説明

照明手段を備える介入機器

本発明は、対象1の内部キャビティ2内に少なくとも部分的に挿入されることができる機器100(特に、カテーテル又は内視鏡)に関する。機器100は、観察通路VCを通って外部の対象から到来する光を収集する光学システムOSを有している。前記光学システムは、観察通路VC内に配されている外部の対象を照明するためのOLED110を有している。特定の実施例において、OLED110は、少なくとも部分的に透明であり得る。OLED110を前記観察通路内に配することによって、最適な照明が、機器100全体のコンパクトな設計と共に達成されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の内部キャビティ内に少なくとも部分的に挿入されることができると共に照明手段を有しているカテーテル又は内視鏡のような機器に関する。更に、本発明は、このような機器のための交換可能な構成要素と、対象の内部キャビティを検査する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第2005 0137459号から、内視鏡は、体腔を照明するために自身の先端の周りに配されている有機発光装置(OLED)を有することが知られている。体腔の観察は、前記内視鏡に沿って走っている別個の光通路によって提供されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この背景に基づいて、本発明の目的は、特に、クローズアップ観察が望まれている場合に、内部キャビティの改善された調査を可能にする手段を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、添付の請求項1に記載の機器と、添付の請求項13に記載の交換可能な構成要素と、添付の請求項14に記載の方法とによって達成される。好ましい実施例は、添付の従属請求項に開示されている。
【0005】
第一の見地によれば、本発明は、例えば、機械若しくは装置の隙間、又は人間若しくは動物の体内腔のような、対象の内部キャビティ内に少なくとも部分的に挿入されることができる機器に関する。後者の場合、前記機器は、特に、カテーテル、内視鏡、ニードル又は類似の(最小限の)侵襲的な手段であり得る。当該機器は、以下の構成要素を有する:
a)光通路(以下、「観察通路」と称する)を通って前記機器の外側から到来する光を、「目標領域」と称される領域内に収集する光学システム。本質的に、前記観察通路は、無限遠から到来し前記光学システムによって収集される(即ち、所与の前記目標領域に到達する)全ての単一の光線の経路を有する。実際に、収集される光は、前記機器によって検査される内部キャビティの表面のような、外部の対象から到来し、前記目標領域は、例えば、画像センサの感度が高い平面に対応する。前記光学システムは、画像化又は非画像化の用途のために設計されることができる。画像化用途において、到来する光線間の空間的な関係は、ここから前記光が到来する対象の画像の生成を可能にするように維持される。非画像化用途において、前記空間関係は、(例えば、外部の対象内で刺激される蛍光発光(fluorescence)の量が、単一の光検出器によって測定されることになっている場合に)維持されない又は少なくとも評価されない。
b)前記光学システムの一部であると共に、上述の観察通路内に(完全に又は部分的に)配されている有機発光装置(OLED)のような照明装置。従って、前記光学システムに向かって前記観察通路を通って伝搬する光は、少なくとも部分的にOLEDと相互作用するようになり、例えば、透明OLEDを通過する又は反射性のOLEDによって反射される。適切なOLEDのデザインは、当業者にとってよく知られており、文献(例えば、Joseph Shinar(編)"Organic Light Emitting Devices, A survey" シュプリンガー、2004年)に記載されている。更に、単一の側部発光による透明OLEDの構築は、本発明の特定の実施例に関して記載されている。
【0006】
上述の機器は、照明される外部の対象からの光がこれを通って収集されるまさに前記観察通路内に配される照明のためにOLEDを使用するので、検査される及び/又は光学的に操作されることになっている内部キャビティの最適な照明を提供する。従って、前記光源及び前記観察中心の光軸は、重複し得て、影又は他の外乱を伴わない外部対象の最適な中央に位置された照明を保証する。更に、前記観察通路内への光源の組み込みは、小型の設計を提供し、当該機器ができるだけ小型であるべきである医療用途において特に有利である。
【0007】
