説明

照明器具

【課題】投射光量はほぼ一定のままで照明対象への投射光のビーム角を可変制御できる照明器具を提供することである。
【解決手段】LED発光素子を有し器具本体11に収納された光源の前面に液晶フィルム素子13を設け、液晶フィルム素子13は、内面に透明導電膜をコートした2枚の透光性フィルムで液晶を含む高分子層を挟み込んで形成され、2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧により光の透過率はほぼ一定で拡散度が変化し、液晶フィルム素子の2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧をスイッチ14で制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば店舗の商品の照明用に使用される照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗などでは、各種商品の照明にスポット光源が多数使用されている。このスポット光源としては、ダイクロイックミラー付ハロゲンランプ、ダイクロイックミラーと組み合わせたハロゲンランプが主であるが、一部セラミックメタハラ、LED(発光ダイオード)なども使用され始めている。このような光源では、いずれもそのビーム角は固定であり、主にミラー形状で配光が決められている。
【0003】
ここで、透過光のスペクトル変動を低減し、光の透過率を連続的に制御するようにした液晶光シャッターがある(例えば、特許文献1参照)。これは、2枚の透明導電膜付き透明基板の間に液晶・高分子複合膜を挿入して構成され、厚み方向に加える交流電圧の大きさを変えることにより、投射光量を連続的かつ自在に制御し調光可能としたものである。また、少なくとも1個の発光素子と少なくとも1枚の液晶レンズとをそれらの支持体を兼ねた筐体によって所定の間隔を保って支持したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−29002号公報
【特許文献2】特開2005−317879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものでは、配光の制御は可能であるが、調光可能となっているので投射光量が変化する。また、特許文献2のものでは、液晶レンズであるのでレンズ状の空間に液晶を封入したものとしなければならない。また、液晶レンズの焦点距離を変化させるものであるので、散乱光を得るのに適していない。
【0006】
本発明の目的は、投射光量はほぼ一定のままで照明対象への投射光のビーム角を可変制御できる照明器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係わる照明器具は、LED発光素子を有した光源を収納した器具本体と;前記光源の前面に設けられ、内面に透明導電膜をコートした2枚の透光性フィルムで液晶を含む高分子層を挟み込んで形成され、前記2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧により光の全透過率はほぼ一定で拡散度が変化する液晶フィルム素子と;前記液晶フィルム素子の前記2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧を制御するスイッチと;を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明及び以下の発明において、特に指定しない限り用語の定義及び技術的意味は以下による。
【0009】
液晶フィルム素子とは、光の透過率はほぼ一定で、2枚の透光性フィルムの透明導電膜間に電圧が印加されたとき、高分子層に含まれる液晶が分極分子配向して拡散度だけが変化する光学機能素子であり、電圧を印加したときに、液晶フィルム素子の拡散度(曇り度)を小さくして光のビーム角を小さくするものである。
【0010】
光の全透過率とは、液晶フィルム素子に入射する光と液晶フィルムから出射した全ての光との割合である。
【0011】
光源の前面とは、光源であるLED発光素子の光が出射する面の前側であり、LED発光素子の光の全量を取り込む位置である。
【0012】
スイッチは、オンオフ制御により液晶フィルム素子の2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧を制御するものである。
【0013】
請求項2の発明に係わる照明器具は、略半円筒形状に形成され、LED発光素子を有する光源を半円筒形状の内側に収納した器具本体と;前記器具本体の内面側に前記LED発光素子に対面して設けられ、内面に透明導電膜をコートした2枚の透光性フィルムで液晶を含む高分子層を挟み込んで形成され、前記2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧により光の全透過率はほぼ一定で拡散度が変化する液晶フィルム素子と;前記光源と前記器具本体との間に設けられ、前記光源から出射されて前記高分子層を透過した光を反射する反射部と;前記液晶フィルム素子の前記2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧を制御するスイッチと;を備えたことを特徴とする。
【0014】
略半円筒形状とは、円筒形状の円のほぼ中心線位置を縦方向に切断して得られる形状をいい、断面は半円状となる。光源が収納される器具本体の半円筒形状の内側とは、半円筒形状で包囲される側をいう。
【0015】
液晶フィルム素子は、半円筒形状の器具本体の内面側に設けられる。これにより、光源であるLED発光素子は液晶フィルム素子と対面する位置関係となる。
【0016】
反射部が設けられる液晶フィルム素子と器具本体との間とは、液晶フィルム素子が光源と対面する反対面と器具本体の内面との間であり、反射部は液晶フィルム素子と器具本体とに挟まれて配置される。これにより、光源からの光は液晶フィルム素子を透過して反射部で反射し、再度、液晶フィルム素子を透過して出射されることになる。
