発明、発明の性質及び発明の利点は、添付の図面を用いることにより以下により詳細に説明される。図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】煙道ガス再循環及び変速ブロワを備えたCCPPを概略的に示している。
【図2】順次燃焼ガスタービン、煙道ガス再循環、及び変速ブロワを備えたCCPPを概略的に示している。
【図3】煙道ガス再循環を含むバックエンドCO2吸収、及び変速ブロワを備えたCCPPを概略的に示している。
【図4】圧縮機出口圧力及び高温ガス温度に関連した煙道ガス再循環率の例を概略的に示している。
【図5】与えられた高温ガス温度のための煙道ガス再循環率のための許容可能な範囲を備えた圧縮機出口圧力に関連した目標煙道ガス再循環率の例を概略的に示している。
【図6】高温ガス温度と、与えられた圧縮機出口圧力のための煙道ガス再循環率調節のための許容可能な範囲とに関連した、目標煙道ガス再循環率の例を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0058】
提案された方法の実施のための発電プラントは、慣用のCCPPと、煙道ガス再循環のための機器を有している。
【0059】
煙道ガス再循環を備えた典型的な配列が、図2に示されている。第1の発電機25を駆動するタービン6には、圧縮機入口ガス3と、燃料5とが供給される。圧縮機入口ガス3は、周囲空気2と、煙道ガス再循環ラインを介して再循環させられた煙道ガスとの混合物である。圧縮機入口ガス3は圧縮機1において圧縮される。圧縮されたガスは、燃焼器4における燃料5の燃焼のために使用され、加圧された高温ガスはタービン7において膨張する。その主な出力は電力と、高温の煙道ガス8とである。
【0060】
ガスタービンの高温煙道ガス8はHRSG9を通過し、HRSGは、蒸気タービン13のための生蒸気を発生する。蒸気タービン13は、ガスタービン6及び第1の発電機25とともに単一軸構成で配置されているか、又は第2の発電機26を駆動するための多軸構成で配置されている。蒸気タービン13から出た蒸気は凝縮器14へ送られ、HRSGへ戻される。蒸気サイクルは単純化されており、異なる蒸気圧力レベル、給水ポンプ等を省略して概略的に示されている。なぜならば、これらは本発明の主体ではないからである。
【0061】
HRSGからの煙道ガス19の第1の部分流21は、ガスタービン6の圧縮機1の入口へ再循環させられ、この入口において、第1の部分流21は周囲空気2と混合される。第1の部分流21は、周囲空気2と混合される前に再循環煙道ガス冷却機27において冷却される。
【0062】
HRSGからの煙道ガス19の第2の部分流20は、ダンパ29によって煙突32へ送られる。煙道ガス流を高めるために、及び再循環率を制御するために、煙突32への変速煙道ガスブロワ10が、ダンパ29と煙突32との間に装備されている。さらに、再循環のための変速煙道ガスブロワ11が、煙道ガスの再循環された第1の部分流21を周囲空気2と混合する前に、再循環煙道ガス冷却機27の下流に装備されている。
【0063】
図2は、順次燃焼ガスタービンと、煙道ガス再循環と、変速ブロワとを備えたCCPPを概略的に示している。1つのタービン7を備えた単一燃焼室4の代わりに、順次燃焼ガスタービンは、燃焼器4を有しており、この燃焼器4の後に高圧タービン33が続いている。高圧タービン33から出た部分的に膨張させられたガスは、第2の燃焼室34において再熱された後、低圧タービン35においてさらに膨張させられる。
【0064】
後燃焼捕捉及び煙道ガス再循環を備えた典型的な配列が、図3に示されている。図1に示されたCCPPに加え、図3のプラントはCO2捕捉システムを有している。ガスタービンの高温の煙道ガス8はHRSG9を通過し、このHRSG9は蒸気タービン13のための生蒸気30を発生する。蒸気タービン13は、ガスタービン6及び第1の発電機25を備えた単一軸構成で配置されているか、又は第2の発電機26を駆動するための多軸構成で配置されている。さらに、蒸気は、蒸気タービン13から抽出され、蒸気ライン15を介してCO2捕捉システム18へ供給される。蒸気は、低下させられた温度で蒸気サイクルへ戻されるか、又は凝縮物として戻しライン17を介して蒸気サイクルへ再導入される。蒸気サイクルは単純化されており、異なる蒸気圧力レベル、給水ポンプ等を省略して概略的に示されている。なぜならば、これらは発明の主体でないからである。
