説明

照光式押釦スイッチ用カバー部材及びその製造方法

【課題】照光の際に押釦側面方向への光漏れが防止され、かつ押釦の天面部は偏光が無く天面部全体が均一に明るく光り、なおかつ隣合う押釦との照光の干渉が起こりにくい、視認性及び意匠性の向上したキー照光式に適した照光式押釦スイッチ用カバー部材を提供する。
【解決手段】ベース部18から上方に突設され光源の発光により照光される透光性押釦部2と、ベース部18と透光性押釦部2を接続する可撓性薄肉部5とを有し、透光性押釦部2の底面部側に固定接点8に離接される可動接点6が設けられた照光式押釦スイッチ用カバー部材において、透光性押釦部2の底面部には、光源に対応した位置に凹陥部19が設けられ、凹陥部19は内側壁面と内天壁面とを有し、内側壁面には光源からの光を遮蔽する遮光層4が設けられ、内天壁面を介して透光性押釦部2に光源からの光が導かれるようにした照光式押釦スイッチ用カバー部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話機、自動車電話機等の移動体通信機器、計測機器、リモートコントローラ、ハンディターミナル等のデータ入力装置やスイッチ装置、その他の家電、電子、通信等の分野の各種入力装置等に用いられる照光式押釦スイッチ用カバー部材であって、特に視認性の向上及び意匠面の観点から、キー側面方向への光漏れが防止されつつ、キーの天面部は偏光が無く天面部全体が均一に明るく光り、かつ隣接するキーを異なる色で照光しても光の干渉が起きにくい、照光式押釦スイッチ用カバー部材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載機等の入力装置に使用される照光式押釦スイッチでは、例えば図8に示したように、基板上に設けた発光ダイオード7を可動接点を具備する導光性ラバーシートで押さえ、押釦側には拡散板22を設けて光りを導きつつ、隣合う押釦との間には仕切壁20を設け、仕切壁20の下端部分を遮光部とすることで、複数のスイッチ部間における照射光の干渉を防止していた。(特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、この従来の照光式押釦スイッチは、導光性ラバーシートを介して光の干渉が起きやすい反面、キートップに届く光量は充分でなく、明るいキー照光とするのが困難であり、更に構造が複雑で、量産性が悪く製造コストも割高となる欠点があった。
【0004】
また、より小型の携帯電話機等に使用される照光式押釦スイッチでは、例えば図9に示したように、可動接点を具備する導光性ラバーシートの下側に光源を設けると共に、当該導光性ラバーシートの表面側に遮光層4を形成し、該遮光層4にレーザー加工により文字、記号等の切り抜き標識を形成し、いわゆる文字照光ラバースイッチとしていた。(特許文献2を参照)。
【0005】
しかしながら、この従来の照光式押釦スイッチにおいては、文字照光ラバースイッチとしての性能は満足しても、キー照光とすべく、押釦天面部の遮光層全体を切り抜くと、光源が発光点となって見えてしまい、意匠面で満足出来るものではなく、更に隣接する押釦との光の干渉も防止できるものではなかった。
【0006】
また、多色照光スイッチの色毎の偏光を防止すべく、例えば図10に示したように、複数のベアチップLED23を光拡散剤が混入された透明の封止樹脂で半球状に封止して光を拡散し、照光の際のキートップにおける偏光を解消していた。(特許文献3を参照)。
【0007】
しかし、特許文献3の発明では、一つのキートップにおける色毎の偏光は防止できるが、隣合う押釦との光の干渉防止については、何等の解決もなされていなかった。
【特許文献1】特開平10−275535号公報
【特許文献2】実開平3−110729号公報
【特許文献3】特開平7−320585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、照光式押釦スイッチ用カバー部材であって、照光の際に押釦側面方向への光漏れが防止され、かつ押釦の天面部は偏光が無く天面部全体が均一に明るく光ると共に、隣合う押釦同士は光の干渉が起こりにくい、視認性及び意匠性が向上した、キー照光式に適した照光式押釦スイッチ用カバー部材を提供することを課題としている。
【0009】
また、弾性材料で成形された押釦に特有の柔軟な触感やクリック感触を維持しつつ、過剰な押釦の押圧に対して、押釦の変形による筐体ケース下面への潜り込み防止や、光源への接触による機器の損傷を防止することが可能となる、耐久性に優れた照光式押釦スイッチ用カバー部材を提供することを課題としている。
【0010】
