説明

照光スイッチ

【課題】配線基板の取付孔下面に装着される発光素子と配線基板との接続が確実な照光スイッチを提供することを目的とするものである。
【解決手段】配線基板13の取付孔13Aをドリル加工によって形成することにより、取付孔13Aの断面にはバリ等の突出物が生じ難く、発光素子6は実装の際に取付孔13A内に所定の正規位置に配置されて、取付孔13Aに対し傾いてずれることがなく、接続部6Aの上面全体がランド13Bに良好にはんだ付けされるため、接続部6Aとランド13Bの接続が強固で確実な照光スイッチを実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車の空調機器や音響機器等の操作に用いられる照光スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車室内のフロントパネル部やステアリングホイール部に、表示部が照光する様々な操作体を備えた照光スイッチを配置し、これらによってエアコンやオーディオ等の各種電子機器の操作を行うものが増えている。
【0003】
このような従来の照光スイッチについて、図4〜図7を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図5は従来の照光スイッチの断面図、図6は要部分解斜視図であり、同図において、1は絶縁樹脂製のケース、2は絶縁樹脂製で略箱状の操作体で、操作体2がケース1に上下動可能に装着されている。
【0006】
そして、操作体2の上面には周囲の不透光部2Bから文字や記号、図形等の所定の形状に透光部2Aが露出した表示部2C、2Dが形成されている。
【0007】
また、3は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された紙フェノール樹脂やガラスエポキシ樹脂などのリジッド基板製の配線基板で、ケース1底面に固定されている。
【0008】
さらに、4は配線基板3の上面に実装されたスイッチ接点としてのプッシュスイッチで、上部の操作部に操作体2下面から延出した押圧部2Eが当接している。
【0009】
そして、このプッシュスイッチ4の右方の配線基板3上面には、操作体2の表示部2Cを照光する表面取付用の発光ダイオード等の発光素子5が実装されている。
【0010】
また、6は配線基板の下面に装着される裏面取付用の発光ダイオード等の発光素子で、上部の略半球状のレンズ部6Cと中間の略矩形状の基部6B及び基部6Bの下部から所定方向の両外方へ延出した接続部6Aから形成されている。
【0011】
さらに、プッシュスイッチ4の左方のケース1には略筒状の筒部1Aが設けられ、この筒部1A内側の配線基板3の比較的狭い範囲に略矩形状の取付孔3Aが形成されると共に、この取付孔3Aの下面に発光素子6が実装されている。
【0012】
つまり、筒部1A内側は表面取付用の発光素子5を実装するには狭く、配線基板3の下面に裏面取付用の発光素子6を実装し、取付孔3Aを通して上方の表示部2Dを照光するようにしている。
【0013】
なお、図7(a)は発光素子6の装着状態を示す上面視の要部平面図で、発光素子6の基部6Bが取付孔3A内側に所定の隙間を空けて挿通すると共に、取付孔3Aの両側方の下面に形成された略矩形状のランド3Bに接続部6Aの上面がはんだ付け固定されて、発光素子6が配線基板3下面に装着される。
【0014】
また、取付孔3Aは通常、発光素子6の略矩形状の基部6Bと相似形の略矩形状のため、配線基板3の作製工程の最後の工程である外形加工に合わせてプレス加工によって形成されている。
【0015】
そして、配線基板3上に抵抗体7などの各種電子部品が実装されると共に、両面を貫通するスルーホール3Cを介して両面の配線パターンが接続され、この配線基板3やケース1をカバー8が覆うと共に、操作体2がカバー8の開口から外方へ突出して、図4に示すような照光スイッチが構成されている。
【0016】
このような照光スイッチは、車室内のフロントパネル部やステアリングホイール部に装着され、プッシュスイッチ4や発光素子5、6等が配線基板3を介して、エアコンやオーディオ等の各種電子機器や、自動車の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0017】
以上の構成において、図5に示す状態から、操作体2を下方へ押圧操作すると、押圧部2Eがプッシュスイッチ4の操作部を押圧して、プッシュスイッチ4の電気的接離が行われ、例えば、エアコンの入/切が行われる。
【0018】
また、夜間等の周囲が暗い場合には、ヘッドライト用スイッチ(図示せず)を操作すると発光素子5が発光し、この光が操作体2下方から透光部2Aを照光して、文字や記号、図形等の表示部2Cが照光されるため、周囲が暗い場合でも、表示部2Cの表示や操作体2の位置確認が可能となり、操作体2の識別や操作を容易に行うことができる。
【0019】
そして、この時、操作体2を押圧操作してプッシュスイッチ4をON操作すると、発光素子5とは発光色の異なる発光素子6が発光し、この光が筒部1Aに照光範囲を規制されて上方の表示部2D、例えば、入/切表示のインジケータが照光されて、エアコンが起動していることが視認できるようになっているものであった。
【0020】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2007−287411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
