説明

照明システムおよび発光制御方法

【課題】多彩な照明効果を得ることができる照明システムを提供する。
【解決手段】基板上に発光色および輝度が可変である少なくとも1つの面状発光部が設けられている。発光態様データは、面状発光部の発光色および輝度の設定値を示すデータである。発光態様データ記憶部30には複数の発光態様データが記録されている。制御部20は、制御入力に応じて発光態様データ記憶部30から発光態様データを抽出し、当該抽出した発光態様データによって示される発光態様となるように面状発光部を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明システムに関し、特に輝度および発光色がそれぞれ可変である発光部を有する照明システムおよび該照明システムにおける発光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置のエネルギー効率を改善すべく、白熱球や蛍光灯に代わる光源の研究開発が進められている。最近では高輝度LED(発光ダイオード)などが候補のひとつとして有力視されており、実際に応用製品が商品化されている。LED照明は、省エネルギー化の要請の高まりに伴って一般家庭にも普及しつつある。
【0003】
例えば、特許文献1には、料理のジャンル、時間帯、シチュエーションなどに応じて好適な照明環境を創り出すことができるダイニング用LED照明ユニットが記載されている。かかるLED照明ユニットは、複数のLEDを色温度ごとに一列に配列した複数のLEDライン照明と、比較的狭い範囲を照射する1つ又は複数の高輝度LEDからなるLEDスポット照明と、を備えている。
【0004】
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下有機ELと称する)を用いた照明も商品化が見え始めている。LEDは点状に発光するのに対して有機ELは面状に発光するので、拡散板を用いることなく照明光に適した広く均一な光を得ることができるといったメリットがある。また、発光パネルが非常に薄型であり、プラスチック基板を用いることにより曲面に張り付けることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2009−99378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の照明装置によれば、LEDライン照明とLEDスポット照明の点灯パターンを変化させることにより複数の照明効果を得ることが可能となる。しかしながら、各LEDライン照明における発光色は通常白色をベースとするものであり、その調色範囲は狭く、照明効果のバリエーションは限定的である。例えば、同じジャンルの料理でも、野菜を中心とした料理、魚を中心とした料理、肉を中心とした料理では、その料理が美味しく見える照明条件は異なる。またコース料理などでは、提供される料理は次々と変化する故、好適な照明条件も提供される料理に応じて経時的若しくは段階的に変化する。上記した特許文献1に記載の照明装置では、発光態様のバリエーションが限定的である故、あらゆる料理、あらゆるシチュエーションに対応した照明効果を得ることは困難である。また、提供される料理に応じて照明条件を経時的若しくは段階的に変化させるといった演出を行うことも困難である。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、より多彩な照明効果を得ることができる、例えば食空間の演出などに好適な照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る照明システムは、発光色および輝度が可変である発光部と、各々が前記発光部の発光色および輝度の設定値を示す複数の発光態様データを記録した発光態様データ記憶部と、制御入力に応じて前記発光態様データ記憶部から前記発光態様データを抽出し、当該抽出した発光態様データによって示される発光態様となるように前記発光部を駆動する制御部と、を含むことを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る発光制御方法は、発光色および輝度が可変である発光部を含む照明システムにおける前記発光部の発光制御方法であって、制御部が制御入力を受信するステップと、前記制御部が、各々が前記発光部の発光色および輝度の設定値を示す複数の発光態様データを記録した発光態様データ記憶部から前記制御入力に応じて前記発光態様データを抽出するステップと、前記制御部が、当該抽出した発光態様データによって示される発光態様となるように前記発光部を駆動するステップと、を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1に係る照明システムの構成を回路ブロック図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施例に係る発光ユニットの斜視図である。図2(b)は、発光ユニットを光放出面側から見た平面図である。
