照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、測定装置および測定用プログラム、並びに照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法
【課題】測定対象となる照射燃料集合体内部の中性子束φの分布をその未臨界度に関する情報(原子炉管理システムで評価した燃料集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等)を用いて計算すること無く、未臨界増倍率ksubの算出を可能にする。
【解決手段】予め求めておいた測定対象の照射燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2の中性子漏洩率Lを記憶している記憶手段3と、水没されている測定対象燃料集合体1について中性子放出強度S0の中性子源4を用いて外部での中性子吸収率Aを測定する吸収率測定手段5と、中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む入力手段6と、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する算出手段7とを備えている。
【解決手段】予め求めておいた測定対象の照射燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2の中性子漏洩率Lを記憶している記憶手段3と、水没されている測定対象燃料集合体1について中性子放出強度S0の中性子源4を用いて外部での中性子吸収率Aを測定する吸収率測定手段5と、中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む入力手段6と、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する算出手段7とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、測定装置および測定用プログラム、並びに照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、貯蔵プール等に水没させている照射燃料集合体に中性子源を挿入して未臨界増倍率を測定する照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、測定装置および測定用プログラム、並びに前記測定方法を利用した照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
核燃料の輸送に燃焼度クレジットを導入するためには、照射燃料集合体の反応度を決定する集合体内核種組成の予測値が正しいことを、測定によって確認する必要がある。
【0003】
照射燃料集合体の核種組成によって決定される値として未臨界増倍率ksubがある。したがって、照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定し、この測定値が、照射燃料集合体の管理データから予測される核種組成に基づいて算出された値と一致するか否かによって、燃焼度クレジット導入に必要な核種組成の予測精度の確証を行うことができる。
【0004】
照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubの測定に適用可能であると考えられる方法として中性子源増倍法がある。中性子源増倍法では燃料集合体全体の中性子発生率Sを求める必要があり、そのため、原子炉や核燃料集合体内外の測定可能な1ないし複数点での中性子束φの測定値に基づいて全中性子発生率Sを推定することが考えられている。
【0005】
なお、照射燃料集合体の未臨界度を測定する装置としては、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−59084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、中性子束φの分布を原子炉や核燃料集合体内で詳細に測定することは出来ない。従来手法では測定する燃料集合体内外の中性子束φの分布がほとんど変化しないと仮定し、測定可能な箇所の中性子束φを1ないし数点測定して中性子発生率Sを評価するが、中性子束φの分布は燃料集合体の核種組成等に強く依存し変化する。このため、中性子束φの分布を正確に求めるためには、未臨界度に関する情報(原子炉管理システムで評価した燃料集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等)をもとに詳細計算を行なう必要があり、これらの情報がなければ測定可能な箇所で中性子束φを実測しても中性子発生率Sを得ることが出来ず、未臨界増倍率ksubを求めることができない。
【0008】
本発明は、測定対象となる照射燃料集合体内部の中性子束φの分布をその未臨界度に関する情報(原子炉管理システムで評価した燃料集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等)を用いて計算すること無く、実測データから未臨界増倍率ksubを求めることが可能な照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、測定装置および測定用プログラム、並びに照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、照射燃料集合体の核特性について鋭意研究を行った結果、水中に保管した燃料集合体に中性子源を挿入した場合、その燃料集合体の燃焼度にかかわらず中性子漏洩率Lが一定であることを知見した。そして、かかる知見に基づき更に研究を進めることで、この知見を従来の「中性子源増倍法」に適用することで、当該照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
即ち、請求項1記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法は、測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを予め求めておき、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を使用して外部での中性子吸収率Aを測定し、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出し、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出するものである。
【0011】
また、請求項2記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法は、中性子放出強度S0が不明な場合、中性子放出強度S0が不明な中性子源を使用して、測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体を水没させて外部での中性子吸収率Axを測定すると共に、前記の核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出し、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出するものである。
【0012】
また、請求項3記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置は、予め求めておいた測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを記憶している記憶手段と、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて外部での中性子吸収率Aを測定する吸収率測定手段と、中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む入力手段と、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する算出手段とを備えるものである。
【0013】
また、請求項4記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置は、水没されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体について中性子放出強度S0が不明な中性子源を用いて外部での中性子吸収率Axを測定する第2の吸収率測定手段と、中性子吸収率Axを読み込む第2の入力手段と、前記の核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する第2の算出手段とを備えるものである。
【0014】
また、請求項5記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラムは、少なくとも、記憶手段に予め記憶されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを読み込む手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む手段、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0015】
また、請求項6記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラムは、少なくとも、記憶手段に予め記憶されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを読み込む手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む手段、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体について中性子放出強度S0が不明な中性子源を用いて測定された中性子吸収率Axを読み込む手段、前記の核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0016】
さらに、請求項7記載の照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法は、請求項1又は2記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法を使用して照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定すると共に、照射燃料集合体について管理上予測される核種組成をもとに、照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出し、この算出値と未臨界増倍率ksubの測定値との比較によって照射燃料集合体の核種組成の予測が臨界安全の観点で十分な精度を有することを確証するものである。
【0017】
ここで、中性子放出強度S0とは、単位時間あたりに、放射性崩壊に起因して中性子源から発生する中性子数をいう。また、中性子発生率Sとは、単位時間あたりに燃料集合体内部に挿入された中性子源の放射性崩壊に起因し発生する中性子数と、その中性子に起因した核分裂連鎖反応で燃料集合体内部で単位時間あたりに発生する中性子数の合計をいう。さらに、中性子漏洩率Lとは、燃料集合体内部で発生する中性子の数に対して、集合体外部で吸収される中性子の数の割合をいう。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、請求項3記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置および請求項5記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラムによれば、測定対象の照射燃料集合体に挿入する中性子源の中性子放出強度S0が既知の場合に、測定対象となる照射燃料集合体内部の中性子束φの分布をその未臨界度に関する情報(原子炉管理システムで評価した燃料集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等)を用いて計算すること無く、その照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを求めることが可能になる。
【0019】
また、請求項2記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、請求項4記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置および請求項6記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラムによれば、測定対象の照射燃料集合体に挿入する中性子源の中性子放出強度S0が不明な場合であっても、中性子放出強度S0を求めることができ、求めた中性子放出強度S0を用いて未臨界増倍率ksubを求めることができる。
【0020】
さらに、請求項7記載の照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法によれば、未臨界増倍率ksubと核種組成は対応するので、管理上の核種組成が実際のものと一致しているか否かを確認することができる。そのため、照射燃料集合体の核種組成の予測精度が臨界安全管理にとって十分な精度を有すことを確証でき、核燃料の輸送に際し、燃焼度クレジットの導入が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の未臨界増倍率測定装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の未臨界増倍率測定方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】本発明の未臨界増倍率測定装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明の未臨界増倍率測定方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS40のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】吸収率測定手段を示す概念図である。
【図7】燃料集合体の燃焼度と中性子漏洩率Lとの関係(燃料集合体からの中性子の漏洩率(計算体系からの漏洩中性子は集合体外部吸収中性子に含めている。))を示す図である。
【図8】PWR17×17型燃料集合体の燃料配列と核種組成を解析した燃料棒を説明するための図である。
【図9】燃料集合体が単独で軽水中に保管された状態の実効増倍率計算体系図である。
【図10】集合体ノード毎に着目した固有値計算の体系図であり、集合体部+外周水領域での中性子発生率/吸収率比の計算についての図である。
【図11】照射燃料集合体の各ノードの拡散係数を示す図である。
【図12】照射燃料集合体の各ノードの巨視的吸収断面積Σaと核分裂中性子生成断面積νΣfを示す図である。
【図13】集合体外周部での中性子吸収率を定量するためのH(n,γ)特性γ線測定法の概念図である。
【図14】軽水中に点中性子源252Cfをおいた際の水素中性子吸収率分布と、微小の6Li(n,t)あるいは10B(n,α)検出器の反応率分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。本発明は燃料集合体から漏洩する中性子の数を測定することを特徴とする中性子源増倍法を利用して照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定するものであり、水没させた照射燃料集合体に中性子源を挿入して未臨界増倍率ksubを測定する。
【0023】
