説明

照明装置およびその製造方法

【課題】消費電力の少ない照明装置を提供する。
【解決手段】本発明の有機EL素子は、基板と、この基板の上に形成される第1の電極と、前記基板の上に形成される絶縁性の隔壁と、前記第1の電極の上に、前記絶縁性の隔壁により分離して形成される複数の有機層と、その有機層の上に形成された第2の電極を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般照明に関し、特に誘導灯などに用いられる照明装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般照明として有機EL(OLED)素子が注目されている。有機EL素子は、従来から光源として用いられている熱陰極放電ランプやLEDに比べて薄型化が可能であるため、特に看板用途に注目されている。有機EL素子を用いた看板として、例えば、特開2008−165337号公報(以下、特許文献1)に記載されている。特許文献1には、表面に誘導内容の文字が描かれている透光性を有する表示パネルと、この表示パネルに内装される薄板状の有機EL薄膜とを備えた誘導灯が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−165337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記誘導灯において、所望の光量、すなわち、所望の輝度を得るために、現状では光源とディスプレイ内容の文字やシンボルが描かれた表示パネルを用いる方法が多く用いられている。ところが、上記構成では表示パネルの透過率が例えば50%程度であるため、所望の輝度を得るためには少なくとも表示パネルがない場合に比べて2倍以上の電力を供給しなければならず、消費電力が多くなる傾向にある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み為されたものであり、その目的は、消費電力の少ない照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る照明装置は、基板と、この基板の上に形成される第1の電極と、前記基板の上に形成される絶縁性の隔壁と、前記第1の電極の上に、前記絶縁性の隔壁により分離して形成される複数の有機層と、その有機層の上に形成された第2の電極を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消費電力の少ない照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す照明装置の斜視図。
【図2】図1の一点鎖線A−A’に沿った断面図。
【図3】図1の4の詳細図。
【図4】図1の有機EL素子1の製造方法の説明図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る有機EL素子1の製造方法の説明図。
【図6】本発明の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態の有機EL素子について図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子について図1から図4を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL素子1の斜視図を示し、図2は、図1の一点鎖線A−A’に沿った断面図を示す。
【0011】
有機EL素子1は、例えば無アルカリガラスのような透光性を有するガラスからなる基板2を主要部として有している。図2に示すように、基板2の表面には、第1の電極3、絶縁膜4、有機層5a、5b、第2の電極6が逐次積層され、略立方体に形成されている。また、基板2はUV硬化樹脂7を介して、封止材8と封止されている。
【0012】
第1の電極3は、有機層5a、5bに電子を供給する。第1の電極3は、導電性の物質であればよく、例えば基板2側にアルミニウム、アルミニウムの上にフッ化リチウムで構成される。第1の電極3は、図2に示すように、基板2の表面を覆って、略平坦に形成される。第1の電極3は、例えば真空蒸着法により形成される。
【0013】
絶縁膜4は、有機層5aと有機層5bを分離する絶縁性の隔壁として、第1の電極3表面に、例えばフォトリソグラフィ法により、パターン形成され、有機層5a、5b間のショートを抑制する。絶縁膜4に用いられるものとしては、例えばポリイミド樹脂やノボラック樹脂などの絶縁体が挙げられる。
【0014】
