説明

照明装置および原稿読取装置

【課題】 小型の光源を用いながら、照明対象上での照度が高い照明装置および照明装置を用いた原稿読取装置を提供する。
【解決手段】 原稿読取装置としてのスキャナ1は、照明装置4と、センサ5と、原稿3を載置するガラス板2とを有する。照明装置4は、光源である有機EL素子6と、この有機EL素子6に対して光が出射される側に設けられた反射鏡7とを有しており、反射鏡7が有機EL素子6からの光を原稿3に集光し、照明装置4とセンサ5とをガラス板2に沿って走査して、原稿3で反射された光をセンサ5で読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置および当該照明装置を用いた原稿読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリ、コピー、スキャナなどは、原稿に記載されている情報を読み取る原稿読取装置を有する。原稿読取装置においては、光源からの光を原稿に照射し、原稿で反射される光をセンサで受光する。そして、受光した光の強弱により原稿に記載されている情報を読み取る。
【0003】
近年、ファクシミリ等の装置にも小型化の要求が強まり、それに従い、ファクシミリ等に用いられる原稿読取装置も小型化する必要性が生じてきた。同時に、原稿を読み取る時間の短縮や読取画質の向上の要求も強く、原稿読取装置に用いられる光源からの光を強くする必要もある。
【0004】
これらの要求を同時に満たすために、たとえば特許文献1に記載の原稿読取装置では、原稿読取装置において、照明光源として長尺のEL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いるとともに、このEL素子からの光をその幅方向に斜めに導いて読取部分に集光させるためのライトガイドとして多数の長尺の微小プリズムを前記EL素子と平行に配列して平板状に集積してなるプリズムアレイを用い、EL素子上に前記プリズムアレイを重ねたものをガラス板の直下にこれと平行に配設している。これにより、装置の小型化と読取画質の向上をはかっている。
【特許文献1】特開平6−217083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、EL素子からの光を集光するためのプリズムアレイ等の光学部材を用いると、確かに集光方向の輝度を向上させることができるが、照明対象である読取原稿上での照度は逆に低下する場合もある。これは、EL素子からの光が光学部材を透過する間に減衰してしまうからである。
【0006】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型の光源を用いながら、照明対象上での照度が高い照明装置を提供することであり、また、そのような照明装置を用いた原稿読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために鋭意研究開発した結果、本願の発明者らは、光源からの光を光学部材ではなく反射部材により集光することに想到するに至り、本願発明を完成させた。すなわち、本願発明は、光源と、この光源に対して光が出射される側に設けられた反射部材とを有する照明装置である。そして、この照明装置においては、反射部材が光源からの光を集光することを特徴とする。ここで、「集光」とは、光源の光が出射される側に反射部材を設けない場合と比較して、照明対象上での照度が高くなることを意味している。
【0008】
この発明によれば、光源からの光を減衰させることなく集光することが可能となるため、照明対象上での照度を向上させることができる。また、光源からの光が減衰しないため、必要な照度を得るための光源からの光量も少なくて済み、光源を小型化することも可能となる。
【0009】
本願発明において、光源を線状に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)とし、反射部材を光源である有機EL素子の長手方向に沿って設けるとよい。光源を線状の有機EL素子にすることにより、光源を小型化、薄型化することができる。また、光源の長手方向に沿って反射部材を設けることにより、光源からの光を効率的に集光することが可能となる。
【0010】
光源が有機EL素子である場合には、光源からの光が出射される側に光取り出し用光学部材を設けることが好ましい。ここで、「光取り出し用光学部材」とは、この光学部材を設けない場合には、有機EL素子と空気との屈折率との差により有機EL素子の内部に全反射を繰り返してしてしまい有機EL素子の外部に取り出すことができない光を、外部に取り出すための光学部材を指す。このような機能を有する光学部材を光源の光出射側に設けることにより、光源内部で発生する光を効率的に照明対象に照射することが可能となる。
