説明

照明装置、家具および照明用モジュール

【課題】 軽量で設計自由度も高く、光のバリエーションが豊富な照明装置を提供する。
【解決手段】 光源(21)と、 その光源(21)から発光される光の中から所定の波長の光を反射する光学フィルタ(50)と、を備える。 その光学フィルタ(50)は、プラスチックによる基材と、その基材に対する物理的蒸着によって固定された透明皮膜と、を備える。 その透明皮膜は、二酸化珪素と酸化チタンまたは酸化チタン系複合材の二層膜とを多層とした光学膜として形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調表現が豊かな照明装置、照明用モジュールおよびその照明装置を用いた家具に関する。
更に詳しくは、熱可塑性樹脂にて形成することができたことによって設計の自由度、加工精度にも優れたダイクロイックフィルタまたはダイクロイックミラーを備えた照明装置、およびその照明装置の特性を活かす家具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光を透過させる基材としてのガラスに対して、所定の波長の光を反射させて透過させないために設ける薄膜のことをダイクロイックフィルタという。なお、反射させた光を使うこともあり、その場合にはダイクロイックミラーと呼ばれる。以下、ダイクロイックフィルタおよびダイクロイックミラーを総称して「ダイクロイックフィルタ等」と記す。
例えば、白色光を通過させたとき、波長600〜780nmの光だけが通過する薄膜を設けると、赤い光だけが透過する。この場合の薄膜たるフィルタは、白色光を透過させた時に赤く見えるダイクロイックフィルタとなる。
【0003】
ダイクロイックフィルタ等は、光学部品として広く使われている。例えば、特許文献1に記載されるような技術である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−116921号公報
【0005】
近年では、特許文献2に開示されているように、光源にLED(発光ダイオード)が用いられる液晶プロジェクタも開発されており、消費電力の低減、放熱対策の簡素化などに寄与している。
【0006】
【特許文献2】特開2008−15299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ダイクロイックフィルタ等は、平滑な光学ガラス面上に構成されていた。そのため、ガラスという素材の性質上、設計の自由度に制限があり、精密な加工精度が要求されると高価になる、軽量化が困難である、といった欠点があった。 すなわち、ダイクロイックミラーおよびダイクロイックフィルタは、平滑な光学ガラス面上に構成されていた。そのため、ガラスという素材の性質上、設計の自由度に制限があり、精密な加工精度が要求されると高価になる、軽量化が困難である、といった欠点があった。
【0008】
また、ガラスを素材としているために、液晶プロジェクタなどの限られた時間しか点灯しない照明装置に限定されていた。すなわち、一般の照明装置にダイクロイックフィルタが用いられることはほとんど無かった。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ガラスに限られていた基材に透明なプラスチックを使用することにより、取り扱い・組込み性も良好な光学面を備えたダイクロイックフィルタを実現し、それを用いた照明装置(およびその照明装置に用いる照明モジュール)や家具を提供することにある。すなわち、軽量で設計自由度も高い光学製品の製造技術を提供することにある。
請求項1から請求項6、請求項8および請求項9に記載の発明の目的は、軽量で設計自由度も高い照明装置を提供することである。特に、請求項6、請求項8および請求項9に記載の発明は、薄型の照明装置を提供することも目的としている。
請求項7に記載の発明の目的は、軽量で設計自由度も高い照明装置を用いた家具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、 光源(21)と、 その光源(21)から発光される光の中から所定の波長の光を反射する光学フィルタ(50)と、を備える照明装置に係る。
その光学フィルタ(50)は、 プラスチックによる基材と、 その基材に対する物理的蒸着によって固定された透明皮膜と、を備える。 その透明皮膜は、二酸化珪素と酸化チタンまたは酸化チタン系複合材の二層膜とを多層とした光学膜として形成する。
【0011】
(用語説明)