図1に、本発明の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置の第1の実施形態を示す。本実施形態では、外部での中性子吸収率Aの測定と中性子漏洩率Lの算出に用いる中性子源として中性子放出強度S0が既知のものを使用する。照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置(以下、単に未臨界増倍率測定装置という)は、予め求めておいた測定対象の照射燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2の中性子漏洩率Lを記憶している記憶手段3と、水没されている測定対象の照射燃料集合体1について中性子放出強度S0の中性子源4を用いて外部での中性子吸収率Aを測定する吸収率測定手段5と、中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む入力手段6と、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体1の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する算出手段7とを備えるものである。この未臨界増倍率測定装置は、本発明の照射燃料集合体1の未臨界増倍率測定用プログラム8をコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、照射燃料集合体1の未臨界増倍率測定用プログラム(以下、単に測定用プログラムという)8をコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。なお、以下、「測定対象の照射燃料集合体1」を単に測定対象燃料集合体1といい、「測定対象の照射燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2」を単に組成既知燃料集合体2という。
【0024】
測定用プログラム8を実行するための本実施形態の未臨界増倍率測定装置の全体構成を図1に示す。この未臨界増倍率測定装置は、制御部9、記憶部(記憶手段)3、入力部(入力手段)6、表示部10を備え、これらは相互にバス等の信号回線11により接続されている。
【0025】
制御部9は記憶部3に記憶されている測定用プログラム8によって未臨界増倍率測定装置全体の制御並びに未臨界増倍率ksubの算出等に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。記憶部3は少なくともデータやプログラム8を記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
【0026】
入力部6は少なくとも作業者の命令等を制御部9等に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。表示部10は制御部9の制御により文字や図形等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
【0027】
未臨界増倍率測定装置の制御部9には、測定用プログラム8を実行することにより、記憶手段3に予め記憶されている組成既知燃料集合体2の中性子漏洩率Lを読み込む手段としての漏洩率読込部12、水没されている測定対象燃料集合体1について中性子放出強度S0の中性子源4を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む手段としての入力データ読込部13、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する手段としての算出部(算出手段)7が構成される。
【0028】
未臨界増倍率測定装置には、受信装置14がバス等の信号回線11等により接続されており、例えば吸収率測定手段5によって測定された照射燃料集合体1の外部での中性子吸収率Aはこの受信装置14を介して記憶部3に記憶される。ここで、例えば照射燃料集合体1を水没させておくプールに設置した吸収率測定手段5と受信装置14とを通信回線15によって接続し、吸収率測定手段5の測定値(燃料集合体の外部での中性子吸収率A)を自動的に受信装置14に供給するようにしても良いし、作業者の送信操作によって中性子吸収率Aを受信装置14に供給するようにしても良い。あるいは、作業者が入力部6を操作して中性子吸収率Aを直接入力し、記憶部3に記憶させるようにしても良い。
【0029】
中性子源4の中性子放出強度S0は、例えば作業者が入力部6を操作して直接入力し、記憶部3に記憶させる。
【0030】
吸収率測定手段5としては、公知の中性子吸収率測定方法を実施する測定装置が使用される。公知の中性子吸収率測定方法としては、例えば特開2007−315909号に開示された中性子放出体の中性子放出率測定方法があり、当該方法の「中性子放出率」が本発明における「中性子吸収率」である。
【0031】
本実施形態では、吸収率測定手段5は照射燃料集合体を貯蔵しておくプールを利用して設けられている。吸収率測定手段5を図6に示す。プール内に測定対象燃料集合体1を沈め、内挿物取扱い装置を使用して測定対象燃料集合体1の例えば制御棒案内管に中性子源4が挿入される。例えば17×17型PWR燃料集合体には24本の制御棒案内管が設けられているので、24本の全てに中性子源4が挿入される。ここで、24本の制御棒案内管の全てに中性子源4を同時に挿入して測定を行うようにしても良いが、一部(1本又は複数本)の制御棒案内管にのみ中性子源4を挿入して測定を行い、この測定を、挿入する制御棒案内管を代えながら繰り返し行うことで24本の制御棒案内管の全てについて測定を行うようにしても良い。測定を複数回に分けた場合には、測定値を合計する。
【0032】
中性子源4として例えば十分な長さのものが使用され、燃料集合体1全長にわたり挿入される。このように燃料集合体1全長にわたり挿入できる長さの中性子源4を使用することで、中性子吸収率A(中性子放出率)の測定を短時間で行うことができる。ただし、中性子源4として、必ずしもこのように十分な長さを有するものを使用する必要はなく、点状のもの等より短いものを使用することも可能である。より短い中性子源4を使用する場合には、中性子源4を管の中で燃料集合体1全長にわたり等速度で移動させながら測定を行い、測定値を合計することで上述の十分な長さの中性子源4を使用した場合と実質的に同じ条件で測定することができる。また、一定間隔の複数点で中性子源をとめて測定を行い、測定値を合算した場合でも、測定点数を増やせば上述の十分な長さの中性子源4を使用した場合と実質的に同じ条件で測定することができる。
【0033】
吸収率測定手段5は算出した中性子吸収率Aを受信装置14に供給する。あるいは、吸収率測定手段5が算出した中性子吸収率Aを作業者が入力部6を操作して入力する。中性子吸収率Aは一旦記憶部3に記憶される。
【0034】
測定対象燃料集合体1は、例えばPWRの照射燃料集合体1である。PWRの照射燃料集合体1は上からの中性子源4の挿入が可能であり、また貯蔵プール内に立てた状態で沈めて貯蔵されるため、吸収率測定手段5による中性子吸収率Aの測定が容易である。ただし、中性子源4を挿入して中性子吸収率Aを測定することが可能であれば、PWR以外の燃料集合体、例えばBWR等の燃料集合体を測定対象にしても良い。
【0035】
中性子源4は例えば制御棒案内管に挿入可能な棒状を成している。中性子源4として、例えば自発核分裂中性子源、(γ,n)反応中性子源等の使用が可能であるが、なかでも自発核分裂中性子源の使用が好ましい。自発核分裂中性子源、(γ,n)反応中性子源のいずれを使用した場合にも燃料集合体の燃焼度に依存せずに中性子漏洩率Lが一定(少なくとも未臨界増倍率ksubの算出においては一定であるとみなしても良い程度に一定)になるが、なかでも自発核分裂中性子源を使用した場合には特に一定の程度が高いからである。自発核分裂中性子源としては、例えば252Cf,240Pu等の使用が可能である。また、(γ,n)反応中性子源としては、例えばSb−Be中性子源等の使用が可能である。
【0036】
中性子漏洩率Lは数値解析によって求められ、予め記憶部3に記憶されている。本発明者らは、照射燃料集合体1の核特性について鋭意研究を行った結果、燃料集合体の中性子漏洩率Lは核燃料の燃焼度に依存せず一定(少なくとも未臨界増倍率ksubの算出においては一定であるとみなしても良い程度に一定)であることを知見した。また、燃料集合体の中性子漏洩率Lは、核燃料の核種組成が解れば、数値解析によって算出することができる。したがって、本発明では、測定対象燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2について中性子漏洩率Lを算出し、この中性子漏洩率Lを測定対象燃料集合体1について使用する。中性子漏洩率Lの算出は計算コードを使用して行われる。計算コードとしては、三次元の中性子束分布を計算できるコードであればいずれも使用可能であるが、例えば、多群拡散法としてCITATIONコード等、多群決定論的輸送法としてDANTSYS等、多群モンテカルロ法コードとしてKENO等、連続エネルギーモンテカルロ法コードとしてMCNP-5,MVP-II等の使用が可能である。中性子漏洩率Lは吸収率測定手段5の測定体系と同じ体系について算出される。
【0037】
組成既知燃料集合体2としては、未使用の新燃料集合体がある。さらに照射履歴はあっても管理データ等の参照により現在の核種組成が解析可能な燃料集合体がある。組成既知燃料集合体2を使用して中性子漏洩率Lを求めておけば、初期の核種組成が同じものを測定対象にする限り、測定の度に中性子漏洩率Lを求め直す必要がない。
【0038】
算出された中性子漏洩率Lは、例えば作業者が入力部6を操作して直接入力し、記憶部3に記憶させておく。
【0039】
次に、本発明の照射燃料集合体1の未臨界増倍率測定方法について説明する。この照射燃料集合体1の未臨界増倍率測定方法(以下、単に未臨界増倍率測定方法という)は、例えば図2に示すように、組成既知燃料集合体2の中性子漏洩率Lを予め求めておき(ステップS31)、水没されている測定対象燃料集合体1について中性子放出強度S0の中性子源4を使用して外部での中性子吸収率Aを測定し(ステップS32)、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出し(ステップS33)、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する(ステップS34)ものである。
【0040】
まず最初に、組成既知燃料集合体2について数値解析を行なって中性子漏洩率Lを求めておき、記憶部3に予め記憶しておく(ステップS31)。この中性子漏洩率Lを制御部9の漏洩率読込部12が記憶部3から読み込み、算出部7に供給する。
【0041】
次に、吸収率測定手段5が測定対象燃料集合体1の外部での中性子吸収率Aを測定し、測定された中性子吸収率Aが記憶部3に記憶される。また、測定に使用した中性子源4の中性子放出強度S0も記憶部3に記憶される。入力データ読込部13は中性子吸収率Aと中性子放出強度S0を記憶部3から読み込み、算出部7に供給する。
【0042】
算出部7は中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出し(ステップS33)、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する(ステップS34)。具体的には、数式1に基づいて中性子発生率Sを算出し、数式2に基づいて未臨界増倍率ksubを算出する。
【0043】
<数1>
中性子発生率S=集合体外部での中性子吸収率A/中性子漏洩率L
<数2>
未臨界増倍率ksub=(中性子発生率S−中性子放出強度S0)/中性子発生率S
【0044】
そして、算出された未臨界増倍率ksubは記憶部3に記憶されると共に、表示部10に表示される(ステップS35)。その後、測定用プログラム8は終了する。
【0045】
なお、2回目以降の測定では、中性子漏洩率Lが既に記憶部3に記憶されているので、ステップS31を飛ばしてステップS32から実行される。
【0046】
本発明では、中性子源4の中性子放出強度S0が既知の場合に、原子炉管理システムで評価した集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等を参照せずに測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを直接求めることができる。
【0047】
次に、本発明の未臨界増倍率測定装置の第2の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同一の部材やステップついては同一の符号を付し、それらについての説明を省略する。
【0048】
図3に、未臨界増倍率測定装置を示す。この未臨界増倍率測定装置は、中性子吸収率Aの測定に中性子放出強度S0が不明の中性子源4を使用可能にしたものであり、上記の各構成要素に加えて、水没されている組成既知燃料集合体2について中性子放出強度S0が不明な中性子源4を用いて外部での中性子吸収率Axを測定する第2の吸収率測定手段16と、中性子吸収率Axを読み込む第2の入力手段17と、上記既知の核種組成を有する燃料集合体(想定燃料集合体)についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する第2の算出手段18とを備えている。
【0049】
本実施形態では、上述の吸収率測定手段5によって第2の吸収率測定手段16を兼用している。即ち、上述の吸収率測定手段5を使用して中性子吸収率Axを測定する。測定された中性子吸収率Axは中性子吸収率Aと同様にして記憶部3に記憶される。
【0050】
また、本実施形態では、上述の入力手段(入力部)6によって第2の入力手段17を兼用している。即ち、上述の入力部6を操作して作業者が中性子吸収率Axを入力しても良い。
【0051】
また、測定用プログラム8の実行により、制御部9には、上記の手段12,13,7の他に、水没されている組成既知燃料集合体2について中性子放出強度S0が不明な中性子源4を用いて測定された中性子吸収率Axを読み込む手段としての第2の入力データ読込部19、上記既知の核種組成を有する燃料集合体(想定燃料集合体)についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する手段としての第2の算出部(第2の算出手段)18が構成される。
【0052】
次に、未臨界増倍率測定方法について説明する。この未臨界増倍率測定方法は、例えば図4に示すように、中性子源4の中性子放出強度S0を求めるステップS40を有している。本実施形態では、組成既知燃料集合体2の中性子漏洩率Lを求めた(ステップS31)後に、ステップS40を実行する。
【0053】
ステップS40のルーチンは、例えば図5に示すように、中性子放出強度S0が不明な中性子源4を使用して組成既知燃料集合体2を水没させて中性子吸収率Axを測定し(ステップS41)、上記既知の核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出し(ステップS42)、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し(ステップS43)、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する(ステップS44)ものである。
【0054】
ステップS41では、中性子放出強度S0が不明な中性子源4を使用して、組成既知燃料集合体2を対象に吸収率測定手段5によって外部での中性子吸収率Axを測定する。測定した中性子吸収率Axは受信装置14又は第2の入力部17(入力部6)を介して記憶部3に記憶させておく。また、制御部9の第2の入力データ読込部19は中性子吸収率Axを記憶部3から読み込み、第2の算出部18に供給する。
【0055】
