説明

照射装置の制御装置および制御方法

本発明は運動する目標体積を照射する照射装置を制御するための装置に関するものであり、この装置は、代替運動信号を評価するための評価装置と、運動する目標体積の画像データを記録するための画像形成装置とを有し、画像形成装置のための制御装置が、画像形成装置を代替運動信号の評価に依存して作動または非作動にするよう構成されており、さらに画像形成装置により記録された画像データを評価するための画像評価装置と、画像データの評価に依存して照射制御装置により作動または非作動にされる照射装置とを有する。本発明はさらにこの種の装置で実施される、照射装置の制御方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動する目標体積を照射する照射装置の制御装置、ならびに運動する目標体積を照射する照射装置の制御方法に関する。この種の装置および方法は、目標体積の運動により引き起こされる誤照射を回避するために使用される。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療は、組織、とりわけ腫瘍患者を治療するための確立された方法である。しかし粒子線治療で使用されるような放射方法は、非治療分野でも使用される。たとえば非生体のファントムまたは物体で実施される粒子線治療の枠内での製品開発等のための調査作業、物質の照射等がある。
【0003】
ここでは荷電された粒子、たとえばプロトンまたは炭素イオンまたはその他のイオンが高エネルギーに加速され、粒子線に形成され、高エネルギー照射輸送システムを介して1つまたは複数の照射空間に供給される。この照射空間の1つでは、目標体積を備える照射すべき対象物が粒子線により照射される。
【0004】
ここでは照射すべき目標体積は運動することがある。たとえば患者を照射する際に、照射すべき腫瘍の運動が呼吸運動によって引き起こされることがある。この種の運動は、たとえばファントムと称される研究目的のモデル対象物に基づいてもシミュレートすることができる。
【0005】
目標体積の運動を回避する公知の手段の1つは、用語「ゲーティング」として知られる照射方法である。これは、目標体積の運動を監視し、目標体積の照射を行う放射線を監視に応じてスイッチオンまたはスイッチオフすることであると理解される。このようにして、目標体積が適切な個所に存在する場合だけ放射線が照射のために作動されることが達成できる。
【0006】
目標体積の運動状態についての情報を提供する外部の代替運動信号が記録される方法が公知である。たとえば腹壁の運動が測定され、これに関して内部にある目標体積の位置を推定することができる。
【0007】
さらに目標体積の実際の運動が、たとえばX線記録、蛍光透視記録、超音波画像形成、または活性のインプラントトランスポンダにより直接監視される方法が公知である。
【0008】
本発明の課題は、患者および照射装置の負荷が小さく、運動する目標体積に照射を正確に適合することのできる、照射装置の制御装置および制御方法を提供することである。
【0009】
この課題は、独立請求項によって解決される。有利な改善形態は従属請求項の特徴の対象である。
【0010】
個々の特徴の前記および以降の説明は、個別にはいずれの場合でも明示的に述べられていなくても、装置カテゴリーにも方法カテゴリーにも関連するものである。そこに開示された個々の特徴は、示された組合せ以外でも本発明に重要なものであり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
運動する目標体積を照射する照射装置を制御するための本発明の装置は、
・目標体積の運動に依存して変化する代替運動信号を評価するための評価装置と、
・運動する目標体積の画像データを記録するための画像形成装置と、画像形成装置を制御するための制御装置とを有し、制御装置は、代替運動信号の評価に応じて画像形成装置を作動または非作動するように構成されており、
・画像形成装置により記録された画像データを評価するための画像評価装置をさらに有し、
・照射制御装置を備える照射装置をさらに有し、照射制御装置は、画像データおよび/または代替運動信号の評価に応じて照射過程を制御するよう、とりわけ照射装置を作動または非作動するよう構成されている。
【0012】
本発明は、代替運動信号は比較的簡単で安価な手段によって使用することができるが、代替運動信号を照射装置の制御に使用することは問題であるという認識に基づく。
【0013】
ここで代替運動信号とは目標体積の運動を間接的に表す信号であり、目標体積を直接結像し、したがって目標体積の運動また配置を直接表示することのできる画像形成方法とは異なる。しかし代替運動信号を照射装置の制御のために使用することは、目標体積の位置と代替運動信号との間に相関があることが前提である。しかし通例は照射セッションの前に決定されるこの相関は、時間の経過とともに変化する。
【0014】
たとえばゲーティング方法が代替運動信号に基づいて実施される場合、相関が依然として有効であれば、このことは望みどおりの照射の成功をもたらす。しかし代替運動信号と目標体積の運動との相関が変化すると、このことは線量が計画どおりに目標体積に蓄積されない原因となり得る。
【0015】
