説明

照光式押釦スイッチ用部材及びその製造方法

【課題】キートップとパネルの間からの光漏れがなく、かつ、キートップ部の輝度の低下もない照光式押釦スイッチ用部材及びその製造方法を提供する
【解決手段】キートップ1と、キートップ1と同一面上に配置されたパネル2と、キートップ1及びパネル2の裏側面に対向配置された透明樹脂からなるコア層20と、コア層20の少なくともキートップ1側の面に配置されたコア層より屈折率が小さい透明樹脂からなる第1クラッド層30とから構成される透光性導光板50と、コア層20の1方の面にキートップ1に対向配置された光拡散層4aと、キートップ1とパネル2の隙間を覆うように、第1クラッド層30のキートップ1及びパネル2の側の面上に配置された、少なくとも第1クラッド層30側に光反射層を含む遮光層7と、を含む照光式押釦スイッチ用部材100を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器などに好適に用いられる照光式押釦スイッチ用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯情報端末装置などの電子機器においては、暗所で電子機器の表示部および/または入力部の視認性を高めることが求められている。さらに、多機能化が進む小型電子機器において、1台の電子機器には複数のアプリケーションが組み込まれる場合が多く、そのアプリケーションごとに、表示部および/または入力部を容易に判別できることが要望されている。
【0003】
これに対応して、次のような電子機器などの照光用に用いられる押釦スイッチ用部材が提案されている。例えば、機器を操作する複数個の操作キーと、該複数個の操作キーの下方に配置され、操作キーの押圧によってスイッチングを行う複数個のスイッチング素子と、操作キーとスイッチング素子との間に配置されるライトガイドとを備える押釦スイッチ用部材であって、ライトガイドの側面または周縁部に配置された光源から入射した光を導入してライトガイドの内部で光を拡散させることにより、操作キーの下面に向かって投射してその操作キーの表側の面に向かって光を出射するという発明が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記従来の照光式の押釦スイッチ用部材を用いると、ある程度、押釦部分の輝度の高い照光を実現することができる。しかし、このような押釦スイッチ用部材では、ライトガイドの側端面から光を入射させ、その内部の反射を利用し、光をライトガイド全域に遍く伝播させるので、押釦部分と対応する光の出射面以外の、押釦部分の周辺から出射した光は、外部へ洩れる。このため、押釦部分の表面を均一に照光することが難しく、照光ムラもしくは輝度ムラが生じやすいという問題がある。また、光源からの光の一部しか押釦部分の視認性向上に寄与できないので、大きな消費電力を使用したとしても、輝度が低く、押釦部分の視認性が低下する。
【0005】
上記の押釦部分すなわちキートップの周囲からの光漏れを防止するために、ライトガイドすなわちベースシートの1方側に暗色印刷層を配置し、ベースシートと暗色印刷層との間に樹脂塗膜からなる透明樹脂層を設け、その透明樹脂層とベースシートまたは暗色印刷層の界面を、ベースシート内を面方向に伝達する光が暗色印刷層へ入射するのを抑止するように平滑面に形成する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−167655号公報
【特許文献2】特許第4402735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されているような、透明樹脂層とベースシートまたは暗色印刷層の界面に形成された平滑面は、ベースシート内を面方向に伝達する光を全反射させることにより暗色印刷層へ入射するのを抑止する作用をする。しかしながら、拡散層によってベースシート面に平滑面の全反射条件を満たさない角度で反射された光は、平滑面を透過してキートップ及び暗色印刷層に入射し、暗色印刷層に入射した光は吸収されてしまうため、キートップ部の輝度が低下するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、キートップとパネルの間からの光漏れがなく、かつ、キートップ部の輝度の低下もない照光式押釦スイッチ用部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記(1)〜(20)の本発明により達成される。
【0010】
(1)キートップと、そのキートップと同一面上に配置されたパネルと、キートップ及びパネルの裏側面に対向配置された透明樹脂からなるコア層と、そのコア層の少なくともキートップ側の面に配置されたコア層より屈折率が小さい透明樹脂からなる第1クラッド層とから構成される透光性導光板と、コア層の1方の面にキートップに対向配置された光拡散層と、キートップとパネルの隙間を覆うように、第1クラッド層のキートップ及びパネルの側の面上に配置された、少なくとも第1クラッド層側に光反射層を含む遮光層と、を含むことを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【0011】