「基材」の材質は、光の透過度が高いプラスチックが採用される。熱を発する光源が採用される場合など耐熱性が要求される条件下には、耐熱性に優れたプラスチック材料を採用する。製膜される膜の総数よって、輻射熱に耐えうるプラスチック基材の選定が必要となる場合もある。
耐熱性に優れたプラスチック材料としては、シクロオレフィン・コポリマー(COC)、シクロ・オレフィン・ポリマー(COP)、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)などがある。
耐熱性が特に要求されないプラスチック材料として、本願発明の基材に適しているものとしては、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル・スチレン(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリメチル・メタクリレート(PMMA)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)などがある。
「物理蒸着」とは、PVD(Physical Vapor Deposition)法ともいう。物質の表面に薄膜を形成する蒸着法のひとつであり、気相中で物質の表面に物理的手法により目的とする物質の薄膜を堆積する。主なPVD皮膜としては、TiN(窒化チタン)、TiC(チタンカーバイト)、TiAlN(窒化チタンアルミ)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などがある。
【0012】
「光学膜」は、二酸化珪素(SiO2)と酸化チタンまたは酸化チタン系複合材(たとえば五酸化タンタルTa2O5−TiO2)の二層膜とを十回以上反復させて製膜することによって製造する。各薄膜の厚さは、100nm前後であり、70〜150nm程度が好ましい。試作および実験によれば、27回(27層)の反復による製膜にて、必要な性能を得ることが出来た。
作成された光学フィルタ(50)は、所定の波長の光を反射するフィルタとなる。「反射」としている趣旨は、反射される所定の波長の光を中心に考えれば、鏡(ミラー)であり、反射されずに投下される波長の光を中心に考えれば、フィルタである。光学フィルタ(50)は、たとえば、ダイクロイックフィルタまたはダイクロイックミラーと呼ばれる光学フィルタとなる。
単一の光学フィルタのみならず、複数枚のフィルタを組み合わせたものも、本願の「光学フィルタ」に含まれる。
【0013】
(作用)
本請求項に記載された照明装置は、所定の波長の光を反射する光学フィルタ(50)を用いているので、様々な色の光を放つことができる。また、その光学フィルタ(50)は、プラスチックで形成されているので、形状を含めた設計の自由度が高い。照明装置の軽量化、小型化にも寄与する。ガラスを用いた照明装置よりも破損しにくい。
【0014】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の照明装置を限定したものである。
すなわち、前記の光源(21)と前記の光学フィルタ(50)との距離をゼロより大きくするために当該光学フィルタ(50)を支持するフィルタ支持部材(55)を備える。
【0015】
(作用)
前記の光源(21)と前記の光学フィルタ(50)との距離がゼロではないと、光源(21)から発生する光の中で、光学フィルタ(50)によってカットされずに漏れる光をも照明用の光として用いることとなり、バリエーションが増える。
【0016】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の照明装置を限定したものである。
すなわち、前記のフィルタ支持部材(55)は、前記の光学フィルタ(50)がその厚さ方向に移動可能であるように当該光学フィルタ(50)を支持する。
【0017】
(作用)
フィルタ支持部材(55)は、前記の光学フィルタ(50)がその厚さ方向に移動可能であると、光学フィルタ(50)によってカットされずに漏れる光の角度や量を変化させることができる。
たとえば、フィルタ支持部材(55)による光学フィルタ(50)の支持位置が経時的に変化するような構成とすれば、この照明装置を見ている人にとって色彩が変化する照明装置となる。
【0018】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の照明装置を限定したものであり、
前記の光学フィルタは、レンズとして形成したものである。