しかしながら、従来の照光スイッチにおいては、発光素子6が装着される配線基板3の取付孔3Aがプレス加工によって形成されているため、この取付孔3Aの断面にはバリ等の突出物が生じ易く、図7(b)に示すように、バリAが大きい場合には、発光素子6の基部6Bが取付孔3A内で傾いて、接続部6Aがランド3Bに対しずれてしまうため、接続部6Aとランド3Bとのはんだ付けが不充分となり、発光素子6と配線基板3との接続に支障をきたす可能性があるという課題があった。
【0023】
本発明は上記従来の問題点を解決するものであり、配線基板の取付孔下面に装着される発光素子と配線基板との接続が確実な照光スイッチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するために本発明は、配線基板の取付孔をドリル加工によって形成し、この配線基板の取付孔下面に裏面取付用の発光素子を装着して照光スイッチを構成したものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、配線基板の取付孔をドリル加工によって形成することによって、取付孔の断面にはバリ等の突出物が生じ難く、発光素子が取付孔内で所定の正規位置に配置されて、発光素子の接続部が配線基板のランドに対してずれることなくはんだ付けされて、良好なはんだ付け状態にできるため、発光素子の配線基板との接続が確実な照光スイッチを得ることができるという作用を有する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態による照光スイッチの断面図
【図2】同要部分解斜視図
【図3】同要部平面図
【図4】照光スイッチの斜視図
【図5】従来の照光スイッチの断面図
【図6】同要部分解斜視図
【図7】同要部平面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0028】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0029】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による照光スイッチの断面図、図2は同要部分解斜視図であり、同図において、1はアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体等の絶縁樹脂製のケース、2は透光性のポリカーボネート樹脂等の絶縁樹脂製の略箱状の操作体で、操作体2がケース1に上下動可能に装着されている。
【0030】
そして、操作体2上面には表面を塗装等によって形成された黒色や褐色等の暗色の不透光部2Bから、文字や記号、図形等の所定の形状に透光部2Aが露出した表示部2C、2Dが形成されている。
【0031】
また、13は上下面に複数の配線パターン(図示せず)が形成された紙フェノール樹脂やガラスエポキシ樹脂などのリジッド基板製の配線基板で、ケース1底面に固定されている。
【0032】
さらに、4は配線基板13の上面に実装されたスイッチ接点としてのプッシュスイッチで、上部の操作部に操作体2下面から延出した押圧部2Eが当接している。
【0033】
そして、このプッシュスイッチ4の右方の配線基板13の上面には、上方の操作体2の表示部2Cを照光する表面取付用の発光ダイオード等の発光素子5が実装されている。
【0034】
また、プッシュスイッチ4左方のケース1には後述する発光素子6を囲むように形成された略筒状の筒部1Aが設けられ、この筒部1A内側の配線基板13には所定方向の両側が半円形部で中間が平行部からなる略小判状の取付孔13Aが形成されている。
【0035】
なお、略小判状の取付孔13Aは長手方向が、プッシュスイッチ4を挟んで対向する発光素子5との方向と略直交する方向に配設されると共に、取付孔13Aの平行部下面の両側には、取付孔13Aの長手方向に対し直交方向の外方端部が略円弧状に形成されたランド13Bが各々形成されている。
【0036】
また、取付孔13Aを形成する際は、背景技術で説明したように略矩形の取付孔3Aをプレス加工によって形成するものとは異なり、配線基板13作製の初期工程であるスルーホールなどをNC(Numerical Control)加工によるドリル加工の際に、一方の半円形部と続く平行部と他方の半円形部をドリルを水平方向への移動に伴い、複数回上下方向に昇降させて形成して、取付孔13Aの断面にはバリ等の突出物が生じ難いものとなっている。
【0037】
そして、6は配線基板の取付孔13Aの下面に装着される裏面取付用の発光ダイオード等の発光素子で、上部の略半球状のレンズ部6Cと、中間の略矩形状の基部6B及び基部6Bの下部に所定方向の両外方へ延出し金メッキ等の金属メッキが施された銅合金板製の接続部6Aによって形成されている。
【0038】
また、図3(a)の配線基板上方視の要部平面図に示すように、この発光素子6の接続部6Aが取付孔13Aの長手方向と略直交する方向に配置され、接続部6Aが配線基板13下面のランド13Bにはんだ付けによって接続され、発光素子6が配線基板13下面に装着されている。
【0039】
つまり、ドリル加工された取付孔13Aの断面にはバリ等がないため、発光素子6は実装の際に取付孔13A内に所定の正規位置に配置されて、取付孔13Aに対し傾いてずれることがなく、接続部6Aの上面全体がランド13Bに良好にはんだ付けされるため、接続部6Aとランド13Bの接続が強固で確実なものとなる。
【0040】
また、ランド13Bの外方端部が略円弧状に形成されていることによって、はんだ付け時にランド13Bに塗布されるクリームはんだの量が適量となり、リフロー加熱の際に両側の接続部6Aと対向するランド13Bが各々ほぼ同タイミングではんだ溶融してはんだ付けされるため、発光素子6は配線基板13に対し略平行に装着される。
【0041】