(2)光反射層は、第1クラッド層上に配置したメタリック層であることを特徴とする(1)に記載の押釦スイッチ用部材。
【0012】
(3)遮光層は、メタリック層のキートップ及びパネルの側の表面にさらに配置された暗色層を含むことを特徴とする(2)に記載の押釦スイッチ用部材。
【0013】
(4)光反射層は、第1クラッド層上に配置された明色層であることを特徴とする(1)に記載の押釦スイッチ用部材。
【0014】
(5)遮光層は、明色層のキートップ及びパネルの側の表面にさらに配置された暗色層を含むことを特徴とする(4)に記載の押釦スイッチ用部材。
【0015】
(6)光反射層は明色テープであり、その明色テープは粘着剤によって第1クラッド層表面に接着されていることを特徴とする(5)に記載の押釦スイッチ用部材。
【0016】
(7)遮光層は、明色テープのキートップ及びパネルの側の表面にさらに配置された暗色層を含むことを特徴とする(6)に記載の押釦スイッチ用部材。
【0017】
(8)透光性導光板は、第1クラッド層が配置されたコア材のもう1方の表面にさらに配置された第2クラッド層とから構成され、その第2クラッド層はコア材より屈折率が小さい透明樹脂からなることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【0018】
(9)コア層は、JIS K6253のゴム硬さでA40〜D60のゴム状弾性を有する透明樹脂からなることを特徴とする、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【0019】
(10)コア層と第1クラッド層及び第2クラッド層の界面は平滑面であることを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【0020】
(11)キートップとパネルとを同一面上に配置し、そのキートップ及びパネルの裏側面に透明樹脂からなるコア層を対向配置し、そのコア層の少なくともキートップ側の面にコア層より屈折率が小さい透明樹脂からなる第1クラッド層を配置して透光性導光板を構成し、コア層の1方の面に光拡散層をキートップに対向配置し、キートップとパネルの隙間を覆うように、第1クラッド層のキートップ及びパネルの側の面上に、少なくとも第1クラッド層側に光反射層を含む遮光層を配置することを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0021】
(12)光反射層は、第1クラッド層上にメタリック層を形成してなることを特徴とする(11)に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0022】
(13)遮光層は、メタリック層のキートップ及びパネルの側の表面に暗色層を形成してなることを特徴とする(12)に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0023】
(14)光反射層は、第1クラッド層上に明色層を形成してなることを特徴とする(11)に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0024】
(15)遮光層は、明色層のキートップ及びパネルの側の表面に暗色層を形成してなることを特徴とする(14)に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0025】
(16)光反射層は明色テープであり、その明色テープは粘着剤によって第1クラッド層表面に接着することを特徴とする(15)に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0026】
(17)遮光層は、明色テープのキートップ及びパネルの側の表面に暗色層を形成してなることを特徴とする(16)に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0027】
(18)透光性導光板は、第1クラッド層を配置したコア材のもう1方の表面にさらに配置した第2クラッド層とから構成し、その第2クラッド層はコア材より屈折率が小さい透明樹脂からなることを特徴とする、(11)〜(17)のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0028】
(19)コア層は、JIS K6253のゴム硬さでA40〜D60のゴム状弾性を有する透明樹脂から構成することを特徴とする、(11)〜(18)のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【0029】
