説明

照明用ガラス

【課題】無鉛ガラスでありながら、十分な電気絶縁性を有し、しかも優れた熱加工性を有し、ステム管等に好適な照明用ガラスを提供する。
【解決手段】本発明の照明用ガラスは、ガラス組成として、実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、B 0〜2%、CaO 0〜4%、MgO 0〜4%、SrO 0〜4%、BaO 5〜12%、ZnO 0〜9%、BaO+ZnO 6〜15%、CaO+MgO+SrO+BaO+ZnO 8〜16%、SrO/(BaO+ZnO)<0.3、NaO 3〜12%、KO 3.5〜9%、LiO 0.5〜5%、NaO+KO+LiO 10〜18%含有し、且つステム管に用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステム管等に使われる実質的に鉛を含まない照明用ガラスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯や、白熱電球の電極線が挿入、封止されるステム部分には、電流がリークしないように十分な高電気絶縁性が必要であり、電極線封止部を低温で加工封止できるように鉛を20〜30質量%含むガラスが使用されてきた。ところが鉛のもつ有害性から、鉛を含まないガラス組成が要求され、開発されている。鉛を含有しない照明用ガラスとして、例えば特許文献1などに記載されたものがある。同文献に記載のガラスは、BaOを7〜11%含有し、従来の鉛ガラスと同等の電気絶縁性をもたせた無鉛ガラスであり、ステム用途や蛍光灯のバルブに使用可能なものである。この種の無鉛ガラスは、鉛ガラスほどではないものの、加工性に優れたものである。
【0003】
また近年、コンパクト蛍光灯が広く普及しつつある。この蛍光灯は、バルブが曲げられたり、繋げられたりするなど複雑なバルブ形状を有しており、そのバルブ材質には易加工特性が求められる。このため従来は加工性に優れた鉛ガラスが用いられてきたが、このガラスに関しても無鉛化が求められている。
【0004】
そこで特許文献1に代表される無鉛ガラスが、鉛ガラスの代替としてコンパクト蛍光灯バルブにも使用されはじめている。しかも無鉛ガラスであるがゆえに、蛍光灯の光出力の効率が改善されることが明らかになった。これは、無鉛ガラスが鉛ガラスよりも屈折率が低く、ガラス表面での光の反射が小さい。そして可視光線は、蛍光灯内部の蛍光体で発生するが、バルブを構成するガラスの反射が小さいために、バルブを通過する光線量が増加するためである。このような事情からコンパクト蛍光灯バルブ用途においても、益々無鉛ガラスの需要が高まっている。
【特許文献1】特開平6−206737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般の蛍光灯や電球などのランプ製造ラインでは、生産性向上の追及によるラインの高速化が図られているが、これが無鉛ガラスのステム加工を難しくさせている。そこで無鉛ガラスに対し、更なる熱加工性改善の要求が高まっている。
【0006】
また省エネルギー化の観点から、コンパクト蛍光灯についても、更にコンパクトで高出力なランプが求められている。そのため更にバルブ形状が複雑になり、加工が難しくなってきている。しかもバルブの細径化が進んでおり、これに伴い、封止部にステムを用いず、代わりにバルブ端部を加熱軟化させて押し潰し、直接電極線を封止するという簡略化した構造が採用され始めている。このためバルブ用途においても更なる熱加工性の改善が必要となってきている。加えてこの構造の場合には、電極線を直接封止するために、従来のステム管と同様に高電気抵抗が要求される。
【0007】
本発明の目的は、これらの用途に使用可能とするために、無鉛ガラスでありながら、十分な電気絶縁性を有し、しかも優れた熱加工性を有する照明用ガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の照明用ガラスは、ガラス組成として、実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、B 0〜2%、CaO 0〜4%、MgO 0〜4%、SrO 0〜4%、BaO 5〜12%、ZnO 0〜9%、BaO+ZnO 6〜15%、CaO+MgO+SrO+BaO+ZnO 8〜16%、SrO/(BaO+ZnO)<0.3、NaO 3〜12%、KO 3.5〜9%、LiO 0.5〜5%、NaO+KO+LiO 10〜18%含有し、且つステム管に用いることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ランプ用ステムの製造は、おおよそ次のように行われる。まずステム管用の長尺管の一端をバーナーで直接加熱軟化させた後、カーボンまたは耐熱鋼製の冶具で、加熱部の内側から管を押し広げ、フレア状の形状にした後、所定の長さに切断する。その後切断されたフレア状のステム管にバーナーの熱加工により、排気管を溶着し、電極線を封止し、ステムが作られる。このようにステムの加工では多くの熱加工工程が組み込まれている。
