説明

照明器具

【課題】照明器具において、変色原因のガスを遮蔽することで反射鏡を変色し難くする。
【解決手段】照明器具1は、光を放出するための開口部31を有した筐体3と、筐体3に収容されるランプ2と、ランプ2を支持する樹脂性のランプベース22と、筐体3の内部に収容されてランプ2からの光を反射する反射鏡4と、ランプベース22を包囲するカバー5と、を備える。カバー5は、ランプ2からの熱や光によってランプベース22で発生するガスが反射鏡4に触れないように作用するので、反射鏡4の変色を抑制することができ、器具外観及び器具効率を長期間維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設、店舗又は住宅などで使用され、光源からの光を反射する反射鏡を備える照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、反射鏡を備える照明器具の光源を支持するランプベースの材料には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)や、ポリフェニレンオキサイド(PPO)等の樹脂が用いられる。これら樹脂には、光源の寿命までランプベースの劣化を防止して強度を保持するために、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤が入っている。
【0003】
また、光源を器具本体に保持するソケットの材料には、安価なポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)等の汎用樹脂やエンジニアリング樹脂が用いられる。これら樹脂にも、10〜15年である照明器具の寿命までソケットの劣化を防止して強度を保持すると共にソケットの性能を維持するために、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤が入っている。
【0004】
ところで、発光している照明器具の光源は、その多くの箇所が60℃以上の高温となり、紫外線や可視光線などの光と熱を大量に照射する。そのため、ランプベースやソケットの樹脂や添加剤は、光源からの熱や光によって劣化してガスを発生させる。この発生したガスは、照明器具の反射鏡に接触し、その内部へと侵入する。反射鏡は、その内部に銀から成る反射膜を有しており、侵入したガスが熱や光と組み合わさって反射膜と反応する。反射鏡は、反射膜がガスと反応して腐食することによって変色する。
【0005】
そこで、基材上に設けられ、反射膜と、金属の酸化物を有する酸化物膜と、が順に積層された反射鏡を備えた照明器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この照明器具は、反射鏡の変色原因であるガスを、反射鏡に接触しないように酸化物膜で遮蔽する。しかし、酸化物膜は、ポーラスになり易いので、ガスの遮蔽が不十分となる。そのため、反射鏡は、耐久性が低くなるので、照明器具に使用するような高温で大量の光が照射される苛酷な環境では変色してしまい、高い反射率を維持することができない。
【0006】
また、基材上に設けられ、一酸化ケイ素膜と酸化アルミニウム膜から成る中間層と、反射膜と、アルミニウム膜から成る保護層と、が順に積層された反射鏡を備えた照明器具が知られている(例えば、特許文献2参照)。この照明器具は、反射鏡の変色原因であるガスを、反射鏡に接触しないように中間層のアルミニウム膜と、保護層のアルミニウム膜で遮蔽する。しかし、中間層及び保護層のアルミニウム膜は、照明器具が使用されるような苛酷な環境では、ガスの遮蔽が不十分となり、ガスの腐食による反射鏡の変色を防止することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−98856号公報
【特許文献2】特開2003−329818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、変色原因のガスを遮蔽することで、反射鏡を変色し難くすることができる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、光を放出するための開口部を有した筐体と、前記筐体に収容される光源と、前記光源を支持する樹脂性のランプベースと、前記筐体の内部に収容されて光源からの光を反射する銀系反射鏡と、を備えた照明器具において、前記ランプベースは、該ランプベースから発生するガスを前記銀系反射鏡に触れないように遮蔽するカバーで包囲されているものである。
【0010】
