説明

照明付きミラーキャビネット

【課題】センターミラー7の手前に位置する使用者Hに眩しくなく且つ十分に照明できるようにする。
【解決手段】サイドミラー8,9の各々に、ミラー本体11に銀膜の無い透光部11bが形成されると共に、ミラー本体11の裏面側に透光部11bを通じてミラー表面11aへ向かって照射する照明装置10が配設され、各サイドミラーの透光部11bは、センターミラー側と反対側の縁付近に形成され、照明装置10は、透光部11bを通じてミラー表面11aへ向かって照射する面状発光部13を備え、面状発光部13の照射量についてミラー表面11aに垂直な前方の方向へ向かう量に比べてサイドミラーの中央前方寄りへ向かう量を多くしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三面鏡タイプのミラーキャビネットのミラーの一部から使用者側へ向かって照明するようにした照明付きミラーキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、三面鏡タイプのミラーキャビネットには、センターミラーの左右両側にサイドミラーをセンターミラー側の端部を中心として水平回動自在に設けて形成し、センターミラー又は左右両側のサイドミラーにおける両ミラー境界側の縁付近に、ミラー本体に銀膜の無い透光部が形成されると共に、ミラー本体の裏面側に透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する照明灯が配設されたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−8342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記ミラーキャビネットは、センターミラーからサイドミラーに股かって三面鏡を使用するために両ミラー境界を通過するように見るときに、照明を直視して眩しくなり、見ずらくなることがある。この問題を解決するために、各サイドミラーにおけるセンターミラー側と反対側の縁付近から照明することが考えられる。
【0005】
この場合、各サイドミラーのセンターミラー側と反対側の縁付近からミラー表面に垂直な方向へ向かって照射するのでは、センターミラーの手前に位置する使用者を十分に照明できない問題が生じることになる。
【0006】
本発明は、前記両方の問題を解決することができる照明付きミラーキャビネットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
センターミラーの手前に位置する使用者の使用状況に応じて眩しくなく且つ十分に照明できるようにするために請求項1記載の本発明が採用した手段は、センターミラーの両側にサイドミラーがセンターミラー側の端部を中心として水平回動自在に設けられて形成され、サイドミラーの各々に、ミラー本体に銀膜の無い透光部が形成されると共に、ミラー本体の裏面側に透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する照明装置が配設された照明付きミラーキャビネットにおいて、前記各サイドミラーの透光部は、センターミラー側と反対側の縁付近に形成され、前記照明装置は、透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する発光部と、ミラー表面と発光部の発光面との交差角度を調節する角度調節具とを備え、角度調節具で発光部の角度を調節することで、発光部の照射量についてミラー表面に垂直な前方の方向へ向かう量に比べてサイドミラーの中央前方寄りへ向かう量を多くなるように調節できるようにしたことを特徴とする照明付きミラーキャビネットである。
【0008】
使用者の位置に応じて使用者へ確実に照射できるようにするために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記照明装置が、前記角度調節具に設けた角度調節用アクチュエータと、サイドミラー手前に位置する使用者を検出する検出装置と、発光部の照射方向が検出装置の検出した使用者へ向かうように角度調節用アクチュエータを制御する制御回路とを備えた請求項1記載の照明付きミラーキャビネットである。