【0010】
ステムの作製過程で多用される熱加工工程は、ガラスの軟化点と作業温度との間の適切な粘度条件で行われる。この温度範囲外では、溶着や封止ができなかったり、溶着する前に変形したりするなどの問題が発生する。このため、ガラスの軟化点と作業温度の温度差が大きい方が加工域の温度変化に対し粘度変化が小さくなるので、設定する加工温度に対する許容量が大きくなり、加工しやすいガラスとなる。なおこの点は、ステムの製造に特有のものではなく、コンパクト蛍光灯のバルブ自体の加工や、バルブによる電極線の直接封止を行う場合等、その他の熱加工工程にも共通する事項である。
【0011】
それゆえ熱加工性に優れたガラスを得るためには、ガラスの軟化点と作業温度の温度差が大きくなるようにガラスを設計することが重要である。そして本発明者等は、2価の金属酸化物成分(アルカリ土類金属酸化物及びZnO)に着目して種々の実験を行った結果、ガラスの加工性に与える有用な知見を得た。その内容は次の通りである。
【0012】
CaO、MgO、SrO、BaO等のアルカリ土類金属酸化物やZnOは、易加工性と高電気抵抗を得るために含有され、鉛含有ガラスに近い加工性を得るには必須の成分である。その合量は8%未満では効果が無く、16%を超えると、ガラス管成形時に失透しやすくなる。
【0013】
しかもこれらの2価金属酸化物の中でも特定の成分の含有量及び割合を最適化すると、加工性が一層向上する。具体的にはBaOとZnOの合計含有量が6%以上で、かつBaOとZnOの合計含有量に対するSrOの含有量の割合(SrO/(BaO+ZnO))が0.3未満(0を含む)であるとき、ガラスの軟化点から作業温度間の温度差は著しく広がり、十分な易加工性をガラスに与えるのである。なおBaOとZnOの合量が15%を超える場合、ガラス管成形時に失透するおそれがある。
【0014】
なお上記2価金属酸化物の個々の含有量を上記のように限定した理由は次の通りである。
【0015】
CaO及びMgOは易加工性と高電気抵抗をガラスに与えるが、各々4%を超えると透過率特性の観点から可視域、特に近紫外付近の透過率低下により、バルブとして用いた場合に高光出力のランプを得ることが困難になる。なおCaO及びMgOの好ましい範囲は各々0〜3%である
SrOは易加工性と高電気抵抗をガラスに与えるが、4%を超えると透過率特性の観点から可視域、特に近紫外付近の透過率低下により、バルブとして用いた場合に高光出力のランプを得ることが困難になる。また他の2価金属酸化物と比較し、ガラスの軟化点から作業温度間の温度差を広げる効果が少ないため、好ましい範囲は0〜3%であり、含有量は出来る限り最小限に留めるのが望ましい。
【0016】
BaOは易加工性と高電気抵抗をガラスに与える効果が大きく、鉛含有ガラスに近い加工性と電気特性を得るには必須の成分である。また透過率特性の観点からも他のアルカリ土類金属酸化物と比べて可視域、特に近紫外付近の透過率低下を起こしにくい。BaOが5%より少ないとその効果を得られない。また同等の加工性や電気抵抗を得るためにCaO、MgO等の他のアルカリ土類金属酸化物を増量すると透過率特性が悪化し、バルブとして用いた場合に高光出力のランプを得ることが困難になる。一方、BaOの含有量が12%を超えるとガラス管成形時に失透が起こりやすい。なおBaOの好ましい範囲は5〜10%である。
【0017】
ZnOは耐侯性を向上させる効果をもつ。またBaO同様、ガラスに鉛含有ガラスと近似する易加工性と高電気抵抗を与える。また含有量が9%以下であれば、可視域、特に近紫外付近の透過率低下という問題を起こしにくい。なおZnOの好ましい範囲は0〜7%である。
【0018】
また本発明のその他の組成について、その範囲を限定した理由は次の通りである。
【0019】
