説明

煤センサ

【課題】放電部の煤を焼失させるようにヒータを設けてなる煤センサにおいて、放電部との関係でヒータを設ける位置に工夫を凝らし、放電部にて煤以外の導電性に寄与する粒子の影響を受けることなく放電するように構成する。
【解決手段】煤センサは、金具部材100、電気絶縁材料からなる筒部材200及びロッド部材300を備えている。筒部材200は、金具部材100の主体金具110内に同軸的に支持されている。ロッド部材300は、筒部材200内に嵌装されて、中心電極320にて、当該筒部材200の先端から延出している。ここで、中心電極320は、電極部321にて、金具部材100の外側電極120の電極部122に対向している。ヒータ400は、筒部材200の先端側部位630の外周面にその先端側にて貼着されている。ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と中心電極320の電極部321の先端部との間には、25(mm)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煤センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の煤センサとしては、下記特許文献1に開示されたスモーク検出装置に設けた検出部がある。このスモーク検出装置の検出部は、棒状の中心電極を、絶縁体を介してハウジング内に収納し、中心電極の先端を外部に露出させるとともに、ハウジングに接合した外側電極を、間隙を介して中心電極の先端の周囲に配設して、当該検出部の中心電極及び外側電極を排気ガス内に露出させた状態で、中心電極と外側電極との間に高電圧を印加したとき火花放電を発生させるようになっている。そして、排気ガス中の煤の量が多い程、火花放電発生時の電圧(放電電圧に相当)が大きく低下するという原理を利用して、放電電圧から排気ガス中の煤の存在や煤の量を検出する。
【0003】
上述のような構成の煤センサによると、煤が、絶縁体に付着して、煤の検出精度が低下する。また、このように付着した煤を除去するにあたっては、火花放電では不十分であり、当該煤をヒータで消失させることが望ましい。
【0004】
これに対しては、例えば、下記非特許文献1に記載のヒータを上記検出部に設ければ、このヒータでもって、中心電極や外側電極に付着した煤を消失させることが可能である。
【特許文献1】実開昭64−50355号公報
【非特許文献1】W.D.E. Allan, R.D. Freeman, G.R. Pucher, D. Faux and M.F. Bardon,「DEVELOPMENT OF A SMOKE SENSOR FOR DIESEL ENGINES, Royal Military College of Canada, D.P. Gardiner, Nexum Research Corporation, p.220, Powertrain & Fluid Systems Conference, October 27-30, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように検出部にヒータを設けると、煤が殆ど存在しない排気ガス中であっても放電電圧が低下してしまい、その状態から煤が含まれている排気ガスに中心電極及び外側電極を晒しても放電電圧が殆ど低下しない。このため、当該放電電圧から煤の存在や煤の量を検出することが著しく難しくなるという不具合を招く。
【0006】
この点について詳細に検討してみた。これによれば、煤はカーボン粒子である導電性粒子の集まりであることから、当該煤が、上述した放電電圧の低下を招く要因になると考えられる。
【0007】
一方、上述のように、煤が殆ど存在しない排気ガスであっても放電電圧が低下するということは、煤の他にも、この煤と実質的に同様の作用を発揮するイオン等の導電性に寄与する粒子が存在すると考えられる。
【0008】
このような観点から種々検討したところ、ヒータが検出部に設けられる位置を、中心電極と外側電極との間の放電領域との関係において適正に設定すれば、上述のような不具合の発生を防止し得ることが分かった。
【0009】
そこで、本発明は、以上のような観点に着目して、放電部の煤を焼失させるようにヒータを設けてなる煤センサにおいて、放電部との関係でヒータを設ける位置に工夫を凝らし、放電部にて煤以外の導電性に寄与する粒子の影響を受けることなく放電するように構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る煤センサは、請求項1の記載によれば、
電気的絶縁部材(200、600)と、
この電気的絶縁部材に支持されて放電部(322、332、333)を形成する放電電極(320、330)と、
発熱体(430、730、830)を内蔵して絶縁部材の外面に設けられるヒータ(400、700、800)とを備える。
【0011】
当該煤センサにおいて、発熱体と放電電極の上記放電部側の端部との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられていることを特徴とする。
【0012】
このように、発熱体と放電電極の上記放電部側の端部との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられている。このため、高電圧が放電電極に印加されたとき、当該高電圧がヒータの発熱体と放電電極との間にも印加され、放電が発熱体と放電電極との間で発生することで、イオン等の導電性に寄与する粒子が発生するが、当該導電性に寄与する粒子は、上記放電部までは移動し得ない。
【0013】
従って、煤が上記放電部に介在していてもいなくても、上記放電部の放電電圧が、上記導電性に寄与する粒子の影響を受けることがない。このことは、上記放電部の放電電圧は、煤によってのみ低下することを意味する。その結果、当該煤センサによれば、煤が、上記導電性に寄与する粒子に影響されることなく、精度よく検出され得る。
【0014】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の煤センサにおいて、
絶縁部材は、貫通孔部を有する円筒形状に形成されており、
放電電極は、絶縁部材の上記放電部側の端部から突出するように絶縁部材の上記貫通孔部内に支持されており、
絶縁部材の表面のうち、絶縁部材の上記放電部側の端部から発熱体の上記放電部側の縁部までの表面部位に沿う長さは、3(mm)以上12(mm)以下であることを特徴とする。
【0015】
このように、絶縁部材の表面のうち絶縁部材の上記放電部側の端部から発熱体の上記放電部側の縁部までの表面部位に沿う長さの下限値を3(mm)とすることで、発熱体が上記放電部に接近しすぎないように位置規制され得る。その結果、発熱体が放電電極と短絡し或いは放電を発生するという事態の発生が未然に防止され得る。特に、絶縁部材の表面をはって短絡或いは放電し易いことを考慮して、上記長さの下限値を特定した。また、上述のように、絶縁部材の表面のうち絶縁部材の上記放電部側の端部から発熱体の上記放電部側の縁部までの表面部位に沿う長さの上限値を12(mm)とすることで、煤が絶縁部材の上記放電部側に不適正に堆積することを未然に防止し得る。
【0016】
その結果、上述した発熱体の放電電極との短絡或いは放電の発生及び絶縁部材の上記放電部側における煤の不適正な堆積を未然に防止しつつ、請求項1に記載の発明の作用効果を達成し得る。
【0017】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1に記載の煤センサにおいて、
絶縁部材は、貫通孔部を有する円筒形状に形成されており、
放電電極は、絶縁部材の上記放電部側の端部から突出するように絶縁部材の上記貫通孔部内に支持されており、
絶縁部材は、少なくとも発熱体と放電電極との間の部位にて、0.7(mm)〜3(mm)の厚みを有することを特徴とする。
【0018】
このように、絶縁部材が発熱体と放電電極との間の部位にて0.7(mm)以上の厚みを有することで、当該絶縁部材のうち発熱体と放電電極との間の部位が、薄過ぎるために厚み方向に放電するということはない。また、絶縁部材が発熱体と放電電極との間の部位にて3(mm)以下の厚みを有することで、当該絶縁部材のうち発熱体と放電電極との間の部位が、厚過ぎて不適正に熱容量の増大を招くということもない。
【0019】
その結果、絶縁部材のうち発熱体と放電電極との間の部位の厚み方向への放電や熱容量の不適正な増大を防止しつつ、請求項1に記載の発明の作用効果を達成し得る。
【0020】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項2に記載の煤センサにおいて、
絶縁部材は、少なくとも発熱体と放電電極との間の部位にて、0.7(mm)〜3(mm)の厚みを有することを特徴とする。
【0021】
これによっても、請求項3に記載の発明と同様の作用効果が達成され得る。
【0022】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1〜4のいずれか1つに記載の煤センサにおいて、
