照射中心位置決め用ポインタと、このポインタが組み込まれている放射線治療計画装置、および、治療用放射線照射装置
【課題】被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませられるようにする。
【解決手段】この発明のポインタの場合、光学画像撮影カメラ13で天板1の上に載置された被検体Mの体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示モニタ15で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示モニタ15で表示される被検体Mの体表面の光学画像にマーク画像重畳部11で照射中心位置指示マークの十字状画像が重畳される構成を備えていて、光学画像表示モニタ15の画面では照射中心位置指示マークが被検体Mの体表面の光学画像の中に十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、照射中心位置指示マークをインクペン等でなぞって被検体Mの体表面に指標を付けて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させることができる。
【解決手段】この発明のポインタの場合、光学画像撮影カメラ13で天板1の上に載置された被検体Mの体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示モニタ15で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示モニタ15で表示される被検体Mの体表面の光学画像にマーク画像重畳部11で照射中心位置指示マークの十字状画像が重畳される構成を備えていて、光学画像表示モニタ15の画面では照射中心位置指示マークが被検体Mの体表面の光学画像の中に十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、照射中心位置指示マークをインクペン等でなぞって被検体Mの体表面に指標を付けて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線治療計画装置、或いは、治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体における治療用放射線の照射中心(照準中心)の位置決めを行なうのに用いられる照射中心位置決め用ポインタと、このポインタが組み込まれている放射線治療計画装置および治療用放射線照射装置に係り、特に被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に放射線治療を施す場合、先ず図11および図12に示す放射線治療計画装置を使って放射線治療計画を立案する。この放射線治療計画立案の際には、次のようにして、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めが行なわれる。
従来の放射線治療計画装置では、図11に示すように、X線管81による被検体MへのX線照射に伴って透過X線像検出用の2次元X線検出器82から出力されるX線検出信号に基づき天板83に載置された被検体MのX線透視画像が取得されると共に、後段の画像表示モニタ84で取得されたX線透視画像Raが表示される。
【0003】
また、画像表示モニタ84で表示されるX線透視画像Raには、治療用放射線の照射中心の位置を指示するX線遮蔽性の十字線85の画像maに加え、治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞り86の画像mbが重畳表示される。
そして、オペレータは、天板83を移動させてX線透視画像Raの中の治療用放射線の照射中心として適切な位置を十字線85の画像maに一致させる。続いて、シミュレート絞り86を移動させてシミュレート絞り86の画像mbをX線透視画像Raの中の治療用放射線の照射範囲に合わせる。
【0004】
一方、従来の放射線治療計画装置には、図12に示すように、天板83の上に載置された被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めを行なうのに用いる照射中心位置決め用ポインタ87が組み込まれている。ポインタ87は、レーザや白熱ランプ等の可視光を出す可視光源88および反射ミラー89と光遮蔽性もある十字線85およびシミュレート絞り86を具備している。可視光源88を点灯すると可視光が反射ミラー89を経て十字線85およびシミュレート絞り86に当たりながら被検体Mに照射されるので、十字線85とシミュレート絞り86の影が被検体Mの体表面に投影されることになる(例えば特許文献1,2を参照。)。
【0005】
そこで、オペレータは、被検体Mの体表面に投影された十字線85の影とシミュレート絞り86の影をインクペン等でなぞってマークを付ける。
従来の放射線治療計画装置では、通常、被検体Mの正面と被検体Mの左右の各横面の計3箇所に対して必要なマーク付けがなされる。治療用放射線の照射領域の範囲決めについては、例えば被検体Mの正面に対してだけ行なえばよい場合もある。必要なマーク付けが全て済めば、ポインタ87による治療用放射線の照射中心の位置決めおよび照射領域の範囲決めは完了となる。
【0006】
放射線治療計画装置での治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めとが済んだ後、図13に示すように、治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置の天板91の上に被検体Mを載置し、先ず治療用放射線照射装置に組み込まれている照射中心位置決め用ポインタ92で治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めを行なう。
【0007】
ポインタ92の場合、被検体Mの正面と被検体Mの左右の各横面の計3箇所に対して照射中心位置指示マークとしての十字状光ライン(図示省略)を投射する投光器93〜95を具備している。オペレータは、天板91を移動させて天板91の上に載置された被検体Mの正面と被検体Mの左右の各横面に投射された十字状光ラインのそれぞれに先の十字線85のマーク付けの形を合わせることにより、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めを行なう(例えば特許文献1を参照。)。
【0008】
また、ポインタ92の場合、放射線照射絞り(図示省略)の影を被検体Mの体表面に投影する絞り影投影機構(図示省略)が備えられていて、この機構で放射線照射絞りの影を被検体Mの体表面に投影しながら放射線照射絞りを移動させて、放射線照射絞りの影を先のシミュレート絞り86のマーク付けの形に合わせることにより、治療用放射線の照射領域の範囲決めを行なう。
このようにして、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めが完了すると、次の治療用放射線の照射過程へ進んでゆく。
【特許文献1】特開平11−155851号公報(第5頁第7〜8欄、図6)
【特許文献2】特開2000−287966号公報(第2頁、図6〜図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の放射線治療計画装置、或いは、治療用放射線照射装置の場合、照射中心位置決め用ポインタを用いる時には照明を落とさなくてはならないという問題がある。ポインタ87により被検体Mの体表面へ十字線85の影やシミュレート絞り86の影を鮮明に投影する為には照明を落とす必要があるのである。またポインタ92により被検体Mの体表面へ十字状光ラインや放射線照射絞りの影を鮮明に投影する為にも照明を落とす必要がある。
【0010】
しかしながら、ポインタを用いる時に照明を落とした場合、周りが暗くなるので、被検体の不安感が増したり、オペレータの作業能率が悪くなったり、更には、被検体やオペレータの安全を確保し難くなったりといった様々な不都合を招来することになる。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませることができる照射中心位置決め用ポインタと、放射線治療計画装置および治療用放射線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明に係る照射中心位置決め用ポインタは、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影・表示を行なう放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体、ないし、治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体における治療用放射線の照射中心(照準中心)の位置決めを行なうのに用いられる照射中心位置決め用ポインタにおいて、放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像ないし治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像を撮影する光学画像撮影手段と、光学画像撮影手段により撮影された光学画像を実質的にリアルタイムで表示する光学画像表示手段と、光学画像表示手段で表示される光学画像に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像を重畳するマーク画像重畳手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]請求項1の発明の照射中心位置決め用ポインタ(以下、適宜「ポインタ」と略記)を用いる被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを、これを放射線治療計画装置で行なう場合と、治療用放射線照射装置で行なう場合のそれぞれについて説明する。
【0014】
ポインタが放射線治療計画装置に組み込まれている場合、先ず放射線治療計画装置では天板に載置されている被検体の放射線画像が撮影されると共に撮影された放射線画像が治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示用マークの画像と一緒に表示される。オペレータは放射線画像を観察しながら、天板を移動させて放射線画像の中の治療用放射線の照射中心として適切な位置を照射中心位置指示用マークの画像の位置に合致させる。
【0015】
続いて、ポインタの光学画像撮影手段により放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像を撮影して光学画像表示手段により実質的にリアルタイムで表示すると共に、光学画像表示手段で表示される光学画像にマーク画像重畳手段によって治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像を重畳する。したがって、光学画像表示手段の画面では、被検体の体表面の光学画像の中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークが十分な明るさで出現する。
そして、オペレータが、光学画像表示手段で実質的にリアルタイムで表示されている被検体の体表面の光学画像に十分な明るさで出現している照射中心位置指示マークの画像をインクペン等でなぞって被検体の体表面に指標を付けることによって、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めが完了となる。
【0016】
また、ポインタが治療用放射線照射装置に組み込まれている場合、治療用放射線照射装置では、ポインタの光学画像撮影手段により天板に載置されている被検体の体表面の光学画像を撮影して光学画像表示手段により実質的にリアルタイムで表示すると共に、光学画像表示手段で表示される光学画像にマーク画像重畳手段によって治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像を重畳する。したがって、光学画像表示手段の画面では、被検体の体表面の光学画像の中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークが十分な明るさで出現する。
【0017】
続いて、オペレータは、天板を移動させて放射線治療計画装置での治療用放射線の照射中心の位置決めで被検体の体表面に付けられた指標を、光学画像表示手段で実質的にリアルタイムで表示されている被検体の体表面の光学画像に十分な明るさで出現している照射中心位置指示マークに合致させることによって、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めが完了となる。
【0018】