最悪の場合このことにより、代替運動信号が目標体積の運動を誤って再現し、目標体積がまったく照射されないことを引き起こし得る。肺腫瘍の照射の場合には、たとえば肺腫瘍の内部運動と、外部で検出された代替パラメータとの間で、吸気と呼気の間の周期的な変化において位相ずれが発生することがある。このことが、目標体積の末端位置が外部で検出された代替パラメータの極値と一致しないことを意味するのは明白である。
【0016】
さらに本発明は、運動する目標体積の画像データを連続的または擬似連続的に記録する画像形成装置を使用することは、一方では目標体積の位置を正確に再現するので有利であるが、しかし他方では評価の面倒な多数の画像データが発生するという認識に基づく。とりわけ患者をX線により連続的または擬似連続的に透視することは、大きな放射線負荷と結び付いている。
【0017】
画像形成装置は、照射すべき目標体積を透視するX線により動作する画像形成装置とすることができる。画像形成装置により、目標体積の状態と相関する画像データが得られる。その際に画像データから目標体積の写像を形成することは必ずしも必要ではなく、目標体積の状態に関するデータを得るためには、写像を復元せずに画像データを使用すればすでに十分であり、この画像データが照射過程の制御に使用される。
【0018】
本発明は、2つの方法を有利なやり方で組み合わせる。評価装置は代替運動信号を評価する。代替運動信号により、目標体積の運動軌跡についてある程度十分に良好な予測を行うことができる。代替運動信号に基づいて画像形成装置がトリガされ、これにより画像形成装置は連続的に画像データを記録せずに、目標体積の運動サイクルにおける特定の時点でだけ記録する。画像データがさらに評価され、照射装置はこの評価に基づいてたとえば作動または非作動される。このようにして運動サイクル中に、決定すべき時点でだけ画像データが発生し、したがって照射を制御するためには全体として比較的少数の画像データを評価すれば良い。さらに画像形成装置は、運動サイクル中の特定の時点でだけ作動し、したがって患者に対しては全体で少量の放射線負荷しか発生しない。
【0019】
したがって画像形成装置により記録された画像データは、ゲーティング方法において、照射装置を作動または非作動することにより照射装置の制御に使用することができる。その代わりにまたはそれに加えて、画像データを(場合により代替運動信号とともに)トラッキング方法および/または再スキャン方法の制御に使用することもできる。トラッキング方法では、放射線が目標体積の運動を追従し、この運動はたとえば記録された画像データを使用して追跡される。再スキャン方法では、照射線量が繰り返し適用され、これにより場合による目標体積の誤照射が、繰り返し適用される照射線量の平均化により低減される。個別の再スキャン試行、たとえばそのスタート時点は、記録された画像データを使用して決定することができる。
【0020】
有利にはこの装置は同じように、少なくとも10Hz、とりわけ少なくとも30または100Hz、さらに数kHzのサンプリングレートで代替運動信号を記録するための検知装置を有する。サンプリングレートが高ければ高いほど、代替運動信号をより正確に検出することができる。代替運動信号、とりわけ外部の代替運動信号は、公知の、とりわけ外部の種々のセンサにより記録することができる。たとえば呼吸運動を監視することのできる可能なセンサは、呼吸温度、呼吸流、腹壁の運動、または胸郭の運動を測定するためのセンサである。代替運動信号からは、通常は内部にある目標体積の運動を間接的に推測できるだけである。
【0021】
有利には画像評価装置は、記録された画像データと先行の時点で記録された別の画像データとの比較を実施するように構成されている。画像評価装置は好ましくは、画像データの撮影直後に画像データが評価されるように構成されている。以前に記録された画像データとの比較に基づいて、画像データの記録時点での目標体積の実際の位置がどうであるか、および/または目標体積の位置が予想される位置に対応するか否かを比較的簡単に確定することができる。
【0022】
可能なさらなる画像データとして、たとえば計画データセットからの画像データが適する。たとえば計画CTから、画像形成装置が目標体積からの透視画像データを記録するのと同じアライメントでDRR(英語:「digital reconstructed radiogramm」)を形成することができる。これにより見当調整を簡単に行うことができる。透視画像データをその他の平面撮影、たとえば割り当てられた磁気共振データセットによる断層に見当調整することも可能である。
【0023】
しかし代替運動信号によりトリガされた画像データを記録するのと同じ画像形成装置によって、基準撮影を実施することも可能である。
【0024】
比較は、たとえば画像レジスタリングから公知の方法により実施することができる。画像レジスタリング法は高速の計算機システム上で、たとえば高速のGPUにより実施することができ、実質的にリアルタイムで比較を実施することが可能である。
【0025】
記録された画像データの比較は、照射装置を作動させることができるか否かの確定に使用することができる。計画された内部解剖との相違が確定されると、照射装置はスイッチオンされない。
【0026】