絶縁部材に外方から嵌装される中空状の金具(110、510)を備えて、
絶縁部材の上記放電部側の端部は、金具内に位置することを特徴とする。
【0023】
このように、絶縁部材の上記放電部側の端部が金具内に位置することで、煤が金具の外側から絶縁部材の上記放電部側の端部にあたりにくくなる。その結果、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得る。
【0024】
また、本発明に係る煤センサは、請求項6の記載によれば、
中空状の金具(110、510)と、
この金具に嵌装されて貫通孔部を有する中空状の電気的絶縁部材(200、600)と、
当該電気的絶縁部材の先端部から少なくとも中心側電極部(321、331)を突出させるように絶縁部材に嵌装される中心電極(320、330)と、
中心電極の中心側電極部に対向して放電部(322、332、333)を構成する外側電極部(122、132、522)を有して、金具に支持される外側電極(120、130、520)と、
発熱体(430、730、830)を内蔵して絶縁部材の外面に設けられるヒータ(400、700、800)とを備える。
【0025】
当該煤センサにおいて、発熱体と中心電極の先端部との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられていることを特徴とする。
【0026】
このように、発熱体と中心電極の先端部との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられている。このため、高電圧が中心電極へ印加されたとき、当該高電圧が発熱体と中心電極との間にも印加され、放電が発熱体と中心電極との間で発生することで、イオン等の導電性に寄与する粒子が発生するが、当該導電性に寄与する粒子は、上記放電部までは移動し得ない。
【0027】
従って、煤が上記放電部に介在していてもいなくても、上記放電部の放電電圧が、上記導電性に寄与する粒子の影響を受けることがない。このことは、上記放電部の放電電圧は、煤によってのみ低下することを意味する。その結果、当該煤センサによれば、煤が、上記導電性に寄与する粒子に影響されることなく、精度よく検出され得る。
【0028】
また、本発明は、請求項7の記載によれば、請求項6に記載の煤センサにおいて、
絶縁部材の表面のうち、絶縁部材の先端部から当該先端部側の発熱体の縁部までの表面部位に沿う長さは、3(mm)以上12(mm)以下であることを特徴とする。
【0029】
このように、絶縁部材の表面のうち、絶縁部材の先端部から当該先端部側の発熱体の縁部までの表面部位に沿う長さの下限値を3(mm)とすることで、発熱体が中心電極の先端部に近づきすぎないように位置規制し得る。よって、中心電極から発熱体への放電の移行が未然に防止され得る。特に、絶縁部材の表面をはって短絡或いは放電し易いことを考慮して、上記長さの下限値を上述のように特定した。
【0030】
また、上述のように、絶縁部材の表面のうち、絶縁部材の先端部から当該先端部側の発熱体の縁部までの表面部位に沿う長さの上限値を12(mm)とすることで、絶縁部材の先端部側における煤の不適正な堆積が未然に防止され得る。
【0031】
その結果、上述した発熱体の中心電極との短絡或いは放電の発生及び絶縁部材の先端部側における煤の不適正な堆積を未然に防止しつつ、請求項6に記載の発明の作用効果を達成し得る。
【0032】
また、本発明は、請求項8の記載によれば、請求項6または7に記載の煤センサにおいて、
絶縁部材は、少なくとも発熱体と中心電極との間の軸方向部位にて、0.7(mm)〜3(mm)の厚みを有することを特徴とする。
【0033】
このように、絶縁部材のうち少なくとも発熱体と中心電極との間の軸方向部位が、0.7(mm)以上の厚みを有するので、上述した発熱体と中心電極との間の軸方向部位が、薄過ぎるために、その厚み方向に放電するということはない。
【0034】
また、絶縁部材のうち少なくとも発熱体と中心電極との間の軸方向部位が3(mm)以下の厚みを有するので、上述した発熱体と中心電極との間の軸方向部位が、厚過ぎて不適正に熱容量の増大を招くということもない。
【0035】
その結果、絶縁部材のうち発熱体と中心電極との間の軸方向部位の放電や熱容量の不適正な増大を防止しつつ、請求項6または7に記載の発明の作用効果を達成し得る。
【0036】
また、本発明は、請求項9の記載によれば、請求項6〜8のいずれか1つに記載の煤センサにおいて、絶縁部材の先端部は、金具内に位置することを特徴とする。
【0037】
これにより、煤が金具の外側からその内部に回り込みにくくなり、その結果、当該煤が絶縁部材の先端部に当たりにくくなる。このことは、請求項6〜8のいずれか1つに記載の発明の作用効果がより一層向上され得ることを意味する。
【0038】
また、本発明は、請求項10の記載によれば、請求項6〜9のいずれか1つに記載の煤センサにおいて、
中心電極及びヒータが、金具を共通アースとすることを特徴とする。
【0039】
これにより、中心電極及びヒータのためのアースが、別々に設けることなく、1つで済み、その結果、請求項6〜9のいずれか1つに記載の発明の作用効果を達成するにあたり、当該煤センサのアース構造がより一層簡単になる。
【0040】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形状に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明に係るスパークプラグ型煤センサの第1実施形態を示している。この煤センサは、金具部材100、筒部材200及びロッド部材300を備えている。
【0042】
金具部材100は、円筒状の主体金具110及びL字板状の外側電極120を備えている。主体金具110は、基端側金具部111、先端側金具部112及び基端側金具部111と先端側金具部112とをつなぐ鍔部114を有しており、これら基端側金具部111、先端側金具部112及び鍔部114は、軟鋼材料でもって、図1にて示すごとく、一体的にかつ同軸円筒状に形成されている。
【0043】
先端側金具部112は、基端側金具部111よりも小さな内径を有している。また、鍔部114の内周面は、基端側金具部111の内周面に向け末広がり状に傾斜して形成されて環状の傾斜面部113を構成している。
【0044】
外側電極120は、連結部121及び電極部122を有しており、連結部121は、その基端部にて、先端側金具部112の先端開口部115の一部に一体的に連結されて、この先端開口部115の一部から先端側金具部112の軸に平行に延出している。
【0045】
電極部122は、連結部121の延出端部から主体金具110の軸心側へL字状に屈曲するように延出しており、当該電極部122は、先端側金具部112の先端開口部115に対向している。なお、本第1実施形態では、外側電極120は、負極として用いられる。また、当該外側電極120の形成材料としては、ニッケル合金、イリジウム、白金、タングステン、SUS鋼等のスパークプラグに用いられる材料が採用されている。
【0046】
筒部材200は、基端側部位210、中間側部位220及び先端側部位230を有しており、これら基端側部位210、中間側部位220及び先端側部位230は、セラミック等の電気絶縁材料でもって、図1にて示すごとく、一体的にかつ同軸円筒状に形成されている。
【0047】
中間側部位220は、基端側部位210と先端側部位230との間にてこれら基端側部位210及び先端側部位230よりも大きな外径を有するように形成されている。このため、中間側部位220の外周面は、その軸方向両端部にて、それぞれ、基端側部位210の外周面及び先端側部位230の大径部231(後述する)の外周面に向けて末すぼまり状に傾斜して形成されて両傾斜面部221、222を構成している。
【0048】
先端側部位230は、図1にて示すごとく、互いに同軸的にかつ一体的に形成した大径部231及び小径部232でもって構成されており、大径部231は、中間側部位220から基端側部位210とは逆方向に向け同軸的に延出している。小径部232は、大径部231から中間側部位220とは逆方向に向け延出している。なお、本実施形態において、小径部232は、その断面形状にて、大径部231側の端部から先端部にかけて僅かに末すぼまり状に傾斜するように形成されている。
【0049】
しかして、以上のように構成した筒部材200においては、先端側部位230が主体金具110の先端側金具部112に挿通されている。また、中間側部位220は、主体金具110の基端側金具部111内に嵌装されて、傾斜面部222にて、先端側金具部112の傾斜面部113上に金属製環状カラー116を介し着座している。これにより、筒部材200は金具部材100内に同軸的に支持されている。ここで、筒部材200は、その大径部231にて、金具部材100の先端側金具部112に嵌合されている。なお、主体金具110は、基端側金具部111の開口部117にて、カシメにより筒部材200の中間側部位220の傾斜面部221に締着されている。
【0050】