即ち、請求項1の発明のポインタの場合、光学画像撮影手段で放射線治療計画装置ないし治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示手段で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示手段で表示される被検体の体表面の光学画像にマーク画像重畳手段により治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像が重畳される構成を備えていて、光学画像表示手段の画面では被検体の体表面の光学画像の中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークが十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、照射中心位置指示マークに従って被検体の体表面に指標を付けたり、或いは、被検体の体表面に付けた指標を照射中心位置指示マークに合致させて、放射線治療計画装置ないし治療用放射線照射装置の天板に載置された被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させることができる。
【0019】
また、請求項2の発明のポインタは、請求項1に記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めでは、被検体における治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターとするものである。
【0020】
[作用・効果]請求項2の発明のポインタの場合、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めにより、被検体における治療用放射線の照射中心は治療用放射線照射装置のアイソセンターとなるので、照射中心の位置決め完了後に、被検体における治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターに合わせる作業を行なう必要はない。
【0021】
また、請求項3の発明のポインタは、請求項1または2に記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像撮影手段の撮影視点が放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影視点、ないし、治療用放射線の放射焦点(放射線源の焦点)と幾何学的に等価な位置にあると共に、光学画像撮影手段の撮影方向が放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影方向、ないし、治療用放射線の放射方向と幾何学的に等価な向きであるものである。
【0022】
[作用・効果]請求項3の発明のポインタの場合、光学画像撮影手段の撮影視点および撮影方向が、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影視点および撮影方向、ないし、治療用放射線の放射焦点および放射方向と幾何学的に等価な位置にあるので、被検体における治療用放射線の照射中心を指示する照射中心位置指示マークの画像を治療用放射線の照射中心に正確に対応させ易い。
【0023】
また、請求項4の発明のポインタは、請求項1から3のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像撮影手段が、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影機構ないし治療用放射線の照射機構に取り付けられているものである。
【0024】
[作用・効果]請求項4の発明のポインタの場合、光学画像撮影手段が、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影機構ないし治療用放射線の照射機構に取り付けられていて、光学画像撮影手段が放射線画像の撮影機構ないし治療用放射線の照射機構と一緒に移動するので、光学画像撮影手段の撮影方向を放射線画像の撮影方向ないし治療用放射線の放射方向の変化に追随して変化させられる。
【0025】
また、請求項5の発明のポインタは、請求項1から4のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像表示手段で表示される光学画像に治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像を重畳する絞り画像重畳手段を備えているものである。
【0026】
[作用・効果]請求項5の発明のポインタの場合、絞り画像重畳手段によって光学画像表示手段で表示される光学画像の中に治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像が十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、被検体における治療用放射線の照射領域の範囲決めを行なうことができる。
【0027】
また、請求項6の発明のポインタは、請求項1から5のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、マーク画像重畳手段は照射中心位置指示マークの画像の重畳を信号処理により行なう構成であり、絞り画像重畳手段はシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像の重畳を信号処理により行なう構成であるものである。
【0028】
[作用・効果]請求項6の発明のポインタの場合、照射中心位置指示マークの画像もシミュレート絞りの画像も信号処理によるソフトウエアで重畳されるので、照射中心位置指示マークやシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像の為の絞りをハードウエアとして設ける必要がない。
【0029】
さらに、請求項7に記載の発明に係る放射線治療計画装置は、天板の上に載置された被検体について放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影・表示を行なう放射線治療計画装置であって、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれていることを特徴とするものである。
【0030】
[作用・効果]請求項7の発明の装置の場合、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれているので、照明を落とさずとも、放射線治療計画装置の天板に載置された被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させることができる。
【0031】
さらに、請求項8に記載の発明に係る治療用放射線照射装置は、天板の上に載置された被検体に対して治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置であって、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれていることを特徴とするものである。
【0032】
[作用・効果]請求項8の発明の装置の場合、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれているので、照明を落とさずとも、治療用放射線照射装置の天板に載置された被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させることができる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1の発明のポインタの場合、光学画像撮影手段で放射線治療計画装置ないし治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示手段で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示手段で表示される被検体の体表面の光学画像にマーク画像重畳手段により治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像が重畳される構成を備えていて、光学画像表示手段の画面では被検体の体表面の光学画像の中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークが十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、照射中心位置指示マークにしたがって被検体の体表面に指標を付けたり、或いは、被検体の体表面に付けた指標を照射中心位置指示マークに合致させて、放射線治療計画装置ないし治療用放射線照射装置の天板に載置された被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させられる。
よって、請求項1の発明の照射中心位置決め用ポインタによれば、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【0034】
さらに、請求項7の発明の放射線治療計画装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれているので、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【0035】
さらに、請求項8の発明の治療用放射線照射装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれているので、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【実施例1】
【0036】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1はこの発明の照射中心位置決め用ポインタの一例が組み込まれている実施例1に係る放射線治療計画装置の全体構成を示すブロック図、図2は実施例1の治療計画装置のX線画像撮影機構および光学画像撮影機構を示す模式図である。
図1の治療計画装置は、放射線治療対象者である被検体Mを載置する天板1と、被検体MへX線を照射するX線管2と、被検体Mの透過X線像を検出する2次元X線検出器であるフラットパネル型X線センサ(以下、適宜「FPD」と略記)3が天板1の上の被検体Mを挟んで対向配置されているX線画像撮影機構4を備えていると共に、X線管2による被検体MへのX線照射に伴ってFPD3から出力されるX線検出信号に基づき被検体MのX線透視画像を取得するX線透視画像取得部5と被検体MのX線透視画像を表示する表示モニタ6などを備え、X線シュミレータとも称される装置である。
【0037】
X線管2およびFPD3は支持アーム7の一端と他端にそれぞれ取り付けられていて、撮影機構回転部8により支持アーム7が水平軸を回転軸として回転させられるのに伴ってX線管2のX線照射軸XAが治療計画装置のアイソセンターACを常に通る状態でX線管2とFPD3が天板1の上の被検体Mを挟んで対向配置状態を維持しながら被検体Mの周りを移動する構成とされている。また、撮影系回転制御部9は操作部10による操作に応じて撮影機構回転部8を駆動して被検体MのX線透視画像を撮影する際の撮影方向を操作部10による操作で設定した向きにセットする。
つまり、被検体MのX線透視画像を撮影する際の撮影方向は、キーボードやマウスなどの入力機器で構成される操作部10による操作によって、図2に示すような正面真上方向以外に、例えば図3(a)に示すように、右側真横方向にセットしたり、図3(b)に示すように、左側真横方向にセットすることができるのである。
【0038】
また、実施例1の治療計画装置は、図4(a)に示すように、治療用放射線の照射中心の位置としてアイソセンターACの位置を指示する照射中心位置指示マークの十字状画像MaをX線透視画像Paに重畳するマーク画像重畳部11と、治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りの井ゲタ状画像MbをX線透視画像Paに重畳する絞り画像重畳部12とを備えている。井ゲタ状画像Mbは4本の直線画像Mb1〜Mb4からなり、操作部10による操作で直線画像Mb1,Mb2の場合は個々に左右に移動させることができ、直線画像Mb3,Mb4の場合は個々に上下に移動させることができる。4本の直線画像Mb1〜Mb4で囲まれる領域が治療用放射線の照射範囲であるので、直線画像Mb1〜Mb4の移動により治療用放射線の照射範囲の位置・大きさが変化する。なお、実施例1の装置のアイソセンターACは、治療用放射線装置のアイソセンターと1対1で対応する設定となっている。
【0039】
さらに、実施例1の治療計画装置には、照射中心位置決め用ポインタ(以下、適宜「ポインタ」と略記)が組み込まれている。実施例1の装置のポインタの場合、天板1の上の被検体Mの体表面の光学画像を反射ミラー14を介して撮影する光学画像撮影カメラ13と、光学画像撮影カメラ13により撮影された光学画像を実質的にリアルタイムで表示する手元配置の光学画像表示モニタ15を備えているのに加え、光学画像表示モニタ15で表示される光学画像PAに、図5(a)に示すように、マーク画像重畳部11によって治療用放射線の照射中心の位置としてアイソセンターACの位置を指示する照射中心位置指示マークの十字状画像MAが重畳されると共に、絞り画像重畳部12によって治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBが重畳される構成とされている。