請求項2の発明は、光を放出するための開口部を有した筐体と、前記筐体に収容される光源と、前記光源を支持する樹脂性のランプベースと、前記筐体の内部に収容されて光源からの光を反射する銀系反射鏡と、を備えた照明器具において、前記ランプベースは、該ランプベースから発生するガスを前記銀系反射鏡に触れないように遮蔽する金属系被膜で覆われているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、光源からの熱や光によってランプベースで発生するガスが銀系反射鏡に触れないようになるので、銀系反射鏡の変色を抑制することができ、器具外観及び器具効率を長期間維持することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、請求項1と同様の作用効果が、器具サイズを大きくすることなく得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明器具の斜視図。
【図2】同照明器具の断面図。
【図3】同照明器具のカバーの斜視図。
【図4】同照明器具の筐体及び反射鏡の構成を示す斜視図。
【図5】同照明器具の変形例を示す断面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る照明器具の断面図。
【図7】光源の設置位置が異なる同照明器具の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る照明器具について、図1乃至図4を参照して説明する。図1及び図2に示されるように、照明器具1は、光源であるランプ2と、ランプ2を収容する筐体3と、筐体3の内面にあってランプ2からの光を反射する銀系の反射鏡4と、ランプ2のランプベース22及び後述のソケット61を覆うカバー5と、これら各部材を保持する器具本体6とを備える。ランプ2は、光を照射する発光部21と、ランプベース22に設けられる給電用口金23とを有する。樹脂性のランプベース22は、発光部21を支持する。筐体3は、ランプ2からの光を放出する開口部31と、器具を固定するためのバネ部材32とを有する。カバー5は、ランプベース22やソケット61の材質から発生するガスが反射鏡4に接触することを防止するために備えられる。その詳細は後述する。
【0015】
器具本体6は、ランプ2の給電用口金23が螺合され、ランプ2に給電するためのソケット61と、筐体3を取り付けるための取付部62と、ランプ2を点灯させるための安定器63と、これら各部材をねじ等を用いて保持する天板64とを有する。照明器具1は、天井7に形成された孔71に挿入され、バネ部材32が弾性力で孔71の周縁を挟み込むことで天井7に固定される。
【0016】
ランプ2は、直管型、電球型、環型又はコンパクト型の蛍光灯、高輝度放電ランプ(HID)等が挙げられる。ランプベース22には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリフェニレンオキサイド(PPO)等の樹脂が用いられる。ソケット61には、樹脂や陶磁器が用いられ、特に、耐久性、成形性、製造コスト等の観点から、ポリプロピレン(PP)やポリブチレンテレフタレート(PBT)といった汎用樹脂やエンジニアリング樹脂が用いられる。また、ランプベース22及びソケット61の樹脂材料には、紫外線吸収剤、酸化防止剤などといった劣化防止のための添加剤が入っている。これらランプベース22及びソケット61の樹脂や添加剤は、発光するランプ2からの熱や光によって劣化し、反射鏡4の変色原因となるガスを発生させる。
【0017】
カバー5は、図3に示されるように、ランプベース22及びソケット61の周囲を包囲する筒状部51と、その下面開口に着脱自在に装着されるプレート部52とを有する。筒状部51は、その上端にソケット61が貫通するソケット貫通孔51aを、下端にランプ2が挿入されるランプ挿入孔51bを有し、上端が天板64に密着するように固定される。筒状部51の天板64への固定は、ランプベース22から発生するガスが漏れ出すような隙間が筒状部51と天板64の間に生じないようにねじ等を用いてなされる。また、筒状部51及びソケット61が天板64に固定された状態において、ソケット貫通孔51aに貫通されるソケット61とソケット貫通孔51aとの間に隙間が生じないように構成されている。また、ランプ挿入孔51bは、ランプ2の給電用口金23をソケット61に螺合させて取り付けるとき、ランプ2と接触しない形状に形成される。
【0018】
プレート部52は、ランプ2がソケット61に取り付けられた後に筒状部51の下端に取り付けられる。プレート部52は、ランプ2の発光部21を挿通させる孔52aを有しており、プレート部52が筒状部51に取り付けられた状態において、孔52aと発光部21との間に隙間が生じないように構成されている。これにより、ランプベース22やソケット61で発生するガスがカバー5の内部から外部に漏れ出さないように構成することができる。なお、発光部21とカバー5のランプ挿入孔51bとの隙間を小さく構成することができて、漏れ出すガスの量を少なくできる場合は、製造コスト削減のためにプレート部52を省くことも可能である。