ここで、「レンズ」とは、凹レンズ、凸レンズ、フレネルレンズ、かまぼこ型レンズなど、いずれでもよい。また、複数のレンズを組み合わせてもよい。
【0019】
(作用)
光学フィルタは、レンズとして形成することにより、光源からの光を集光したり拡散したりといったバリエーションをつけることができる。
【0020】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の照明装置を限定したものである。
すなわち、前記の光源(21)は、発光される光の角度を変更可能な角度変更機構(49)と、その角度変更機構(49)の角度を変更させる角度変更動力とを備える。
【0021】
(作用)
角度変更動力が角度変更機構(49)の角度を変更させると、光源(21)から発光される光の角度が変更される。それによって見える光が変化することとなる。
【0022】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明装置を限定したものである。
すなわち、 前記の光源は、 帯状の基板(10)と、 その基板(10)の長手方向に連続して固定した複数のサイドビュー型LED(20)と、 そのサイドビュー型LED(20)の照射面に端面が接するように固定され、その端面から入射した光を一の平面に出射する面発光タイプの導光板(30)と、 その導光板(30)が発光する面に位置させた光拡散媒質(43)と、 前記導光板(30)における前記光拡散媒質(43)とは反対側の面に位置させた反射シート(42)と、を備え、前記の各部材を金属プレートにて支持することとして形成する。
【0023】
光源を上記のような構成とすることにより、白熱電球や一般のLEDを採用した照明器具に比べて薄型の照明器具を実現できる。それによって、採用範囲が広がる。たとえば、商品の陳列用棚において、商品の設置スペースを大きく圧迫することなく、商品を照明することができる照明器具を提供できる。
【0024】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、 請求項1から請求項6に記載の照明装置を組み込んだ家具に係る。
「家具」とは、たとえば、収納家具のように独立したものを含み、加えて、床に組み込む間接照明、天井と壁との間に組み込む間接照明のように、部屋の構成に組み込まれるものも含む。
【0025】
(作用)
請求項1から請求項6に記載の照明装置における光学フィルタは、プラスチックであり、射出成形が可能である。
そのため、形状の自由度が大きく、家具に組み込むのに必要な形状とすることが容易である。ガラスを用いた光学フィルタに比べて外力に強く、耐衝撃性など安全性も高められる。
【0026】
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、 帯状の基板(10)と、 その基板(10)の長手方向に連続して固定した複数のサイドビュー型LED(20)と、 そのサイドビュー型LED(20)の照射面に端面が接するように固定され、その端面から入射した光を一の平面に出射する面発光タイプの導光板(30)と、 その導光板(30)が発光する面に位置させた拡散媒質(43)と、 前記導光板(30)における前記拡散媒質(43)とは反対側の面に位置させ光を反射させる反射シート(42)と、を備えた照明用モジュールに係る。
前記の導光板(30)におけるサイドビュー型LED(20)側の端面には、物理的蒸着によって固定された透明皮膜(30a)を備え、 その透明皮膜(30a)は、二酸化珪素と酸化チタンまたは酸化チタン系複合材の二層膜とを多層とした光学膜として形成する。
【0027】
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の照明用モジュールを限定したものであり、
前記のサイドビュー型LED(20)は、白色LEDとし、前記の透明皮膜(30a)は、青色光の一部を反射する構成としたものである。
青色光の全てを反射するのではなく、半分以上を反射することとする。これによって、白熱電灯に近い色の光を放つ薄型照明用のモジュールが提供できる。
【発明の効果】
【0028】
請求項1から請求項6、請求項8および請求項9に記載の発明によれば、軽量で設計自由度も高い照明装置を提供することができた。
請求項7に記載の発明によれば、軽量で設計自由度も高い照明装置を用いた家具を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
