説明

照明器具の吊下装置

【課題】建物等の揺れによる照明器具の揺れを有効に抑制することができる照明器具の吊下装置を提供する。
【解決手段】天井部Cに固定される支持部材12に対し、吊下コードWを介して照明器具が吊り下げられる変位体13を水平方向へ変位可能に支持させた。さらに、支持部材12と変位体13との間には、変位体13に対して変位に抗する方向の付勢力を付与する円錐コイルバネ15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照明器具を天井部に吊り下げる天井部の吊下装置に関するものであって、特に、地震や強風等による建物の揺れや、波浪等による船舶の揺れ等による揺れを抑制するようにした照明器具の吊下装置に関するものである。この明細書において、「天井部」とは、照明器具が吊り下げられる部分を意味し、建物内の部屋、廊下、ホール等の天井部のみならず、船舶内の部屋、廊下、ホール、デッキ等を含む。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば特許文献1に開示されているような構成がある。この構成は、図8(a)に示すように、建物の部屋等の天井部Cから吊り下げられる照明器具50の吊下コードWの途中にバランサー51を設けたものである。バランサー51は、図8(b)に示すように、その慣性力により地震時における照明器具50の揺れを減衰させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−330606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、吊下コードWが天井部Cに直接固定されているため、地震による建物の横揺れが吊下コードWを介して照明器具50に直接伝達される。このため、バランサー51の固有振動数を外れた周波数の横揺れによって照明器具50が大きく揺れることがあった。そして、照明器具50が大きく揺れた場合は、照明器具が部屋の壁と衝突したりして、照明器具や壁が破損するおそれがあった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、建物等の揺れによる照明器具の揺れを有効に抑制することができる照明器具の吊下装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明の照明器具の吊下装置は、天井部に固定される円筒状の支持部材と、吊り下げコードを介して照明器具を吊り下げた状態で前記支持部材の上端に水平方向へ変位可能に支持された変位体と、前記支持部材と変位体との間に設けられ、同変位体に対して変位に抗する方向への付勢力を付与する付勢部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
従って、この発明においては、建物等の揺れにより部屋、廊下、ホール等の天井部が横揺れすると、支持部材は横揺れするが、支持部材に支持されている変位体は、付勢部材の付勢力に抗して自身の慣性によりほぼ定位置を保持する。従って、吊下コードを介して変位体に吊り下げられている照明器具も、ほぼ定位置を保持する。このため、照明器具は殆ど揺れず、照明器具や部屋の壁等の破損を防止できる。
【0008】
前記の構成において、前記変位体は、前記支持部材に対して全水平方向へ変位可能であるとよい。
前記の構成において、前記変位体は、平面状の下面を有する構成であるとよい。
【0009】
前記の構成において、前記変位体は、球面状の凸状下面を有する構成であるとよい。
前記の構成において、前記付勢部材は円錐コイルバネであり、その大径側が前記基部又は支持部材に取着され、その小径側が前記変位体に取着されているとよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明の照明器具の吊下装置によれば、建物等の揺れによる照明器具の揺れを有効に抑制することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施の形態の照明器具の吊下装置を示す正面図。
【図2】吊下装置を示す分解斜視図。
【図3】吊下装置を示す断面図。
【図4】吊下装置の作動状態を示す断面図。
【図5】第2実施形態の照明器具の吊下装置を示す分解斜視図。
【図6】吊下装置を示す断面図。
【図7】吊下装置の作動状態を示す断面図。
【図8】(a)は従来の吊下装置を示す正面図、(b)は吊下装置の作動状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
次に、この発明を具体化した照明器具の吊下装置の第1実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0013】
図1に示すように、この実施形態の照明器具の吊下装置10は、建物や船舶等の部屋、廊下、ホール等における天井部Cに設置され、吊下コードWを介して照明器具Lを支持する。図2及び図3に示すように、吊下装置10は、天井部Cの上面に固定された基板11を備え、この基板11の中央には、吊下コードWを通すための開口部11aが形成されている。
【0014】
基板11上には、全体として円筒状をなす合成樹脂製の支持部材12が固定され、この支持部材12の上側開口の周縁部上には、円板状をなす合成樹脂製の変位体13が支持されている。変位体13は、図3に示すように、実線で示す初期位置から全水平方向に変位可能となっている。この変位体13の中央部には、下方へ向かって凸部14が形成されている。この凸部14の部分には上下方向に孔14aが貫通され、この孔14aには吊下コードWが挿通状態で固定されている。
【0015】
基板11上における支持部材12の内側には、付勢部材としての円錐コイルバネ15が配置されている。円錐コイルバネ15の下端大径部は、支持部材12の内側下部に嵌合され、上側小径部は、変位体13の凸部14に外嵌されている。
【0016】
次に、上記のように構成された第1実施形態の照明器具の吊下装置の作用を説明する。
