説明

照明用光源付きキーボード

【課題】プリント基板の前面に間隔を置いて配された不透明のフロントケースの配置穴から透光性を有するキートップを突出して配し、プリント基板とフロントケースとの間に配された透明性のラバーシートによってキートップを支持し、キートップの直下に対応するにラバーシートに可動接点を設け、プリント基板に光源を配した構成において、キートップの前方から導電層が見えることがなく、キートップに対する照射を効率よく行うことができる照明用光源付きキーボードを提供する。
【解決手段】可動接点70がラバーシート50の面に付された可動接点白色層701の表面に導電層702を付して形成し、キートップ40側から導電層702が見えないように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の前面に間隔を置いて配された不透明のフロントケースと、フロントケースに形成された配置穴と、配置穴に突出して配された透光性を有するキートップと、プリント基板とフロントケースとの間に配されたキートップを支持する透明性のラバーシートと、キートップの直下に対応するラバーシートに設けられたスイッチの可動接点と、キートップの真下に対応するプリント基板上に設けられた照明用の光源とを備えた照明用光源付きキーボードに関し、特に、可動接点が光源の光を吸収する色の素材で形成されている照明用光源付きキーボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電話機、情報処理用端末装置などにおけるキーボードはキーの種別の判別を容易にするために照明用光源を備えたものが用いられている。このような照明用光源付きキーボードは周囲が暗い環境下において使用される場合にその効果が著しい。
【0003】
この種の照明用光源付きキーボードとしては、例えば、下記の特許文献1(特開平8−79354号公報)に示す従来技術が提案されている。この従来の照明用光源付きキーボードは、プリント基板の前面にフロントケースが配され、フロントケースに配置穴が形成され、配置穴から透光性を有する操作つまみの操作部が突出して配置されたものである。
【0004】
操作部を照明する手段としては、操作部の真下に光源としてのLEDを配置することが考えられるが、操作スイッチの配置スペースの関係から難しい。そこで、LEDは操作つまみ間に相当するプリント基板上に配置している。そして、LEDからの照射光は操作つまみの操作部に至るようにLEDの前方に位置するフロントケースの裏側に高反射率の光反射シートを配置する。更に、プリント基板の部品配置面には白色印刷(シルク印刷)を施して白色印刷層を形成している。その結果、操作部直下の操作スイッチを避けて配置されたLEDからの照射光は、反射シートと白色印刷層に反射して操作つまみの操作部へと至る。
【0005】
しかし、上述した特許文献1に示す従来技術においては、LEDから発光される光は反射を繰り返して操作部に至るために減衰してしまう。この減衰量を低減させるためには、反射率の高い部材を用いなければならずコスト的に不利である。そこで、このような問題点を解消するために、従来は図4、図5及び図6に示す照明用光源付きキーボードが提案されている。
【0006】
この従来の照明用光源付きキーボード100は、図4〜図6に示すように、プリント基板20の前面に間隔を置いて不透明のフロントケース30が配され、フロントケース30に配置穴301が形成され、配置穴301に矩形状のキートップ40が突出して配置されている。このキートップ40は白濁した透光性を有する合成樹脂材で形成され、文字、記号などが記されている。プリント基板20とフロントケース30との間には十分に光を透す透明性を有するシリコンゴムからなる弾力性を有したラバーシート50が配置されている。
【0007】
このラバーシート50は、キートップ40に対応する位置にキートップ40と同一形状で厚みをもって形成されたキートップ支持部501と、キートップ支持部501とラバーシート本体502との間に厚みを薄くして形成された撓み部503とからなる。キートップ支持部501が撓み部503によって常に上方に弾性的に偏倚されているので、キートップ支持部501の上面に固着されたキートップ40は配置穴301から突出している。この突出状態はキートップ40の周縁に形成された位置決め用鍔401がフロントケース30の下面に当接することにより位置決めされている。
【0008】
キートップ支持部501の下面には、一対のコ字状に膨出した膨出部504が形成されている(図6参照)。この膨出部504はラバーシート50を形成するときに一体に成型される。膨出部504の表面にはカーボンをシルク印刷によって印刷することにより可動接点200が形成されている。この可動接点200に対向するプリント基板20上には固定接点(図示せず)が設けられている。キートップ支持部501の中央部分には空間が形成され、この空間に発光ダイオード60が配置されている。この空間部505はキートップ支持部501が可動接点200を固定接点に接するまで押し下げても発光ダイオード60の上部がキートップ支持部501の底面に当たらない大きさに形成されている。