【0065】
HRSG19からの煙道ガスの第1の部分流21は、ガスタービン6の圧縮機1の入口へ再循環され、この入口において、第1の部分流21は周囲空気2と混合される。第1の部分流21は、周囲空気2と混合される前に、再循環煙道ガス冷却機27において冷却される。
【0066】
HRSG19からの煙道ガスの第2の部分流20は、ダンパ29によってCO2捕捉システム18へ送られる。CO2捕捉システム18の上流の煙道ガス冷却機23はこの第2の部分流20を冷却する。煙道ガス流を高めるために、及び再循環率を制御するために、CO2捕捉システム10への変速煙道ガスブロワが、煙道ガス冷却機23とCO2捕捉システム18との間に装備されている。再循環11のための変速煙道ガスブロワは、煙道ガスの再循環された第1の部分流21を周囲空気2と混合する前に、再循環煙道ガス冷却機27の下流に装備されている。
【0067】
CO2が除去された煙道ガス22は、CO2捕捉システム18から煙突32を介して環境へ放出される。CO2捕捉システム18が作動していない場合、煙道ガスは、煙道ガスバイパス24を介して迂回させることができる。
【0068】
通常運転中、捕捉されたCO2はCO2圧縮機において圧縮され、圧縮されたCO2は貯蔵又はさらなる処理のために移送される。
【0069】
異なるガス流の酸素濃度をより制御しやすくするために、酸素及び/又はCO2濃度を測定するための測定装置が提案される。
【0070】
再循環質量流量を制御し、再循環煙道ガス再冷却機27の後の温度を制御し、周囲空気の温度と、圧縮機1の入口質量流量とを考慮することによって、圧縮機1の入口温度を制御することができる。
【0071】
ベース負荷において、再冷却温度は、通常、再循環煙道ガス再冷却機27の能力によって制限され、利用可能なヒートシンクに依存する。河川又は海からの冷却水を用いる冷却水冷却機の場合、水温が、可能な再冷却温度を支配する。空気冷却機の場合、最低再冷却温度は、通常、周囲温度より5〜10℃高い温度である。再循環率に応じて、圧縮機入口温度の温度上昇は、より小さくなる。
【0072】
特定の部分負荷電力出力がCCPPから要求される場合、タービン入口温度又は高温ガス温度が低下させられ、可変入口案内羽根が、運転コンセプトに従って、目標電力が達成されるまで閉鎖される。両者は、相対的な負荷低減に比例した、プラント効率の低減につながる。圧縮機入口温度を制御することによって、プラントのベース負荷電力を制御することができる。特に、圧縮機入口温度の上昇は、ベース負荷電力の減少につながる。その結果、上記の特定の電力出力は、ベース負荷において又は増大した相対電力において達せられる。増大した相対負荷での運転による効率増加が、増大した入口温度での運転による効率損失よりも大きい限り、圧縮機入口温度を高めることは、全体効率を高めることができる。プラント特定最適圧縮機入口温度を、全ての負荷設定点のために決定することができる。最適圧縮機入口温度と、周囲空気2の温度と、負荷特定ガスタービン再循環率rGTとに基づき、最適な再冷却温度Trecoolを決定することができる。ベース負荷において、再冷却温度は、再冷却機の冷却能力によって制限される。より低い負荷では、再冷却温度Trecoolを、周囲空気と再冷却された煙道ガスとの混合物が許容可能な最大圧縮機入口温度に達するまで、高めることができる。この例では、最大許容圧縮機入口温度は、固定値である。しかしながら、ガスタービン再循環率は負荷に応じて変化するので、一定の混合温度を得るために必要とされる再冷却温度Trecoolも負荷に応じて変化する。
【0073】
ガスタービン6の設計に応じて、許容可能な最大圧縮機入口温度は一定ではない。これは、例えば、圧縮機端部温度又は中間圧縮機からの冷却空気ブリード温度が制限的要因である場合である。その結果、再冷却温度Trecoolのための異なる制限機能が得られる。
【0074】
より精巧な実施の形態において、周囲圧力、湿度及び入口/出口の圧力降下の影響も、例えば、負荷特定最適圧縮機入口温度及び対応する最適再冷却温度を決定するために考慮することができる。
【0075】