SiOはガラスの骨格を形成する成分である。SiOが65%より少ないとガラス骨格の生成が不十分となり、機械的強度、化学耐久性、体積抵抗率が低くなる。SiOが75%より多いとガラスの粘性が上昇し、溶融成形が困難になる。なおSiOの好適な範囲は67〜74%である。
【0020】
Alも骨格形成成分であり、また化学耐久性を向上させるとともに、ガラス成形時の失透を抑制する効果がある。Alが0.5%より少ないとその効果がなく、5%より多いと溶融や成形が困難になる。Alの好適な範囲は0.5〜4%である。
【0021】
は化学耐久性を改善し、高温粘性を低下させる効果がある。しかしBは環境負荷物質であるため、やむを得ない場合を除き、使用しないことが望ましい。Bが2%より多い場合は、溶融時の揮発が多くなり、溶融炉を構成する耐火物と反応し、溶融炉を損傷しやすくなる。
【0022】
NaO、KO、LiOといったアルカリ金属酸化物は、熱膨張係数を調整し、またガラスの粘性を低下させて加工性を高めるための必須の成分である。NaO、KO及びLiOを特定の比率で共存させることにより、アルカリ混合効果とよばれる化学耐久性や電気絶縁性を向上させる効果が得られる。またLiOは、膨張調整機能が他のアルカリ金属成分に比べて高く、少量の添加で効果が得られ、粘性を低下させることから加工温度の低温化に有効な成分である。
【0023】
NaOが3%未満の場合はその効果がなく、12%を超える場合はアルカリ混合効果が得られず、化学耐久性や電気絶縁性が悪くなる。
【0024】
Oが3.5%未満の場合はその効果がなく、9%を超える場合はアルカリ混合効果が得られず、化学耐久性や電気絶縁性が悪くなる。
【0025】
LiOが0.5%未満の場合、加工温度調整やデュメット電極線との膨張の整合性を得ようとするとNaOやKOを多量に含有させる必要が生じ、アルカリ混合効果が得られず、化学耐久性や電気絶縁性が悪化する。逆に5%を超えるとNaOやKOを少量しか含有させることができず、やはりアルカリ混合効果が得られない。
【0026】
さらにNaO、KO、LiOの合量が10%未満では、ステム管用途またはそれに準ずる使い方をした場合にデュメット電極線との膨張の整合性が得難くなる。またガラスの粘性が上昇し、加工性が悪化しやすくなる。またアルカリ金属酸化物の合量が18%を超えるとステム管用途に用いた場合にデュメット電極線との膨張の整合性が得難くなる。また化学耐久性が悪化し、バルブとして用いた場合、光出力低下の原因となるアマルガムの生成を起こし易くなる。
【0027】
またNaO、KO、LiOが、NaO:3〜10%、KO:4〜7%、LiO:0.5〜4%の割合で構成されるとき、より高いアルカリ混合効果が得られ、電極線が封入されるステム管や、電極線を直接封止するタイプのバルブに要求される電気絶縁性を十分満足させることができる。
【0028】
CeOはガラスに紫外線遮蔽効果を付与し、紫外線照射による透過率低下を小さくする効果があるため、バルブとして用いる場合に有用な成分である。また清澄剤としても機能する。CeOが1.2%より多いとガラスが黄色に着色しやすく、高光出力のランプを得ることが難しくなる。好ましくは、含有量を0.9%以下に留める方が良い。
【0029】
Sbは清澄剤として有用な成分であるが、CeOとの共存下では、ガラスを黄色く着色させる傾向があるので、バルブ用途では共存させない方が良い。また自動車用ウェッジ球のようにバルブの一端を電極線や排気管とともに熱加工封止する場合、熱加工により黒化するため、その含有量は0〜1%、特に0〜0.2%が好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。
【0030】
上記の成分以外にも種々の成分を添加することが可能である。例えば、清澄剤としてClやSOを使用することができる。バルブ用途には、TiO、ZrO等の紫外線着色防止効果を有する成分の添加が可能である。なお不純物として、Feが含まれることが多いが、Feは紫外線遮蔽効果をガラスに与える反面、有色イオンであり、可視域の透過率を低下させる要因ともなるので、バルブ用途としては、0.8%以下に制限することが重要である。さらに環境上の理由から、PbOやAsの使用は避けるべきであり、実質的に含まないようにすべきである。
【0031】
また本発明の照明用ガラスは、下記の式で表される赤外線透過率係数(X)が0.1以上であることが望ましい。これは以下の理由による。
【0032】
X=(log10a−log10b)/t
a:3846cm−1の透過率(%)
b:3560cm−1付近の極小点の透過率(%)
t:測定試料厚み(mm)
