説明

煤センサ

【課題】煤を焼失させるように発熱体を備えていても、煤以外の導電性に寄与する粒子の影響を受けることなく放電することにより煤を適正に検出し得るようにした煤センサを提供する。
【解決手段】中心電極320は、その電極部322にて、外側電極120の電極部123に対向している。電極部322の先端部(放電部)の外径は、電極部123の放電部の外径よりも小さく、かつ、各電極部322、123の放電部の表面積が、共に、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にある。ヒータ400は、筒部材200の先端側部位630の外周面に貼着されている。ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と中心電極320の電極部321の先端部との間には、所定の距離として、10(mm)以上200(mm)以下の範囲以内の距離が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煤センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の煤センサとしては、下記特許文献1に開示されたスモーク検出装置に設けた検出部がある。このスモーク検出装置の検出部は、棒状の中心電極を、絶縁体を介してハウジング内に収納し、中心電極の先端を外部に露出させるとともに、ハウジングに接合した外側電極を、間隙を介して中心電極の先端の周囲に配設するように構成されている。そして、当該検出部は、その中心電極及び外側電極を排気ガス内に露出させた状態で、中心電極と外側電極との間に高電圧を印加したとき火花放電を発生させるようになっている。
【特許文献1】実開昭64−50355号公報
【非特許文献1】W.D.E. Allan, R.D. Freeman, G.R. Pucher, D. Faux and M.F. Bardon,「DEVELOPMENT OF A SMOKE SENSOR FOR DIESEL ENGINES, Royal Military College of Canada, D.P. Gardiner, Nexum Research Corporation, p.220, Powertrain & Fluid Systems Conference, October 27-30, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記構成の煤センサにおいては、排気ガス中の煤の量が多い程、火花放電の発生時の電圧(放電電圧に相当)が低下するという原理を利用して、排気ガス中の煤の量を放電電圧から検出している。然るに、煤が絶縁体に付着すると、検出精度が低下する。そこで、絶縁体に付着した煤を除去することが必要となるが、絶縁体に付着した煤を除去するにあたっては、火花放電を利用するだけでは不十分である。
【0004】
これに対して、例えば、上記非特許文献1に記載のヒータを検出部付近に設けて、このヒータにより中心電極や外側電極に付着した煤を消失させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上述のように検出部付近にヒータを設けた場合、中心電極及び外側電極を、煤の殆ど存在しない排気ガス中に晒しても、放電電圧は低下してしまうことがある。そして、この状態になると、その後に、煤を含む排気ガスに中心電極及び外側電極を晒しても、放電電圧は殆ど変化しない。このため、放電電圧に基づいて煤を適正に検出することが著しく困難である。
【0006】
この点について詳細に検討してみたところ、煤はカーボン粒子である導電性粒子の集まりであることから、煤が放電電圧の低下を起こす要因になると考えられる。一方、上述のように煤が殆ど存在しない排気ガスであっても放電電圧が低下するということは、煤の他にも、この煤と実質的に同様の作用を発揮するイオン等の導電性に寄与する粒子が存在すると考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、以上のようなことに着目して、煤を焼失させるように発熱体を備えていても、煤以外の導電性に寄与する粒子の影響を受けることなく放電することにより煤を適正に検出し得るようにした煤センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決にあたり、本発明は、請求項1の記載によれば、中空状の電気的絶縁部材(200)と、この電気的絶縁部材内に嵌装されるとともに当該電気的絶縁部材の先端から延出されて他部材との放電を行う放電部を先端側に有する棒状の放電電極(320、330、340)と、電気的絶縁部材に内蔵された発熱体(430)とを備える煤センサにおいて、
発熱体と放電電極の先端(322、332)との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられ、かつ、放電部の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあることを特徴とする。
【0009】
このような構成において、高電圧が放電電極に印加されると、高電圧は、発熱体と放電電極との間にも印加されて、発熱体と放電電極との間にも放電を発生させる。これに伴い、イオン等の導電性に寄与する粒子が発生する。
【0010】
しかしながら、上述のように、少なくとも10(mm)の距離が発熱体と放電電極の先端との間に設けられるため、放電電極の先端側に設けられた放電部は、発熱体から遠く離れて位置しており、イオン等の導電性に寄与する粒子によっては到達されにくい。従って、イオン等の導電性に寄与する粒子は、放電電極の放電部まで到達することはできない。
【0011】
よって、煤が放電電極の放電部に存在していてもいなくても、放電電極の放電部に発生する放電電圧は、上記導電性に寄与する粒子の影響を受けることがなく、従って、煤によってのみ低下する。
【0012】
しかも、上述のごとく、放電電極の放電部の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にある。このため、放電電極の放電部近傍において放電により高い電界強度を占める空間領域が狭く、放電がより一層発生しにくくなる。従って、放電電極が放電するに要する放電電圧がより一層高くなって、煤センサとしての煤感度における分解能がより一層高くなる。
【0013】