【0009】
上記従来の照明用光源付きキーボード100によれば、キートップ40の真下において可動接点200をコンパクトにして大きな空間部505が形成されているので、この空間部505に発光ダイオード60を配することができる。そのため、発光ダイオード60の光が直接にキートップ支持部501を介してキートップ40を照射する。一方、スイッチの開閉動作は、キートップ支持部501が撓み部503によって常に上方に偏倚されていることにより可動接点200が固定接点から離れているが、キートップ40を押し下げることにより撓み部503を撓ませてキートップ支持部501を下降させる。その結果、可動接点200が固定接点に接触することによりスイッチの閉成動作を達成させている。
【0010】
従って、上記従来の照明用光源付きキーボード100は、発光ダイオード60をキートップ40の真下に配して前述した特許文献1に示す従来技術の問題点を解消したものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平8−79354号公報(段落0003、段落0008〜0010、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の照明用光源付きキーボードにおいては、キートップ支持部の下側に可動接点が配置されているので、キートップの表面に可動接点がぼんやりと浮かび上がる。特に、可動接点がカーボンのように光を吸収する黒色の素材からなる場合には、可動接点が著しく浮かび上がって違和感を与えるという問題点があった。また、光源からキートップの表面に至る光量が可動接点部分で吸収され、キートップ表面の明るさが十分に得られず表面の色が暗く沈みこんだ状態になるという問題点があった。
【0013】
従って、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、キートップの照明を効率的に行うと共に、キートップの裏側に配された可動接点がキートップ表面から認識できないようにした照明用光源付きキーボードを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る照明用光源付きキーボードの発明は、プリント基板の前面に間隔を置いて配された不透明のフロントケースと、該フロントケースに形成された配置穴と、該配置穴に突出して配された透光性を有するキートップと、該プリント基板とフロントケースとの間に配された該キートップを支持する透明性のラバーシートと、該キートップの直下に対応するに該ラバーシートに設けられたスイッチの可動接点と、該キートップの真下に対応する該プリント基板上に設けられた照明用の光源とを備えた照明用光源付きキーボードであって、
前記可動接点は、前記ラバーシートの面に付された可動接点白色層と、該可動接点白色層の表面に付された導電層とから構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項2に係る発明は、前記ラバーシートは、前記キートップの真下に対応する位置を除く前記プリント基板に接する面にプリント基板接触面白色層を付したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の照明用光源付きキーボードは、次に示すような優れた効果を奏する。
【0017】
即ち、請求項1に係る発明においては、透光性を有するキートップの真下に位置するラバーシートの面に可動接点白色層を付し、この可動接点白色層の表面に導電層を付して可動接点を構成したので、キートップの真下に配した光源からの照射光が可動接点白色層に反射してキートップの方向に至る。従って、キートップの前方から導電層が見えなくなり、従来のように導電層が見えてしまうという違和感を解消する。また、照射光は可動接点白色層で反射し導電層に至らないので減衰することがないので、光源によるキートップに対する照射を効率よく行うことができるようになる。このため、キートップの位置、種別などの判別を確実なものとすることができる。
【0018】
また、請求項2に係る発明においては、プリント基板に接するラバーシートにはプリント基板接触面白色層が付されているので、プリント基板接触面白色層に至った光源からの照射光が反射してキートップの方向に向かう。そのため、光源からの光が減衰することなくキートップを効率よく照射することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係る照明用光源付きキーボードの正面図である。
【図2】図1におけるA−A線で切断した断面図である。
【図3】図1におけるラバーシートをプリント基板に直接に接する下面側から見てその一部を拡大して示す背面図であり、図3(a)はプリント基板接触面白色層と可動接点白色層のみを付した状態を示す背面図であり、図3(b)は可動接点白色層の表面に導電層を付した状態を示す背面図である。
【図4】従来の照明用光源付きキーボードを示す正面図である。