そして前記のような照光式押釦スイッチ用カバー部材を容易に低コストで生産することを可能とする製造方法の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を達成するため、請求項1に記載の発明は、弾性材料で一体に成形された、回路基板上の固定接点及び光源の周囲を取り囲んで配置されるベース部と、該ベース部から上方に突設され前記光源の発光により照光される透光性押釦部と、前記ベース部と前記透光性押釦部を接続する可撓性薄肉部とを有し、前記透光性押釦部は、前記可撓性薄肉部を介して前記回路基板に対して略垂直方向に移動可能で、且つ、前記可撓性薄肉部により前記回路基板に対して離間する方向に付勢されると共に、前記透光性押釦部には、底面部側に前記固定接点に離接される可動接点が設けられた照光式押釦スイッチ用カバー部材において、前記透光性押釦部の底面部には、前記光源に対応した位置に凹陥部が設けられ、前記凹陥部は内側壁面と内天壁面とを有し、前記内側壁面には前記光源からの光を遮蔽する遮光層が設けられ、前記内天壁面を介して前記透光性押釦部に前記光源からの光が導かれるようにした照光式押釦スイッチ用カバー部材を特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記内側壁面に設けられた前記光源からの光を遮蔽する遮光層は、白色の光反射層である照光式押釦スイッチ用カバー部材を特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記内側壁面に設けられた前記光源からの光を遮蔽する遮光層は、別途形成された筒状の遮光部材が、前記凹陥部内に配設されて形成されている照光式押釦スイッチ用カバー部材を特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加えて、前記凹陥部には別途形成されたフランジ付筒状の遮光部材が該フランジ部を下にして配設され、前記遮光部材の筒状部が前記遮光層を構成すると共に、少なくとも前記フランジ部は導電性を有し、前記フランジ部が前記固定接点に離接される可動接点を構成している照光式押釦スイッチ用カバー部材を特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4に記載の構成に加え、前記光源が拡散光光源である場合において、前記凹陥部の前記内天壁面は下方に向けて凸面を形成し、前記光源からの拡散光を前記透光性押釦部の天面部に向けて集光するように構成した照光式押釦スイッチ用カバー部材を特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4に記載の構成に加え、前記光源が平行光光源である場合において、前記凹陥部の前記内天壁面は下方に向けて凹面を形成し、前記光源からの平行光を前記透光性押釦部の天面部に向けて拡光するように構成した照光式押釦スイッチ用カバー部材を特徴としている。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項3又は4に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法であって、前記遮光部材を予め金型内にセットした後、液状型の又はミラブル型未加硫ゴムを前記金型内に充填し、加熱硬化させ、前記ベース部と前記透光性押釦部とそれらを接続する前記可撓性薄肉部の成形と同時に、前記遮光部材を前記凹陥部内に一体にインサート成形することを特徴とする照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法を特徴としている。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項3又は4に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法であって、前記遮光部材を予め金型内にセットした後、可塑化された熱可塑性エラストマーを前記金型内に充填し、冷却固化させ、前記ベース部と前記透光性押釦部とそれらを接続する前記可撓性薄肉部の成形と同時に、前記遮光部材を前記凹陥部内に一体にインサート成形することを特徴とする照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材によれば、透光性押釦部の底面部の光源に対応した位置に凹陥部が設けられ、凹陥部は内側壁面と内天壁面とを有し、内側壁面には前記光源からの光を遮蔽する遮光層が設けられ、内天壁面を介した光のみ透光性押釦部に導かれるから、透光性押釦部の側面方向に向かう光は遮光層により遮光され、内天壁面を介して透光性押釦部入射した光のみが透光性押釦の天面部に届くことになるので、明るい拡散光光源を用いても押釦側面方向への光は遮蔽され、押釦の天面部だけが均一に明るく光り、なおかつ隣合う押釦との照光の干渉が起こりにくい、視認性及び意匠性の向上した照光式押釦スイッチ用カバー部材が提供できる。