(20)コア層と第1クラッド層及び第2クラッド層の界面を平滑面となるように形成することを特徴とする(11)〜(19)のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、キートップとパネルの間からの光漏れがなく、かつ、キートップ部の輝度の低下もない照光式押釦スイッチ用部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の概略構成を示す模式的平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の概略構成を示す図1のA−A矢視模式的断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の概略構成を示す図1のA−A矢視模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の概略構成を示す図1のA−A矢視模式的断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の概略構成を示す図1のA−A矢視模式的拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の概略構成を示す図1のA−A矢視模式的拡大断面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る比較例の照光式押釦スイッチ用部材の概略構成を示す図1のA−A矢視模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0033】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、キートップの周囲の、パネルとの間の間隙部を、少なくとも光反射層を含む遮光層で覆うことに着目し、本発明を完成させた。
【0034】
図1は本実施形態における押釦用スイッチ部材の平面図である。12個のキートップ1がパネル2に囲まれており、各キートップ1の周りにはパネル2との間に間隙3が設けられている。各キートップ1には、1〜9の数字と記号が印刷されている。
【0035】
図2は図1のA−A矢視の断面図である。透明樹脂からなるコア層20は、コア層20の透明樹脂より小さい屈折率を持つ透明樹脂からなる第1クラッド層30と被覆されて透光性導光板を形成する。コア層20の側面には光源10がコア層20に近接して配置され、この光源10は、図2でコア層10の下側に配置された回路基板(図示せず)に接続されている。光源10から発射された光は、透光性導光板のコア層20の内部を進行する。第1クラッド層30の上面には、パネル接着層5によってパネル2が、キートップ接着層6によってキートップ1が接着されており、パネル2とキートップ1の間の間隙3を覆うように遮光層7が配置されている。各キートップ1に対向する透光性導光板のコア層20の下側面には、光拡散層4aが配置されている。光源10から発射されてコア層20内を進行する光の一部は、光拡散層4aで全反射されずに透光性導光板を透過して各キートップ1を照光する。
【0036】
図2では、光拡散層4aをコア層20の下側面の各キートップ1と対向する位置に配置したが、図3に示すように、光拡散層4bをコア層20と第1クラッド層30の界面の各キートップ1と対向する位置に配置してもよい。
【0037】
図2、3では、コア層20の下側面は空気に接しているが、図4に示したように、コア層20の下側にコア層20の透明樹脂材料より小さい屈折率を持つ透明樹脂材料や鏡面の金属薄膜層等からなる第2クラッド層40を設けてもよい。この場合、図4では、光拡散層4aをコア層20と第2クラッド層40の界面の各キートップ1と対向する位置に配置したが、光反射層をコア層20と第1クラッド層30の界面の各キートップ1と対向する位置に配置してもよい。
【0038】
本実施形態では、光源10としてLEDを用いた。LEDとしては、例えば、白色LED、青色LED、赤色LED、黄色LED、オレンジ色LED、緑色LEDを用いてもよい。また、複数のLEDを用いてもよく、例えば、赤色、緑色、青色(いわゆるRGB)の三色のLEDから白色を生成したり、複数の色のLEDをON/OFFしてコア層20に導入する光を切り換えてもよい。
【0039】
コア層10には、空気層の屈折率1.0より大きな屈折率を持つ透明樹脂、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、ベンジルメタクリレート樹脂、MS樹脂、アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタンあるいはシクロオレフィンポリマー(COP)等を用いることが出来る。
【0040】
コア層20は、コア層20の下側の各キートップ1に対向する位置に配置される入力のための押し子(図示せず)に対するキートップ1の良好な押圧操作性を得るために柔軟なゴム状弾性体を用いることが好ましい。具体的には、JIS K6253のゴム硬さがA40〜D60のゴム状弾性体であることが好ましい。ゴム硬度がD60より硬いとゴム層20の剛性が高くなり、荷重が上昇しすぎる。ゴム硬度がA40より低い場合には、ベースシートが大きく撓み、導光性能を低下させるおそれがあり、又押圧操作に障害を起すおそれがある。
【0041】
大きな屈折率とゴム状弾性を備えた透明樹脂として、例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー等がコア層20に好適に用いることができるが、屈折率が1.503であるTPUまたは熱硬化性ウレタンが特に好ましい。
