説明

照明用レンズおよび照明装置

【課題】 LED光源から効率よく光を取り出すことができ、照射面での色むらも低減できる照明装置およびそれに用いるフライアイレンズを提供する。
【解決手段】 そのフライアイレンズは、略半球状をなすとともに、その球面側の中央部を前記発光ダイオードチップからの入射側とし、 前記球面の中央には、当該発光ダイオードチップの投影面よりも大きな投影面をなす凹部を設ける。 出射面には、出射光が拡散するように多数のレンズ面を形成する。照明レンズにおける前記出射面のレンズ面数をn、出射面の面積をS平方ミリメートルとしたときに、 S/n≦0.2 の範囲、 前記凹部の深さをhaミリメートルとしたときに、 0.91≦ha≦3.50 の範囲で、形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(LED)を用いた照明装置およびその照明装置に用いるレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDチップを用いた一般的な照明装置は、基板と、その基板上に固定される反射体と、その反射体に形成された凹部内の中央に固定された発光ダイオードチップとによって構成されている。
【0003】
さて、携帯することを前提として設計された携帯電話機やノート型コンピュータ等の携帯情報端末における出力画面は、よりいっそうの小型化、薄型化が求められているために、バックライトにおいても小型化、薄型化が要求されている。
たとえば、薄くて狭い空間でも照明が可能な領域でサイドビュー型LEDを採用し、そのLEDを活かす構造を備えたバックライトが提供されている。
【0004】
さて、LEDチップを用いた照明装置において需要の多い白色光を発光させるには、以下のような手法が採用されている。
すなわち、LEDとしては、青色光を発光する発光ダイオードチップを採用する。そして、前述の反射体を形成するに際して、材料となる樹脂に黄色発光蛍光体を含有させた蛍光体層を凹部内に充填することで、蛍光体層を形成する。その蛍光体層によって、凹部内にてLEDが発光する青色光にて黄色発光体を励起させ、励起によって発光した黄色光とLEDの青色光とを混色させて白色光を得ている。
【0005】
さて、凹部内の中央のLEDチップから青色光を発光し、凹部内の全域の蛍光体層から黄色光を発光するため、凹部を外方から見た場合、これら青色光の発光源と黄色光の発光源とで大きさに違いがある。凹部から放出される光を一枚のレンズにて制御しようとすると、照射面に色むらが生じやすい。青色光の発光源と黄色光の発光源との大きさの違いがレンズによって照射面に投影されるため、照射面の中央域では青色光の照度が高い分布となり、周縁域では黄色光が分布することとなるからである。
【0006】
上記の色むらの問題を解決するため、特許文献1に開示された技術が提供されている。すなわち、レンズとして1枚または2枚のフライアイレンズを用い、このフライアイレンズを複数の発光ダイオードチップに対して所定の間隔をあけて配設するのである。このフライアイレンズを用いることにより、照明装置の厚みを薄くしながら、特定の照射範囲を照射することを可能としている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−190954号公報
【0008】
フライアイレンズを用いる場合、このフライアイレンズを発光ダイオードチップに対して所定の間隔をあけて配設するため、発光ダイオードチップから光軸方向へ放出された平行光はフライアイレンズに効率よく入射する。しかし、発光ダイオードチップから光軸方向に対して交差する方向へ放出された光は、フライアイレンズに入射しなかったり、反射してしまうなどして、光を効率よく取り出すことができない、という問題がある。
【0009】
そこで、特許文献2では、上述したような手法で得られる白色光を効率よく、しかも照射面での色むらを低減できる技術が開示されている。
【0010】
【特許文献2】特開2007−265964号公報
【0011】
この技術は、「複数の光源部をマトリクス状あるいは直線状に隣り合うように配列し、光取出レンズは、入射面で青色光および黄色光を平行光とし、全反射面で青色光および黄色光を平行光とし、複数のレンズ面で青色光および黄色光の平行光を集光する」というものである。図2に、その主要部を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献2に記載された技術には、以下のような特徴があった。
すなわち、「複数のレンズ面によって平行光を集光させる」という機能をなすため、色むらが取りきれない場合があった。そして、そのような色むらを目立たなくするための最適値を見出すことができずにいた。
また、発光ダイオードから発光される入射光をできる限り高い効率で取り出すことについては、まだ改善の余地があるが、どのような改善が効果的であるかは、パラメータごとに明確には解明されていなかった。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、光源からの光を効率良く取り出すとともに、照射面の色むらを軽減することである。
請求項1から請求項6に記載の発明の目的は、光源を発光ダイオードとした場合に、光源からの光を効率良く取り出すとともに、照射面の色むらを軽減する照明レンズを提供することにある。
請求項7から請求項9に記載の発明の目的は、光源からの光を効率良く取り出すとともに、照射面の色むらを軽減する照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