第2の算出部18は、ステップS41で測定した組成既知燃料集合体2と同じ核種組成を有する燃料集合体(想定燃料集合体)を想定し、中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出する(ステップS42)。中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxの算出は計算コードを使用して行われる。計算コードとしては、三次元の中性子束分布を計算できるコードであればいずれも使用可能であるが、例えば、多群拡散法としてCITATIONコード等、多群決定論的輸送法としてDANTSYS等、多群モンテカルロ法コードとしてKENO等、連続エネルギーモンテカルロ法コードとしてMCNP-5,MVP-II等の使用が可能である。中性子漏洩率Lx,未臨界増倍率ksubxは吸収率測定手段5の測定系と同じ測定系について算出される。
【0056】
また、第2の算出部18は、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて想定燃料集合体の中性子発生率Sxを算出し(ステップS43)、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいてステップS41で使用した中性子源4の中性子放出強度S0を算出する(ステップS44)。具体的には、数式3に基づいて中性子発生率Sxを算出し、数式4に基づいて中性子放出強度S0を算出する。なお、数式4は数式2の変形である。
【0057】
<数3>
中性子発生率Sx=集合体外部での中性子吸収率Ax/中性子漏洩率Lx
<数4>
中性子放出強度S0=中性子発生率S(1−未臨界増倍率ksubx)
【0058】
そして、算出された中性子放出強度S0は記憶部3に記憶された後、図4のステップS32へと戻り、ステップS32→ステップS33→ステップS34→ステップS35へと進み、測定対象燃料集合体1について未臨界増倍率ksubを求めて表示部10に表示する。その後、測定用プログラム8は終了する。
【0059】
なお、2回目以降の測定では、中性子源4の中性子放出強度S0は既に記憶部3に記憶されているので、図2の測定方法によって未臨界増倍率ksubが求められる。
【0060】
本実施形態では、中性子源4の中性子放出強度S0が不明であっても中性子放出強度S0を求めることができ、求めた中性子放出強度S0を用いて未臨界増倍率ksubを求めることができる。即ち、中性子源4の中性子放出強度S0が不明な場合であっても、新燃料集合体のように組成が既知の集合体を用いれば、測定対象燃料集合体に関する原子炉管理システムで評価した燃焼履歴、予測した核種組成等を参照せずに照射燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを直接求めることができる。
【0061】
次に、本発明の照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法について説明する。
【0062】
この照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法(以下、単に確証方法という)は、上述の未臨界増倍率測定方法を使用して、照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定すると共に、照射燃料集合体について管理上予測される核種組成をもとに照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出し、この算出値と未臨界増倍率ksubの測定値との比較によって照射燃料集合体の核種組成の予測精度を確証するものである。
【0063】
燃料集合体の核種組成は、例えば原子炉炉心管理システム等によって管理されている。管理上の核種組成に基づいて燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出し、この算出値を、実際の未臨界増倍率ksubの測定値と比較することで、核燃料の管理上の核種組成の予測が臨界安全の観点で十分な精度を有することを確証することができる。
【0064】
管理上の核種組成に基づいた燃料集合体の未臨界増倍率ksubの算出は計算コードを使用して行われる。計算コードとしては、三次元の中性子束分布を計算できるコードであればいずれも使用可能であるが、例えば、多群拡散法としてCITATIONコード等、多群決定論的輸送法としてDANTSYS等、多群モンテカルロ法コードとしてKENO等、連続エネルギーモンテカルロ法コードとしてMCNP-5,MVP-II等の使用が可能である。
【0065】
燃料集合体についての未臨界増倍率ksubの実際の測定は、本発明の未臨界増倍率測定方法によって行われる。この測定値を炉心管理システムで管理されている核種組成に基づく未臨界増倍率ksub(算出値)と比較することで、その炉心管理システムによる組成の予測の正確性を検証することができる。即ち、測定値と炉心管理システムに基づく算出値とが一致している又は相違するが許容範囲内である場合には、その炉心管理システムによる核種組成と実際の照射燃料集合体1の核種組成との間に齟齬がないと評価(照射燃料集合体の核種組成の予測が臨界安全管理にとって十分な精度を有する、との評価)できる。一方、測定値と炉心管理システムに基づく算出値とが相違しており且つその相違が許容範囲を超えている場合には、その炉心管理システムによる核種組成と実際の照射燃料集合体1の核種組成との間に齟齬があると評価(照射燃料集合体の核種組成の予測が臨界安全管理にとって十分な精度を有しない、との評価)できる。このように齟齬の有無の確認手段として有効である。
【0066】
このように燃料集合体1の未臨界増倍率ksubの確証を行うことで、核燃料の輸送に際し、燃焼度クレジットの導入が可能になる。
【0067】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0068】
例えば、図2の方法において、ステップS31の実行後にステップS32を実行するようにしていたが、ステップS32の実行後にステップS31を実行するようにしても良い。
【0069】
また、上述の説明では、測定時の測定対象燃料集合体1に対する中性子源4の挿入を全ての制御棒案内管に対して行うようにしていたが、必ずしも全ての制御棒案内管に対して行う必要はなく、一部の制御棒案内管のみに対して行うようにしても良い。例えば、制御棒案内管が24本ある場合には、23本以下の複数本又は1本の制御棒案内管に対して中性子源4を挿入するようにしても良い。
【実施例1】
【0070】
燃料集合体の中性子漏洩率Lと燃焼度との関係についての数値実験を行った。実験は、17×17型燃料集合体について行った(図6)。同集合体では24本の制御棒案内管があって、鉛直方向上部から容易にアクセスできる。さらに、原子炉に装荷する燃料集合体のうち2〜4体程度には、この制御棒案内管に中性子源の棒群を挿入して使うことになっている。
【0071】
この制御棒案内管に、燃料棒有効長さ=366cmの円筒形の252CfとSb−Be中性子源を挿入したケースを想定し、中性子の増倍と、集合体外部での中性子吸収率Aを連続エネルギーモンテカルロ法コードMCNP−5で数値実験した。
【0072】
ここで、燃料集合体は新燃料と、1〜4運転サイクル期間原子炉で使用された燃料を対象にした。この数値実験では、実際の照射燃料集合体の、燃料棒毎、鉛直方向核種組成分布を商用炉設計コードにより詳細に評価し、その評価した核種組成を使用している。この結果を図7に示す。
【0073】
252Cf中性子源では中性子漏洩率Lが燃焼度に殆ど依存せず一定であることが確認された。一方、Sb−Be中性子源を挿入したケースでは、252Cf中性子源のケースに比べると燃焼度の増加に応じて中性子漏洩率Lが若干減少する傾向にあるものの、大きく変化しないことがわかった。
【0074】
以上より、測定対象燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2について中性子漏洩率Lを算出し、この中性子漏洩率Lを測定対象燃料集合体1について使用し、測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出できることがわかった。特に、中性子源として252Cfを使用した場合には、中性子漏洩率Lが燃焼度に殆ど依存せず一定であることから、中性子発生率Sを高精度に算出できることもわかった。
【実施例2】
【0075】
(1)商用PWR取替炉心設計コードを使用して典型的な照射燃料の詳細核種組成分布の解析を行うと共に、これを用いて数値シミュレーションを行い、PWR照射燃料の周囲の中性子、γ線場を明らかにした。また、これに基づき、未臨界増倍率ksubの測定法を検討し提案した。
【0076】
(2. 照射燃料の基本特性の解析)
(2.1 燃料集合体内組成の詳細計算)
本実施例では、 集合体取り出し最高燃焼度55MWD/kgHMの17×17型燃料集合体を157体装荷する3ループ型PWR炉心を対象に、 原子炉の安全要件を満たす平衡炉心の燃料装荷パターンを解析した。この際、 燃料はウラン標準燃料集合体と、10wt%ガドリニア添加ウラン燃料棒を16本装荷した燃料集合体(Gd入り燃料)を併用する条件とした。炉心熱出力は2652MW、炉心サイクル燃焼度は14.8MWd/kgHM、サイクル燃焼日数は約410日とした。
【0077】
本燃料中の典型的な核種組成分布を得るため、(株)原子力エンジニアリングが開発した集合体計算コードAEGIS、及び原子燃料工業(株)(以下NFI)の開発した三次元詳細メッシュ炉心計算コードSCOPE2を用いた計算を実施した。
【0078】
AEGISは、超詳細群共鳴計算により各燃料棒の実効断面積を求め、Characteristics法(MOC)により非均質集合体体系の中性子輸送計算を行い、得られた微視的反応率に基づいてKrylov部分空間法により燃焼計算を実施するコードである。
【0079】
SCOPE2は燃料棒を含む単位格子1個まで詳細に分割した計算メッシュを用い、原子炉の三次元中性子束分布、出力分布を、SP3輸送ノード法で計算するコードである。燃料棒鉛直方向は、等間隔の24の計算メッシュ=ノードに分割している。グリッドなどによるノード内での中性子束の局所変化は、解析的多項式展開ノード法によって明示的に考慮している。本実施例での平衡炉心解析では、中性子のエネルギー群数は9群とし、AEGISコードにより作成された集合体核定数を使用した。
【0080】
SCOPE2コードの計算により、平衡炉心の取り出し燃料の出力履歴、水密度履歴が計算された。この結果、取り出し燃焼度最高となる燃料はウラン標準燃料で、取り出しは4サイクル終了時点となった。当該燃料の炉内での装荷位置は、1,2サイクルが最外周、3,4サイクルが内側である。
【0081】
各サイクル終了時の本集合体燃焼度を表1(PWR3ループ型平衡炉心で取出時最高燃焼度となる燃料集合体のサイクル燃焼度)に示す。
【表1】
【0082】
本実施例では当該燃料集合体をPWR照射燃料の典型例とし、以降の解析で使用した。
【0083】
当該燃料について、鉛直方向で同じ高さのノード毎に燃料棒の到達燃焼度、出力履歴、水密度履歴の平均値(集合体ノード平均値)を求めた。これらの履歴を用いて、集合体ノード毎の264本の燃料に対して、AEGISコードを用いて集合体燃焼計算を実施した。この燃焼計算では、エネルギー群数は172とし、燃焼チェーンとしてはアクチニド28核種、核分裂生成核種193核種を考慮した。サイクル毎の燃焼ステップ数は10とした。これにより、各サイクル終了時点での燃料棒内の核種組成分布を得た。核種組成は、燃料集合体中の1/8対称を仮定し、図8の38本について、鉛直方向24ノード毎に評価した。
【0084】
ここで評価した核種組成は各サイクル停止時のものであるが、その後冷却期間中に放射性崩壊により核種数密度が変化する。これをMVP−IIコードで計算し、照射後10年経過時点での集合体内の詳細核種組成分布を評価した。対象とした核種は表2(核計算で使用した核種)のとおりで、アクチニド核種と、中性子吸収断面積の大きい核分裂生成核種(FP核種)などを選択した。先行研究により、燃焼度30MWd/kgHMのPWR取出燃料集合体に蓄積された個々のFP核種の、中性子吸収に対する寄与がORIGEN−2コードで計算されている。それによれば、表2で選択したFP核種による中性子吸収率の全FP核種による吸収率に対する比は91%である。この比から、本実施例で考慮するFP核種の種類は、所期の測定法開発という目的に対して十分である。本実施例では、以降この組成を用いた解析を進めた。
【表2】
【0085】
(2.2 照射燃料集合体の固有値計算)
連続エネルギーモンテカルロ法コードMCNP−5を使用して、照射燃料の核特性の計算を進めた。燃料集合体の解析では燃料棒264本と制御棒案内管および計装案内管からなる289本の円柱で構成した体系を用いた。燃料棒箇所は鉛直方向24ノード毎に前項で計算した組成を与えた。制御棒および計装案内管内部、燃料棒間は軽水で満たされているとした。燃料棒は有効長部のみ考慮し、グリッド、プレナム、端栓、上下部ノズルは無視した。集合体の外周部と上下部は厚さ50cmの軽水とした(図9参照)。軽水および燃料の温度は20℃とし、軽水の密度は1gcm−3とした。
【0086】
モンテカルロ法計算では、ライブラリにENDF/B−VI.8ベースのACTIおよびENDF66を使用し、水素の熱中性子非弾性散乱断面積補正にはSAB2002データライブラリを使用した。
【0087】
燃料集合体が1体軽水中に保管された場の実効増倍率keffを計算した。表3(燃料集合体が単独で軽水中に保管された体系の実効増倍率keff)にまとめた。PWR新燃料集合体は反応度が大きく、1体でkeffが0.9を超過するが、燃焼が進むにつれ集合体の反応度が7割程度まで減少する。
【表3】
【0088】
(3.燃焼による反応度低下の確証手法)
燃料集合体を取り扱う際の臨界管理、あるいは原子炉起動にあたって臨界状態予測では、中性子源増倍法が用いられてきている。中性子源増倍法では中性子放出強度S0の中性子源を燃料集合体に挿入した際、燃料による増倍で得られる全中性子発生率Sが数式5となることを利用している。
【0089】
<数5>
S=中性子放出強度S0/(1−未臨界増倍率ksub)
【0090】
中性子源増倍法を燃料1体が軽水中に保管された場の未臨界度の測定に適用する上では
・中性子計数率と全中性子発生率Sの比、検出効率が燃焼度に依存しないような中性子検出法の開発
・基準未臨界度もしくは中性子放出強度S0の評価
が課題となる。これを解決する手法について検討する。
【0091】
(3.1 中性子源増倍法)
(3.1.1 中性子漏洩率と全中性子発生率)
照射燃料が1体軽水中に保管された体系(図9)に対して、中性子増倍と、集合体外部での中性子吸収率をMCNP−5コードで計算した。中性子源として、252Cf、Sb−Beと、照射燃料に蓄積したアクチニド中性子源を検討の対象とした。
【0092】
252Cfは初装荷PWR炉心の燃料装荷時臨界管理及び原子炉起動用の中性子源として使用され、一次中性子源PSと呼ばれる。一方Sb−Be中性子源は二次中性子源SSとよばれ、燃料取替え後のサイクル起動時に使用される。SSは、前サイクルの運転でアンチモン123Sbの中性子捕獲反応により半減期60.4日の124Sbを生成し、そのγ線によって光核反応で9Beから中性子を放出する中性子源である。252Cf及びSb−Beは実機では円筒状の棒に封入され、図8の制御棒案内管1ないし4本に挿入されて利用されているが、本解析では24本の制御棒案内管に同強度の中性子源が挿入される条件とし、 集合体鉛直方向は均一強度とした。
【0093】
アクチニド中性子源については燃料棒を鉛直方向24のノードに分割した分布を考慮した発生率分布とした。
【0094】
中性子発生率に対する図9の外周及び上/下部水領域への中性子吸収率の割合、 漏洩率Lを図7に示す。 アクチニド中性子源、 もしくは252Cf中性子源挿入時の漏洩率Lは燃料集合体の燃焼度に関わらず40%程度で一定(最大/最小比はアクチニド中性子源で1.012、252Cfで1.007)であった。 一方、Sb−Beを使用した場合は、燃焼度が進み未臨界増倍率が減少する体系で中性子漏洩率Lが減少した。
【0095】