本発明の好ましい実施例によれば、前記光学システムのOLEDは、透明であっても良く、即ち、このことは、本質的に、(所与の入射角から及び所与の電磁的スペクトルからの)自身にあたる光の強度の10%より多くの、更に好ましくは30%よりも多くの、最も好ましくは70%よりも多くの通過を可能にすることができる。このような透明OLEDは、光学システムの既存のデザインに容易に組み込まれることができる。
【0008】
当該光学システムは、特に、前記外側から前記機器に入射する光を収集し再指向するための少なくとも1つレンズを有することができる。付加的には又は代替的には、延長された空間距離にわたって光をガイドする1つ以上の光学導波路を有していても良い。特に、光ファイバが、前記機器の頭部(体腔内にある)からの光を前記本体の外側の装置へ前記機器の軸に沿って導くのに使用されることができる。
【0009】
前記機器は、オプションとして、画像センサ(例えば、CCD又はCMOSチップ)を有していても良い。適切な光学システムに接続される場合、画像センサが、例えば、体腔内の解剖学的構造の、外部の対象の電子的な画像を生成するために使用されることができる。
【0010】
前記OLEDは、一般に、陽極と陰極との間に配されている有機エレクトロルミネッセント層を有している。前記陽極及び前記陰極が異なる透過特性を有する場合、対向する両側への前記OLEDの光放出は、前記有機層内の光生成が等方性である場合でさえも、異なる。本発明による機器において、非対称な放出の振る舞いを有するOLEDは、好ましくは、光がこれに向かってというよりも収集されることになっている前記目標領域から離れる方向において高い放出を有するように、配される。この場合、外部対象を照明する光の量が増大される一方で、外部対象から到来することなく前記目標領域に到達する光の量は、減少される。好ましくは、前記目標領域から離れる方向における前記OLEDの放出は、前記OLEDの全体の光放出の60%より多くの、更に好ましくは80%より多くの、最も好ましくは約ほぼ100%である。
【0011】
本発明の好ましい実施例において、前記OLEDは、
− 陽極、陰極、及び前記陽極と前記陰極の間に配置される有機層(前記有機層、前記陽極及び前記陰極は、少なくとも1つのエレクトロルミネッセントゾーン及び少なくとも1つの非エレクトロルミネッセント(「不活性」)ゾーンを備えて前記有機層内の構造を構成している)と、
− エレクトロルミネッセントゾーンに位置合わせされる少なくとも1つの非透明ゾーンと前記有機層の不活性ゾーンに位置合わせされている少なくとも1つ透明ゾーンとを備える構造を有するミラー層と、
を有するように設計されている。
【0012】
前述の構造の少なくとも部分的な位置合わせによって、このようなOLED装置は、光に対して透明にされると同時に、優性の(又は単一でさえある)方向において放射性であるようにされることができる。従って、前記OLEDは、外部対象の最適な照明を提供することができる一方で、内部的に生成された画像との干渉は、最小限である。
【0013】
前記機器の前記OLEDを前記観察通路内に配するための多くの異なる仕方が、存在する。第1の好ましい実施例によれば、前記OLEDは、前記光学システムのレンズ上に配されている。この場合、前記透明レンズは、前記OLEDの光生成層を担持する前記基板として使用されることができる。前記光学システムのレンズ上への配置は、特に透明OLEDが使用される場合、前記機器全体の非常に小型な設計を提供する。
【0014】
他の実施例によれば、前記OLEDは、前記目標領域に対して移動可能に配される。次いで、前記OLED及び前記目標領域の相対的な位置の変更は、例えば、前記機器からの様々な距離における外部対象に対して、照明条件を調整する及び最適化するのに使用されることができる。
【0015】
本発明の更に他の実施例によれば、前記OLEDは、前記光学システムの少なくとも部分的な残りの部分を覆うキャップ内に取り付けられる。好ましくは、前記キャップは、前記目標領域に対して移動可能である別個の構成要素であり、このようにして、前記機器の上述の実施例を付加的に実現する。
【0016】
更に、前記OLEDは、例えば、これを、上述した種類の移動可能なキャップ内に取り付けることによって、交換可能な構成要素として設計されることができる。次いで、前記OLEDは、例えば、欠陥が存在する場合又は異なる特性を備えるOLEDが使用されることになっている場合に、容易に取り除かれる及び交換されることができる。更に、医療用途は、無菌性の理由のために各使用後に前記OLEDの交換を必要とすることができる。
【0017】
一般的に、前記機器が医療用途を目的としている場合、前記機器は、好ましくは、殺菌されることができるように、即ち前記機器が高温(典型的には、100℃よりも高い)及び/又は殺菌する化学薬品に対して堅牢であるように設計される。前記OLEDが、別個の、交換可能な構成要素として配される場合、前記残りの機器のみが滅菌可能であれば良い。
【0018】