フライアイレンズについて、出射光の指向角に拡散効果を持たせること、およびそのフライアイレンズと発光ダイオードチップとの距離についての最適値を探ることで、前述の課題を解決する。
【0015】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、 発光ダイオードチップから発光される光を入射させて出射するためのフライアイレンズに係る。
そのフライアイレンズは、略半球状をなすとともに、その球面または非球面側の中央部を前記発光ダイオードチップからの入射側とし、 前記球面または非球面側の中央には、当該発光ダイオードチップの投影面よりも大きな投影面をなす凹部を設ける。
出射面には、出射光が拡散するように多数のレンズ面を形成する。
【0016】
(作用)
請求項1記載の発明では、出射光が拡散するように形成された多数のレンズ面により、色むらが目立たなくなる。
【0017】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の照明レンズを限定したものである。
すなわち、前記照明レンズにおける前記出射面のレンズ面数をn、出射面の面積をS平方ミリメートルとしたときに、
S/n≦0.2
の範囲であるように形成する。
【0018】
(作用)
上記の条件により、従来のフライアイレンズに比べて、面数(レンズ面の数)が多く、色むらの解消に寄与していると考えられる。
S/n≦0.1
の範囲とすると、色むらの解消の効果が顕著となるので、更に好ましい。
なお、S/n>0.2 である場合には、色むらの解消があまり見られない場合があった。
【0019】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の照明レンズを限定したものである。
すなわち、 前記凹部の深さをhaミリメートルとしたときに、
0.91≦ha≦3.50
の範囲であるように形成する。
【0020】
(作用)
請求項3記載の発明では、凹部の深さについて、請求項1または請求項2の条件を満たすフライアイレンズにおいて、光源からの光の取り出し効率を向上させるとともに、照射面の色むらを軽減する最適値の範囲を見出した。
1.2≦ha≦3.0 の範囲とすると、光の取り出し効率向上と照射面の色むら軽減が顕著となるので、更に好ましい。
なお、ha>3.50 および ha<0.91の範囲になった場合には、照射面の色むら軽減があまり見られなかった。
【0021】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の照明レンズを限定したものである。
すなわち、 前記照明レンズの直径をDミリメートル、前記出射面のレンズの曲率半径をRa、反射面の曲率半径をRbとしたときに、
0≦(Ra×Rb)/(D/2)≦10
の範囲であるように形成する。
【0022】
(作用)
上記の条件により、光の取り出し効率を向上させるとともに、照射面の色むらを軽減する最適値の範囲を見出した。
(Ra×Rb)/(D/2)≦6 の範囲とすると、照射面の色むら軽減が顕著となるので、更に好ましい。
なお、(Ra×Rb)/(D/2)>10 である場合には、照射面の色むら軽減があまり見られなかった。
【0023】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の照明レンズを限定したものである。
すなわち、 前記照明レンズを成形する材料の屈折率をndとしたとき、
1.45≦nd≦1.61
を満たすプラスチックを採用する。
【0024】
(作用)
上記の条件に基づくプラスチックを採用することにより、光の拡散効率と色むらの解消とを満たす最適値の範囲となる。それにより、照明面における広い面の全体でより一層の均一な明るさとすることに寄与する。
なお、1.45>nd および nd>1.61である場合には、照明面における広い面の全体で均一な明るさとならない場合が多く見られた。
【0025】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明レンズを用いた照明装置に係る。
すなわち、 光源から発光される光を入射し、出射光が拡散するように形成したフライアイレンズと、 そのフライアイレンズに対する光源として入射側において所定の距離だけ離間させて配置させた発光ダイオードチップとを備えた照明装置である。
【0026】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の照明装置を限定したものである。
すなわち、 前記フライアイレンズと発光ダイオードチップとの距離をhbミリメートルとしたとき、
0≦hb≦4.2
の範囲であるように形成した照明装置である。
【0027】
(作用)
フライアイレンズと発光ダイオードチップとの距離について、光の拡散効率と色むらの解消とを満たす最適値の範囲を見出したものである。
なお、hb>4.2 の範囲となった場合には、光の拡散効率および色むらの解消を同時に達成できない場合が多く見られた。
【発明の効果】
【0028】
請求項1から請求項5に記載の発明によれば、光源を発光ダイオードとした場合に、光源からの光を効率良く取り出すとともに、照射面の色むらを軽減する照明レンズを提供することができた。
請求項6から請求項7に記載の発明によれば、光源からの光を効率良く取り出すとともに、照射面の色むらを軽減する照明装置を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態に係る照明装置の平面図および側断面図である。