図9の外周及び上/下部水領域での中性子吸収率を実測すれば、アクチニド中性子に起因する一次+二次中性子発生率S、 あるいは252Cfの挿入による一次+二次中性子発生率Sを、燃料集合体の燃焼度とは無関係の漏洩率を用いることで推定することが可能となる。また、Sb−Beを挿入した場合は、252Cfを挿入した場合に比べて誤差が大きくなるが、漏洩率の推定は可能である。
【0096】
(3.1.2 中性子漏洩率の分析)
(3.1.2.1 漏洩率一定の要因)
燃料集合体は水平方向バックリングが鉛直方向バックリングに比べ充分に大きく、 中性子は主に水平方向に漏洩する。 一群拡散理論によれば、 裸矩形炉心の側面方向への中性子漏洩は水平方向幾何学バックリングBh2と炉心の拡散係数Dの積に比例する。 一方炉心部での吸収率は、炉心平均での中性子吸収断面積Σaに比例する。 したがって、数式6が燃焼度に依存しなければ側面方向への中性子漏洩率一定を説明できる。集合体形状は一定なので、幾何学バックリングBh2は概略一定である。ここではDとΣaを調査した。
【0097】
【数6】
【0098】
図10の鉛直方向を、組成は変えずに366cmに伸張し、上下面を真空境界として、252Cf中性子源をその上端から70cmの位置において固定源計算を行った。この体系で各鉛直方向位置(z)毎に、集合体断面平均の中性子束φCf(z)と中性子流JCf(z)を求めた。 さらに、数式7に示すFickの法則で集合体部分の拡散係数Dを評価し、図11に示した。統計的ばらつき等はあるものの、燃焼による拡散係数の変化が小さい。
【0099】
【数7】
【0100】
一方、 図10の集合体ノードの体系で、固有値計算によりノード内の集合体部での平均中性子束と中性子吸収率を計算し、中性子吸収断面積Σaを求め、図12に示した。同図では核分裂中性子生成断面積としてνΣfも示した。燃焼度の進展によりνΣfは減少するものの、Σaの変化は小さいことがわかった。これは燃焼により235Uなどの吸収断面積は減少するものの、蓄積する超ウラン元素やFP核種の吸収効果の増分が同程度あることによると考えられる。
【0101】
以上より、照射燃料において、燃焼による拡散係数及び吸収断面積の変化が小さいことから、中性子漏洩率Lの燃焼変化も小さい結果となった。
【0102】
ここで、2.1節でのFP核種の選択を再点検する。FP核種について、代表核種のみ考慮したことに伴う誤差は、特に4サイクル照射燃料での中性子吸収率に影響する。表4(4サイクル照射燃料に中性子源252Cfを挿入した際の一次中性子発生率に対する集合体内各要素の中性子吸収率の比)に4サイクル照射燃料での中性子の吸収先をまとめた。全吸収量に対するFP核種の割合は12%弱である。先述のとおり、表2で選択したFP核種による中性子吸収率の全FP核種による吸収率に対する先行研究によれば91%であり、無視したFP核種の吸収効果は、本体系に対して1%程度と評価される。この結果は漏洩率一定性の成立条件に影響しない。
【0103】
【表4】
【0104】
(3.1.2.2 ほう酸水中での中性子漏洩率)
照射燃料の臨界安全性評価では、燃料が軽水に水没した状態を想定する場合が多いが、PWR発電所での輸送キャスクへの装荷は、高濃度ほう酸水中で実施される。このためほう酸水中での中性子漏洩率について、252Cf中性子源(24本、燃料棒長)を挿入した場合の計算評価を行い、表5(使用済PWR燃料の制御棒案内管24本に全長相当の中性子源252Cfを挿入した際のボロン濃度と中性子漏洩率(全中性子発生率に対する外周及び上下部水領域への中性子吸収率)との関係)にまとめた。
【0105】
【表5】
【0106】
ボロン濃度の増加によって中性子の漏洩率が増加している。燃料集合体から外部へ透過した中性子は、複数回の散乱により減速しながら一部が集合体内部へと再流入するが、ボロン濃度が増加すると、外周水領域で減速した中性子がボロンに吸収される。中性子の集合体内部への再流入量の減少により、集合体内部での中性子吸収量が減少し、高ボロン濃度下で中性子漏洩率が増加していると考えられる。しかし、同ボロン濃度では、集合体の照射サイクル数による漏洩率の差異は1%未満と小さい。ボロン濃度を測定で求めれば、燃料集合体外部での中性子吸収率を測定した後、ボロン濃度に応じた漏洩率を考慮することにより、全中性子発生率を推定することが可能である。
【0107】
(3.1.2 未臨界増倍率測定のための漏洩中性子測定手法の検討)
(3.1.2.1 中性子漏洩率と中性子源増倍法)
3.1.1項の計算で、集合体に252CfあるいはSb−Beを挿入した状態での燃料集合体外部での中性子吸収率が得られている。新燃料に対する中性子の漏洩率Lを照射燃料に対して共通に用いて全中性子発生率Sを求め、中性子源増倍法(数式5)よりksubを推定し、通常の計算で得られたksubと表6(照射PWR燃料の制御棒案内管24本に全長相当の中性子源252Cf、Sb−Beを挿入した際の未臨界増倍率ksubと共通の中性子漏洩率Lを用いた場合のksub誤差)で比較した。252Cfを使用した場合はこの誤差は0.5%未満であり、燃焼度に関わらず共通のLを使ってksubを高い精度で求めることができる。すなわち、燃料集合体の制御棒案内管24本に円柱状、燃料有効長の252Cf中性子源を挿入して集合体外部の中性子吸収率を測定すれば、燃焼度に関する情報なしにksubが求まり、燃料集合体の燃焼による反応度低下の確証に利用できる。
【0108】
【表6】
【0109】
また、Sb−Beを使用した場合は、252Cfを使用した場合に比べて、3,4サイクル照射燃料に対するksub評価精度が劣るものの、中性子源増倍法によるksub推定は可能である。
【0110】
以下、燃料集合体外部での中性子吸収量測定法について検討した。
【0111】
(3.1.2.2 H(n、γ)線測定法)
4サイクル照射燃料に252Cfを挿入した体系に対する計算では、外周水領域で吸収される中性子の99.5%が水素への吸収となった。この反応H+n→D+γでは、2.223MeVγ線が発生する。この2.223MeV特性γ線の測定により、外周水領域での中性子吸収率を評価する手法(本実施例ではH(n、γ)線測定法と呼ぶ。特開2007-315909号参照)の概念を図13に示す。
【0112】
燃料集合体から漏洩した中性子を見込む位置にγ線スペクトロメータ検出器を配置する。集合体内部を見込ないように、検出器を集合体から遮蔽する。中性子の関心領域での吸収率Aは中性子束をφ、吸収断面積をΣa、水と水素をそれぞれH2OとHで示すと数式8となる。
【0113】
【数8】
【0114】
位置rで発生した特性γ線1個に対する検出器地点での特性γ線束の期待値cはrと検出器間の距離dをもちいて数式9となる。
【0115】
【数9】
【0116】
ここでΩは位置rからみた検出器の立体角で、μは2.223MeVγ線の水中での減弱係数である。スペクトル測定で2.223MeVγ線を選別する場合、0回衝突事象のみ考慮すればよいので、cの評価は容易である。 測定評価される特性γ線束Gは数式10となるので、水素への中性子の吸収率分布φΣa,Hを求めればGからφΣa,Hの絶対値が求まる。
【0117】
【数10】
【0118】
吸収率分布φΣa,Hの評価法で、照射燃料の組成情報が不要の手法として、類似反応を用いる手段がある。図14のように、6Li(n、t)反応、10B(n、α)反応はH(n、γ)反応と類似の分布を示すので、10B比例計数管や6Liファイバー検出器の使用によりH(n、γ)反応率分布を実測評価することが考えられる。
【0119】
(3.1.3.3 照射燃料と新燃料に対しての中性子源増倍法に基づく未臨界度測定法)
H(n、γ)線測定法は、熱中性子検出器をγ線スペクトロメータでの特性γ線計数率により絶対値校正して使用するという特徴がある。一方中性子源増倍法のみに使用するのであれば、絶対値は不要である。組成の情報が確実な新燃料に対し、252Cfを挿入する。この場合252Cfからの中性子1個あたりの外周水領域での中性子吸収率は正確に計算できる。この体系に対して10B比例計数管や6Li(n、t)ファイバー検出器での測定を行い、252Cf中性子放出率を基準に、これらの検出器の相対検出効率を求める(校正する)。その後、目的とする照射燃料に対して同じ252Cfを挿入して、校正した10B比例計数管や6Li(n、t)ファイバー検出器で中性子検出を行えば、外部での中性子吸収率と全中性子発生率が252Cf中性子放出率の相対値として求まる。それらによりksubが求まる。
【0120】
(3.1.2.4 H(n、γ)線測定の簡易法)
3.1.2.1節の手法から、吸収率分布φΣa、H評価を省く計測法を検討した。照射燃料集合体に対し252Cf中性子源を配置、もしくは照射燃料に蓄積したアクチニド中性子源のみを与え、図13の検出器位置に鉛直方向24点、すなわち集合体側の各鉛直方向ノードの中心高さ位置でのγ線束を計算し、合算した。これはγ線スペクトロメータを鉛直方向に走査して連続的にH(n、γ)特性γ線を測定することと等価である。このγ線束合算値を集合体内の中性子発生率で除し、表7(集合体中での中性子発生量に対する遠方での2.223MeVγ線束比)にまとめた。
【0121】
【表7】
【0122】
アククチニド中性子源と、252Cfのケースでは中性子源分布の形状の違いにより燃料集合体外部での中性子吸収率分布が異なるため、γ線束合算値/中性子発生率比は系統的な差が見られ、また燃焼度に依存した変化もある。しかし、252Cfを用いた中性子源増倍法において、新燃料でのγ線束合算値/中性子発生率比を各照射燃料に対して共通に用い、各体系でγ線束合算値から全中性子発生率を推定し、ksubを評価した場合の誤差は2.5%となった。これは表6の3,4サイクル照射燃料のksubの差異を十分に分離できるものである。吸収率分布φΣa、Hの測定は行わないこの簡易手法も中性子発生率測定に有望である。
【符号の説明】
【0123】
1 測定対象燃料集合体
2 測定対象燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体
3 記憶手段
4 中性子源
5 吸収率測定手段
6 入力手段
7 算出手段
16 第2の吸収率測定手段
17 第2の入力手段
18 第2の算出手段
19 第2の入力データ読込部
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、測定装置および測定用プログラム、並びに照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、貯蔵プール等に水没させている照射燃料集合体に中性子源を挿入して未臨界増倍率を測定する照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、測定装置および測定用プログラム、並びに前記測定方法を利用した照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
核燃料の輸送に燃焼度クレジットを導入するためには、照射燃料集合体の反応度を決定する集合体内核種組成の予測値が正しいことを、測定によって確認する必要がある。
【0003】
照射燃料集合体の核種組成によって決定される値として未臨界増倍率ksubがある。したがって、照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定し、この測定値が、照射燃料集合体の管理データから予測される核種組成に基づいて算出された値と一致するか否かによって、燃焼度クレジット導入に必要な核種組成の予測精度の確証を行うことができる。
【0004】
照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubの測定に適用可能であると考えられる方法として中性子源増倍法がある。中性子源増倍法では燃料集合体全体の中性子発生率Sを求める必要があり、そのため、原子炉や核燃料集合体内外の測定可能な1ないし複数点での中性子束φの測定値に基づいて全中性子発生率Sを推定することが考えられている。
【0005】
なお、照射燃料集合体の未臨界度を測定する装置としては、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−59084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、中性子束φの分布を原子炉や核燃料集合体内で詳細に測定することは出来ない。従来手法では測定する燃料集合体内外の中性子束φの分布がほとんど変化しないと仮定し、測定可能な箇所の中性子束φを1ないし数点測定して中性子発生率Sを評価するが、中性子束φの分布は燃料集合体の核種組成等に強く依存し変化する。このため、中性子束φの分布を正確に求めるためには、未臨界度に関する情報(原子炉管理システムで評価した燃料集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等)をもとに詳細計算を行なう必要があり、これらの情報がなければ測定可能な箇所で中性子束φを実測しても中性子発生率Sを得ることが出来ず、未臨界増倍率ksubを求めることができない。
【0008】
本発明は、測定対象となる照射燃料集合体内部の中性子束φの分布をその未臨界度に関する情報(原子炉管理システムで評価した燃料集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等)を用いて計算すること無く、実測データから未臨界増倍率ksubを求めることが可能な照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、測定装置および測定用プログラム、並びに照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、照射燃料集合体の核特性について鋭意研究を行った結果、水中に保管した燃料集合体に中性子源を挿入した場合、その燃料集合体の燃焼度にかかわらず中性子漏洩率Lが一定であることを知見した。そして、かかる知見に基づき更に研究を進めることで、この知見を従来の「中性子源増倍法」に適用することで、当該照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
即ち、請求項1記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法は、測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを予め求めておき、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を使用して外部での中性子吸収率Aを測定し、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出し、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出するものである。
【0011】
また、請求項2記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法は、中性子放出強度S0が不明な場合、中性子放出強度S0が不明な中性子源を使用して、測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体を水没させて外部での中性子吸収率Axを測定すると共に、前記の核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出し、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出するものである。
【0012】
また、請求項3記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置は、予め求めておいた測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを記憶している記憶手段と、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて外部での中性子吸収率Aを測定する吸収率測定手段と、中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む入力手段と、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する算出手段とを備えるものである。