【図3】図3(a)は、面状発光部を形成する有機EL発光素子の構成を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)における3b−3b線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る発光態様データ記憶部に記録された発光態様データの一例を示すテーブルである。
【図5】本発明の実施例に係る発光態様データ記憶部に記録された発光態様データの一例を示すテーブルである。
【図6】本発明の実施例1に係る照明システムにおける発光制御の態様を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例2に係る照明システムの構成を回路ブロック図である。
【図8】本発明の実施例2に係る照明システムにおける発光制御の態様を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例3に係る照明システムの構成を回路ブロック図である。
【図10】本発明の実施例3に係る照明システムにおける発光制御の態様を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例に係る発光態様データ記憶部に記録された発光態様データの一例を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。尚、各図において、実質的に同一又は等価な構成要素、部分には同一の参照符を付している。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の実施例1に係る照明システム1の構成を示すブロック図である。図2(a)は、照明システム1を構成する発光ユニット10の斜視図である。図2(b)は、発光ユニット10を光放出面側から見た平面図である。
【0013】
照明システム1は、複数の発光部を有する発光ユニット10と、発光ユニット10の発光制御を行う制御部20と、発光ユニット10における複数の発光態様の各々を示す複数の発光態様データを記録した発光態様記録部30と、により構成されている。
【0014】
図2(a)および図2(b)に示すように、発光ユニット10は、フレーム11と、複数の面状発光部13と、複数の点状発光部14とを有している。フレーム11は、例えば、金属、プラスチック、ガラス、木材などからなり、面状発光部13の各々および点状発光部14の各々を支持する略長方形の板状部材である。フレーム11は、点発光部14を設置するための2つの貫通孔12を有する。尚、フレーム11の材質や形状は、上記したものに限定されるものではない。
【0015】
面状発光部13の各々は、輝度および発光色が可変である有機EL発光素子などの面状発光体により構成される。複数の面状発光部13は、フレーム11の光放出面側の表面にフレーム11の長手方向に沿って配列されている。本実施例において、発光ユニット10は、略長方形の6つの面状発光部13を有するが、面状発光部の形状、配置および数量は、特に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0016】
図3(a)は、面状発光部13としての有機EL素子の構造を示す平面図であり、図3(b)は、図3(a)における3b−3b線に沿った断面図である。
【0017】
基板100は、光透過性を有するガラスや樹脂等からなる平板又はフィルム状部材である。複数の陽極102は、それぞれ帯状をなしており、基板100上においてY方向に沿って伸長し、互いに一定間隔おいて並置されている。陽極102の各々は、例えばITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の金属酸化物導電体、或いはCr、Mo、Ni、Pt、Au等の金属、又はこれらの合金等からなる。陽極102の各々の表面には、陽極102に電源電圧を供給する為のバスライン104が形成されている。基板100及び陽極102上には絶縁膜103が形成されている。絶縁膜103の表面には、夫々がY方向に伸張する開口部がストライプ状に形成されている。尚、開口部の各々は、陽極102各々の表面を露出させるべく絶縁膜103を貫通して形成されたものであり、各陽極102に対応した位置に夫々設けられている。尚、絶縁膜103の表面に複数の開口部を設けることにより、互いに隣接する開口部各々の間には、図3(b)に示すように、絶縁膜103によるバンクが形成されることになる。各陽極102上において絶縁膜103に覆われた部分には、図3(b)に示すように、陽極102に電源電圧を供給する為のバスライン104が形成されている。絶縁膜103の各開口部には、陽極102の表面を覆うように正孔注入層105が形成されており、かかる正孔注入層105の表面を覆うように正孔輸送層106が積層されている。正孔注入層105及び正孔輸送層106の材料としては、芳香族アミン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ベンジルフェニル誘導体、フルオレン基で3級アミンを連結した化合物、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、シラナミン誘導体、ホスファミン誘導体、キナクリドン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチエニレンビニレン誘導体、ポリキノリン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、カーボン等が挙げられる。