説明

照明ユニット

【課題】光源を収納した筐体をその重心位置に一致する回転軸廻りに360度の範囲で回転させることができるようにし、光の照射範囲の調整作業を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】内部に光源を収納した筐体10を含む照明ユニット本体110を、両端部に配置した支持部材20によって回転自在に支持した。支持部材20の照明ユニット本体110の重心位置を中心とする環状部22の全周に、複数の取付孔23を形成した。筐体10の両端部には環状部22の内周面22Aに摺動する円弧部15を形成した。照明ユニット本体110は、環状部22の内周面に沿って重心軸廻りに360度の角度範囲で回転自在に支持される。固定ネジ19を何れかの取付孔23を経由して筐体10のネジ孔18に締着させると、照明ユニット本体110を任意の回転位置で支持部材20に固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所望の場所を照らす照明ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラント等の可燃性ガス雰囲気の危険区域内でも、暗所での作業や夜間の作業時に照明が必要とされる場合がある。このため、光源を電源回路等の電気部品とともに防爆構造の筐体に収納した防爆型照明ユニットが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
危険区域内では、光源からの光を対象物に適正に照射できるような位置に防爆型照明ユニットを取り付けるための部材が存在しない場合が多い。
【0004】
そこで、従来の一般的な照明ユニットとして、図6に示すように、光源及び電気部品を収納した筐体110を支持金具120を介して取付位置に取り付けるようにしたものがある。支持金具120は、筐体110を回転軸121廻りに回転自在に支持するとともに、回転軸121を中心とする円弧上に複数の固定孔122を備えている。複数の固定孔122の何れかに筐体110に形成された穴部を選択的に対向させ、固定ネジ130を固定孔122を経由して穴部に螺合させる。光源の光が窓部111から対象物に適正に照射されるように、支持金具120に対する筐体110の回転角度を所定範囲内で調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−053929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の照明ユニットでは、支持金具に対する筐体の回転範囲が所定範囲に限られているため、光の照射範囲の自由度が低く、光を対象物に的確に照射できない場合を生じる。
【0007】
また、回転軸に直交する面内で筐体の重心位置が回転軸の位置から大きく変位しているため、例えば、耐圧防爆構造の筐体のように質量の大きな筐体の回転操作に必要な操作力が筐体の回転角度に応じて変化し、光の照射範囲の調整作業が困難になる。
【0008】
この発明の目的は、筐体をその重心位置に一致する回転軸廻りに360度の範囲で回転させることができるようにし、対象物を的確に照明するための光の照射範囲の調整作業を容易に行うことができる照明ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る照明ユニットは、照明ユニット本体、支持部材からなる。照明ユニット本体は、内部に光源を収納する筐体を含み、光源の光を外部に照射させるための窓部を有する。支持部材は、照明ユニット本体の重心位置を通過する回転軸廻りに、全周にわたって筐体を回転自在に支持する。
【0010】
この構成によれば、照明ユニット本体は、支持部材によって重心を通る回転軸廻りに全周にわたって回転自在に支持される。照明ユニット本体は、照明位置の変更に際して、重心位置の変位を伴うことなく支持部材に対して360°の範囲で回転する。
【0011】
この構成において、照明ユニット本体は、回転軸を中心とする円周上に少なくとも1つの係合部を有し、支持部材は、円周上に複数の取付孔を有し、複数の取付孔の何れかを貫通して前記係合部に係合する固定部材を備えることが好ましい。固定部材を、複数の取付孔の何れかに貫通させて係合部に係合させることで、照明ユニット本体を任意の回転角度で固定することができる。
【0012】
また、支持部材が複数の取付孔を有する環状部を含むものとし、照明ユニット本体が環状部の内周面に摺動する円弧部を有するものとすることが好ましい。円弧部が環状部の内周面に摺動する状態で、照明ユニット本体を支持部材に対して安定して回転させることができる。
【0013】
また、回転軸に直交する面内における照明ユニット本体の断面が回転軸に沿って一様となる形状を呈することが好ましい。回転角度に応じた筐体の支持部材に対する形状変化が最小となり、照明ユニット本体の回転操作が容易になるとともに、取付スペースが最小となる。
【0014】