【図5】図4におけるB−B線で切断した断面図である。
【図6】図4におけるラバーシートをプリント基板に直接に接する下側面から見てその一部を拡大して示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明するが、従来技術と同一部分は同一符号を付して説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術的思想を具体化するための照明用光源付きキーボードを例示するものであって、本発明をこの照明用光源付きキーボードに特定することを意図するものでなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態の照明用光源付きキーボードにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0021】
図1は本発明の一実施例に係る照明用光源付きキーボードの正面図であり、図2は図1におけるA−A線で切断した断面図である。
【0022】
本実施例に係る照明用光源付きキーボード10は、図1、図2に示すように、プリント基板20と、プリント基板20の前面に間隔を置いて配された不透明のフロントケース30と、フロントケース30に矩形状に形成された配置穴301と、配置穴301に突出して配置された矩形状のキートップ40と、プリント基板20とフロントケース30との間に配されたラバーシート50と、キートップ40の下方に位置するプリント基板20上に配された照明用光源となる発光ダイオード60とから構成されている。
【0023】
キートップ40は白濁して透光性を有する合成樹脂材で形成されている。ラバーシート50は光を十分に透す透明性を有するシリコンゴムからなり弾力性を有している。そして、ラバーシート50は、キートップ40に対応する位置にキートップ40と同一形状で厚みをもって形成されたキートップ支持部501と、キートップ支持部501の周辺におけるプリント基板20に接するラバーシート本体502と、キートップ支持部501とラバーシート本体502との間に厚みを薄くして形成された撓み部503とからなる。
【0024】
キートップ40はキートップ支持部501の上面に固着されている。そして、キートップ40はキートップ支持部501が撓み部503によって常に上方に弾性的に偏倚されているので配置穴301から突出している。この突出状態はキートップ40の周縁に形成された位置決め用鍔401がフロントケース30の下面に当接することにより位置決めされている。
【0025】
ラバーシート50におけるキートップ支持部501の下面には、図3に示すように、一対のコ字状に膨出した膨出部504が形成されている。この膨出部504によって、キートップ40の真下には空間部505が形成される。膨出部504の表面にはスイッチの可動接点70が形成されている。この可動接点70は可動接点白色層701と導電層702とからなる。プリント基板20上には可動接点70に対向して固定接点(図示せず)が設けられている。
【0026】
可動接点70を形成する手順は、まず、図3(a)で示すように、膨出部504の頂面に可動接点白色層701を付す。この可動接点白色層701は白色の合成樹脂材をシルク印刷によって付され薄い膜状になっている。次に、図3(b)で示すように、可動接点白色層701の表面にカーボンをシルク印刷によって付して導電層702を形成する。
【0027】
ラバーシート50はキートップ40の真下に対応する位置を除く部分がプリント基板20に接しているが、この部分にも全体にプリント基板接触面白色層506が付されている。このプリント基板接触面白色層506は白色の合成樹脂材をシルク印刷によって付され薄い膜状になっている。
【0028】
次に、上述した実施例の照明用光源付きキーボード10における動作について説明する。
キートップ40は、キートップ支持部501が撓み部503の弾発力によってプリント基板20から離れるように常に偏倚されているため配置穴301から突出している。そして、位置決め用鍔401がフロントケース30の背面に当接することにより突出位置の位置決めがなされている。この状態でキートップ40を押してキートップ支持部501を押し下げると、可動接点70が固定接点に接してスイッチの開閉動作を切り換える。
【0029】
また、発光ダイオード60は照明用光源付きキーボード10が適用される電子機器から電力供給を受けて光を発光し透明性のキートップ支持部501を下方から照射している。この照射光はキートップ支持部501を透してキートップ40に至る。その結果、キートップ40は透光性を有するので明るく輝いて発光して見える。そのため、キートップ40の位置、表示などがわかりやすくなり操作が容易となる。一方、可動接点70は可動接点白色層701がキートップ40の側にあるのでキートップ40の前方からは導電層702を見ることができない。
【0030】
