説明

照明器具

【課題】
フィルタ枠を有し、フィルタホルダが落下することなく、かつアーム長が短い支持アームの付け替えを行うことなく使用可能な照明器具を提供する。
【解決手段】
照明器具1は、発光ダイオード9からなる光源7が収納された器具本体2と、器具本体2の両側面2b,2bに回転可能に固定される一対のアーム部11,11および一対のアーム部11,11を連結し、一対のアーム部11,11が器具本体2の両側面2b,2bで回転したときに器具本体2に当接する連結部12を有する支持アーム3と、光源7からの光を透過するフィルタ29を収納しているフィルタホルダ5と、フィルタ枠22およびフィルタ枠22の差込口28からフィルタホルダ5が落下しないようにフィルタホルダ5を差込口28で支持可能に設けられた係止部材23を有し、器具本体2の投光開口6に正対して器具本体2に配設されたバンドア4とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バンドアにより配光制御される照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
舞台やスタジオ等の演出照明で使用されている照明器具例えばスポットライトは、ロケーション(ロケ地)による撮影などでも使用されている。このスポットライトは、スタジオ等においては、スタンドや吊りハンガー等の照明用基材に取付けられ、ロケ地においては、三脚等に取付けられている(例えば特許文献1参照。)。このようなスポットライトの多くは、その前面側に配光制御用のバンドアが設けられている。また、このようなスポットライトには、フィルタホルダを設けているものがある。
【0003】
そして、スポットライトは、ロケ地に頻繁に持ち運びをするために、小型・軽量であることが望まれている。このため、スポットライトには、支持アームのアーム長を短くしたものがある。このスポットライトには、支持アームがスポットライトの前方および後方のいずれ側にも回転自在に回転しないものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−146262号公報(第4頁、第4−7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
支持アームのアーム長を短くしたスポットライトは、ロケ地で使用した後に、例えばスタジオの吊りハンガー等に吊り下げて使用するときには、支持アームを下側方向から上側方向に付け替える必要があり、その付け替え作業が面倒であるという欠点を有する。これは、スポットライトを上下逆さまに吊り下げて使用すると、電球やソケットの取付け方向が逆になってソケット等に過度に熱くなるなどの熱的影響が発生し、また、フィルタホルダやバンドアが落下するおそれがあることによる。
【0006】
また、支持アームのアーム長が長いロングアームのスポットライトは、小型・軽量が図れにくいという欠点を有する。
【0007】
本実施形態は、フィルタ枠を有し、フィルタホルダが落下することなく、かつアーム長が短い支持アームの付け替えを行うことなく使用可能な照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の照明器具は、器具本体、支持アーム、フィルタホルダおよびバンドアを有して構成される。
【0009】
器具本体は、一端側に投光開口が設けられているとともに、発光ダイオードからなる光源を収納している。光源は、投光開口から放射光を出射するように器具本体内に設けられている。
【0010】
支持アームは、一対のアーム部および連結部を有して形成され、器具本体を吊り下げるようにまたは持ち上げるようにして支持する。一対のアーム部は、器具本体の両側面に回転可能に固定される。連結部は、一対のアーム部を連結していて、一対のアーム部が器具本体の両側面で回転したときに器具本体に当接する。
【0011】
フィルタホルダは、光源からの光を透過するフィルタを収納している。
【0012】