【0009】
センターミラーの手前に位置する使用者に眩しくなく且つ十分に照明できるようにするために請求項3記載の本発明が採用した手段は、センターミラーの両側にサイドミラーがセンターミラー側の端部を中心として水平回動自在に設けられて形成され、サイドミラーの各々に、ミラー本体に銀膜の無い透光部が形成されると共に、ミラー本体の裏面側に透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する照明装置が配設された照明付きミラーキャビネットにおいて、前記各サイドミラーの透光部は、センターミラー側と反対側の縁付近に形成され、前記照明装置は、透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する発光部を備え、発光部の照射量についてミラー表面に垂直な前方の方向へ向かう量に比べてサイドミラーの中央前方寄りへ向かう量を多くしたことを特徴とする照明付きミラーキャビネットである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明に係る照明付きミラーキャビネットは、各サイドミラーにおけるセンターミラー側と反対側の縁付近から照明するため、センターミラーからサイドミラーに股かって三面鏡を使用するときに両ミラー境界を跨ぐように見渡しても従来のような照明がないため眩しくなく、また、サイドミラーの中央前方寄りへ向かう(すなわち、使用者へ向かう)照射量がミラー表面に垂直な方向へ向かう照射量に比べて多くなるように調節できることから、三面鏡の手前に位置する使用者を十分に照明することが可能となる。 また、本発明に係る照明付きミラーキャビネットは、三面鏡の手前に位置する使用者の使用の態様(例えば、センターミラーに顔を接近させる態様、又はセンターミラーから顔を離反させる態様)に応じて、発光部の照射角度を角度調節具で調節することにより、使用者へ向かう照射量を多くして使用者を十分に照らすことが可能となる。
【0011】
請求項2記載の本発明に係る照明付きミラーキャビネットは、発光部の照射方向を使用者位置に応じて自動的に調節して、使用者へ確実に照射することができる。
【0012】
請求項3記載の本発明に係る照明付きミラーキャビネットは、各サイドミラーにおけるセンターミラー側と反対側の縁付近から照明するため、センターミラーからサイドミラーに股かって三面鏡を使用するときに両ミラー境界を跨ぐように見渡しても従来のような照明がないため眩しくなく、また、サイドミラーの中央前方寄りへ向かう照射量がミラー表面に垂直な方向へ向かう照射量に比べて多いことから、三面鏡の手前に位置する使用者を眩しくなく十分に照明することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る照明付きミラーキャビネット1を備えた洗面化粧台2の全体を示す斜視図である。
【図2】前記洗面化粧台2と使用者Hを示す右側面図である。
【図3】図(A)は図1のa−a線で断面し且つ中間省略した右側断面図、図(B)は右側のサイドミラー9の構成部材を分解して示す中間省略した右側断面図である。
【図4】図(A)は図3(A)のa−a線で断面した右側のサイドミラー9の平面断面図、図(B)は図3(A)のb−b線で断面した右側のサイドミラー9の平面断面図である。
【図5】洗面化粧台2の使用状況を示す平面図であって、図(A)は左右のサイドミラー8,9を閉じた状態を示し、図(B)は左右のサイドミラー8,9を開いた状態を示すものである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る照明付きミラーキャビネット21を備えた洗面化粧台の使用状況を示す平面図であって、図(A)は図5(B)に比べて使用者Hがミラーキャビネット21に接近した使用の態様を示し、図(B)は図5(B)に比べて使用者Hがミラーキャビネット21から離反した使用の態様を示すものである。