図4は、煙道ガス再循環率の例を、圧縮機出口圧力と高温ガス温度とに関連して概略的に示している。圧縮機出口圧力pk2は、設計条件下の全負荷における圧縮機出口圧力で標準化されており、高温ガス温度Thotは、設計条件下の全負荷における高温ガス温度で標準化されており、煙道ガス再循環率rFRGは、設計条件下の全負荷における煙道ガス再循環率で標準化されている。全負荷において、標準化された圧縮機出口圧力pk2と、高温ガス温度Tk2と、煙道ガス再循環率rFRGとは、1に等しい。煙道ガス再循環率rFRGは、より低い圧縮機出口圧力pk2及びより低い高温ガス温度Thotの場合には低下させられる。
【0076】
順次燃焼を備えるガスタービン6の場合、煙道ガス再循環率は、第1の燃焼室4と第2の燃焼室34との高温ガス温度の関数である。これは、ここには示されていない曲線の構成につながる。通常、第1の燃焼室の高温ガス温度Thotは、50%の相対負荷、例えば全負荷に関する運転負荷、までの広い負荷範囲に亘ってほぼ一定に保たれる。従って、この曲線の配列は、単純化することができ、煙道ガス再循環率rFRGを決定するために第2の燃焼室の高温ガス温度を使用することができる。
【0077】
高温ガス温度は通常、タービンに進入する高温ガスの平均高温ガス温度として規定される。高温ガス温度の代わりに、タービンの冷却空気との高温ガスの理論的混合温度である、いわゆるTITタービン入口温度を使用することもできる。
【0078】
図5は、目標煙道ガス再循環率rTの例を、圧縮機出口圧力pK2に関連して、与えられた高温ガス温度Thotのための煙道ガス再循環率調節のための許容可能な範囲とともに、概略的に示している。圧縮機出口圧力pk2は、設計条件下での全負荷における圧縮機出口圧力で標準化されている。煙道ガス再循環率rFRGと、目標煙道ガス再循環率rTと、最小煙道ガス再循環率rminと、最大煙道ガス再循環率rmaxとは、設計条件下での全負荷における煙道ガス再循環率rFRGで標準化されている。この例において、目標煙道ガス再循環率は、圧縮機出口圧力pk2に関連して、開ループ制御において決定される。実際の煙道ガス再循環率rFRGは、個々の圧縮機出口圧力pk2に対して与えられた最大煙道ガス再循環範囲rminと最大煙道ガス再循環範囲rmaxとの間の許容可能範囲内で、閉ループ制御を用いて調節される。
【0079】
煙道ガス再循環率rFRGの閉ループ調節のために、例えば煙道ガスにおけるCO含有量又は燃焼器脈動が使用される。
【0080】
図5に示された関数は、1つの高温ガス温度Thotのために有効である。運転条件とガスタービンの設計とに応じて、高温ガス温度の影響を無視することができ、この単なる圧縮機出口圧力pk2の関数は、高温ガス温度Thotを考慮することなく全ての運転条件の場合に再循環率rFRGを制御するために使用することができる。
【0081】
図6は、目標煙道ガス再循環率rTの例を、与えられた圧縮機出口圧力pk2の場合の高温ガス温度Thotの関数と、煙道ガス再循環率調節のための許容可能範囲とに関連して概略的に示している。
【0082】
高温ガス温度Thotは、設計条件下での全負荷における高温ガス温度Thotで標準化されている。煙道ガス再循環率rFRGと、目標煙道ガス再循環率rTと、最小煙道ガス再循環率rminと、最大煙道ガス再循環率rmaxとは、設計条件下での全負荷における煙道ガス再循環率rFRGで標準化されている。この例では、目標煙道ガス再循環率は、高温ガス温度Thotに関連して開ループ制御において決定されている。実際の煙道ガス再循環率rFRGは、個々の高温ガス温度Thotの場合に、最小煙道ガス再循環範囲rminと最大煙道ガス再循環範囲rmaxとの間の許容可能範囲内で閉ループ制御を用いて調節される。
【0083】
煙道ガス再循環率rFRGの閉ループ調節のための入力変数として、例えば、煙道ガスのCO含有量又は燃焼器脈動が使用される。1つの実施の形態において、調節は、煙道ガスのCO含有量及び/又は燃焼器脈動の、目標値の逸脱に比例する。
【0084】
運転柔軟性をさらに高め、かつ部分負荷及びベース負荷における再循環率の制限を克服するために、別の実施の形態の場合にはガスタービン入口ガスの酸素富化が提案される。
【0085】