ロッド部材300は、ロッド状導通部材310にロッド状中心電極320を同軸的に連結してなるもので、このロッド部材300は、筒部材200内にその基端側部位210から挿通されている。これにより、当該ロッド部材300は、導通部材310の基端部311にて、筒部材200の基端側部位210に着座することで、筒部材200内に同軸的に支持されている。なお、導通部材310は、その基端部311にて、中心電極320を高電圧回路(図示しない)に接続する電気的接続端部を構成する。
【0051】
当該ロッド部材300の中心電極320は、筒部材200の先端側部位230から外側電極120の電極部122に向け延出している。この中心電極320は、図1にて示すごとく、円錐形状の先端部を電極部321として有しており、当該電極部321は、所定の放電間隙(例えば、0.5(mm))をおいて、外側電極120の電極部122に対向している。本第1実施形態では、このように両電極部122、321が上記放電間隙を介し対向することで、当該煤センサにおいて放電を発生する放電部322を構成する。
【0052】
なお、中心電極320の電極部321以外の部位と外側電極120の連結部121との間の間隔は、両電極部122、321の間の放電を確保するため、上記所定の放電間隙よりも広くなっている。また、電極部321の頂角は、例えば、60(度)となっている。また、当該中心電極320のうち電極部321以外の部位の外径は、例えば、2(mm)となっている。また、中心電極320は、正極として用いられる。
【0053】
しかして、当該煤センサにおいて、所定の高電圧が上記高電圧回路から外側電極120及び中心電極320の間に印加されたとき、外側電極120及び中心電極320は、互いに対向する両電極部122、321間(いわゆる放電部322)にて放電する。このとき、両電極部122、321間にかかる電圧が放電時の電圧(以下、放電電圧ともいう)として検出される。当該放電電圧は、両電極部122、321間に煤が存在するとき低下する。
【0054】
本第1実施形態では、上記所定の高電圧は、上述の放電間隙を前提に両電極部122、321の間の空気を絶縁破壊して当該両電極部122、321間に放電を発生させる電圧、例えば、10(kV)に設定されている。
【0055】
当該煤センサは、図1にて示すごとく、ヒータ400を備えており、このヒータ400は、筒部材200の先端側部位230の小径部232の全周に亘りその先端側にて貼着されている。
【0056】
当該ヒータ400は、放電部322を加熱して両電極部122、321のヒートクリーニングを行って、当該両電極部122、321の煤による短絡を防止する役割を果たすもので、このヒータ400は、図2にて示すごとく、2枚のアルミナシート410、420及び発熱体430を備えている。
【0057】
発熱体430は、帯状の外側発熱抵抗部431、帯状の内側発熱抵抗部432及び正負両側電極パッド433、434を有しており、各発熱抵抗部431、432は、各電極パッド433、434とともに、白金ペーストを、アルミナシート410の内面に、図2にて示すような各所定のパターンでもって印刷焼成することで、形成されている。
【0058】
本第1実施形態において、外側発熱抵抗部431の上記所定のパターンは、図2にて示すごとく、四角状パターンの上縁のパターン部を中間部位にて切り欠いて構成されている。また、内側発熱抵抗部432は、発熱抵抗部431の内側に位置しており、この発熱抵抗部432の上記所定のパターンは、図2にて示すごとく、四角状パターンの上縁のパターン部を中間部位にて切り欠くとともに当該パターン部の対向部位を上方へかつ逆方向にL字状に延出させて構成されている。
【0059】
また、正側電極パッド433は、両発熱抵抗部431、432の各一側端部に接続されて、ヒータ400の正側接続端子としての役割を果たす。一方、負側電極パッド434は、両発熱抵抗部431、432の各他側端部に接続されて、ヒータ400の負側接続端子としての役割を果たす。
【0060】
アルミナシート420は、その内面にて、発熱体430を介し、アルミナシート410の内面に圧着されている。このアルミナシート420は、両貫通孔部421、422を有しており、貫通孔部421は、正側電極パッド433の中央部に対応して位置し、一方、貫通孔部422は、負側電極パッド434の中央部に対応して位置している。
【0061】
このように構成したヒータ400においては、煤が、筒部材200に、当該両電極部122、321間の適正な放電を妨げる程度に堆積したときに、発熱体430がヒータ駆動回路(図示しない)からのヒータ電圧(例えば、15(V))を印加されて発熱し上記ヒートクリーニングを行う。なお、このヒートクリーニングは、上記高電圧回路から両電極部122、321への上記高電圧の印加を停止した状態でなされる。
【0062】
本第1実施形態において、上述のように構成したヒータ400の筒部材200の小径部232に対する貼着位置は、発熱抵抗部431の下縁部435(発熱体430の下縁部435)と筒部材200の先端側部位230の先端との間に、先端側部位230の表面に沿い、所定の表面長さ(例えば、3(mm))を設けるように、選定されている。
【0063】
このように所定の表面長さ(3(mm))を選定したのは、次のような根拠に基づく。ヒータ400の位置が筒部材200の先端に接近しすぎると、ヒータ400が中心電極320のうち筒部材200の先端部の近傍部位との間で短絡し或いは放電を発生してしまう。これを防止するため、上述のように発熱抵抗部431の下縁435(図2参照)と筒部材200の先端側部位230の先端との間に所定の表面長さ(3(mm))を設けるように、ヒータ400の貼着位置が選定されている。
【0064】
但し、ヒータ400の位置が筒部材200の先端から遠すぎると、筒部材200の先端部側において不適正な煤の堆積が発生し易い。従って、上記所定の表面長さは12(mm)以下であることが望ましい。
【0065】
また、当該煤センサは、図1にて示すごとく、ヒータ400のための正負両側リード440、450及びこれら正負両側リード440、450のためのガラス膜460を有している。
【0066】
正側リード440は、軸方向リード部441及び周方向リード部442を有している。軸方向リード部441は、筒部材200の外周面の所定の軸方向部位(図1参照)に沿い設けられており、この軸方向リード部441は、その先端部443にてヒータ400の電極パッド433上に設けられて、当該先端部443から筒部材200の上記所定の軸方向部位に沿い延在し主体金具110の外側へ延出している。
【0067】
また、周方向リード部442は、主体金具110の外側にて、筒部材200の基端側部位210の外周面のうち中間側部位220の近傍部位に沿いその全周に亘り設けられている。
【0068】
負側リード450は、ガラス膜460を介し筒部材200の外周面に設けられており、この負側リード450は、軸方向リード部451及び周方向リード部452を有している。
【0069】
軸方向リード部451は、その先端部453にて、ヒータ400の電極パッド434上に設けられて、当該先端部453から筒部材200の先端側部位230の外周面のうち他の所定の軸方向部位(図1参照)に沿い延在している。
【0070】
周方向リード部452は、筒部材200の中間側部位220の傾斜面部222に沿いその周方向に沿い、後述するごとく、ガラス膜460により、軸方向リード部441とは分離して設けられている。
【0071】
ガラス膜460は、負側リード450の裏面側を通りかつ軸方向リード部441(先端部443を除く)を被覆するようにして、筒部材200の外周面のうち先端側部位230のヒータ400の上縁に対する対応部位から中間側部位220を介し基端側部位210の中間側部位220側部位にかけて全周に亘り設けられている。
【0072】
上述のように構成した正側リード440、負側リード450及びガラス膜460は、次のようにして形成されている。
【0073】
まず、白金ペーストを、アルミナシート420の各貫通孔部421、422を介し各電極パッド433、434の中央部上に塗布して焼成し、各ビアホール423、424を形成する(図2参照)。
【0074】
ついで、白金ペーストを、筒部材200の外周面の上記所定の軸方向部位に沿い帯状に塗布するとともに、筒部材200の基端側部位210の外周面の上記軸方向中間部位に沿い帯状に塗布する(図1参照)。さらに、白金ペーストを、ビアホール424上にも塗布する。
【0075】
ここで、上記所定の軸方向部位に沿う白金ペーストの塗布は、アルミナシート420のビアホール423から筒部材200の先端側部位230、中間側部位220、及び基端側部位210のうち中間側部位220の近傍部位にかけてなされる。これにより、軸方向リード部441用軸方向白金ペースト膜が形成される。
【0076】
また、上記軸方向中間部位に沿う白金ペーストの塗布は、軸方向リード部441用軸方向白金ペースト膜の塗布端部から基端側部位210の外周面に沿いその全周に亘りなされる。これにより、周方向リード部442用周方向白金ペースト膜が、軸方向リード部441用軸方向白金ペースト膜との接続のもとに形成される。
【0077】