【図7】第2の実施の形態に係る照明付きミラーキャビネット21に備えた右側のサイドミラー9の照明装置10の近辺を示す平面断面図であって、図(A)は発光部13の一方側(左側)を前後方向へ移動できるタイプを示し、図(B)は発光部13の左右両側を個別に前後方向へ移動できるタイプを示すものである。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る照明付きミラーキャビネット31に備えた右側サイドミラー9を示す中間省略した平面断面図である。
【図9】第1の実施の形態に係る照明付きミラーキャビネット1のセンターミラー7の上方寄りに備えた照明装置40の近辺を示す右側断面図であって、図(A)は照明装置40の発光部43を固定したタイプを示し、図(B)は照明装置40の発光部43の照射角度δを調節できるタイプを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る照明付きミラーキャビネット(以下、「本発明ミラーキャビネット」と言う。)を図面に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1乃至図5は第1の実施の形態に係る本発明ミラーキャビネット1を示すものであって、本発明ミラーキャビネット1は、図1及び図2に示す如く、洗面器4及び水栓5を備えた洗面キャビネット3の上方に設置されて洗面化粧台2を構成している。本発明ミラーキャビネット1は、内側に収納空間6a(図2参照)を形成したキャビネット本体6と、キャビネット本体6に設けられて収納空間6aの手前開口部を開閉するセンターミラー7及び左右のサイドミラー8,9とを備え、センターミラー7が左右いずれか一方の端部を中心として水平回動自在に設けらると共に、左右のサイドミラー8,9がセンターミラー側の端部を中心として水平回動自在(図5参照)に設けられている。なお、センターミラー7は、開閉タイプとすることなく、キャビネット本体6に固定する固定タイプとすることもある(図示略)。
【0016】
左右のサイドミラー8,9の各々は、センターミラー側と反対側の縁付近8a(9a)からサイドミラー手前側へ向かって照射する照明装置10を備えている。右側のサイドミラー9は、図3に示す如く、手前側のミラー本体11と、裏面側の基板12と、ミラー本体11と基板12の間に配置した面状の発光部13及びスペーサ14と、上下の結合具15,15とを備え、面状の発光部13及びスペーサ14を挟んで重ね合わせたミラー本体11及び基板12の上下縁部に、各結合具15のコ字状外嵌部15aを外嵌装着してこれら構成部材が分離しないように一体化してある。各結合具15は、水平回動自在に支持するためのヒンジ部15bがコ字状外嵌部15aと一体に設けられ、ヒンジ部15bの接合片をキャビネット本体6に接合することで、サイドミラー9を回動自在に支持するようにしてある。
【0017】
前記右側のサイドミラー9は、図3及び図4(A)に示す如く、右側の縁付近9aに対応するミラー本体11の箇所に銀膜の無い透光部11bが縦長に形成されると共に、ミラー本体11の裏面側に配置した面状の発光部13から透光部11bを通じてミラー表面11aへ向かって照射するようにしてある。照明装置10を構成する面状の発光部13は、図5及び図4(A)に示す如く、その照射量についてミラー表面11aに垂直な前方の方向(ミラー表面11aに垂直な垂直線Vに沿った前向き方向)へ向かう量に比べてサイドミラー9の中央前方寄りへ向かう(すなわち、ミラー表面11aの左右二等分位置から前方へ延びる垂直線Vaに近づくように向かう)水平な矢符G方向の量を50〜100%程度増量するようにしてある。なお、左側のサイドミラー8は、上記右側のサイドミラー9と左右対称に構成され、図5に示す如く、その照射量についてミラー表面11aに垂直な前方の方向へ向かう量に比べてサイドミラー9の中央前方寄りへ向かう水平な矢符G方向の量を増量するようにしてある。
【0018】
水平な前記矢符G方向とミラー表面11aの垂直線Vとの交差角αについては、図5(B)に示す公称幅750mmの本発明ミラーキャビネット1において、左右のサイドミラー8,9の幅寸法A(例えば、A=200mm)、センターミラー7の幅寸法B(例えば、B=330mm)、閉じた状態のセンターミラー7とサイドミラー8(9)との間隙寸法C(例えば、C=10mm)、サイドミラー8(9)を構成するミラー本体11に設けた透孔部11bの幅寸法D(例えば、D=20mm)、サイドミラー8(9)におけるミラー表面11aの幅二等分位置から透孔部11bの幅二等分位置までの寸法E(例えば、E=80mm)のときに、サイドミラー8(9)のミラー本体11の幅二等分位置から使用者Hの顔までの距離Fを標準的なF=450mmとすると、tanα=E/F=8/45となる。