【0042】
第1クラッド層30は、コア層20の透明樹脂材料の屈折率より小さい屈折率を持つ透明樹脂材料から形成する。図4のようにコア層20の下側面に第2クラッド層40をクラッドする場合は、第2クラッド層40は、コア層20の透明樹脂材料の屈折率より小さい屈折率を持つ透明樹脂材料から形成したり、Al、Cr、Ag、Sn等の金属をメッキまたは蒸着などして、鏡面の金属薄膜層から形成することもできる。光源10からコア層20に入射した光は、コア層20と第1クラッド層30の界面、及びコア層20と空気層又は第2クラッド層40の界面で、全反射を繰り返しながらコア層20の内部を進行する。
【0043】
図2のように、コア層20の下側面の、各キートップ1と対向する位置に光拡散層4aを、又は、図3のように、コア層20の上側面の、各キートップ1と対向する位置に光拡散層4bを設けることが好ましい。光拡散層4a又は4bは、キートップ1に向けて光を効率よく出射させるための構成である。本実施形態では、光拡散層4a又は4bは、複数のコーン状凹部から形成される。光拡散層4a又は4bを構成する凹凸構造の形状は、特に限定されることなく、ラウンドドット、スクエアドット、チェーンドットなどの任意の形状であってもよい。また、ドットの代わりにストライプ状に形成してもよい。光拡散層4a又は4bを形成する方法については、公知の方法を用いることができ、例えば、予めコア層20のどちらかの面に凸状体を成形する方法、又は凸状体を印刷する方法や拡散性のあるガラスビーズ等を含有した高明度インキを印刷する方法などが適用できる。
【0044】
第1クラッド層30の上側表面には、開口部3を有するパネル2が接着層5によって、パネル2の開口部3にはキートップ1が接着層6によって接着されている。パネル2とキートップ1の間には間隙3aが存在する。
【0045】
パネル2は熱可塑性樹脂からなり、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂等を用いることができる。
【0046】
キートップ1は、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂やそれらの変性物や混合物等の透明性の熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂で構成する。
【0047】
接着層5と接着層6には樹脂接着剤や両面テープを用いることができるが、キートップ1の照光輝度を低下させないために、キートップ1の接着層6には透明性の樹脂接着剤を用いるのが好ましい。
【0048】
パネル2とキートップ1の間には間隙3aが存在するため、光拡散層4a又は4bから出射した光が間隙3aから漏れるのを防止するため、各キートップ1の周囲の間隙3aの下部を覆うように、第1クラッド層30の上側表面には、遮光層7が配置されている。
【0049】
図2で、光拡散層4aから出射して、キートップ1の部分を外れて間隙3aに入射した光を効率よく反射させるために、遮光層7の下面すなわち第1クラッド層30に接する面には少なくとも反射層を含むことが好ましい。
【0050】
本発明の実施形態では、遮光層7を、図5又は図6に示した2種類の構成としている。
【0051】
図5では、遮光層7を光反射層7aだけで構成している。光反射層7aによる光の反射が100%未満であると、反射されない光は光反射層7aを透過して突き抜ける場合もある。
【0052】
図6では、遮光層7を光反射層7b及び暗色光吸収層7cで構成している。光反射層7bによる光の反射が100%未満であると、反射されない光は光反射層7bを透過し、暗色光吸収層7cによって吸収される。
【0053】
遮光層7は、具体的には、メタリック層形成、積層印刷及び粘着テープのいずれかの手法を用いて構成することができる。
【0054】
メタリック層は、Al、Ti、Zn、Au、Sn等の蒸着による薄膜、シリコーン、フッ素変性シリコーン、ウレタン、ウレタンアクリレート、アクリル等の透明樹脂にこれらの金属粉を分散させた樹脂ペーストを用いた塗装やメタリック印刷で形成することができる。メタリック印刷は、スクリーン印刷、タンポ印刷、転写印刷等の方式でもよい。これらのメタリック層の厚さは、0.05〜50μmが好ましく、3〜30μmがより好ましい。厚さが0.05μm未満であると 光反射性が小さく透過しやすく、50μmを超えるとキートップを繰り返し操作することでクラックが生じやすくなる。このメタリック層の上にさらに黒色に近い暗色層を印刷するなどして、図6のような構成にしてもよい。暗色層の厚さは、 5〜70μmが好ましい。厚さが5μm未満であると光の透過性が高くなり、隠蔽され難く、70μmを超えると厚さのばらつきが生じたり、キートップの厚みによりキートップの下面と接触してしまう恐れがある。
【0055】
積層印刷とは、図6の光反射層7bを白色印刷とし、7cを黒色等の隠蔽性のある暗色層を印刷して積層した構造を指す。白色印刷の厚さは、5〜50μmが好ましい。厚さが5μm未満であると光透過性が小さく透過しやすく、50μmを超えると押釦の繰り返し操作によりクラックが発生しやすくなる。暗色層の厚さは、5〜70μmが好ましい。厚さが5μm未満であると隠蔽性が不十分であるのでスケが発生しやすくなる、70μmを超えると押釦の繰り返し操作によりクラックが発生しやすくなる。