また、ビアホール424に対する白金ペーストの塗布でもって、負側リード450の軸方向リード部451の先端部453用白金ペースト膜が形成される。
【0078】
しかして、上述の軸方向リード部441用軸方向白金ペースト膜、周方向リード部442用周方向白金ペースト膜及び軸方向リード部451の先端部453用白金ペースト膜を焼成することで、軸方向リード部441がその先端部443とともに形成され、周方向リード部442が形成され、軸方向リード部451の先端部453が形成される。
【0079】
上述のように形成した正側リード440によれば、周方向リード部442が、主体金具110の外側に位置して、軸方向リード部441及びビアホール423を介しヒータ400の電極パッド433に電気的に接続されている。
【0080】
上述のように正側リード440及び軸方向リード部451の先端部453を形成した後、ガラスペーストを、軸方向リード部441(先端部443を除く)を被覆するようにして、筒部材200の外周面のうち基端側部位210のヒータ400の上縁に対応する部位から中間側部位220を介し先端側部位230の中間側部位220側部位にかけて全周に亘り塗布して、ガラスペースト膜を形成して焼成する。なお、軸方向リード部451の先端部453はガラスペースト膜には覆われていない。
【0081】
これにより、ガラスペースト膜が、軸方向リード部441(先端部443を除く)を被覆するガラス膜460として形成される。このように形成したガラス膜460は、筒部材200及び軸方向リード部441を主体金具110から電気的に絶縁する役割を果たす。なお、軸方向リード部441の先端部443は、ガラス膜460から延出することになるが、主体金具110の先端側金具部112の内周面と筒部材200の先端側部位230の外周面との間には空間領域が環状に形成されているので、先端部443が主体金具110の先端側金具部112から電気的に絶縁されている。
【0082】
このようにガラス膜460を形成した後、ガラスとの密着性の良好な金ペーストを、アルミナシート420のビアホール424上に形成した先端部453(白金からなる)からガラス膜460上にて上記他の所定の軸方向部位に沿い塗布して、軸方向リード部451用軸方向金ペースト膜及び周方向リード部452用周方向金ペースト膜を形成する。
【0083】
しかして、上述の軸方向リード部451用軸方向金ペースト膜及び周方向リード部452用周方向金ペースト膜を焼成することで、負側軸方向リード部451及び負側周方向リード部452が形成されている。なお、先端部453は軸方向リード部451の先端部としての役割を果たす。
【0084】
このように形成した負側リード450によれば、ヒータ400の電極パッド434が、ビアホール424、軸方向リード部451、周方向リード部452及び環状カラー116を介し主体金具110の傾斜面部113に電気的に接続されている。
【0085】
なお、負側リード450はガラス膜460上に形成されているので、当該負側リード450は、ガラス膜460により、正側リード440と電気的に絶縁されている。
【0086】
次に、当該煤センサが、煤以外の導電性に寄与する粒子の影響を受けることなく放電するに要する構成について説明する。
【0087】
当該構成は、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と、中心電極320の電極部321の先端部(放電部322の上端部)との間に、所定の距離(例えば、25(mm))を、設定することである。このように設定する根拠は次の通りである。
【0088】
当該根拠の説明にあたり、煤センサとして、例えば、上記所定の距離を6(mm)とした煤センサを仮定する。なお、このように仮定した煤センサのその他の構成は、本第1実施形態にいう煤センサと同様であるものとする。
【0089】
上述のように仮定した煤センサは、本第1実施形態にいう煤センサと同様に、両電極部122、321間に存在する煤による当該両電極部122、321間の放電電圧の低下を利用して検出する。
【0090】
しかし、このような煤センサによれば、煤が殆ど存在しない雰囲気中であっても放電電圧が低下してしまい、その状態から煤が含まれている雰囲気に中心電極及び外側電極を晒しても放電電圧が殆ど低下しない。このため、当該放電電圧から煤の存在や煤の量を検出することが著しく難しくなるという現象を招く。
【0091】
この現象について詳細に検討してみた。上記所定の高電圧が、上述のように仮定した煤センサの外側電極120と中心電極320との間に印加されると、これら外側電極120と中心電極320との間に生ずる電圧は、数10(μ秒)の間に上記高電圧に向けて上昇する。この上昇の過程において、放電部322の雰囲気中の空気が絶縁破壊して放電する。このような放電は、主として、タウンゼント放電、コロナ放電及び火花放電へと遷移する。
【0092】
ここで、上述のように仮定した煤センサでは、ヒータ400が、外側電極120と同様に、主体金具110に接続されている。また、ヒータ400の発熱体430の抵抗値は、数Ω程度である。このため、ヒータ400は実質的に主体金具110と同電位(アース電位)にあると考えられる。
【0093】
従って、上記所定の高電圧が外側電極120(主体金具110)と中心電極320との間に印加されたとき、当該所定の高電圧は、ヒータ400(主体金具110)と中心電極320との間にも、筒部材200及びこの筒部材200と中心電極320との間の空間を介しかかることとなる。このため、放電が筒部材200の先端側部位230と中心電極320との間に発生すると推測される。
【0094】
このような放電が、例えば、コロナ放電になると、このコロナ放電が、筒部材200の先端側部位230の周壁を介し、ヒータ400の発熱体430と中心電極320との間に作用する。このため、筒部材200の先端側部位230と中心電極320との間に存在するガスが電離してイオンを発生すると推測される。
【0095】
そして、上述のように発生したイオンは、筒部材200の先端側部位230の内部から中心電極320の電極部321側に向けて移動して、煤と同様に、電気的には、両電極部321、122の間における導電性に寄与する粒子として作用すると推測される。
【0096】
このことは、両電極部321、122の間の雰囲気が煤ではなく上記イオンを含んでいても、当該雰囲気が煤を含んでいるのと同様の放電現象を誘起することを意味する。換言すれば、煤が存在せず、上記イオンの存在によっても、煤が存在するとして誤って検出される。その結果、煤の有無による放電電圧の差がなくなり、煤の検出精度が低下する。
【0097】
これに対し、電極部321が、その先端部にて、上記イオンの移動可能範囲外にあれば、当該雰囲気が上記イオンを含む状態にはならず、煤の検出精度を適正に確保し得ると推測される。
【0098】
ちなみに、本第1実施形態の煤センサの煤感度と上記所定の距離との関係を、比較例の煤センサとの対比において測定してみたところ、図3にて示すようなグラフが得られた。但し、本第1実施形態の煤センサ(上記所定の距離=25(mm))に加え、上記所定の距離を、10(mm)、16(mm)、22(mm)、30(mm)、35(mm)及び200(mm)とする構成以外の構成を本第1実施形態の煤センサと同一とする各煤センサをも準備した。また、上記比較例の煤センサとしては、上述のように仮定した煤センサ(上記所定の距離=6(mm))が採用される。
【0099】
また、当該測定には、ドイツのPALAS社製GFG−1000型煤発生器(煤発生量:3(mg/m3))を利用した。また、測定回路は、上記高電圧回路からの高電圧を中心電極と外側電極との間に印加し、中心電極と外側電極との間に発生する放電電圧をオッシロスコープで測定する構成とした。なお、煤センサ毎に、当該測定を100回行い、その各測定結果の平均値でもって煤感度を求めた。
【0100】
また、上記煤感度は、両電極部122、321間に煤が存在しないときに当該両電極部122、321間に生ずる放電電圧と、両電極部122、321間に煤が存在するときに当該両電極部122、321間に生ずる放電電圧との差で定義される。
【0101】
しかして、上記グラフによれば、上記比較例の煤センサ(上記所定の距離=6(mm))の煤感度は零(V)であることが分かる。これは、上述の推測によるイオンの大きな影響に起因するものと考えられる。
【0102】
また、上記所定の距離が、10(mm)、16(mm)及び22(mm)である各煤センサにおいては、煤感度は、それぞれ、1200(V)、2200(V)及び約2900(V)と順次上昇していることが分かる。これは、上述の推測によるイオンの影響によると考えられるが、このイオンの影響度合いは、上記所定の距離の長い程減少するものと考えられる。
【0103】
また、上記所定の距離が、30(mm)、35(mm)及び200(mm)である各煤センサにおいては、煤の感度が、上記所定の距離を22(mm)とする煤センサの場合と同様に、約2900(V)と一定になっていることが分かる。これは、上述の推測によるイオンの影響を受けていないことによるものと考えられる。
【0104】