バンドアは、器具本体の投光開口に正対して器具本体に配設されている。そして、バンドアは、フィルタ枠および係止部材を有するように形成されている。フィルタ枠は、一方向からフィルタホルダが差し込まれ、フィルタホルダを保持するものである。係止部材は、フィルタ枠の差込口からフィルタホルダが落下しないようにフィルタホルダを差込口で支持可能に設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、器具本体が支持アームにより吊り下げられるようにまたは持ち上げられるようにして上下逆さまにされても、光源は発光ダイオードからなるので、光源に熱的影響が発生しにくくなり、フィルタ枠の差込口でフィルタホルダがバンドアの係止部材により係止されるので、フィルタ枠の差込口からフィルタホルダが落下しなくなり、これにより、支持アームのアーム部のアーム長を短くすることができて、照明器具を小型、軽量にできることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態を示す吊りハンガーに取付けられた照明器具の概略側面図である。
【図2】同じく、三脚に取付けられた照明器具の概略側面図である。
【図3】同じく、照明器具の概略正面図である。
【図4】同じく、照明器具の一部概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の照明器具1は、図1ないし図4に示すように構成されている。図1において、照明器具1は、スポットライトに構成され、器具本体2、支持アーム3、バンドア4およびフィルタホルダ5を備えている。
【0016】
器具本体2は、アルミニウム合金板からなり、略四角筒状に形成され、長手方向の一端側2aの端面に円形状の投光開口6が設けられ、一端側2aの内部に光源7を収納している。光源7は、基板8およびこの基板8に実装された複数個の発光ダイオード9からなり、投光開口6から発光ダイオード9の放射光が出射されるように投光開口6に対向して設けられている。発光ダイオード9は、図3に示すように、基板8に上下対称に実装されている。発光ダイオード9は、所定の色光を放射するように形成されている。
【0017】
図1において、支持アーム3は、器具本体2の長手方向中央側の両側面2b,2b(図中、一方のみを示す。)にそれぞれ取付けねじ10により回転可能に固定されている。支持アーム3は、例えばアルミニウム合金からなり、一対のアーム部11,11(図中、一方のみを示す。)およびこの一対のアーム部11,11を連結している連結部12を有する略コ字形に形成されている。
【0018】
一対のアーム部11,11は、器具本体2の両側面2b,2bにそれぞれ取付けねじ10により回転可能に固定されている。すなわち、一対のアーム部11,11は、取付けねじ10を緩めることにより器具本体2の両側面2b,2bで回転でき、取付けねじ10を完全に締め付けることにより器具本体2の両側面2b,2bに強固に固定される。一対のアーム部11,11は、器具本体2の両側面2b,2bで回転したときに連結部12が器具本体2に当接するように、取付けねじ10から連結部12までの全長が設定されている。すなわち、器具本体2は、一対のアーム部11,11で囲まれる内側で360°回転することができなく、その回転範囲が規制される。
【0019】
そして、連結部12の長手方向中央部には、所定長の略柱状の凸部13が設けられている。この凸部13は、器具本体2の短手方向中央部の上方に位置している。そして、凸部13にハンガー14が嵌め込まれて、ハンガー14にねじ込まれたねじ15が凸部13に押し当てられている。これにより、支持アーム3には、ハンガー14が取り付けられている。
【0020】
そして、ハンガー14は、スタジオ等に配設されているバトン16に引っ掛けられて、長形のねじ17とともにバトン16を挟持している。これにより、ハンガー14は、バトン16に支持されている。すなわち、支持アーム3は、ハンガー14を介してバトン16に取り付けられており、器具本体2を吊り下げるようにして支持している。
【0021】
また、図2において、支持アーム3は、その凸部13に三脚18の起立棒19が嵌め込まれている。そして、支持アーム3は、起立棒19にねじ込まれたねじ20が凸部13に押し当てられて、三脚18に取り付けられている。このとき、器具本体2は、図1の吊り下げられたときとは逆さまになって取り付けられている。支持アーム3は、器具本体2を持ち上げるようにして支持している。
【0022】
バンドア4は、図4に示すように、バンドア本体21、フィルタ枠22、係止部材23および羽24a,24bを有して形成され、器具本体2の一端側2aに取り付けられている。
【0023】