以上のように、少なくとも10(mm)の距離を発熱体と放電電極の先端との間に設け、かつ、放電電極の放電部の表面積を、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内とした。これにより、煤センサは、上記導電性に寄与する粒子に影響されることなく、煤をより一層精度良く検出することができる。
【0014】
なお、放電電極の放電部が凸状面の場合には、この放電部の表面積は、凸状面の頂部を基準にその逆方向に0.5(mm)の距離にある部位から凸状面の頂部に亘る表面積に相当する。また、「他部材」は、放電電極と放電可能な部材であれば、特に限定されるものではない。
【0015】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、中空状の電気的絶縁部材(200)と、この電気的絶縁部材内に環状間隙を介して嵌装されるとともに当該電気的絶縁部材の先端から延出されて他部材との放電を行う放電部(362)を先端側に有する棒状の放電電極(360)と、電気的絶縁部材に内蔵された発熱体(430)とを備える煤センサにおいて、
上記環状間隙を封止する緻密性の封止部材(500、600)を有し、放電部の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあることを特徴とする。
【0016】
これによれば、電気的絶縁部材と放電電極との間の環状間隙が緻密性の封止部材で封止される。このため、イオン等の導電性に寄与する粒子が発生しても、導電性に寄与する粒子は、緻密性の封止部材により電気的絶縁部材内に封じ込められて、放電電極の放電部には移動できない。
【0017】
従って、煤が放電電極の放電部に存在していてもいなくても、放電電極の放電部に発生する放電電圧は、上記導電性に寄与する粒子の影響を受けることがなく、その結果、煤によってのみ低下する。
【0018】
しかも、放電電極の放電部の表面積は、請求項1の記載と同様に、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にある。このため、放電電極の放電部近傍において放電により高い電界強度を占める空間領域が狭く、より一層放電が発生しにくくなる。従って、放電電極が放電するに要する放電電圧がより一層高くなって、煤センサとしての煤感度における分解能がより一層高くなる。
【0019】
以上のように、電気的絶縁部材と放電電極との間の環状間隙が緻密性の封止部材でもって封止され、かつ、放電電極の放電部の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内とした。これにより、煤センサは、上記導電性に寄与する粒子に影響されることなく、煤をより一層精度良く検出することができる。
【0020】
なお、放電電極の放電部が凸状面の場合には、放電部の表面積は、凸状面の頂部を基準にその逆方向に0.5(mm)の距離にある部位から凸状面の頂部に亘る表面積に相当する。また、「他部材」は、放電電極と放電可能な部材であれは、特に限定されるものではない。
【0021】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、中空状の電気的絶縁部材(200)と、この電気的絶縁部材内に嵌装されるとともに当該電気的絶縁部材の先端から延出される棒状の一側放電電極(320、330、340)と、一側放電電極の一側放電部(322、332)と放電を行うようにこの一側放電部に対向してなる他側放電部(123)を有する他側放電電極(120)と、電気的絶縁部材に内蔵された発熱体(430)とを備える煤センサにおいて、
発熱体と一側放電電極の先端との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられ、かつ、一側放電部及び他側放電部の各表面積のうち少なくとも一方の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあることを特徴とする。
【0022】
このような構成において、高電圧が一側放電電極と他側放電電極との間に印加されると、高電圧は、発熱体と一側放電電極との間にも印加されて、発熱体と一側放電電極との間に放電を発生させる。これに伴い、イオン等の導電性に寄与する粒子が発生する。
【0023】
しかしながら、上述のように、少なくとも10(mm)の距離が発熱体と一側放電電極の先端との間に設けられるため、一側放電電極の一側放電部は、発熱体から遠く離れて位置しており、イオン等の導電性に寄与する粒子によっては到達されにくい。従って、イオン等の導電性に寄与する粒子は、一側放電電極の一側放電部まで到達することはできない。
【0024】
よって、煤が一側放電電極の一側放電部に存在していてもいなくても、一側放電電極の一側放電部に発生する放電電圧は、上記導電性に寄与する粒子の影響を受けることがなく、従って、煤によってのみ低下する。
【0025】
しかも、上述のごとく一側放電部及び他側放電部の各表面積のうち少なくとも一方の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にある。このため、一側放電部及び他側放電部の少なくとも一方の近傍において放電により高い電界強度を占める空間領域が狭く、より一層放電が発生しにくくなる。従って、一側放電電極及び他側放電電極の少なくとも一方が放電するに要する放電電圧がより一層高くなって、煤センサとしての煤感度における分解能がより一層高くなる。
【0026】
以上のように、少なくとも10(mm)の距離を発熱体と一側放電電極の先端との間に設け、かつ、一側放電部及び他側放電部の各表面積のうち少なくとも一方の表面積を、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内とした。これにより、煤センサは、上記導電性に寄与する粒子に影響されることなく、煤をより一層精度良く検出することができる。
【0027】
なお、一側放電電極の一側放電部が凸状面の場合には、一側放電部の表面積は、凸状面の頂部を基準にその逆方向に0.5(mm)の距離にある部位から凸状面の頂部に亘る表面積に相当する。一方、他側放電電極の他側放電部を凸状面とした場合には、他側放電部の表面積は、他側放電部の凸状面の頂部を基準にその逆方向に0.5(mm)の距離にある部位から上記凸状面の頂部に亘る表面積に相当する。
【0028】
また、本発明によれば、請求項4の記載において、中空状の電気的絶縁部材(200)と、この電気的絶縁部材内に環状間隙を介して嵌装されるとともに当該電気的絶縁部材の先端から延出される棒状の一側放電電極(360)と、一側放電電極の一側放電部(362)と放電を行うようにこの一側放電部と対向してなる他側放電部(123)を有する他側放電電極(120)と、電気的絶縁部材に内蔵された発熱体(430)とを備える煤センサにおいて、