【0011】
「光取り出し用光学部材」として光拡散フィルムを用いることができる。
【0012】
反射部材の反射面は、入射した光を正反射する正反射面であってもよい。
【0013】
反射部材の反射面は、湾曲形状であってもよい。
【0014】
本願の別の発明は、照明装置と、センサと、原稿を載置する透明板とを有する原稿読取装置である。この発明で、照明装置は、光源と、この光源に対して光が出射される側に設けられた反射部材とを有しており、反射部材が光源からの光を原稿に集光し、照明装置を透明板に沿って走査して、原稿で反射された光をセンサで読み取ることを特徴とする。
【0015】
この発明においても、光源を線状に形成された有機EL素子として、反射部材を光源の長手方向に沿って設けることが好ましい。
【0016】
有機EL素子の光が出射される側の面は、透明板に対して斜めに配置されており、原稿上における、有機EL素子を含む仮想平面と、反射部材を含む仮想平面とによって囲まれた部分の一部において、一部で反射された光をセンサで読み取ることがさらに好ましい。ここで「反射部材を含む仮想平面」とは、照明装置の有機EL素子の光が出射される側の面における反射部材と有機EL素子との接続部分と、反射部材の端部とを結んだ平面を含む仮想平面のことを意味する。この発明では、有機EL素子の光が出射される側の面に反射部材が設けられておらず、有機EL素子の光が出射される側の面が透明板に対して平行に配置した場合と比べて原稿の読取対象部での照度を高くすることができる。また、光源が有機EL素子である場合には、光源の光が出射される側に光拡散フィルムを設けてもよい。
【0017】
反射部材の反射面は、入射した光を正反射する正反射面であってもよい。
【0018】
反射部材の反射面は、湾曲形状であってもよい。
【0019】
さらに照明装置をセンサに対して対称に2つ設けることが好ましい。照明装置をセンサに対して対称に2つ設けることにより、原稿上の照度を更に上げることができる。
【発明の効果】
【0020】
本願発明のよれば、小型の光源を用いながら、照明対象上での照度が高い照明装置、およびそのような照明装置を用いた原稿読取装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の原稿読取装置およびその照明装置をスキャナに具体化した第1の実施形態を、図1〜図3にしたがって説明する。図1は第1の実施形態におけるスキャナの模式断面図、図2は照明装置およびセンサの模式平面図、図3は図2のA−A線における照明装置の模式断面図である。
【0022】
図1に示すように、スキャナ1は、透明板であるガラス板2とそのガラス板2の下方に配置され、ガラス板2上に載せられた原稿3に光を照射するための照明装置4と、原稿3で反射した光を受光するセンサ5とを有する。そして、照明装置4から照射される光で原稿3の一部を照明し、当該原稿3の一部から反射される光をセンサ5で受光し、反射される光の強弱によって、原稿3の一部(照明装置4によって照明されている部分)に記載された情報を読み取る。照明装置4とセンサ5とを一体的にガラス板2に沿って(図1中の矢印Dの方向)走査することにより、原稿3の全体を読み取る。
【0023】
照明装置4は、光源である有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)6と反射部材である反射鏡7とを有する。この実施形態では、図1、2に示すように、照明装置4はセンサ5に対して対称に2つ設けられており、両照明装置4ともガラス板2と平行に配置されている。
【0024】
図2に示すように、有機EL素子6は矩形状で長辺が短辺に比べて著しく長い線状であり、2つある長辺のうちセンサ5側に位置する長辺に沿って発光部8が設けられている。そして、反射鏡7は、発光部8の全長にわたり発光部8のセンサ5とは反対側に沿って、有機EL素子6からガラス板2に向かって延びるように配置されている。また、有機EL素子6は、発光部8に対してセンサ5とは反対側に、有機EL素子6に電力を供給するための2つの電極端子9、10を有している
有機EL素子6は、図3に示すように、基板20上に、第一電極21、発光層を含む有機層22、第二電極23および保護膜24をこの順に積層した構造を有する。
【0025】
基板20は、有機EL素子6を支えるための板状の部材であり、取り出す光に対して高い透過率を示す透明基板が用いられる。例えば、可視光領域で高い透過率を示すガラスや、透明なアクリル樹脂等を用いることができる。