また、かかる正孔輸送層106の表面上には夫々がY方向に伸長する有機発光層107が図3(a)及び図3(b)に示すように形成されている。尚、有機発光層107は、蛍光性有機金属化合物等で成膜されたものであり、実際には、図3(a)及び図3(b)に示すように、赤色発光を行う有機発光層107、緑色発光を行う有機発光層107、及び青色発光を行う有機発光層107の如き3系統分の有機発光層107が、各正孔輸送層106上に形成されている。よって、有機発光層107が形成されている領域は赤色発光領域となり、有機発光層107が形成されている領域は緑色発光領域となり、有機発光層107が形成されている領域は青色発光領域となる。これら有機発光層107、107及び107の表面、並びに絶縁膜103の表面を覆うように電子輸送層108が形成されており、この電子輸送層108の表面を覆うように板状の陰極109が形成されている。尚、陰極109は、仕事関数の低い、例えば、Alなどの金属またはその化合物、あるいはそれらを含む合金等からなる。
【0018】
このように、面状発光部13は、基板100上においてストライプ状に繰り返し配置された赤、緑、青の光を発する発光領域を有し、その光放出面からは、赤、緑、青の光が任意の割合で混色されて単一の発光色として認識される照明光が放出される。互いに分離している複数の陽極102および陰極109の間に印加する駆動電圧を独立に制御することにより、面状発光部13における発光色を変化させることが可能となっている。例えば、赤、緑、青の色ごとに4ビット(16階調)を割り当てることにより、面状発光部13の各々は、4096色を表現することができる。また、陽極102および陰極109を介して供給する駆動電流を制御することにより面状発光部13における輝度を調整することが可能となっている。複数の面状発光部13の輝度および発光色を含む発光態様は、制御部20によってそれぞれ独立に制御される。面状発光部13の各々は、その光放出面全体から均一な輝度および発光色の光を発し、照射範囲が比較的大きい拡散光を生成する。
【0019】
点状発光部14は、金属やプラスチックなどの遮光性部材からなる円筒筐体14aと、円筒筐体14aの内部に収容された複数のLED素子(発光ダイオード)14bとにより構成される。円筒筐体14aは、フレーム11の貫通孔12を貫通した状態で支持軸14cを介してフレーム11に支持されている。円筒筐体14aは、支持軸14cを回転中心としてフレーム11に対して回動自在となっており、これにより、LED素子14bから発せられる光の照射方向(照射角度)が可変となっている。照射方向(照射角度)の変更は、例えば制御部20から供給される制御信号に応じて動作するモータなどで行うこととしてもよい。LED素子14bの輝度は、駆動電流の制御によって調整可能となっている。円筒筐体14aは、LED素子14bから発せられる光の側方への拡散を妨げる。すなわち、点状発光部14は、照射範囲が比較的小さいスポット光を生成する。本実施例において、2つの点状発光部14が面状発光部13の配列方向に沿って設けられている。点状発光部14の1つはフレーム11の端部(すなわち面状発光部13よりも外側)に設けられ、点状発光部14の他の1つはフレーム11の他端部よりもやや中央寄りの位置において2つの面状発光部13の間に設けられている。すなわち、複数の面状発光部13および複数の点状発光部14は、フレーム11上において非対称配置となるように設けられている。
【0020】
かかる構成を有する発光ユニット10は、例えば住宅や飲食店店舗のダイニングテーブル上方の天井から吊り下げられ、ダイニングテーブル上に置かれた料理などに照明光を照射する。
【0021】
発光態様データ記憶部30は、発光ユニット10において実現される複数の発光態様の各々を示す複数の発光態様データを記録したデータベースである。図4は、発光態様データ記憶部30に記録された発光態様データの一例を示すテーブルである。発光態様データ記憶部30には、例えば、面状発光部13の各々における輝度および発光色の設定値、点状発光部14の各々における輝度および照射角度の設定値が発光態様データとして記録されている。複数の発光態様データは、例えば、発光ユニット10によって照明される照明対象物の属性に対応付けられて記録される。本実施例においては、照明対象物として料理を想定し、複数の発光態様データは、和食、洋食、中華などの料理のジャンルおよび肉料理、魚料理、野菜料理などの料理の種類に対応付けられて記録されている。発光ユニット10において、例えば照明対象物である料理が最も美味しく見えるような発光態様若しくは照明対象物である料理に最も調和した発光態様となるように発光態様データを設定することができる。
【0022】
図4において、輝度の数値は面状発光部13または点状発光部14の輝度の大きさを示し、輝度0は、非点灯を意味する。また、発光色の数値は面状発光部13から発せられる光の色調を示す。また、照射角度の数値は、フレーム11に対する点状発光部14からの光の照射角度の大きさを示す。