上記環状間隙を封止する緻密性の封止部材(500、600)を有し、一側放電部及び他側放電部の各表面積のうち少なくとも一方の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあることを特徴とする。
【0029】
これによれば、電気的絶縁部材と一側放電電極との間の環状間隙が緻密性の封止部材で封止される。このため、イオン等の導電性に寄与する粒子が発生しても、導電性に寄与する粒子は、緻密性の封止部材により電気的絶縁部材内に封じ込められて、一側放電電極の一側放電部には移動できない。
【0030】
従って、煤が一側放電電極の一側放電部に存在していてもいなくても、一側放電電極の一側放電部に発生する放電電圧は、導電性に寄与する粒子の影響を受けることがなく、従って、煤によってのみ低下する。
【0031】
しかも、一側放電部及び他側放電部の各表面積のうち少なくとも一方の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にある。このため、一側放電電極及び他側放電電極の少なくとも一方が放電するに要する放電電圧がより一層高くなって、煤センサとしての煤感度における分解能がより一層高くなる。
【0032】
以上のように、電気的絶縁部材と一側放電電極との間の環状間隙を緻密性の封止部材でもって封止し、かつ、一側放電部及び他側放電部の各表面積のうち少なくとも一方の表面積を、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内とした。これにより、煤センサは、上記導電性に寄与する粒子に影響されることなく、煤をより一層精度良く検出することができる。
【0033】
なお、一側放電電極の一側放電部が凸状面の場合には、一側放電部の表面積は、凸状面の頂部を基準にその逆方向に0.5(mm)の距離にある部位から凸状面の頂部に亘る表面積に相当する。一方、他側放電電極の他側放電部を凸状面とした場合には、他側放電部の表面積は、他側放電部の凸状面の頂部を基準にその逆方向に0.5(mm)の距離にある部位から上記凸状面の頂部に亘る表面積に相当する。
【0034】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項3または4に記載の煤センサにおいて、一側放電電極及び他側放電電極のうち一方が陽極で他方が陰極であり、陽極の放電部の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内であり、陰極の放電部の表面積は、0.07(mm2)以上であることを特徴とする。
【0035】
これによれば、一側放電電極及び他側放電電極のいずれか一方を陽極とし、他方の放電電極を陰極として使用しても、上述のように陰極の表面積を0.07(mm2)以上とすることで、陰極が、陽極に比べて放電により溶損し易いという事態を招くことがなく、陽極と同様に良好な耐久性を維持しつつ、請求項3または4に記載の発明の作用効果を達成することができる。なお、より好ましくは、陽極の表面積は0.12(mm2)以上であるとよい。
【0036】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項3〜5のいずれか1つに記載の煤センサにおいて、電気的絶縁部材を嵌装してなる中空状の金具(110)を備えて、
一側放電電極は、電気的絶縁部材にその先端部から延出するように嵌装した中心電極(320、330、360)であり、他側放電電極は、金具の先端から延出する外側電極(120)であることを特徴とする。
【0037】
このような構成によっても、請求項3〜5のいずれか1つに記載の発明と同様の作用効果を達成することができる。
【0038】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の各実施形態を図面により説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る煤センサの第1実施形態を示している。この煤センサは、主として、主体金具110、外側電極120、筒部材200及び中心電極320を備えている。
【0040】
主体金具110は、軟鋼材料により円筒状に形成されており、この主体金具110は、基端側金具部111と、この基端側金具部111よりも小さな内径を有する先端側金具部112とを備える。また、基端側金具部111と先端側金具部112との間には、鍔部113が形成されており、この鍔部113の内周面には、基端側金具部111の内周面に向かって広がる傾斜部114が設けられている。
【0041】
外側電極120の基端部121は、先端側金具部112の先端115に溶接されて、先端側金具部112の軸に平行に延出している。外側電極120の先端部122は、基端部121から主体金具110の軸心側へ延出されて、先端側金具部112の先端115に対向している。また、外側電極120の電極部123は、中心電極320(後述する)に同軸的に対向するように、先端側金具部112の先端115に対する先端部122の対向面上に溶接されている。なお、外側電極120の材料としては、ステンレス鋼、純ニッケル、ニッケル合金、純銅或いは銅合金、または、イリジウム或いは白金等の貴金属等が採用されている。
【0042】
ここで、電極部123の中心電極320に対向する放電部は、中心電極320の軸に直交する平面(以下、放電面ともいう)となっている。また、この電極部123の外径及び軸長は、それぞれ、例えば、2.0(mm)及び1.5(mm)となっている。この軸長は、0.5(mm)であってもよいが、中心電極320の電極部321(後述する)の軸長と共に、1.5(mm)以上にすることが好ましい。これにより、放電電圧をより一層高くして煤感度をより一層大きくすることができる。なお、放電部123の材料としては、白金或いはニッケルが採用されている。また、外側電極120は、負極として用いられる。
【0043】
筒部材200は、セラミック等の電気絶縁材料により形成されており、この筒部材200は、基端側部位210、中間側部位220及び先端側部位230を備えている。中間側部位220は、基端側部位210及び先端側部位230よりも大きな外径を有するように、これら基端側部位210と先端側部位230との間に形成されている。このため、中間側部位220の外周面は、その軸方向両端部にて、それぞれ、基端側部位210の外周面及び先端側部位230の大径部231(後述する)に向けて傾斜した両傾斜部221、222を構成している。