発光ダイオード60から発光された光は、直接にキートップ指示部501に向かうだけでなく可動接点白色層701、プリント基板接触面白色層506に向かってこれらを照射するが、この照射光は夫々の白色層701、506において反射される。この反射光はキートップ指示部501の方向に向かってキートップ40を背面から照射することになる。
【0031】
従って、上述した本発明の実施例の照明用光源付きキーボード10によれば、ラバーシート50におけるキートップ支持部501に形成されている可動接点70が可動接点白色層701を付した面上に導電層702を付して構成したので、透明性のキートップ支持部501、透光性のキートップ40を透して導電層702が見えることがなく、従来の導電層が見えることにより違和感を生じさせるという問題点を解消できる。同時に、可動接点70に至る発光ダイオード60からの照射光は可動接点白色層701に反射してキートップ支持部501に至るので、導電層702に至って減衰することなく効率のよいキートップ40に対する照射を行う。
【0032】
一方、プリント基板20に接するラバーシート50にはプリント基板接触面白色層506が付されているので、プリント基板接触面白色層506に至った発光ダイオード60からの照射光は反射してキートップ40の方向に向かう。そのため、発光ダイオード60からの光が減衰することなくキートップ40を効率よく照射する。
【0033】
このように、プリント基板接触面白色層506、可動接点白色層701において、発光ダイオード60の光、及び外部から入り込んだ周囲光が反射するので、発光ダイオード60自体が発光する輝度を高めることなくキートップ40の輝度を向上させることができる。その結果、照明用光源付きキーボード10を適用した電子機器は、周囲が暗い環境下で使用される場合にキートップ40の位置、種別などの判別が容易となる。一方、周囲が明るい環境下で使用される場合は、キートップ40の輝きが周囲の明るさに負けることがないので電子機器の作動により発光ダイオード60が発光していることを確実に判別できる。
【0034】
また、プリント基板接触面白色層506と可動接点白色層701はラバーシート50に同時にプリント印刷することにより形成できるので、その形成のための作業が簡単である。
【0035】
なお、上記実施例においては、キートップ40は白濁したものであるが、本発明は色彩が白色に限定されることなくその他の色のものであってもよい。
【0036】
また、上記実施例においては、プリント基板接触面白色層506、可動接点白色層701とはその色が白色としたが、この色は純白でなく銀色が混じった白色、その他の反射率の高い色が混じった白色などであってもよい。
【0037】
更に、上記実施例においては、キートップ40は矩形の形状であるが、本発明はこれに限定されることなく円形、楕円形などの種々の形状のものであってもよい。また、上記実施例においては、可動接点70の形状はコ字状であるが、I字状、矩形状などの種々の形状のものを適用することができる。また、上記実施例においては、照明用光源付きキーボード10は複数矩形のキーからなるが、本発明はこれに限定されることなく単一のキーからなるものにも適用できる。
【符号の説明】
【0038】
10・・・・照明用光源付きキーボード
20・・・・プリント基板
30・・・・フロントケース
40・・・・キートップ
50・・・・ラバーシート
60・・・・発光ダイオード
70・・・・可動接点
301・・・配置穴
401・・・位置決め用鍔
501・・・キートップ支持部
502・・・ラバーシート本体
503・・・撓み部
504・・・膨出部
505・・・空間部
506・・・プリント基板接触面白色層
701・・・可動接点白色層
702・・・導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の前面に間隔を置いて配された不透明のフロントケースと、該フロントケースに形成された配置穴と、該配置穴に突出して配された透光性を有するキートップと、該プリント基板とフロントケースとの間に配された該キートップを支持する透明性のラバーシートと、該キートップの直下に対応するに該ラバーシートに設けられたスイッチの可動接点と、該キートップの真下に対応する該プリント基板上に設けられた照明用の光源とを備えた照明用光源付きキーボードであって、
前記可動接点は、前記ラバーシートの面に付された可動接点白色層と、該可動接点白色層の表面に付された導電層とから構成されていることを特徴とする照明用光源付きキーボード。
【請求項2】
前記ラバーシートは、前記キートップの真下に対応する位置を除く前記プリント基板に接する面にプリント基板接触面白色層を付したことを特徴とする請求項1に記載の照明用光源付きキーボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−222280(P2011−222280A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89960(P2010−89960)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】