【0040】
光学画像撮影カメラ13はX線画像撮影機構4に取り付けられていて、図2〜図3に示すように、光学画像撮影カメラ13がX線画像撮影機構4と一緒に移動するので、光学画像撮影カメラ13の撮影方向をX線画像撮影機構4の撮影方向の変化に追随して変化させられる。つまり、光学画像撮影カメラ13の撮影方向はX線画像撮影機構4の撮影方向の変化と連動して変化させられるのである。加えて、光学画像撮影カメラ13の撮影方向は天板1に付設された手元操作部16の操作で変化させられる構成とされている。
【0041】
また、光学画像撮影カメラ13の場合、図1に示すように、カメラ13の焦点と被検体Mの距離がX線管2の焦点と被検体Mの距離と実質的に同じで、反射ミラー14から先はカメラ13の光軸がX線照射軸XAと一致している。したがって、光学画像撮影カメラ13の撮影視点はX線透視画像の撮影視点と幾何学的に等価な位置にあり、光学画像撮影カメラ13の撮影方向はX線透視画像の撮影方向と幾何学的に等価な向きにある。その結果、光学画像表示モニタ15で表示される光学画像PAに出現する十字状画像MAを治療用放射線の照射中心に正確に対応させ易く、また井ゲタ状画像MBも治療用放射線の照射範囲と正確に対応させ易い。
【0042】
なお、X線管2は高電圧発生器などを含むX線照射制御部17のコントロールによりX線を被検体Mに照射する。X線照射制御部17によるコントロールは、操作部10の操作などで設定される照射条件に従って実行される。
天板1は被検体Mを載せたままで天板移動制御部18のコントロールにより前・後と左右・上下に移動させられる。この天板移動制御部18によるコントロールも、操作部10の操作などで設定される移動条件に従って実行される。
また、ホスト制御部19は、コンピュータとその制御プログラムを中心に構成されていて、操作部10および手元操作部16の操作や装置動作の進行状況に応じた指令信号やデータの送受信を行い、装置を正常に稼働させる役割を担っている。
【0043】
続いて、以上に述べた構成を有する実施例1の治療計画装置における治療用放射線の照射中心の位置決めおよび照射領域の範囲決めを図面を参照して説明する。図4は照射中心位置指示マークの十字状画像Maとシミュレート絞りの井ゲタ状画像Mbが重畳されたX線透視画像Paを示す模式図である。図5は照射中心位置指示マークの十字状画像MAとシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBが重畳された光学画像PAを示す模式図である。
治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めは、通常、被検体の正面真上と右側真横と左側真横の各方向について行なうが、それぞれの作業は方向が違う以外は事実上同一であるので、ここでは右側真横についてだけ説明する。なお、治療用放射線の照射目的等によっては、照射領域の範囲決めを、例えば被検体Mの正面真上についてだけ行なえばよい場合もある。
【0044】
図3(a)に示すように、X線画像撮影機構4のX線管2とFPD3が水平方向に対向配置するようにセットし、天板1の上に載置された被検体Mの頭部を右側真横からX線画像撮影機構4で被検体Mの頭部のX線透視画像を撮影すると共に、図4(a)に示すように、撮影したX線透視画像Paを表示モニタ6の画面にマーク画像重畳部11および絞り画像重畳部12で照射中心位置指示マークの十字状画像Maおよびシミュレート絞りの井ゲタ状画像Mbを重畳して映し出す。
【0045】
続いて、操作部10を操作して天板1を移動させることにより、図4(b)に示すように、X線透視画像Paの中の治療用放射線の照射中心として適切な位置を十字状画像Maに合致させる。
さらに、操作部10を操作して井ゲタ状画像Mbの直線画像Mb1〜Mb4を移動させることにより、図4(c)に示すように、X線透視画像Paの中の治療用放射線の照射領域として適切な範囲を井ゲタ状画像Mbの直線画像Mb1〜Mb4で取り囲む。
【0046】
次に、オペレータはポインタを用いる為に被検体Mの傍らに寄る。天板1の上に載置された被検体Mの頭部を右側真横からポインタの光学画像撮影カメラ13で被検体Mの頭部表面の光学画像を撮影すると共に、図5(a)に示すように、撮影した光学画像PAを天板1の傍に置かれている光学画像表示モニタ15の画面にマーク画像重畳部11および絞り画像重畳部12で照射中心位置指示マークの十字状画像MAおよびシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBを先のX線透視画像Paに基づく設定通りのままに重畳し実質的にリアルタイムで一緒に映し出す。光学画像表示モニタ15の画面では、治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークやシミュレート絞りが光学画像PAの中に十分な明るさで出現している。
なお、光学画像PAとX線透視画像Paの間に倍率の差がある時は、絞り画像重畳部12が井ゲタ状画像MBに光学画像PAとX線透視画像Paの間の倍率の差に応じた修正を施すので、光学画像PAがX線透視画像Paと違う倍率でも井ゲタ状画像MBが誤った範囲を治療用放射線の照射領域として指示することはない。
【0047】
そして、オペレータは、図5(b)に示すように、光学画像表示モニタ15で実質的にリアルタイムで表示されている被検体の頭部表面の光学画像PAに十分な明るさで出現している照射中心位置指示マークの十字状画像MAとシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBをインクペンIPでなぞることにより、図6に示すように、被検体Mの頭部表面に治療用放射線の照射中心を指示する十字状指標mAと治療用放射線の照射領域を指示する井ゲタ状指標mBをマーク付けする。光学画像PAにはインクペンIPの先も映し出されるので、インクペンIPで画像をなぞる作業は容易である。
これで、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めは完了となる。
【0048】
以上に述べたように、実施例1の治療計画装置のポインタの場合、光学画像撮影カメラ13で天板1の上に載置された被検体Mの体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示モニタ15で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示モニタ15で表示される被検体Mの体表面の光学画像にマーク画像重畳部11や絞り画像重畳部12で照射中心位置指示マークの十字状画像MAやシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBが重畳される構成を備えていて、光学画像表示モニタ15の画面では被検体Mの体表面の光学画像の中に照射中心位置指示マークやシミュレート絞りが十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、照射中心位置指示マークやシミュレート絞りをインクペン等でなぞって被検体Mの体表面に指標を付けて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めを速やかに完了させられる。
よって、実施例1の装置の場合、組み込まれているポインタにより、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めや照射領域の範囲決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【0049】
また、実施例1の装置のポインタの場合、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めによって、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心は治療用放射線照射装置のアイソセンターとなるので、照射中心の位置決め完了後に、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターに合わせる作業を行なう必要はない。
加えて、実施例1の装置のポインタでは、照射中心位置指示マークの十字状画像MAもシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBも信号処理によるソフトウエアで重畳されるので、照射中心位置指示マークやシミュレート絞りをハードウエアとして設ける必要がない。
【実施例2】
【0050】
次に、この発明の実施例2を説明する。図7はこの発明の照射中心位置決め用ポインタの一例が組み込まれている実施例2に係る治療用放射線照射装置の要部構成を示すブロック図である。実施例2の治療用放射線照射装置は、以下に述べる点の他は実施例1の装置と実質的に同一であるので、相違点のみを説明し、共通点の説明は省略する。また実施例1の場合と実質的に同様の機能を発揮するものには実施例1と同一番号としている。
図7の放射線照射装置は、放射線治療対象者である被検体Mを載置する天板1と、被検体Mへ治療用放射線を照射する放射線源21を具備する放射線照射機構20を備えている装置であって、具体的には例えばライナックなどが挙げられる。
【0051】
放射線源21は支持アーム22の先端に取り付けられていて、照射撮影機構回転部23により支持アーム22が水平軸を回転軸として回転させられるのに伴って放射線源21の放射線照射軸XBが放射線照射装置のアイソセンターBCを常に通る状態で放射線源21が被検体Mの周りを移動する構成とされている。また、照射撮影系回転制御部24は操作部25による操作に応じて照射撮影機構回転部23を駆動して被検体Mに放射線を照射する際の照射方向を操作部25による操作で設定した向きにセットする。
【0052】
放射線源21は、放射線照射制御部26のコントロールによりX線を被検体Mに照射する。放射線源21が出す放射線としては、特定の放射線に限られるものではなく、例えば高エネルギーX線やγ線の他に、中性子線など様々な放射線が挙げられる。また、放射線源21は放射性同位元素であってもよい。
また、放射線照射機構20では、放射線源21の前面に治療用放射線の照射領域を規定する放射線照射絞り27が配備されていて、絞り開閉制御部28のコントロールにより放射線照射絞り27の開度が変わって治療用放射線の照射領域が変化する構成とされている。
天板1は被検体Mを載せたままで天板移動制御部18のコントロールにより前・後と左右・上下に移動させられる。この天板移動制御部18によるコントロールは、操作部25や手元操作部33の操作で設定される移動条件に従って実行される。
なお、表示モニタ29は装置稼働用の操作メニューや必要な画像等を表示する。
【0053】
さらに、実施例2の放射線照射装置には、照射中心位置決め用ポインタ(以下、適宜「ポインタ」と略記)が組み込まれている。実施例2の装置のポインタの場合、天板1の上の被検体Mの体表面の光学画像を反射ミラー31を介して撮影する光学画像撮影カメラ30と、光学画像撮影カメラ30により撮影された光学画像を実質的にリアルタイムで表示する手元設置用の光学画像表示モニタ32を備えているのに加え、光学画像表示モニタ32で表示される光学画像QAに、図8(a)に示すように、マーク画像重畳部34によって治療用放射線の照射中心の位置としてアイソセンターBCの位置を指示する照射中心位置指示マークの十字状画像NAが重畳されると共に、絞り画像重畳部35によって治療用放射線の照射範囲を規定する放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBが重畳される構成とされている。
【0054】
光学画像撮影カメラ30は放射線照射機構20に取り付けられていて、光学画像撮影カメラ30が放射線照射機構20に一緒に移動するので、光学画像撮影カメラ30の撮影方向を放射線照射機構20の照射方向の変化に追随して変化させられる。この光学画像撮影カメラ30の撮影方向は天板1に付設された手元操作部33の操作で変化させられる。
【0055】
また、光学画像撮影カメラ30の場合も、図7に示すように、カメラ30の焦点と被検体Mの距離が放射線源21の焦点と被検体Mの距離と実質的に同じで、反射ミラー31から先はカメラ30の光軸が放射線照射軸XBと一致している。したがって、光学画像撮影カメラ30の撮影視点は治療用放射線の放射焦点と幾何学的に等価な位置にあり、光学画像撮影カメラ30の撮影方向は、治療用放射線の照射方向と幾何学的に等価な向きにある。その結果、光学画像表示モニタ32で表示される光学画像QAに出現する十字状画像NAを治療用放射線の照射中心の位置に正確に対応させ易く、井ゲタ状画像NBを治療用放射線の照射範囲に正確に対応させ易い。
【0056】