【0019】
前記面状の発光部13は、図2及び図3に示す如く、前記ミラー本体11の透光部11bへ向かって前方へ発光する上半部13Aと、キャビネット本体6の収納空間6aへ向かって後方へ発光する下半部13Bとからなる。面状の発光部13は、図4(図(A)は上半部13Aの平面断面図、図(B)は下半部13Bの平面断面図)に示す如く、発光板17と、その小口面17aに取着した発光ダイオード(LED)からなる光源18とから成り、ミラー本体11と基板12とで挟圧保持されたスペーサ14で囲まれてミラー本体11と基板12の間で移動しないように配置されている。発光板17は、光透過層Tから構成され、上半部13Aでは、ミラー本体11の透光部11bへ光を照射するように、後方の表面側に光反射層Rが設けられ、前方の表面側を発光面Sとし、逆に、下半部13Bでは、キャビネット本体6の収納空間6aへ向かって光を照射するように、前方の表面側に光反射層Rが設けられ、後方の表面側を発光面Sとしてある。光透過層Tは、アクリル樹脂や強化ガラス等の透明で屈折率が高く比較的硬質な材質で製作される。光反射層Rは、例えば銀鏡膜で被覆したり白色塗料を所定のパターンで光透過層Tに塗着して形成されたもの、または、光透過層Tと別体のプリズムシートを光透過層Tに貼り合わせて形成されたもの等からなる。発光板17は、光源18の光が小口面17aから導入されると、光透過層Tの中を全反射しながら進んでいくうちに、光反射層Rに当たって向きを変え、全反射角より小さくなった成分の光が発光面Sから出て発光することになる。
【0020】
前記面状の発光部13の上半部13Aは、図4(A)に示す如く、前側の発光面Sからミラー本体11の透光部11bへ向かう光の照射量について、前記の如くミラー表面11aに垂直な方向(垂直線Vに沿う方向)へ向かう量に比べてサイドミラー9の中央前方寄りへ向かう水平な矢符G方向の量を多くできるように光反射層Rを形成してある。面状の発光部13の上半部13Aは、発光板17の発光面Sをミラー本体11のミラー表面11aと略平行となるようにしてある。上半部13Aを分担する光源18は、複数個からなるLEDの総ワット数が2.0〜4.0ワット(好ましくは、3.0ワット)程度としてある。前記面状の発光部13の下半部13Bは、図3(A)及び図4(B)に示す如く、後側の発光面Sから出た光が、基板12の開口部12aを通じてキャビネット本体6の収納空間6aへ向かった後に、右側のサイドミラー9とキャビネット本体6の下端仕切壁6bとの間の隙間部6cから本発明ミラーキャビネット1の下方へ出て洗面キャビネット3の奥側を照明するようにしてある。下半部13Bを分担する光源18は、複数個からなるLEDの総ワット数が1.0〜2.0ワット(好ましくは、1.5ワット)程度としてある。なお、キャビネット本体6は、隙間部6cを設けることなく、下端仕切壁6bを透明又は半透明な光透過素材で成形し、洗面キャビネット3の奥側を照明するようにしてもよい。
【0021】
前記面状の発光部13は、発光板17の小口面17aと光源18の発光ダイオード(LED)との間に配置したカラーフイルターで発光面Sから出る光のスペクトル分布を調整して、ミラー本体11の鏡面に色がでないようにすることもある。
【0022】
前記照明装置10は、左右のサイドミラー8,9の各々に備えた面状の発光部13,13と、各面状の発光部13の光源18へ給電する配線(図示略)とを備え、配線に備えたスイッチ(図示略)で左右の光源18をON/OFFするようにしてある。スイッチは、各面状の発光部13の上半部13A及び下半部13Bに備えた光源18を一括又は個別にON/OFFできるように回路構成してある。
【0023】