即ち、高光出力の蛍光灯を得るには、蛍光灯内部の紫外線を放出する水銀が消耗しないようにすることが重要である。水銀が消耗する原因は、蛍光灯バルブのガラス中に含まれるナトリウムが、ガラス内部からガラス表面へ移動し、水銀とアマルガムを生成することにある。本発明のガラスにおいては、アルカリ混合効果を利用してナトリウムの移動を少なくし、アマルガム生成を抑えている。しかしながら、蛍光灯製造工程中のバルブを曲げたり繋いだりする熱加工時に、ナトリウムがガラスから揮発してバルブの内表面や蛍光体中に取りこまれる。これが蛍光灯点灯時に、蒸発した水銀と瞬時に反応してアマルガムを生成してしまう。結果として水銀が消耗し、ランプの光出力が低下する。従って、加工温度を下げ、熱加工時のナトリウムの揮発を抑えることが、高光出力のランプを得る上で重要となる。加工温度の低下には、ガラスの加工域(軟化点から作業温度)の温度を下げることが必要である。
【0033】
ガラスの加工域(軟化点から作業温度)の温度を低下させる手段として、ガラス中の水分量を増加させることが有効である。つまりガラス中の水は、照明用ガラスに必要な電気抵抗特性、ジュメットリード線との熱膨張整合性などを大きく変化させずに、ガラスの加工域の温度を低下させる働きがあるためである。上式に記した赤外線透過率係数(X)はガラス中の水分量と比例し、この係数が0.1以上であれば、ガラス中に上記効果を得るのに十分な水分がガラス中に存在していることを意味する。上記理由から、ガラス中の水分は多い方が好ましいが、赤外線透過率係数(X)が0.5を超えると、自動車ウェッジ球のように電極線と排気管とともにバルブの一端を熱加工封止する時にガラス内部から水が蒸発し、一部分がバルブ内面に吸着され、ランプ点灯時にタングステンフィラメントを損傷させるおそれが生じる。
【0034】
なお水分量の調整は、ガラス溶融時の燃焼ガス中の水分や、ガラス原料(硼酸と無水硼砂の混合比)で調整する。また、これらで調整しきれない場合には、ガラス溶融時に、乾燥空気や水蒸気のバブリングを行うことによって調整できる。
【0035】
次に本発明の照明用ガラスを用いて、蛍光灯等のステム管やバルブを作製する方法を述べる。まず上記組成となるように原料を調合し、混合した後、溶融炉にてガラス溶融する。このとき必要に応じてガラス中の水分量を調整する。次に溶融ガラスをダンナー法、ダウンドロー法、アップドロー法等の管引き法を利用して管状に成形する。その後、管状ガラスを所定の寸法に切断し、必要に応じて後加工することにより、ステム管やバルブを得ることができる。
【0036】
このようにして得られたステム管やバルブを用い、常法に従って一般の蛍光灯や電球、或いはコンパクト蛍光灯を作製することができる。
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。なお各表における「ND」は、未測定であることを示している。
【実施例1】
【0038】
表1は、含有するアルカリ土類酸化物の種類と含有量を変更し、ガラスの加工性を示すガラスの軟化点と作業温度の温度差を評価した実験例(試料No.1及び2)、表2は含有する水分量を変更し、加工温度域(ガラスの軟化点から作業温度)を評価した実験例(試料No.3〜5)である。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
各試料は次のようにして調製した。
【0042】
まず表に示す組成となるようにガラス原料を調合した。さらに調合した原料をライカイ機と呼ばれる乳鉢式擂り潰し攪拌機で10分間攪拌し、300gの原料バッチを得た。次に原料バッチを容量300cmの白金ロジウム合金製の坩堝に入れ、箱型電気炉にて1450〜1500℃で4時間溶融した。なお溶融開始後30分毎に白金攪拌棒を用いて計3回攪拌を行った。
【0043】
なお含有させる水分量を変更するために坩堝内で溶融中のガラスに白金ロジウム製のパイプを挿入し、水蒸気をこのパイプを通してガラス中に流し込み、流し込む水蒸気量を調整しながら、水蒸気バブリングを行った。
【0044】
続いて溶融ガラスをカーボン製成形板上に流し出し、560℃に保持された箱型カンタル式アニール炉内に入れ、4℃/分の平均冷却速度で炉冷した。さらにアニール後のガラス塊から試料を作製し、評価に供した。結果を表1,2に示す。
【0045】
表1から明らかなように、BaOの一部をSrOに置換し、SrO/(BaO+ZnO)>0.3に組成構成を変更すると、ガラスの軟化点と作業温度の差が狭くなることが判明した。