井ゲタ状画像NBは4本の直線画像NB1〜NB4からなり、手元操作部33による操作で直線画像NB1,NB2の場合は個々に左右に移動させることができ、直線画像NB3,Mb4の場合は個々に上下に移動させることができる。4本の直線画像Mb1〜Mb4で囲まれる領域が治療用放射線の照射範囲であるので、直線画像NB1〜NB4の移動により治療用放射線の照射範囲の位置・大きさが変化する。実施例2の場合、手元操作部33による井ゲタ状画像NBの変化は、絞り画像重畳部35を経由して絞り開閉制御部28に伝達されると共に、井ゲタ状画像NBで指示される照射範囲だけに放射線を照射するように放射線照射絞り27の開度が調整される構成とされている。
なお、ホスト制御部19は、コンピュータとその制御プログラムを中心に構成されていて、操作部25および手元操作部33の操作や装置動作の進行状況に応じた指令信号やデータの送受信を行い、装置を正常に稼働させる役割を担っている。
【0057】
続いて、以上に述べた構成を有する実施例2の放射線照射装置の照射中心位置決め用ポインタを用いる被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めおよび照射領域の範囲決めを図面を参照して説明する。図8は照射中心位置指示マークの十字状画像NAと放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBが重畳された光学画像QAを示す模式図である。
実施例2の装置における治療用放射線の照射中心の位置決めおよび照射領域の範囲決めは、通常、被検体Mの正面真上と右側真横と左側真横の各方向について行なうが、それぞれの作業は方向が異なる以外は事実上同一であるので、ここでは右側真横についてだけ説明する。なお、治療用放射線の照射目的等によっては、照射領域の範囲決めを、例えば被検体Mの正面真上についてだけ行なえばよい場合もある。
【0058】
オペレータはポインタを用いる為に被検体Mの傍らに寄り、手元操作部33の操作で照射撮影機構回転部23を駆動してポインタの光学画像撮影カメラ30の撮影方向を被検体Mの右側真横の向きにセットする。そして、天板1の上に載置された被検体Mの頭部表面を右側真横から光学画像撮影カメラ30で撮影すると共に、図8(a)に示すように、撮影した光学画像QAを天板1の傍に置かれている光学画像表示モニタ32の画面に照射中心位置指示マークの十字状画像NAと放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBを重畳し実質的にリアルタイムで一緒に映し出す。光学画像表示モニタ32の画面では、被検体Mの頭部表面を撮影した光学画像QAの中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークや放射線照射絞りが十分な明るさで出現する。
【0059】
そして、オペレータは、手元操作部33を操作して天板1を移動させることにより、図8(b)に示すように、光学画像表示モニタ32で表示されている被検体Mの頭部表面の光学画像QAに十分な明るさで出現している照射中心位置指示マークの十字状画像NAに被検体Mの頭部表面にマーク付けされた治療用放射線の照射中心を指示する十字状指標mAを合致させる。
【0060】
続いて、オペレータは手元操作部33を操作して井ゲタ状画像NBの直線画像NB1〜NB4を移動させることにより、図8(c)に示すように、被検体Mの頭部表面にマーク付けされた治療用放射線の照射領域を指示する十字状指標mBを井ゲタ状画像NBの直線画像NB1〜NB4に合致させる。
これで、治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めは完了となる。なお、放射線照射絞り27の開度は絞り開閉制御部28によって井ゲタ状画像NBで指示されている照射範囲だけに放射線を照射するように調整される
【0061】
以上に述べたように、実施例2の放射線照射装置のポインタの場合、光学画像撮影カメラ30で天板1の上に載置された被検体Mの体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示モニタ32で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示モニタ32で表示される被検体Mの体表面の光学画像QAにマーク画像重畳部34や絞り画像重畳部35で照射中心位置指示マークの十字状画像NAや放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBが重畳される構成を備えていて、光学画像表示モニタ32の画面では被検体Mの体表面の光学画像QAの中に照射中心位置指示マークや放射線照射絞り27が十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、被検体の体表面にマーク付けされた治療用放射線の照射中心を指示する十字状指標mAや照射領域を指示する十字状画像NAを放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBに合致させて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めを速やかに完了させられる。
よって、実施例2の装置の場合も、組み込まれているポインタにより、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めや照射領域の範囲決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【0062】
また、実施例2の装置のポインタの場合も、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めにより、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心は治療用放射線照射装置のアイソセンターとなるので、照射中心の位置決め完了後に、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターに合わせる作業を行なう必要はない。
加えて、実施例1の装置のポインタでも、照射中心位置指示マークの十字状画像NAも放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBも信号処理によるソフトウエアで重畳されるので、照射中心位置指示マークや放射線照射絞りの画像の為の絞りをハードウエアとして設ける必要がない。
【0063】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)実施例1の装置では、X線画像撮影機構がX線透視画像撮影用の構成であったが、X線画像撮影機構はX線CT画像撮影用の構成であってもよい。
【0064】
(2)実施例1,2の装置の場合、放射線の照射領域を指示するシミュレート絞りや放射線照射絞りの画像が井ゲタ状画像であったが、シミュレート絞りや放射線照射絞りの画像は、井ゲタ状画像に限らず、円や点の画像であってもよいし、図9に示すように、凹凸のある複雑な形状の画像PQであってもよい。
【0065】
(3)実施例1の装置では被検体Mの透過X線像を検出する2次元X線検出器がFPDであったが、透過X線像検出用の2次元X線検出器はFPDに限らず、例えばイメージインテンシファイアであってもよい。
【0066】
(4)実施例2の装置において、実施例1の装置と同様のX線画像撮影機構も備え、被検体MのX線透視画像を撮影・表示して治療用放射線の照射中心の位置決めや照射領域の範囲決め結果のチェックが行なえる他は実施例と同様の構成とした装置が、実施例2の変形例として挙げられる。この変形例の場合、さらに光学画像撮影カメラ30はX線画像撮影機構に取り付けてもよい。
【0067】
(5)実施例2の装置では、光学画像撮影カメラ30が1個だけであったが、図10に示すように、光学画像撮影カメラ30を3個設け、被検体の正面真上と右側横面と左側横面を別々の光学画像撮影カメラ30で撮影する構成としてもよい。
また、実施例1の装置の場合でも、光学画像撮影カメラ13を3個設けて、被検体の正面真上と右側横面と左側横面を別々の光学画像撮影カメラ13で撮影する構成としてもよい。
【0068】
(6)実施例1の装置や実施例2の装置の場合、シミュレート絞りや放射線照射絞りの画像はソフトウエアによるものではなく、X線不透過物質や可視光不透過物質で形成したハードウエアによるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1の放射線治療計画装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の治療計画装置のX線画像撮影機構と光学画像撮影機構を示す模式図である。
【図3】実施例1の装置でX線画像撮影機構や光学画像撮影機構の撮影方向を変化させた時の状態を示す模式図である。
【図4】照射中心位置指示マークとシミュレート絞りの画像が重畳されたX線透視画像を示す模式図である。
【図5】照射中心位置指示マークとシミュレート絞りの画像が重畳された光学画像を示す模式図である。
【図6】治療用放射線の照射中心および照射領域を指示する指標を付けた被検体の頭部を示す横面図である。
【図7】実施例2の治療用放射線照射装置の要部構成を示すブロック図である。
【図8】照射中心位置指示マークと放射線照射絞りの画像が重畳された光学画像を示す模式図である。
【図9】シミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像の他の例を示す模式図である。
【図10】実施例2の装置での光学画像撮影カメラの他の配置例を模式的に示す斜視図である。
【図11】従来の放射線治療計画装置のX線透視画像の撮影・表示の為の概略構成を示す模式図である。
【図12】従来の放射線治療計画装置の照射中心位置決め用ポインタを示す概略図である。
【図13】従来の治療用放射線照射装置の照射中心位置決め用ポインタを示す概略図である。
【符号の説明】
【0070】
1 …天板
4 …X線画像撮影機構
11,34 …マーク画像重畳部
12,35 …絞り画像重畳部
13,30 …光学画像撮影カメラ
15,32 …光学画像表示モニタ
20 …放射線照射機構
AC,BC …アイソセンター
M …被検体
MA,Ma,NA…照射中心位置指示マークの十字状画像
MB,Mb …シミュレート絞りの井ゲタ状画像
NB …放射線照射絞りの井ゲタ状画像
PA,QA …光学画像
Pa …X線透視画像
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線治療計画装置、或いは、治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体における治療用放射線の照射中心(照準中心)の位置決めを行なうのに用いられる照射中心位置決め用ポインタと、このポインタが組み込まれている放射線治療計画装置および治療用放射線照射装置に係り、特に被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体に放射線治療を施す場合、先ず図11および図12に示す放射線治療計画装置を使って放射線治療計画を立案する。この放射線治療計画立案の際には、次のようにして、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めが行なわれる。
従来の放射線治療計画装置では、図11に示すように、X線管81による被検体MへのX線照射に伴って透過X線像検出用の2次元X線検出器82から出力されるX線検出信号に基づき天板83に載置された被検体MのX線透視画像が取得されると共に、後段の画像表示モニタ84で取得されたX線透視画像Raが表示される。
【0003】
また、画像表示モニタ84で表示されるX線透視画像Raには、治療用放射線の照射中心の位置を指示するX線遮蔽性の十字線85の画像maに加え、治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞り86の画像mbが重畳表示される。
そして、オペレータは、天板83を移動させてX線透視画像Raの中の治療用放射線の照射中心として適切な位置を十字線85の画像maに一致させる。続いて、シミュレート絞り86を移動させてシミュレート絞り86の画像mbをX線透視画像Raの中の治療用放射線の照射範囲に合わせる。
【0004】
一方、従来の放射線治療計画装置には、図12に示すように、天板83の上に載置された被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めを行なうのに用いる照射中心位置決め用ポインタ87が組み込まれている。ポインタ87は、レーザや白熱ランプ等の可視光を出す可視光源88および反射ミラー89と光遮蔽性もある十字線85およびシミュレート絞り86を具備している。可視光源88を点灯すると可視光が反射ミラー89を経て十字線85およびシミュレート絞り86に当たりながら被検体Mに照射されるので、十字線85とシミュレート絞り86の影が被検体Mの体表面に投影されることになる(例えば特許文献1,2を参照。)。
【0005】
そこで、オペレータは、被検体Mの体表面に投影された十字線85の影とシミュレート絞り86の影をインクペン等でなぞってマークを付ける。