【0026】
第一電極21には、公知の透明電極材料が用いられ、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)や、IZO(酸化インジウム亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)等を用いることができる。
【0027】
第二電極23には、有機層22から出射された光に対する反射性を有する電極材料が用いられる。電極材料としては、公知の金属電極や合金電極を用いることができ、例えば、AgやAl等が用いられる。
【0028】
上記の第一電極21と第二電極23との間に設けられる有機層22は、発光層を含む有機層より構成され、例えば、発光層1層から構成される場合や、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層、バッファー層等のうちの1層以上と発光層との組み合わせにより構成される場合等がある。本実施形態では、有機層22は白色発光を示すように構成されている。
【0029】
保護膜24は、第一電極21、有機層22および第二電極23を外部の水分や酸素等から保護するためのものであり、公知のパッシベーション膜で構成される。保護膜としては、酸化珪素膜、窒化珪素膜、酸窒化珪素膜等の無機化合物膜や、樹脂膜等の有機化合物膜等を採用することができる。
【0030】
なお、透明電極21は、保護膜24の外部に延出しており、保護膜24の外側の部分が一方の電極端子9を構成している。また、この有機EL素子6では、有機層22と第二電極23とが重なる部分が発光部8を構成する。
【0031】
有機EL素子6の光出射側には光取り出し用光学部材としての光拡散フィルム25が設けられている。この光拡散フィルム25は、ガラス基板20の屈折率とほぼ等しい屈折率を有する材料からなる母材中に、これらとは屈折率の異なる微小なビーズを散在させて形成されている。
【0032】
有機層22から発せられた光はガラス基板20に入射する。光拡散フィルム25がない場合には、ガラス基板20と空気との界面において、ガラス基板20の屈折率と空気の屈折率とで決まる臨界角以上の入射角でこの界面に到達した光は全反射して空気には出射することができない。そのため、このような光を原稿の照明に使用することができず、光の利用効率が低くなる。
【0033】
一方、光拡散フィルム25をガラス基板20の光出射側に設けた場合、ガラス基板20の屈折率と光拡散フィルム25の母材の屈折率がほぼ等しいため、ガラス基板20から光拡散フィルム25へ大きなロスがなく光が進む。そして、光拡散フィルム25内のビーズにより光の進行方向が変えられる。このため、光拡散フィルム25と空気との界面において全反射された光も、ビーズによって進行方向が変化するため、1回または何回か空気との界面で全反射されたのち、空気へと出射することができる。したがって、光拡散フィルム25を設けることにより、有機層22で発せられた光を効率よく取り出すことができ、光の利用効率を向上させることができる。
【0034】
なお、光取り出し用光学部材としては、光拡散フィルムに限られず、微小な円錐や角錐等が平面上にマトリクス状に並べられている光学フィルムであってもよい。
【0035】
反射鏡7は、有機EL素子6から発せられた光の一部を原稿3に向けて反射するものである。反射鏡7の反射面は、入射した光を正反射する正反射面であることが望ましい。反射鏡7は、有機EL素子6の発光部8に沿って、有機EL素子6の法線方向と所定の角度θ1をなすように固定される。この角度θ1は、原稿3の所望の位置の照度が最大となるように調整される。
【0036】
センサ5は、原稿3で反射した光の強弱を検知するためのもので、公知のイメージセンサを用いることができる。必要に応じて、原稿3とセンサ5との間に、反射した光を集光するレンズ等を設けてもよい。
【0037】
このように構成された照明装置4およびスキャナ1の動作を説明する。
【0038】
有機EL素子6の両電極端子9、10間に電圧が印加されると、有機層22中の発光層が発光する。この光のうち一部は直接ガラス基板20を通り、残りの一部は第二電極23で反射された後ガラス基板20を通って光拡散フィルム25に入射する。光拡散フィルム25で光は拡散され外部に出射される。
【0039】
光拡散フィルム25から出射された光のうち一部は、直接原稿3の読取対象部分Rに到達する。しかし、有機EL素子6の光出射特性は等方性であり、さらに光拡散フィルム25によって拡散されているため、他の大部分の光は直接原稿3の読取対象部分Rには向かわない。
【0040】