【0056】
粘着テープは、片面粘着テープ又は両面粘着テープのどちらを用いてもよい。粘着テープの場合、溶剤を用いないので、第1クラッド層30の表面を荒すことがない。このため、光拡散層4a又は4bから発射された光が乱反射されて減衰するということがなく、キートップ1の輝度の低下が抑制される。印刷に使用される溶剤によっては、第1クラッド層30の表面を荒すことがある。
【0057】
片面粘着テープを用いる場合、テープにはポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)、アクリル樹脂、二軸延伸ポリプロピレン樹脂(OPP樹脂)等からなる白色のフィルムを図5の構成の光反射層7aとして用いることができる。図6の構成で、この白色フィルムを光反射層7bとし、この上に暗色印刷して光反射層7cとしてもよい。粘着剤は、第1クラッド層30の材質により、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂等を用い、第1クラッド層30と片面粘着テープを接着する。片面粘着テープの厚さは、5〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。厚さが5μm未満であると粘着力自体が小さくなるため使用しづらく、300μmを超えると厚すぎて他の部材の形成の障害になる。
【0058】
両面粘着テープを用いる場合は、テープ材質は上記片面粘着テープのテープ材料と同様とし、1面の粘着面にさらにPET樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)、ウレタン等のシートに暗色印刷したものを貼り付けることができる。もう1方の粘着面を第1クラッド層30に接着する。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の照光式押釦スイッチ用部材及びその製造方法の実施例と比較例を、図面を参照して説明し、実施例及び比較例における2箇所のキートップ1の輝度の測定結果を表1に示す。
【0060】
実施例及び比較例においては、図2に示したようなコア層20の上側面、すなわち、キートップ1側の面に第1クラッド層30を配置し、コア層20の下側面は空気に接している構成の押釦スイッチ用部材を作製した。図2においては、光拡散層4aは、コア層20の下側面、すなわち、空気に接する面上の、各キートップ1に対向する位置に配置されている。図2の構成で、図5のように単層の光反射層7a、又は図6のように2層の光反射層7b、7cからなる遮光層7の材質を変えて実施例及び比較例とし、2箇所のキートップ1の照光輝度を測定した。
【0061】
実施例における、図2の構成の押釦スイッチ用部材の製造方法について説明する。
【0062】
コア層20は、厚さ250μmの熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU樹脂)フイルム(XUS−2098:商品名、シーダム社製)を用い、これに厚さ20μmのシリコーン樹脂(TA−1800:商品名、信越化学工業社製)を印刷して第1クラッド層30を形成し、透光性導光板50とした。この透光性導光板50を所定のサイズに裁断し、その下側面、すなわち空気に接している面の、図1の各キートップ1に対向する位置に、ラウンドドット形状の凹凸構造を形成し、光拡散層4aとした。キートップ1は、厚さ0.4mmのポリカーボネート樹脂(PC樹脂)の板から矩形状に裁断して作製した。パネル2は、厚さ0.3mmのポリカーボネートの板を所定のサイズに裁断し、これにキートップ1の矩形よりやや大きな矩形の開口部3を所定数、所定の配置で設けて用いた。パネル2は、パネル接着層5としての両面テープを用いて第1クラッド層30の上側面に固着した。このパネル2の開口部3に、PC樹脂製のキートップ1は、パネル2の開口部3に間隙3aを保ちながら挿入し、キートップ接着層6としてのシリコーン基材からなる接着剤を用いて、第1クラッド層30の上側面に固着した。パネル2とキートップ1の第1クラッド層30への固着に先立ち、第1クラッド層30の上面には、各間隙3を覆うように遮光層7を形成しておき、パネル2と各キートップ1を第1クラッド層30に固着したときにパネル2及び各キートップ1の下部に遮光層7も固着するようにし、間隙3からの光漏れを防止した。
【0063】
図1に示したように、0印のついたキートップ1の側部に光源10としてのLED(LED NSSW204:商品名、日亜化学(株)製)を配置して6V印加、330Ωで発光し、光源10から最も近い0印のついたキートップ1と、光源10から最も遠い1印のついたキートップ2の2ヶ所の照光輝度を面輝度計(ProMetric:商品名、サイバネットシステム(株)製)で測定した。
【0064】
(実施例1)
図5の構成で、光反射層7aとして厚さ0.06μmにAlの薄膜を第1クラッド層30の上面に蒸着することにより、メタリック印刷層を形成した。Alの光反射率は、約90%である。