【0013】
また、請求項4記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置は、水没されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体について中性子放出強度S0が不明な中性子源を用いて外部での中性子吸収率Axを測定する第2の吸収率測定手段と、中性子吸収率Axを読み込む第2の入力手段と、前記の核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する第2の算出手段とを備えるものである。
【0014】
また、請求項5記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラムは、少なくとも、記憶手段に予め記憶されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを読み込む手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む手段、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0015】
また、請求項6記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラムは、少なくとも、記憶手段に予め記憶されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを読み込む手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む手段、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体について中性子放出強度S0が不明な中性子源を用いて測定された中性子吸収率Axを読み込む手段、前記の核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する手段としてコンピュータを機能させるためのものである。
【0016】
さらに、請求項7記載の照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法は、請求項1又は2記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法を使用して照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定すると共に、照射燃料集合体について管理上予測される核種組成をもとに、照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出し、この算出値と未臨界増倍率ksubの測定値との比較によって照射燃料集合体の核種組成の予測が臨界安全の観点で十分な精度を有することを確証するものである。
【0017】
ここで、中性子放出強度S0とは、単位時間あたりに、放射性崩壊に起因して中性子源から発生する中性子数をいう。また、中性子発生率Sとは、単位時間あたりに燃料集合体内部に挿入された中性子源の放射性崩壊に起因し発生する中性子数と、その中性子に起因した核分裂連鎖反応で燃料集合体内部で単位時間あたりに発生する中性子数の合計をいう。さらに、中性子漏洩率Lとは、燃料集合体内部で発生する中性子の数に対して、集合体外部で吸収される中性子の数の割合をいう。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、請求項3記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置および請求項5記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラムによれば、測定対象の照射燃料集合体に挿入する中性子源の中性子放出強度S0が既知の場合に、測定対象となる照射燃料集合体内部の中性子束φの分布をその未臨界度に関する情報(原子炉管理システムで評価した燃料集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等)を用いて計算すること無く、その照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを求めることが可能になる。
【0019】
また、請求項2記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法、請求項4記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置および請求項6記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラムによれば、測定対象の照射燃料集合体に挿入する中性子源の中性子放出強度S0が不明な場合であっても、中性子放出強度S0を求めることができ、求めた中性子放出強度S0を用いて未臨界増倍率ksubを求めることができる。
【0020】
さらに、請求項7記載の照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法によれば、未臨界増倍率ksubと核種組成は対応するので、管理上の核種組成が実際のものと一致しているか否かを確認することができる。そのため、照射燃料集合体の核種組成の予測精度が臨界安全管理にとって十分な精度を有すことを確証でき、核燃料の輸送に際し、燃焼度クレジットの導入が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の未臨界増倍率測定装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の未臨界増倍率測定方法の第1の実施形態を示すフローチャートである。
【図3】本発明の未臨界増倍率測定装置の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図4】本発明の未臨界増倍率測定方法の第2の実施形態を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS40のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】吸収率測定手段を示す概念図である。
【図7】燃料集合体の燃焼度と中性子漏洩率Lとの関係(燃料集合体からの中性子の漏洩率(計算体系からの漏洩中性子は集合体外部吸収中性子に含めている。))を示す図である。
【図8】PWR17×17型燃料集合体の燃料配列と核種組成を解析した燃料棒を説明するための図である。
【図9】燃料集合体が単独で軽水中に保管された状態の実効増倍率計算体系図である。
【図10】集合体ノード毎に着目した固有値計算の体系図であり、集合体部+外周水領域での中性子発生率/吸収率比の計算についての図である。
【図11】照射燃料集合体の各ノードの拡散係数を示す図である。
【図12】照射燃料集合体の各ノードの巨視的吸収断面積Σaと核分裂中性子生成断面積νΣfを示す図である。
【図13】集合体外周部での中性子吸収率を定量するためのH(n,γ)特性γ線測定法の概念図である。
【図14】軽水中に点中性子源252Cfをおいた際の水素中性子吸収率分布と、微小の6Li(n,t)あるいは10B(n,α)検出器の反応率分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。本発明は燃料集合体から漏洩する中性子の数を測定することを特徴とする中性子源増倍法を利用して照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定するものであり、水没させた照射燃料集合体に中性子源を挿入して未臨界増倍率ksubを測定する。
【0023】
図1に、本発明の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置の第1の実施形態を示す。本実施形態では、外部での中性子吸収率Aの測定と中性子漏洩率Lの算出に用いる中性子源として中性子放出強度S0が既知のものを使用する。照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置(以下、単に未臨界増倍率測定装置という)は、予め求めておいた測定対象の照射燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2の中性子漏洩率Lを記憶している記憶手段3と、水没されている測定対象の照射燃料集合体1について中性子放出強度S0の中性子源4を用いて外部での中性子吸収率Aを測定する吸収率測定手段5と、中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む入力手段6と、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象の照射燃料集合体1の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象の照射燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する算出手段7とを備えるものである。この未臨界増倍率測定装置は、本発明の照射燃料集合体1の未臨界増倍率測定用プログラム8をコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、照射燃料集合体1の未臨界増倍率測定用プログラム(以下、単に測定用プログラムという)8をコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。なお、以下、「測定対象の照射燃料集合体1」を単に測定対象燃料集合体1といい、「測定対象の照射燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2」を単に組成既知燃料集合体2という。
【0024】
測定用プログラム8を実行するための本実施形態の未臨界増倍率測定装置の全体構成を図1に示す。この未臨界増倍率測定装置は、制御部9、記憶部(記憶手段)3、入力部(入力手段)6、表示部10を備え、これらは相互にバス等の信号回線11により接続されている。
【0025】
制御部9は記憶部3に記憶されている測定用プログラム8によって未臨界増倍率測定装置全体の制御並びに未臨界増倍率ksubの算出等に係る演算を行うものであり、例えばCPU(中央演算処理装置)である。記憶部3は少なくともデータやプログラム8を記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。
【0026】
入力部6は少なくとも作業者の命令等を制御部9等に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。表示部10は制御部9の制御により文字や図形等の描画・表示を行うものであり、例えばディスプレイである。
【0027】
未臨界増倍率測定装置の制御部9には、測定用プログラム8を実行することにより、記憶手段3に予め記憶されている組成既知燃料集合体2の中性子漏洩率Lを読み込む手段としての漏洩率読込部12、水没されている測定対象燃料集合体1について中性子放出強度S0の中性子源4を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと中性子放出強度S0とを読み込む手段としての入力データ読込部13、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出すると共に、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する手段としての算出部(算出手段)7が構成される。
【0028】
未臨界増倍率測定装置には、受信装置14がバス等の信号回線11等により接続されており、例えば吸収率測定手段5によって測定された照射燃料集合体1の外部での中性子吸収率Aはこの受信装置14を介して記憶部3に記憶される。ここで、例えば照射燃料集合体1を水没させておくプールに設置した吸収率測定手段5と受信装置14とを通信回線15によって接続し、吸収率測定手段5の測定値(燃料集合体の外部での中性子吸収率A)を自動的に受信装置14に供給するようにしても良いし、作業者の送信操作によって中性子吸収率Aを受信装置14に供給するようにしても良い。あるいは、作業者が入力部6を操作して中性子吸収率Aを直接入力し、記憶部3に記憶させるようにしても良い。
【0029】
中性子源4の中性子放出強度S0は、例えば作業者が入力部6を操作して直接入力し、記憶部3に記憶させる。
【0030】
吸収率測定手段5としては、公知の中性子吸収率測定方法を実施する測定装置が使用される。公知の中性子吸収率測定方法としては、例えば特開2007−315909号に開示された中性子放出体の中性子放出率測定方法があり、当該方法の「中性子放出率」が本発明における「中性子吸収率」である。
【0031】
本実施形態では、吸収率測定手段5は照射燃料集合体を貯蔵しておくプールを利用して設けられている。吸収率測定手段5を図6に示す。プール内に測定対象燃料集合体1を沈め、内挿物取扱い装置を使用して測定対象燃料集合体1の例えば制御棒案内管に中性子源4が挿入される。例えば17×17型PWR燃料集合体には24本の制御棒案内管が設けられているので、24本の全てに中性子源4が挿入される。ここで、24本の制御棒案内管の全てに中性子源4を同時に挿入して測定を行うようにしても良いが、一部(1本又は複数本)の制御棒案内管にのみ中性子源4を挿入して測定を行い、この測定を、挿入する制御棒案内管を代えながら繰り返し行うことで24本の制御棒案内管の全てについて測定を行うようにしても良い。測定を複数回に分けた場合には、測定値を合計する。
【0032】
中性子源4として例えば十分な長さのものが使用され、燃料集合体1全長にわたり挿入される。このように燃料集合体1全長にわたり挿入できる長さの中性子源4を使用することで、中性子吸収率A(中性子放出率)の測定を短時間で行うことができる。ただし、中性子源4として、必ずしもこのように十分な長さを有するものを使用する必要はなく、点状のもの等より短いものを使用することも可能である。より短い中性子源4を使用する場合には、中性子源4を管の中で燃料集合体1全長にわたり等速度で移動させながら測定を行い、測定値を合計することで上述の十分な長さの中性子源4を使用した場合と実質的に同じ条件で測定することができる。また、一定間隔の複数点で中性子源をとめて測定を行い、測定値を合算した場合でも、測定点数を増やせば上述の十分な長さの中性子源4を使用した場合と実質的に同じ条件で測定することができる。
【0033】
吸収率測定手段5は算出した中性子吸収率Aを受信装置14に供給する。あるいは、吸収率測定手段5が算出した中性子吸収率Aを作業者が入力部6を操作して入力する。中性子吸収率Aは一旦記憶部3に記憶される。
【0034】
測定対象燃料集合体1は、例えばPWRの照射燃料集合体1である。PWRの照射燃料集合体1は上からの中性子源4の挿入が可能であり、また貯蔵プール内に立てた状態で沈めて貯蔵されるため、吸収率測定手段5による中性子吸収率Aの測定が容易である。ただし、中性子源4を挿入して中性子吸収率Aを測定することが可能であれば、PWR以外の燃料集合体、例えばBWR等の燃料集合体を測定対象にしても良い。
【0035】
中性子源4は例えば制御棒案内管に挿入可能な棒状を成している。中性子源4として、例えば自発核分裂中性子源、(γ,n)反応中性子源等の使用が可能であるが、なかでも自発核分裂中性子源の使用が好ましい。自発核分裂中性子源、(γ,n)反応中性子源のいずれを使用した場合にも燃料集合体の燃焼度に依存せずに中性子漏洩率Lが一定(少なくとも未臨界増倍率ksubの算出においては一定であるとみなしても良い程度に一定)になるが、なかでも自発核分裂中性子源を使用した場合には特に一定の程度が高いからである。自発核分裂中性子源としては、例えば252Cf,240Pu等の使用が可能である。また、(γ,n)反応中性子源としては、例えばSb−Be中性子源等の使用が可能である。