まず、図13および図14を参照して、本発明に係る照明装置にを採用するダイクロイックフィルタの製造手順を説明する。600nm〜700nm(赤色)の波長を反射し、それ以外の波長を透過するダイクロイックフィルタを例にあげる。
【0030】
(射出成形)
耐熱性のプラスチックであるCOPを射出成形することによって基材を形成する。射出成形のための金型は、予め摂氏100〜110度くらいに加熱しておき、その後成形を行う。
成形後は、アニール工程によって、歪み及び/または残留応力を十分に除去する。ここにいう「アニール工程」とは、歪み及び/または残留応力を除去したい材料について、高温下でさらす工程である。その最高温度は、基材が変形しない温度以下であり、保持時間は数時間から1日程度である。
【0031】
(蒸着工程)
次に、その基材に対して蒸着工程によって透明皮膜を形成する。この蒸着は、PVD(Physical Vapor Deposition)法である。
蒸着工程における雰囲気温度は、熱変形温度が摂氏120度であるCOPが基材であるので、製膜を実施する蒸着機の内部の雰囲気温度は摂氏120度を超えないように設定する。
また、高真空状態(10−1〜10−5Pa)における比較的長い時間排気する。ガラスなどの無機材料に比べて成型時にガスを内部に取り込んでいる恐れが高いためである。
排気時間につき、「比較的長い時間」とは、ガラスなどの無機材料に比べて成型時にガスを内部に取り込んでいる恐れが高いために長い時間を要する、という趣旨である。例えば、30〜90分程度である。長いほどよいが、製造時間、製造コストの短縮のためには、前述の時間が好ましい。
【0032】
前記の透明被膜は、図1に示すように、二酸化珪素と五酸化タンタルの二層膜とを多層とする。二酸化珪素(SiO2)と酸化チタン系複合材である五酸化タンタル(Ta2O5−TiO2)の二層膜とを十回以上反復させて製膜することによって製造する。最初に、二酸化珪素(SiO2)の薄膜とし、次に酸化チタン系複合材である五酸化タンタル(Ta2O5−TiO2)の薄膜とし、その繰り返しの後、27層目を二酸化珪素(SiO2)の薄膜とする。
各薄膜の厚さは、100nm前後であるが、最後(最外)の二酸化珪素の膜は50nm以下でも構わない。
【0033】
図14には、分光光度計にて透過・反射率を測定したデータ(別資料)を示す。600nm〜700nm(赤色)の波長を反射できるフィルタであることが分かる。
【0034】
以上のようにして作成されたダイクロイックフィルタは、以下のような特徴がある。
まず、射出成形よって加工された光学部品であるため、形状の自由度が大きい。他の部品の取付け部となるボスや固定用の孔も事前に構成することができる。
また、例えば、光学面を平面、曲面、非球面、自由曲面などを設計することが可能である。また、熱による基材自体の変形や、それに伴う光学膜の損傷の恐れが小さい。したがって、光源から熱が発生するような部材においても使用できる場合が広がる。
更に、プラスチック素材がガラスに比べて軽量で且つ耐熱性にも優れているため、当該光学部品を組み込んだ最終製品の軽量化につながる。ガラスを用いた光学部品に比べて外力に強く、耐衝撃性など安全性も高められる。
【0035】
以上、赤色の光をフィルタリングできるダイクロイックフィルタを説明したが、緑色の光をフィルタリングするためのダイクロイックフィルタ、青色の光をフィルタリングするためのダイクロイックフィルタとも、二酸化珪素と酸化チタンまたは酸化チタン系複合材の二層膜における各層の厚さや層数を異ならせることで形成可能である。
【0036】
(図1)
図1に示すのは、前述のようにして形成したダイクロイックフィルタ50を採用した薄型の照明装置の主要部品である。
長方形板状の基板10と、その基板10の長手方向端部に位置する端子11,11と、その端子11,11の間に位置するサイドビュー型LED20と、そのサイドビュー型LED20からの発光方向を変更して面発光とする導光板30と、その導光板30からの光を受けて所定の波長の光を透過させるダイクロイックフィルタ50とを示している。また、前記サイドビュー型LED20は、白色LEDを光源としている。すなわち、R,G,Bの三原色全てを含んだ光源とする。
【0037】
以上のような構成の照明装置であれば、導光版30の広さによる面発光を確保しつつ、導光版30の厚さ方向の寸法を抑えた照明装置を形成することが可能である。
また、ダイクロイックフィルタ50を採用しているので、透過させたい光の色を選択することができる。
【0038】
