説明

照明装置、液晶ディスプレイ装置及びディスプレイ装置

【課題】光の外部取り出し効率を最適化し、射出光の射出角度による色度座標の変化を改善する。
【解決手段】照明装置10は、EL素子101と、EL素子101から射出される光を導いて射出させる光偏向要素5を備えた光取り出しシート7部材とを備えた。光偏向要素5を基材8上に構成し、光偏向要素5は第1単位レンズと第2単位レンズが互いに直交して配列された。第1単位レンズは断面視略凸曲面形状をなしていて第1の方向に延在していて複数配列され、第2単位レンズは断面視略凸曲面形状をなしていて第1の方向に直交する第2方向に延在していて複数配列された。各単位レンズの断面高さf(x)を変位xで微分した絶対値の最大値|df(x)/dx|maxの値は、1.00≦|df(x)/dx|max≦6.00の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ、液晶用バックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源等に用いられるEL素子(エレクトロ・ルミネッセンス素子)を備えると共に、光取り出し部材を用いた照明装置、液晶ディスプレイ装置及びディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機EL素子は、透光性基板上に蛍光有機化合物を含む発光層を陽極と陰極で挟んだ構造を有する。そして、陽極と陰極に直流電圧を印加し、発光層に電子および正孔を注入して再結合させることにより励起子を生成し、この励起子が失活する際の光の放出を利用して発光に至る。
【0003】
従来、これらEL素子において、発光層から射出した光線が透光性基板から射出する際、透光性基板上において全反射し、光線がロスするという問題があった。この場合、EL素子の光の外部取り出し効率は一般に20%程度と言われている。そのため、高輝度が必要になればなるほどより多くの投入電力が必要になるという問題があり、その場合、素子に及ぼす負荷が増大し、素子自体の信頼性を低下させる。
【0004】
この光の外部取り出し効率を向上させる目的で、素子基板に微細な凹凸を形成し、全反射によりロスしている光線を外部に取り出すという方法が提案されている。例えば、特許文献1では、透光性基板の一方の面に複数のマイクロレンズエレメントを平面的に配列して成るマイクロレンズアレイを形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−260845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、光取り出し効率の向上を図る上でも、射出光の射出角度による色度変化を抑制する上でも、十分なものとはいえなかった。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、光取り出し効率の最適化を行い光取り出し効率の向上を図るとともに、射出光の射出角度による色度座標の変化を改善する上で有利な光取り出しシートを用いた照明装置、液晶ディスプレイ装置及びディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用した。
すなわち、本発明による照明装置は、発光手段と、発光手段から射出される光を導いて射出させる光偏向要素を備えた光取り出し部材とを備え、光偏向要素は、第1の方向に第1単位レンズが略等間隔に配列され、第1の方向に略直交する第2の方向に第2単位レンズが略等間隔に配列されてなり、第1単位レンズ及び第2単位レンズは縦断面視で凸曲面形状を有しており、第1単位レンズ及び第2単位レンズの凸曲面形状における幅方向の変位をそれぞれxとし、変位xの中点をx=0とすると共に変位xに含まれる任意の点xとxについてx>xとして、凸曲面形状の断面高さをf(x)とし、f(x)が下記の(1)式、(2)式、(3)式、(4)式及び(5)式を満たすことを特徴とする。
【数1】

【数2】

但し、|df(x)/dx|maxは第1単位レンズおよび第2単位レンズの断面高さf(x)を変位xで微分した絶対値の最大値である。
【数3】

【数4】

【数5】

本発明によれば、(2)式により、断面高さf(x)をxで微分した絶対値の最大値が1以上であれば相対光量を増加させると共に相対色差を改善できて射出光を正面方向に偏向する効果が大きく、6以下であれば単位レンズの金型等による製作困難を生じない。(3)式により、単位レンズの端部における傾斜角θが大きくなるため、単位レンズへの入射光のうち入射角度の大きい光が光偏向要素の入射面で反射される光量を低減させて単位レンズを通して射出する光量を増大でき、色差の改善効果が強くなる。更に、(4)式による単位レンズの端部での傾斜角の変化量が小さくなり色差の改善効果が強い。また、(5)により相対光量が増大して相対色差の減少率が大きくなる。
【0009】
また、本発明による照明装置は、第1単位レンズ及び第2単位レンズの縦断面視凸曲面形状における曲率半径をR(x)とし、該R(x)は下記(6)式で定義されていて、下記の(7)式、(8)式、(9)式を満たすことが好ましい。
【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

(6)式の曲率半径R(x)は、(7)式により単位レンズの中心部から発光手段の射出面との交点である端部にかけて傾斜面が徐々に増加することで、角度変化による色差改善効果を得られる。更に(8)式により、曲率半径R(x)を変位xで微分したdR(x)/dxが(8)式を満たすことで、単位レンズの曲率半径の変化量が中心部から端部にかけて大きくなり、発光手段の広角領域の射出光を観察方向に偏向できる。また、dR(x)/dxが(9)式を満たすことで単位レンズの曲率半径R(x)の変化量が中心部から端部に近づくほど小さくなり色差の改善効果が高い。
【0010】
また、本発明による照明装置は、第1単位レンズ及び第2単位レンズの曲率半径R(x)のx=0における変化量と端部E1,E2における変化量の差を規定するS(x)は下記(10)式で特定されていて、S(x)は下記(11)式を満たすことが好ましい。
【数10】

10≦S(x)≦60 …(11)
そのため、(10)、(11)式により、S(x)は相対光量の増加率が20%以上で相対色差の減少率が10%以上となる。
【0011】
また、本発明による照明装置は、第1単位レンズ及び第2単位レンズの凸曲面形状のレンズ幅をLとし、レンズ高さをHとして、下記(12)式を満たすことが好ましい。
【数11】