バンドア本体21は、器具本体2の長手方向に所定の幅を有する円筒体に形成されている。そして、器具本体2の前面側に設けられている取付け体25に取り付けられている。取付け体25は、バンドア本体21と同様、円筒体(リング体)に形成されている。バンドア本体21は、取付け体25の周回に略90°(又は180°)間隔で、4個(又は2個)の取付け爪26により取り付けられている。
【0024】
取付け爪26は、所定幅を有し、ねじ27を一体に設けている。ねじ27をバンドア本体21の図示しないねじ孔に完全にねじ込むことにより、取付け爪26がバンドア本体21および取付け体25に密接する。このとき、バンドア本体21は、取付け体25に密接して固定されるとともに、投光開口6に正対する。そして、ねじ27を緩めると、取付け爪26がバンドア本体21および取付け体25のそれぞれの密接から離れてがたつくようになる。そして、4個のねじ27を緩めることにより、バンドア本体21は、取付け体25および投光開口6の周回方向に回動可能となる。
【0025】
バンドア本体21は、4個のねじ27をある程度緩めることにより、取付け爪26が取付け体25から完全に離れるようになり、取付け体25から取り外すことができる。こうして、バンドア本体21は、器具本体2の投光開口6に周回方向に回動可能となるように投光開口6に正対して器具本体2に配設されている。
【0026】
フィルタ枠22は、バンドア本体21の前面側に設けられている。そして、フィルタ枠22は、一方向からフィルタホルダ5が差し込まれる差込口28を有するとともに、フィルタホルダ5を保持可能な正四角形の枠体に形成されている。
【0027】
フィルタホルダ5は、フィルタ29を収納するとともに、差込口28からフィルタ枠22内に差し込まれてフィルタ枠22に保持される正四角形の枠体に形成されている。フィルタ29は、器具本体2の投光開口6から出射される光源7の放射光を透過するものであり、その透過によって放射光の色光を可変するものや放射光の配光を可変するものである。
【0028】
係止部材23は、フィルタ枠22差込口28側のバンドア本体21に設けられている。係止部材23は、略平板状に形成され、ねじ30を一体に取付けている。ねじ30は、バンドア本体21の図示しないねじ孔にねじ込まれている。係止部材23は、ねじ29を完全にねじ込むことによりバンドア本体21に固定され、ねじ30を緩めることによりねじ30の周回方向で回動可能となっている。
【0029】
そして、係止部材23は、フィルタ枠22の差込口28に位置するように固定されている。係止部材23は、フィルタ枠22の差込口28でフィルタ枠22に差し込まれたフィルタホルダ5を押し当てている。これにより、差込口28が器具本体2の下方側を向いているときには、差込口28からフィルタホルダ5が落下しないようにフィルタホルダ5を支持し、差込口28が器具本体2の側方側を向いているときには、差込口28からフィルタホルダ5が飛び出さないようにフィルタホルダ5を支持している。
【0030】
そして、羽24a,24bは、ねじ31,31等により、フィルタ枠22の前面側に取付けられている。図3において、羽24aは、矩形状の平板に形成されて、フィルタ枠22の図中上下の位置に取り付けられている。また、羽24bは、先細り状の平板に形成され、フィルタ枠22の図中左右の位置に取り付けられている。各羽24a,24bを展開してバンドア4の先端側の開口面積を調整することにより、光源7の放射光の照射範囲を可変できるようにしている。
【0031】
次に、本実施形態の作用について述べる。
【0032】
照明器具1は、例えばスタジオ等で吊り下げて使用するときには、図1に示すように、支持アーム3の連結部12の凸部13にハンガー14を取り付けて、当該ハンガー14をバトン16等に引っ掛ける。また、例えばロケ地で持ち上げて使用するときには、連結部12の凸部13を例えば三脚18の起立棒19に嵌め込み、固定して、三脚18に取り付ける。
【0033】
器具本体2は、支持アーム3の一対のアーム部11,11を固定している取付けねじ10,10を緩めることにより、連結部12が器具本体2に当接する範囲において、取付けねじ10,10を回転軸として回転することができる。これにより、器具本体2の投光開口6から出射される光源7の放射光の照射方向を上下方向に可変することができる。
【0034】
また、器具本体2の取付け体25にバンドア4を固定している4個の取付け爪26のねじ27を緩めることにより、バンドア4を投光開口6の周回方向に回動させることができる。この回動によって、投光開口6から出射する光源7の放射光の配光が可変される。