有利には画像評価装置は、記録された画像データと別の画像データとの差を求めるように構成されている。照射制御装置は、求められた差が閾値以下である場合にだけ照射装置が作動されるように構成されている。許容偏差に対する閾値または場合により複数の閾値により、記録された画像データと別の画像データとの正確な一致は通例予期されないため、本方法をフレキシブルに適合することができる。
【0027】
照射制御装置は、照射装置が作動可能である時間窓が画像データの評価に応じて変化および/または適合されるように構成することができる。
【0028】
運動する目標体積を照射する照射装置を制御するための本発明の方法は次のステップを有する:
・目標体積の運動に依存して変化する信号である代替運動信号を評価するステップ、
・代替運動信号の評価に依存して、運動する目標体積の画像データを記録するステップ、
・記録された画像データを評価するステップ、
・記録された画像データの評価に依存して照射過程を制御するステップ。
【0029】
有利には代替運動信号は少なくとも10Hzのサンプリングレートで記録される。このことは、代替運動信号が通例、高いサンプリングレートを許容する単純な信号であるのでほとんどの場合問題なしに可能である。
【0030】
記録された画像データの評価は、記録された画像データと早期の時点で記録された別の画像データとの比較を実施することによって実施することができる。記録された画像データと別の画像データとの比較の際には、たとえば差形成により差を求めることができる。
【0031】
求められた差が閾値以下であればこのことは直ちに、代替運動信号と目標体積の実際の運動との間で前提とされた相関がまだ有効であることを示唆する。この場合、照射装置を作動することができる。しかし差が閾値を上回っていると、照射装置の作動が阻止される。誤照射のおそれが大きすぎるからである。
【0032】
画像データの評価は、照射装置が作動される時間窓を修正するために、すなわち実施すべき「ゲーティング」に影響を及ぼすために使用することができる。
【0033】
本方法は、一方ではヒトまたは動物の身体が実際に照射される治療のために使用することができる。しかし本方法は、他方では非治療的方法としても使用することができ、たとえば照射が単にシミュレートされるか、またはたとえばファントムの照射または一般的な物質の照射のようにヒトまたは動物の身体とは別の対象物が照射される。
【0034】
従属請求項の特徴による改善形態を備える本発明の実施形態を、以下の図面に基づいて詳細に説明するが、これに限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】照射すべき目標体積の運動を監視するための種々のコンポーネントを備える粒子線治療装置の概略図である。
【図2】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。
【図3】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。
【図4】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。
【図5】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。
【図6】本発明の方法の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、粒子線治療装置10の構造を極端に概略化した図である。粒子線治療装置10は、位置決め装置上に配置された物体を、粒子からなる放射線によって照射するために使用され、この放射線を以下では粒子線12と称する。とりわけ目標体積14として、患者の腫瘍組織が粒子線12によって照射される。同様に粒子線装置10は、非生物の物体、とりわけウォーターファントムまたは他のファントムの照射にも使用される。ウォーターファントムの照射は、たとえば患者の照射前および/または照射後での照射パラメータの検査および検証のために行うことができる。しかし他の物体、たとえば研究目的の培養細胞または培養バクテリアのようなとりわけ実験構造体を粒子線12により照射することもできる。すべての場合で、運動する物体を取り扱うことができる。目標体積は通例、目標対象物18内にあって不可視であり、目標対象物18内で通常は擬似周期的に運動する。
【0037】
粒子線治療装置10は、典型的には加速ユニット16を有し、これはたとえばシンクロトロン、サイクロトロン、または照射に必要なエネルギーを備える粒子線12を準備するその他の加速器である。粒子としてもっぱら、たとえばプロトン、パイオン、ヘリウムイオン、炭素イオン、または他の元素のイオンのような粒子が使用される。典型的には粒子線12は3〜10mm半値幅の線直径を有する。
【0038】
照射すべき目標体積14には等エネルギー層と目標点が概略的に示されており、等エネルギー層と目標点は照射の際にラスタスキャン法で逐次スキャンされる。スキャン方法として好ましくはラスタスキャン法が使用される。このラスタスキャン法では、粒子線12が目標点から次の目標点に移行する際に強制的に遮断されることなく、目標点から次の目標点へ案内される。他のスキャン方法を使用することもできる。本発明の実施形態は、まったく別の照射方法でも適用することができ、たとえば治療X線、電子線または粒子線による照射の際に適用され、粒子線はパッシブ型の放射線適用であり、すなわち粒子線12が拡張し、形状は同じままである。