H/Lは大きい方が好ましいが、(12)式を満足することにより、相対光量を増大させて相対色差を10%以上改善させると共に、光取り出し部材の製作に困難性を生じない。
【0012】
また、第1単位レンズ及び第2単位レンズの凸曲面形状と発光手段の射出面との交点における最大傾斜角をそれぞれθとして、下記(13)式を満たすことが好ましい。
45度≦θ≦80度 …(13)
単位レンズの端部の最大傾斜角θは大きい方が好ましいが、(13)式を満足することにより、相対色差を10%以上改善させると共に、光取り出し部材の製作に困難性を生じない。
また、発光手段はEL素子であることが好ましい。
【0013】
本発明による液晶ディスプレイ装置は、上述したいずれかに記載された照明装置と、照明装置の光の射出面側に配設された液晶画像表示素子とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、発光手段から射出された光を光取り出し部材に入射させることで、外部への取出し効率を向上させることができると共に射出角度による色度座標の変化を改善することができて、液晶ディスプレイの利用効率が高い。
【0014】
本発明によるディスプレイ装置は、上述したいずれかに記載された照明装置と、照明装置の光の射出面側に配設された画像表示素子とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、発光手段から射出された光を光取り出し部材に入射させることで、外部への取出し効率を向上させることができると共に射出角度による色度座標の変化を改善することができて、ディスプレイの光量増大と色差の低減を達成できて利用効率が高い。
【発明の効果】
【0015】
本発明による照明装置によれば、第1単位レンズと第2単位レンズを交差するように配列し、第1単位レンズと第2単位レンズの縦断面視凸曲面形状の幅方向の変位xとして、断面高さf(x)、曲率半径R(x)、関数S(x)を最適化することで、発光手段から射出された光を発光手段の射出面で反射させずに光取り出し部材に入射させて、第1単位レンズと第2単位レンズによって外部への取出し効率を向上させることができると共に射出角度による色度座標の変化を改善して、第1単位レンズと第2単位レンズからの射出光の色差を低減できる。
さらに、本発明による照明装置を備えた液晶ディスプレイ装置及びディスプレイ装置を用いることで、上述した光特性を得られることに加えて、光の利用効率が高く意匠性を有する照明装置、液晶ディスプレイ装置及びディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態によるEL素子と光取り出しシートを備えた照明装置の概略断面図である。
【図2】図1におけるEL素子の要部説明図である。
【図3】本実施形態による光取出しシートを示すものであり、(a)は要部斜視図、(b)は第1単位レンズの正面図、(c)は第2単位レンズの正面図である。
【図4】本実施形態による光取り出しシートの単位レンズの断面高さ形状を示す説明図、(b)は微分図、(c)は二重微分図である。
【図5】光取り出しシートの単位レンズの断面高さ形状を変更したときの(a)は相対光量を示す図、(b)は相対色差を示す図である。
【図6】光取取出しシートの単位レンズの断面高さ形状を変更したときの(a)は相対光量を説明する図、(b)は相対色差を説明する図
【図7】光取出しシートについて、(a)は曲率半径を示す説明図、(b)は微分値を示す図、(c)は二重微分値を示す図である。
【図8】光取出しシートの単位レンズの断面形状S(x)を変更したときの(a)は相対光量を説明する図、(b)は相対色差を説明する図である。
【図9】光取出しシートのレンズ幅に対するレンズ高さを変更したときの(a)は相対光量を示す図、(b)は相対色差を示す図である。
【図10】光取出しシートの最大傾斜角度θを変更したときの相対色差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態による照明装置10を示すものであり、照明装置10は発光手段であるEL素子(エレクトロ・ルミネッセンス素子)101と、EL素子101から射出された光の外部取り出し効率を高くする光取り出しシート7とを備えている。図1及び図2に示すように、EL素子101は、第1の基板1Aと第2の基板1Bとの間に発光構造体100が挟み込まれている。発光構造体100は、発光層2を陽極3と陰極4とで挟んで構成されている。
光取出しシート7は、基板1Aの発光層2側とは反対側を光照射方向Fとする。
【0018】
発光層2の一方の面には陽極3が配設され、他方の面には陰極4が配設されている。発光層2は陽極3と陰極4とに電圧を印加することにより発光する。これら発光層2と陽極3と陰極4とによって発光構造体100が構成されている。発光構造体100としては従来公知のさまざまな構成が採用可能である。
【0019】
発光層2は白色発光層とすることもあり、或いは青色、赤色、黄色、緑色などの発光層とすることもある。白色発光層とする場合には、この発光層2の構成を、例えばITO/CuPc(銅フタロシアニン)/α−NPDにルブレン1%ドープ/ジナクチルアントラセンにペリレン1%ドープ/Alq3/フッ化リチウムとし、陽極3としてITO(酸化インジウム錫)等の透明金属薄膜を配設し、陰極4としてAl等の金属薄膜を配設した構成とすればよい。
【0020】
ただし、EL素子101の発光構造体100は上述した構成に限定されるものではなく、発光層2から射出する光線の波長をR(赤色)、G(緑色)、B(青色)とすることのできる適宜材料を用いた任意の構成を採用することが可能である。また、フルカラーディスプレイ用途で使用する場合には、R、G、Bに対応した3種類の発光材料の塗り分けとする構成や、白色光にカラーフィルターを重ねる構成等によってフルカラー表示が可能となる。
【0021】
また、第1の基板1Aは、陽極3が発光層2に臨む面と反対側の面に形成されている。第2の基板1Bは、陰極4が発光層2に臨む面と反対側の面に形成されている。
第1の基板1A及び第2の基板1Bの材料としては、種々のガラス材料を用いることができ、他にPMMA、ポリカーボネート、ポリスチレン等のプラスチック材料、あるいはアルミニウムなどの金属材料を用いることもでき、更にその他の様々な材料を用いることができる。特に好ましいのは、シクロオレフィン系のポリマーであり、このポリマーは加工性及び耐熱、耐水性、光学透光性等の材料特性の全てにおいて優れたものである。
【0022】
また、第1基板1Aは、発光構造体100(発光層2)からの光をできるだけ透過させることができるように、全光線透過率を50%以上とすることのできる透明金属材料で形成することが好ましい。
【0023】
次に、光取出しシート7は、第1の基板1Aが陽極3に臨む面と反対側の面に接着層6を介して設けられている。接着層6を構成する粘・接着剤として、例えばアクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系の粘・接着剤が挙げられる。
いずれの場合も、接着層6は、高温の光源である発光構造体100に隣接して使用されるため、100℃で貯蔵弾性率G’が1.0E+04(Pa)以上であることが望ましい。これより値が低いと、使用中に光取出しシート7と第1の基板1Aとがずれてしまう可能性がある。光取出しシート7と第1の基板1Aが大きくずれてしまうと、光取出しシート7に発光層2からの射出光が効率よく入射しないため、光の利用効率が低下してしまう。