【0044】
先端側部位230は、図1にて示すごとく、互いに同軸的にかつ一体的に形成した大径部231及び小径部232でもって構成されている。大径部231は、中間側部位220から延出しており、一方、小径部232は、大径部231から延出している。なお、本第1実施形態において、小径部232は、大径部231側の端部から先端部にかけて傾斜するように形成されている。
【0045】
以上のように構成した筒部材200のうち、先端側部位230は、主体金具110の先端側金具部112に挿通されている。また、中間側部位220は、主体金具110の基端側金具部111内に嵌装されており、この中間側部位220の傾斜面部222は、先端側金具部112の傾斜部114上に金属製パッキン116を介して着座している。これにより、筒部材200は金具部材100内に同軸的に支持されている。さらに、筒部材200の大径部231が、金具部材100の先端側金具部112に嵌合されている。なお、基端側金具部111の開口部117は、カシメにより筒部材200の中間側部位220の傾斜面部221に締着されている。
【0046】
端子部材310は、中心電極320(後述する)を同軸的に連結されており、この端子部材310は、その基端部311にて、中心電極320を高電圧回路(図示しない)に接続する電気的接続端部を構成する。
【0047】
中心電極320は、図1にて示すごとく、電極基体321と、線状の電極部322とにより構成されている。電極基体321は、筒部材200の先端側部位230から外側電極120の電極部123に向け延出されている。電極基体321には、電極部322の電極基体321に対する溶接を容易にするため、電極基体321の先端部を半円柱状に切り欠いた切欠部323が形成されている。なお、電極基体321は、例えば、2.5(mm)の外径を有するように、ステンレス鋼で形成されている。
【0048】
電極部322は、電極基体321の切欠部323の軸方向端面324に沿って溶接等により装着されて、所定の放電間隙(例えば、0.5(mm))をおいて、外側電極120の電極部123に対向している。これにより、両電極部322、123は、上記放電間隙を介し、当該煤センサにおいて放電を発生する。
【0049】
ここで、電極部322は、ニッケル(Ni)や白金(Pt)等の柱状の線材で形成されており、この電極部322の先端側に形成された放電部は、電極部322の軸に直交する平面(以下、放電面ともいう)となっている。また、この電極部322の外径は、例えば、0.5(mm)となっている。また、この電極部322の軸長のうち切欠部323からの延出長さは、例えば、1.5(mm)となっている。なお、中心電極320は、正極として用いられる。
【0050】
しかして、煤センサにおいて、高電圧が上記高電圧回路から中心電極320及び外側電極120の間に印加されたとき、放電が、中心電極320の電極部322と、外側電極120の電極部123との間で発生する。
【0051】
本第1実施形態では、高電圧は、上述の放電間隙を前提に両電極部123、322の間の空気を絶縁破壊して当該両電極部123、322間に放電を発生させる電圧、例えば、10(kV)に設定されている。これにより、両電極部322、123の間にかかる電圧が放電時の電圧(以下、放電電圧ともいう)として検出される。なお、放電電圧は、両電極部322、123の間に煤が存在するとき、低下する。
【0052】
当該煤センサは、図1にて示すごとく、ヒータ400を備えており、このヒータ400は、筒部材200の先端側部位230の小径部232の全周に亘り貼着されている。これにより、ヒータ400は、両電極部123、322のヒートクリーニングを行うことで、両電極部123、322の煤による短絡を防止する役割を果たす。
【0053】
このヒータ400は、図2にて示すごとく、2枚のアルミナシート410、420及び発熱体430を備えている。発熱体430は、帯状の外側発熱抵抗部431、帯状の内側発熱抵抗部432及び正負両側電極パッド433、434を有しており、各発熱抵抗部431、432は、各電極パッド433、434とともに、白金ペーストを、アルミナシート410の内面に、図2にて示すような各所定のパターンでもって印刷焼成することで、形成されている。
【0054】
ここで、正側電極パッド433は、両発熱抵抗部431、432の各一側端部に接続されて、ヒータ400の正側接続端子としての役割を果たす。一方、負側電極パッド434は、両発熱抵抗部431、432の各他側端部に接続されて、ヒータ400の負側接続端子としての役割を果たす。
【0055】
このように構成したヒータ400においては、煤が、筒部材200に、両電極部123、322間の適正な放電を妨げる程度に堆積したときに、発熱体430がヒータ駆動回路(図示しない)からのヒータ電圧(例えば、15(V))を印加されて発熱し上記ヒートクリーニングを行う。なお、このヒートクリーニングは、高電圧回路から両電極部123、322への高電圧の印加を停止した状態でなされる。
【0056】
本第1実施形態において、発熱抵抗部431の下縁部435と筒部材200の先端側部位230の先端との間には、3(mm)の長さが設けられている。
【0057】
このように3(mm)の長さが設けられるのは、ヒータ400が中心電極320のうち筒部材200の先端部の近傍部位との間で短絡し或いは放電を発生する現象を防止するためである。また、筒部材200の先端部側において不適正な煤の堆積が発生するという現象を防止するためには、12(mm)以下であることが望ましい。
【0058】
また、当該煤センサは、図1にて示すごとく、ヒータ400のための正負両側リード440、450及びガラス膜460を有している。正側リード440は、軸方向リード部441及び周方向リード部442を有しており、軸方向リード部441は、筒部材200の外周面の所定の軸方向部位(図1参照)に沿い設けられている。
【0059】
この軸方向リード部441は、筒部材200上に沿い延在し主体金具110の外側へ延出している。なお、軸方向リード部441の先端部443は、ヒータ400のアルミナシート420に形成した貫通孔部421(図2参照)を介し電極パッド423上に電気的に接続されている。
【0060】
また、周方向リード部442は、主体金具110の外側にて、筒部材200の基端側部位210の外周面に全周に亘り設けられており、この周方向リード部442は、ガラス膜460の裏面側にて、軸方向リード部441に電気的に接続されている。