【0039】
ここに図示した粒子線12はスキャンマグネット30により、その側方の偏向が調整される。すなわち線延在方向に対して垂直(x方向およびy方向としても示されている)に、粒子線の位置が偏向される。
【0040】
目標体積14の運動を検出するために、外部の代替運動信号を記録することのできる検知装置32が設けられている。たとえばこれは、その拡張から信号経過を記録することのできる腹帯とすることができ、患者の呼吸サイクルの経過を推測し、これにより呼吸とともに運動する腫瘍の位置を間接的に推測することができる。
【0041】
さらに目標体積14の運動24を検出するために蛍光透視装置が設けられており、この蛍光透視装置は光源20と、目標体積14の連続的または個別のX線撮影を作成することのできる放射線検知器22とを含む。
【0042】
さらに照射装置10は、進行制御部36と、線パラメータを監視するための検出器34を有する。進行制御部36、すなわち装置のコントロールシステムは、たとえば加速器16、スキャンマグネット30のような装置の個々のコンポーネントを制御し、線パラメータを監視するための検出器34のデータのような測定データを収集する。通例、制御は照射計画40に基づいて行われ、この照射計画は照射計画装置38によって求められ、準備される。進行制御部36はとりわけ、粒子線12をスイッチオンまたはスイッチオフするように構成されている。
【0043】
進行制御部にはさらに評価装置46が組み込まれており、これにより検知装置32によって記録された代替運動信号をこの評価装置により評価することができる。評価装置46は、たとえば代替運動信号を用いてゲーティング窓を求めることができる。
【0044】
さらに進行制御部36には画像評価装置42が組み込まれており、この画像評価装置により蛍光透視装置の画像データを評価し、別の画像データと比較することができる。さらに進行制御部36には制御装置44が組み込まれており、この制御装置により蛍光透視装置が制御される。すなわち画像データの記録が指示される。
【0045】
ここに図示した粒子線治療装置10で本発明の実施形態を実現することができる。可能な実施形態を、以下の図面に基づいて詳細に説明する。
【0046】
図2は、概略的フローチャートに基づいて画像形成装置、たとえば蛍光透視装置を制御するために外部の代替運動信号をどのように使用することができるかを示す。
【0047】
この実施形態および以降の実施形態は、ゲーティング方法に関連する例に基づいて詳細に説明および実証される。しかしこの方法の他の実施形態も同じように、トラッキング方法(放射線が目標体積の運動に追従する)または再スキャン方法(目標体積の場合による誤照射を平均化により低減するため、照射線量が直接連続して繰り返し適用される)に関連することができる。
【0048】
第1のステップで、照射セッションの開始直前に蛍光透視装置により、目標体積の運動サイクル全体を完全にシミュレートする蛍光透視データセットが基準データセットとして作成される(ステップ50)。照射開始直前の目標体積の運動サイクルを目標体積が計画時に置かれていた運動サイクルによって調整するために、計画データセットとの比較を行うことができる。これと並行して、外部の代替運動信号を記録することができる。代替運動信号と運動サイクルとの相関を求め、またはすでに計画フェーズで求めた相関を修正して、目下の状況に適合することができる。
【0049】
続いて照射セッションがスタートされる(ステップ52)。照射セッション中に代替運動信号が記録される(ステップ54)。代替運動信号からゲーティング窓の開始が求められる。すなわち目標体積の照射を基本的に行うことのできる時間窓が求められる(ステップ56)。このゲーティング窓が目標体積の運動サイクル中にどの個所にあるかは、通例計画中にすでに設定され、場合によりステップ50で検査および/または目下の状況に適合することができる。
【0050】
ゲーティング窓の開始は治療線のスイッチオンをまだトリガしない。その代わりにゲーティング窓の開始時に、ゲーティング窓の開始時の目標体積の位置を反映する透視画像が蛍光透視装置により記録される(ステップ58)。
【0051】
透視画像は撮影直後に蛍光透視データセットと比較され、これにより目標体積が運動サイクル中に所望の位置にあるか否かを確定することができる(ステップ60)。
【0052】
比較がポジティブである場合、すなわち目標体積が計画時に存在すべきと前提された個所にほぼ存在する場合、治療線をスイッチオンすることができる(ステップ62)。したがってこの場合、目標体積の照射を所要の精度で実行できることが確定される。
【0053】
しかし比較の際に目標体積が理想位置から大きく偏差していることが確定される場合、このことは代替運動信号からはゲーティング窓を正しく求められないことを指し示す。目標体積が誤照射される前に、これに基づいて照射を中断することができる(ステップ64)。理想的には1つまたは複数の閾値を許容偏差に対して設定する。なぜなら、比較される画像データとの正確な一致は通例、期待できないからである。