なお、白色LEDを採用せずに、RGB単色光のLEDを前記サイドビュー型LED20に備えたとする。そして、それら単色光のLEDを交互に点滅させるなどの制御を実行することによって、ダイクロイックフィルタ50から光が出ずに反射しかしない時間帯や、異なる光が交互に透過する時間帯を形成する、といった照明装置を提供することもできる。いわば、発光を演出できる照明装置(サイン・ディスプレイ系照明)となる。
【0039】
(図2および図3)
図2に示すのは、図1に示した主要部品(図2では図示を省略した基板10および端子11、サイドビュー型LED20、導光板30)のほか、導光板30の裏側に位置させた反射シート42、導光板30の表側に位置させた拡散媒質43、照明装置としての一番外側に位置させた透明プレート44を備え、それらを納める筐体である金属プレート41を備えた薄型照明モジュール40である。
【0040】
ダイクロイックフィルタ50としては、所定の光を反射して他の光を透過させる三種類を採用した照明装置としている。すなわち、赤色の光を透過させて他の光を反射するRフィルタ51、緑色の光を透過させて他の光を反射するGフィルタ52、青色の光を透過させて他の光を反射するBフィルタ53を備えている。また、これらRフィルタ51、Gフィルタ52、Bフィルタ53は、透明プレート44と接触させ、図示を省略した手段によって固定する。
ダイクロイックフィルタ50として、様々の種類のフィルタを採用すれば、照明装置としてのバリエーションを広げることができる。
【0041】
前述した照明装置は、見る角度によって光源から発光される光の色が変化する、という効果をも奏する。その理由は、蒸着膜を垂直に出る光と斜めに出る光とでは、蒸着膜を通過する距離が異なることに起因する。この効果を応用すれば、以下のような照明装置を提供できる。
例えば、前記の照明装置における薄型照明モジュール40が看板のバックライトに使われ、看板の一部または全部にダイクロイックフィルタ50を採用したとする。歩いている人がこの看板の横を通り抜ける時には、遠くから見た場合に目立つ光色(たとえば赤系の色)となるようにしておくとともに、近づくにつれて変化するようにしておけば、その人の興味を引きやすくなる。すなわち、当該看板の宣伝広告の能力を高めることに寄与する照明装置を提供することとなる。
【0042】
(図4)
図4に示すのは、光源21の裏側(図上では下方)に、すべての光を反射する曲面を備えた曲面ミラー60を備えた照明装置のモデルである。
図中の二点波線で示すのは、光の進路である。ダイクロイックフィルタ50にて反射された光は、更に曲面ミラー60によっても反射され、曲面ミラー60とダイクロイックフィルタ50との隙間から洩れる光となる。
なお、前述のダイクロイックフィルタ50をRフィルタとし、曲面ミラー60の代わりに、Rフィルタとは異なる色の光を透過できるダイクロイックフィルタ(たとえばGフィルタ)を採用すれば、Rフィルタ付近は赤色、Gフィルタを透過した光は緑色、RフィルタとGフィルタとの間から漏れた光は青色、というように見えることとなる。
【0043】
(図5)
図5に示すのは、ダイクロイックフィルタ50が曲面を備えた場合の照明装置を単純化して示したものである。
単純な曲面形状を図示しているが、射出成形が可能であれば、もっと複雑な形状のダイクロイックフィルタ50を採用することは、当然可能である。
【0044】
(図6)
図6に示すのは、フレネルレンズを兼用したダイクロイックフィルタ54を採用した場合の照明装置を単純化して示したものである。
この実施形態では、フレネルレンズを採用したとして説明したが、照明装置に必要とされる凹レンズ、凸レンズ、かまぼこレンズなどを採用してもよい。
【0045】
(図7)
図7に示すのは、建物の構造体などにおいて採用される、いわゆる間接照明の構造を単純化して示したものである。
構造体において天井70と壁71との入り隅部分、または壁70と壁71との入り隅部分に凹部を形成する(天井70と壁71との入り隅は長手方向が水平となり、壁70と壁71との入り隅は長手方向が垂直となる)。その凹部の奥側に薄型照明モジュール40を、その薄型照明モジュール40の手前側にダイクロイックフィルタ50を配置した例を図示している。
このような間接照明によれば、ダイクロイックフィルタ50の種類、大きさ、薄型照明モジュールとの距離、建物の構造体の色彩などを変更することによって、様々な種類の間接照明を提供できる。
【0046】
(図8)