【0035】
そして、器具本体2は、支持アーム3により、吊り下げから持ち上げられるように支持されるとき、または持ち上げから吊り下げられるようにして支持されるときには、その上下が逆さまになる。器具本体2に収納されている光源7は、発熱量が比較的小さい発光ダイオード9からなり、投光開口6に正対するように設けられているので、器具本体2が上下逆さまになっても、部分的に温度上昇するなどの熱的影響が発生しにくい。また、発光ダイオード9は、基板8に上下方向に対称となるように実装されているので、器具本体2が上下逆さまになることによる配光の変化は小さい。
【0036】
器具本体2が上下逆さまになると、バンドア4のフィルタ枠22の差込口28が器具本体2の下方側を向くようになることがある。このとき、フィルタ枠22に差し込まれたフィルタホルダ5は、差込口28で係止部材28により支持されるので、差込口28から落下しなくなる。また、フィルタ枠22の差込口28が器具本体2の側方側を向いても、フィルタホルダ5は、差込口28で係止部材28により押し当てられて支持されるので、差込口28から飛び出すことなく、フィルタ枠22内に保持される。
【0037】
そして、器具本体2が支持アーム3により吊り下げられまたは持ち上げられるように支持されたことにより、フィルタ枠22の差込口28が器具本体2の下方側を向くときには、差込口28が器具本体2の上方側を向くように、バンドア4を投光開口6の周回方向に回動させることができる。これにより、フィルタホルダ5がフィルタ枠22内に保持される信頼性や安心感などが向上する。
【0038】
本実施形態の照明器具1によれば、器具本体2が支持アーム3により吊り下げられるようにまたは持ち上げられるようにして上下逆さまにされても、光源7は発光ダイオード9からなるので、光源7に熱的影響が発生しにくくなり、フィルタ枠22の差込口28でフィルタホルダ5がバンドア4の係止部材28により支持されるので、フィルタ枠22の差込口28からフィルタホルダ5が落下しなくなり、これにより、支持アーム3の一対のアーム部11,11のアーム長を短くすることができて、照明器具1を小型、軽量にできるという効果を有する。
【0039】
また、バンドア4は、支持アーム3による器具本体2の吊り下げまたは持ち上げの支持に応じて、フィルタ枠22の差込口28が器具本体2の上方側をむくように回動されることにより、フィルタホルダ5をフィルタ枠22内に信頼性や安心感などを持たせて保持できるという効果を有する。
【符号の説明】
【0040】
1…照明器具、 2…器具本体、 3…支持アーム、 4…バンドア、5…フィルタホルダ、 6…投光開口、 7…光源、 11,11…一対のアーム部、 12…連結部、 23…係止部材、 28…差込口、 29…フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に投光開口が設けられ、この投光開口から放射光を出射するように発光ダイオードからなる光源を収納した器具本体と;
この器具本体の両側面に回転可能に固定される一対のアーム部およびこの一対のアーム部を連結し、前記一対のアーム部が前記器具本体の両側面で回転したときに前記器具本体に当接する連結部を有し、前記器具本体を吊り下げるようにまたは持ち上げるようにして支持する支持アームと;
前記光源からの光を透過するフィルタを収納しているフィルタホルダと;
一方向から前記フィルタホルダが差し込まれるフィルタ枠およびこのフィルタ枠の差込口から前記フィルタホルダが落下しないように前記フィルタホルダを前記差込口で支持可能に設けられた係止部材を有し、前記投光開口に正対して前記器具本体に配設されたバンドアと;
を具備していることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記バンドアは、前記支持アームの前記器具本体の支持に応じて、前記フィルタ枠の差込口が前記器具本体の上方側を向くように回動されていることを特徴とする請求項1記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−77490(P2013−77490A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217437(P2011−217437)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】