【0054】
ゲーティング窓の終了(ステップ66)に達すると直ちに照射が中断される(ステップ68)。その代わりとして、全目標体積が照射されたら直ちに照射が中断される。
【0055】
理想的にはゲーティング窓の終了時に別の透視画像が作成され(ステップ70)、これにより目標体積の位置を蛍光透視データセットと比較して、ゲーティング窓の終了時にもコントロールすることができる(ステップ72)。この比較がポジティブであれば照射が継続される。すなわち次のゲーティング窓が求められ、照射が終了するかまたは中断されるまで前記のアルゴリズムが繰り返される。比較がネガティブであれば、照射セッションは中断される(ステップ64)。
【0056】
図3は、少し変形した方法の概略的フローチャートを示す。
【0057】
この変形した方法では、ゲーティング窓の開始時に記録された透視画像が基準画像と比較されるのではなく、先行のゲーティング窓中に記録された先行の透視画像と比較される(ステップ60’)。第1のゲーティング窓の透視画像は、望む場合には図2のように計画データセットまたは基準蛍光透視データセットと比較することができる。同様にステップ72はステップ72’により置換され、ゲーティング窓の終了時に記録される透視画像が先行の対応する透視画像と比較される。
【0058】
透視画像をゲーティング窓ごとに比較することにより、目標体積の位置が代替運動信号と比較して徐々に移動すること、すなわちいわゆるドリフトを簡単に確定することができる。たとえば肺腫瘍を照射すべき場合、たとえば患者の筋肉組織が徐々に弛緩することに起因して腫瘍運動が代替運動信号に対してドリフトを有することがあり得る。
【0059】
腫瘍運動のこのドリフトは、蛍光透視装置が常時作動していなくても検知することができる。これと並行して、腫瘍運動の緩慢な変化が、たとえば安全境界、保護すべき器官との重なり合い等に関して元の計画によりまだカバーされているか否かを検査することができる。
【0060】
図4は、図2と比較して少し変形された方法を示す。この場合では照射の前に、蛍光透視装置による基準撮影ではなく、基準データセットから通例、3次元または4次元のCTデータセット、1つまたは複数のDDRが、蛍光透視装置の画像撮影方向に対応する仮想方向から発生される(ステップ50”)。次にゲーティング窓の開始時に蛍光透視装置により記録される透視画像が、DDRまたは対応するDDRと比較される(ステップ60”)。同じことが、ゲーティング窓の終了時に記録される透視画像にも当てはまる(ステップ72”)。その代わりにまたはそれに加えて、透視画像データをその他の平面撮影、たとえば割り当てられた磁気共振データセットによる断層に見当調整することも可能である。
【0061】
前記の実施形態は互いに組み合わせることができ、たとえば異なる実施形態をゲーティング窓ごとに交互に使用することもできる。または2つの評価計算機を用いて並列的に、またはゲーティング窓ごとに直列的に使用することもできる。
【0062】
図5は、別の変形例を示す。実施例で述べられた、さらなる撮影で記録された透視画像の比較は、記録された透視画像が異なる時点で記録された複数の撮影、たとえば前もって記録されたすべての透視画像または複数のDDRと比較されるように構成することができる(ステップ60”’およびステップ72”’)。このようにしてとりわけゲーティング窓が移動しているか否かを検知することができる。
【0063】
この種のドリフトが確定された場合、照射計画で設定されたゲーティング窓をアクティブに適合することができる(ステップ64’)。これはたとえば、外部の代替運動信号のトリガ時点を適合し、ずらすことにより行うことができる。このことの利点は、照射を中断する必要がないか、または最悪の場合でも中止する必要がないことである。ゲーティング窓の終了時に記録された透視画像は、ゲーティング窓の幅、すなわちそれぞれの照射窓の長さをも適合する可能性を提供する。
【0064】
別の実施形態(図6)では、放射線のスイッチオンとスイッチオフが代替運動信号によってトリガ(ステップ62)される。すなわち透視画像のそれぞれの目下の比較に依存しないでトリガされる(ステップ60””)。透視画像はとりわけ妥当性の検査に使用される。すなわち既存のゲーティング窓が計画フェーズからの前提と比較してまだ有効であるか否かの検査に使用される。次のゲーティング窓中に実施すべき次の放射線の作動が中断されるか、またはゲーティング窓が適合される(ステップ64””)。しかし目標体積の位置が合格すると、ゲーティング窓を変形することなく、または照射を中断することなく次のゲーティング窓が実施される。同じことが、ゲーティング窓の終了時に記録される透視画像にも当てはまる(ステップ72””)。
【0065】
別の構成では偏差が確定された場合、蛍光透視装置が連続的な蛍光透視撮影または少なくとも複数の蛍光透視撮影を実施するように制御され、これにより外部の運動検知のためのゲーティング窓を、目標体積の内部運動データに基づいて新たに決定することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 粒子線治療装置
12 粒子線
14 目標体積
16 加速ユニット