本実施の形態に係る本発明ミラーキャビネット1は、各サイドミラー8,9におけるセンターミラー側と反対側の縁付近から照明するため、センターミラー7からサイドミラー8,9に股かって三面鏡を使用するときに両ミラー境界を跨ぐように見渡しても、センターミラーとサイドミラーの境界近辺に設けた従来の照明がないため眩しくなく、また、サイドミラー8,9の中央前方寄りへ向かう矢符G方向の照射量がミラー表面11aに垂直な前方の方向へ向かう照射量に比べて多いことから、センターミラー7の手前に位置する使用者Hを眩しくなく十分に照明することが可能となる。
【0024】
前記左右のサイドミラー8,9の各々に備えた発光部13は、面状の発光板17と発光ダイオード(LED)からなる光源18とを組み合わせて構成する以外に、図示は省略したが、配置基板上に発光ダイオード(LED)からなる光源18の複数個を配置して構成すること、又は直管状の蛍光灯と反射板とを組み合わせて構成することも可能である。
【0025】
(第2の実施の形態)
使用者は、第1の実施の形態の図5(B)に示すように、センターミラー7の手前の標準的な位置に立って使用する以外に、ミラーキャビネットに顔を接近又は離反させて使用する態様にすることもある。照明付きミラーキャビネットは、この接近又は離反させた使用の態様のときにも、サイドミラー8,9の照射量が多くなる矢符G方向を使用者の顔へ向けることにより、顔を十分に照明して顔の鏡写りをよくすることができるようになる。そこで、第2の実施の形態に係る本発明ミラーキャビネット21は、例えば、図5(B)に比べて使用者がセンターミラーに接近して図6(A)に示す如く、サイドミラー8,9のミラー本体11の幅二等分位置から使用者Hの顔までの距離FがF=350mmとなるときに、矢符G方向を使用者の顔へ向けるtanα=E/F=8/35とすることができるようにし、また、図5(B)に比べて使用者がミラーキャビネットから離れて図6(B)に示す如く、距離FがF=500mmとなるときに、矢符G方向を使用者の顔へ向けるtanα=E/F=8/50とすることができるようにしてある。
【0026】
本発明ミラーキャビネット21は、センターミラー7に接近又は離反させて位置する使用者Hの各使用の態様に対処できるように、図7に示す如く、サイドミラー8,9の照明装置10に、ミラー表面11aと面状の発光部13の発光面Sとの交差角度β(図7(A)はミラー表面11aと平行な仮想面Qと発光面Sの交差角度βを示している)を調節する角度調節具22を備え、面状の発光部13の照射量が多くなる水平な矢符G方向とミラー表面11aに垂直な垂直線Vとの交差角度αを角度調節具22で調節できるようにしたことに特徴がある。本発明ミラーキャビネット21のこの特徴以外の構成にいては、第1の実施の形態に係る本発明ミラーキャビネット1(図1〜図5)と実質的に同一であるため、ここでの説明を省略する。右側のサイドミラー9に備えた角度調節具22は、図7(A)に示す如く、面状の発光部の一方側(左側)を前後方向へ移動できるタイプと、図7図(B)に示す如く、面状の発光部の両側を個別に前後方向へ移動できるタイプとがある。左側のサイドミラー8は、その詳細図面を省略したが、図7(A)(B)に示す右側のサイドミラー9と左右対称に角度調節具22が構成されることになる。
【0027】
図7(A)に示す角度調節具22は、面状の発光部13を取着した取付板23と、面状の発光部13の発光面Sに隙間を開けて覆うように取付板23に取着した透明な保護板24と、取付板23の右端部を基板12に揺動自在に連結する蝶番25と、取付板23の左端部と基板12との間に設けられて取付板23の左端部とミラー表面11aとの距離を調節する調節機構26と、取付板23の左端部とミラー表面11aとの距離を拡大する方向へ取付板23へ付勢するバネ27とを備えている。調節機構26は、取付板23の挿通孔23aを挿通する雄ネジ部26aと、基板12に連結固定した雌ネジ部26bとからなるネジ機構となっており、雌ネジ部26bに螺合させた雄ネジ部26aを進退させることで、ミラー表面11aと面状の発光部13の発光面Sとの交差角度βを調節できるようにしてある。調節機構26は、この交差角度βを調節することで、面状の発光部13の照射量が増量する矢符G方向とミラー表面11aに垂直な垂直線Vとの交差角度αも調節することになる。
【0028】