【0019】
カバー5の材料は、ガスが透過し難く、ランプ2からの熱や光によってカバー5自体から発生するガスの量が少ない陶磁器、ガラス又は金属などが挙げられる。また、陶磁器、金属といった非透光性の材料から成るカバー5は、ランプ2からの紫外線などの光を遮断してランプベース22やソケット61の劣化を防ぐので、ランプベース22で発生するガスの量を減少させる。
【0020】
反射鏡4は、図4に示されるように、筐体3の平滑性を向上させるアンダーコート層41と、光を反射する反射膜42と、反射膜42を保護するトップコート層43とが筐体3上に順に積層されて形成される。筐体3は、ランプ2からの熱や光によって発生するガスの量が少なく、反射鏡4との密着性がよい樹脂、金属、ガラス又はセラミックから成る。筐体3が樹脂材料で構成される場合、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)等が用いられる。このとき、筐体3は射出成形、圧縮成形、真空成形、圧空成形などを用いて形成される。
【0021】
筐体3が金属材料で構成される場合、Al基合金、Mg基合金、Fe基合金などが用いられる。このとき、筐体3はスピニング加工、プレス加工、ダイキャスト、チクソモールディング等を用いて形成される。また、筐体3がガラス材料で構成される場合、プレス加工やブロー加工などによって形成される。筐体3がセラミック材料で構成される場合、焼成などによって形成される。
【0022】
アンダーコート層41及びトップコート層43の材料は、アクリルメラミン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂(熱硬化性又は常温硬化性)、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコンアルキッド樹脂又は無機材料(ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)、SIO、スピネル)等が用いられる。アンダーコート層41及びトップコート層43は、スプレー塗装、ディッピング法などを用いて形成される。
【0023】
反射膜42は、銀又は銀マグネシウム、銀パラジウム、銀白金、銀ロジウム等の銀合金を材料として所定の光学特性が得られるように形成される。反射膜42は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、ビーム法などを用いて形成される。また、反射膜42は、所定の光学特性が得られる厚みであればよく、100〜300nmが好ましく、150〜250nmがより好ましい。反射膜42は、厚みが100nm未満の場合に充分な反射特性が得られず、厚みが300nmを越える場合に表面が白濁して反射鏡4の反射率が低下する。
【0024】
上記のように構成された照明器具1においては、ランプ2からの熱や光によってランプベース22で発生するガスが反射鏡4に触れないようになるので、反射鏡4の変色を抑制することができ、器具外観及び器具効率を長期間維持することができる。また、カバー5は、ランプベース22だけでなくソケット61も包囲しているので、ランプベース22で発生するガスも反射鏡4に触れないようになり、反射鏡4の変色をより抑制することができる。
【0025】
図5は、本実施形態の変形例に係る照明器具1を示す。この変形例の照明器具1は、垂直点灯(BU)となるようにランプ2を保持する筐体3に代えて、水平点灯(BH)となるようにランプ2を保持する筐体3を備えるものである。また、カバー5に包囲されるランプベース22及びソケット61は、筐体3の外に配置されるように構成されている。筐体3外にあるランプベース22とソケット61で発生するガスは、ランプベース22とソケット61が筐体3内にあるときに比べて、筐体3内の反射鏡4まで到達し難くなるので、反射鏡4の変色をより抑制することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態に係る照明器具1を示す。上記第1の実施形態では、カバー5がランプベース22を包囲する構成のものを示したが、第2の実施形態では、カバー5に代えて金属系被膜8でランプベース22の表面を覆う構成のものとなっている。この金属系被膜8の材料は、Au、Al、Ag、Cu及びその合金などが挙げられ、特に、変色し難く、ランプベース22の樹脂材料と高い密着性を確保することができるAlが望ましい。なお、図7に示されるように、照明器具1は、ランプベース22の表面が金属系被膜8で覆われていれば、筐体3が垂直点灯(BU)となるようにランプ2を保持する筐体3に代えて、水平点灯(BH)となるようにランプ2を保持する筐体3を備えるものであってもよい。