【0036】
中性子漏洩率Lは数値解析によって求められ、予め記憶部3に記憶されている。本発明者らは、照射燃料集合体1の核特性について鋭意研究を行った結果、燃料集合体の中性子漏洩率Lは核燃料の燃焼度に依存せず一定(少なくとも未臨界増倍率ksubの算出においては一定であるとみなしても良い程度に一定)であることを知見した。また、燃料集合体の中性子漏洩率Lは、核燃料の核種組成が解れば、数値解析によって算出することができる。したがって、本発明では、測定対象燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2について中性子漏洩率Lを算出し、この中性子漏洩率Lを測定対象燃料集合体1について使用する。中性子漏洩率Lの算出は計算コードを使用して行われる。計算コードとしては、三次元の中性子束分布を計算できるコードであればいずれも使用可能であるが、例えば、多群拡散法としてCITATIONコード等、多群決定論的輸送法としてDANTSYS等、多群モンテカルロ法コードとしてKENO等、連続エネルギーモンテカルロ法コードとしてMCNP-5,MVP-II等の使用が可能である。中性子漏洩率Lは吸収率測定手段5の測定体系と同じ体系について算出される。
【0037】
組成既知燃料集合体2としては、未使用の新燃料集合体がある。さらに照射履歴はあっても管理データ等の参照により現在の核種組成が解析可能な燃料集合体がある。組成既知燃料集合体2を使用して中性子漏洩率Lを求めておけば、初期の核種組成が同じものを測定対象にする限り、測定の度に中性子漏洩率Lを求め直す必要がない。
【0038】
算出された中性子漏洩率Lは、例えば作業者が入力部6を操作して直接入力し、記憶部3に記憶させておく。
【0039】
次に、本発明の照射燃料集合体1の未臨界増倍率測定方法について説明する。この照射燃料集合体1の未臨界増倍率測定方法(以下、単に未臨界増倍率測定方法という)は、例えば図2に示すように、組成既知燃料集合体2の中性子漏洩率Lを予め求めておき(ステップS31)、水没されている測定対象燃料集合体1について中性子放出強度S0の中性子源4を使用して外部での中性子吸収率Aを測定し(ステップS32)、中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出し(ステップS33)、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する(ステップS34)ものである。
【0040】
まず最初に、組成既知燃料集合体2について数値解析を行なって中性子漏洩率Lを求めておき、記憶部3に予め記憶しておく(ステップS31)。この中性子漏洩率Lを制御部9の漏洩率読込部12が記憶部3から読み込み、算出部7に供給する。
【0041】
次に、吸収率測定手段5が測定対象燃料集合体1の外部での中性子吸収率Aを測定し、測定された中性子吸収率Aが記憶部3に記憶される。また、測定に使用した中性子源4の中性子放出強度S0も記憶部3に記憶される。入力データ読込部13は中性子吸収率Aと中性子放出強度S0を記憶部3から読み込み、算出部7に供給する。
【0042】
算出部7は中性子漏洩率Lと中性子吸収率Aとに基づいて測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出し(ステップS33)、中性子放出強度S0と中性子発生率Sとに基づいて測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを算出する(ステップS34)。具体的には、数式1に基づいて中性子発生率Sを算出し、数式2に基づいて未臨界増倍率ksubを算出する。
【0043】
<数1>
中性子発生率S=集合体外部での中性子吸収率A/中性子漏洩率L
<数2>
未臨界増倍率ksub=(中性子発生率S−中性子放出強度S0)/中性子発生率S
【0044】
そして、算出された未臨界増倍率ksubは記憶部3に記憶されると共に、表示部10に表示される(ステップS35)。その後、測定用プログラム8は終了する。
【0045】
なお、2回目以降の測定では、中性子漏洩率Lが既に記憶部3に記憶されているので、ステップS31を飛ばしてステップS32から実行される。
【0046】
本発明では、中性子源4の中性子放出強度S0が既知の場合に、原子炉管理システムで評価した集合体毎の燃焼履歴、予測した核種組成等を参照せずに測定対象燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを直接求めることができる。
【0047】
次に、本発明の未臨界増倍率測定装置の第2の実施形態について説明する。なお、上述の実施形態と同一の部材やステップついては同一の符号を付し、それらについての説明を省略する。
【0048】
図3に、未臨界増倍率測定装置を示す。この未臨界増倍率測定装置は、中性子吸収率Aの測定に中性子放出強度S0が不明の中性子源4を使用可能にしたものであり、上記の各構成要素に加えて、水没されている組成既知燃料集合体2について中性子放出強度S0が不明な中性子源4を用いて外部での中性子吸収率Axを測定する第2の吸収率測定手段16と、中性子吸収率Axを読み込む第2の入力手段17と、上記既知の核種組成を有する燃料集合体(想定燃料集合体)についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する第2の算出手段18とを備えている。
【0049】
本実施形態では、上述の吸収率測定手段5によって第2の吸収率測定手段16を兼用している。即ち、上述の吸収率測定手段5を使用して中性子吸収率Axを測定する。測定された中性子吸収率Axは中性子吸収率Aと同様にして記憶部3に記憶される。
【0050】
また、本実施形態では、上述の入力手段(入力部)6によって第2の入力手段17を兼用している。即ち、上述の入力部6を操作して作業者が中性子吸収率Axを入力しても良い。
【0051】
また、測定用プログラム8の実行により、制御部9には、上記の手段12,13,7の他に、水没されている組成既知燃料集合体2について中性子放出強度S0が不明な中性子源4を用いて測定された中性子吸収率Axを読み込む手段としての第2の入力データ読込部19、上記既知の核種組成を有する燃料集合体(想定燃料集合体)についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する手段としての第2の算出部(第2の算出手段)18が構成される。
【0052】
次に、未臨界増倍率測定方法について説明する。この未臨界増倍率測定方法は、例えば図4に示すように、中性子源4の中性子放出強度S0を求めるステップS40を有している。本実施形態では、組成既知燃料集合体2の中性子漏洩率Lを求めた(ステップS31)後に、ステップS40を実行する。
【0053】
ステップS40のルーチンは、例えば図5に示すように、中性子放出強度S0が不明な中性子源4を使用して組成既知燃料集合体2を水没させて中性子吸収率Axを測定し(ステップS41)、上記既知の核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出し(ステップS42)、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し(ステップS43)、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいて中性子放出強度S0を算出する(ステップS44)ものである。
【0054】
ステップS41では、中性子放出強度S0が不明な中性子源4を使用して、組成既知燃料集合体2を対象に吸収率測定手段5によって外部での中性子吸収率Axを測定する。測定した中性子吸収率Axは受信装置14又は第2の入力部17(入力部6)を介して記憶部3に記憶させておく。また、制御部9の第2の入力データ読込部19は中性子吸収率Axを記憶部3から読み込み、第2の算出部18に供給する。
【0055】
第2の算出部18は、ステップS41で測定した組成既知燃料集合体2と同じ核種組成を有する燃料集合体(想定燃料集合体)を想定し、中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出する(ステップS42)。中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxの算出は計算コードを使用して行われる。計算コードとしては、三次元の中性子束分布を計算できるコードであればいずれも使用可能であるが、例えば、多群拡散法としてCITATIONコード等、多群決定論的輸送法としてDANTSYS等、多群モンテカルロ法コードとしてKENO等、連続エネルギーモンテカルロ法コードとしてMCNP-5,MVP-II等の使用が可能である。中性子漏洩率Lx,未臨界増倍率ksubxは吸収率測定手段5の測定系と同じ測定系について算出される。
【0056】
また、第2の算出部18は、中性子吸収率Axと中性子漏洩率Lxとに基づいて想定燃料集合体の中性子発生率Sxを算出し(ステップS43)、中性子発生率Sxと未臨界増倍率ksubxとに基づいてステップS41で使用した中性子源4の中性子放出強度S0を算出する(ステップS44)。具体的には、数式3に基づいて中性子発生率Sxを算出し、数式4に基づいて中性子放出強度S0を算出する。なお、数式4は数式2の変形である。
【0057】
<数3>
中性子発生率Sx=集合体外部での中性子吸収率Ax/中性子漏洩率Lx
<数4>
中性子放出強度S0=中性子発生率S(1−未臨界増倍率ksubx)
【0058】
そして、算出された中性子放出強度S0は記憶部3に記憶された後、図4のステップS32へと戻り、ステップS32→ステップS33→ステップS34→ステップS35へと進み、測定対象燃料集合体1について未臨界増倍率ksubを求めて表示部10に表示する。その後、測定用プログラム8は終了する。
【0059】
なお、2回目以降の測定では、中性子源4の中性子放出強度S0は既に記憶部3に記憶されているので、図2の測定方法によって未臨界増倍率ksubが求められる。
【0060】
本実施形態では、中性子源4の中性子放出強度S0が不明であっても中性子放出強度S0を求めることができ、求めた中性子放出強度S0を用いて未臨界増倍率ksubを求めることができる。即ち、中性子源4の中性子放出強度S0が不明な場合であっても、新燃料集合体のように組成が既知の集合体を用いれば、測定対象燃料集合体に関する原子炉管理システムで評価した燃焼履歴、予測した核種組成等を参照せずに照射燃料集合体1の未臨界増倍率ksubを直接求めることができる。
【0061】
次に、本発明の照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法について説明する。
【0062】
この照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法(以下、単に確証方法という)は、上述の未臨界増倍率測定方法を使用して、照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定すると共に、照射燃料集合体について管理上予測される核種組成をもとに照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出し、この算出値と未臨界増倍率ksubの測定値との比較によって照射燃料集合体の核種組成の予測精度を確証するものである。
【0063】
燃料集合体の核種組成は、例えば原子炉炉心管理システム等によって管理されている。管理上の核種組成に基づいて燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出し、この算出値を、実際の未臨界増倍率ksubの測定値と比較することで、核燃料の管理上の核種組成の予測が臨界安全の観点で十分な精度を有することを確証することができる。
【0064】
管理上の核種組成に基づいた燃料集合体の未臨界増倍率ksubの算出は計算コードを使用して行われる。計算コードとしては、三次元の中性子束分布を計算できるコードであればいずれも使用可能であるが、例えば、多群拡散法としてCITATIONコード等、多群決定論的輸送法としてDANTSYS等、多群モンテカルロ法コードとしてKENO等、連続エネルギーモンテカルロ法コードとしてMCNP-5,MVP-II等の使用が可能である。
【0065】
燃料集合体についての未臨界増倍率ksubの実際の測定は、本発明の未臨界増倍率測定方法によって行われる。この測定値を炉心管理システムで管理されている核種組成に基づく未臨界増倍率ksub(算出値)と比較することで、その炉心管理システムによる組成の予測の正確性を検証することができる。即ち、測定値と炉心管理システムに基づく算出値とが一致している又は相違するが許容範囲内である場合には、その炉心管理システムによる核種組成と実際の照射燃料集合体1の核種組成との間に齟齬がないと評価(照射燃料集合体の核種組成の予測が臨界安全管理にとって十分な精度を有する、との評価)できる。一方、測定値と炉心管理システムに基づく算出値とが相違しており且つその相違が許容範囲を超えている場合には、その炉心管理システムによる核種組成と実際の照射燃料集合体1の核種組成との間に齟齬があると評価(照射燃料集合体の核種組成の予測が臨界安全管理にとって十分な精度を有しない、との評価)できる。このように齟齬の有無の確認手段として有効である。
【0066】
このように燃料集合体1の未臨界増倍率ksubの確証を行うことで、核燃料の輸送に際し、燃焼度クレジットの導入が可能になる。
【0067】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0068】
例えば、図2の方法において、ステップS31の実行後にステップS32を実行するようにしていたが、ステップS32の実行後にステップS31を実行するようにしても良い。
【0069】
また、上述の説明では、測定時の測定対象燃料集合体1に対する中性子源4の挿入を全ての制御棒案内管に対して行うようにしていたが、必ずしも全ての制御棒案内管に対して行う必要はなく、一部の制御棒案内管のみに対して行うようにしても良い。例えば、制御棒案内管が24本ある場合には、23本以下の複数本又は1本の制御棒案内管に対して中性子源4を挿入するようにしても良い。
【実施例1】
【0070】
燃料集合体の中性子漏洩率Lと燃焼度との関係についての数値実験を行った。実験は、17×17型燃料集合体について行った(図6)。同集合体では24本の制御棒案内管があって、鉛直方向上部から容易にアクセスできる。さらに、原子炉に装荷する燃料集合体のうち2〜4体程度には、この制御棒案内管に中性子源の棒群を挿入して使うことになっている。
【0071】
この制御棒案内管に、燃料棒有効長さ=366cmの円筒形の252CfとSb−Be中性子源を挿入したケースを想定し、中性子の増倍と、集合体外部での中性子吸収率Aを連続エネルギーモンテカルロ法コードMCNP−5で数値実験した。
【0072】
ここで、燃料集合体は新燃料と、1〜4運転サイクル期間原子炉で使用された燃料を対象にした。この数値実験では、実際の照射燃料集合体の、燃料棒毎、鉛直方向核種組成分布を商用炉設計コードにより詳細に評価し、その評価した核種組成を使用している。この結果を図7に示す。
【0073】
252Cf中性子源では中性子漏洩率Lが燃焼度に殆ど依存せず一定であることが確認された。一方、Sb−Be中性子源を挿入したケースでは、252Cf中性子源のケースに比べると燃焼度の増加に応じて中性子漏洩率Lが若干減少する傾向にあるものの、大きく変化しないことがわかった。
【0074】