【0023】
尚、発光態様データは、料理の更なる詳細な分類(例えば魚料理の場合、白身魚を使用するものや赤身魚を使用するもの)、調理方法(例えば焼物、煮物、生)またはこれらの組み合わせなどに対応付けられていてもよい。また、発光態様データは、料理に限らず飲料の種類(例えばワイン、カクテルの種類)に対応付けられていてもよい。また、発光態様データは、飲食物の属性に限らず、照明対象物となるあらゆる物品のあらゆる属性(形状、模様、色、種類、形など)に対応付けることができる。また、発光態様データは、時間帯(例えば朝、昼、夜)に対応付けられていてもよい。また、発光態様データは、照明対象物の属性と時間帯との組み合わせに対応付けられていてもよい。また、発光態様データ記憶部30には、図5(a)および(b)に示すように発光ユニット10における一連の発光態様の経時的または段階的変化を示す発光制御シーケンスが記録されていてもよい。すなわち、この場合、面状発光部13の各々における輝度および発光色の設定値と、点状発光部14の各々における輝度および照射角度の設定値を含む一連の発光態様データの各々が、当該発光態様データに基づく発光制御が行われるタイミング(時刻など)を示す時間情報または当該発光態様データに基づく発光制御が行われる順序を示す順序情報に対応けられて発光態様データ記憶部30に記録される。発光態様データ記憶部30には、複数の発光制御シーケンスが例えばコース料理の種類と対応付けられて記録されていてもよい。
【0024】
制御部20は、制御入力に基づいて発光態様データ記憶部30に記録された発光態様データを抽出し、当該抽出した発光態様にて面状発光部13の各々および点状発光部14の各々を駆動する。すなわち、制御部20は、複数の面状光源13の輝度および発光色を独立に制御し、複数の点状光源14の輝度および光の照射角度を独立に制御する。制御部20に対する制御入力は、例えば制御部20に付随する操作部に対する直接的な操作入力によって、或いは有線又は無線通信等によって制御部20に与えることができる。また、制御入力は、ユーザの操作によってまたは外部装置によって生成されてもよい。また、制御入力は、制御部20によって実行される制御プログラムであってもよい。
【0025】
次に、上記した構成を有する照明システム1における発光制御の第1の態様を図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。以下の説明においては、発光ユニット10がダイニングテーブルの上方に設置され、ダイニングテーブル上に置かれた料理を照明対象物として扱う場合を例示している。尚、発光態様データ記憶部30には、図4に示されているように、複数の発光態様データが料理のジャンルおよび料理の種類に対応付けられて記録されているものとする。
【0026】
ユーザはダイニングテーブルに運ばれてくる料理が例えば洋食である場合、リモートコントローラ(図示せず)などの入力機器を介して「洋食」を選択する。制御部20は、赤外線通信などの無線通信によってリモートコントローラから「洋食」が選択されたことを示す制御入力を受信する(ステップS1)。
【0027】
次に、制御部20は、選択された料理のジャンル「洋食」をキーとして発光態様データ記憶部30から対応する発光態様データを抽出する(ステップS2)。
【0028】
次に、制御部20は、抽出した発光態様データに示されている輝度および発光色となるように面状発光部13の各々を駆動するとともに、抽出した発光態様データに示されている輝度および照射角度となるように点状発光部14を駆動する。すなわち、制御部20は、有機EL素子の赤、緑、青の各発光領域における電流比率および電流量を制御することにより面状発光部13の各々の発光色および輝度を制御し、LED素子14bの各々における電流量を制御することにより点状発光部14の輝度を制御する。また、制御部20は、支持軸14cに連結されたモータ(図示せず)を駆動することによって点状発光部14における光の照射角度を制御する(ステップS3)。これにより、発光ユニット10は、洋食に適した発光態様の照明光を生成し、これをダイニングテーブル上に置かれた料理に向けて照射する。
【0029】
次に、照明システム1における発光制御の第2の態様を同じく図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。尚、発光態様データ記憶部30には、図5(a)に示されているように一連の発光態様データが時刻等の時間情報に対応付けられて記録されているものとする。
【0030】
ユーザは例えばリモートコントローラ(図示せず)などの入力機器を介して発光態様データ記憶部30に記録された発光制御シーケンスを開始すべき開始指令を制御部20に送信する。制御部20は、かかる開始指令を制御入力として受信する(ステップS1)。
【0031】
次に、制御部20は、かかる指令を契機として発光態様データ記憶部30に記録された、時刻等の時間情報に従って発光態様データを順次抽出する。例えば、第1の発光態様データが19時を示す時間情報に対応付けられている場合、制御部20は、時刻19時に第1の発光態様データを抽出する(ステップS2)。