【0065】
(実施例2)
図6の構成で、光反射層7bとして厚さ10μmにAlを含有するメタリック印刷の薄膜を第1クラッド層30の上面に形成し、さらにそのAlを含有するメタリック層の薄膜の上面に暗色光吸収層7cとして厚さ15μmにシリコーン系樹脂の黒色塗膜をスクリーン印刷法で印刷した。
【0066】
(実施例3)
図5の構成で、光反射層7aとして厚さ15μmにシリコーン系樹脂の白色の明色塗膜をスクリーン印刷法で印刷した。
【0067】
(実施例4)
図6の構成で、光反射層7bとして厚さ15μmにシリコーン系樹脂の白色の明色塗膜をスクリーン印刷法で印刷し、さらにその明色印刷層の上面に暗色光吸収層7cとして厚さ15μmにシリコーン系樹脂の黒色塗膜をスクリーン印刷法で印刷した。
【0068】
(実施例5)
図5の構成で、光反射層7aとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)の白色の明色テープの片面に、シリコーン系樹脂の粘着剤を厚さ20μmに塗布した片面粘着テープを用い、第1クラッド層30の上面に粘着剤側を固着した。
【0069】
(実施例6)
図6の構成で、光反射層7bとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)の白色の明色テープを用い、その白色の明色テープの上面に暗色光吸収層7cとして厚さ20μmにアクリル系樹脂の黒色塗膜を スクリーン印刷法で印刷し、白色の明色テープからなる光反射層7bの下側面に シリコーン系樹脂の粘着剤を厚さ15μmに塗布した片面粘着テープを得た。この片面粘着テープの粘着剤側を第1クラッド層30の上面に固着した。
【0070】
(比較例1)
図5の構成で、光反射層7aとして厚さ15μmにシリコーン系樹脂の黒色塗膜をスクリーン印刷法で印刷した。
【0071】
(比較例2)
図2の遮光層7の代りに、図7に示したように、暗色光吸収層7dとして、第1クラッド層30の上面全面に厚さ15μmにシリコーン系樹脂の黒色塗膜をスクリーン印刷法で印刷した。この黒色塗膜の印刷層の上面に、パネル2をシリコーン系からなる接着剤で、キートップ1をシリコーン樹脂からなる接着剤で固着した。
【0072】
キートップの輝度を測定した結果を以下に記す。LEDからの距離に応じて拡散インクの濃淡をつけるなどしてキートップの輝度を均等にしようとしてある。
【表1】

【0073】
表1に示した結果から以下のことが明らかになった。
(A)第一クラッド層に直接黒色印刷を行うとキーの輝度が低下する。これは導光層を伝播する光が黒色印刷層に吸収されるため、キーに伝わる光が少なくなることによると思われる。
(B)光漏れに関しては実施例2、4、6の黒色印刷を持つ構成が有効であった。
(C)輝度の均一性に関しては白色を持つ構成が良い結果を示している。白色が導光シートを経由してきた光を反射することによって、輝度の低下を防いでいるためである。
(D)白色テープ(実施例6)と白色印刷(実施例4)は略同一のキートップ輝度を示すが、後者は端部の剥離による光漏れが経時劣化によって起こる恐れが低いことから実施例4の構成が望ましい。
【0074】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0075】
1 キートップ
2 パネル
3 開口部
3a 間隙
4a 光拡散層
4b 光拡散層
5 パネル接着層
6 キートップ接着層
7 遮光層
7a 光反射層
7b 光反射層
7c 暗色光吸収層
7d 暗色光吸収層
10 光源
20 コア層
30 第1クラッド層
40 第2クラッド層
50 透光性導光板
100 押釦スイッチ用部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップと、
当該キートップと同一面上に配置されたパネルと、
前記キートップ及び前記パネルの裏側面に対向配置された透明樹脂からなるコア層と、当該コア層の少なくとも前記キートップ側の面に配置された前記コア層より屈折率が小さい透明樹脂からなる第1クラッド層とから構成される透光性導光板と、
前記コア層の1方の面に前記キートップに対向配置された光拡散層と、
前記キートップと前記パネルの隙間を覆うように、前記第1クラッド層の前記キートップ及び前記パネルの側の面上に配置された、少なくとも前記第1クラッド層側に光反射層を含む遮光層と、
を含むことを特徴とする押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
前記光反射層は、前記第1クラッド層上に配置したメタリック層であることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
前記遮光層は、前記メタリック層の前記キートップ及び前記パネルの側の表面にさらに配置された暗色層を含むことを特徴とする請求項2に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
前記光反射層は、前記第1クラッド層上に配置された明色層であることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項5】