【0017】
請求項3の発明に係わる照明器具は、請求項1または2の発明において、前記スイッチは、リモコンからの指令により制御することを特徴とする。
【0018】
本発明は、スイッチによる電圧制御をリモコンによる遠隔操作で行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、投射光量はほぼ一定のままで照明対象への投射光のビーム角を可変に制御できるので、照明対象に応じて適切な照明が可能となる。
【0020】
請求項2の発明によれば、光源と器具本体との間に液晶フィルム素子を設ける場合においても、反射部で光源から出射されて前記高分子層を透過した光を反射するので、投射光量はほぼ一定のままで照明対象への投射光のビーム角を可変に制御でき、照明対象に応じて適切な照明が可能となる。
【0021】
請求項3の発明によれば、リモコンからの指令により、容易に透明導電膜間の印加電圧を制御できるので、照明対象への投射光のビーム角を遠隔で可変に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係わる照明装置の一例の外観構成図。
【図2】図1の液晶フィルム素子を取り外した状態での照射面側から見た照明装置の光源の平面図。
【図3】本発明の実施の形態における液晶フィルム素子の説明図。
【図4】本発明の実施の形態に光源の照射面の中心位置における相対中心照度[%]と液晶フィルム素子の透明導電膜間の印加電圧[V]との関係の一例を示すグラフ。
【図5】本発明の実施の形態に係わる照明装置の他の一例の外観構成図。
【図6】図5に示した他の一例の照明装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は本発明の実施の形態に係わる照明装置の一例の外観構成図である。器具本体11は一方端に口金12が設けられ、他方端から外部に照明光を照射する照射面が形成されている。器具本体11には、LED発光素子を有した光源が収納されており、口金12がソケットに装着されたときに光源であるLED発光素子に点灯電源が供給され、LED発光素子からの照明光は照射面側に照射されるようになっている。
【0024】
また、照明光を照射する照射面には液晶フィルム素子13が設けられている。液晶フィルム素子13は、後述するように、2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧により光の透過率はほぼ一定で拡散度が変化する光学機能素子であり、液晶フィルム素子13の2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧が大きいときは拡散度が小さくなり、印加電圧が小さいときは拡散度が大きい特性を有する。器具本体11には、液晶フィルム素子13の2枚の透光性フィルムの透明導電膜間に印加される電圧を制御するためのスイッチ14が設けられている。スイッチ14は手動で印加電圧を設定するようにしてもよいし、リモコンにより印加電圧を設定するようにしてもよい。
【0025】
図2は、図1の液晶フィルム素子13を取り外した状態での照射面側から見た照明装置の光源の平面図である。図2から分かるように、光源15は、反射部材16に複数個のLED発光素子17が埋め込まれて構成されており、照射面側に照明光を出射するように構成されている。図2では12個のLED発光素子17を配置したものを示している。反射部材16は光源15の複数個のLED発光素子17に電源を供給する1対の電極のうちの一方を用いるようにしてもよい。
【0026】
例えば、LED発光素子17は、青色光を発生する青色発光素子に少なくとも575〜600nmを発光ピークとする黄系発光蛍光体を含有する被膜を被覆して形成され、色温度2700〜3000Kの電球色に相当する照明光を得るようにしている。そして、このようなLED発光素子17を有した光源からの照明光のビーム角度は、反射部材16の形状と組み合わせて、例えばビーム角30度となるように構成されている。このように構成された光源15の発光部前面に液晶フィルム素子13が配置される。
【0027】
図3は液晶フィルム素子13の説明図であり、図3(a)は液晶フィルム素子13の2枚の透光性フィルムの透明導電膜間に電圧が印加されていない場合の状態図、図3(b)は液晶フィルム素子13の2枚の透光性フィルムの透明導電膜間に所定電圧が印加された場合の状態図である。
【0028】
図3(a)、(b)に示すように、液晶フィルム素子13は、2枚の透光性フィルム(PETフィルム)18の内面に透明導電膜(ITO)19をコートし、液晶分子20を含む高分子層21を挟み込んで形成される。例えば、透明導電膜19をコートとした約0.1mm厚の透光性フィルム18を透明導電膜19が対向するように配置し、その内側にアクリルなどの高分子層21中に液晶分子20を分散させた約0.3mm厚の膜を形成する。そして、両側の透明導電膜19間にAC0〜100Vを印加することにより、液晶分子20の向きを電気的に制御する。
【0029】
透明導電膜19間に電圧が印加されていない場合には、図3(a)に示すように液晶分子の向きはランダムに向いているが、透明導電膜19間に所定電圧が印加されると、図3(b)に示すように、液晶分子20の向きは透明導電膜19間の方向に整列した向きとなる。このような液晶フィルム素子13は、例えば液晶シャッターなどとして市販化されており透過光のオン・オフに使用されている。本発明の実施の形態の場合は、透過光のオン・オフでなく、電気的に液晶分子20の向きが変わることにより散乱性が変化することを利用する。
【0030】