【0032】
次に、制御部20は、抽出した発光態様データによって示される発光態様で面状発光部13および点状発光部14を駆動する(ステップS3)。制御部20は、発光制御シーケンスが終了するまで、ステップS2およびステップS3の処理を繰り返す。これにより、発光ユニット10は、発光制御シーケンスに従って発光態様を経時的に変化させ、ダイニングテーブルに順次運ばれてくる各料理に対応した照明光を順次生成する。
【0033】
尚、一連の発光態様データが図5(b)に示されるような順序情報に対応付けられている場合、制御部20は、上記ステップS2において、制御部20は、例えば所定期間おきに発光態様データ記憶部30に記録された順序情報によって示される順序で発光態様データを順次抽出する。また、発光態様データが例えば、朝、昼、夜などの時間帯に対応付けられて発光態様データ記憶部30に記録されている場合、制御部20は、上記ステップS2において、現在時刻の属する時間帯に対応した発光態様データを発光態様データ記憶部30から抽出する。また、発光態様データが、例えば朝、昼、夜などの時間帯と照明対象物の属性(例えば料理の種類など)の組み合わせに対応付けられて発光態様データ30に記録されている場合、上記ステップS2において、制御入力によって示される照明対象物の属性および現在時刻の属する時間帯の双方に対応した発光態様データが発光態様データ記憶部30から抽出される。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本実施例に係る発光ユニット10は、発光色および輝度を独立に制御可能な複数の面状発光部13を有する。面状発光部13は、従来のLED照明では困難であった所謂フルカラー可変発光が可能である。これにより、発光態様のバリエーションを大幅に増やすことができ、あらゆるシチュエーション、料理をはじめとするあらゆる照明対象物に最適な照明光を生成することができる。また、フルカラー可変発光によれば、照明対象物にいわば着色を施すことも可能となる。すなわち、演色性の高い照明光のみならず演出効果の高い照明光を生成することができる。
【0035】
また、発光ユニット10は、面状発光部13が生成する拡散光とは異なる発光特性のスポット光を生成する点状発光部14を更に有する故、発光態様のバリエーションを更に増すことができる。すなわち、スポット光を生成する点状発発光部14を点灯させることにより、例えばダイニングテーブルに置かれた料理の影を強調することができる。また、点状発光部14は、フレーム11に対して回動自在に設けられ、光の照射角度を変えることができ、これによって影の形状をコントロールすることができる。また、2つの点状発光部14は、フレーム11上において非対称に配置されているので、照射角度が互いに異なる2つのスポット光を生成することができ、独特な照明効果を得ることが可能となる。
【0036】
また、本実施例に係る照明システム1によれば、発光態様データ記憶部30には、発光ユニット10における複数の発光態様の各々を示す複数の発光態様データが、料理のジャンルや料理の種類など、照明対象物の属性に対応付けられて記録され、制御部20が制御入力に応じて発光態様データを抽出して発光ユニット10を駆動する。これにより、ユーザは、例えば、ダイニングテーブルに置かれる料理の種類を指定するなどの簡単な操作で、好適な照明効果を得ることができるので、ユーザの利便性を高めることができる。
【0037】
また、例えば、コース料理などのように提供される料理の内容や順序が決まっている場合には、発光態様の経時的(段階的)変化を示す発光制御シーケンスを発光態様データ記憶部30に記録しておくことにより、順次ダイニングテーブルに運ばれてくる料理に合わせて発光ユニット10の発光態様を変化させることができる。
【0038】
また、発光態様データを朝、昼、夜などの時間帯に対応付けて発光態様データ記憶部30に記録しておくことにより、その時間帯に適した雰囲気の照明光を生成することができる。
【0039】
このように、本実施例に係る照明システムによれば、従来の照明装置と比較してより多彩な照明効果を得ることができ食空間の演出に寄与することができる。
【実施例2】
【0040】
図7は、本発明の実施例2に係る照明システム2の構成を示すブロック図である。照明システム2は、上記した実施例1に係る照明システム1の構成に加えて、識別部40を更に有する。
【0041】
識別部40は、発光ユニット10によって照明される照明対象物の形状、模様、色、種類などの属性を識別する構成部分である。識別部40は、例えば、発光ユニット10のフレーム11上に固定されたカメラ等の撮像素子であってもよい。この場合、識別部40は、発光ユニット10の照明エリア内に置かれた照明対象物を撮影し、当該照明対象物の形状、模様、色、種類などを特定し、特定した照明対象物の属性を含む識別信号を生成し、これを制御部20に通知する。
【0042】