【0061】
負側リード450は、ガラス膜460を介し筒部材200の外周面に設けられており、この負側リード450は、軸方向リード部451及び周方向リード部452を有している。軸方向リード部451は、筒部材200上に沿い延出している。なお、軸方向リード部451の先端部453は、ヒータ400のアルミナシート420に形成した貫通孔部422(図2参照)を介し電極パッド424上に電気的に接続されている。
【0062】
周方向リード部452は、筒部材200の傾斜部222の周方向に沿い、ガラス膜460を介して、軸方向リード部441とは分離して設けられている。この周方向リード部452は、軸方向リード部451に電気的に接続されている。
【0063】
ガラス膜460は、負側リード450の裏面側を通りかつ軸方向リード部441(先端部443を除く)を被覆するようにして、筒部材200の外周面のうち先端側部位230のヒータ400の上縁から中間側部位220を介し基端側部位210にかけて全周に設けられている。これにより、ガラス膜460は、筒部材200及び軸方向リード部441を主体金具110から電気的に絶縁する役割を果たす。
【0064】
次に、本第1実施形態において、当該煤センサが煤以外の導電性に寄与する粒子の影響を受けることなく放電するとともに煤感度をより一層高めるために採用される構成について説明する。
1.第1に、当該構成は、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と、中心電極320の線状電極部322の先端部(上記先端面)との間の距離が、少なくとも10(mm)以上200(mm)以下(本実施形態では25(mm))である。
【0065】
上記距離が10(mm)未満である場合、高電圧は、外側電極120と中心電極320との間に印加されると、筒部材200及びこの筒部材200と中心電極320との間の空間を介しヒータ400と中心電極320との間にもかかる。これに伴い、放電が筒部材200の先端側部位230と中心電極320との間にも発生する。
【0066】
この放電は、コロナ放電になると、筒部材200の先端側部位230と中心電極320との間に存在するガスが電離してイオンを発生すると推測される。そして、このように発生したイオンは、筒部材200の先端側部位230の内部から中心電極320の電極部322側に向けて移動して、煤と同様に、電気的には、両電極部322、123の間における導電性に寄与する粒子として作用すると推測される。
【0067】
このことは、両電極部322、123の間の雰囲気が煤ではなく上記イオンを含んでいても、雰囲気が煤を含んでいるのと同様の放電現象を誘起して、放電電圧の低下を招くことを意味する。換言すれば、煤が存在しなくても、イオンの存在によって、煤が存在するときと同様の放電電圧の低下を招くため、放電電圧から煤の存在や煤の量を正しく検出することは困難である。
【0068】
これに対しては、電極部322の先端が、上記イオンの移動可能範囲外にあれば、上記雰囲気が上記イオンを含む状態にはならず、煤の検出精度を適正に確保し得ると推測される。
【0069】
以上のようなことを考慮して、本第1実施形態の煤センサの煤感度と上記距離との関係について、この距離を種々の値に変化させて調べてみたところ、少なくとも10(mm)以上であれば、上述のイオンが電極部322の先端には移動し得ない範囲にあるものであることが分かった。そして、この範囲内であれば、煤センサは、実質的に適正な煤感度を発揮し得ることが分かった。
【0070】
また、上記距離を200(mm)以下とすることが望ましい。200(mm)よりも長いと、当該煤センサの自動車のエンジンの排気管への設置が困難となるからである。
2.第2に、電極部322の放電部(放電面)の表面積が、電極部123の放電部(放電面)の表面積よりも小さく、かつ、電極部322の放電部(放電面)の表面積及び電極部123の放電部(放電面)の表面積が、共に、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にある。以下、このようにした根拠について説明する。
(1)まず、外側電極120の電極部123の外径を一定にするとともに、中心電極320の電極部322の外径を変化させたときの煤感度について測定してみた。この測定に先立ち、試料として、次の表1に示すごとく、各実施例1〜5を準備するとともに、これら実施例との比較のために各比較例1及び2を準備した。
【0071】
【表1】

ここで、各実施例1〜5並びに各比較例1及び2の構成は、中心電極及び外側電極の各電極部を除き、本第1実施形態における煤センサの構成(図1参照)と同様である。
【0072】
また、各実施例1〜5の中心電極の電極部の外径は、それぞれ、0.1(mm)〜1.5(mm)の範囲以内で、表1で示すように変化させてある。一方、各比較例1及び2の外径は、それぞれ、表1で示す通り、2.0(mm)及び2.5(mm)である。
【0073】
但し、各実施例1〜5において、中心電極の電極部の軸長(電極基体の先端部からの延出長さ)は、1.5(mm)である。また、ヒータの発熱抵抗体の下縁部と中心電極の線状電極部の先端部(先端面)との間の距離は、25(mm)である。この距離は、各比較例1、2では、5(mm)である。なお、各実施例1〜5において、中心電極の電極部の形成材料は、共に、純ニッケル(純Ni)である。
【0074】
また、各実施例1〜5において、外側電極の電極部の外径及び軸長は、それぞれ、共に、1.6(mm)及び0.5(mm)である。なお、各外側電極の電極部の形成材料は、共に、白金とニッケルの合金(Pt−Ni)、例えば、90Pt−10Niからなる合金である。また、各実施例1〜5並びに各比較例1及び2において、放電間隙は0.5(mm)である。
【0075】
このような前提のもとに、各実施例1〜5並びに各比較例1及び2の煤感度について、次の煤感度測定条件及び煤感度測定方法のもとに、測定してみた。
煤感度測定条件:
各実施例1〜5並びに各比較例1及び2を晒すガスの温度は100(℃)とする。ガスの組成は、37.5(%)のアルゴン(Ar)、10(%)の酸素(O2)、5(%)の二酸化炭素(CO2)、5(%)の水(H2O)及び窒素(N2)とする。
煤感度測定方法:
この煤感度測定方法は、各実施例1〜5並びに各比較例1及び2を上記組成のガスに晒した状態で、中心電極を陽極或いは負極として、煤濃度を0(mg/m3)及び2(mg/m3)に変化させて煤感度を測定する方法とした。
【0076】
但し、煤感度は、0(mg/m3)の煤濃度のときの放電電圧から2(mg/m3)の煤濃度のときの放電電圧を減算した値でもって表すものとする。