図7(B)に示す角度調節具22は、面状の発光部13を取着した取付板23と、面状の発光部13の発光面Sに隙間を開けて覆うようにして取付板23に取着した透明な保護板24と、取付板23の左右端部の各々と基板12との間に設けられて左右端部とミラー表面11aとの距離を個別に調節する調節機構28の二組とを備えている。各組の調節機構28は、基板12に連結固定した雄ネジ部28aと、取付板23の挿通孔23aに回転自在に取着して取付板23と一体化すると共に雄ネジ部28aを螺着させた雌ネジ部28bとからなるネジ機構となっており、雌ネジ部28bを正逆回転させてミラー表面11aと面状の発光部13の発光面Sとの交差角度と、面状の発光部13の照射量が増量する矢符G方向とミラー表面11aに垂直な垂直線Vとの交差角度αとを調節できるようにしてある。
【0029】
前記角度調節具22の調節は、基板12に設けた開口部12bを介して雄ネジ部26aの頭部(図7(A)のタイプ)若しく雌ネジ部28b(図7(B)のタイプ)を工具を用いる等して捩じる手動の操作で行うか、図示は省略したが、雄ネジ部26a若しく雌ネジ部28bに連結したサーボモータ等からなるアクチュエータを手動で遠隔操作して雄ネジ部25a若しく雌ネジ部28bを回動させて行うようにする。
【0030】
本発明ミラーキャビネット21は、第1の実施の形態に係る本発明ミラーキャビネット1と同様に、各サイドミラー8,9におけるセンターミラー側と反対側の縁付近から照明するため、センターミラー7からサイドミラー8,9に股かって見渡しても、センターミラーとサイドミラーの境界近辺に設けた従来の照明がないため眩しくなく、また、サイドミラー8,9の中央前方寄りへ向かう矢符G方向の照射量がミラー表面11aに垂直な前方の方向へ向かう照射量に比べて多いことから、センターミラー7の手前に位置する使用者Hを眩しくなく十分に照明することが可能となる。本発明ミラーキャビネット21は、センターミラー7の手前に位置する使用者の使用の態様(例えば、センターミラーに顔を接近させる態様(図6(A)参照)、又はセンターミラーから顔を離反させる態様(図6(B)参照))に応じて、面状の発光部13の照射量が多くなる水平な矢符G方向とミラー表面11aに垂直な垂直線Vとの交差角度αを角度調節具22で面状の発光部13の照射角度αを調節することで、使用者Hの注目箇所(例えば、顔)を十分に照らすことが可能となる。
【0031】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る本発明ミラーキャビネット31は、図8に示す如く、使用者(図示略)の位置に応じて、面状の発光部13の照射量が多くなる水平な矢符G方向とミラー表面11aに垂直な垂直線Vとの交差角度αを角度調節具22で自動調節して、使用者へ確実に照射できるようしたものであり、角度調節具22で自動調節する以外の構成については、手動で操作する角度調節具22を備えた図7に示す第2の実施の形態に係る本発明ミラーキャビネット21と実質的に同一であるため、ここでの説明を省略する。
【0032】
右側のサイドミラー9の照明装置10は、角度調節具22に連結した角度調節用アクチュエータ32と、センターミラー7手前に位置する使用者(図2,図5参照)を検出する使用者検出装置33と、発光部13の照射角度(ミラー表面11aに垂直な垂直線Vと矢符G方向との交差角度α)を検出する照射角度検出装置34と、発光部13の照射方向(前記矢符G方向)を使用者検出装置33の検出した使用者位置へ向くように角度調節用アクチュエータ32を制御する制御回路35とを備えている。角度調節用アクチュエータ32は、角度調節具22の雄ネジ部26aの頭部(図7(A)のタイプ)若しく雌ネジ部28b(図7(B)のタイプ)を回動させるサーボモータ等で構成されている。使用者検出装置33は、サイドミラー9のミラー本体11と基板12との間に固定配置され、ミラー本体11の銀膜11cの無い透光部11dを介して使用者を臨み、使用者検出装置33の位置から使用者に至る距離及び方向を検出するようにしてあり、ドップラー式センサー,マイクロ波センサー,ミリ波センサー等の電波式センサーを採用することができる。照射角度検出装置34は、角度調節具22の雄ネジ部26aの頭部(図7(A)のタイプ)若しく雌ネジ部28b(図7(B)のタイプ)の回転角度を検出する回転角度検出装置等からなる。