本発明の更なる展開によれば、前記OLEDは、互いに異なる照明及び/又は透過特性を有する少なくとも2つのサブユニットから構成される。前記サブユニットは、前記観察通路内に又は他の場所に、配されることができる。異なる放出を備えるサブユニットは、前記OLEDによって提供される照明(例えば、照明光の前記色、輝度及び/又は方向)を適応化するのを可能にする。前記OLEDのサブユニットは、観察通路を通る光の伝搬に対して隣同士に及び/又は上下に配されているものであり得る。
【0019】
本発明は、更に、上述の種類の機器、即ち観察通路を通って到来する外部の光を収集するための光学システムと、前記観察通路内に配されているOLEDとを備える機器のためのOLEDの交換可能な構成要素に関する。この交換可能な構成要素は、例えば、無菌性を保証するために医療用途において必要とされる使い捨ての要素(前記OLEDを含む)を含むことができる。典型的には、前記交換可能な構成要素及び前記機器は、同時に、互いに適合するように設計される。しかしながら、既存の機器(例えば、標準的なカテーテル又は内視鏡)を考慮して前記交換可能な構成要素を設計することも可能であり、従って、有利な照明手段を備える前記機器の改装を可能にする。
【0020】
本発明は、更に、対象の内部キャビティ(例えば、体内腔)を検査する方法であって、:
a)OLEDによって前記キャビティ内に光を発するステップと、
b)前記キャビティから到来する光を収集するステップであって、前記光は、前記OLEDを通って透過される及び/又は前記OLEDによって反射される、ステップと、
を有する方法に関する。
【0021】
当該方法は、一般的な形態において、上述の種類の機器によって実行されることができるステップを有する。従って、当該方法の詳細、有利な点及び改良に関する更なる情報のために、前述の記載が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】OLEDが直接的にレンズ上に配されている本発明による第1の介入機器を模式的に示している。
【図2】OLEDが移動可能なキャップ内に配されている本発明による第2の介入の機器の先端を模式的に示している。
【図3】透明OLED内の層の配置を模式的に示している。
【図4】単一側部発光(single-sided emission)による透明OLEDの層の配置に関して模式的に示している。
【図5】介入機器の出口窓上の幾つかのOLEDサブユニットの配置を示している。
【図6】介入機器の出口窓上の幾つかのOLEDサブユニットの配置を示している。
【図7】介入機器の出口窓上の幾つかのOLEDサブユニットの配置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のこれら及び他の見地は、以下に記載される実施例を参照して、明らかになり、説明されるであろう。これらの実施例は、添付図面の助けを借りて、一例として記載される。
【0024】
添付図面において、100の整数倍だけ異なる類似の符号は、同一又は類似の構成要素を参照している。
【0025】
本発明は、以下で、医療機器の用途に関して記載されるが、本発明は、この場合に限定されるものではなく、多くの他の状況においても有利に適用されることができる。
【0026】
内視鏡装置において、光ガイドは、例えば、前記内視鏡の外側及び検査される患者の体の外側に配されている光源からの光の流れを導くのに使用されることができる。この状況において、前記光源は、それぞれ、前記内視鏡の外側及び前記体内に配されるには、あまりに大きい又は熱くなる。無機LEDが内視鏡に組み込まれる光源として使用される場合、これらは良好なヒートシンクを有さなければならず、しばしば、これらは、多くの内視鏡介入に対してかさばり過ぎる。更に、既知の照明の解決策は、対象に非常に近い不均一な光分布(「マクロ画像化」と称する)を被り、しばしば、得られる画像は、前記光が点光源であるという事実による影を被る。このことを回避するために、前記光源は、前記カメラレンズの周りに環状に配され得るが、このことは、貴重な横方向の空間を浪費する。更に、マクロ画像化において、このような環は、対象の中心には殆ど光を供給しない。
【0027】
従って、内視鏡検査において、近距離から観察される対象(器官又は組織等)の十分で均一な照明を提供する光源を持つことが望ましい。本発明によれば、この目的は、本質的に、均一の広領域の光源であるOLEDを前記観察通路内に組み込むことによって達成されることができる。更に、高いコントラストを、得ることができる。
【0028】
図1は、上述した一般的な概念の第1の実現による医療機器100(例えば、内視鏡又はカテーテル)を模式的に示している。遠端部分(distal tip portion)101が体1の内腔(例えば、患者の心臓の心室内)にある機器100が、配されている。機器100の近端(図の右側)は、体の外側に配されており、様々な外部装置に接続されている。