従来の放射線治療計画装置では、通常、被検体Mの正面と被検体Mの左右の各横面の計3箇所に対して必要なマーク付けがなされる。治療用放射線の照射領域の範囲決めについては、例えば被検体Mの正面に対してだけ行なえばよい場合もある。必要なマーク付けが全て済めば、ポインタ87による治療用放射線の照射中心の位置決めおよび照射領域の範囲決めは完了となる。
【0006】
放射線治療計画装置での治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めとが済んだ後、図13に示すように、治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置の天板91の上に被検体Mを載置し、先ず治療用放射線照射装置に組み込まれている照射中心位置決め用ポインタ92で治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めを行なう。
【0007】
ポインタ92の場合、被検体Mの正面と被検体Mの左右の各横面の計3箇所に対して照射中心位置指示マークとしての十字状光ライン(図示省略)を投射する投光器93〜95を具備している。オペレータは、天板91を移動させて天板91の上に載置された被検体Mの正面と被検体Mの左右の各横面に投射された十字状光ラインのそれぞれに先の十字線85のマーク付けの形を合わせることにより、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めを行なう(例えば特許文献1を参照。)。
【0008】
また、ポインタ92の場合、放射線照射絞り(図示省略)の影を被検体Mの体表面に投影する絞り影投影機構(図示省略)が備えられていて、この機構で放射線照射絞りの影を被検体Mの体表面に投影しながら放射線照射絞りを移動させて、放射線照射絞りの影を先のシミュレート絞り86のマーク付けの形に合わせることにより、治療用放射線の照射領域の範囲決めを行なう。
このようにして、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めが完了すると、次の治療用放射線の照射過程へ進んでゆく。
【特許文献1】特開平11−155851号公報(第5頁第7〜8欄、図6)
【特許文献2】特開2000−287966号公報(第2頁、図6〜図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の放射線治療計画装置、或いは、治療用放射線照射装置の場合、照射中心位置決め用ポインタを用いる時には照明を落とさなくてはならないという問題がある。ポインタ87により被検体Mの体表面へ十字線85の影やシミュレート絞り86の影を鮮明に投影する為には照明を落とす必要があるのである。またポインタ92により被検体Mの体表面へ十字状光ラインや放射線照射絞りの影を鮮明に投影する為にも照明を落とす必要がある。
【0010】
しかしながら、ポインタを用いる時に照明を落とした場合、周りが暗くなるので、被検体の不安感が増したり、オペレータの作業能率が悪くなったり、更には、被検体やオペレータの安全を確保し難くなったりといった様々な不都合を招来することになる。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませることができる照射中心位置決め用ポインタと、放射線治療計画装置および治療用放射線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明に係る照射中心位置決め用ポインタは、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影・表示を行なう放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体、ないし、治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体における治療用放射線の照射中心(照準中心)の位置決めを行なうのに用いられる照射中心位置決め用ポインタにおいて、放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像ないし治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像を撮影する光学画像撮影手段と、光学画像撮影手段により撮影された光学画像を実質的にリアルタイムで表示する光学画像表示手段と、光学画像表示手段で表示される光学画像に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像を重畳するマーク画像重畳手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]請求項1の発明の照射中心位置決め用ポインタ(以下、適宜「ポインタ」と略記)を用いる被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを、これを放射線治療計画装置で行なう場合と、治療用放射線照射装置で行なう場合のそれぞれについて説明する。
【0014】
ポインタが放射線治療計画装置に組み込まれている場合、先ず放射線治療計画装置では天板に載置されている被検体の放射線画像が撮影されると共に撮影された放射線画像が治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示用マークの画像と一緒に表示される。オペレータは放射線画像を観察しながら、天板を移動させて放射線画像の中の治療用放射線の照射中心として適切な位置を照射中心位置指示用マークの画像の位置に合致させる。
【0015】
続いて、ポインタの光学画像撮影手段により放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像を撮影して光学画像表示手段により実質的にリアルタイムで表示すると共に、光学画像表示手段で表示される光学画像にマーク画像重畳手段によって治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像を重畳する。したがって、光学画像表示手段の画面では、被検体の体表面の光学画像の中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークが十分な明るさで出現する。
そして、オペレータが、光学画像表示手段で実質的にリアルタイムで表示されている被検体の体表面の光学画像に十分な明るさで出現している照射中心位置指示マークの画像をインクペン等でなぞって被検体の体表面に指標を付けることによって、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めが完了となる。
【0016】
また、ポインタが治療用放射線照射装置に組み込まれている場合、治療用放射線照射装置では、ポインタの光学画像撮影手段により天板に載置されている被検体の体表面の光学画像を撮影して光学画像表示手段により実質的にリアルタイムで表示すると共に、光学画像表示手段で表示される光学画像にマーク画像重畳手段によって治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像を重畳する。したがって、光学画像表示手段の画面では、被検体の体表面の光学画像の中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークが十分な明るさで出現する。
【0017】
続いて、オペレータは、天板を移動させて放射線治療計画装置での治療用放射線の照射中心の位置決めで被検体の体表面に付けられた指標を、光学画像表示手段で実質的にリアルタイムで表示されている被検体の体表面の光学画像に十分な明るさで出現している照射中心位置指示マークに合致させることによって、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めが完了となる。
【0018】
即ち、請求項1の発明のポインタの場合、光学画像撮影手段で放射線治療計画装置ないし治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示手段で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示手段で表示される被検体の体表面の光学画像にマーク画像重畳手段により治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像が重畳される構成を備えていて、光学画像表示手段の画面では被検体の体表面の光学画像の中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークが十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、照射中心位置指示マークに従って被検体の体表面に指標を付けたり、或いは、被検体の体表面に付けた指標を照射中心位置指示マークに合致させて、放射線治療計画装置ないし治療用放射線照射装置の天板に載置された被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させることができる。
【0019】
また、請求項2の発明のポインタは、請求項1に記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めでは、被検体における治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターとするものである。
【0020】
[作用・効果]請求項2の発明のポインタの場合、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めにより、被検体における治療用放射線の照射中心は治療用放射線照射装置のアイソセンターとなるので、照射中心の位置決め完了後に、被検体における治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターに合わせる作業を行なう必要はない。
【0021】
また、請求項3の発明のポインタは、請求項1または2に記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像撮影手段の撮影視点が放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影視点、ないし、治療用放射線の放射焦点(放射線源の焦点)と幾何学的に等価な位置にあると共に、光学画像撮影手段の撮影方向が放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影方向、ないし、治療用放射線の放射方向と幾何学的に等価な向きであるものである。
【0022】
[作用・効果]請求項3の発明のポインタの場合、光学画像撮影手段の撮影視点および撮影方向が、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影視点および撮影方向、ないし、治療用放射線の放射焦点および放射方向と幾何学的に等価な位置にあるので、被検体における治療用放射線の照射中心を指示する照射中心位置指示マークの画像を治療用放射線の照射中心に正確に対応させ易い。
【0023】
また、請求項4の発明のポインタは、請求項1から3のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像撮影手段が、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影機構ないし治療用放射線の照射機構に取り付けられているものである。
【0024】
[作用・効果]請求項4の発明のポインタの場合、光学画像撮影手段が、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影機構ないし治療用放射線の照射機構に取り付けられていて、光学画像撮影手段が放射線画像の撮影機構ないし治療用放射線の照射機構と一緒に移動するので、光学画像撮影手段の撮影方向を放射線画像の撮影方向ないし治療用放射線の放射方向の変化に追随して変化させられる。
【0025】
また、請求項5の発明のポインタは、請求項1から4のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像表示手段で表示される光学画像に治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像を重畳する絞り画像重畳手段を備えているものである。
【0026】
[作用・効果]請求項5の発明のポインタの場合、絞り画像重畳手段によって光学画像表示手段で表示される光学画像の中に治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像が十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、被検体における治療用放射線の照射領域の範囲決めを行なうことができる。
【0027】
また、請求項6の発明のポインタは、請求項1から5のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、マーク画像重畳手段は照射中心位置指示マークの画像の重畳を信号処理により行なう構成であり、絞り画像重畳手段はシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像の重畳を信号処理により行なう構成であるものである。