【0020】
請求項2に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、内側壁面に設けられた遮光層は、白色の光反射層としているので、ベアチップLEDのように偏光し易い光源を使用しても、光は反射層で均一に拡散されるため偏光がなくなり、押釦は効率よく均一に照光される照光式押釦スイッチ用カバー部材が提供できる。
【0021】
請求項3に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、遮光層は別途形成された筒状の遮光部材を凹陥部内に配設しているから、硬質材質の遮光層とすることが可能となり、過剰な押釦の押圧に対して、押釦の変形による筐体ケース下面への潜り込みや、光源への接触による機器の破損が防止され、耐久性に優れたキー照光式に適した照光式押釦スイッチ用カバー部材が提供できる。
【0022】
請求項4に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、凹陥部には別途形成されたフランジ付筒状の遮光部材が該フランジ部を下にして配設され、少なくともフランジ部は導電性を有しているから、過剰な押釦の押圧に対し押釦の変形が防止されると共に、遮光部材の作製と同時に可動接点が作製される、耐久性に優れる製造が容易なキー照光式に適した照光式押釦スイッチ用カバー部材が提供できる。
【0023】
請求項5に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材によれば、請求項1乃至4に記載の発明の効果に加え、凹陥部の内天壁面は下方に向けて凸面を形成し、光源からの拡散光を透光性押釦部の天面部に向けて集光するから、押釦天面に偏光がなく、押釦天面が効率よく均一に照光されるキー照光式に適した照光式押釦スイッチ用カバー部材が提供できる。
【0024】
請求項6に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材によれば、請求項1乃至4に記載の発明の効果に加え、凹陥部の内天壁面は下方に向けて凹面を形成し、光源からの平行光を透光性押釦部の天面部に向けて拡光するから、方向性をもつ平行光線を発する光源を使用しても、光源が点で発光して見える事がなく、押釦天面が均一に照光されたキー照光式に適した照光式押釦スイッチ用カバー部材が提供できる。
【0025】
請求項7又は8に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法によれば、請求項3又は4に記載の効果を有する、過剰な押釦の押圧に対し押釦の変形が防止された耐久性に優れるキー照光式に適した照光式押釦スイッチ用カバー部材を容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態について図1乃至図7によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は、この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の実施の形態1を示している。図1はその要部縦断面図である。
【0028】
この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材は、薄肉可撓部5を介し回路基板17に接するベース部18と透光性押釦部2とが、弾性材料で一体に成形されている。透光性押釦部2の底面部には可動接点6が配置され、透光性押釦部2を押圧して固定接点8が配置されている回路基板17の方向に可動させると、薄肉可撓部5が座屈し、クリック感が発生し、その直後可動接点6と固定接点8が接触し、回路基板17上の固定接点パターンが電気的に閉じ、導通する。
【0029】
係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の成形に使われる弾性材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム等の熱硬化性ゴム、及び、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、フッ素系、ポリエステル系の熱可塑性エラストマーを用いることができる。それらの中でも、シリコーンゴム、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、反発弾性が良く、圧縮永久歪みが小さいので、より好適に用いられる。
【0030】
