説明

照明ランプのマーキング方法および照明ランプ

【課題】照明ランプの外殻に微細な文字や図形を描くマーキング方法および該マーキングでマーキングされた照明ランプを提供する。
【解決手段】外殻を把持具3に把持させ、レーザー光が外殻のマーキングを開始する点に当たるように、位置決めする。位置決めが完了したら、コントローラ部4の命令によって、レーザー発振器7はレーザー光を外殻に向けて照射する。同時にコントローラ部4の命令によって、把持具3は、レーザー光が外殻上で所望の軌跡を描くように、外殻を移動、回転させる。外殻の外面にレーザー光が照射されると、外殻の内面に成層された物質に熱振動が発生し、その結果、該物質は外殻の内面から剥離する。マークが完了したら、コントローラ部4の命令に従って、レーザー光の照射が停止される。レーザー発振器7のレーザー媒質には、YVO結晶を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明ランプの外殻に文字・図形等を描く照明ランプのマーキング方法および該マーキング方法でマーキングされた照明ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
照明ランプの外殻(例えば、ガラス管またはガラスバルブ)の外部からレーザー光を照射して、前記外殻の内面に成層された物質の一部を剥離して、文字や図形をマーキングするマーキング方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、蛍光ランプのガラス管の外部からYAGレーザーを前記ガラス管に照射するとともに、前記YAGレーザーを前記ガラス管に対して相対的に移動させて軌跡を描き、前記ガラス管の内面に成層された蛍光層の一部を、前記YAGレーザーの軌跡に沿って剥離させて、文字あるいは図形を描くマーキング方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−346718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、YAGレーザーは、発振周波数が小さく、1パルスあたりのエネルギーが大きいので、1パルスで剥離する蛍光層の量が大きい。そのため、YAGレーザー照射では、微細な文字や図形を描けないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、照明ランプの外殻に微細な文字や図形を描くマーキング方法および該マーキング方法でマーキングされた照明ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るマーキング方法は、照明ランプの外殻に、文字あるいは図形を描くマーキング方法において、前記外殻の外部からYVOレーザーを前記外殻に照射して、前記外殻の内面に成層された物質の一部を剥離させて、前記外殻に文字あるいは図形を描くことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る照明ランプは、前記マーキング方法を用いて描かれた文字あるいは図形を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発振周波数が大きいYVOレーザーを照明ランプの外殻に照射するので、1パルスで剥離する物質の量を小さくできる。そのため、前記外殻の内面に微細な文字や図形を描くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るマーキング方法の実施に使用するレーザーマーキング装置の構成図である。
【図2】レーザー発振器の構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るマーキング方法を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る蛍光ランプを示す外形図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る蛍光ランプを示す外形図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(レーザーマーキング装置)
本発明の実施形態に係るマーキング方法は、図1に示すようなレーザーマーキング装置1を使用して実施される。レーザーマーキング装置1は、ヘッド部2、把持具3およびコントローラ部4をケーブル5で接続して構成されて、把持具3で把持したガラス管6にレーザー光を照射する装置である。なお、ガラス管6は、蛍光ランプの外殻を構成するガラス管である。
【0013】
ヘッド部2は、レーザー発振器7とレーザー偏向装置8から構成される。
【0014】
レーザー発振器7は、YVOレーザー光を発振するレーザー光源であり、図2に示すように、励起源9、レーザー媒質10、ミラー11およびハーフミラー12とから構成され、レーザー媒質10にYVO結晶を使用している。つまり、レーザー発振器7は、励起源9から供給されるエネルギーをレーザー媒質10(YVO結晶)で吸収し、該エネルギーをレーザー光のパルスの形でレーザー媒質10(YVO結晶)から放出させる装置である。
【0015】
YVO結晶は、イットリウム・バナデートと呼ばれる、イットリウム(Y)、バナジウム(V)および酸素(O)とからなる化合物の結晶である。YVO結晶がレーザー媒質10として使用される場合は、一般に、イットリウム(Y)の一部が、発光中心となる希土類元素(例えば、ネオジウム(Nd))に置き換えられる。また、YVO結晶は、レーザー発振波長における誘導放出断面積がYAG結晶に比べて大きく、誘導放出が発生しやすい。そのため、レーザー発振器7の発振周波数(最大400kHz程度)は、YAG結晶をレーザー媒質とするレーザー発振器の発振周波数(最大50kHz程度)に比べて高くなる。その結果、レーザー発振器7が放出するレーザー光、つまりYVOレーザーの1パルスあたりのエネルギーは、YAG結晶をレーザー媒質とするレーザー発振器が放出するレーザー光のそれに比べて小さくなる。
【0016】
また、レーザー偏向装置8は、ガルバノミラー13と集光レンズ14を備えて、レーザー発振器7が放出するレーザー光を所望の一点に集光する装置である。
【0017】
把持具3は、ガラス管6を把持して、ガラス管6を長手方向(図中の矢印a方向)に自在に移動させ、円周方向(図中の矢印b方向)に自在に回転させる装置である。
【0018】