【0028】
[作用・効果]請求項6の発明のポインタの場合、照射中心位置指示マークの画像もシミュレート絞りの画像も信号処理によるソフトウエアで重畳されるので、照射中心位置指示マークやシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像の為の絞りをハードウエアとして設ける必要がない。
【0029】
さらに、請求項7に記載の発明に係る放射線治療計画装置は、天板の上に載置された被検体について放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影・表示を行なう放射線治療計画装置であって、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれていることを特徴とするものである。
【0030】
[作用・効果]請求項7の発明の装置の場合、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれているので、照明を落とさずとも、放射線治療計画装置の天板に載置された被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させることができる。
【0031】
さらに、請求項8に記載の発明に係る治療用放射線照射装置は、天板の上に載置された被検体に対して治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置であって、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれていることを特徴とするものである。
【0032】
[作用・効果]請求項8の発明の装置の場合、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれているので、照明を落とさずとも、治療用放射線照射装置の天板に載置された被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させることができる。
【発明の効果】
【0033】
請求項1の発明のポインタの場合、光学画像撮影手段で放射線治療計画装置ないし治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示手段で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示手段で表示される被検体の体表面の光学画像にマーク画像重畳手段により治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像が重畳される構成を備えていて、光学画像表示手段の画面では被検体の体表面の光学画像の中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークが十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、照射中心位置指示マークにしたがって被検体の体表面に指標を付けたり、或いは、被検体の体表面に付けた指標を照射中心位置指示マークに合致させて、放射線治療計画装置ないし治療用放射線照射装置の天板に載置された被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めを速やかに完了させられる。
よって、請求項1の発明の照射中心位置決め用ポインタによれば、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【0034】
さらに、請求項7の発明の放射線治療計画装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれているので、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【0035】
さらに、請求項8の発明の治療用放射線照射装置によれば、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれているので、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【実施例1】
【0036】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。図1はこの発明の照射中心位置決め用ポインタの一例が組み込まれている実施例1に係る放射線治療計画装置の全体構成を示すブロック図、図2は実施例1の治療計画装置のX線画像撮影機構および光学画像撮影機構を示す模式図である。
図1の治療計画装置は、放射線治療対象者である被検体Mを載置する天板1と、被検体MへX線を照射するX線管2と、被検体Mの透過X線像を検出する2次元X線検出器であるフラットパネル型X線センサ(以下、適宜「FPD」と略記)3が天板1の上の被検体Mを挟んで対向配置されているX線画像撮影機構4を備えていると共に、X線管2による被検体MへのX線照射に伴ってFPD3から出力されるX線検出信号に基づき被検体MのX線透視画像を取得するX線透視画像取得部5と被検体MのX線透視画像を表示する表示モニタ6などを備え、X線シュミレータとも称される装置である。
【0037】
X線管2およびFPD3は支持アーム7の一端と他端にそれぞれ取り付けられていて、撮影機構回転部8により支持アーム7が水平軸を回転軸として回転させられるのに伴ってX線管2のX線照射軸XAが治療計画装置のアイソセンターACを常に通る状態でX線管2とFPD3が天板1の上の被検体Mを挟んで対向配置状態を維持しながら被検体Mの周りを移動する構成とされている。また、撮影系回転制御部9は操作部10による操作に応じて撮影機構回転部8を駆動して被検体MのX線透視画像を撮影する際の撮影方向を操作部10による操作で設定した向きにセットする。
つまり、被検体MのX線透視画像を撮影する際の撮影方向は、キーボードやマウスなどの入力機器で構成される操作部10による操作によって、図2に示すような正面真上方向以外に、例えば図3(a)に示すように、右側真横方向にセットしたり、図3(b)に示すように、左側真横方向にセットすることができるのである。
【0038】
また、実施例1の治療計画装置は、図4(a)に示すように、治療用放射線の照射中心の位置としてアイソセンターACの位置を指示する照射中心位置指示マークの十字状画像MaをX線透視画像Paに重畳するマーク画像重畳部11と、治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りの井ゲタ状画像MbをX線透視画像Paに重畳する絞り画像重畳部12とを備えている。井ゲタ状画像Mbは4本の直線画像Mb1〜Mb4からなり、操作部10による操作で直線画像Mb1,Mb2の場合は個々に左右に移動させることができ、直線画像Mb3,Mb4の場合は個々に上下に移動させることができる。4本の直線画像Mb1〜Mb4で囲まれる領域が治療用放射線の照射範囲であるので、直線画像Mb1〜Mb4の移動により治療用放射線の照射範囲の位置・大きさが変化する。なお、実施例1の装置のアイソセンターACは、治療用放射線装置のアイソセンターと1対1で対応する設定となっている。
【0039】
さらに、実施例1の治療計画装置には、照射中心位置決め用ポインタ(以下、適宜「ポインタ」と略記)が組み込まれている。実施例1の装置のポインタの場合、天板1の上の被検体Mの体表面の光学画像を反射ミラー14を介して撮影する光学画像撮影カメラ13と、光学画像撮影カメラ13により撮影された光学画像を実質的にリアルタイムで表示する手元配置の光学画像表示モニタ15を備えているのに加え、光学画像表示モニタ15で表示される光学画像PAに、図5(a)に示すように、マーク画像重畳部11によって治療用放射線の照射中心の位置としてアイソセンターACの位置を指示する照射中心位置指示マークの十字状画像MAが重畳されると共に、絞り画像重畳部12によって治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBが重畳される構成とされている。
【0040】
光学画像撮影カメラ13はX線画像撮影機構4に取り付けられていて、図2〜図3に示すように、光学画像撮影カメラ13がX線画像撮影機構4と一緒に移動するので、光学画像撮影カメラ13の撮影方向をX線画像撮影機構4の撮影方向の変化に追随して変化させられる。つまり、光学画像撮影カメラ13の撮影方向はX線画像撮影機構4の撮影方向の変化と連動して変化させられるのである。加えて、光学画像撮影カメラ13の撮影方向は天板1に付設された手元操作部16の操作で変化させられる構成とされている。
【0041】
また、光学画像撮影カメラ13の場合、図1に示すように、カメラ13の焦点と被検体Mの距離がX線管2の焦点と被検体Mの距離と実質的に同じで、反射ミラー14から先はカメラ13の光軸がX線照射軸XAと一致している。したがって、光学画像撮影カメラ13の撮影視点はX線透視画像の撮影視点と幾何学的に等価な位置にあり、光学画像撮影カメラ13の撮影方向はX線透視画像の撮影方向と幾何学的に等価な向きにある。その結果、光学画像表示モニタ15で表示される光学画像PAに出現する十字状画像MAを治療用放射線の照射中心に正確に対応させ易く、また井ゲタ状画像MBも治療用放射線の照射範囲と正確に対応させ易い。
【0042】
なお、X線管2は高電圧発生器などを含むX線照射制御部17のコントロールによりX線を被検体Mに照射する。X線照射制御部17によるコントロールは、操作部10の操作などで設定される照射条件に従って実行される。
天板1は被検体Mを載せたままで天板移動制御部18のコントロールにより前・後と左右・上下に移動させられる。この天板移動制御部18によるコントロールも、操作部10の操作などで設定される移動条件に従って実行される。
また、ホスト制御部19は、コンピュータとその制御プログラムを中心に構成されていて、操作部10および手元操作部16の操作や装置動作の進行状況に応じた指令信号やデータの送受信を行い、装置を正常に稼働させる役割を担っている。
【0043】
続いて、以上に述べた構成を有する実施例1の治療計画装置における治療用放射線の照射中心の位置決めおよび照射領域の範囲決めを図面を参照して説明する。図4は照射中心位置指示マークの十字状画像Maとシミュレート絞りの井ゲタ状画像Mbが重畳されたX線透視画像Paを示す模式図である。図5は照射中心位置指示マークの十字状画像MAとシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBが重畳された光学画像PAを示す模式図である。
治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めは、通常、被検体の正面真上と右側真横と左側真横の各方向について行なうが、それぞれの作業は方向が違う以外は事実上同一であるので、ここでは右側真横についてだけ説明する。なお、治療用放射線の照射目的等によっては、照射領域の範囲決めを、例えば被検体Mの正面真上についてだけ行なえばよい場合もある。
【0044】
図3(a)に示すように、X線画像撮影機構4のX線管2とFPD3が水平方向に対向配置するようにセットし、天板1の上に載置された被検体Mの頭部を右側真横からX線画像撮影機構4で被検体Mの頭部のX線透視画像を撮影すると共に、図4(a)に示すように、撮影したX線透視画像Paを表示モニタ6の画面にマーク画像重畳部11および絞り画像重畳部12で照射中心位置指示マークの十字状画像Maおよびシミュレート絞りの井ゲタ状画像Mbを重畳して映し出す。
【0045】
続いて、操作部10を操作して天板1を移動させることにより、図4(b)に示すように、X線透視画像Paの中の治療用放射線の照射中心として適切な位置を十字状画像Maに合致させる。
さらに、操作部10を操作して井ゲタ状画像Mbの直線画像Mb1〜Mb4を移動させることにより、図4(c)に示すように、X線透視画像Paの中の治療用放射線の照射領域として適切な範囲を井ゲタ状画像Mbの直線画像Mb1〜Mb4で取り囲む。
【0046】
次に、オペレータはポインタを用いる為に被検体Mの傍らに寄る。天板1の上に載置された被検体Mの頭部を右側真横からポインタの光学画像撮影カメラ13で被検体Mの頭部表面の光学画像を撮影すると共に、図5(a)に示すように、撮影した光学画像PAを天板1の傍に置かれている光学画像表示モニタ15の画面にマーク画像重畳部11および絞り画像重畳部12で照射中心位置指示マークの十字状画像MAおよびシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBを先のX線透視画像Paに基づく設定通りのままに重畳し実質的にリアルタイムで一緒に映し出す。光学画像表示モニタ15の画面では、治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークやシミュレート絞りが光学画像PAの中に十分な明るさで出現している。