【0024】
また、発光層2と光取出しシート7との間の積層体の厚みを安定的に確保するために、接着層6を構成する接・粘着剤層の中に透明の微粒子、例えばビーズ等を混ぜても良い。また、接着層6は両面テープ状のものでも良いし、単層のものでもよい。
【0025】
光取出しシート7は、発光層2からの光を偏向して、照射方向Fに射出して光の外部取り出し効率を向上させる機能を有する。光取出しシート7は、接着層6を挟んで第1の基板1Aと反対側に配設された基材8と、この基材8の表面に配列されていて光を集光して射出させる光偏向要素5とを有している。
図3に示すように、光偏向要素5はQ2方向に延在する断面略凸曲面形状の第1単位レンズ40をQ1方向に複数配列させ、略同一または近似する形状の第2単位レンズ50を第1単位レンズ40の延在方向に略直交するQ1方向に延在させてQ2方向に複数配列させたものである。
【0026】
図1において、EL素子101の発光層2から射出された光B0は基板1Aを光B1として透過し、光取り出しシート7の基材8から光偏向要素5に入射する。光偏向要素5に入射した光B1は、一部が光B2として光偏向要素5の射出面から外部へ射出される。
仮に、図2に示すように、EL素子101に光取り出しシート7が設けられておらず、第1の基板1Aの射出面1aが平坦面であった場合には、光B1の大部分は射出面1aで全反射されて再度発光層内2に向かう反射光B12となる。光B12は、照射方向Fに偏向されないため損失となってしまう。このため、EL素子101の光の外部取り出し効率を向上させるためには、光B1について射出面1aでの反射光B12を減少させると共に射出面1aからの射出光B2を増加させることが重要である。
【0027】
またEL素子101の発光層2から射出した光B0は、射出角度により色度が変化する。図1に示す照明装置1のように、EL素子101の光射出面1a側の光取り出しシート7に光偏向要素5を設けることにより、発光層2から射出された光B0は光偏向要素5で偏向され、射出光B2として照射方向Fに射出される。このとき光偏向要素5の形状を変化させて射出光B2の射出方向を変化させることで、射出角度による色度の変化を抑制することが可能となる。
【0028】
ところで、EL素子101において、光の外部取り出し効率や色差を改善する従来の方法として、(a)EL素子101の表面1aにプリズムシートなどの構造物を形成する方法や、(b)透明基材8にフィラーを塗布して凹凸面を形成した拡散フィルムを設置する方法や、(c)透明基材8に略半球状のマイクロレンズを形成する方法等がある。
【0029】
しかしながら、プリズムシートなどの構造部を設置する方法では、以下の問題がある。
(a)プリズムシートなどの直線形状が大部分を占める構造では、プリズムの直線形状により傾斜角度が一定となるため、ある特定の角度の光を効率良く外部へ取り出すことが可能となる。
しかし、上述のある特定の角度以外の光は外部取り出し効率が小さくなり、総合的には、外部取り出し効率が小さくなる問題が生じる。また、EL素子101の射出角度による色度座標の変化は、プリズム形状であると傾斜角が一定であるため、特定の角度の入射光を特定の角度の射出光へ偏向させるため、色度の角度による変化に基づく改善効果は低いという欠点がある。
【0030】
(b)透明な基材8にフィラーを塗布して凹凸面を形成した拡散フィルムを設置する方法では、以下の問題がある。
基材8にフィラーを塗布して凹凸面を形成する場合、凹凸面の形状はフィラーの隆起の度合いにより決定されるため、高精度な凹凸面の形成ができない。そのため、凹凸面に光を制御する精度の良い形状を形成することが出来ない問題が生じる。例えば、フィラーを隆起させることで略半球形状を形成しようとした場合、フィラーの隆起が不十分となり略半球形状の一部分しか形成されない。すなわち、略半球形状の高さと幅との比をアスペクト比(高さ/幅)とした場合、アスペクト比が小さくなってしまうため、結果として光の外部取り出し効率小さくなる問題が生じる。
【0031】
(c)マイクロレンズを形成する方法では以下の問題がある。
マイクロレンズは、上述の拡散フィラーと比較して、高精度に成形することが可能であり、アスペクト比を大きくして略半球形状を成形することが可能である。しかし、EL素子101の発光層2からの光は等方的であるため、略半球型は好ましいが、略半球型のマイクロレンズでは面全体を埋めることは出来ず、略半球面のマイクロレンズ間に平坦面が発生する。平坦面が発生すると、図2に示す射出面1aでの反射光B12が発生し、照射方向Fに射出しないため、光の利用効率が低下する。
【0032】
また、六方配置のような最密構造シートによって基板1Aの射出面1a面全体を埋めることが可能であるが、このような形状を作成する場合、さらに高精度な成形が要求され、マイクロレンズの重なりなどの不具合が発生しやすい。また、隙間を少ない状態にしてマイクロレンズを配列成形すると、各マイクロレンズ間のわずかな隙間の距離のズレがマクロなムラとして見えてしまうので、好ましくない。
そのため、この場合でも実質的な占有面積率は76%前後となる。その結果として、約24%は平坦面が残るため、光の外部取り出し効率が不十分になるという問題が発生する。
【0033】
そのため、本実施形態による照明装置10では、EL素子101の光の外部取り出し効率や射出角度による色度の変化を改善するため、図3に示す光取出しシート7をEL素子101の表面である射出面1aに設けた。
この光取出しシート7はシート状の基材8に光偏向要素5を配列させたものであり、図3に示すように、光偏向要素5は断面凸曲面形状でQ1方向に延在する第一単位レンズ40を複数配列させ、第二単位レンズ50を第一単位レンズ40の延在方向に略直交するQ2方向に延在させて複数配列させたものである。
光偏向要素5における第1単位レンズ40と第2単位レンズ50は、発光層2から射出される光B0を偏向して照射方向Fに射出させるように構成されている。これら第1単位レンズ40と第2単位レンズ50は基材8上に別体として配置したものであってもよいし、第1単位レンズ40と第2単位レンズ50を基材8と一体成型したものであってもよい。
【0034】
本発明の実施形態である光取出しシート7について図3を用いて説明する。なお、以下の説明では、第1単位レンズ40と第2単位レンズ50を総称して単に単位レンズということがある。
光偏向要素5は、光透過性の基材8の一方の面、即ち照射方向Fの面(この面を表面と定義する)8aに、第1単位レンズ40として、一方向に沿って互いに平行に配列された第1単位レンズ40を配設させ、第1単位レンズ40と交差する方向に沿って互いに平行に配列された複数の第2単位レンズ50を配設させている。また、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50は、長手方向に直交する凸曲面41,51をなす断面形状が、例えば多項式近似曲線で与えられる非球面レンズ形状に形成されている。図3(a)は、第1単位レンズ40及び第2単位レンズ50の断面形状が凸曲面41,51の非球面レンズ形状とした場合の斜視図であり、図3(b)、(c)は光取出しシート7の断面形状を示した図である。
これら第1単位レンズ40と第2単位レンズ50の縦断面の凸曲面41,51は線対称で形成されていることが好ましい。
【0035】