さらに、照明ユニット本体は対向する2側面が互いに対称形状を呈するものとし、支持部材は2側面のそれぞれに配置することが好ましい。照明ユニット本体を対向する2側面のそれぞれで支持部材によって安定した状態で支持することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、光源を収納した筐体をその重心位置に一致する回転軸廻りに360度の範囲で回転させることができ、光の照射範囲の調整作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施形態に係る照明ユニットの斜視図である
【図2】同照明ユニットの概略の側面図である。
【図3】同照明ユニットの支持部材の斜視図である。
【図4】(A)〜(C)は、同照明ユニットにおける筐体の回転状態を説明する側面図である。
【図5】同照明ユニットの内部構造を示す断面図である。
【図6】従来の照明ユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、この発明の実施形態に係る照明ユニットについて、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1に示すように、照明ユニット100は、照明ユニット本体110及び一対の支持部材20を備えている。照明ユニット本体110は、筐体10及び筐体10に設けられた基板等の部品を含んで構成されている。筐体10は、一例として内部に光源を電気部品とともに収納した耐圧防爆構造の容器である。筐体10は、正面(図1では上向きにされている。)及び背面を平面で構成した円筒形状を呈し、一例としてアルミニウム合金の引抜加工によって形成され、十分な肉厚を有しており、横断面の形状は長手方向に沿って一様にされている。筐体10の円弧部分の外周面には、長手方向に平行なリブが複数形成されている。
【0019】
筐体10は、正面に強化ガラスで被覆した矩形の窓部11を備えている。光源の光は、窓部11を経由して、一例として窓部11の法線方向である所定の光軸方向に沿って筐体10の外部に照射される。光軸方向を含む面は、筐体10の長手方向に直交している。
【0020】
筐体10は、両側面が開口している。両側面は、蓋体12によって閉塞される。蓋体12は、円筒形の引き込み部14を中心が筐体10の横断面の図心に一致するように備えている。引き込み部14は、蓋体12を筐体10の長手方向に沿って貫通している。光源や電気部品に対する電源線及び信号線は、引き込み部14を経由して筐体10の内部に挿入される。引き込み部14は、電源線及び信号線が筐体10の長手方向に挿入されている状態で、筐体10内部の防爆構造を維持する。
【0021】
一対の支持部材20は、一例として金属平板のプレス加工によって形成されており、筐体10の両側面のそれぞれに配置される。図2に示すように、支持部材20は、互いに直交する取付部21と環状部22とを備えている。取付部21には、2箇所に凹部24が形成されている。取付部21の上方から凹部24を貫通するネジを介して、支持部材20が危険区域内に配置されている図外の取付用フレームに固定される。環状部22には、全周にわたって複数(図2に示す例では36個)の取付孔23が等間隔に形成されている。複数の取付孔23の各々の中心位置は、環状部22と同心の円周上に位置している。
【0022】
図3(A)及び(B)に示すように、環状部22の外周及び内周は筐体10の横断面の図心を中心としており、複数の取付孔も筐体10の横断面の図心を中心とする円周上に配置されている。筐体10の両側部には、環状部22の内周と同一径の円弧で構成された円弧部15を有する段部16が形成されている。円弧部15は、筐体10の横断面における4箇所に形成されている。筐体10の長手方向における段部16の長さは、環状部22の厚さに等しくされている。蓋体12の横断面は、筐体10における段部16以外の部分の横断面に等しい。
【0023】
筐体10の両端部の段部16に支持部材20の環状部22を配置し、筐体10の両端部に蓋体12を装着すると、環状部22の内周面22Aに円弧部15が摺動する状態で筐体10に支持部材20によって筐体10の横断面の図心廻りに回転自在に支持される。
【0024】
防爆構造の筐体10は、十分な肉厚を有しており、内部に収納する光源や電気部品に比較して十分に重い。このため、筐体10の横断面における重心位置は図心に略一致しており、照明ユニット本体110における重心位置の変位を伴うことがないため、筐体10を手で掴んで容易に回転させることができ、照明ユニット本体110から手を離しても照明ユニット本体110が自重によって回転することもない。なお、本発明の重心位置は、回転軸廻りに回転自在に保持された状態で、照明ユニット本体の自重のみで回転しない範囲内にあればよい。本実施形態では、この重心位置の範囲内に図心位置が含まれる。
【0025】
図5に示すように、筐体10は、引抜き成形により、一対の段部10Bが内部の収納部10Aに一体に形成された状態の一様な断面形状に成形され、切削加工によって正面1Aに窓部11が開設される。したがって、一対の段部10Bは、収納部10A内において、正面1Aに平行な方向の全域にわたって形成される。また、収納部10Aは、筐体10の両側面において開口部10Cとして開放している。
【0026】