幾つかの燃焼システムにおいては、燃焼の火炎安定性及び脈動挙動を改良するために、半径方向でのバーナの多段化が使用される。多段化は通常、局所的な高温ガス温度を増大させ、より高いNOxを生じるので、制限される。しかしながら、提案された運転方法では、煙道ガス再循環がNOx排出量を低減するので、異なる運転範囲における多段化を許容する。この増大した運転範囲を利用するために、多段化比率が燃焼圧力及び/又は煙道ガス再循環率の関数であるような方法が提案される。多段化比率は、例えば、増大した燃料流量を備えたバーナ又はバーナのグループへの最大燃料流量を、バーナごとの平均燃料流量によって割ったものとして規定される。図5に示された、圧縮機出口圧力pk2に関連した煙道ガス再循環比と同様に、圧縮機出口圧力pk2に関連したバーナ多段化の制御が提案される。
【0086】
燃焼の火炎安定性及び脈動挙動を改良するための別の手段として、拡散火炎を用いるパイロット化が知られている。パイロット化は、通常、局所的な高温ガス温度をも上昇させ、より多くのNOxを生じるので、制限される。しかしながら、提案された運転方法では、煙道ガス再循環がNOx排出量を低減するので、異なる運転範囲におけるパイロット化を許容する。この増大した運転範囲を利用するために、パイロット燃料流が燃焼圧力及び/又は煙道ガス再循環の関数であるような方法が提案される。図5に圧縮機出口圧力pk2に関連して示された煙道ガス再循環比率と同様に、圧縮機出口圧力pk2に関連したパイロット燃料流の制御が提案される。
【0087】
上記及び図面に記載された典型的な実施の形態は、当業者に、典型的な実施の形態とは異なりかつ発明の範囲に含まれる実施の形態を開示する。例えば、煙道ガス5の代わりに、液体燃料がガスタービンにおいて燃焼させられてもよい。
【0088】
制御パラメータとしてCO又は未燃炭化水素排出量を用いる制御方法を実現するために、ガスタービン6の下流にCO又は未燃炭化水素排出量測定装置が装着されなければならない。CO又は未燃炭化水素排出量測定装置は、例えば、ガスタービン煙道ガスCO2及び/又はO2測定装置37の位置、又はHRSG煙道ガスCO2及び/又はO2測定装置に対応する測定装置38の位置に、装着することができる。CO又は未燃炭化水素排出量測定装置は、組み合わされた測定装置であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 圧縮機
2 周囲空気
3 圧縮機入口ガス
4 燃焼器
5 GTのための煙道ガス
6 ガスタービンGT
7 タービン
8 ガスタービンからの高温煙道ガス
9 HRSG(熱回収蒸気発生器)
10 (CO2捕捉システムへの)第2の部分流のための煙道ガスブロワ
11 第1の部分流のための煙道ガスブロワ(煙道ガス再循環)
12 バイパスフラップ又は弁
13 蒸気タービン
14 凝縮器
15 CO2捕捉のための蒸気抽出部
16 給水部
17 凝縮物戻しライン
18 CO2捕捉システム
19 HRSGからの煙道ガス
20 第2の部分流(CO2捕捉システムへの煙道ガスライン)
21 第1の部分流(煙道ガス再循環)
22 CO2除去された煙道ガス
23 (第2の部分流のための)煙道ガス冷却機
24 煙突への煙道ガスバイパス
25 第1の発電機
26 第2の発電機
27 (第1の部分流のための)再循環煙道ガス再冷却器
28 圧縮機出口圧力又は出口温度測定装置
29 煙道ガス分割装置
30 生蒸気
31 捕捉されたCO2
32 煙突
33 高圧タービン
34 第2の燃焼器
35 低圧タービン
36 入口空気CO2及び/又はO2測定装置
37 ガスタービン煙道ガスCO2及び/又はO2測定装置
38 HRSG煙道ガスCO2及び/又はO2測定装置
CCPP コンバインドサイクル発電プラント
GT ガスタービン再循環率
i 課された燃焼不均一性比
T 目標再循環率
min 最小再循環率
max 最大再循環率
hot 高温ガス温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(6)と、煙道ガス再循環システムを備えた熱回収蒸気発生器(HRSG)とを有するコンバインドサイクル発電プラント(CCPP)を運転する方法において、煙道ガス再循環システムによってガスタービン(6)の圧縮機入口空気(3)へ再循環させられる煙道ガスの煙道ガス再循環率(rFRG)を、燃焼圧力及び/又は高温ガス温度(Thot)に関連して制御することを特徴とする、コンバインドサイクル発電プラント(CCPP)を運転する方法。
【請求項2】
より高い煙道ガス再循環率(rFRG)を許容するために、酸素又は酸素富化空気をガスタービン(6)のガスタービン圧縮機(1)の圧縮機入口ガス(3)及び/又は燃焼室(4)に混合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