【0077】
しかして、各実施例1〜5並びに各比較例1及び2の煤感度を、煤感度測定条件のもとに、煤感度測定方法により、測定したところ、表1にて示すような結果が得られた。
【0078】
この表1によれば、中心電極を陽極或いは負極のいずれとした場合にも、各比較例1及び2の煤感度は、0.253(kV)及び0.726(kV)と、2(kV)よりもかなり低いのに対し、各実施例1〜5の煤感度は、3.060(kV)〜5.189(kV)の範囲以内にあり、2(kV)よりもかなり高いことが分かる。なお、上述の2(kV)は、煤センサとしての適正な煤感度として要求される下限値である。
【0079】
換言すれば、各実施例1〜5において、外側電極の電極部の外径を1.6(mm)とし、中心電極の電極部の外径を、0.1(mm)〜1.5(mm)の範囲以内にすることで、各実施例1〜5の煤感度は、2(kV)よりもかなり高い値として得られることが分かる。
【0080】
そして、各実施例1〜5における中心電極の電極部の外径の範囲0.1(mm)〜1.5(mm)を中心電極の電極部の放電部(放電面)の表面積に換算すれば、この表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内になる。一方、各比較例1及び2における中心電極の電極部の外径の範囲2(mm)〜2.5(mm)を中心電極の電極部の放電部(放電面)の表面積に換算すれば、この表面積は、3.1(mm2)〜4.9(mm2)の範囲以内になる。
【0081】
ここで、中心電極の電極部における放電部(放電面)の表面積の下限値を0.008(mm2)としたのは、0.008(mm2)よりも小さいと、中心電極の電極部が溶損するおそれがあるためである。
【0082】
以上によれば、各実施例1〜5の中心電極及び外側電極の各電極部の先端部(先端面)が0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内の表面積を有すれば、煤センサの煤感度として2(kV)以上の良好な値が得られることが分かる。
(2)次に、中心電極の電極部の外径を一定にして、外側電極の電極部の外径を変化させたときの煤感度を上記煤感度測定条件のもとに上記煤感度測定方法により測定するとともに、陰極としての外側電極の電極部の摩耗量を次の耐久試験方法により測定した。
耐久試験条件:
この耐久試験条件は、外側電極を陰極とし大気中において所定の連続放電時間(5時間)放電させて、この放電前後の外側電極の電極部の摩耗量を拡大鏡により測定するという陰極摩耗試験としての条件である。
【0083】
この測定に先立ち、試料として、次の表2にて示すごとく、各実施例6〜14を準備した。
【0084】
【表2】

ここで、各実施例6〜14の構成は、上述の各実施例1〜5と同様に、中心電極及び外側電極の各電極部を除き、本第1実施形態における煤センサの構成(図1参照)と同様である。
【0085】
また、各実施例6〜14において、中心電極の電極部の外径は、表2に示す通り、共に、0.4(mm)と一定である。また、各中心電極の電極部の形成材料は、共に、純ニッケル(純Ni)である。また、ヒータの発熱抵抗体の下縁部と中心電極の電極部の先端部(先端面)との間の距離は、25(mm)である。
【0086】
また、各実施例6〜14において、外側電極の電極部の外径は、表2にて示すように、0.1(mm)〜2.0(mm)の範囲以内で変化させてある。また、各外側電極の電極部の軸長は、1.5(mm)である。なお、外側電極の電極部の形成材料は、共に、純白金である。また、各実施例6〜14において、放電間隙は0.5(mm)である。
【0087】
このような前提のもと、各実施例6〜14の煤感度を、上記煤感度測定条件のもとに、上記煤感度測定方法により、測定したところ、表2にて示すような結果が得られた。これによれば、各実施例6〜14の煤感度は、2.882(kV)〜5.522(kV)の範囲以内にあり、共に、2(kV)以上であることが分かる。
【0088】
換言すれば、各実施例6〜14において、中心電極の電極部の外径が0.4(mm)であり、外側電極の電極部の外径が0.1(mm)〜2.0(mm)であれば、2(kV)以上の良好な煤感度が得られることが分かる。
【0089】
また、各実施例6〜14について上記耐久試験条件による耐久試験を施して各実施例6〜14における外側電極の電極部の摩耗量を測定したところ、表2に示す結果が得られた。これによれば、実施例6では、外側電極の電極部の摩耗量が354(μm)と多いのに対し、各実施例7〜14では、外側電極の電極部の摩耗量が10(μm)〜32(μm)の範囲以内となり、実施例6に比べて大幅に減少することが分かった。従って、実施例6では、外側電極の電極部の耐久性に欠けるといえる。
【0090】
以上によれば、中心電極320の電極部322の放電部(放電面)の表面積が、外側電極120の電極部123の放電部(放電面)の表面積よりも小さく、かつ、各電極部322、123の放電部(放電面)の表面積が、共に、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあれば、煤センサとしての煤感度が良好に得られる。
【0091】
このように構成した本第1実施形態によれば、煤センサが、高電圧の印加に基づく放電に伴い、筒部材200の先端側部位230内にイオンを発生させても、ヒータ400の発熱抵抗部431の下縁部435と中心電極320の電極部321の先端との間には、25(mm)の距離があるため、放電電圧が、イオンの影響を受けることがなく、従って、煤によってのみ低下する。さらに、各電極部322、123の放電部の表面積が、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあるため、煤センサとしての煤感度における分解能がより一層高くなる。その結果、煤センサをディーゼル内燃機関のエンジンの排気ガスに曝しても、イオンに影響されることなく、排気ガス中の煤をより一層精度良く検出することができる。
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態の要部を示している。この第2実施形態では、中心電極330が、上記第1実施形態にて述べた中心電極320に代えて採用されている。この中心電極330は、電極基体331及び電極部332を有しており、電極基体331は、端子部材310に同軸的に連結されて、筒部材200の先端側部位230から外側電極120の電極部123に向けて延出されている。ここで、電極基体331の先端面は、電極部123の軸に直交する平面となっている。