図4は、光源の照射面の中心位置における相対中心照度[%]と液晶フィルム素子13の透明導電膜19間の印加電圧[V]との関係の一例を示すグラフである。印加電圧の有無にかかわらず、液晶フィルム素子13での全透過率は80%以上と高いが、印加電圧が0[V]の場合は、液晶フィルム素子13は拡散度が大きく散乱生が大きい。そのため、高散乱状態では直線透過率は10%以下と低く、光源の照射面の中心位置の相対中心照度は10[%]程度である。逆に、電圧を印加した場合はほとんど散乱せず直線透過率が80%以上と高くなるので、光源の照射面の中心位置の相対中心照度は66[%]程度となる。光源の照射面の中心位置の相対中心照度が80[%]とならないのは、前述したように、光源のビーム角30度であり、直線透過率が80%以上となっても光源自体が広がりを持っているからである。
【0031】
このような液晶フィルム素子13の散乱性を印加電圧を制御して電気的に制御することにより、光源15からの光を照射対象物である例えば商品やその配置に応じて、ビーム角を30度〜70度まで可変制御可能とし、スポット光源などの照明器具に適用可能としている。ここで、液晶フィルム素子13に有機可視選択吸収材料を分散させた透光性膜部材を形成し、光色や演色性を制御することも可能である。
【0032】
次に、図5は本発明の実施の形態に係わる照明装置の他の一例の外観構成図、図6は図5に示した他の一例の照明装置の断面図である。この他の一例は、図1に示した一例に対し、光源15をライン状に形成するとともに器具本体11を略半円筒形状に形成し、光源15からの光を器具本体11に設けられた液晶フィルム素子13に照射し、液晶フィルム素子13を透過した光を器具本体11に設けられた反射部23で反射して照射面から出射するようにしたものである。
【0033】
図5に示すように、器具本体11は半円筒形状に形成され、器具本体11の内側にライン状に形成された光源15が側板22により支持されて収納されている。光源15は、複数個のLED発光素子17の光の出射方向が器具本体の内面側に向くように直線状に配置されて形成されている。また、器具本体11内面側には光源15のLED発光素子17に対面して液晶フィルム素子13が設けられ、液晶フィルム素子13と器具本体11との間には反射部23が設けられている。反射部23は、光源15からの光を液晶フィルム素子を透過して反射する鏡面または全反射の表面を持つ。この反射部部23は光源15の複数個のLED発光素子17に電源を供給する1対の電極のうちの一方を用いるようにしてもよい。
【0034】
光源15は、図1に示した一例と同様に、青色光を発生する青色発光素子及びこの青色発光素子を被覆する少なくとも575〜600nmを発光ピークとする黄系発光蛍光体を含有する色温度2700〜3000Kの電球色に相当する発光素子であり、それらをライン状に配置したものである。また、液晶フィルム素子13も図1に示した一例と同様に
2枚の透光性フィルム(PETフィルム)18の内面に透明導電膜(ITO)19をコートし、液晶分子20を含む高分子層21を挟み込んで形成され、半円筒形状に形成された器具本体の内面側に反射部23を介して配置される。
【0035】
光源15である複数個のLED発光素子17からの光は液晶フィルム素子13に照射され、液晶フィルム素子13を透過して反射部23で反射し、再度、液晶フィルム素子を透過して器具本体11の照射面から出射する。この他の一例においても、液晶フィルム素子13の透明導電膜19間の印加電圧を制御して散乱性を制御する。これにより、光源15からの光を照射対象物である例えば商品やその配置に応じて、ビーム角を可変制御可能としている。
【0036】
以上述べたように、本発明の実施の形態によれば、照明対象やその配置に応じて、電気的に照明光のビーム角を可変制御可能であるので、照明対象を適切に照明できる。また、また、液晶フィルム素子13に有機可視選択吸収材料を分散させた透光性膜部材を形成した場合には光色や演色性を制御できる。
【符号の説明】
【0037】
11…器具本体、12…口金、13…液晶フィルム素子、14…スイッチ、15…光源、16…反射部材、17…LED発光素子、18…透光性フィルム、19…透明導電膜、20…液晶分子、21…高分子層、22…側板、23…反射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED発光素子を有した光源を収納した器具本体と;
前記光源の前面に設けられ、内面に透明導電膜をコートした2枚の透光性フィルムで液晶を含む高分子層を挟み込んで形成され、前記2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧により光の全透過率はほぼ一定で拡散度が変化する液晶フィルム素子と;
前記液晶フィルム素子の前記2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧を制御するスイッチと;
を備えたことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
略半円筒形状に形成され、LED発光素子を有する光源を半円筒形状の内側に収納した器具本体と;
前記器具本体の内面側に前記LED発光素子に対面して設けられ、内面に透明導電膜をコートした2枚の透光性フィルムで液晶を含む高分子層を挟み込んで形成され、前記2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧により光の全透過率はほぼ一定で拡散度が変化する液晶フィルム素子と;
前記光源と前記器具本体との間に設けられ、前記光源から出射されて前記高分子層を透過した光を反射する反射部と;
前記液晶フィルム素子の前記2枚の透光性フィルムの透明導電膜間の印加電圧を制御するスイッチと;
を備えたことを特徴とする照明器具。
【請求項3】
前記スイッチは、リモコンからの指令により制御することを特徴とする請求項1または2記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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