第1単位レンズ40と第2単位レンズ50は互いに交差するように配列することが望ましい。もし、第1単位レンズ40と第2単位レンズ50が、互いに交差することなく一方向に延在する帯状を呈した場合、延在する一方向に関しては、第1単位レンズ40と第2単位レンズ50は互いの傾斜角を有していない、すなわち平面状の効果と同等となり、図2に示す光B12のように、外部に取り出すことが出来ない光となり、光の外部取り出し効率が小さくなるという課題が生じる。
そのため、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50は、断面が凸曲面のレンズ形状で一方向に延在してなり、当該凸曲面のレンズ形状が、互いに交差するように配列することで、2次元方向に対して傾斜角を設けることが可能となるため、光の取出し効率が大きくなり好ましい。
【0036】
さらに、上述のように、第1単位レンズ40と第2単位レンズ50は互いに交差するように配列することで、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50が照射方向Fに射出する光の配光分布を2次元方向に調整することが可能となる。そのため、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50を任意の形状にすることで、射出光を対称な配光分布にし、あるいは射出角度による色差を改善することが可能となるため好ましい。
【0037】
EL素子101を照明用途して用いる場合、少なくとも2次元的に配光分布を調整する必要がある。その理由として、例えば照明装置10の設置場所によっては、ある特定方向は照射する必要がなく、広い配光分布ではなく正面方向に高い輝度を要求することがある。あるいは、光偏向要素5に入射する光B1が非対称な配光分布になる場合で、かつ照明装置10から射出される光の配光分布が、対称な配光分布であることが要求される場合、照明装置10から射出される光の配光分布を1次元方向のみの調整で対称な配光分布にすることは困難であるため、2次元方向の調整が可能な構成が好ましい。
また、本実施形態における光取り出しシート7の構成のように、第1単位レンズ40と第2単位レンズ50を略直交させて配列した形状では、光を2次元的に広げるために、新たにレンズシートを追加することなく適切な配光分布に調整することが可能となり、照明装置10の軽量化、薄型化、低コスト化を図ることも可能である。
【0038】
特に、発光層2から射出される光は、配光分布が広いブロードな指向性を有する光である。そのため、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50は、上述の広い配光分布を照射方向Fに偏向するように設計することが好ましい。
【0039】
第1単位レンズ40は第2の方向Q2に沿って配列されており、図3(b)に示す縦断面視において、基材8の表面8aに接触する凸曲面41の底部の幅をレンズ幅L1とし、表面8aから頂部までの高さをH1とし、第1単位レンズ40の頂点間の距離(ピッチ)をP1とし、凸曲面41における凸曲線状の稜線40aと表面8aとの交点である端部Eにおける稜線40aの最大傾斜角度をθ1とする。
また、第2単位レンズ50は第1の方向Q1に沿って配列され、表面8aに接触する凸曲面51の底部の幅をレンズ幅L2とし、表面8aから頂部までの高さをH2とし、第2単位レンズ50の頂点間の距離をP2とし、凸曲面51における凸曲線状の稜線50aと表面8aとの交点である端部Eにおける稜線50aの最大傾斜角をθ2とする。
【0040】
また、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の断面形状は、同じでも良いし異なっていても良い。直交する第1単位レンズ40と第2単位レンズ50の断面形状を異なる形状にすることにより、光偏向要素5に入射した光B1が、照射方向Fに射出する際に光の配向分布を2次元に調整することが可能となる。
【0041】
さらに、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の断面をなす凸曲面41、51の形状は、多項式近似曲線で近似される非球面断面形状以外にも多角形状、完全な半円形状(球面レンズ)、半楕円形(楕円面レンズ)や放物線形(放物面レンズ)などの非半円形状(いわゆる2次の非球面形状)の凸曲部を有する平面、さらには、2次以降の項を有する高次非球面形状の凸曲部を有する平面、高次非球面形状と多角形形状を組み合わせた凸曲部を有する平面でもよく、その組み合わせ方は自由である。
第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の断面形状を、多角形状もしくは非球面形状にすることにより、レンズ側面の適切な傾きをもった面積を調整することができるため、より高次に射出光の光線方向を調整することが可能となる。また、レンズ側面の傾きを複数有する形状にすることにより、光取出しシート7からの射出角度がレンズ側面の傾きにより変化するため、射出光の色の角度依存性を制御することが可能となる。さらには、レンズ頂点に曲面を有するレンズ形状にすることにより、耐擦性の向上が見込まれる。
【0042】
上述したように、EL素子101の光の外部取り出し効率、射出角度による色度の変化を改善するような第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の形状について以下に説明する。なお、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50は同一または近似した断面形状を有するので、これらを共通の単位レンズとして説明する。
図4(a)は、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の断面をなす凸曲面41,51において、レンズ幅をLとし、レンズ高さをHとして、単位レンズの一方の端部E1を−L/2、他方の端部E2をL/2とする。また、第1単位レンズ40の凸曲面41における方向Q1に沿って測った変位をxおよび第2単位レンズ50の凸曲面51における方向Q2に沿った変位をxとしたとき、第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の断面高さをf(x)で表した第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の断面高さを示すグラフである。
図4(b)は、単位レンズ40,50の断面高さf(x)をxについて微分したdf(x)/dxの絶対値を示すグラフ、図4(c)は、単位レンズの断面高さf(x)をxについて2回微分したdf(x)/dxの絶対値を示すグラフである。
【0043】
図4(b)において、単位レンズ(40,50)の断面高さf(x)を変位xで微分した値df(x)/dxが任意の点xで0になるとき、単位レンズの断面形状は点xで変極点となる。点x=0で
df(x)/dx=0 …(1)
となるとき、単位レンズはレンズ幅Lの中心の点が断面形状の高さの最高点となる。
【0044】
また、単位レンズの断面形状f(x)を変位xで微分した値の絶対値|df(x)/dx|が下記式(1A)を満たすとき、単位レンズの断面形状は三角形状となり、傾斜角が一定となるため、光偏向要素5に入射した光が観察方向へ射出される際、直線的に偏向するため、色差改善効果は低い。
【数12】