【0092】
電極部332は、電極基体331に溶接されており、この電極部332は、放電間隙をおいて、外側電極120の電極部123に対向している。ここで、電極部322の軸長は、例えば、1.5(mm)となっている。なお、その他の構成は上記第1実施形態と同様である。
【0093】
このように構成した本第2実施形態によれば、電極基体331において、電極部332を電極基体331の先端面から延出させることにより、上記第1実施形態と同様の作用効果を達成することができる。
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態の要部を示している。この第3実施形態では、中心電極340が、上記第1実施形態にて述べた中心電極320に代えて採用されている。
【0094】
中心電極340は、図4にて示すごとく、筒部材200の先端側部位230内にて、端子部材310に連結されており、この中心電極340は、筒部材200の先端側部位230から外側電極120の電極部123に向け延出されている。
【0095】
ここで、中心電極340は、図4にて示すごとく、先端側部位230側から電極部123側にかけて順次先細状となるように、中心電極320の電極部322と同様の線状材料でもって形成されている。本第3実施形態において、中心電極340の放電部は、電極部322の放電部と同様に、電極部123の軸に直交する平面(放電面)でもって構成されている。また、この中心電極340の放電部の外径は、電極部322の放電部の外径と同一である。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0096】
このように構成した本第3実施形態によれば、中心電極340が電極部322と同様の役割を果たす。その結果、上記第1実施形態と同様の作用効果を達成することができる。
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態を示している。この第4実施形態では、中心電極360が、上記第2実施形態にて述べた中心電極330に代えて採用されるとともに、封止部材500が付加的に採用されている。なお、本第4実施形態では、筒部材200の先端側部位230の先端側断面形状を明確に示すために、煤センサとしての形状が、当該煤センサの軸に直角な方向に拡大して描かれている。
【0097】
中心電極360は、電極基体361及び電極部362を有しており、電極基体361は、端子部材310に連結されて、筒部材200の先端側部位230から外側電極120の電極部123に向け延出されている。ここで、電極基体361の先端面は、電極部123の軸に直交する平面となっている。また、電極基体361は、電極基体331よりもかなり短く、封止部材500を装着可能な程度に、筒部材200の先端側部位230の先端部から延出している。また、電極部362は、電極基体361から延出し、放電間隙をおいて、外側電極120の電極部123に対向している。
【0098】
封止部材500は、断面中空円錐台形状に形成されて、筒部材200の先端側部位230の先端開口面234を塞ぐように装着されている。ここで、封止部材500は、その底面501及び中空部内周面502にて、電極基体361の外周面及び筒部材200の先端側部位230の先端開口面234に気密的に密着している。
【0099】
このように構成した封止部材500は、次のようにして形成されている。まず、旭ガラス株式会社製ガラスの粉末(SiO2、B2O3及びZnOを主成分とする)を準備し、この粉末をペースト化してガラス粉末ペーストを作製する。この旭ガラス株式会社製ガラスは、高緻密性及び高耐熱性に富むという特徴を有する。ここで、高緻密性とは、封止部材500の形成材料における上記イオンの通過を阻止し得る程度の緻密性をいう。また、高耐熱性とは、封止部材500の形成材料がヒータ400の加熱温度(例えば、500(℃)〜700(℃))に耐え得る耐熱性をいう。
【0100】
上述のように作製したガラス粉末ペーストを、電極基体361の外周面及び筒部材200の先端側部位230の先端開口面234に亘り断面円錐台形状に塗布し、所定の焼成条件にて焼成する。このようにして封止部材500が形成されている。その他の構成は上記第3実施形態と同様である。
【0101】
このように構成した本第4実施形態によれば、封止部材500は、その緻密性のもとに、筒部材200の先端開口面234の開口を封止することで、上記イオンを筒部材200の内部に封じ込め、上記イオンの中心電極360の先端への移動を禁止する。また、電極部362が、電極部332と同様の役割を果たすことで、煤センサとしての煤感度における分解能がより一層高くなる。
【0102】
これにより、当該煤センサをエンジンの排気管に設置しても、導電性に寄与する粒子に影響されることなく、排気ガス中の煤をより一層精度良く検出することができる。
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態を示している。この第5実施形態では、円筒状の封止部材600が、上記第4実施形態にて述べた封止部材500に代えて採用されている。
【0103】
封止部材600は、中心電極360の電極基体361と筒部材200との間に形成される環状間隙内に同軸的に嵌装されている。このように形成した封止部材600は、ガラス粉末ペーストを、電極基体361と筒部材200との間に充填して焼成する。これにより、円筒状の封止部材600が形成されている。しかして、封止部材600は、その内周面601及び外周面602にて、電極基体361の外周面及び筒部材200の内周面に気密的に密着している。その他の構成は、上記第4実施形態と同様である。
【0104】
このように構成した本第5実施形態によれば、封止部材600が、電極基体361の外周面及び筒部材200の内周面に気密的に密着するように嵌装されている。そして、封止部材600は、筒部材200の先端開口面234からヒータ400の内周側を通り先端側部位230の基端に向けて延在している。
【0105】
このため、放電が、ヒータ400と中心電極360の電極基体361との間に発生して筒部材200の先端側部位230内にイオンが発生しても、このイオンは、封止部材600でもってその高緻密性により筒部材200の先端側部位230内に良好に封じ込められる。よって、上記イオンが中心電極360の先端まで移動することが禁止される。
【0106】