なお、光学画像PAとX線透視画像Paの間に倍率の差がある時は、絞り画像重畳部12が井ゲタ状画像MBに光学画像PAとX線透視画像Paの間の倍率の差に応じた修正を施すので、光学画像PAがX線透視画像Paと違う倍率でも井ゲタ状画像MBが誤った範囲を治療用放射線の照射領域として指示することはない。
【0047】
そして、オペレータは、図5(b)に示すように、光学画像表示モニタ15で実質的にリアルタイムで表示されている被検体の頭部表面の光学画像PAに十分な明るさで出現している照射中心位置指示マークの十字状画像MAとシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBをインクペンIPでなぞることにより、図6に示すように、被検体Mの頭部表面に治療用放射線の照射中心を指示する十字状指標mAと治療用放射線の照射領域を指示する井ゲタ状指標mBをマーク付けする。光学画像PAにはインクペンIPの先も映し出されるので、インクペンIPで画像をなぞる作業は容易である。
これで、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めは完了となる。
【0048】
以上に述べたように、実施例1の治療計画装置のポインタの場合、光学画像撮影カメラ13で天板1の上に載置された被検体Mの体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示モニタ15で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示モニタ15で表示される被検体Mの体表面の光学画像にマーク画像重畳部11や絞り画像重畳部12で照射中心位置指示マークの十字状画像MAやシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBが重畳される構成を備えていて、光学画像表示モニタ15の画面では被検体Mの体表面の光学画像の中に照射中心位置指示マークやシミュレート絞りが十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、照射中心位置指示マークやシミュレート絞りをインクペン等でなぞって被検体Mの体表面に指標を付けて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めを速やかに完了させられる。
よって、実施例1の装置の場合、組み込まれているポインタにより、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めや照射領域の範囲決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【0049】
また、実施例1の装置のポインタの場合、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めによって、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心は治療用放射線照射装置のアイソセンターとなるので、照射中心の位置決め完了後に、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターに合わせる作業を行なう必要はない。
加えて、実施例1の装置のポインタでは、照射中心位置指示マークの十字状画像MAもシミュレート絞りの井ゲタ状画像MBも信号処理によるソフトウエアで重畳されるので、照射中心位置指示マークやシミュレート絞りをハードウエアとして設ける必要がない。
【実施例2】
【0050】
次に、この発明の実施例2を説明する。図7はこの発明の照射中心位置決め用ポインタの一例が組み込まれている実施例2に係る治療用放射線照射装置の要部構成を示すブロック図である。実施例2の治療用放射線照射装置は、以下に述べる点の他は実施例1の装置と実質的に同一であるので、相違点のみを説明し、共通点の説明は省略する。また実施例1の場合と実質的に同様の機能を発揮するものには実施例1と同一番号としている。
図7の放射線照射装置は、放射線治療対象者である被検体Mを載置する天板1と、被検体Mへ治療用放射線を照射する放射線源21を具備する放射線照射機構20を備えている装置であって、具体的には例えばライナックなどが挙げられる。
【0051】
放射線源21は支持アーム22の先端に取り付けられていて、照射撮影機構回転部23により支持アーム22が水平軸を回転軸として回転させられるのに伴って放射線源21の放射線照射軸XBが放射線照射装置のアイソセンターBCを常に通る状態で放射線源21が被検体Mの周りを移動する構成とされている。また、照射撮影系回転制御部24は操作部25による操作に応じて照射撮影機構回転部23を駆動して被検体Mに放射線を照射する際の照射方向を操作部25による操作で設定した向きにセットする。
【0052】
放射線源21は、放射線照射制御部26のコントロールによりX線を被検体Mに照射する。放射線源21が出す放射線としては、特定の放射線に限られるものではなく、例えば高エネルギーX線やγ線の他に、中性子線など様々な放射線が挙げられる。また、放射線源21は放射性同位元素であってもよい。
また、放射線照射機構20では、放射線源21の前面に治療用放射線の照射領域を規定する放射線照射絞り27が配備されていて、絞り開閉制御部28のコントロールにより放射線照射絞り27の開度が変わって治療用放射線の照射領域が変化する構成とされている。
天板1は被検体Mを載せたままで天板移動制御部18のコントロールにより前・後と左右・上下に移動させられる。この天板移動制御部18によるコントロールは、操作部25や手元操作部33の操作で設定される移動条件に従って実行される。
なお、表示モニタ29は装置稼働用の操作メニューや必要な画像等を表示する。
【0053】
さらに、実施例2の放射線照射装置には、照射中心位置決め用ポインタ(以下、適宜「ポインタ」と略記)が組み込まれている。実施例2の装置のポインタの場合、天板1の上の被検体Mの体表面の光学画像を反射ミラー31を介して撮影する光学画像撮影カメラ30と、光学画像撮影カメラ30により撮影された光学画像を実質的にリアルタイムで表示する手元設置用の光学画像表示モニタ32を備えているのに加え、光学画像表示モニタ32で表示される光学画像QAに、図8(a)に示すように、マーク画像重畳部34によって治療用放射線の照射中心の位置としてアイソセンターBCの位置を指示する照射中心位置指示マークの十字状画像NAが重畳されると共に、絞り画像重畳部35によって治療用放射線の照射範囲を規定する放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBが重畳される構成とされている。
【0054】
光学画像撮影カメラ30は放射線照射機構20に取り付けられていて、光学画像撮影カメラ30が放射線照射機構20に一緒に移動するので、光学画像撮影カメラ30の撮影方向を放射線照射機構20の照射方向の変化に追随して変化させられる。この光学画像撮影カメラ30の撮影方向は天板1に付設された手元操作部33の操作で変化させられる。
【0055】
また、光学画像撮影カメラ30の場合も、図7に示すように、カメラ30の焦点と被検体Mの距離が放射線源21の焦点と被検体Mの距離と実質的に同じで、反射ミラー31から先はカメラ30の光軸が放射線照射軸XBと一致している。したがって、光学画像撮影カメラ30の撮影視点は治療用放射線の放射焦点と幾何学的に等価な位置にあり、光学画像撮影カメラ30の撮影方向は、治療用放射線の照射方向と幾何学的に等価な向きにある。その結果、光学画像表示モニタ32で表示される光学画像QAに出現する十字状画像NAを治療用放射線の照射中心の位置に正確に対応させ易く、井ゲタ状画像NBを治療用放射線の照射範囲に正確に対応させ易い。
【0056】
井ゲタ状画像NBは4本の直線画像NB1〜NB4からなり、手元操作部33による操作で直線画像NB1,NB2の場合は個々に左右に移動させることができ、直線画像NB3,Mb4の場合は個々に上下に移動させることができる。4本の直線画像Mb1〜Mb4で囲まれる領域が治療用放射線の照射範囲であるので、直線画像NB1〜NB4の移動により治療用放射線の照射範囲の位置・大きさが変化する。実施例2の場合、手元操作部33による井ゲタ状画像NBの変化は、絞り画像重畳部35を経由して絞り開閉制御部28に伝達されると共に、井ゲタ状画像NBで指示される照射範囲だけに放射線を照射するように放射線照射絞り27の開度が調整される構成とされている。
なお、ホスト制御部19は、コンピュータとその制御プログラムを中心に構成されていて、操作部25および手元操作部33の操作や装置動作の進行状況に応じた指令信号やデータの送受信を行い、装置を正常に稼働させる役割を担っている。
【0057】
続いて、以上に述べた構成を有する実施例2の放射線照射装置の照射中心位置決め用ポインタを用いる被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めおよび照射領域の範囲決めを図面を参照して説明する。図8は照射中心位置指示マークの十字状画像NAと放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBが重畳された光学画像QAを示す模式図である。
実施例2の装置における治療用放射線の照射中心の位置決めおよび照射領域の範囲決めは、通常、被検体Mの正面真上と右側真横と左側真横の各方向について行なうが、それぞれの作業は方向が異なる以外は事実上同一であるので、ここでは右側真横についてだけ説明する。なお、治療用放射線の照射目的等によっては、照射領域の範囲決めを、例えば被検体Mの正面真上についてだけ行なえばよい場合もある。
【0058】
オペレータはポインタを用いる為に被検体Mの傍らに寄り、手元操作部33の操作で照射撮影機構回転部23を駆動してポインタの光学画像撮影カメラ30の撮影方向を被検体Mの右側真横の向きにセットする。そして、天板1の上に載置された被検体Mの頭部表面を右側真横から光学画像撮影カメラ30で撮影すると共に、図8(a)に示すように、撮影した光学画像QAを天板1の傍に置かれている光学画像表示モニタ32の画面に照射中心位置指示マークの十字状画像NAと放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBを重畳し実質的にリアルタイムで一緒に映し出す。光学画像表示モニタ32の画面では、被検体Mの頭部表面を撮影した光学画像QAの中に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークや放射線照射絞りが十分な明るさで出現する。
【0059】
そして、オペレータは、手元操作部33を操作して天板1を移動させることにより、図8(b)に示すように、光学画像表示モニタ32で表示されている被検体Mの頭部表面の光学画像QAに十分な明るさで出現している照射中心位置指示マークの十字状画像NAに被検体Mの頭部表面にマーク付けされた治療用放射線の照射中心を指示する十字状指標mAを合致させる。
【0060】
続いて、オペレータは手元操作部33を操作して井ゲタ状画像NBの直線画像NB1〜NB4を移動させることにより、図8(c)に示すように、被検体Mの頭部表面にマーク付けされた治療用放射線の照射領域を指示する十字状指標mBを井ゲタ状画像NBの直線画像NB1〜NB4に合致させる。
これで、治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めは完了となる。なお、放射線照射絞り27の開度は絞り開閉制御部28によって井ゲタ状画像NBで指示されている照射範囲だけに放射線を照射するように調整される
【0061】
以上に述べたように、実施例2の放射線照射装置のポインタの場合、光学画像撮影カメラ30で天板1の上に載置された被検体Mの体表面の光学画像が撮影されて光学画像表示モニタ32で実質的にリアルタイムで表示されると共に、光学画像表示モニタ32で表示される被検体Mの体表面の光学画像QAにマーク画像重畳部34や絞り画像重畳部35で照射中心位置指示マークの十字状画像NAや放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBが重畳される構成を備えていて、光学画像表示モニタ32の画面では被検体Mの体表面の光学画像QAの中に照射中心位置指示マークや放射線照射絞り27が十分な明るさで出現するので、照明を落とさずとも、被検体の体表面にマーク付けされた治療用放射線の照射中心を指示する十字状指標mAや照射領域を指示する十字状画像NAを放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBに合致させて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めと照射領域の範囲決めを速やかに完了させられる。
よって、実施例2の装置の場合も、組み込まれているポインタにより、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めや照射領域の範囲決めの際に照明を落とさずに済ませることができる。
【0062】