【0029】
機器100は、光学システムOSを有しており、光学システムOSは、ここでは主に、簡単な集束レンズによって表されている。この光学システムOSは、外部の対象、例えば、腔2の内側表面から観察通路VCを通って到来する光を、「目標領域」TA(即ち、典型的には、機器100に対して固定されている所与の領域)内に収集するように設計されている。示されている例において、目標領域TAは、画像化センサ130の高感度平面に対応しており、収集された前記光は、周囲の電子的な画像に変換される。電子的な画像信号は、電気ケーブル151によって外部の画像処理デバイス152に転送される。
【0030】
内部体腔2の最適な照明を提供するために、機器100の光学システムOSは、光学システムOSのレンズ120上に直接的に配されている透明OLED110を有している。OLED110は、電気エネルギを選択的に供給されることができるように、電気的リード141を介して外部ドライバ142に接続されている。起動される場合、OLED110は、体腔2内へ光を発し、従って、観察されなければならない対象を照明する。OLED110が観察通路VC内に配されているので、前記照明は、影を投じることなく、当該視野の中心における最適な(最高)輝度を伴って、達成される。
【0031】
図2は、代替的な設計を有する機器200の第2の実施例を示している。前記近端は図1のものと類似であるので、当該機器の先端201のみが示されている。機器200は、光学システムOSの第1の構成要素としてレンズ220を有する。レンズ220は、観察通路VCを通って外部の対象(図示略)から到来する光を収集する。レンズ220の後ろにおいて、前記収集された光は、光学システムOSの第2の構成要素としての光ファイバ221内に入る。光ファイバ221は、前記光を目標領域(例えば、体(図示略)の外側に配されている画像センサの高感度平面)へ導く導波路として働く。
【0032】
光学システムOSは、円筒形キャップ215の一端に取り付けられている透明OLED210を更に有し、キャップ215は、自身の対向する開放端部によって、機器200の先端201、特にレンズ220を覆っている。再び、全ての到来する光がOLED210を通過するような、即ち前記OLEDが観察通路VC内に配されているような配置である。キャップ215は、更に、これを介してOLED210が前記OLEDの外部ドライバ(図示略)に至るライン241に電気的に結合される内側表面における接触端子216を有している。
【0033】
双頭矢印によって示されているように、OLED210を備えているキャップ215は、好ましくは、先端201に対して当該機器の軸方向(z方向)において移動可能に設計される。従って、OLED210とレンズ220との間の距離は、前記観察の要件に依存して、調整されることができる。
【0034】
OLED210を備えるキャップ215は、好ましくは、機器200の先端201から容易に取り除かれ新しいものと交換されることができる別個の交換可能な構成要素1000として設計される。従って、OLED210は、特に、前記OLEDが殺菌処置に耐えるのに十分な堅牢性がないようなものである場合でさえも、新規な検査処置の始めにおいてシステム全体の無菌性を保証するための使い捨て製品1000の一部であることができる。
【0035】
記載されているシステムの重要な構成要素は、透明OLEDである。図3は、例えば、機器100、200において使用されるかもしれないような、透明OLED310の一般的な層設計を模式的に示している。OLED310は、底部から上部へと、
− 透明基板311(例えば、水バリア性を有するガラス又はプラスチック製)と、
− 透明陰極312(例えば、酸化インジウムスズ(ITO)製)と、
− 例えば、小さい分子(smOLED)又はポリマ(ポリマOLED)を含んでいる、有機エレクトロルミネッセント層313と、
− 透明陽極314(例えば、Ag製)と、
の層を有する。
【0036】
OLED310は、基板311上に、陰極312、有機層313及び陽極314を順次堆積させることによって生成されることができる。当該OLEDは、通常、明確さのために図面に示されていないカプセル封入のような幾つかの更なる構成要素を有する。電極層312、314は透明であるので、有機層313内の等方的な光の生成は、OLED310の上側及び下側の両方を介して、活性な光放出を生じ、完全なOLED310は外部光に対して透明である。
【0037】