ところが、ここでは、有機EL素子6の発光部8に沿って反射鏡7が設けてある。そのため、直接原稿3の読取対象部分Rに向かわない光の一部は、この反射鏡7で反射して、最終的には読取対象部分Rに向かうことになる。結果として、有機EL素子6からの光が反射鏡7によって原稿3の読取対象部分Rに集光され、当該読取対象部分Rの照度が向上する。
【0041】
原稿3の読取対象部分Rに到達した光は、この部分で反射されてセンサ5に向かう。このとき、読取対象部分Rの状態、すなわち、どんな色かによって反射する光が変わる。有機EL素子6は白色の光を発しているため、読取対象部分Rで反射される光の状態は、自然光下で人間の目に認識される色の状態に近いものとなる。このように反射された光をセンサ5で受光して、その受光した光の状態を電気信号に変換して、画像として読み込む。
【0042】
このようにして原稿3の読取対象部分Rに記載されている情報を読み取った後、センサ5と照明装置4とを一体的にガラス板2に沿って移動させて、原稿3上の読取対象部分Rを変える。そして、上記のようにこの新たな読取対象部分Rに記載されている情報を読み取る。このような読取動作を原稿3全体にわたって行う(走査する)ことにより、原稿3に記載されている情報の全部を読み取る。
【0043】
この実施の形態では以下の効果を有する。
(1)有機EL素子6からの光を反射鏡7で反射して集光している。このため、照明装置4は、有機EL素子6からの光を減衰させることなく集光することができる。また、スキャナ1において、読取対象部分Rの照度を向上させることができ、同じ照度を得るために必要な有機EL素子6を小型にすることができる。
(2)反射鏡7は、有機EL素子6の発光部8に沿って設けられている。このため、照明装置4は、有機EL素子6からの光を効率的に集光することができる。また、スキャナ1において、有機EL素子6からの光を効率的に読取対象部分Rに集光することができる。
(3)有機EL素子6の光出射側に光拡散フィルム25が貼付されている。このため、照明装置4は、有機EL素子6内部で発せられた光を効率的に外部に取り出すことができる。スキャナ1は、有機EL素子6からの光を効率的に読取対象部分Rを照明するのに用いることができる。
(4)光拡散フィルム25は、有機EL素子6を構成するガラス基板20の屈折率とほぼ等しい屈折率を有する材料からなる母材に、これらとは屈折率の異なるビーズを散在させて構成されている。このため、ガラス基板20と光拡散フィルム25との界面での光の全反射を少なくすることができ、有機EL素子6で発せられた光をより効率的に使用することができる。
(5)センサ5と照明装置4とを一体的にガラス板2に沿って走査する。このため、小型のセンサ5、照明装置4を用いても、大きな原稿に記載された情報を読み取ることが可能となる。
(6)照明装置4をセンサ5に対して対称に2つ設けている。このため、原稿3の読取対象部分R上の照度をさらに上げることができる。
(7)有機EL素子6は白色の光を発するように、有機層22が構成されている。このため、自然光とほぼ同じ状態で原稿3の読取対象部分Rを照明することができ、読取対象部分Rで反射される光の状態を自然光下で肉眼で認識される色の状態に近いものとすることができる。
(8)反射鏡7と有機EL素子6の法線とのなす角θ1が、原稿3の読取対象部分Rでの照度が最大となるように調整されている。このため、有機EL素子6からの光を効率的に原稿3の読取対象部分Rに集光することができる。
(9)光源として有機EL素子6を用いている。このため、光源を小型(薄型)にでき、スキャナ1も全体として小型(薄型)にできる。
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態を図5にしたがって、説明する。図5は、第2の実施形態におけるスキャナの模式断面図である。第1の実施形態では、有機EL素子6の光が出射される側の面がガラス板2に対して平行に配置されていたが第2の実施形態では、有機EL素子6がガラス板2に対して斜めに配置されている点が第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と類似または同一の部分は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0044】