また、|df(x)/dx|が下記式(2A)を満たすとき、単位レンズは凹レンズ形状となり、単位レンズが並列した際の、レンズ間の角度が鋭角となるため耐擦性が低下し、傷が視認され易くなるため好ましくない。
【0045】
【数13】

そのため、単位レンズの断面形状は、凸レンズ形状となる式(3)を満たすことが望ましい。また、|df(x)/dx|が下式を満たすとき、単位レンズの断面形状における傾斜角は単位レンズの中心部より端部に近づくほど大きくなるため、色差の改善効果が高くなる。
【数14】

【0046】
図4(c)において、単位レンズの断面高さf(x)を変位xで2回微分した値の絶対値|df(x)/dx|が式(3A)を満たすとき、単位レンズの断面形状における傾斜角の変化量が中心部より端部に近づくほど大きくなるため、色差の改善効果が低い。
【数15】

そのため、単位レンズの断面高さf(x)を変位xで2回微分した値の絶対値|df(x)/dx|が式(4)を満たすことが望ましい。
【数16】

【0047】
図2において、発光層2から射出した光B1は、その一部が基板1Aで反射される光B12となる。反射光B12は基板1Aから射出する角度が大きくなるほど増加する。したがって、発光層2から射出する光B1のうち基板1Aから射出する光B2の光量を増加させるためには、光B1のうち基板1Aから射出する角度の大きい光を射出面F側へ射出光B2として取り出す必要がある。
単位レンズ40,50の断面形状が上記(3)式を満たすとき、単位レンズ40,50の端部Eにおける傾斜角θ1,θ2が大きくなるため、単位レンズ40,50に入射する光のうち入射角度の大きい光が、基板1Aの射出面1a側で反射される光B12の光量を減少させることが可能である。
また、単位レンズ40,50に入射する光のうち、入射角度が大きい光を射出面F側へ偏向する効果は、単位レンズ40,50の断面形状における端部Eでの傾斜角θ1、θ2が大きくなるほど強くなるため、単位レンズ40,50の断面形状が式(3)を満たすとき、色差の改善効果が強くなる。さらに、単位レンズの断面形状が式(4)を満たすとき、単位レンズ40,50の端部E領域での傾斜角θ1、θ2の変化量が小さくなるため、色差の改善効果が強くなる。
【0048】
図5に単位レンズ40,50の断面高さf(x)を変位xで微分した絶対値の最大値|df(x)/dx|maxの値を変化させたときの相対色差と相対光量を示す。
図5(a)において、横軸は断面高さf(x)を変位xで微分した絶対値の最大値|df(x)/dx|max、縦軸は|df(x)/dx|maxを変化させたときの相対光量である。
ここで、相対光量とは、EL素子101に光取出しシート7を使用しないときの光の積算光量を1.00としたときの値である。
図5(b)において、横軸は断面高さf(x)を変位xで微分した絶対値の最大値|df(x)/dx|max、縦軸は光取出しシート7を使用しないときの測定視野0度から80度の範囲における色度座標u’、v’の最大変化量ΔEu’v’を1.00としたときの相対色差である。
【0049】
図5(a)において、相対光量は、横軸にとった|df(x)/dx|maxが1になるまでは増加し、|df(x)/dx|maxが1より大きくなると徐々に低下する。図5(b)において、相対色差は、|df(x)/dx|maxの値が大きくなるにつれて次第に低下する。
これは、発光層2から射出された光のうち射出角度が大きい射出光ほど射出面1aの界面で全反射されるため、EL素子101の内部に戻される光量が増加してEL素子101の外部への光の取出し効率は低下する。そこで、EL素子101の光射出面1aに光偏向要素5を設けることにより、発光層2から射出した射出角度が大きい射出光であっても、射出面1a界面で全反射されずに偏向されて観察面F側へ射出されるようになるため外部取出し効率が向上する。
【0050】
また、変位xが0より大きい領域では、|df(x)/dx|は単調増加し、|df(x)/dx|が最大値となるのは、単位レンズ40,50の端部(L/2)である。すなわち、単位レンズ40,50の中心部(x=0)から端部(x=L/2)に近づくほど、単位レンズ40,50の傾斜角が大きくなる。単位レンズ40,50の端部における傾斜角θが大きくなるほど、EL素子101から射出された広角度領域の光を正面方向へ偏向する効果が大きくなるため、|df(x)/dx|maxが大きくなるにつれ相対色差は改善する。
また、単位レンズ40,50の断面高さf(x)を変位xで微分した絶対値の最大値|df(x)/dx|maxの値が6以上になると、単位レンズ40,50における最大傾斜角が80度以上となり、金型の作製やシートの作製が困難となるため|df(x)/dx|maxの値は6以下であることが望ましい。
【0051】
以上の理由から、単位レンズ40,50の断面高さf(x)を変位xで微分した絶対値の最大値|df(x)/dx|maxの値は、0より大きくなることにより相対光量は増加し、相対色差も改善するが、好ましくは相対光量の増加率が20%以上で、相対色差の減少率が10%以上である
1.00≦|df(x)/dx|max≦6.00 …(2)
の範囲内であることが望ましい。相対色差の減少率は大きい方が好ましいため、より好ましくは、相対色差の減少率が50%以上である
2.00≦|df(x)/dx|max≦6.00 …(2’)
の範囲内であることが望ましい。
【0052】
次に、図6に単位レンズ40,50の断面高さf(x)を変位xで2回微分した絶対値の最大値|df(x)/dxmaxの値を変化させたときの相対色差と相対光量を示す。
図6(a)において、横軸は断面高さf(x)をxで2回微分した絶対値の最大値|df(x)/dxmax、縦軸は|df(x)/dxmaxを変化させたときの相対光量である。ここで、相対光量とは、EL素子101に光取出しシート7を使用しないときの光の積算光量を1.00としたときの値である。
また、図6(b)において、横軸は断面高さf(x)をxで2回微分した絶対値の最大値|df(x)/dxmax、縦軸は光取出しシート7を使用しないときの測定視野0度から80度の範囲における色度座標u’、v’の最大変化量ΔEu’v’を1.00としたときの相対色差である。
【0053】
図6(a)において、相対光量は|df(x)/dxmaxが70になるまでは増加し、|df(x)/dxmaxが70より大きくなると徐々に低下する。図6(b)において、相対色差は|df(x)/dxmaxの値が大きくなるにつれて次第に低下する。
また、単位レンズ40,50の断面高さf(x)を変位xで2回微分した絶対値の最大値|df(x)/dxmaxは、xが0より小さい領域では単調増加し、xが0より大きい領域では単調減少する(図4(c)参照)、あるいは変位xの領域内で変化しないことが望ましい。つまり、単位レンズ40,50の中心部における傾きの変化の割合よりも端部Eにおける傾きの変化の割合が小さい方が望ましい。傾きの変化の割合が単位レンズ40,50の端部Eより中心部での方が大きくなると、単位レンズ40,50の断面形状は球面形状に近くなるため、レンズの偏向効果が低減するためである。
【0054】
以上の理由から、単位レンズ40,50の断面高さf(x)を変位xで2回微分した絶対値の最大値|df(x)/dxmaxの値は、0より大きくなることにより相対光量は増加し、相対色差も改善するが、好ましくは相対光量の増加率が20%以上であり、相対色差の減少率が10%以上である(5)式の範囲内であることが望ましい。
20≦|df(x)/dxmax≦160 …(5)
相対色差の減少率は大きい方が好ましいため、より好ましくは、相対色差の減少率が50%以上であり、相対色差の改善効果が略一定となる
50≦|df(x)/dxmax≦120 …(5′)
の範囲内であることが望ましい。
【0055】
また、単位レンズ40,50の点xにおけるf(x)の曲率半径R(x)は、次式(6)で表される。
【数17】