前記OLEDの放出は、必ずしも、両側と同一ではないが、例えば、前記陰極上に配されている異なる層の高性能な光学設計によって調整されることができる。例えば、前記陽極及び前記陰極によって透過される光の割合は、50:50であっても良いが、80:20でもあっても良く、又は100:0であってさえも良い。OLED310の陽極314は、有機層313内に電荷を注入するが、透過性と前記陽極を介して及び前記陰極を介して発される光の量とを調整するための役割も有し得る。前記OLEDの積層の精細度と、陽極:陰極比を制御するための光学スタックとに依存して、前記OLEDの透過性は、可視範囲全体の80―85%までであり得る。
【0038】
上述のように、透明OLED310は、レンズ(図1参照)上に又はレンズの前方にレンズから或る距離において(図2)配されることができる。前者の場合には、前記OLEDは、好ましくは、前記レンズの上部に直接的に作製され、後者の場合には基板211として働く。両方の場合において、前記OLEDが、消耗品と考えられて再利用されないか又は前記OLEDが殺菌の対象となり再利用されることができるかの何れかのような概念が、形成されることができる。
【0039】
記載されている概念は、興味がある領域全体が、均一な、拡散光によって照明されるという有利な点を有する。更に、前記光源が、透明OLEDが不均一な光放出を有するように調整される場合(例えば、前記光の殆どが、前記陽極を通って送られ(80%まで)、前記陰極を通って送られる光は殆どない場合)、コントラストは、向上されることができる。この場合、興味のある当該対象は、前記陽極側を前記対象に向けて前記OLEDを配することによって照明され、前記画像は、前記OLEDを介して捕捉される。
【0040】
内視顕微鏡法(endomicroscopy)に関して、上述の有利な点は、最大限に利用される。顕微鏡は、通常、短い作動距離を有しており、この場合、従来の光源は、対象を良好に照明することができないからである。
【0041】
一般に、陰極を介する透過性及び放出が、結合される。高い透過性とは、例えば、陰極を介する高い放出を意味する。以下の表1においては、様々な陽極:陰極比の状況からのコントラストCXの計算が、示されている。前記コントラストが、前記陰陰極による光反射を介して前記陽極を介する光放出を増大させることによって改善されることが分かる。しかしながら、得られる前記OLEDの全体的な透過性の減少は、結果として、前記画像センサ上の画像輝度の低下をもたらす。この輝度は、陰極の透過性(TC)に対してTCとして増減する(scale)からである。従って、最適な陰極透過性は、画像センサの感度、対象の反射率及びOLED輝度に依存する。高い感度、反射率及びOLEDの輝度は、低いTCを可能にし、従って高いコントラストに至る一方で、前記センサ上の前記画像輝度を画像化に対して十分に高く保持する。
【表1】

【0042】
図4は、模式的な側断面図において、透過性であるが単一側部発光を有するOLED410であって、これにより改善されたコントラストが達成されることができるOLED410の設計を示している。前記対応する座標系の正のz方向から見ると、OLED装置410は、以下の順序において、
− 透明基板411。例えば、ガラス又は水バリア性を備える透明プラスチック製。
− 第1の透明電極層412。例えば、場合によっては、有効なシート抵抗を低下させる微細な金属格子構造と組み合わせた、PEDOT:PSSのような、有機層、ドープされた酸化亜鉛又はITOから成り得る所謂「陽極」である。
− エレクトロルミネッセントゾーン431と不活性(即ちエレクトロルミネッセントでない)ゾーン432とに機能的に(この実施例においては、物理的にも)構造化される有機層413であって、前記ゾーンは、x方向に互いに隣接して配されていると共に、にx方向に前記有機層全体を通って延在している、有機層413。エレクトロルミネッセントゾーン431において、光は、電子及び正孔が、異なる側からこの層に注入され再結合した場合に、従来のOLEDから知られている過程によって生成される。 不活性ゾーン432は、典型的には、エレクトロルミネッセントゾーン431の変更された材料から成る。しかしながら、一般に、前記不活性ゾーンは、完全に異なる材料(有機又は無機)材料から成り得る。
− 第2の透明電極層414。所謂「陰極」であって、例えば、銀(Ag)の薄い層から成る。
− 非透明ゾーン451及び透明ゾーン452のパターンから成る「ミラー層」450。図4の例において、ミラー層450の構造は、全体的にも(in global)居所的にも、有機層413の構造と位置合わせされており、この位置合わせは、所与の配置方向(示されている実施例においてはz方向)に対して判断される。当該図によって提案されているように、透明ゾーン452は、単純に何もない状態であり、周囲に対して開放されている。しかしながら、好ましくは、OLED装置410は、当該図に示されていない何らかの透明パッケージングによって、上部側において仕上げられ封止される。
を有する。
【0043】