以上より、測定対象燃料集合体1と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体2について中性子漏洩率Lを算出し、この中性子漏洩率Lを測定対象燃料集合体1について使用し、測定対象燃料集合体1の中性子発生率Sを算出できることがわかった。特に、中性子源として252Cfを使用した場合には、中性子漏洩率Lが燃焼度に殆ど依存せず一定であることから、中性子発生率Sを高精度に算出できることもわかった。
【実施例2】
【0075】
(1)商用PWR取替炉心設計コードを使用して典型的な照射燃料の詳細核種組成分布の解析を行うと共に、これを用いて数値シミュレーションを行い、PWR照射燃料の周囲の中性子、γ線場を明らかにした。また、これに基づき、未臨界増倍率ksubの測定法を検討し提案した。
【0076】
(2. 照射燃料の基本特性の解析)
(2.1 燃料集合体内組成の詳細計算)
本実施例では、 集合体取り出し最高燃焼度55MWD/kgHMの17×17型燃料集合体を157体装荷する3ループ型PWR炉心を対象に、 原子炉の安全要件を満たす平衡炉心の燃料装荷パターンを解析した。この際、 燃料はウラン標準燃料集合体と、10wt%ガドリニア添加ウラン燃料棒を16本装荷した燃料集合体(Gd入り燃料)を併用する条件とした。炉心熱出力は2652MW、炉心サイクル燃焼度は14.8MWd/kgHM、サイクル燃焼日数は約410日とした。
【0077】
本燃料中の典型的な核種組成分布を得るため、(株)原子力エンジニアリングが開発した集合体計算コードAEGIS、及び原子燃料工業(株)(以下NFI)の開発した三次元詳細メッシュ炉心計算コードSCOPE2を用いた計算を実施した。
【0078】
AEGISは、超詳細群共鳴計算により各燃料棒の実効断面積を求め、Characteristics法(MOC)により非均質集合体体系の中性子輸送計算を行い、得られた微視的反応率に基づいてKrylov部分空間法により燃焼計算を実施するコードである。
【0079】
SCOPE2は燃料棒を含む単位格子1個まで詳細に分割した計算メッシュを用い、原子炉の三次元中性子束分布、出力分布を、SP3輸送ノード法で計算するコードである。燃料棒鉛直方向は、等間隔の24の計算メッシュ=ノードに分割している。グリッドなどによるノード内での中性子束の局所変化は、解析的多項式展開ノード法によって明示的に考慮している。本実施例での平衡炉心解析では、中性子のエネルギー群数は9群とし、AEGISコードにより作成された集合体核定数を使用した。
【0080】
SCOPE2コードの計算により、平衡炉心の取り出し燃料の出力履歴、水密度履歴が計算された。この結果、取り出し燃焼度最高となる燃料はウラン標準燃料で、取り出しは4サイクル終了時点となった。当該燃料の炉内での装荷位置は、1,2サイクルが最外周、3,4サイクルが内側である。
【0081】
各サイクル終了時の本集合体燃焼度を表1(PWR3ループ型平衡炉心で取出時最高燃焼度となる燃料集合体のサイクル燃焼度)に示す。
【表1】
【0082】
本実施例では当該燃料集合体をPWR照射燃料の典型例とし、以降の解析で使用した。
【0083】
当該燃料について、鉛直方向で同じ高さのノード毎に燃料棒の到達燃焼度、出力履歴、水密度履歴の平均値(集合体ノード平均値)を求めた。これらの履歴を用いて、集合体ノード毎の264本の燃料に対して、AEGISコードを用いて集合体燃焼計算を実施した。この燃焼計算では、エネルギー群数は172とし、燃焼チェーンとしてはアクチニド28核種、核分裂生成核種193核種を考慮した。サイクル毎の燃焼ステップ数は10とした。これにより、各サイクル終了時点での燃料棒内の核種組成分布を得た。核種組成は、燃料集合体中の1/8対称を仮定し、図8の38本について、鉛直方向24ノード毎に評価した。
【0084】
ここで評価した核種組成は各サイクル停止時のものであるが、その後冷却期間中に放射性崩壊により核種数密度が変化する。これをMVP−IIコードで計算し、照射後10年経過時点での集合体内の詳細核種組成分布を評価した。対象とした核種は表2(核計算で使用した核種)のとおりで、アクチニド核種と、中性子吸収断面積の大きい核分裂生成核種(FP核種)などを選択した。先行研究により、燃焼度30MWd/kgHMのPWR取出燃料集合体に蓄積された個々のFP核種の、中性子吸収に対する寄与がORIGEN−2コードで計算されている。それによれば、表2で選択したFP核種による中性子吸収率の全FP核種による吸収率に対する比は91%である。この比から、本実施例で考慮するFP核種の種類は、所期の測定法開発という目的に対して十分である。本実施例では、以降この組成を用いた解析を進めた。
【表2】
【0085】
(2.2 照射燃料集合体の固有値計算)
連続エネルギーモンテカルロ法コードMCNP−5を使用して、照射燃料の核特性の計算を進めた。燃料集合体の解析では燃料棒264本と制御棒案内管および計装案内管からなる289本の円柱で構成した体系を用いた。燃料棒箇所は鉛直方向24ノード毎に前項で計算した組成を与えた。制御棒および計装案内管内部、燃料棒間は軽水で満たされているとした。燃料棒は有効長部のみ考慮し、グリッド、プレナム、端栓、上下部ノズルは無視した。集合体の外周部と上下部は厚さ50cmの軽水とした(図9参照)。軽水および燃料の温度は20℃とし、軽水の密度は1gcm−3とした。
【0086】
モンテカルロ法計算では、ライブラリにENDF/B−VI.8ベースのACTIおよびENDF66を使用し、水素の熱中性子非弾性散乱断面積補正にはSAB2002データライブラリを使用した。
【0087】
燃料集合体が1体軽水中に保管された場の実効増倍率keffを計算した。表3(燃料集合体が単独で軽水中に保管された体系の実効増倍率keff)にまとめた。PWR新燃料集合体は反応度が大きく、1体でkeffが0.9を超過するが、燃焼が進むにつれ集合体の反応度が7割程度まで減少する。
【表3】
【0088】
(3.燃焼による反応度低下の確証手法)
燃料集合体を取り扱う際の臨界管理、あるいは原子炉起動にあたって臨界状態予測では、中性子源増倍法が用いられてきている。中性子源増倍法では中性子放出強度S0の中性子源を燃料集合体に挿入した際、燃料による増倍で得られる全中性子発生率Sが数式5となることを利用している。
【0089】
<数5>
S=中性子放出強度S0/(1−未臨界増倍率ksub)
【0090】
中性子源増倍法を燃料1体が軽水中に保管された場の未臨界度の測定に適用する上では
・中性子計数率と全中性子発生率Sの比、検出効率が燃焼度に依存しないような中性子検出法の開発
・基準未臨界度もしくは中性子放出強度S0の評価
が課題となる。これを解決する手法について検討する。
【0091】
(3.1 中性子源増倍法)
(3.1.1 中性子漏洩率と全中性子発生率)
照射燃料が1体軽水中に保管された体系(図9)に対して、中性子増倍と、集合体外部での中性子吸収率をMCNP−5コードで計算した。中性子源として、252Cf、Sb−Beと、照射燃料に蓄積したアクチニド中性子源を検討の対象とした。
【0092】
252Cfは初装荷PWR炉心の燃料装荷時臨界管理及び原子炉起動用の中性子源として使用され、一次中性子源PSと呼ばれる。一方Sb−Be中性子源は二次中性子源SSとよばれ、燃料取替え後のサイクル起動時に使用される。SSは、前サイクルの運転でアンチモン123Sbの中性子捕獲反応により半減期60.4日の124Sbを生成し、そのγ線によって光核反応で9Beから中性子を放出する中性子源である。252Cf及びSb−Beは実機では円筒状の棒に封入され、図8の制御棒案内管1ないし4本に挿入されて利用されているが、本解析では24本の制御棒案内管に同強度の中性子源が挿入される条件とし、 集合体鉛直方向は均一強度とした。
【0093】
アクチニド中性子源については燃料棒を鉛直方向24のノードに分割した分布を考慮した発生率分布とした。
【0094】
中性子発生率に対する図9の外周及び上/下部水領域への中性子吸収率の割合、 漏洩率Lを図7に示す。 アクチニド中性子源、 もしくは252Cf中性子源挿入時の漏洩率Lは燃料集合体の燃焼度に関わらず40%程度で一定(最大/最小比はアクチニド中性子源で1.012、252Cfで1.007)であった。 一方、Sb−Beを使用した場合は、燃焼度が進み未臨界増倍率が減少する体系で中性子漏洩率Lが減少した。
【0095】
図9の外周及び上/下部水領域での中性子吸収率を実測すれば、アクチニド中性子に起因する一次+二次中性子発生率S、 あるいは252Cfの挿入による一次+二次中性子発生率Sを、燃料集合体の燃焼度とは無関係の漏洩率を用いることで推定することが可能となる。また、Sb−Beを挿入した場合は、252Cfを挿入した場合に比べて誤差が大きくなるが、漏洩率の推定は可能である。
【0096】
(3.1.2 中性子漏洩率の分析)
(3.1.2.1 漏洩率一定の要因)
燃料集合体は水平方向バックリングが鉛直方向バックリングに比べ充分に大きく、 中性子は主に水平方向に漏洩する。 一群拡散理論によれば、 裸矩形炉心の側面方向への中性子漏洩は水平方向幾何学バックリングBh2と炉心の拡散係数Dの積に比例する。 一方炉心部での吸収率は、炉心平均での中性子吸収断面積Σaに比例する。 したがって、数式6が燃焼度に依存しなければ側面方向への中性子漏洩率一定を説明できる。集合体形状は一定なので、幾何学バックリングBh2は概略一定である。ここではDとΣaを調査した。
【0097】
【数6】
【0098】
図10の鉛直方向を、組成は変えずに366cmに伸張し、上下面を真空境界として、252Cf中性子源をその上端から70cmの位置において固定源計算を行った。この体系で各鉛直方向位置(z)毎に、集合体断面平均の中性子束φCf(z)と中性子流JCf(z)を求めた。 さらに、数式7に示すFickの法則で集合体部分の拡散係数Dを評価し、図11に示した。統計的ばらつき等はあるものの、燃焼による拡散係数の変化が小さい。
【0099】
【数7】
【0100】
一方、 図10の集合体ノードの体系で、固有値計算によりノード内の集合体部での平均中性子束と中性子吸収率を計算し、中性子吸収断面積Σaを求め、図12に示した。同図では核分裂中性子生成断面積としてνΣfも示した。燃焼度の進展によりνΣfは減少するものの、Σaの変化は小さいことがわかった。これは燃焼により235Uなどの吸収断面積は減少するものの、蓄積する超ウラン元素やFP核種の吸収効果の増分が同程度あることによると考えられる。
【0101】
以上より、照射燃料において、燃焼による拡散係数及び吸収断面積の変化が小さいことから、中性子漏洩率Lの燃焼変化も小さい結果となった。
【0102】
ここで、2.1節でのFP核種の選択を再点検する。FP核種について、代表核種のみ考慮したことに伴う誤差は、特に4サイクル照射燃料での中性子吸収率に影響する。表4(4サイクル照射燃料に中性子源252Cfを挿入した際の一次中性子発生率に対する集合体内各要素の中性子吸収率の比)に4サイクル照射燃料での中性子の吸収先をまとめた。全吸収量に対するFP核種の割合は12%弱である。先述のとおり、表2で選択したFP核種による中性子吸収率の全FP核種による吸収率に対する先行研究によれば91%であり、無視したFP核種の吸収効果は、本体系に対して1%程度と評価される。この結果は漏洩率一定性の成立条件に影響しない。
【0103】
【表4】
【0104】
(3.1.2.2 ほう酸水中での中性子漏洩率)
照射燃料の臨界安全性評価では、燃料が軽水に水没した状態を想定する場合が多いが、PWR発電所での輸送キャスクへの装荷は、高濃度ほう酸水中で実施される。このためほう酸水中での中性子漏洩率について、252Cf中性子源(24本、燃料棒長)を挿入した場合の計算評価を行い、表5(使用済PWR燃料の制御棒案内管24本に全長相当の中性子源252Cfを挿入した際のボロン濃度と中性子漏洩率(全中性子発生率に対する外周及び上下部水領域への中性子吸収率)との関係)にまとめた。
【0105】
【表5】
【0106】
ボロン濃度の増加によって中性子の漏洩率が増加している。燃料集合体から外部へ透過した中性子は、複数回の散乱により減速しながら一部が集合体内部へと再流入するが、ボロン濃度が増加すると、外周水領域で減速した中性子がボロンに吸収される。中性子の集合体内部への再流入量の減少により、集合体内部での中性子吸収量が減少し、高ボロン濃度下で中性子漏洩率が増加していると考えられる。しかし、同ボロン濃度では、集合体の照射サイクル数による漏洩率の差異は1%未満と小さい。ボロン濃度を測定で求めれば、燃料集合体外部での中性子吸収率を測定した後、ボロン濃度に応じた漏洩率を考慮することにより、全中性子発生率を推定することが可能である。
【0107】
(3.1.2 未臨界増倍率測定のための漏洩中性子測定手法の検討)
(3.1.2.1 中性子漏洩率と中性子源増倍法)
3.1.1項の計算で、集合体に252CfあるいはSb−Beを挿入した状態での燃料集合体外部での中性子吸収率が得られている。新燃料に対する中性子の漏洩率Lを照射燃料に対して共通に用いて全中性子発生率Sを求め、中性子源増倍法(数式5)よりksubを推定し、通常の計算で得られたksubと表6(照射PWR燃料の制御棒案内管24本に全長相当の中性子源252Cf、Sb−Beを挿入した際の未臨界増倍率ksubと共通の中性子漏洩率Lを用いた場合のksub誤差)で比較した。252Cfを使用した場合はこの誤差は0.5%未満であり、燃焼度に関わらず共通のLを使ってksubを高い精度で求めることができる。すなわち、燃料集合体の制御棒案内管24本に円柱状、燃料有効長の252Cf中性子源を挿入して集合体外部の中性子吸収率を測定すれば、燃焼度に関する情報なしにksubが求まり、燃料集合体の燃焼による反応度低下の確証に利用できる。
【0108】
【表6】
【0109】
また、Sb−Beを使用した場合は、252Cfを使用した場合に比べて、3,4サイクル照射燃料に対するksub評価精度が劣るものの、中性子源増倍法によるksub推定は可能である。
【0110】
以下、燃料集合体外部での中性子吸収量測定法について検討した。
【0111】
(3.1.2.2 H(n、γ)線測定法)
4サイクル照射燃料に252Cfを挿入した体系に対する計算では、外周水領域で吸収される中性子の99.5%が水素への吸収となった。この反応H+n→D+γでは、2.223MeVγ線が発生する。この2.223MeV特性γ線の測定により、外周水領域での中性子吸収率を評価する手法(本実施例ではH(n、γ)線測定法と呼ぶ。特開2007-315909号参照)の概念を図13に示す。
【0112】
燃料集合体から漏洩した中性子を見込む位置にγ線スペクトロメータ検出器を配置する。集合体内部を見込ないように、検出器を集合体から遮蔽する。中性子の関心領域での吸収率Aは中性子束をφ、吸収断面積をΣa、水と水素をそれぞれH2OとHで示すと数式8となる。
【0113】
【数8】
【0114】
位置rで発生した特性γ線1個に対する検出器地点での特性γ線束の期待値cはrと検出器間の距離dをもちいて数式9となる。
【0115】
【数9】
【0116】
ここでΩは位置rからみた検出器の立体角で、μは2.223MeVγ線の水中での減弱係数である。スペクトル測定で2.223MeVγ線を選別する場合、0回衝突事象のみ考慮すればよいので、cの評価は容易である。 測定評価される特性γ線束Gは数式10となるので、水素への中性子の吸収率分布φΣa,Hを求めればGからφΣa,Hの絶対値が求まる。
【0117】
【数10】
【0118】
吸収率分布φΣa,Hの評価法で、照射燃料の組成情報が不要の手法として、類似反応を用いる手段がある。図14のように、6Li(n、t)反応、10B(n、α)反応はH(n、γ)反応と類似の分布を示すので、10B比例計数管や6Liファイバー検出器の使用によりH(n、γ)反応率分布を実測評価することが考えられる。
【0119】
(3.1.3.3 照射燃料と新燃料に対しての中性子源増倍法に基づく未臨界度測定法)