圧縮機入口ガス(3)における目標酸素濃度を、ガスタービン(6)の燃焼圧力に関連して与え、入口空気における酸素濃度を、煙道ガス再循環率(rFRG)の変化及び/又は酸素又は酸素富化空気の混合によって制御する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
煙道ガス再循環率(rFRG)及び/又は酸素又は酸素富化空気の混合を、測定されたCO及び/又は未燃炭化水素排出量に関連して調節する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
煙道ガス再循環率(rFRG)及び/又は酸素又は酸素富化空気の混合を、測定された燃焼器脈動に関連して調節する、請求項1、2又は4記載の方法。
【請求項6】
CO2捕捉システム(18)を通る所要の最小流量を保証するために、煙道ガス再循環率(rFRG)を最小値よりも高く維持する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
再冷却温度(Trecool)を、燃焼圧力及び/又は圧縮機出口温度(Tk2)に関連して制御する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
再冷却温度(Trecool)を、燃焼圧力及び/又は圧縮機出口温度(Tk2)及び再循環率に関連して制御する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ガスタービン(6)の目標圧縮機入口温度を、相対負荷に関連して与え、圧縮機入口温度を、冷却温度(Trecool)を調節することによって制御する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
煙道ガス再循環率(rFRG)を、再循環のための変速煙道ガスブロワ(11)を用いて及び/又は煙突(32)への変速煙道ガスブロワ(10)を用いて、制御する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の運転のために設計された発電プラント(1)において、ガスタービン(6)と、熱回収蒸気発生器(9)と、蒸気タービン(13)と、再循環煙道ガス再冷却器(27)を備えた煙道ガス再循環ラインと、少なくとも1つの、圧縮機出口圧力及び/又は圧縮機出口温度測定装置と、再循環される煙道ガスと周囲空気との混合箇所とガスタービン(6)の圧縮機(1)との間に設けられた少なくとも1つの酸素及び/又はCO2測定装置(36)、及び/又はガスタービン(6)の下流に設けられた少なくとも1つの酸素及び/又はCO2測定装置(37,38)及び/又は少なくとも1つのCO及び/又は未燃炭化水素測定装置とが設けられていることを特徴とする、発電プラント(1)。
【請求項12】
26よりも大きい設計圧縮機圧力比を備えるガスタービンが設けられている、請求項11記載の発電プラント(1)。
【請求項13】
15baraよりも大きい第2の燃焼室(34)の設計圧力を備えた、順次燃焼ガスタービン(6)が設けられている、請求項12記載の発電プラント(1)。
【請求項14】
再循環のための変速煙道ガスブロワ(11)及び/又はCO2捕捉システム(18)が設けられており、再循環率の制御のための、CO2捕捉システム(18)に送られる煙道ガスのためのCO2捕捉システムへの変速変動ガスブロワ(10)が設けられている、請求項11から13までのいずれか1項記載の発電プラント(1)。
【請求項15】
圧縮機(3)の圧縮機入口ガス(3)及び/又は燃焼器(4,34)に酸素又は酸素富化空気を混合するための、空気分離ユニット又はメンブレンベースの酸素富化ユニットが設けられている、請求項11から14までのいずれか1項記載の発電プラント(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−247264(P2011−247264A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−117926(P2011−117926)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】