建物等の揺れにより天井部Cが横揺れすると、図4に示すように、支持部材12は天井部Cとともに横揺れするが、支持部材12上に支持されている変位体13は、支持部材12に対して水平方向の初期位置から横揺れ方向へ相対変位するものの、円錐コイルバネ15の付勢力に抗して自身の慣性によりほぼ定位置を保持する。従って、変位体13に吊下コードWを介して吊り下げられている照明器具Lも、定位置を保持する。このため、天井部Cが横揺れしても、変位体13と照明器具Lとは横揺れ方向へ変位することはほとんどなく、照明器具Lはあまり揺れず、照明器具や部屋等の壁の損傷が未然に防止される。
【0017】
次に、長周期振動により天井部Cが大きな振幅でゆっくり横揺れする場合は、変位体13は支持部材12との間の摩擦抵抗により、円錐コイルバネ15の付勢力に抗しながら支持部材12の揺れから遅れて横揺れする。従って、支持部材12の横揺れは変位体13に減衰されて伝達されるとともに、支持部材12の横揺れ方向が反転した場合は、変位体13の横揺れが打ち消される。このため、吊下コードWの横揺れが抑制されて照明器具Lはあまり揺れない。
【0018】
なお、吊下コードW及び照明器具Lの横揺れを有効に打ち消すためには、照明器具Lの重量等に応じて円錐コイルバネ15の鉛直方向のバネ力を調整し、支持部材12と変位体13との間の摩擦抵抗を適正な大きさに設定すればよい。すなわち、円錐コイルバネ15の鉛直方向の上方に向かうバネ力を強くすれば、支持部材12と変位体13との間の摩擦抵抗が小さくなり、逆に円錐コイルバネ15の鉛直方向の上方に向かうバネ力を弱くすれば、支持部材12と変位体13との間の摩擦抵抗が大きくなる。
【0019】
以上のように、建物等が小刻みに揺れたり、大きく揺れたりするどちらの場合も、照明器具Lの揺れを抑制することができる。
以下詳述したこの実施形態は、以下の効果を有する。
【0020】
(1) この実施形態の照明器具の吊下装置においては、天井部Cに固定される支持部材12に、吊下コードWを介して照明器具Lが吊り下げられる変位体13を水平方向へ変位可能に支持させた。さらに、支持部材12と変位体13との間には、変位体13に対して変位に抗する方向の付勢力を付与する円錐コイルバネ15を設けた。従って、天井部Cが小刻みに揺れるときには、支持部材12に対して変位体13が慣性によりほぼ定位置を保持し、天井部Cが大きく揺れるときには、支持部材12に対して変位体13が遅れて揺れようとしてエネルギーが減衰されたり、揺れが打ち消されたりする。この結果、天井部Cの横揺れによる照明器具Lの揺れを有効に抑制することができる。
【0021】
(2) 大径側を支持部材12に取着し、小径側を変位体13に取着させた円錐コイルバネ15により、全方向の横揺れに対しても変位体13が変位できるようにした。従って、建物等の横揺れ方向に拘らず、照明器具Lの揺れを有効に抑制できる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した第2実施形態について、図5〜図7を参照して説明する。尚、第1実施形態と同じ構成については、符号を同じにしてその説明を省略し、第1実施形態と異なる構成と作用を中心に説明する。
【0023】
図5及び図6に示すように、この実施形態の変位体13は、球面状の凸状下面13bを有する鉢状に形成され、支持部材12の上側開口の周縁部上に支持されている。そして、変位体13は、図6に二点鎖線で示すように、凸状下面13bに従う円軌道に沿って全ての方向に変位可能となっている。
【0024】
次に、上記のように構成された第2実施形態の照明器具の吊下装置において、変位体13は、変位量が大きくなるほどその傾き角度が大きくなるため、変位に対する抵抗が強くなる。従って、この実施形態は、前記第1実施形態の(1),(2)の効果を有するだけではなく、支持部材12や変位体13の径が小さくても、大きな揺れに対応できる。
【0025】
(他の実施形態)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。すなわち、前記第1又は第2実施形態で、円錐コイルバネに代えて方絞りコイルバネを用い、その大径側を支持部材12に取着させ、絞り側を変位体13に取着させた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
C…天井部、L…照明器具、W…吊下コード、10…吊下装置、12…支持部材、13…変位体、13b…凸状下面、15…付勢部材としての円錐コイルバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井部に固定される円筒状の支持部材と、
吊り下げコードを介して照明器具を吊り下げた状態で前記支持部材の上端に水平方向へ変位可能に支持された変位体と、
前記支持部材と変位体との間に設けられ、同変位体に対して変位に抗する方向への付勢力を付与する付勢部材とを備えたことを特徴とする照明器具の吊下装置。
【請求項2】
前記変位体は、前記支持部材に対して全水平方向へ変位可能であることを特徴とする請求項1に記載の照明器具の吊下装置。
【請求項3】
前記変位体は、平面状の下面を有する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明器具の吊下装置。
【請求項4】
前記変位体は、球面状の凸状下面を有する構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の照明器具の吊下装置。
【請求項5】
前記付勢部材は円錐コイルバネであり、その大径側が前記支持部材に取着され、その小径側が前記変位体に取着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の照明器具の吊下装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−41751(P2013−41751A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178011(P2011−178011)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000224994)特許機器株式会社 (59)
【Fターム(参考)】