18 目標対象物
20 放射線源
22 放射線検知器
24 運動
30 スキャンマグネット
32 検知装置
34 検出器
36 進行制御部
38 照射計画装置
40 照射計画
42 画像評価装置
44 制御装置
46 評価装置
50〜72 それぞれのステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動する目標体積(14)を照射する照射装置(10)を制御するための装置であって、
・目標体積(14)の運動に依存して変化する代替運動信号を評価するための評価装置(46)を有し、
・画像形成装置(20、22)を制御するための制御装置(44)を備える、運動する目標体積(14)の画像データを記録するための画像形成装置(20、22)をさらに有し、
該制御装置(44)は前記画像形成装置(20、22)を、代替運動信号の評価に応じて作動または非作動するように構成されており、
・画像形成装置(20、22)により記録された画像データを評価するための画像評価装置(42)をさらに有し、
・照射制御装置(36)を備える照射装置(10)をさらに有し、
該照射制御装置(36)は、画像データおよび/または代替運動信号の評価に応じて照射過程を制御するよう、とりわけ照射装置(10)を作動または非作動するよう構成されている装置。
【請求項2】
代替運動信号を少なくとも10Hzのサンプリングレートで記録するための検知装置(32)をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
画像評価装置(42)は、記録された画像データとそれより早期の時点で記録された別の画像データとの比較を実施するように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
画像評価装置(42)は、記録された画像データと別の画像データとの差を求めるように構成されており、
照射制御装置(36)は、求められた差が閾値以下である場合にだけ照射装置(10)を作動するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
画像評価装置(42)は、計画画像データが別の画像データとして比較のために使用されるよう構成されている、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
画像評価装置(42)は、画像形成装置(20、22)により記録された画像データが別の画像データとして比較のために使用されるよう構成されている、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
照射制御装置(36)は、照射装置(10)が作動可能である時間窓を、画像データの評価に依存して適合するよう構成されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
運動する目標体積(14)を照射する照射装置(10)を制御するための方法であって、
・目標体積(14)の運動に依存して変化する信号である代替運動信号を評価するステップ、
・代替運動信号の評価に依存して、運動する目標体積(14)の画像データを記録するステップ、
・記録された画像データを評価するステップ、
・記録された画像データの評価に依存して照射過程を制御するステップ、および/または代替運動信号の評価に依存して照射過程を制御するステップ、
を有する方法。
【請求項9】
・代替運動信号を少なくとも10Hzのサンプリングレートで記録および/または評価するステップを付加的に有する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
記録された画像データの評価は、記録された画像データと早期の時点で記録された別の画像データとの比較を実施することによって、とりわけ計画データセットからの画像データとの比較を実施することによって実施される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
記録された画像データと別の画像データとの比較の際に差が求められ、求められた差が公差領域内にある場合だけ照射装置(10)が作動される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
画像データの評価に依存して、照射装置(10)が作動される時間窓が修正される、請求項8乃至11のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−532711(P2012−532711A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519953(P2012−519953)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058598
【国際公開番号】WO2011/006732
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(508021624)ゲーエスイー ヘルムホルッツェントゥルム フュア シュヴェリオネンフォルシュンク ゲーエムベーハー (7)
【Fターム(参考)】