有機層5a、5bは、第1の電極3および第2の電極6より電子、正孔が供給されることで発光する。有機層5a、5bは、例えば真空蒸着法により塗り分けられ、メタルマスクを用いて所望のシンボルが得られるように第1の電極3上に形成される。有機層5a、5bに用いられるものとしては、例えばα−NPDやAlqなどが挙げられる。また、有機層5a、5bの種類は限定されず、所望のシンボルを得るために必要な種類の数だけ有機層を形成すればよい。また、有機層5a、5bは、おのおの一層に限らず複数の層から成っていてもよい。
【0015】
第2の電極6は、有機層5a、5bに正孔を供給する。第2の電極6は、図2に示すように、例えば真空蒸着法により塗り分けられ、メタルマスクを用いて、所望のシンボルが得られるように絶縁膜4で分離された有機層5a及び有機層5b上にそれぞれ形成される。第2の電極6に用いられるものとしては、透光性を有する導電体であればよく、例えばITO等が用いられる。
【0016】
UV硬化樹脂7は、基板2および封止材8を封止する。UV硬化樹脂7は、例えば紫外線硬化性エポキシ樹脂により構成される。UV硬化樹脂7は、例えばディスペンサによる吐出法により形成される。
【0017】
封止材8は、UV硬化樹脂7と協調して、有機EL素子1の内部に水分やガスが侵入しないように気密に保つ。封止材8は例えば無アルカリガラスである。封止材8は、UV硬化樹脂7形成後に貼り合わされ、UV硬化樹脂7に例えば紫外線を照射することによって封止される。
【0018】
ここで、有機層5a、5bおよび第2の電極6の構成について、更に詳しく説明する。
【0019】
有機層5a、5bは、図2に示すように、絶縁膜4により分割される。有機層5a、5bが絶縁膜4により分割されているのは、有機層5a、5bに電界を印加して発光するときに有機層5aが発光するために必要とするエネルギーと有機層5bが発するために必要とするエネルギーが異なるためである。また、有機層5a、5bが同一の第1の電極3および第2の電極6により電力が供給されると、一方の有機層のみ発光する可能性や、一方の有機層のみ溶融し始める可能性があるためである。また、JIL5502の表示面の輝度の規格において、白色発光部と緑色発光部との輝度の比を制御する必要があるためである。同様の理由により、第2の電極6が絶縁膜4により分割されているのは、有機層5a、5bに印加する電力を変化させるためである。
【0020】
次に、本発明の第1の実施形態の有機EL素子1の製造方法について、図4を参照して詳細に説明する。
【0021】
第1の電極形成工程は、図4(a)に示す基板2の表面に、図4(b)に示すように、基板2の表面の大部分を覆うように、第1の電極3を真空蒸着法により形成する。
【0022】
絶縁膜パターン形成工程は、図4(c)に示すように、有機層5a、5bとの所望の境界の位置に、例えばフォトリソグラフィにより絶縁膜4を第1の電極3の表面に形成する。このとき、絶縁膜4の幅は50μm、望ましくは10μmであるのがよい。
【0023】
有機層5a形成工程は、図4(d)に示すように、有機層5aを得るためのマスクを用いて、真空蒸着法により、第1の電極3の上に、有機層5aを形成する。また、有機層5b形成工程は、有機層5a形成工程と同様、図4(e)に示すように、有機層5bを得るためのマスクを用いて、真空蒸着法により、第1の電極3の上に、有機層5bを形成する。
【0024】
第2の電極形成工程は、図4(f)に示すように、有機層5a、5bの上に第2の電極をスパッタリング法により形成する。
【0025】
UV硬化樹脂形成工程は、図4(g)に示すように、基板2の端部に、第1の電極3、絶縁膜4、有機層5a、5bおよび第2の電極6の積層体の厚さよりも厚く、UV硬化樹脂7を吐出法により形成する。このとき、UV硬化樹脂7は、電力供給部を残すため、基板2の端部より0.5mm以上、望ましくは1.0mm以上あけて形成するのがよい。
【0026】
封止工程は、図4(g)に示すように、UV硬化樹脂7の上に、封止材8を配設し、UV硬化樹脂7および封止材8に紫外線を照射してUV硬化樹脂7および封止材8を封止する。これにより、複数の有機層5a、5bを有する有機EL素子1が得られる。
【0027】
この有機EL素子1に用いられた有機層5a、5bは、第1の電極3および第2の電極6から電子および正孔を供給することにより、有機層5a、5b自身が発光する。有機層5a、5bはあらかじめ所望の波長で発光する材料を選定することで、例えば特許文献1に記載されているような所望のパターンとするための表示パネルを用いることなく、所望のパターンで発光することができる有機EL素子1を得ることができる。
【0028】
したがって、本実施の形態によれば、消費電力の少ない照明装置を提供することができる。
【0029】
また、本実施の形態によれば、第1の電極3を有機層5a、5bとで共通化している。すなわち、有機EL素子1を発光させるための直流電源との接続において、接地側の配線を共通化することができるため、有機EL素子1への配線を簡素化することが可能である。
【0030】