【図2】従来技術を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ここで使用するのは、図1である。
図1には、 発光ダイオードチップと、その発光ダイオードチップから発光される光を入射させて出射するためのフライアイレンズとを示す。図1(A)がフライアイレンズの平面図、図1(B)がフライアイレンズおよび発光ダイオードチップの側断面図である。
【0031】
フライアイレンズは、略半球状をなすとともに、その球面側の中央部を前記発光ダイオードチップからの入射側とし、 前記球面の中央には、当該発光ダイオードチップの投影面よりも大きな投影面をなす凹部を設ける。 また、出射面には、出射光が拡散するように多数のレンズ面を形成する。
なお、フライアイレンズは、非球面レンズであっても良い。
【0032】
発光ダイオードチップとしては、青色発光ダイオードを採用する。発光体としての大きさは、縦×横×高さ=約2×2×2ミリメートルである(チップとしては、約1×1×0.5ミリメートル程度)。
また、 前記凹部には、樹脂に発光蛍光体を含有させた蛍光体層を形成し、 前記発光蛍光体は、青色光を白色光として照射するための黄色発光蛍光体とする。 白色光の照明装置とするためである。
【0033】
前記照明レンズにおける前記出射面のレンズ面数をn、出射面の面積をS平方ミリメートルとしたときに、
S/n≦0.2
の範囲であるように形成する。
上記の条件により、従来のフライアイレンズ(たとえば、特許文献2に記載されたフライアイレンズ)に比べて、面数(レンズ面の数)が多い。
【0034】
前記凹部の深さをhaミリメートルとしたときには、
0.91≦ha≦3.50
の範囲であるように形成する。
【0035】
前記照明レンズの直径をDミリメートル、前記出射面のレンズの曲率半径をRa、反射面の曲率半径をRbとしたときに、
0≦(Ra×Rb)/(D/2)≦10
の範囲であるように形成する。
【0036】
前記照明レンズを成形する材料の屈折率をndとしたとき、
1.45≦nd≦1.61
を満たすプラスチックを採用する。たとえば、本実施形態のフライアイレンズの樹脂材料としては、COP(シクロオレフィン樹脂)、PMMA(ポリメタクル酸メチル)、PC(ポリカーボネート)、シリコン、エポキシ樹脂などが用いられる。
【0037】
なお、前記フライアイレンズと発光ダイオードチップとの距離をhbミリメートルとしたとき、
0≦hb≦4.2
の範囲であるように形成している。
【0038】
前述してきたような構成により、光取り出し効率は、80%以上となった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、照明装置の製造業、照明装置用のレンズ製造業、電子デバイスの製造業などにおいて、利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ダイオードチップから発光される光を入射させて出射するためのフライアイレンズであって、
略半球状をなすとともに、その球面または非球面側の中央部を前記発光ダイオードチップからの入射側とし、
前記球面または非球面側の中央には、当該発光ダイオードチップの投影面よりも大きな投影面をなす凹部を設け、
出射面には、出射光が拡散するように多数のレンズ面を形成した照明レンズ。
【請求項2】
前記照明レンズにおける前記出射面のレンズ面数をn、出射面の面積をS平方ミリメートルとしたときに、
S/n≦0.2
の範囲であるように形成した請求項1に記載の照明レンズ。
【請求項3】
前記凹部の深さをhaミリメートルとしたときに、
0.91≦ha≦3.50
の範囲であるように形成した請求項1または請求項2のいずれかに記載の照明レンズ
【請求項4】
前記照明レンズの直径をDミリメートル、前記出射面のレンズの曲率半径をRa、反射面の曲率半径をRbとしたときに、
0≦(Ra×Rb)/(D/2)≦10
の範囲であるように形成した請求項1から請求項3のいずれかに記載の照明レンズ。
【請求項5】
前記照明レンズを成形する材料の屈折率をndとしたとき、
1.45≦nd≦1.61
を満たすプラスチックを採用した請求項1から請求項4のいずれかに記載の照明レンズ。
【請求項6】
光源から発光される光を入射し、出射光が拡散するように形成したフライアイレンズと、 そのフライアイレンズに対する光源として入射側において所定の距離だけ離間させて配置させた発光ダイオードチップとを備えた照明装置であって、
前記フライアイレンズは、請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明レンズとした照明装置。
【請求項7】
前記フライアイレンズと発光ダイオードチップとの距離をhbミリメートルとしたとき、
0≦hb≦4.2
の範囲であるように形成した請求項6に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−153373(P2010−153373A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267632(P2009−267632)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(392034746)吉川化成株式会社 (22)
【Fターム(参考)】