H(n、γ)線測定法は、熱中性子検出器をγ線スペクトロメータでの特性γ線計数率により絶対値校正して使用するという特徴がある。一方中性子源増倍法のみに使用するのであれば、絶対値は不要である。組成の情報が確実な新燃料に対し、252Cfを挿入する。この場合252Cfからの中性子1個あたりの外周水領域での中性子吸収率は正確に計算できる。この体系に対して10B比例計数管や6Li(n、t)ファイバー検出器での測定を行い、252Cf中性子放出率を基準に、これらの検出器の相対検出効率を求める(校正する)。その後、目的とする照射燃料に対して同じ252Cfを挿入して、校正した10B比例計数管や6Li(n、t)ファイバー検出器で中性子検出を行えば、外部での中性子吸収率と全中性子発生率が252Cf中性子放出率の相対値として求まる。それらによりksubが求まる。
【0120】
(3.1.2.4 H(n、γ)線測定の簡易法)
3.1.2.1節の手法から、吸収率分布φΣa、H評価を省く計測法を検討した。照射燃料集合体に対し252Cf中性子源を配置、もしくは照射燃料に蓄積したアクチニド中性子源のみを与え、図13の検出器位置に鉛直方向24点、すなわち集合体側の各鉛直方向ノードの中心高さ位置でのγ線束を計算し、合算した。これはγ線スペクトロメータを鉛直方向に走査して連続的にH(n、γ)特性γ線を測定することと等価である。このγ線束合算値を集合体内の中性子発生率で除し、表7(集合体中での中性子発生量に対する遠方での2.223MeVγ線束比)にまとめた。
【0121】
【表7】
【0122】
アククチニド中性子源と、252Cfのケースでは中性子源分布の形状の違いにより燃料集合体外部での中性子吸収率分布が異なるため、γ線束合算値/中性子発生率比は系統的な差が見られ、また燃焼度に依存した変化もある。しかし、252Cfを用いた中性子源増倍法において、新燃料でのγ線束合算値/中性子発生率比を各照射燃料に対して共通に用い、各体系でγ線束合算値から全中性子発生率を推定し、ksubを評価した場合の誤差は2.5%となった。これは表6の3,4サイクル照射燃料のksubの差異を十分に分離できるものである。吸収率分布φΣa、Hの測定は行わないこの簡易手法も中性子発生率測定に有望である。
【符号の説明】
【0123】
1 測定対象燃料集合体
2 測定対象燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体
3 記憶手段
4 中性子源
5 吸収率測定手段
6 入力手段
7 算出手段
16 第2の吸収率測定手段
17 第2の入力手段
18 第2の算出手段
19 第2の入力データ読込部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを予め求めておき、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を使用して外部での中性子吸収率Aを測定し、前記中性子漏洩率Lと前記中性子吸収率Aとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出し、前記中性子放出強度S0と前記中性子発生率Sとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出することを特徴とする照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法。
【請求項2】
前記中性子放出強度S0が不明な場合、前記中性子放出強度S0が不明な中性子源を使用して、前記測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体を水没させて外部での中性子吸収率Axを測定すると共に、前記核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出し、前記中性子吸収率Axと前記中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、前記中性子発生率Sxと前記未臨界増倍率ksubxとに基づいて前記中性子放出強度S0を算出することを特徴とする請求項1記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法。
【請求項3】
予め求めておいた測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを記憶している記憶手段と、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて外部での中性子吸収率Aを測定する吸収率測定手段と、前記中性子吸収率Aと前記中性子放出強度S0とを読み込む入力手段と、前記中性子漏洩率Lと前記中性子吸収率Aとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、前記中性子放出強度S0と前記中性子発生率Sとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する算出手段とを備えることを特徴とする照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置。
【請求項4】
水没されている前記測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体について中性子放出強度S0が不明な中性子源を用いて外部での中性子吸収率Axを測定する第2の吸収率測定手段と、前記中性子吸収率Axを読み込む第2の入力手段と、前記核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、前記中性子吸収率Axと前記中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、前記中性子発生率Sxと前記未臨界増倍率ksubxとに基づいて前記中性子放出強度S0を算出する第2の算出手段とを備えることを特徴とする請求項3記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置。
【請求項5】
少なくとも、記憶手段に予め記憶されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを読み込む手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと前記中性子放出強度S0とを読み込む手段、前記中性子漏洩率Lと前記中性子吸収率Aとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、前記中性子放出強度S0と前記中性子発生率Sとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する手段としてコンピュータを機能させるための照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラム。
【請求項6】
少なくとも、記憶手段に予め記憶されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを読み込む手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと前記中性子放出強度S0とを読み込む手段、前記中性子漏洩率Lと前記中性子吸収率Aとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、前記中性子放出強度S0と前記中性子発生率Sとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する手段、水没されている前記測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体について中性子放出強度S0が不明な中性子源を用いて測定された中性子吸収率Axを読み込む手段、前記核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、前記中性子吸収率Axと前記中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、前記中性子発生率Sxと前記未臨界増倍率ksubxとに基づいて前記中性子放出強度S0を算出する手段としてコンピュータを機能させるための照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラム。
【請求項7】
請求項1又は2記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法を使用して前記照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定すると共に、前記照射燃料集合体について管理上予測される核種組成をもとに、前記照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出し、この算出値と前記未臨界増倍率ksubの測定値との比較によって前記照射燃料集合体の核種組成の予測が臨界安全管理にとって十分な精度を有することを確証することを特徴とする照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法。
【請求項1】
測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを予め求めておき、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を使用して外部での中性子吸収率Aを測定し、前記中性子漏洩率Lと前記中性子吸収率Aとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出し、前記中性子放出強度S0と前記中性子発生率Sとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出することを特徴とする照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法。
【請求項2】
前記中性子放出強度S0が不明な場合、前記中性子放出強度S0が不明な中性子源を使用して、前記測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体を水没させて外部での中性子吸収率Axを測定すると共に、前記核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出し、前記中性子吸収率Axと前記中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、前記中性子発生率Sxと前記未臨界増倍率ksubxとに基づいて前記中性子放出強度S0を算出することを特徴とする請求項1記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法。
【請求項3】
予め求めておいた測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを記憶している記憶手段と、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて外部での中性子吸収率Aを測定する吸収率測定手段と、前記中性子吸収率Aと前記中性子放出強度S0とを読み込む入力手段と、前記中性子漏洩率Lと前記中性子吸収率Aとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、前記中性子放出強度S0と前記中性子発生率Sとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する算出手段とを備えることを特徴とする照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置。
【請求項4】
水没されている前記測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体について中性子放出強度S0が不明な中性子源を用いて外部での中性子吸収率Axを測定する第2の吸収率測定手段と、前記中性子吸収率Axを読み込む第2の入力手段と、前記核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、前記中性子吸収率Axと前記中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、前記中性子発生率Sxと前記未臨界増倍率ksubxとに基づいて前記中性子放出強度S0を算出する第2の算出手段とを備えることを特徴とする請求項3記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定装置。
【請求項5】
少なくとも、記憶手段に予め記憶されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを読み込む手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと前記中性子放出強度S0とを読み込む手段、前記中性子漏洩率Lと前記中性子吸収率Aとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、前記中性子放出強度S0と前記中性子発生率Sとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する手段としてコンピュータを機能させるための照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラム。
【請求項6】
少なくとも、記憶手段に予め記憶されている測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体の中性子漏洩率Lを読み込む手段、水没されている測定対象の照射燃料集合体について中性子放出強度S0の中性子源を用いて測定された外部での中性子吸収率Aと前記中性子放出強度S0とを読み込む手段、前記中性子漏洩率Lと前記中性子吸収率Aとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の中性子発生率Sを算出すると共に、前記中性子放出強度S0と前記中性子発生率Sとに基づいて前記測定対象の照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出する手段、水没されている前記測定対象の照射燃料集合体と新燃料時点での組成と形状が同じ燃料集合体であって核種組成が既知の燃料集合体について中性子放出強度S0が不明な中性子源を用いて測定された中性子吸収率Axを読み込む手段、前記核種組成を有する燃料集合体についての中性子漏洩率Lxと未臨界増倍率ksubxを算出すると共に、前記中性子吸収率Axと前記中性子漏洩率Lxとに基づいて中性子発生率Sxを算出し、前記中性子発生率Sxと前記未臨界増倍率ksubxとに基づいて前記中性子放出強度S0を算出する手段としてコンピュータを機能させるための照射燃料集合体の未臨界増倍率測定用プログラム。
【請求項7】
請求項1又は2記載の照射燃料集合体の未臨界増倍率測定方法を使用して前記照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを測定すると共に、前記照射燃料集合体について管理上予測される核種組成をもとに、前記照射燃料集合体の未臨界増倍率ksubを算出し、この算出値と前記未臨界増倍率ksubの測定値との比較によって前記照射燃料集合体の核種組成の予測が臨界安全管理にとって十分な精度を有することを確証することを特徴とする照射燃料集合体の核種組成の予測精度の確証方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図14】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【公開番号】特開2011−247854(P2011−247854A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124266(P2010−124266)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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