筐体10の収納部10Aには、光源であるLED30を実装した光源用基板31、電気部品40を実装した電気部品用基板41が、開口部10Cから挿入される。LED30には、レンズが装着されている。正面1Aの存在により、LED30が正面1Aの内側面に干渉しないように、LED30を強化ガラス板11Aの内側面から少なくとも正面1Aの厚みDだけ背面側に離間させて、光源用基板31を開口部10Cから挿入する必要がある。
【0027】
強化ガラス板11Aの内側面とLED30との間に厚みD分の間隙が形成されると、収納部10A内に無駄なスペースが存在して本体1が大型化するだけでなく、LED30の光の配光角度が狭くなる。
【0028】
そこで、光源用基板31を収納部10A内に収納した後に、光源用基板31の背面側に当接するスペーサ50を段部10B内に開口部11Cから挿入する。スペーサ50の厚さは、正面1Aの厚さDに略等しくされており、光源用基板31を厚さDだけ強化ガラス板1Aの内側面に向けて移動させる。
【0029】
なお、一対の段部10Bのそれぞれは、挿入されたスペーサ50における光源用基板31の背面との当接面から正面1Aの外側面までの長さが、LED30を実装した光源用基板31の高さに一致する位置に形成されている。
【0030】
これによって、LED30と強化ガラス板11Aの内側面との間の間隙が無くなり、収納部10A内に無駄なスペースが形成されることがなく、筐体10の大型化を防止できる。また、LED30の光の配光角度を広くすることができる。
【0031】
また、図5に示す筐体10に設けられた各部品は、照明ユニット本体110が自重のみで回転しないように配置されている。特に、比較的重い部品ほど重心位置に近接させて配置することが望ましい。
【0032】
筐体10及び蓋体12は、図3(A)中に斜線で示す範囲で環状部22の両面に当接する。このため、支持部材20を挟んで蓋体12を筐体10に装着すると、筐体10の長手方向(重心軸方向)の移動が規制される。このため、筐体10を支持部材20に対して安定した状態で回転させることができる。
【0033】
図3(B)に示すように、筐体10の両端部における窓部11側には、一例として2箇所にネジ孔17が形成されている。ネジ孔17は、この発明の係合部に相当する。蓋体12には、2箇所のネジ孔17のそれぞれに対向する位置に貫通孔18が形成されている。環状部22の複数の取付孔23の何れか2つにネジ孔17及び貫通孔18を対向させ、固定ネジ19を貫通孔18から取付孔23を経由してネジ孔17に締着することで、支持部材20に対する筐体10の重心軸廻りの回転位置を固定することができる。固定ネジ19は、この発明の固定部材に相当する。
【0034】
支持部材20の環状部22には、全周にわたって等間隔に36個の取付孔23が形成されている。このため、図4(A)〜(C)に示すように、筐体10を360度の回転角度範囲における10度毎の各回転位置で固定することができ、光源の光の照射方向の自由度が増し、対象物を的確に照明することができる。
【0035】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0036】
例えば、支持部材20は、必ずしも筐体10の両端部に配置する必要はない。筐体10の重心軸方向の長さが短い場合には、単一の支持部材20に筐体20を片持ち支持させることもできる。また、筐体10及び蓋体12に、それぞれ単一のネジ孔17及び貫通孔18を形成してもよく、それぞれ3個以上のネジ孔17及び貫通孔18を形成してもよい。また、筐体10は、耐圧防爆構造の容器に限るものではない。
【符号の説明】
【0037】
10−筐体
11−窓部
12−蓋体
17−ネジ孔
18−貫通孔
19−固定ネジ
20−支持部材
22−環状部
23−取付孔
100−防爆型照明ユニット
110−照明ユニット本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に光源を収納する筐体を含み、前記光源の光を外部に照射させるための窓部を有する照明ユニット本体と、
前記照明ユニット本体の重心位置を通過する回転軸廻りに、全周にわたって前記照明ユニット本体を回転自在に支持する支持部材と、
を備えた照明ユニット。
【請求項2】
前記照明ユニット本体は、前記回転軸を中心とする円周上に少なくとも1つの係合部を有し、
前記支持部材は、前記円周上に複数の取付孔を有し、
前記複数の取付孔の何れかを貫通して前記係合部に係合する固定部材を備えた請求項1に記載の照明ユニット。
【請求項3】
前記支持部材は、前記複数の取付孔を有する環状部を含み、
前記照明ユニット本体は、前記環状部の内周面に摺動する円弧部を有する請求項2に記載の照明ユニット。
【請求項4】
前記筐体は、前記回転軸に直交する面内における断面が前記回転軸に沿って一様となる形状を呈する請求項1乃至3の何れかに記載の照明ユニット。
【請求項5】
前記筐体は、対向する2側面が互いに対称形状を呈し、
前記支持部材は、前記2側面のそれぞれに配置される請求項1乃至4の何れかに記載の照明ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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