また、実施例2の装置のポインタの場合も、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心の位置決めにより、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心は治療用放射線照射装置のアイソセンターとなるので、照射中心の位置決め完了後に、被検体Mにおける治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターに合わせる作業を行なう必要はない。
加えて、実施例1の装置のポインタでも、照射中心位置指示マークの十字状画像NAも放射線照射絞り27の井ゲタ状画像NBも信号処理によるソフトウエアで重畳されるので、照射中心位置指示マークや放射線照射絞りの画像の為の絞りをハードウエアとして設ける必要がない。
【0063】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
(1)実施例1の装置では、X線画像撮影機構がX線透視画像撮影用の構成であったが、X線画像撮影機構はX線CT画像撮影用の構成であってもよい。
【0064】
(2)実施例1,2の装置の場合、放射線の照射領域を指示するシミュレート絞りや放射線照射絞りの画像が井ゲタ状画像であったが、シミュレート絞りや放射線照射絞りの画像は、井ゲタ状画像に限らず、円や点の画像であってもよいし、図9に示すように、凹凸のある複雑な形状の画像PQであってもよい。
【0065】
(3)実施例1の装置では被検体Mの透過X線像を検出する2次元X線検出器がFPDであったが、透過X線像検出用の2次元X線検出器はFPDに限らず、例えばイメージインテンシファイアであってもよい。
【0066】
(4)実施例2の装置において、実施例1の装置と同様のX線画像撮影機構も備え、被検体MのX線透視画像を撮影・表示して治療用放射線の照射中心の位置決めや照射領域の範囲決め結果のチェックが行なえる他は実施例と同様の構成とした装置が、実施例2の変形例として挙げられる。この変形例の場合、さらに光学画像撮影カメラ30はX線画像撮影機構に取り付けてもよい。
【0067】
(5)実施例2の装置では、光学画像撮影カメラ30が1個だけであったが、図10に示すように、光学画像撮影カメラ30を3個設け、被検体の正面真上と右側横面と左側横面を別々の光学画像撮影カメラ30で撮影する構成としてもよい。
また、実施例1の装置の場合でも、光学画像撮影カメラ13を3個設けて、被検体の正面真上と右側横面と左側横面を別々の光学画像撮影カメラ13で撮影する構成としてもよい。
【0068】
(6)実施例1の装置や実施例2の装置の場合、シミュレート絞りや放射線照射絞りの画像はソフトウエアによるものではなく、X線不透過物質や可視光不透過物質で形成したハードウエアによるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1の放射線治療計画装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の治療計画装置のX線画像撮影機構と光学画像撮影機構を示す模式図である。
【図3】実施例1の装置でX線画像撮影機構や光学画像撮影機構の撮影方向を変化させた時の状態を示す模式図である。
【図4】照射中心位置指示マークとシミュレート絞りの画像が重畳されたX線透視画像を示す模式図である。
【図5】照射中心位置指示マークとシミュレート絞りの画像が重畳された光学画像を示す模式図である。
【図6】治療用放射線の照射中心および照射領域を指示する指標を付けた被検体の頭部を示す横面図である。
【図7】実施例2の治療用放射線照射装置の要部構成を示すブロック図である。
【図8】照射中心位置指示マークと放射線照射絞りの画像が重畳された光学画像を示す模式図である。
【図9】シミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像の他の例を示す模式図である。
【図10】実施例2の装置での光学画像撮影カメラの他の配置例を模式的に示す斜視図である。
【図11】従来の放射線治療計画装置のX線透視画像の撮影・表示の為の概略構成を示す模式図である。
【図12】従来の放射線治療計画装置の照射中心位置決め用ポインタを示す概略図である。
【図13】従来の治療用放射線照射装置の照射中心位置決め用ポインタを示す概略図である。
【符号の説明】
【0070】
1 …天板
4 …X線画像撮影機構
11,34 …マーク画像重畳部
12,35 …絞り画像重畳部
13,30 …光学画像撮影カメラ
15,32 …光学画像表示モニタ
20 …放射線照射機構
AC,BC …アイソセンター
M …被検体
MA,Ma,NA…照射中心位置指示マークの十字状画像
MB,Mb …シミュレート絞りの井ゲタ状画像
NB …放射線照射絞りの井ゲタ状画像
PA,QA …光学画像
Pa …X線透視画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影・表示を行なう放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体、ないし、治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体における治療用放射線の照射中心(照準中心)の位置決めを行なうのに用いられる照射中心位置決め用ポインタにおいて、放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像ないし治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像を撮影する光学画像撮影手段と、光学画像撮影手段により撮影された光学画像を実質的にリアルタイムで表示する光学画像表示手段と、光学画像表示手段で表示される光学画像に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像を重畳するマーク画像重畳手段とを備えていることを特徴とする照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項2】
請求項1に記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めでは、被検体における治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターとする照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像撮影手段の撮影視点が放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影視点、ないし、治療用放射線の放射焦点(放射線源の焦点)と幾何学的に等価な位置にあると共に、光学画像撮影手段の撮影方向が放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影方向、ないし、治療用放射線の放射方向と幾何学的に等価な向きである照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像撮影手段が、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影機構ないし治療用放射線の照射機構に取り付けられている照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像表示手段で表示された光学画像に治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像を重畳する絞り画像重畳手段を備えている照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、マーク画像重畳手段は照射中心位置指示マークの画像の重畳を信号処理により行なう構成であり、絞り画像重畳手段はシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像の重畳を信号処理により行なう構成である照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項7】
天板の上に載置された被検体について放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影・表示を行なう放射線治療計画装置であって、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれていることを特徴とする放射線治療計画装置。
【請求項8】
天板の上に載置された被検体に対して治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置であって、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれていることを特徴とする治療用放射線照射装置。
【請求項1】
放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影・表示を行なう放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体、ないし、治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体における治療用放射線の照射中心(照準中心)の位置決めを行なうのに用いられる照射中心位置決め用ポインタにおいて、放射線治療計画装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像ないし治療用放射線照射装置の天板の上に載置された被検体の体表面の光学画像を撮影する光学画像撮影手段と、光学画像撮影手段により撮影された光学画像を実質的にリアルタイムで表示する光学画像表示手段と、光学画像表示手段で表示される光学画像に治療用放射線の照射中心の位置を指示する照射中心位置指示マークの画像を重畳するマーク画像重畳手段とを備えていることを特徴とする照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項2】
請求項1に記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、被検体における治療用放射線の照射中心の位置決めでは、被検体における治療用放射線の照射中心を治療用放射線照射装置のアイソセンターとする照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像撮影手段の撮影視点が放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影視点、ないし、治療用放射線の放射焦点(放射線源の焦点)と幾何学的に等価な位置にあると共に、光学画像撮影手段の撮影方向が放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影方向、ないし、治療用放射線の放射方向と幾何学的に等価な向きである照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像撮影手段が、放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影機構ないし治療用放射線の照射機構に取り付けられている照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、光学画像表示手段で表示された光学画像に治療用放射線の照射範囲を規定するシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像を重畳する絞り画像重畳手段を備えている照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタにおいて、マーク画像重畳手段は照射中心位置指示マークの画像の重畳を信号処理により行なう構成であり、絞り画像重畳手段はシミュレート絞りないし放射線照射絞りの画像の重畳を信号処理により行なう構成である照射中心位置決め用ポインタ。
【請求項7】
天板の上に載置された被検体について放射線治療計画立案用の放射線画像の撮影・表示を行なう放射線治療計画装置であって、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれていることを特徴とする放射線治療計画装置。
【請求項8】
天板の上に載置された被検体に対して治療用放射線の照射を行なう治療用放射線照射装置であって、請求項1から6のいずれかに記載の照射中心位置決め用ポインタが組み込まれていることを特徴とする治療用放射線照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−122452(P2006−122452A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−316218(P2004−316218)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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