図7(a)は、単位レンズ40,50の配列方向に沿って測った変位をxとして、単位レンズ40,50の断面高さf(x)の曲率半径R(x)を示すグラフである。図7(b)は、単位レンズ40,50の曲率半径R(x)をxについて微分したdR(x)/dxを示すグラフを示すグラフである。
【0056】
図7(a)において、単位レンズ40,50の曲率半径R(x)が次式(4A)を満たすとき、単位レンズ40,50の断面形状は半円形状となり、入射光に対する偏向角度が一定となるため、光偏向要素5に入射した光が観察方向へ射出される際、直線的に偏向するため、色差改善効果は低い。なお、x、xは変位xに含まれる任意の値であり、x>xである。
R(x)−R(x)=0 …(4A)
また、曲率半径R(x)が次式(5A)を満たすとき、単位レンズ40,50の断面形状は、レンズの中心部での曲率半径が大きく直線的な形状に近くなるため、角度変化による色度変化の改善効果が低下するため好ましくない。
【数18】

【0057】
そのため、単位レンズ40,50の断面の曲率半径は、単位レンズ40,50の中心部から端部にかけて傾斜率が徐々に増加する式(7)を満たすことが望ましい。
【数19】

【0058】
図7(b)において、単位レンズ40,50の曲率半径R(x)を変位xで微分した値の絶対値|dR(x)/dx|が式(8)を満たすとき、単位レンズ40,50の断面形状における曲率半径の変化量が、単位レンズ40,50の中心部から端部にかけて大きくなるため、EL素子101からの射出光成分のうち広角領域の射出光を観察方向へ偏向する効果が高くなるため好ましい。
【数20】

【0059】
図7(c)において、単位レンズ40,50の曲率半径R(x)を変位xで2回微分した値の絶対値|dR(x)/dx|が式(9)を満たすとき、単位レンズ40,50の断面形状における曲率半径R(x)の変化量が、中心部より端部に近づくほど小さくなるため、色差の改善効果が高い。
【数21】

【0060】
単位レンズ40,50の曲率半径R(x)の変位xにおける絶対値の最大値と最小値の差を単位レンズ40,50の幅の半分L/2で割ったときの値を次式(10)に示すS(x)としたとき、S(x)を変化させたときの相対光量と相対色差を図8(a)、(b)に示す。
【数22】