また、識別部40は、照明対象物に付随するバーコードやQRコードなどの識別コードまたはICタグを読み取るリーダであってもよい。照明対象物に付随する識別コードまたはICタグには、当該照明対象物の形状、模様、色、種類などを示す属性データが含まれている。識別部40は、発光ユニット10の照明エリア内に置かれた照明対象物に付された識別コードまたはICタグから属性データを読み取って当該照明対象物の形状、模様、色、種類などを特定し、特定した照明対象物の属性を含む識別信号を生成し、これを制御部20に通知する。尚、識別部40以外の他の構成部分は、上記した実施例1に係る照明システム1と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0043】
次に、上記した構成を有する照明システム2における発光制御の態様を図8に示すフローチャートを参照しつつ説明する。以下の説明においては、発光ユニット10がダイニングテーブルの上方に設置され、ダイニングテーブル上に置かれた料理を照明対象物として扱う場合を例示している。また、発光態様データ記憶部30には、図4に示されているように、発光ユニット10における複数の発光態様の各々に対応する複数の発光態様データが料理のジャンルおよび料理の種類に対応付けられて記録されているものとする。
【0044】
識別部40が撮像素子で構成されている場合、識別部40は、ダイニングテーブルに置かれた料理を上方から撮影し、公知のパターン認識技術などを用いて料理の種類を特定する。一方、識別部40が上記したようなリーダで構成されている場合、識別部40は、料理の提供の用に供される皿などに付された識別コードまたはICタグに含まれる属性データを読み取って、当該料理の種類を特定する。識別部40は、特定した料理の種類を示す識別信号を生成し、これを制御部20に通知する(ステップS11)。
【0045】
次に、制御部20は、受信した識別信号によって示される料理の種類をキーとして発光態様データ記憶部30から対応する発光態様データを抽出する(ステップS12)。
【0046】
次に、制御部20は、抽出した発光態様データに従って面状発光部13および点状発光部14を駆動する。すなわち、制御部20は、有機EL素子の赤、緑、青の各発光領域における電流比率および電流量を制御することにより面状発光部13の各々の発光色および輝度を制御し、LED素子14bの各々における電流量を制御することにより点状発光部14の輝度を制御する。また、制御部20は、支持軸14cに連結されたモータ(図示せず)を駆動することによって点状発光部14からの光の照射角度を制御する(ステップS13)。発光ユニット10は、識別部40によって識別された料理に適した発光態様の照明光を生成し、これを当該料理に向けて照射する。
【0047】
このように、実施例2に係る照明システム2によれば、上記した実施例1に係る照明システム1と同様、多彩な照明効果を得ることができ、食空間の演出に寄与することができる。また、識別部40が、照明対象物の属性を識別し、当該識別結果に基づいて発光ユニット10における発光態様が選択されるので、ユーザの利便性を更に向上させることができる。
【実施例3】
【0048】
図9は、本発明の実施例3に係る照明システム3の構成を示すブロック図である。照明システム3は、上記した実施例2に係る照明システム2の構成に加えて、目標色データ記憶部50および色測定部60を更に有する。
【0049】
目標色データ記憶部50は、照明対象物の属性毎に色データを割り当てて記録したデータベースである。例えば、照明対象物が料理である場合、当該料理が最も美味しく見える色、最も新鮮に見える色または当該料理の記憶色などを示す色データが、料理の種類と対応付けられて目標色データ記憶部50に記録される。具体的には、目標色データ記憶部50には、料理の種類毎に設定された色がXYZ(Yxy)表色系における座標表示などによって定量化され、当該料理の種類と対応付けられて記録されている。
【0050】
色測定部60は、照明対象物の色を測定して測色データを生成する構成部分である。色測定部60は、例えば発光ユニット10のフレーム11上に固定された色彩計または分光測色計などにより構成される。尚、色彩計は刺激値直読法によって色測定を行う機器であり、分光測色計は分光測色法によって色測定を行う機器である。尚、色測定部60は、識別部40と一体的に設けられていてもよい。すなわち、識別部40が測色機能をも有する撮像装置等により構成されている場合は別途色測定部60を設けることを要しない。目標色データ記憶部50および色測定部60以外の他の構成部分は、上記した実施例2に係る照明システム2と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0051】
次に、上記した構成を有する照明システム3における発光制御の態様を図10に示すフローチャートを参照しつつ説明する。以下の説明においては、発光ユニット10がダイニングテーブルの上方に設置され、ダイニングテーブル上に置かれた料理を照明対象物として扱う場合を例示している。また、発光態様データ記憶部30には、図4に示されているように、発光ユニット10における複数の発光態様を示す発光態様データが料理のジャンルおよび料理の種類に対応付けられて記録されているものとする。
【0052】