以上の検討結果によれば、上記所定の距離が、10(mm)以上200(mm)以下の範囲にあれば、上述のイオンが放電部332には移動し得ない範囲にあるものとして、実質的に適正な煤感度を発揮し得る煤センサとして成立し得ることが分かった。
【0105】
ここで、上記所定の距離を10(mm)以上としたのは、10(mm)未満では、上述のイオンが放電部332まで移動するため、イオンによる煤検出精度の低下を招くからである。また、上記所定の距離を200(mm)以下としたのは、200(mm)よりも長いと、当該煤センサの自動車のエンジンの排気管への設置が困難となるからである。
【0106】
以上のようなことを考慮して、本第1実施形態では、上述のごとく、上記所定の距離が、25(mm)として、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と、中心電極320の電極部321の先端部(放電部322の上端部)との間に設定されている。
【0107】
このような設定によれば、上述のイオンが放電部322には移動し得ない範囲を充足するのは勿論のこと、上記イオンの影響を受けることなく煤の良好な検出が可能となり、エンジンの排気管への良好な設置も容易なためである。
【0108】
以上のように構成した本第1実施形態において、当該煤センサが、放電部322にて、自動車用ディーゼルエンジンの排気管内に露呈するように、当該排気管に取り付けられているものとする。
【0109】
但し、当該煤センサは、ロッド部材300の基端部311及び金具部材100の主体金具110(アース)にて、それぞれ、上記高電圧回路の正側出力端子及び負側出力端子に接続されているものとする。また、当該煤センサは、正側リード440の周方向リード部442及び金具部材100の主体金具110(アース)にて、それぞれ、ヒータ駆動回路(図示しない)の正側出力端子及び負側出力端子に接続されているものとする。
【0110】
このような状態にて、上記ディーゼルエンジンが作動すると、当該煤センサの放電部322が上記ディーゼルエンジンの排気管内に排出される排気ガス(上記雰囲気に対応)中に晒される。
【0111】
然る後、上記高電圧回路が上記高電圧を発生すると、この高電圧がロッド部材300の基端部311と主体金具110との間に印加される。このことは、当該高電圧が、外側電極120を負極として、中心電極320に印加されることを意味する。
【0112】
現段階において、上記排気管内に流れる排気ガスが煤を含まなければ、外側電極120の電極部122及び中心電極320の電極部321の間の空気(放電部322の空気)が上記高電圧により絶縁破壊される。これに伴い、放電が両電極部122、321の間に発生する。
【0113】
一方、上記排気管内に流れる排気ガスが煤を含むと、外側電極120の電極部122及び中心電極320の電極部321の間の空気が煤を含んだ状態で絶縁破壊される。これに伴い、放電が両電極部122、321の間に発生するが、このときの放電電圧は、上述した煤を含まない排気ガスのみの絶縁破壊に起因する放電電圧に比べて、煤の濃度分だけ低下する。
【0114】
従って、このように低下した放電電圧を検出すれば、上記煤の検出或いは当該煤の濃度の検出が可能となる。
【0115】
ここで、上述したごとく、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と中心電極320の電極部321の先端部との間には、上記所定の距離である25(mm)が設定されている。
【0116】
このため、外側電極120と中心電極320との間に印加された高電圧が、主体金具110と実質的に同電位(アース電位)にあるヒータ400と中心電極320との間にかかることで、放電が筒部材200の先端側部位230と中心電極320との間に発生して筒部材200の先端側部位230内にイオンが発生しても、当該イオンは、放電部322までは移動し得ず、この放電部322の排気ガスには混入し得ない。
【0117】
従って、放電部322の排気ガスが煤を含んでいてもいなくても、両電極部122、321の間の放電電圧が、上記イオンの影響を受けることがない。このことは、両電極部122、321の間の放電電圧は、煤によってのみ低下することを意味する。その結果、当該煤センサによれば、煤が、上記イオンに影響されることなく、精度よく検出され得る。
【0118】
このように精度よく検出し得るので、当該煤センサの検出出力を利用すれば、例えば、ディーゼルエンジンの燃料噴射制御が精度よく行え、さらには、ディーゼル・パティキュレート・フィルタ(いわゆるDPF)の劣化検知をも適正に行える。また、当該煤センサの検出出力である煤の濃度の積算結果を利用すれば、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質を捕集したDPFの適正な再生時期の予測を行うことができる。
【0119】
また、上述のごとく、外側電極120及びヒータ400は、共に、主体金具110を共通アースとして利用しているので、外側電極120及びヒータ400のアースが、当該煤センサにおいて、別々に設けることなく、1つで済む。このため、当該煤センサのアース構造がより一層簡単になる。
【0120】
また、上述した構成から分かるとおり、当該煤センサの形状としては、スパークプラグの形状が採用されている。従って、当該煤センサのうち放電部322以外の部位の電気的絶縁性及び中心電極320の耐摩耗性が良好に確保され得る。
【0121】
また、当該煤センサによる検出過程において、一定期間が経過すると、筒部材200には、煤が不適正に堆積する傾向にある。このため、上記一定期間の経過後において、ヒータ電圧が上記ヒータ駆動回路から金具部材100と正側リード440の周方向リード部442との間に印加される。
【0122】
すると、当該ヒータ電圧は、ヒータ400の両発熱抵抗部431、432の各両端子間に印加される。これに伴い、ヒータ400は、両発熱抵抗部431、432にて発熱して筒部材200を加熱する。
【0123】
これにより、筒部材200に堆積した煤がヒータ400により焼き切られる。その結果、当該煤センサは、煤の堆積による両電極部122、321の短絡を適正に防止しつつ、煤を良好にかつ安定的に検出し得る。
【0124】
また、本第1実施形態においては、上述のごとく、上記所定の表面長さが3(mm)以上12(mm)以下に設定されている。従って、ヒータ400の発熱体430の中心電極320との短絡或いは放電の発生及び筒部材200の先端部側における煤の不適正な堆積を未然に防止しつつ、上述した種々の作用効果を達成し得る。
(第2実施形態)
図4は、本発明に係るスパークプラグ型煤センサの第2実施形態を示している。この第2実施形態の煤センサは、上記第1実施形態の煤センサにおいて、金具部材100が、外側電極120に代えて、L字板状外側電極130を備え、かつ、ロッド部材300が、中心電極320に代えて、ロッド状中心電極330を備える構成となっている。
【0125】
外側電極130は、連結部131及び電極部132を有しており、連結部131は、その基端部にて、上記第1実施形態にて述べた先端側金具部112の先端開口部115の一部に一体的に連結されて、この先端開口部115の一部から先端側金具部112の軸に平行に延出している。
【0126】
電極部132は、連結部131の延出端部から主体金具110の軸心側へL字状に屈曲するように延出しており、当該電極部132は、先端側金具部112の先端開口部115に対向している。なお、外側電極130は、上記第1実施形態にて述べた外側電極120と同様に、負極として用いられ、また、ニッケル合金で形成されている。
【0127】
中心電極330は、上記第1実施形態にて述べた導通部材310に同軸的に連結されて、筒部材200の先端側部位230から外側電極130の電極部132に向け延出している。この中心電極330は、図4にて示すごとく、円錐形状の先端部を電極部331として有しており、当該電極部331は、上記第1実施形態にて述べた所定の放電間隙をおいて、外側電極130の電極部132に対向している。
【0128】
但し、本第2実施形態では、中心電極330の筒部材200の先端側部位230からの延出長さは、従来の煤センサと同様に、例えば、3(mm)となっている。なお、中心電極330は、上記第1実施形態にて述べた中心電極320と同様に、正極として用いられる。また、両電極部132、331が上記放電間隙を介し対向することで、当該煤センサにおいて放電を発生する放電部332を構成する。
【0129】
また、本第2実施形態では、上記第1実施形態にて述べたヒータ400は、図4で示すごとく、筒部材200の先端側部位230の小径部232の全周に亘りその基端側にて貼着されている。具体的には、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と中心電極330の先端部との間の距離が、上記第1実施形態にて述べた所定の距離(25(mm))となるように、ヒータ400が筒部材200の先端側部位230の小径部232に貼着されている。
【0130】