図8に示すのも、建物の構造体などにおいて採用される、いわゆる間接照明の構造を単純化して示したものである。図7との相違点は、建物の壁71と床72との入り隅部分に採用したという場所の点と、薄型照明モジュール40およびダイクロイックフィルタ50の配置の点である。
建物の壁71と床72との入り隅であるから、足下付近が照らされる間接照明となる。
また、入り隅の奥側にダイクロイックフィルタ50を斜めに配置し、そのダイクロイックフィルタ50の手前側へ薄型照明モジュール40を配置している。このような配置により、壁側の凹部付近と床側の凹部付近とで異なる色彩を得ることができる間接照明となる。
【0047】
(図9)
図9に示すのは、ダイクロイックフィルタ50を支持するフィルタ支持部材55が、ダイクロイックフィルタ50の厚み方向にクリアランスを設けて支持した照明装置を単純化して図示したものである。
前記のクリアランスを存在させていることにより、薄型照明モジュール40から得られる光は、図9の[A]、[B]、[C]にてそれぞれ異なる。
図示を省略するが、ダイクロイックフィルタ50がクリアランス内で規則的に動くような動力源を備えることとしてもよい。また、動力源を備えなくても、この照明装置をたとえば屋外に設置すれば、風などによってダイクロイックフィルタ50がクリアランス内を不規則に動く、という変化に富んだ照明装置を提供することとなる。
【0048】
(図10)
図10に示すのは、ダイクロイックフィルタ50を支持するフィルタ固定部材56は、ダイクロイックフィルタ50の厚み方向にクリアランスを設けずに固定する。加えて、薄型照明モジュール40を回転または回動させる照明回動機構49およびその照明回動機構49に動力を供給する動力源(図示を省略)を備えた照明装置を単純化して図示したものである。
照明回動機構49および動力源を備えていることにより、薄型照明モジュール40から得られる光は、図9の[A]、[B]、[C]にてそれぞれ異なる。
なお、図示を省略するが、照明回動機構49を省略し、回転角度を規制しつつ薄型照明モジュール40を支持する支持部材を備えてもよい。そのような照明装置をたとえば屋外に設置すれば、風などによって薄型照明モジュール40が規制領域内を不規則に動く、という変化に富んだ照明装置を提供することとなる。
【0049】
(図11、図12)
図11および図12には、薄型電球色モジュール40aを実現するための構成を示している。
前述してきた実施形態とは異なり、照明用モジュールと独立させたダイクロイックフィルタは設けない。代わりに、導光板30におけるサイドビュー型LED20側の端面に、ダイクロイックフィルタを形成する際の蒸着を施している。図11および図12中では、Bフィルタ部位30aとして図示している。
なお、図12中において、一箇所だけBフィルタ部位30aを離して図示している。これは、Bフィルタ部位30aと導光板30とを別々に形成できることを意図しているのではなく、導光板30が図3に採用されたものと異なる旨を示す意図である。
【0050】
サイドビュー型LED20は白色LEDである。また、Bフィルタ部位30aは、青色光の一部を反射するように、二酸化珪素と五酸化タンタルの二層膜とを多層とした透明皮膜である。青色の全てを反射してしまうと白熱電球のような色にはならないので、半分以上を反射するようにしている。
図11および図12に示す薄型電球色モジュール40aによれば、白熱電球のような色を発光できる薄型照明装置を提供できる。
【0051】
以上説明したように、樹脂を機材としたダイクロイックフィルタ50を実現し、これを照明装置に組み合わせることにより、照明装置のバリエーションを大きく広げることに本願発明は貢献している。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明は、照明装置の製造業、家具の製造業、住宅やマンションの建設業、照明装置を用いたデザイン業などにおいて、利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】第一の実施形態を示す薄型の照明装置の主要部を示す組み立て斜視図である。
【図2】第一の実施形態を示す薄型の照明装置の主要部を示す断面図である。
【図3】第一の実施形態を示す薄型の照明装置の主要部を示す組み立て斜視図である。
【図4】照明装置のバリエーションを示すモデル断面図である。
【図5】照明装置のバリエーションを示すモデル断面図である。
【図6】照明装置のバリエーションを示すモデル断面図である。
【図7】本発明に係る家具の一例を示すモデル断面図である。
【図8】本発明に係る家具の一例を示すモデル断面図である。