適切な電圧が、陽極412と陰極414との間に印加される場合、光は、エレクトロルミネッセントゾーン431において生成される。光線L1によって示されているように、光の一部は、直ちに基板411へと指向され、自身の前側(図の下側)を通って、所望されているように、OLED装置410から出る。
【0044】
光線L2によって示されているように、生成された光の他の部分は、OLED装置410の後ろ側に向かって、対向する方向(正のz方向)に発される。しかしながら、ミラー層450の非透明ゾーン451のために、前記後ろ側を通っての放出は、遮断される。非透明ゾーン451が、典型的には、これらの下側において反射性であるので、光線L2は、単に吸収されるだけでなく反射され、従って、前記前側を通ってOLED410を出ることもできる。この図は、更に、陰極414に向かって前記OLEDによって発され透明ゾーン452を介してOLED装置410を出ることができる光線L3を、更に示している。
【0045】
光線LT及びLT'によって示されているように、周囲の光は、ミラー層の透明ゾーン452においてOLED装置410を自由に通過することができる。結果として、OLED装置410は、(少なくとも部分的に)透明であるように見えると同時に活性な光放出の主要な又は一次方向(図4の負のz方向)を有する。
【0046】
図1及び2に示されている本発明の実施例において、均一で単色の透明OLEDは、それぞれ、内視鏡レンズの前側に(図1)及び前記レンズから離間されて(図2)配されている。前記透明OLEDとは、或る距離に位置されている対象を照明するものと意図されており、前記レンズと同じ大きさである。
【0047】
図5は、本発明による機器の軸(z軸)に沿った図において、1つの中心、円形領域515が透明(前記内視鏡レンズよりも小さい)である一方で、この透明な領域の周りの、もう1つの、環状領域516が、透明でなく前側(のみ)に、即ち観察の対象に向かって光を発するように、OLED510は処理されている。OLED510は、前記内視鏡レンズの前側に関して中心を合わされており、レンズとOLEDとの間の距離は、調整可能である。
【0048】
OLED510は、単色光又は白色光を発することができる。代替的には、前記システムは、異なる色を発する2つ以上のOLEDサブユニットを含むことができる。このようなサブユニットは、個々にアドレス指定可能であるべきであり、オプションで、異なる目的のために使用されることができる。透明サブユニットは、例えば、観察のために使用されることができ、他の(非透明)サブユニットは、光(例えば、光療法として使用される紫外光)による創傷治療、又は異なる波長の光による化学薬品の活性化のために、使用されることができる。このような機器によってなされる操作及び変形は、同時に観察されることができる。
【0049】
図6は、類似の軸方向図において、OLED610を示しており、OLED610は、3つの同心状に配されたサブユニット(例えば、内側及び外側の環状サブユニット616、617と一緒の、中心の円形の、透明サブユニット615)を有している。
【0050】
図7は、OLED710の類似の実施例を示しており、OLED710は、半環状の形態における2つのサブユニット716、717と一緒に中心の円形の、透明サブユニット715を有している。
【0051】
(透明)窓を照明するOLEDを備えている上述のシステムは、外側又は内側の体調査及び創傷治癒のための、種々の種類の内視鏡、カテーテル等のために使用されることができる。これは、特に、内視顕微鏡に関して有利である。
【0052】
本発明は、1つ以上の非透明OLEDが機器の前記観察通路内に配されている実施例も含むことに留意されたい。従って、(反射性の後方側部を備える)OLEDを機器の光学システム内の発光ミラーとして使用することも可能であり、前記発光ミラーは、到来する光線を目標領域に向かって反射し、光を外側に発する。
【0053】
非透明OLED構造の設置に関して、以下の注意が該当する
− 前記OLEDの構造は、好ましくは、対応するレンズシステムの主平面(通常、隔膜が配置される)内に配されるべきである。当該主平面は、当該光路内の対象が前記センサ上に画像化されない場所だからである。これらは、前記光を均一に減少させるのみである。
− 前記OLED構造は、好ましくは、回折を防止するために、不規則であるべきである。
− 分解能に関して非透明OLEDを(前記レンズの外側における環よりもむしろ)レンズの中心における円板として配置することが有利であろう(前記環は、レンズのNAを減少させるからである)。
− 全てのOLEDは、好ましくは、迷光を生じる内部光反射を減少するために、前記内視鏡の外側に(又はできるだけ前記外側まで遠くに)配されるべきである。
【0054】