また、正側リード440の軸方向リード部441及び負側リード450の軸方向リード部451が、図4にて示すごとく、上述したヒータ400の貼着位置にあわせて、上記第1実施形態とは異なり短くなっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0131】
このように構成した本第2実施形態において、上記第1実施形態と実質的に同様に、当該煤センサの放電部332がディーゼルエンジンの排気管内に排出される排気ガス中に晒されるとともに、上記高電圧回路の高電圧が、外側電極130を負極として、中心電極330に印加されると、両電極部132、331の間に放電が発生する。
【0132】
この放電時の放電電圧は、上記第1実施形態にて述べたと同様に、両電極部132、331の間に存在する煤の濃度分だけ、煤のない場合に比べて低下する。従って、このように低下した放電電圧を検出すれば、上記煤の検出或いは当該煤の濃度の検出が可能となる。
【0133】
ここで、上述の通り、中心電極330は、筒部材200の先端側部位230から3(mm)しか延出していないが、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と中心電極330の電極部331の先端部との間の距離が、上記第1実施形態と同様に25(mm)に設定されている。
【0134】
このため、外側電極130と中心電極330との間に印加された高電圧が、主体金具110と実質的に同電位(アース電位)にあるヒータ400と中心電極330との間にかかることで、放電が筒部材200の先端側部位230と中心電極330との間に発生して上述と同様にイオンを発生しても、当該イオンは、放電部332までは移動し得ず、この放電部332の排気ガスには混入し得ない。
【0135】
従って、放電部332の排気ガスが煤を含んでいてもいなくても、両電極部132、331の間の放電電圧が、上記イオンの影響を受けることがない。このことは、両電極部132、331の間の放電電圧は、煤によってのみ低下することを意味する。その結果、当該煤センサによれば、煤が、上記イオンに影響されることなく、精度よく検出され得る。
【0136】
また、ヒータ400は、上記第1実施形態と同様に、筒部材200に堆積する煤を良好に焼き切ることができる。その他の作用効果は上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図5は、本発明に係るスパークプラグ型煤センサの第3実施形態を示している。この第3実施形態の煤センサは、上記第2実施形態の煤センサにおいて、金具部材100、筒部材200、ヒータ400、正負両側リード440、450及びガラス膜460に代えて、金具部材500、筒部材600、ヒータ700、正負両側リード740、750及びガラス膜760を採用した構成を有する。
【0137】
金具部材500は、円筒状主体金具510及びL字板状外側電極520を備えている。円筒状主体金具510は、上記第2実施形態(図4参照)にて述べた主体金具110の基端側金具部111及び先端側金具部112に対応する基端側金具部511及び先端側金具部512でもって、軟鋼材料を用いて、図5にて示すごとく、一体的にかつ同軸円筒状に形成されている。
【0138】
先端側金具部512は、基端側金具部511よりも小さな内径を有しており、この先端側金具部512の内周面は、その軸方向一端側部位にて、基端側金具部511の内周面に向け末広がり状に傾斜して形成されて環状の傾斜面部513を構成している。なお、図5にて、符号514は、主体金具510の鍔部を示す。
【0139】
外側電極520は、連結部521及び電極部522を有しており、連結部521は、その基端部にて、先端側金具部512の先端開口部515の一部に一体的に連結されて、この先端開口部515の一部から先端側金具部512の軸に平行に延出している。
【0140】
電極部522は、連結部521の延出端部から主体金具510の軸心側へL字状に屈曲するように延出しており、当該電極部522は、先端側金具部512の先端開口部515に対向している。このように、両電極部522、331が上記放電間隙を介し対向することで、当該煤センサにおいて放電を発生する放電部333を構成する。なお、外側電極520は、上記第2実施形態にて述べた外側電極120と同様に、負極として用いられ、また、ニッケル合金でもって形成されている。
【0141】
筒部材600は、上記第2実施形態にて述べた筒部材200の基端側部位210、中間側部位220及び先端側部位230に対応する基端側部位610、中間側部位620及び先端側部位630でもって、セラミック等の電気絶縁材料を用いて、図5にて示すごとく、一体的にかつ同軸円筒状に形成されている。
【0142】
中間側部位620は、基端側部位610と先端側部位630との間にてこれら基端側部位610及び先端側部位630よりも大きな外径を有するように形成されている。このため、中間側部位620の外周面は、その軸方向両端部にて、それぞれ、基端側部位610の外周面及び先端側部位630の大径部631(後述する)の外周面に向けて末すぼまり状に傾斜して形成されて両傾斜面部621、622を構成している。
【0143】
先端側部位630は、上記第2実施形態にて述べた筒部材200の先端側部位230の大径部231及び小径部232に対応する大径部631及び小径部632でもって、図5にて示すごとく、互いに同軸的にかつ一体的に形成されている。
【0144】
大径部631は、中間側部位620から基端側部位610とは逆方向に向け同軸的に延出している。小径部632は、大径部631から中間側部位620とは逆方向に向け延出しており、この小径部632の半径は、上記第2実施形態にて述べた所定の距離に等しい所定の半径(25(mm))に設定されている。
【0145】
しかして、以上のように構成した筒部材600においては、先端側部位630が主体金具510の先端側金具部512に挿通されている。また、中間側部位620は、主体金具510の基端側金具部511内に嵌装されて、傾斜面部622にて、先端側金具部612の傾斜面部513上に金属製環状カラー516を介し着座している。これにより、筒部材600は金具部材500内に同軸的に支持されている。ここで、筒部材600は、その先端側部位630の大径部631にて、金具部材500の先端側金具部512に嵌合されている。なお、主体金具510は、基端側金具部511の開口部517にて、カシメにより筒部材600の中間側部位620の傾斜面部621に締着されている。
【0146】
本第3実施形態においては、上記第2実施形態にて述べたロッド部材300が、筒部材600内にその基端側部位610から挿通されている。これにより、当該ロッド部材300は、導通部材310の基端部311にて、筒部材600の基端側部位610に着座することで、筒部材600内に同軸的に支持されている。
【0147】
当該ロッド部材300の中心電極330は、筒部材600の先端側部位630から外側電極520の電極部522に向け延出しており、この中心電極330は、電極部331にて、上記所定の放電間隙をおいて、外側電極520の電極部522に対向している。なお、中心電極330の筒部材600の先端側部位630からの延出長さは、上記第2実施形態と同様に、例えば、3(mm)となっている。
【0148】
ヒータ700は、図5にて示すごとく、筒部材600の先端側部位630の小径部632の全周に亘りその先端側にて貼着されている。このことは、ヒータ700の発熱体730(後述する)と中心電極330の軸心との間の径方向に沿う距離が、上記所定の半径(25(mm))と設定されていることを意味する。
【0149】
このヒータ700は、上記第2実施形態にて述べたヒータ400の2枚のアルミナシート410、420及び発熱体430に対応する2枚のアルミナシート710、720及び発熱体730を備えている(図5参照)。
【0150】
各アルミナシート710、720は、筒部材600の小径部632の外径にあわせて、上記第2実施形態にて述べた各アルミナシート410、420よりも大きな外形寸法を有している。
【0151】
発熱体730は、両アルミナシート710、720の間に介装されているもので、この発熱体730は、上記第2実施形態にて述べた発熱体430の両発熱抵抗部431、432及び正負両側電極パッド433、434に対応する帯状の両発熱抵抗部731、732及び正負両側電極パッド(図示しない)でもって、発熱体430と同様用に白金でもって形成されている。
【0152】
帯状の両発熱抵抗部731、732は、筒部材600の小径部632の外径にあわせて、両発熱抵抗部431、432よりも広い面積を有するように形成されている。発熱抵抗部731の下縁部735と小径部632の先端部との間隔は、上記第1実施形態と同様に3(mm)となっている。
【0153】
正側リード740は、上記第2実施形態にて述べた正側リード440の軸方向リード部441及び周方向リード部442に対応する軸方向リード部741及び周方向リード部742を有している。
【0154】
軸方向リード部741は、上述の軸方向リード部441と同様の断面構造を有するように構成されており、この軸方向リード部741は、その先端部743にて、ヒータ700の正側電極パッド上に設けられて、当該先端部743から筒部材600の先端側部位630、中間側部位620及び基端側部位610の各表面に沿い延在し主体金具510の外側へ延出している。