係る弾性材料の硬度は、好適なクリック感触を得るために、デュロメータータイプA硬度で40度〜80度が好ましい。薄肉可撓部5の設計にもよるが、より好ましくは50度〜70度である。
【0031】
可動接点6に使用される材料としては、一般的な金属接点以外にも、酸化されにくい導電性物質の粉末等をポリエステル系バインダー等に分散したものを塗布して可動接点6とすることができる。例えば、カーボン、金、銀、銅、等のペーストが使用できる。この中でも、廉価で空気酸化等による抵抗変化の少ない、アセチレンブラックやケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックのペーストが好ましい。また、照光式押釦スイッチ用カバー部材本体の成形に使われる弾性材料と同種の材料に、上記導電性粉末を10乃至30質量%程度練り込んだ導電性弾性材料を使用しても良い。同種の材料をバインダーとして採用することにより接着信頼性が確保される。
【0032】
遮光層4(光反射層4)に使用される材料としては、有機材料に遮光性や反射性の特性を付与する顔料等の無機物資を練り込んだものが使用できる。
【0033】
例えば、成形に使われる弾性材料と同種の材料に、遮光特性を付与するにはカーボンブラック、遮光特性と合わせて反射特性を付与するにはルチル型酸化チタン、アナタース型酸化チタン、硫化亜鉛、マイカ、パール顔料等の隠蔽性の高い白色の顔料を練り込んだ材料を使用する。
【0034】
可動接点6、遮光層4(光反射層4)を一体に取り付けるには、成形に使われる弾性材料と同種の材料をバインダーとする材料であれば、予め作製しておいた部材を金型にインサートしておく、あるいはペースト状にした材料を金型に塗布しておき、成形により一体化すればよい。成形後に透光性押釦部2に接着することも可能である、また、所定のインクあるいはペーストとしておき、塗布することにより形成してもよい。異種の材料をバインダーとして選択する場合にはプライマー処理、表面処理等を施すことにより、接着一体化される。
【0035】
可動接点6に使用する材料の硬度としては、透光性押釦部2と同程度のものを用いることができる。デュロメータータイプA硬度で40度〜80度のものは、接点の間に異物を咬み込んだ場合の耐異物性が良好であり、スイッチの電気的接続の信頼性を確保できる。
【0036】
光源としては一般に知られたものを用いることができるが、発光波長が豊富で消費電力が小さく発熱が少ない等の利点から、発光ダイオード7が好ましく用いられる。また、小型化に対応してスペースを活用するには、一つの光源の光を、光ファイバー11を用いて各透光性押釦部2に分配するような光源方式としてもよい。光ファイバーの光は、方向性をもつ平行光線となるので、光漏れを防止し易く、透光性押釦部2との位置関係について自由度が高くなる。
【0037】
押釦側面からの光漏れを防止するためには、光源から照射される光の大半が透光性押釦部2の内部に照射されるように光源が配置されなくてはならない。
【0038】
照射光に方向性をもつ光源であれば、照射方向さえ調製すれば、光源を透光性押釦部2から離して配置することも可能である。拡散光光源の場合、透光性押釦部2の底面側に設けられた凹陥部19の中(遮光層4の内側)に光源を配置しなくてはならない、この場合、透光性押釦部2の押圧時に凹陥部19の内側壁面、内天壁面に光源が接触しないように、凹陥部19の大きさは、光源の大きさと押釦のストローク及び弾性体からなる押釦の圧縮を考慮し、光源が進入自在となる大きさと深さに設定する。
【0039】
更に、図1において矢印aで示す方向、透光性押釦部2の側面から光が漏れ、筐体9と透光性押釦部2の間から発光して見えてしまうとデザイン的に許されない場合がある。実施の形態1では、凹陥部19の内天壁面を下方に凸の曲面である凸面部3(レンズ形状)として、内天壁面の凸面部3を通過する光を強制的に透光性押釦部2の天面部方向に向けさせ、透光性押釦部2の側面からの光漏れを防止している。凸面部3の曲率は、透光性押釦部2をシリコーンゴムで成形する場合、シリコーンゴムの屈折率はガラスに近い屈折率であるので(ガラス1.51、シリコーンゴム1.4〜1.5位)、ガラスレンズの焦点設計を参考にして、押釦天面部全体を照光するように透光性押釦部2の高さとの兼ね合いで凸面部3の曲率を決定すれば良い。
【実施例2】
【0040】
図2は、この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の実施の形態2を示している。図2はその要部縦断面図である。
【0041】
実施の形態2は、光源に、発光ダイオード7に代えて、光ファイバー11を使用した実施の形態である。
【0042】