要約すると、内視鏡のような機器のための光源としてOLEDを使用することが提案される。このような機器は、非常に小さい距離から観察される画像の歪み又は劣化を伴うことなく、内臓又は内部組織の改善された画質を提供する。前記OLEDの光源は、レンズ上に独立に設けられることもでき、又はレンズの一部として技術的に処理されることさえできる。このようにして、観察される前記画像は、陰影効果を伴うことなく高質になり、前記機器は、上部における前記レンズの変更のみによって、例えば、観察、腫瘍の検出又は処置のような、複数の機能を得ることができる。従来の内視鏡照明に対する他の有利な点は、横方向の空間減少であり、前記内視鏡の直径を小さく保持するのに重要である。
【0055】
最後に、本明細書において、「有する」なる語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の構成要素は、複数のこのような構成要素を排除するものではなく、単一のプロセッサ又は他のユニットが、幾つかの手段の機能を果たすことができることが、指摘される。本発明は、如何なる新しい特徴的なフィーチャにも特徴的なフィーチャの如何なる組み合わせにもある。更に、添付請求項における符号は、これらの範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の内部キャビティに少なくとも部分的に導入されることができる機器であって、
a)観察通路を通って外側から到来する光を目標領域内に収集する光学システムと、
b)前記光学システムの一部であると共に前記観察通路内に少なくとも部分的に配されている照明装置と、
を有する機器。
【請求項2】
前記照明装置がOLEDであることを特徴とする、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記OLEDは透明であることを特徴とする、請求項2に記載の機器。
【請求項4】
前記光学システムがレンズ及び/又は導波路を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の機器。
【請求項5】
画像センサを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の機器。
【請求項6】
前記OLEDが、自身に向かうよりも前記目標領域から離れる方向に高い放出を有することを特徴とする、請求項2に記載の機器。
【請求項7】
前記OLEDが、
− 陽極、陰極、及び前記陽極と前記陰極との間に配されている有機層であって、少なくとも1つのエレクトロルミネッセントゾーン及び少なくとも1つの非エレクトロルミネッセントゾーンによって前記有機層内の構造を構成している陽極、陰極、及び前記陽極と前記陰極との間に配されている有機層、並びに
− 前記有機層のエレクトロルミネッセントゾーンに位置を合わせられている少なくとも1つの非透明ゾーンと、前記有機層の非エレクトロルミネッセントゾーンに位置を合わせられている少なくとも1つの透明ゾーンとを備える構造を有しているミラー層、
を有することを特徴とする、請求項2に記載の機器。
【請求項8】
前記OLEDが、前記光学システムのレンズ上に配されていることを特徴とする、請求項2に記載の機器。
【請求項9】
前記OLEDは、前記目標領域に対して移動可能であることを特徴とする、請求項2に記載の機器。
【請求項10】
前記OLEDがキャップ内に取り付けられていることを特徴とする、請求項2に記載の機器。
【請求項11】
前記OLEDが、交換可能な構成要素として設計されていることを特徴とする、請求項2に記載の機器。
【請求項12】
前記OLEDは、異なる放出及び/又は透過特性を備える少なくとも2つのサブユニットから構成されていることを特徴とする、請求項2に記載の機器。
【請求項13】
医療用途において使用するための請求項1、2、3、5乃至12の何れか一項に記載の危機。
【請求項14】
前記機器の観察通路内に配されるべきである透明なOLEDを有する、請求項2に記載の機器のための交換可能な構成要素。
【請求項15】
対象の内部キャビティを検査する方法であって、
a)OLEDによって前記内部キャビティ内に光を発するステップと、
b)前記OLEDを透過した及び/又は前記OELDにおいて反射された前記キャビティから到来する光を収集するステップと、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−517314(P2012−517314A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549711(P2011−549711)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050549
【国際公開番号】WO2010/092518
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】