【0155】
また、周方向リード部742は、上述の周方向リード部442と同様の断面構造を有するように構成されて、主体金具510の外側にて、筒部材600の基端側部位610のうち中間側部位620の近傍部位に沿いその全周に亘り設けられている。しかして、周方向リード部742は、周方向リード部442と実質的に同様の役割を果たすように、軸方向リード部741を介し、この軸方向リード部741の先端部743にてヒータ700の正側パッドに電気的に接続されている。
【0156】
負側リード750は、上記第2実施形態にて述べた負側リード450の軸方向リード部451及び周方向リード部452に対応する軸方向リード部751及び周方向リード部752を有する。
【0157】
軸方向リード部751は、上述の軸方向リード部451と同様の断面構造を有するように構成されており、この軸方向リード部751は、先端部753にてヒータ700の負側電極パッド上に設けられて、当該先端部753から筒部材600の先端側部位630の表面を介し傾斜面部622の表面にかけて延出している。
【0158】
周方向リード部752は、上述の周方向リード部452と同様の断面構造を有するように構成されて、後述するガラス膜760を介し軸方向リード部741とは分離して、傾斜面部622の表面に沿い周方向に設けられている。
【0159】
しかして、周方向リード部752は、周方向リード部452と実質的に同様の役割を果たすように、軸方向リード部751を介し、ヒータ700の負側電極パッドに電気的に接続されている。
【0160】
また、ガラス膜760は、負側リード750の裏面側を通りかつ軸方向リード部741(先端部743を除く)を被覆するようにして、筒部材600の外周面のうち先端側部位630のヒータ700の上縁に対する対応部位から中間側部位620を介し先端側部位630の中間側部位620側部位にかけて全周に亘り設けられている。なお、ガラス膜760は、ガラス膜460と同様にガラスペーストの塗布焼成で形成されている。その他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
【0161】
このように構成した本第3実施形態において、上記第2実施形態と同様に、当該煤センサが、放電部333にて、ディーゼルエンジンの排気管内に排出される排気ガス中に晒されるとともに、上記高電圧回路の高電圧が、外側電極520を負極として、中心電極330に印加されると、放電部333に放電が発生する。
【0162】
この放電時の電圧である放電電圧は、上記第2実施形態にて述べたと同様に、両電極部522、331の間に存在する煤の濃度分だけ、煤のない場合に比べて低下する。従って、このように低下した放電電圧を検出すれば、上記煤の検出或いは当該煤の濃度の検出が可能となる。
【0163】
ここで、上述の通り、中心電極330は、筒部材600の先端側部位630から3(mm)しか延出していないが、ヒータ700の発熱体730と中心電極330の軸心との間の径方向に沿う距離が、上記第2実施形態と同様に25(mm)に設定されている。
【0164】
このため、外側電極520と中心電極330との間に印加された高電圧が、主体金具510と実質的に同電位にあるヒータ700と中心電極330との間にかかることで、放電がヒータ700と中心電極330との間に筒部材600の先端側部位630を介して発生し筒部材600内にイオンが発生しても、当該イオンは、放電部333までは移動し得ず、この放電部333の排気ガスには混入し得ない。
【0165】
従って、放電部333の空気が煤を含んでいてもいなくても、両電極部522、331の間の放電電圧が、上記イオンの影響を受けることがない。このことは、両電極部522、331の間の放電電圧は、煤によってのみ低下することを意味する。その結果、当該煤センサによれば、煤が、上記イオンに影響されることなく、精度よく検出され得る。その他の作用効果は上記第2実施形態と同様である。
(第4実施形態)
図6は、本発明の第4実施形態の要部を示している。この第4実施形態では、上記第1実施形態において、ヒータ400に代えて、ヒータ800を採用した構成となっている。
【0166】
当該ヒータ800は、上記第1実施形態にて述べたヒートクリーニングを行うもので、このヒータ800は、ヒータ400と同様に、上記第1実施形態にて述べた筒部材200の先端側部位230の小径部232の全周に亘りその先端側にて貼着されている。
【0167】
当該ヒータ800は、図6にて示すごとく、2枚のアルミナシート810、820及び発熱体830を備えている。発熱体830は、両リード部831、832、3つの発熱抵抗部833、834、835及び正負両側電極パッド836、837を有しており、両リード部831、832は、アルミナシート810の内面に沿い互いに対向するようにL字状に形成されている(図6参照)。
【0168】
3つの発熱抵抗部833、834、835は、両リード部831、832の間にてアルミナシート810の内面に沿い互いに並行に形成されており、これら各発熱抵抗部833、834、835は、その両端部にて、両リード部831、832に接続されている。なお、本第4実施形態では、各発熱抵抗部833、834、835は、図6にて示すような上側突部及び下側突部を交互に有する波形状パターンでもって形成されている。
【0169】
正負両側電極パッド836、837は、両リード部831、832の各対向端部を介しアルミナシート810の内面に形成されている。なお、発熱体830は、発熱体430と同様に白金ペーストの焼成でもって形成されている。
【0170】
アルミナシート820は、その内面にて、発熱体830を介しアルミナシート810の内面に圧着されており、このアルミナシート820のうち、両電極パッド836、837の各中央部に対する各対応部位には、各貫通孔部821、822が形成されている。
【0171】
各貫通孔部821、822には、各ビアホール838、839が、白金ペーストの焼成でもって形成されており、これら各ビアホール838、839は、上記第1実施形態にて述べた各ビアホール423、424に代えて、上記第1実施形態にて述べた各リード440、450のビアホールとしての役割を果たす。
【0172】
本第4実施形態において、上述したヒータ800の貼着位置は、発熱抵抗部833の波形状パターンの下側突部の頂部と筒部材200の先端側部位230の先端との間に上記所定の表面長さ(例えば、3(mm))を設けるように、選定されている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0173】
このように構成した本第4実施形態では、上記第1実施形態と同様に、当該煤センサによる検出過程において、一定期間が経過する毎に、筒部材200に堆積した煤が、ヒータ800により焼き切られる。その結果、当該煤センサは、煤の堆積による両電極部122、321の短絡を適正に防止しつつ、煤を良好に検出し得る。
【0174】
また、本第4実施形態においては、上述したごとく、ヒータ800が、発熱抵抗部833の波形状パターンの下側突部の頂部にて、筒部材200の先端側部位230の先端との間に、上記所定の表面長さ(例えば、3(mm))をおくように、筒部材200の小径部232にその先端側にて貼着されている。従って、ヒータ800が中心電極320のうち先端側部位230の先端部の近傍部位との間で短絡し或いは放電を発生することがない。その他の作用効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第5実施形態)
図7は、本発明の第5実施形態を示している。この第5実施形態では、上記第1実施形態にて述べた筒部材200は、その先端側部位230において、次のように変形されている。
【0175】
即ち、筒部材200の先端側部位230において、その小径部232のうち少なくとも中心電極320とヒータ400との間の軸方向部位(以下、ヒータ対応軸方向部位ともいう)は、その軸方向中央にて、0.7(mm)〜3(mm)の範囲以内の厚みを有するように形成されている。
【0176】
ここで、上述のようにヒータ対応軸方向部位の厚みの下限値を0.7(mm)としたのは、この0.7(mm)未満では、筒部材200の先端側部位230が、上記ヒータ対応軸方向部位を中心に薄過ぎて絶縁機能を失い厚み方向に放電してしまうためである。
【0177】
また、上述したヒータ対応軸方向部位の厚みの上限値を3(mm)としたのは、上記ヒータ対応軸方向部位が3(mm)よりも厚くなると、筒部材200の熱容量が、上記ヒータ対応軸方向部位を中心として、不適正に増大するためである。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0178】
このように構成した本第5実施形態では、上述のごとく、筒部材200の上記ヒータ対応軸方向部位の厚みが、その軸方向中央にて、0.7(mm)〜3(mm)の範囲以内の値となっている。このため、本第5実施形態によれば、筒部材200の上記ヒータ対応軸方向部位にて、薄すぎて厚み方向に放電することなく、かつ、熱容量を不適正に増大させることなく、上記第1実施形態にて述べた作用効果が達成され得る。