識別部40が撮像素子で構成されている場合、識別部40は、ダイニングテーブルに置かれた料理を上方から撮影し、公知のパターン認識技術を用いて当該料理の種類を特定する。一方、識別部40が上記したようなリーダで構成されている場合、識別部40は、料理の提供の用に供される皿などに付された識別コードまたはICタグに含まれる属性データを読み取って、当該料理の種類を特定する。識別部40は、特定した料理の種類を示す識別信号を生成し、これを制御部20に通知する(ステップS21)。
【0053】
次に、制御部20は、受信した識別信号によって示される料理の種類をキーとして発光態様データ記憶部30から対応する発光態様データを抽出する(ステップS22)。
【0054】
次に、制御部20は、抽出した発光態様データに従って面状発光部13および点状発光部14を駆動する。すなわち、制御部20は、有機EL素子の赤、緑、青の各発光領域における電流比率および電流量を制御することにより面状発光部13の各々の発光色および輝度を制御し、LED素子14bの各々における電流量を制御することにより点状発光部14の輝度を制御する。また、制御部20は、支持軸14cに連結されたモータ(図示せず)を制御することによって点状発光部14からの光の照射角度を制御する(ステップS23)。発光ユニット10は、ダイニングテーブル上に置かれた料理に向けて照明光を照射する。
【0055】
次に、制御部20は、識別部40から供給された識別信号によって示される料理の種類をキーとして目標色データ記憶部50から対応する目標色データを抽出する。目標色データは、例えば当該料理等が最も美味しく見える色を示す色データである(ステップS24)。尚、本ステップは、識別部40が料理の種類を特定するときにこれと並行して行われてもよい。
【0056】
次に、色測定部60は、発光ユニット10によって照明光が照射されたダイニングテーブル上の料理の色を測定する。色測定部60は、測定した料理の色をXYZ(Yxy)表色系における座標表示などによって定量化してこれを側色データとして制御部20に通知する(ステップS25)。
【0057】
次に、制御部20は、目標色データ記憶部50から抽出した目標色データによって示される色と測色データによって示される色の差分が最小となるように、面状発光部13における発光色を調整する(ステップS26)。
【0058】
次に制御部20は、ステップS26において発光色を調整した後の発光ユニット10における発光態様を示す新たな発光態様データを生成して、これを当該料理の種類と対応付けて発光態様データ記憶部30に記録する。発光態様データ記憶部30に記録されていた既存の発光態様データは、当該新たな発光態様データに置き換えられる(ステップS27)。
【0059】
このように、実施例3に係る照明システム3によれば、上記した各実施例に係る照明システムと同様、多彩な照明効果を得ることができ、食空間の演出に寄与することができる。また、識別部40が、照明対象物の属性を識別し、当該識別結果に基づいて発光ユニット10における発光態様が選択されるので、ユーザの利便性を更に向上させることができる。また、色測定部60によって測定された照明対象物の色が目標色データ記憶部50に記録された目標色データによって示される色と一致するように発光ユニット10における発光態様が調整されるので、例えば、同一食材間における微妙な色の違いにも対処することができ、照明効果を一定に保つことができる。
【0060】
尚、以上の説明においては、本発明の各実施例に係る照明システムがダイニングルームなどに設置され、ダイニングテーブル上に置かれた料理を照明する場合を例示したが、このような用途に限定されるものではない。本発明の各実施例に係る照明システムは、例えば展示スペースやショーケースなどに並べられた商品を照明する用途や、人物を照明する用途に用いることができる。すなわち、本発明の各実施例に係る照明システムによって照明される照明対象物としてあらゆるものを想定することができる。発光態様データ記憶部30には、複数の発光態様データが照明対象物である物品や人物の属性に対応付けられて記録される。また、人物を照明する場合、例えばその人物の着衣のタイプや色またはこれらの組み合わせに応じて発光ユニットにおける発光態様を設定することとしてもよい。すなわち、この場合、発光態様データ記憶部30には、図11に示すように、複数の発光態様データが着衣のタイプに対応付けられて記録される。また、発光態様データは着衣のタイプの他、着衣の色、肌の露出度またはこれらの組み合わせなどに対応付けられていてもよい。着衣のタイプ、色および肌の露出度などのパラメータは、図7および図9に示される識別部40を構成する撮像装置が照明対象である人物を撮像して画像データを生成し、公知のパターン認識技術に用いて特定される。制御部20は特定した着衣のタイプ、色、肌の露出度に対応した発光態様データを抽出し、当該抽出した発光態様データによって示される発光態様となるように発光ユニット10を駆動する。また、発光態様データ記憶部30に記録された発光態様データに従って設定された面状発光部13の各々および点状発光部14の各々における発光色や輝度は、ユーザが事後的に調整することができるように、手動操作部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、2、3 照明システム
10 発光ユニット
11 フレーム
13 面状発光部
14 点状発光部