【図9】照明装置としてのバリエーションの一例を示すモデル断面図である。
【図10】照明装置としてのバリエーションの一例を示すモデル断面図である。
【図11】薄型電球色モジュールを実現するための断面図である。
【図12】薄型電球色モジュールを実現するための組み立て斜視図である。
【図13】実施形態であるダイクロイックフィルタの積層構造を示す断面のモデル図である。
【図14】実施形態であるダイクロイックフィルタの光学特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
10 基板 11 端子
20 サイドビュー型LED 21 光源
30 導光板 30a Bフィルタ部位
40 薄型照明モジュール 40a 薄型電球色モジュール
41 金属プレート
42 反射シート 43 拡散媒質
44 透明プレート
49 照明回動機構
50 ダイクロイックフィルタ 51 Rフィルタ
52 Gフィルタ 53 Bフィルタ
54 フレネルレンズ兼用ダイクロイックフィルタ
55 フィルタ支持部材 56 フィルタ固定部材
60 曲面ミラー
70 建物の構造体(天井、壁)
71 建物の構造体(壁)
72 建物の構造体(床)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、 その光源から発光される光の中から所定の波長の光を反射する光学フィルタと、を備える照明装置であって、
その光学フィルタは、
プラスチックによる基材と、
その基材に対する物理的蒸着によって固定された透明皮膜と、を備え、
その透明皮膜は、二酸化珪素と酸化チタンまたは酸化チタン系複合材の二層膜とを多層とした光学膜として形成した照明装置。
【請求項2】
前記の光源と前記の光学フィルタとの距離をゼロより大きくするために当該光学フィルタを支持するフィルタ支持部材を備えた請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記のフィルタ支持部材は、前記の光学フィルタがその厚さ方向に移動可能であるように当該光学フィルタを支持することとした請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記の光学フィルタは、レンズとして形成した請求項1から請求項3のいずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記の光源は、発光される光の角度を変更可能な角度変更機構と、その角度変更機構の角度を変更させる角度変更動力とを備えた請求項1から請求項4のいずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
前記の光源は、 帯状の基板と、
その基板の長手方向に連続して固定した複数のサイドビュー型LEDと、
そのサイドビュー型LEDの照射面に端面が接するように固定され、その端面から入射した光を一の平面に出射する面発光タイプの導光板と、
その導光板が発光する面に位置させた光拡散媒質と、
前記導光板における前記光拡散媒質とは反対側の面に位置させた反射シートと、を備え、前記の各部材を金属プレートにて支持することとして形成した請求項1から請求項5のいずれかに記載の照明装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6に記載の照明装置を組み込んだ家具。
【請求項8】
帯状の基板と、
その基板の長手方向に連続して固定した複数のサイドビュー型LEDと、
そのサイドビュー型LEDの照射面に端面が接するように固定され、その端面から入射した光を一の平面に出射する面発光タイプの導光板と、
その導光板が発光する面に位置させた拡散媒質と、
前記導光板における前記拡散媒質とは反対側の面に位置させ光を反射させる反射シートと、を備えた照明用モジュールであって、
前記の導光板におけるサイドビュー型LED側の端面には、物理的蒸着によって固定された透明皮膜を備え、
その透明皮膜は、二酸化珪素と酸化チタンまたは酸化チタン系複合材の二層膜とを多層とした光学膜として形成した照明用モジュール。
【請求項9】
前記のサイドビュー型LEDは、白色LEDとし、
前記の透明皮膜は、青色光の一部を反射する構成とした請求項8に記載の照明用モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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