また、電極部362が、電極部332と同様の役割を果たすことで、煤センサとしての煤感度における分解能がより一層高くなる。これにより、当該煤センサをエンジンの排気管に設置しても、上記導電性に寄与する粒子に影響されることなく、排気ガス中の煤をより一層精度良く検出することができる。
【0107】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)中心電極320の電極部322や外側電極120の電極部123の形成材料は、上記各実施形態にて述べたものに限ることなく、スパークプラグに用いられる各種の材料、例えば、Pt、IrやRh等の貴金属や、NiやWであってもよい。
(2)本発明の実施にあたり、各実施形態とは異なり、中心電極及び外側電極の双方の電極部ではなく、少なくとも双方の電極部の一方の放電部の表面積が、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあればよい。
(3)本発明の実施にあたり、各実施形態とは逆に、中心電極の電極部の放電部の表面積は、外側電極の電極部の放電部の表面積よりも大きくてもよい。
(4)本発明の実施にあたり、陰極としての中心電極或いは外側電極において、その電極部の放電部の表面積は、0.07(mm2)以上であってもよい。これにより、陰極としての中心電極或いは外側電極の電極部が、陽極としての中心電極或いは外側電極の電極部よりも早く溶損することを防止して、陰極の耐久性を陽極と同様に長く維持することができる。
(5)上記各実施形態にて述べた中心電極の及び外側電極の各電極部の外形形状は、例えば、円柱状、四角柱状、三角柱状或いは断面台形状の柱状であってもよく、また、中心電極及び外側電極の各電極部の放電部は、平面に限ることなく、円錐状、三角錐状、四角錐状或いは半球状等であってもよい。
(6)本発明の実施にあたり、発熱体430を筒部材200に内蔵するようにして、ヒータ400を廃止してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係るスパークプラグ型煤センサの第1実施形態を示す部分断面側面図である。
【図2】図1のヒータの部分破断拡大平面図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す部分断面側面図である。
【図4】本発明の第3実施形態を示す部分断面側面図である。
【図5】本発明の第4実施形態を示す部分破断側面図である。
【図6】本発明の第5実施形態を示す部分破断側面図である。
【符号の説明】
【0109】
110…主体金具、120…外側電極、123、322、332、362…電極部、
200…筒部材、320、330、340、360…中心電極、400…ヒータ、
430…発熱体、500、600…封止部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の電気的絶縁部材と、
この電気的絶縁部材内に嵌装されるとともに当該電気的絶縁部材の先端から延出されて他部材との放電を行う放電部を先端側に有する棒状の放電電極と、
前記電気的絶縁部材に内蔵された発熱体とを備える煤センサにおいて、
前記発熱体と前記放電電極の先端との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられ、
かつ、前記放電部の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあることを特徴とする煤センサ。
【請求項2】
中空状の電気的絶縁部材と、
この電気的絶縁部材内に環状間隙を介して嵌装されるとともに当該電気的絶縁部材の先端から延出されて他部材との放電を行う放電部を先端側に有する棒状の放電電極と、
前記電気的絶縁部材に内蔵された発熱体とを備える煤センサにおいて、
前記環状間隙を封止する緻密性の封止部材を有し、
前記放電部の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあることを特徴とする煤センサ。
【請求項3】
中空状の電気的絶縁部材と、
この電気的絶縁部材内に嵌装されるとともに当該電気的絶縁部材の先端から延出される棒状の一側放電電極と、
前記一側放電電極の一側放電部と放電を行うようにこの一側放電部に対向してなる他側放電部を有する他側放電電極と、
前記電気的絶縁部材に内蔵された発熱体とを備える煤センサにおいて、
前記発熱体と前記一側放電電極の先端との間には、少なくとも10(mm)の距離が設けられ、
かつ、前記一側放電部及び前記他側放電部の各表面積のうち少なくとも一方の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあることを特徴とする煤センサ。
【請求項4】
中空状の電気的絶縁部材と、
この電気的絶縁部材内に環状間隙を介して嵌装されるとともに当該電気的絶縁部材の先端から延出される棒状の一側放電電極と、
前記一側放電電極の一側放電部と放電を行うようにこの一側放電部と対向してなる他側放電部を有する他側放電電極と、
前記電気的絶縁部材に内蔵された発熱体とを備える煤センサにおいて、
前記環状間隙を封止する緻密性の封止部材を有し、
前記一側放電部及び前記他側放電部の各表面積のうち少なくとも一方の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内にあることを特徴とする煤センサ。
【請求項5】
前記一側放電電極及び前記他側放電電極のうち一方が陽極で他方が陰極であり、
前記陽極の放電部の表面積は、0.008(mm2)〜1.8(mm2)の範囲以内であり、前記陰極の放電部の表面積は、0.07(mm2)以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の煤センサ。
【請求項6】
前記電気的絶縁部材を嵌装してなる中空状の金具を備えて、
前記一側放電電極は、前記電気的絶縁部材にその先端部から延出するように嵌装した中心電極であり、
前記他側放電電極は、前記金具の先端から延出する外側電極であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の煤センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−109297(P2009−109297A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280872(P2007−280872)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】