制御回路35は、使用者検出装置33と面状の発光部13の位置関係と、使用者検出装置33の位置から使用者に至る距離及び方向の検出データとから、面状の発光部13の照射方向(前記矢符G方向)を使用者位置へ向かせるに必要な交差角度αの目標値を求め、この目標値と照射角度検出装置34で求めた調節前の交差角度αとの偏差を無くすように角度調節用アクチュエータ32へ指令信号を出力するように回路構成してある。指令信号を受けた角度調節用アクチュエータ32は、面状の発光部13の照射方向(前記矢符G方向)を使用者位置へ向くように面状の発光部13の角度を調節する。なお、左側のサイドミラー8の照明装置は、その詳細図面を省略したが、図8に示す右側のサイドミラー9の照明装置10と左右対称に構成されることになる。
【0033】
本発明ミラーキャビネット31は、面状の発光部13の照射方向(矢符G方向)を使用者位置に応じて自動的に調節して、使用者へ確実に照射することができる。なお、本発明ミラーキャビネット31は、使用者の顔の位置を検出するタイプの使用者検出装置33を採用すると、面状の発光部13の照射方向(前記矢符G方向)を使用者Hの顔に向けるようにすることができ、化粧等で注目すべき顔を十分に照明して顔の鏡写りをよくすることが可能となる。
【0034】
(その他の実施の形態)
前記第1の実施の形態に係る本発明ミラーキャビネット1は、図1に示す如く、センターミラー7の上方縁付近7aからセンターミラー手前側へ向かって照射する照明装置40を備えている。センターミラー7は、図9(A)に示す如く、上側の縁付近7aに対応するミラー本体41の箇所に銀膜の無い透光部41bが横長に形成されると共に、ミラー本体41の裏面側に配置した面状の発光部43から透光部41bを通じてミラー表面41aへ向かって照射するようにしてある。照明装置40を構成する面状の発光部43は、その照射量についてミラー表面41aに垂直な前方の方向(ミラー表面41aに垂直な垂直線Wに沿った前向きの方向)へ向かう量に比べてセンターミラー7の中央前方寄りへ向かう(すなわち、ミラー表面41aの上下二等分位置から前方へ延びる垂直線Wa(図1参照)に近づくように向かう)斜め下方となる矢符K方向の量を50〜100%程度増量するようにして、センターミラー7の手前に位置する使用者を十分に照明できるようにしてある。
【0035】
前記面状の発光部43は、前記面状の発光部13と同様に、発光板17と、その小口面17aに取着した発光ダイオード(LED)からなる光源18とから成り、ミラー本体41と基板42とで挟圧保持されたスペーサ14で囲まれてミラー本体41と基板42の間で移動しないように配置されている。発光板17は、光透過層Tから構成され、ミラー本体41の透光部41bへ光を照射するように、後方の表面側に光反射層Rが設けられ、前方の表面側を発光面Sとしてある。光透過層T及び光反射層Rは、前記第1の実施の形態と実質的に同一であるので、ここでの説明を省略する。
【0036】
また、前記面状の発光部43は、図9(B)に示す如く、角度調節具22を備えることで上端側を揺動中心として下端側を前後方向へ移動できるタイプとすることも可能である。角度調節具22は、図7(A)に示すものと同様に、面状の発光部43を取着した取付板23と、面状の発光部43の発光面Sに隙間を開けて覆うように取付板23に取着した透明な保護板24と、取付板23の上端部を基板42に揺動自在に連結する蝶番25と、取付板23の下端部と基板42との間に設けられて取付板23の下端部とミラー表面41aとの距離を調節する調節ネジ機構26と、取付板23の左端部とミラー表面41aとの距離を拡大する方向へ取付板23へ付勢するバネ27とを備えている。調節ネジ機構26は、取付板23の挿通孔23aを挿通する雄ネジ部26aと、基板42に連結固定した雌ネジ部26bとを備え、雌ネジ部26bに螺合させた雄ネジ部26aを進退させることで、ミラー表面41aと面状の発光部43の発光面Sとの交差角度を調節できるようにしてある。なお、角度調節具22は、図7図(B)に示すものと同様に、面状の発光部43の上下両側を個別に前後方向へ移動できるタイプを採用することも可能である。
【0037】