ここで、相対光量とは、EL素子101に光取出しシート7を使用しないときの光の積算光量を1.00としたときの値であり、相対色差とは、光取出しシート7を使用しないときの測定視野0度から80度の範囲における色度座標u’、v’の最大変化量ΔEu’v’を1.00としたときの値である。
なお、式(10)に示す関数S(x)は、単位レンズ40、50の曲率半径R(x)のx=0における曲率半径R(x)の変化量と、端部E1、E2における曲率半径R(x)の変化量の差を規定する式である。S(x)の値が大きくなると、単位レンズにおけるx=0と端部E1、E2における曲率半径R(x)の変化量の差が大きくなるので、急傾斜なレンズ形状となり色差は改善する。
【0061】
図8(a)において、相対光量はS(x)の値が大きくなるにつれ増加し、一定値以上増加すると徐々に減少する。図8(b)において、相対色差はS(x)の値が大きくなるにつれて減少する。
これは、EL素子101の光射出面1aに光偏向要素5を設けることにより、射出面1aの界面で全反射されていた射出角度が大きい射出光が光偏向要素5によって偏向されて観察面側Fへ射出されるようになるため光の外部取出し効率は向上する。
また、変位xが0より大きい領域では、曲率半径R(x)は単調増加するので単位レンズ40,50の中心部(x=0)から端部(x=L/2)に近づくほどレンズの直線性が大きくなり、S(x)の値が大きくなるにつれて曲率半径の変化の割合が大きくなるので、射出光の角度による色度変化の割合が小さくなり相対色差は改善する。
【0062】
以上の理由から、S(x)の値は、0より大きくなることにより相対光量は増加し、相対色差も改善するが、好ましくは相対光量の増加率が20%以上であり、相対色差の減少率が10%以上である
10≦S(x)≦60 …(11)
の範囲内であることが望ましい。相対色差の減少率は大きい方が好ましいため、より好ましくは、相対色差の減少率が50%以上である
30≦S(x)≦60 …(11′)
の範囲内であることが望ましい。
【0063】
図9(a)、(b)に第1単位レンズ40および第2単位レンズ50におけるレンズの幅Lに対する高さHの比H/Lを変化させたときの相対光量および相対色差を示す。
図9(a)において、横軸はレンズの幅Lに対する高さHの比H/L、縦軸は相対光量である。ここで、相対光量とは、EL素子101に頂角が90度のクロスプリズム形状をした光取り出しフィルムを使用したときに、入射した光B1が、照射方向Fに射出した光の積算光量を1としたときの値である。
図9(b)において、横軸はレンズの幅Lに対する高さHの比H/L、縦軸は光取出しシート7を使用しないときの測定視野0度から80度の範囲における色度座標u’、v’の最大変化量ΔEu’v’を1.00としたときの相対色差である。
【0064】
レンズの幅Lに対する高さHの比H/Lが大きくなるに従って相対光量は上昇し、相対色差が小さくなるので、レンズの幅Lに対する高さHの比H/Lは大きい方が好ましいが、色差の変化量が10%以上改善し、かつレンズの幅Lに対する高さHの比H/Lが大きくなると光取出しシート7の作製が困難となるため、次式(12)
0.30<H/L<2 …(12)
の範囲内であることが望ましい。照明装置10として用いる場合、色度の視野角度によるズレは小さい方が好ましく、より好ましくは、色差の変化量が50%以上改善する、
0.8<H/L<1.6 …(12′)
の範囲内であることが望ましい。
【0065】
図10に第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の稜線41,51と射出面1aとの交点である端部Eでの最大傾斜角度θ(θ1、θ2)を変化させたときの相対色差を示す。
図10において、横軸は単位レンズ40,50における最大傾斜角θ、縦軸は光取出しシート7を使用しないときの測定視野0度から80度の範囲における色度座標u’、v’の最大変化量を1.00としたときの相対色差である。
【0066】
最大傾斜角θが大きくなるに従い相対色差が小さくなるので、最大傾斜角θは大きい方が望ましい。相対色差の改善率が10%以上であることが好ましく、また最大傾斜角θが大きくなると光取出しシート7の作製が困難になることから、より好ましくは次式(13)の範囲内であることが望ましい。
45度≦θ≦80度 …(13)
この傾斜角θを有する第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の光偏向要素5を照明装置10に用いた場合、色度の視野角度によるズレは小さい方が好ましく、より好ましくは色差の変化量が20%以上改善するものとすると、
60度≦θ≦80度 …(13′)
の範囲内であることが望ましい。
【0067】
上述した構成を備えた光取出しシート7を成型する材料として、EL素子101の発光層2から射出される光の波長に対して光透過性を有するものを使用でき、例えば光学用部材に使用可能なプラスチック材料を使用することができる。
この材料の例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネ−ト樹脂、ポリスチレン樹脂、MS(アクリルとスチレンの共重合体)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂、あるいはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー又はアクリレート系等からなる放射線硬化性樹脂などの透明樹脂が挙げられる。
【0068】
また、光取出しシート7は、用途により透明樹脂中に微粒子を分散させて使用してもよい。透明樹脂中に微粒子を分散させることにより、光取出しシート7に入射した光が照射方向Fに射出する際、より拡散性が上昇するため色度の視野角度による変化を改善することが可能であり、また、照明装置10として使用した際、欠陥が観測されにくくなる利点が挙げられる。
この微粒子として無機酸化物からなる粒子又は樹脂からなる粒子を使用できる。例えば、無機酸化物からなる透明粒子として、シリカやアルミナ、酸化チタン等からなる粒子を挙げることができる。また、樹脂からなる透明粒子として、アクリル粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体、メラミン一ホルマリン縮合物の粒子、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン一ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリフルオロビニリデン)、及びETFE(エチレン一テトラフルオロエチレン共重合体)等の含フッ素ポリマー粒子、シリコーン樹脂粒子等を挙げることができる。これら微粒子は、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0069】
そして、光取出しシート7の製作に際して、上述した材料を金型に流し込み凝固させることで成型する。この金型の作製方法として、金型に対して各種レンズ形状を有する切削工具を用いて切削し、断面形状が第1単位レンズ40および第2単位レンズ50の凹凸部に対応する部分を作製する。
また、このような金型で光取出しシート7を作製する方法の他、第1単位レンズ40や第2単位レンズ50、そして基材8の形成法として、熱可塑性樹脂や紫外線硬化性樹脂と上記の形状が賦形された金型を用いて、押出し成型や射出成型、UV成型法などで成型することができる。この際、第1単位レンズ40及び第2単位レンズ50と基材8とを別体に成型してもよいし、一体品として成型してもよい。また第1単位レンズ40、第2単位レンズ50及び基材8を成型する場合には、内部にフィラーなど拡散剤を分散させて成型することもできる。
【0070】
また光取出しシート7に用いる帯電防止剤として、導電性微粒子のアンチモン含有酸化スズ(以下、ATO)や、スズ含有酸化インジウム(ITO)等の超微粒子を分散させてもよい。帯電防止剤を分散することで、光取出しシート7の防汚性を向上させることが可能となる。
【0071】
UV成型法のように光偏向要素5を基材8と別体に成型する場合、基材8は透明なフィルムであり、セルローストリアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタアクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂の延伸又は未延伸フィルムを使用することができる。
基材8の厚みは、基材8がもつ剛性にもよるが、50〜300μmのものが加工性等の取扱い面から見て好ましい。
【0072】
また、光偏向要素5が基材8と強固に接着しなかったり、寒熱、吸脱湿等の外的影響で接着力が低下したりするときは、光偏向要素5と基材8との間に両材料に対して接着性の高いプライマ層を設けてもよいし、光偏向要素5にプライマ層の作用を付加してもよい。
あるいは、コロナ放電処理等の易接着処理を施してもよい。
【0073】
上述のように本実施形態による光取り出しシート7とEL素子101を備えた照明装置10によれば、基材8の表面に第1単位レンズ40のレンズアレイと第2単位レンズ50のレンズアレイを互いに交差するように配列すると共に、第1単位レンズ40と第2単位レンズ50の断面高さf(x)、曲率半径R(x)、関数S(x)を最適化することで、光の外部取出し効率を向上させて射出光量を増大させると共に、第1単位レンズ40及び第2単位レンズ50からの射出角度の調整による色度座標の変化を改善することができて相対色差を低減できる。
さらに、本実施形態において、光取り出しシート7とEL素子101を組み込んだ照明装置10、この照明装置10を備えたディスプレイ装置及び液晶ディスプレイ装置を用いることで、光の利用効率が高く意匠性を有する照明装置50、そしてこの照明装置50を備えたディスプレイ装置及び液晶ディスプレイ装置を得られる。
【0074】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り適宜の変更等が可能である。
また、上述の実施形態では、光取出しシート7についての代表的な例を説明したが、本実施形態の光学特性を達成することができれば上記以外の材料や構造、プロセスなどを使用して作製することも可能である。
【0075】
また、上述の実施形態による光取出しシート7の変形例として、基材8の表面8aに光偏向要素5として互いに交差するレンチキュラーレンズ群からなる単純な第1単位レンズ40および第2単位レンズ50に代えて、これら第1及び第2単位レンズ40,50の頂部に単位レンズのレンズ高さより高いレンズ高さHを有するマイクロレンズアレイ部分を追加して形成していてもよい。
光偏向要素5として第1及び第2単位レンズ40,50の頂部にマイクロレンズアレイ部分を追加形成することにより、光取出しシート7における最も高さの高い位置がマイクロレンズ形状部分となり、他の部材等の障害物と接触する際、点接触となるため耐擦性が向上する。
【実施例】
【0076】
次に、本発明の実施例について以下に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
実施例としての光取り出しシート7は次の製法によって製作される。
厚さ188μmの透明PETフィルムからなる基材8上に、光偏向要素5のパターンを形成するための、屈折率1.50のUV硬化性アクリル系樹脂を塗布した。そして、光偏向要素5をなす第1単位レンズ40と第2単位レンズ50のレンチキュラーレンズ群が互いに交差して配列された形状に切削したシリンダー金型を使用して成形し、紫外線硬化型樹脂が塗布された透明PETフィルムを搬送しながらUV光を透明PETフィルム側から露光することにより、UV硬化型アクリル系樹脂を硬化させ、光偏向要素5を成形した。硬化後、透明PETフィルムから金型を剥離することにより、光取出しシート7を作製した。
得られた光取出しシート7を、接着層6をなす粘着剤を介してEL素子101に貼合することにより、測定サンプルを得た。これらの測定サンプルを実施例1、2,3,4とした。
【0077】
なお、各実施例1,2,3,4は下記のパラメータにより作製し、各実施例毎に作製した光取出しシート7を、それぞれEL素子101の表面1aに接着層6を介して配設した。
各実施例において、第1及び第2単位レンズ40,50の断面高さf(x)を変位xについて微分した値df(x)/dxの最大値について、実施例1では0.8とし、実施例2では1.0とし、実施例3では1.2とし、実施例4では4.0とした。
また、比較例1として、EL素子101のガラス表面に光取出しシート7を貼らないものを採用した。
【0078】
上述した実施例1〜4、比較例1について、積算光量および色度をそれぞれ測定した。
積算光量の測定器は「積分球 Labsphere」を、色度の測定器は「分光放射輝度計 SR−3」を用いた。
その結果を表1に示す。
ここで相対光量、相対色差とは、比較例1における各値を1.00としたときの値である。
【0079】
【表1】