コントローラ部4は、マイクロコンピュータ15とメモリ16を備えて、メモリ16に記憶された制御プログラムに従って、ヘッド部2と把持具3を制御する装置である。つまり、ヘッド部2は、コントローラ部4の命令に従って、レーザー光を放出し、把持具3は、コントローラ部4の命令に従って、ガラス管6を長手方向および円周方向に自在に移動および回転させる。
【0019】
このように構成されているので、レーザーマーキング装置1は、レーザー光がガラス管6上で所望の軌跡を描いて移動するように、ガラス管6をヘッド部2に対して、相対的に動かすことができる。
【0020】
(マーキング方法)
次に、図3を参照しながら、レーザーマーキング装置1を使用して、ガラス管6に文字や図形をマーキングする方法を説明する。
【0021】
まず、ガラス管6を把持具3に把持させ、レーザー光がガラス管6のマーキングを開始する点に当たるように、位置決めする(図3(a)参照)。なお、前述したように、ガラス管6は蛍光ランプの外殻であり、その内面に蛍光体からなる蛍光層17が成層されている。また、ガラス管6は、電極の取付や放電ガスの封入を行う前の蛍光ランプの半製品であるが、完成後の蛍光ランプ、つまり、ガラス管6に電極の取付や放電ガスの封入を行った後の蛍光ランプをレーザーマーキング装置1に取り付けて、マーキングすることもできる。
【0022】
位置決めが完了したら、コントローラ部4の命令によって、レーザー発振器7はレーザー光をガラス管6に向けて照射する。同時にコントローラ部4の命令によって、把持具3は、レーザー光がガラス管6上で所望の軌跡を描くように、ガラス管6を移動、回転させる(図3(b)参照)。
【0023】
ガラス管6の外面にレーザー光が照射されると、ガラス管6の内面の蛍光層17に熱振動が発生し、その結果、蛍光層17はガラス管6の内面から剥離する。つまり、レーザー光がガラス管6上で描いた軌跡は、蛍光層17の剥離痕の形でガラス管6に残る(図3(c)参照)。つまり、該軌跡がガラス管6にマークされる。また、マークが完了したら、コントローラ部4の命令に従って、レーザー光の照射が停止される。
【0024】
なお、所望の軌跡とは、ガラス管6にマークする文字・図形の形状であり、所望の軌跡を描くプログラムは、各種公知の手段を用いて、事前にコントローラ部4にインストールされる。
【0025】
上記のマーキング方法によれば、例えば、図4に示すような直管形の蛍光ランプ18に、品名、型式等を示す文字・図形19をマーキングすることができる。前述したように、YVOレーザー光の1パルス当たりのエネルギーは、YAG結晶をレーザー媒質とするレーザー発振器が放出するレーザー光のそれに比べて小さいので、上記のマーキング方法によれば、従来の方法に比べて、より微細な文字・図形をマーキングすることができる。
【0026】
なお、以上説明した実施形態は例示であって、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲において、自由に変形、応用、あるいは改良して実施することができる。
【0027】
例えば、本発明の対象となる文字・図形等は、図4に示すような、蛍光ランプ18の完成後に外部から視認できるものには限定されない。図5に示すような、ロット番号や製造年月日の表示20を、完成後には外部から見えなくなる場所にマーキングしてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、本発明を蛍光ランプに適用する例を示したが、本発明は各種の照明ランプに広く適用される。例えば、白熱電球や高輝度放電ランプに本発明を適用することができる。なお、本発明を白熱電球に適用する場合は、ガラスバルブが「照明ランプの外殻」に相当し、ガラスバルブの内面に成層された拡散膜が「外殻の内面に成層された物質」に相当する。本発明を高輝度放電ランプに適用する場合は、高輝度放電ランプの発光管の外側にあって、該発光管を保護する外管バルブが「照明ランプの外殻」に相当し、外管バルブの内面に成層された拡散膜が「外殻の内面に成層された物質」に相当する。
【0029】
また、上記実施形態では、長さ軸方向の移動と円筒管の中心回りの回転を行う把持具3を備えるレーザーマーキング装置1の例を示したが、本発明は、このような装置を使用するものに限定されない。例えば、把持具3は、照明ランプの外殻を、直交3軸方向に移動させるもの、あるいはその他の座標系で移動させるものであってもよい。また、レーザーマーキング装置1は、照明ランプの外殻が固定されて、ヘッド部2が自在に動くような、例えば、ヘッド部2を多関節型ロボットアームに取り付けた装置であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 レーザーマーキング装置
2 ヘッド部
3 把持具
4 コントローラ部
5 ケーブル
6 ガラス管
7 レーザー発振器
8 レーザー偏向装置
9 励起源
10 レーザー媒質
11 ミラー
12 ハーフミラー
13 ガルバノミラー
14 集光レンズ
15 マイクロコンピュータ
16 メモリ
17 蛍光層
18 蛍光ランプ
19 文字・図形
20 表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明ランプの外殻に、文字あるいは図形を描くマーキング方法において、
前記外殻の外部からYVOレーザーを前記外殻に照射して、前記外殻の内面に成層された物質の一部を剥離させて、前記外殻に文字あるいは図形を描く、
ことを特徴とするマーキング方法。
【請求項2】
前記外殻は、ガラス管であって、
前記物質は、前記ガラス管の内面に成層された蛍光層である、
ことを特徴とする請求項1に記載のマーキング方法。
【請求項3】
前記外殻は、高輝度放電ランプの発光管を保護する外管バルブであって、
前記物質は、前記外管バルブの内面に成層された拡散膜である、
ことを特徴とする請求項1に記載のマーキング方法。
【請求項4】
前記外殻は、白熱電球のガラスバルブであって、
前記物質は、前記ガラスバルブの内面に成層された拡散膜である、
ことを特徴とする請求項1に記載のマーキング方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のマーキング方法を用いて描かれた文字あるいは図形を有する、
ことを特徴とする照明ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−119190(P2011−119190A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277888(P2009−277888)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【Fターム(参考)】