光ファイバーを光源に用いる場合には、高さの調節が容易であり、光は平行光線に近いから、回路基板17の下から配線した光ファイバー11を透光性押釦部2の直下に配置すればよく、遮光層4に囲まれる領域外に配置することができ、効率良く透光性押釦部2を照光することが可能となる。一方で、内天壁面に余り近づけると透光性押釦部2の天面部が均一に光らず光源が点で見えてしまうので注意しなくてはならない。
【0043】
そこで、実施の形態2では、凹陥部19の内天壁面の形状を下方に凹の凹面部12(拡光部)として、光ファイバー11からの平行光線を透光性押釦部2の天面全体に拡光させるようにしている。その他は実施の形態1と同様である。
【実施例3】
【0044】
図3は、この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の実施の形態3を示している。図3はその要部縦断面図である。
【0045】
実施の形態3は、遮光層4に特徴を有し、遮光層4(光反射層4)として筒状遮光部材13が、凹陥部19にインサート成形されている。
筒状遮光部材13は、凹陥部19の内側にぴったり入る大きさに作製された、図7示すように単純な筒型の部材である。その材質は、遮光性あるいは光反射性を有するものであれば、材質は特に問わない。
【0046】
例えば、照光式押釦スイッチ用カバー部材本体の成形に使われる弾性材料と同種の材料に、遮光特性を付与するカーボンブラック、反射特性を付与するにはルチル型酸化チタン、アナタース型酸化チタン、硫化亜鉛、マイカ、パール顔料等の隠蔽性の高い白色の顔料を配合し筒状に成形したもの、ポリオレフィンやポリエステル系の熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂に上記顔料を配合し筒状に成形したもの、又は、金属製の筒等を用いることができる。
【0047】
筒状遮光部材13に照光式押釦スイッチ用カバー部材本体の成形に使われる弾性材料よりも硬い材質を用いることにより、弾性体からなる押釦部の圧縮を小さくして押釦スイッチのストロークや過剰な変形を制御することが可能となる。すなわち、押釦部材のクリック感触を維持しつつ、押釦部の圧縮を局所的に抑えることができるため、過剰なスイッチ押圧による押釦の筐体ケース下面への潜り込み防止や、押釦部の光源への接触による機器の損傷を防ぐことが可能となる。
【0048】
なお、硬質材料からなる筒状遮光部材13を用いる場合には、接点の信頼性を確保するため、筒状遮光部材13の下端面は可動接点6の下面よりも上側(押釦側)に形成されるべきである。同程度の硬度の材質であれば、可動接点6の接触面と同一面に筒状遮光部材13の下端面が形成されていても良い。その他は実施の形態1と同様である。
【実施例4】
【0049】
図4は、この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の実施の形態4を示している。図4はその要部縦断面図である。
【0050】
実施の形態4は、遮光層4及び可動接点6に特徴を有し、遮光層4と可動接点6を兼ねる図6に示すフランジ付筒状遮光部材14が、凹陥部19にインサート成形されている。少なくともフランジ部16は導電性を有しており、可動接点として機能する。
【0051】
フランジ付筒状遮光部材14の材質等は筒状遮光部材13と同様であるが、樹脂材料製の場合は導電性を付与するため、導電性カーボンブラックを配合した材料で成形する。隠蔽性の白色顔料を配合した材料の場合、フランジ部16の固定接点8側に導電性のペースト等を塗布しておく。その他は実施の形態1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の実施の形態1に係る態様を示した要部縦断面図である。
【図2】この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の実施の形態2に係る態様を示した要部縦断面図である。
【図3】この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の実施の形態3に係る態様を示した要部縦断面図である。
【図4】この発明に係る照光式押釦スイッチ用カバー部材の実施の形態4に係る態様を示した要部縦断面図である。
【図5】実施の形態4において、透光性キートップ部材15を付加した実施の形態を示す要部縦断面図である。
【図6】フランジ付筒状遮光部材14の斜視図である。
【図7】筒状遮光部材13の斜視図である。
【図8】従来の仕切壁20と拡散板22を用いた照光式押釦スイッチを示した要部縦断面図である。
【図9】従来の遮光層を押釦表面に用いた文字照光式押釦スイッチを示した要部縦断面図である。
【図10】従来のベアチップLEDを用いた照光式押釦スイッチを示した要部縦断面図である