【0080】
表1により、第1及び第2単位レンズ40,50の長手方向に直交する縦断面形状における高さf(x)の変位xにおける微分値df(x)/dxの絶対値の最大値が0.8では相対色差は比較例1と殆ど差がなく(0.98)改善効果が認められず、1.0以上の値にすることにより相対光量が著しく上昇し、明確に色差が低減して改善されたことが認められた。
【0081】
次の試験において、上述した各実施例の基本構成を備えた光取り出しシート7について、実施例5として、第1単位レンズ40及び第2単位レンズ50の断面高さf(x)を変位xについて2回微分した値df(x)/dxの最大値を20とした。同様に、実施例6では最大値を90と、実施例7では最大値を120とした。
ここで相対光量、相対色差とは、比較例1における各値を1.00としたときの値である。
【0082】
【表2】

【0083】
表2により、各実施例5,6,7について、第1及び第2単位レンズ40,50の断面形状における高さf(x)を変位xについて2回微分した値df(x)/dxの絶対値の最大値を20以上にすることにより、比較例1よりも相対光量が上昇し、色差が改善することが明らかになった。
【0084】
更に次の試験において、上述した各実施例の基本構成を備えた光取り出しシート7について、第1単位レンズ40、第2単位レンズ50の断面形状が上記(10)式で規定されるS(x)に関し、実施例8では、第1及び第2単位レンズ40,50におけるS(x)を10とし、実施例9では、単位レンズ40,50におけるS(x)を60とした。
なお、相対光量、相対色差とは、比較例1における各値を1.00としたときの値である。各実施例8.9に関し、相対光量と相対色差を測定した。
【0085】
【表3】

【0086】
表3に示す結果により、第1及び第2単位レンズ40,50におけるS(x)の値を10以上の値にすることにより、相対光量が上昇し、色差が改善することが明らかであった。
【符号の説明】
【0087】
1A、1B 基板
2 発光層
3 陽極
4 陰極
5 光偏向要素
6 接着層
7 光取出しシート
8 基材
8a 表面
8b 裏面
40 第1単位レンズ
50 第2単位レンズ
100 発光構造体
101 EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光手段と、
該発光手段から射出される光を導いて射出させる光偏向要素を備えた光取り出し部材とを備え、
前記光偏向要素は、
第1の方向に第1単位レンズが略等間隔に配列され、
前記第1の方向に略直交する第2の方向に第2単位レンズが略等間隔に配列されてなり、
前記第1単位レンズ及び第2単位レンズは縦断面視で凸曲面形状を有しており、前記第1単位レンズ及び第2単位レンズの前記凸曲面形状における幅方向の変位をそれぞれxとし、前記変位xの中点をx=0とすると共に前記変位xに含まれる任意の点xとxについてx>xとして、
前記凸曲面形状の断面高さをf(x)とし、前記f(x)が下記の(1)式、(2)式、(3)式、(4)式及び(5)式を満たすことを特徴とする照明装置。
【数1】

【数2】

但し、|df(x)/dx|maxは第1単位レンズおよび第2単位レンズの断面高さf(x)を変位xで微分した絶対値の最大値である。
【数3】

【数4】

【数5】

【請求項2】
前記第1単位レンズ及び第2単位レンズの前記凸曲面形状における曲率半径をR(x)とし、該R(x)は下記(6)式で定義されていて、下記の(7)式、(8)式、(9)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載された照明装置。
【数6】

【数7】

【数8】

【数9】

【請求項3】
前記第1単位レンズ及び第2単位レンズの曲率半径R(x)のx=0における変化量と端部E1,E2における変化量の差を規定するS(x)は下記(10)式で規定されていて、S(x)は下記(11)式を満たすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された照明装置。
【数10】

10≦S(x)≦60 …(11)
【請求項4】
前記第1単位レンズ及び第2単位レンズの前記凸曲面形状のレンズ幅をLとし、レンズ高さをHとして、下記(12)式を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載された照明装置。
【数11】

【請求項5】
前記第1単位レンズ及び第2単位レンズの前記凸曲面形状と発光手段の射出面との交点における最大傾斜角をそれぞれθとして、下記(13)式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載された照明装置。
45度≦θ≦80度 …(13)
【請求項6】
前記発光手段はEL素子である請求項1乃至5のいずれか1項に記載された照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載された照明装置と、
該照明装置の光の射出面側に配設された液晶画像表示素子と
を備えたことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載された照明装置と、
該照明装置の光の射出面側に配設された画像表示素子と
を備えたことを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88469(P2013−88469A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225894(P2011−225894)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】