前記照明装置40は、使用者(図示略)の位置に応じて、面状の発光部43の照射方向(前記矢符K方向)を角度調節具22で自動調節(すなわち、矢符K方向とミラー表面41aに垂直な垂直線Wとの交差角度δを自動調節)して、使用者へ確実に照射できるようにすることもある。この場合、照明装置40は、図示は省略したが、図8に示す第3の実施の形態と同様に、角度調節具22に連結した角度調節用アクチュエータ32と、センターミラー7手前の使用者を検出する使用者検出装置33と、発光部43の照射角度(ミラー表面41aに垂直な垂直線Wと矢符K方向との交差角度δ)を検出する照射角度検出装置34と、面状の発光部43の照射方向(前記矢符K方向)を使用者検出装置33の検出した使用者位置へ向くように角度調節用アクチュエータ32を制御する制御回路35とを備えることになる。
【符号の説明】
【0038】
1…本発明ミラーキャビネット、6…キャビネット本体、7…センターミラー、8,9…サイドミラー、8a,9a…縁近辺、10…照明装置、11…ミラー本体、11a…ミラー表面、11b…透孔部、11c…銀膜、12…基板、13…面状発光部、14…スペーサ、15…結合具、17…発光板、17a…小口面、18…光源、22…角度調節具、23…取付板、23a…挿通孔、24…保護板、25…蝶番、26,28…調節機構、32…角度調節用アクチュエータ、33…使用者検出装置、34…照射角度検出装置、35…制御回路、G…サイドミラー9の中央前方寄りへ向かう方向、H…使用者、K…センターミラー7の中央前方寄りへ向かう方向、V…ミラー表面11aの垂直線、W…ミラー表面41aの垂直線、α…ミラー表面11aの垂直線Vと矢符G方向の交差角度、δ…ミラー表面41aの垂直線Wと矢符K方向の交差角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターミラーの両側にサイドミラーがセンターミラー側の端部を中心として水平回動自在に設けられて形成され、サイドミラーの各々に、ミラー本体に銀膜の無い透光部が形成されると共に、ミラー本体の裏面側に透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する照明装置が配設された照明付きミラーキャビネットにおいて、
前記各サイドミラーの透光部は、センターミラー側と反対側の縁付近に形成され、
前記照明装置は、透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する発光部と、ミラー表面と発光部の発光面との交差角度を調節する角度調節具とを備え、角度調節具で発光部の角度を調節することで、発光部の照射量についてミラー表面に垂直な前方の方向へ向かう量に比べてサイドミラーの中央前方寄りへ向かう量を多くなるように調節できるようにした
ことを特徴とする照明付きミラーキャビネット。
【請求項2】
前記照明装置が、前記角度調節具に設けた角度調節用アクチュエータと、サイドミラー手前に位置する使用者を検出する検出装置と、発光部の照射方向が検出装置の検出した使用者へ向かうように角度調節用アクチュエータを制御する制御回路とを備えた請求項1記載の照明付きミラーキャビネット。
【請求項3】
センターミラーの両側にサイドミラーがセンターミラー側の端部を中心として水平回動自在に設けられて形成され、サイドミラーの各々に、ミラー本体に銀膜の無い透光部が形成されると共に、ミラー本体の裏面側に透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する照明装置が配設された照明付きミラーキャビネットにおいて、
前記各サイドミラーの透光部は、センターミラー側と反対側の縁付近に形成され、
前記照明装置は、透光部を通じてミラー表面へ向かって照射する発光部を備え、発光部の照射量についてミラー表面に垂直な前方の方向へ向かう量に比べてサイドミラーの中央前方寄りへ向かう量を多くした
ことを特徴とする照明付きミラーキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−15892(P2011−15892A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163842(P2009−163842)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】