【符号の説明】
【0053】
1 照光式押釦スイッチ用カバー部材
2 透光性押釦部
3 凸面部(集光部)
4 遮光層(光反射層)
5 薄肉可撓部
6 可動接点
7 発光ダイオード
8 固定接点
9 筐体(不透光性ケース)
10加飾部(文字図形)
11光ファイバー
12凹面部(拡光部)
13筒状遮光部材
14フランジ付筒状遮光部材
15透光性キートップ部材
16フランジ部
17回路基板
18ベース部
19凹陥部
20遮光性仕切壁
22拡散板
23一括封止されたベアチップLED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料で一体に成形された、回路基板上の固定接点及び光源の周囲を取り囲んで配置されるベース部と、該ベース部から上方に突設され前記光源の発光により照光される透光性押釦部と、前記ベース部と前記透光性押釦部を接続する可撓性薄肉部とを有し、
前記透光性押釦部は、前記可撓性薄肉部を介して前記回路基板に対して略垂直方向に移動可能で、且つ、前記可撓性薄肉部により前記回路基板に対して離間する方向に付勢されると共に、前記透光性押釦部には、底面部側に前記固定接点に離接される可動接点が設けられた照光式押釦スイッチ用カバー部材において、
前記透光性押釦部の底面部には、前記光源に対応した位置に凹陥部が設けられ、前記凹陥部は内側壁面と内天壁面とを有し、前記内側壁面には前記光源からの光を遮蔽する遮光層が設けられ、前記内天壁面を介して前記透光性押釦部に前記光源からの光が導かれるようにしたことを特徴とする照光式押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項2】
前記内側壁面に設けられた前記光源からの光を遮蔽する遮光層は、白色の光反射層であることを特徴とする請求項1に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項3】
前記内側壁面に設けられた前記光源からの光を遮蔽する遮光層は、別途形成された筒状の遮光部材が、前記凹陥部内に配設されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項4】
前記凹陥部には別途形成されたフランジ付筒状の遮光部材が該フランジ部を下にして配設され、前記遮光部材の筒状部が前記遮光層を構成すると共に、少なくとも前記フランジ部は導電性を有し、前記フランジ部が前記固定接点に離接される可動接点を構成していること特徴とする請求項1に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項5】
前記光源が拡散光光源である場合において、前記凹陥部の前記内天壁面は下方に向けて凸面を形成し、前記光源からの拡散光を前記透光性押釦部の天面部に向けて集光するように構成したこと特徴とする請求項1乃至4に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項6】
前記光源が平行光光源である場合において、前記凹陥部の前記内天壁面は下方に向けて凹面を形成し、前記光源からの平行光を前記透光性押釦部の天面部に向けて拡光するように構成したこと特徴とする請求項1乃至4に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法であって、前記遮光部材を予め金型内にセットした後、液状型の又はミラブル型未加硫ゴムを前記金型内に充填し、加熱硬化させ、前記ベース部と前記透光性押釦部とそれらを接続する前記可撓性薄肉部の成形と同時に、前記遮光部材を前記凹陥部内に一体にインサート成形することを特徴とする照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法。
【請求項8】
請求項3又は4に記載の照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法であって、前記遮光部材を予め金型内にセットした後、可塑化された熱可塑性エラストマーを前記金型内に充填し、冷却固化させ、前記ベース部と前記透光性押釦部とそれらを接続する前記可撓性薄肉部の成形と同時に、前記遮光部材を前記凹陥部内に一体にインサート成形することを特徴とする照光式押釦スイッチ用カバー部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−80763(P2007−80763A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269701(P2005−269701)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】