前記遮光層は、前記明色層の前記キートップ及び前記パネルの側の表面にさらに配置された暗色層を含むことを特徴とする請求項4に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項6】
前記光反射層は明色テープであり、当該明色テープは粘着剤によって前記第1クラッド層表面に接着されていることを特徴とする請求項5に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項7】
前記遮光層は、前記明色テープの前記キートップ及び前記パネルの側の表面にさらに配置された暗色層を含むことを特徴とする請求項6に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項8】
前記透光性導光板は、前記第1クラッド層が配置された前記コア材のもう1方の表面にさらに配置された第2クラッド層とから構成され、当該第2クラッド層は前記コア材より屈折率が小さい透明樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項9】
前記コア層は、JIS K6253のゴム硬さでA40〜D60のゴム状弾性を有する透明樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項10】
前記コア層と前記第1クラッド層及び前記第2クラッド層の界面は平滑面であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材。
【請求項11】
キートップとパネルとを同一面上に配置し、
当該キートップ及び前記パネルの裏側面に透明樹脂からなるコア層を対向配置し、当該コア層の少なくとも前記キートップ側の面に前記コア層より屈折率が小さい透明樹脂からなる第1クラッド層を配置して透光性導光板を構成し、
前記コア層の1方の面に光拡散層を前記キートップに対向配置し、
前記キートップと前記パネルの隙間を覆うように、前記第1クラッド層の前記キートップ及び前記パネルの側の面上に、少なくとも前記第1クラッド層側に光反射層を含む遮光層を配置することを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項12】
前記光反射層は、前記第1クラッド層上にメタリック層を形成してなることを特徴とする請求項11に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項13】
前記遮光層は、前記メタリック層の前記キートップ及び前記パネルの側の表面に暗色層を形成してなることを特徴とする請求項12に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項14】
前記光反射層は、前記第1クラッド層上に明色層を形成してなることを特徴とする請求項11に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項15】
前記遮光層は、前記明色層の前記キートップ及び前記パネルの側の表面に暗色層を形成してなることを特徴とする請求項14に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項16】
前記光反射層は明色テープであり、当該明色テープは粘着剤によって前記第1クラッド層表面に接着することを特徴とする請求項15に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項17】
前記遮光層は、前記明色テープの前記キートップ及び前記パネルの側の表面に暗色層を形成してなることを特徴とする請求項16に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項18】
前記透光性導光板は、前記第1クラッド層を配置した前記コア材のもう1方の表面にさらに配置した第2クラッド層とから構成し、当該第2クラッド層は前記コア材より屈折率が小さい透明樹脂からなることを特徴とする、請求項11〜17のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項19】
前記コア層は、JIS K6253のゴム硬さでA40〜D60のゴム状弾性を有する透明樹脂から構成することを特徴とする、請求項11〜18のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項20】
前記コア層と前記第1クラッド層及び前記第2クラッド層の界面を平滑面となるように形成することを特徴とする請求項11〜19のいずれか1項に記載の押釦スイッチ用部材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−114031(P2012−114031A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263742(P2010−263742)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】