【0027】
上記のように構成された照明器具1においては、器具サイズを大きくすることなく、上記第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、金属系被膜8は、ランプ2がソケット61に取り付けられたときに導通してショートしない範囲でソケット61の表面を覆うことで、ソケット61で発生するガスが反射鏡4に触れないようになるので、反射鏡4の変色をより抑制することができる。
【0028】
次に、本発明に係る照明器具1の実施例1乃至実施例3と比較例1について説明する。
【0029】
(実施例1)
PBT樹脂から成る筐体3上に、アクリルメラミン樹脂をスプレー塗装した後、焼付乾燥を180℃で30分間行い、厚さ10μmのアンダーコート層41を形成する。このアンダーコート層41上に、厚さ0.2μmの反射膜42を形成する。この反射膜42上に、アクリルメラミン樹脂をスプレー塗装した後、焼付乾燥を180℃で30分間行い、厚さ10μmのトップコート層43を形成し、反射鏡4を得た。
【0030】
器具本体6に、反射鏡4が設けられた筐体3と、水平点灯(BH)で保持されるランプ2(商品名:ツイン3(FHT32EXN)、パナソニック電光株式会社製)と、ランプベース22を包囲するカバー5とを取り付け、照明器具1を得た。
【0031】
(実施例2)
カバー5に代えて、厚さ0.2μmのアルミ蒸着膜被膜から成る金属系被膜8でランプベース22を覆う以外は、実施例1と同様にして照明器具1を得た。
【0032】
(実施例3)
厚さ0.1μmのクロム膜被膜から成る金属系被膜8でランプベース22を覆う以外は、実施例2と同様にして照明器具1を得た。
【0033】
(比較例1)
カバー5を取り付けない以外は、実施例1と同様にして照明器具を得た。
【0034】
<耐久性試験>
上記のように作製した実施例1乃至実施例3と比較例1に係る照明器具を、25〜40℃の室内で4000時間及び8000時間点灯させ、各時間が経過する毎に各照明器具の反射鏡4の外観観察を行った。反射鏡4の表面に著しい変色及び剥離が無い場合を○、反射鏡4の表面が黒色や褐色に変色している場合、又は剥離が発生している場合を×として判定を行い、その判定結果を下記の表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
各反射鏡4の外観観察の結果から明らかなように、実施例1乃至実施例3は、比較例1に比べて、反射鏡4の外観変化が発生するまでの時間が長い。従って、本発明に係る照明器具1は、反射鏡4が変色し難くなり、高い反射率を長く維持することができる。
【0037】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、ランプベースとソケットを包囲して器具本体に固定されるカバーを備えるものを示したが、ランプベースのみを包囲してソケットに固定されるカバーを備えるものであっても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1 照明器具
2 ランプ(光源)
22 ランプベース
3 筐体
31 開口部
4 反射鏡(銀系反射鏡)
5 カバー
8 金属系被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放出するための開口部を有した筐体と、前記筐体に収容される光源と、前記光源を支持する樹脂性のランプベースと、前記筐体の内部に収容されて光源からの光を反射する銀系反射鏡と、を備えた照明器具において、
前記ランプベースは、該ランプベースから発生するガスを前記銀系反射鏡に触れないように遮蔽するカバーで包囲されていることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
光を放出するための開口部を有した筐体と、前記筐体に収容される光源と、前記光源を支持する樹脂性のランプベースと、前記筐体の内部に収容されて光源からの光を反射する銀系反射鏡と、を備えた照明器具において、
前記ランプベースは、該ランプベースから発生するガスを前記銀系反射鏡に触れないように遮蔽する金属系被膜で覆われていることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−154815(P2011−154815A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14407(P2010−14407)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】