すなわち、背景技術で説明したランド3Bのように外方端部が略矩形状の場合には、はんだ付け時にランド3Bにクリームはんだがやや多めに塗布され易く、リフロー加熱の際に、発光素子6の左右の接続部6Aと対向するランド3B間のはんだの溶融時間に差が生じ易く、発光素子6が配線基板3面に対し傾いて固定され易いのに比べ、ランド13Bの外方端部が略円弧状にすることによって、過度にクリームはんだが塗布されることなく適量で左右のランド13Bのはんだ溶融時間にばらつきが少ないため、発光素子6がランド13B面に略平行で均等にはんだ付けされた、より良好なはんだ付け状態にできる。
【0042】
そして、配線基板13上に抵抗体7などの各種電子部品が実装されると共に、両面を貫通するスルーホール13C等を介して両面の配線パターンが接続され、この配線基板13やケース1をカバー8が覆うと共に、操作体2がカバー8の開口から外方へ突出して、図4に示すような照光スイッチが構成されている。
【0043】
このような照光スイッチは、車室内のフロントパネル部やステアリングホイール部に装着され、プッシュスイッチ4や発光素子5、6等が配線基板13を介して、エアコンやオーディオ等の各種電子機器や、自動車の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0044】
以上の構成において、図1に示す状態から、操作体2を下方へ押圧操作すると、押圧部2Eがプッシュスイッチ4の操作部を押圧して、プッシュスイッチ4の電気的接離が行われ、例えば、エアコンの入/切が行われる。
【0045】
そして、夜間等の周囲が暗い場合には、ヘッドライト用スイッチ(図示せず)等を操作すると、発光素子5が例えばオレンジ色や白色に発光し、この光が操作体2下方から透光部2Aを照光して表示部2C、例えば「A/C」が照光されるため、周囲が暗い場合でも、表示部2Cの表示や操作体2の位置確認が可能となり、操作体2の識別や操作を行うことができる。
【0046】
また、この時、操作体2を押圧操作してプッシュスイッチ4をON操作すると、発光素子6が発光素子5とは発光色の異なる例えば黄色に発光し、この光が筒部1Aに照光範囲を規制されて上方の表示部2D、例えば、略棒状である入/切表示のインジケータが照光されて、エアコンが起動していることが視認できるようになっている。
【0047】
なお、発光素子6の接続部6Aは配線基板13下面のランド13Bに対しずれることなく、接続部6A全体が良好にはんだ付けされているため、車両内に生じる衝撃や温湿度変化の激しい周囲環境においても、接続部6Aとランド13Bとの安定した接続を確保することができる。
【0048】
さらに、略小判状の取付孔13Aの長手方向をプッシュスイッチ4を挟んで対向した発光素子5との方向と直交する方向に配置することによって、発光素子6は発光素子5方向には取付孔13Aの平行部内に囲まれ、光は発光素子5側方向へは広がり難く、本実施の形態のように発光素子5と発光素子6の発光色が異なる場合には、表示部2C、2Dの照光色に互いに他方の光が混在し難いため、表示部が所定の照光色で識別し易いものにすることができる。
【0049】
このように本実施の形態によれば、配線基板13の取付孔13Aをドリル加工によって形成することにより、取付孔13Aの断面にはバリ等の突出物が生じ難く、発光素子6は実装の際に取付孔13A内に所定の正規位置に配置されて、取付孔13Aに対し傾いてずれることがなく、接続部6Aの上面全体がランド13Bに良好にはんだ付けされるため、接続部6Aとランド13Bの接続が強固で確実な照光スイッチを実現することができる。
【0050】
また、以上の説明では、取付孔13Aを両側が半円形部で中間が平行部の長孔状としたが、図3(b)に示すように、略長方形で長手方向の角を曲線状にした長孔状の取付孔14や、図3(c)に示すように、発光素子6の接続部6Aとランド13Bとの接続面積はやや減少するが、基部6Bが挿通可能な円形状の取付孔15など、ドリル加工が可能であれば適宜、形状を設定しても良い。
【0051】
なお、以上の説明では、操作体2の表示部2C、2Dを、塗装した不透光部2Bに所定形状に透光部2Aを露出させて形成したものとして説明したが、絶縁樹脂製の不透光部から所定形状に透光性絶縁樹脂製の透光部を露出させた、所謂、二色成形によって形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の照光スイッチは、主に自動車の空調機器や音響機器等の操作に用いられ、操作体の表示部が発光素子によって照光する照光スイッチとして有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 ケース
1A 筒部
2 操作体
2A 透光部
2B 不透光部
2C、2D 表示部
2E 押圧部
4 プッシュスイッチ
5、6 発光素子
6A 接続部
6B 基部
6C レンズ部
7 抵抗体
8 カバー
13 配線基板
13A、14、15 取付孔
13B ランド
13C スルーホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に透光性の表示部が形成された操作体と、この操作体の上下動によって電気的接離が行われるスイッチ接点と、前記操作体の下方に配置された配線基板と、この配線基板に設けられた取付孔の下面に装着され、前記取付孔を通して前記操作体の前記表示部を照光する発光素子からなり、前記取付孔をドリル加工によって形成した照光スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−37874(P2013−37874A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172783(P2011−172783)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】