(第6実施形態)
図8は、本発明の第6実施形態を示している。この第6実施形態では、上記第1実施形態にて述べた金具部材100が、次のように変形されている。
【0179】
即ち、金具部材100の主体金具110が、図8にて示すごとく、筒部材200のうち先端側部位230の小径部232を、その先端部をも含めて包囲するように、主体金具110の軸長が長く形成されている。なお、これに伴い、主体金具110の軸長が長くなった分だけ、外側電極120の連結部121の長さが短くなっている。その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0180】
このように構成した本第6実施形態では、上述のごとく、金具部材100の主体金具110が、筒部材200のうち先端側部位230の小径部232を、その先端部をも含めて包囲するように、長く形成されている。
【0181】
このため、筒部材200の先端側部位230は、その小径部232の先端部をも含めて、主体金具110の内側に位置することとなる。従って、煤が、主体金具110内には回り込みにくくなり、筒部材200の先端側部位230には当たりにくい。その結果、本第6実施形態によれば、筒部材200の先端側部位230を煤から隔離しつつ、上記第1実施形態にて述べた作用効果を達成し得る。
【0182】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記第4実施形態では、ヒータ800を上記第1実施形態においてヒータ400に代えて採用した例について説明したが、これに限ることなく、ヒータ800を上記第2或いは第3の実施形態においてヒータ400に代えて採用してもよい。
(2)ヒータの各発熱抵抗部の形状は、ヒータ400或いは800の各発熱抵抗部のパターンに限ることなく、適宜変更してもよい。
(3)中心電極のうち筒部材の先端側部位内に位置する部位は、ヒータと対向していてもいなくても構わない。
(4)ヒータは、筒部材の先端側部位の全周に亘り貼着するのではなく、当該全周の一部に貼着するように構成してもよい。
(5)煤センサは、スパークプラグ型煤センサに限ることなく、例えば、次のような構成の煤センサであってもよい。即ち、電気的絶縁部材と、この絶縁部材に支持されて放電部を形成する放電電極(中心電極に対応)と、上記放電部を加熱するように絶縁部材の外面に設けられるヒータとを備える煤センサにおいて、発熱体と上記放電部との間には、所定の距離25(mm)が設けられている。これによっても、上記各実施形態のいずれかと実
質的に同様の作用効果が達成され得る。なお、上記電気的絶縁部材は、筒部材200や筒部材600のような筒状のものに限ることなく、適宜な形状であってもよい。従って、発熱体と放電電極との間に上記電気的絶縁部材が介在するとは限らない。
(6)上記第1或いは第2の実施形態にて述べた所定の距離は、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と中心電極320(或いは330)の電極部321(或いは331)の先端部との間の距離に限ることなく、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と放電部322(或いは332)の一部との間の距離であってもよい。
(7)当該煤センサの設置配管の内壁と中心電極との間で放電部を構成するようにして、外側電極を廃止してもよい。
(8)上記第5実施形態において、筒部材200の上記ヒータ対応軸方向部位は、その軸方向中央にて、0.7(mm)〜3(mm)の範囲以内の厚みを有するように形成されているが、次のように変形してもよい。例えば、筒部材200の小径部232が、上述した末すぼまり形状とは異なり、その全長に亘り、同一の外径形状でもって形成されている場合には、上記ヒータ対応軸方向部位は、その軸方向中央に限ることなく、0.7(mm)〜3(mm)の範囲以内の厚みを有するように形成されている。これによっても、上記第5実施形態と同様の作用効果が達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明に係るスパークプラグ型煤センサの第1実施形態を示す部分断面側面図である。
【図2】図1のヒータの部分破断拡大平面図である。
【図3】上記第1実施形態における煤センサの煤感度と、ヒータの外側発熱抵抗部の下縁部と中心電極の電極部の先端部との間の距離である所定の距離との関係を示すグラフである。
【図4】本発明に係るスパークプラグ型煤センサの第2実施形態を示す部分断面側面図である。
【図5】本発明に係るスパークプラグ型煤センサの第3実施形態を示す部分断面側面図である。
【図6】本発明の第4実施形態の要部を示す部分破断平面図である。
【図7】本発明の第5実施形態を示す要部破断断面側面図である。
【図8】本発明の第6実施形態を示す部分断面側面図である。
【符号の説明】
【0184】
110、510…主体金具、120、130、520…外側電極、
122、132、321、331、522…電極部、200、600…筒部材、
320、330…中心電極、322、332、333…放電部、
400、700、800…ヒータ、430、730、830…発熱体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的絶縁部材と、
この電気的絶縁部材に支持されて放電部を形成する放電電極と、
発熱体を内蔵して前記絶縁部材の外面に設けられるヒータとを備える煤センサにおいて、
前記発熱体と前記放電電極の前記放電部側の端部との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられていることを特徴とする煤センサ。
【請求項2】
前記絶縁部材は、貫通孔部を有する円筒形状に形成されており、
前記放電電極は、前記絶縁部材の前記放電部側の端部から突出するように前記絶縁部材の前記貫通孔部内に支持されており、
前記絶縁部材の表面のうち、前記絶縁部材の前記放電部側の端部から前記発熱体の前記放電部側の縁部までの表面部位に沿う長さは、3(mm)以上12(mm)以下であるいることを特徴とする請求項1に記載の煤センサ。
【請求項3】
前記絶縁部材は、貫通孔部を有する円筒形状に形成されており、
前記放電電極は、前記絶縁部材の前記放電部側の端部から突出するように前記絶縁部材の前記貫通孔部内に支持されており、
前記絶縁部材は、少なくとも前記発熱体と前記放電電極との間の部位にて、0.7(mm)〜3(mm)の厚みを有することを特徴とする請求項1に記載の煤センサ。
【請求項4】
前記絶縁部材は、少なくとも前記発熱体と前記放電電極との間の部位にて、0.7(mm)〜3(mm)の厚みを有することを特徴とする請求項2に記載の煤センサ。
【請求項5】
前記絶縁部材に外方から嵌装される中空状の金具を備えて、
前記絶縁部材の前記放電部側の端部は、前記金具内に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の煤センサ。
【請求項6】
中空状の金具と、
この金具に嵌装されて貫通孔部を有する中空状の電気的絶縁部材と、
当該電気的絶縁部材の先端部から少なくとも中心側電極部を突出させるように前記絶縁部材に嵌装される中心電極と、
前記中心電極の中心側電極部に対向して放電部を構成する外側電極部を有して、前記金具に支持される外側電極と、
発熱体を内蔵して前記絶縁部材の外面に設けられるヒータとを備える煤センサにおいて、
前記発熱体と前記中心電極の先端部との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられていることを特徴とする煤センサ。
【請求項7】
前記絶縁部材の表面のうち、前記絶縁部材の先端部から当該先端部側の前記発熱体の縁部までの表面部位に沿う長さは、3(mm)以上12(mm)以下であることを特徴とする請求項6に記載の煤センサ。
【請求項8】
前記絶縁部材は、少なくとも前記発熱体と前記中心電極との間の軸方向部位にて、0.7(mm)〜3(mm)の厚みを有することを特徴とする請求項6または7に記載の煤センサ。
【請求項9】
前記絶縁部材の先端部は、前記金具内に位置することを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の煤センサ。
【請求項10】
前記中心電極及び前記ヒータが、前記金具を共通アースとすることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つに記載の煤センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−327936(P2007−327936A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62867(P2007−62867)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】