【0046】
また表2から、水分含有量を示す赤外線透過率係数(X)の値が大きくなると、ガラスの軟化点が大きく低下することが判明した。このとき作業温度も同時に下がるが、その度合いは軟化点の低下ほどではなく、結果として、ガラスの軟化点と作業温度の温度差が広がることが明らかになった。
【0047】
なお熱膨張係数は、30〜380℃における平均線熱膨張係数を示すものであり、ディラトメーターを用いて測定した。軟化点は107.6dPa・sの粘度を示す温度、作業温度は104dPa・sの粘度を示す温度であり、それぞれASTMで規定されるファイバー引っ張り法、及び白金球引き上げ法を用いて求めた。体積抵抗率は、ASTM C657−78に基づき測定し、150℃での抵抗値を対数表示した。アルカリ溶出量は、JIS R−3502に基づいて測定したものである。
【0048】
赤外線透過率係数(X)は、赤外分光光度計にて測定した3846cm−1における透過率aと、3560cm−1付近の極小点の透過率bを下記式に代入し、1mm厚に換算して求めた。ここでtは測定した試料の厚さ(mm)を表している。
【0049】
X=(log10a−log10b)/t
400nmでの透過率は、分光光度計にて、厚さ1mmの両面を光学研磨した試料を測定したものである。
【実施例2】
【0050】
表3は本発明の他の実施例(試料No.6〜9)を示している。なお各試料は、実施例1に準じて調製し、評価した。
【0051】
【表3】

【0052】
表3により、本発明の実施例である試料No.6〜9は加工温度域が広く、また十分な体積抵抗率を示していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明の照明用ガラスは、十分な電気絶縁性を有するとともに熱加工性が良い。このためステム管に用いることができ、しかも一般蛍光灯や電球の製造ラインスピードに対応できる。またコンパクト蛍光灯用バルブとして用いられた場合は、更なるコンパクト化のための複雑な加工に対応でき、また電極線を直接封止することができる。また水分量を示す赤外線透過率係数(X)を0.1以上に調整すれば、加工温度を低下させることが可能になることから、水銀消耗量が少なく、高光出力なランプを作製することが可能になる。それゆえステム管やコンパクト蛍光ランプのバルブ材料として好適である。
【0054】
なお、本明細書においては、主としてステム管やコンパクト蛍光ランプのバルブ用途について説明したが、本発明のガラスはこれらに限られるものではなく、他のランプ用途(液晶ディスプレーに用いられるバックライトとしての蛍光ランプ用バルブおよび平面ランプ用ガラスなどの紫外線により蛍光体を発光させ、光を取り出す側のガラスなど)や、他のランプ用部材(排気管など)に使用しても良い。またウェッジ球に代表される自動車球にも適し、着色剤を添加して橙色の方向指示器用ランプや赤色のストップランプなどのバルブ材料にも使用可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成として、実質的に鉛を含有せず、質量百分率で、SiO 65〜75%、Al 0.5〜5%、B 0〜2%、CaO 0〜4%、MgO 0〜4%、SrO 0〜4%、BaO 5〜12%、ZnO 0〜9%、BaO+ZnO 6〜15%、CaO+MgO+SrO+BaO+ZnO 8〜16%、SrO/(BaO+ZnO)<0.3、NaO 3〜12%、KO 3.5〜9%、LiO 0.5〜5%、NaO+KO+LiO 10〜18%含有し、且つステム管に用いることを特徴とする照明用ガラス。
【請求項2】
下記の式で赤外線透過率係数(X)が0.1以上であることを特徴とする請求項1に記載の照明用ガラス。
X=(log10a−log10b)/t
a:3846cm−1の透過率(%)
b:3560cm−1付近の極小点の透過率(%)
t:測定試料厚み(mm)

【公開番号】特開2009−67676(P2009−67676A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321684(P2008−321684)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【分割の表示】特願2003−34605(P2003−34605)の分割
【原出願日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】