20 制御部
30 発光態様データ記憶部
40 識別部
50 目標色データ記憶部
60 色測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色および輝度が可変である発光部と、
各々が前記発光部の発光色および輝度の設定値を示す複数の発光態様データを記録した発光態様データ記憶部と、
制御入力に応じて前記発光態様データ記憶部から前記発光態様データを抽出し、当該抽出した発光態様データによって示される発光態様となるように前記発光部を駆動する制御部と、を含むことを特徴とする照明システム。
【請求項2】
前記発光態様データの各々は、前記発光部からの光によって照明される照明対象物の属性に対応付けられて前記発光態様データ記憶部に記録され、
前記制御部は、前記制御入力おいて示される前記照明対象物の属性に基づいて前記発光態様データを抽出することを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記発光態様データの各々は、当該発光態様データに基づく発光制御がなされるタイミングを示す時間情報に対応付けられて前記発光態様データ記憶部に記録され、
前記制御部は、前記制御入力において示される開始指令を契機として前記時間情報に従って前記発光態様データを抽出することを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項4】
前記発光態様データの各々は、当該発光態様データに基づく発光制御がなされる順序を示す順序情報に対応付けられて前記発光態様データ記憶部に記録され、
前記制御部は、前記制御入力において示される開始指令を契機として前記順序情報に応じた順序で前記発光態様データを抽出することを特徴とする請求項1に記載の照明システム。
【請求項5】
前記照明対象物の属性を識別して識別信号を生成する識別部を更に有し、
前記制御部は、前記識別信号を前記制御入力として受信することを特徴とする請求項2に記載の照明システム。
【請求項6】
前記識別部は、前記照明対象物を撮像する撮像装置を含むことを特徴とする請求項5に記載の照明システム。
【請求項7】
前記識別部は、前記照明対象物に付随する当該照明対象物の属性を示す属性データを読み取るリーダを含むことを特徴とする請求項5に記載の照明システム。
【請求項8】
前記照明対象物の色を測定して測色データを生成する色測定部と、
前記照明対象物の属性に対応して設定された色を示す目標色データを記録した目標色データ記憶部と、を更に含み、
前記制御部は、前記識別信号に応じて前記目標色データを抽出し、前記測色データによって示される前記照明対象物の色と抽出した目標色データによって示される色の差分が最小となるように前記発光部の発光色を調整することを特徴とする請求項5に記載の照明システム。
【請求項9】
前記制御部は、前記目標色データに基づく発光色の調整後における前記発光部の発光態様に対応した新たな発光態様データを生成し、当該新たな発光態様データを前記発光態様データ記憶部に記録することを特徴とする請求項8に記載の照明システム。
【請求項10】
前記発光態様データは、前記照明対象物である料理の種類に対応付けられて前記発光態様データ記憶部に記録されていることを特徴とする請求項2に記載の照明システム。
【請求項11】
前記発光態様データは、前記照明対象物である人物の着衣のタイプまたは色またはこれらの組み合わせに対応付けられて前記発光態様データ記憶部に記録されていることを特徴とする請求項2に記載の照明システム。
【請求項12】
前記発光部は、面状発光体からなり拡散光を発する面状発光部と、点状発光体からなりスポット光を発する点状発光部とを有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1つに記載の照明システム。
【請求項13】
前記面状発光体は有機EL素子により構成され、前記点状発光部は発光ダイオードにより構成されていることを特徴とする請求項12に記載の照明システム。
【請求項14】
前記点状発光部からの光の照射角度は可変であることを特徴とする請求項12または13に記載の照明システム。
【請求項15】
発光色および輝度が可変である発光部を含む照明システムにおける前記発光部の発光制御方法であって、
制御部が制御入力を受信するステップと、
前記制御部が、各々が前記発光部の発光色および輝度の設定値を示す複数の発光態様データを記録した発光態様データ記憶部から前記制御入力に応じて前記発光態様データを抽出するステップと、
前記制御部が、当該抽出した発光態様データによって示される発光態様となるように前記発光部を駆動するステップと、を含むことを特徴とする発光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−77387(P2013−77387A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215140(P2011−215140)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(511236257)有限会社ライトデザイン (1)
【Fターム(参考)】