図5は、本発明の第2の実施形態の有機EL素子1の製造工程を示す図である。この第2の実施形態の有機EL素子1の製造方法は、第1の実施形態の有機EL素子1の製造方法において、第1の電極3および絶縁膜4の構造のみが異なり、他は同一であるため、同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0031】
絶縁膜パターン形成工程は、図5(b)に示すように、基板2の表面に例えばフォトリソグラフィにより絶縁膜4を形成する。
【0032】
第1の電極形成工程は、図5(c)に示すように、基板2の表面に例えば真空蒸着法により、第1の電極3を形成する。
【0033】
以降は第1の実施形態と同様にして、有機層5a、5b、第2の電極6、UV硬化樹脂7を形成し、UV硬化樹脂7の上に、封止材8を配設し、UV硬化樹脂7および封止材8に紫外線を照射してUV硬化樹脂7および封止材8を封止することで、有機層5a、5bを有する有機EL素子1が得られる。
【0034】
従って、本実施の形態でも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態では、第1の電極3が絶縁膜4により分割して形成されているため、有機層5a、5bの発光状態を任意に変更することができる。即ち、例えば有機層5aのみ発光させ、有機層5bは発光させないなどの発光状態を任意に設定することができるため、有機EL素子1の視認性を更に向上させることができる。
【0035】
なお、本発明は上記構成に限定されるものではなく、例えば以下のとおりにしてもよい。
【0036】
基板2の材質は限定されない。例えば、PETやPENで構成されるフレキシブルな材料で構成されてもよい。
【0037】
また、第1の電極3、第2の電極6のいずれか一方、または第1の電極3および第2の電極6のいずれもが透光性を有していてもよい。
【0038】
また、第1の電極3の材料は、特に限定されず、透光性の導電体であればどのような材料でもよい。具体的には、例えば酸化スズや酸化亜鉛、またはそれらの複合体でもよい。
【0039】
また、上記の実施の形態では、有機層として5a、5bの2つを示したが、有機層の種類は限定されず、所望のシンボルを得るために必要な種類の数だけ有機層を形成すればよい。
【0040】
また、第2の電極6の材料は特に限定されず、透光性の導電体であればどのような材料でもよい。例えば、マグネシウムや銀などの合金で構成されてもよい。
【0041】
また、図6に示すように、バリアフィルム9を用いてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 …照明装置
2 …基板
3 …第1の電極
4 …絶縁膜
5 …有機層
6 …第2の電極
7 …UV硬化樹脂
8 …封止材
9 …バリアフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
この基板の上に形成される第1の電極と、
前記基板の上に形成される絶縁性の隔壁と、
前記第1の電極の上に、前記絶縁性の隔壁により分離して形成される複数の有機層と、
その有機層の上に形成された第2の電極を有することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記絶縁性の隔壁は、前記第1の電極の表面に形成されることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記絶縁性の隔壁は、前記基板の表面に形成されることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項4】
基板の上に第1の電極を形成する第1の電極形成工程と、
前記基板の上に絶縁膜を形成する絶縁膜パターン形成工程と、
前記第1の電極の上に、前記絶縁膜パターンにより分離して複数の有機層を形成する有機層形成工程と、
前記有機層の上に第2の電極を形成する第2の電極形成工程
を有することを特徴とする照明装置の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁膜は、前記第1の電極の表面に形成されることを特徴とする請求項4記載の照明装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁膜パターンは、前記基板の表面に形成されることを特徴とする請求項4記載の照明装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−9254(P2012−9254A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143733(P2010−143733)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】