図5に示すように、有機EL素子6は、ガラス板2に対して斜めに配置されている。また、原稿3上における、有機EL素子6を含む仮想平面と、反射鏡7を含む仮想平面とによって囲まれた部分の一部である読取対象部Rにおいて、当該一部である読取対象部Rで反射された光をセンサ5で読み取る。有機EL素子6から発せられた光は、反射鏡7と有機EL素子6の金属電極である第二電極23との間で反射を繰り返し、原稿3の読取対象部分Rに到達する。有機EL素子6がガラス板2に対して平行に配置されている場合、有機EL素子6から発せられる光は等方性であるため、読取対象部Rの照度に寄与しない光も存在する。しかし、この実施形態では、有機EL素子6がガラス板2に対して斜めに配置されており、原稿3上における、有機EL素子6を含む仮想平面と、反射鏡7を含む仮想平面とによって囲まれた部分の一部である読取対象部Rにおいて、当該一部である読取対象部Rで反射された光をセンサ5で読み取る。このため、有機EL素子6がガラス板2に対して平行に配置されている場合と比べて有機EL素子6から発せられた光をより効率的に読取対象部Rに集光することができ、その結果、読取対象部Rの照度がより高くなる。
【0045】
この実施形態では、第1の実施形態の効果(1)〜(9)以外に以下の効果を有する。
(10)有機EL素子6がガラス板2に対して斜めに配置されており、原稿3上における、有機EL素子6を含む仮想平面と、反射鏡7を含む仮想平面とによって囲まれた部分の一部である読取対象部Rにおいて、当該一部である読取対象部Rで反射された光をセンサ5で読み取る。従って、有機EL素子6の光が出射される側の面に反射鏡7を有しておらず、有機EL素子6の光が出射される側の面がガラス板2に対して平行に配置されている場合と比べて読取対象部Rの照度をより高くすることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の効果をシミュレーションによって確認した結果を示す。
【0047】
<実施例1>
図4に示すような、幅4.5mmのセンサの両側に幅8mmで発光部の幅が4mmの有機EL素子を設けた原稿読取装置において、センサの中央部の上方7mmの位置にある読取対象部分Rの照度を、光学シミュレーションにより計算した。
【0048】
長さが有機EL素子と同じで幅は5mmの板状反射鏡を、有機EL素子の発光部に沿って配置した。反射鏡は正反射するものとし、反射率を95%とした。また、反射鏡と有機EL素子の法線とのなす角を35°とした。
【0049】
<実施例2>
実施例1に示したものと同じ反射鏡を配置するとともに、有機EL素子の光出射側に光取り出し用光学部材として、微小な四角錐が多数マトリクス状に並べられたフィルムを設けた。反射鏡と有機EL素子の法線とのなす角は35°である。
【0050】
<比較例1>
比較のため、有機EL素子のみの場合の、読取対象部分Rの照度をシミュレーションにより計算した。
【0051】
<比較例2>
有機EL素子に、断面が直角二等辺三角形である微小プリズムが多数互いに平行に設けられた輝度向上フィルムを、プリズムの延びる方向が互いに直角になるように2枚重ねて、光出射側に設けた。反射鏡は設けない。
【0052】
<比較例3>
有機EL素子の光出射側に、実施例2で用いたのと同じ光取り出し用光学部材を設け、反射鏡は設けない。
【0053】
以上のような場合のシミュレーション結果を表1に示す。表1においては、比較例1のシミュレーション結果を1とした場合の相対照度で表している。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1と比較例1との比較、および実施例2と比較例3との比較より、反射鏡を設けることにより、読取対象部分の照度が約1.7倍になることがわかる。このことから、有機EL素子から発せられ、直接読取対象部分Rに向かわない光の一部が、反射鏡で反射されて読取対象部分Rに向かうことが確認できた。
【0056】
また、集光フィルムを設けた場合には、他の実験により集光フィルム上での輝度は向上していることが確認できているが、読取対象部分の照度向上にはあまり効果がないことが確認できた。これは、集光フィルム内で光が減衰しているためであると考えられる。
【0057】
次に、反射鏡の有機EL素子に対する傾き、および有機EL素子のガラス板に対する傾きと、読取対象部分Rの照度との関係をシミュレーションにより確認した結果を示す。
【0058】
<実施例3>
反射鏡と有機EL素子の法線とのなす角θ1を0°にし(反射鏡と有機EL素子とは直角をなす)、有機ELの法線とガラス板とのなす角θ2を90°にした(有機EL素子とガラス板とは並行)。
【0059】
この実施例では、実施例2で用いた光取り出し用光学部材を用い、反射鏡の条件は実施例1,2と同じである。
【0060】
<実施例4〜10>
θ1をそれぞれ10°、20°、30°、35°、40°、50°、60°とした以外は、実施例3と同じ条件である。
【0061】
<実施例11>
θ2を45°とした以外は、実施例3と同じ条件である。
【0062】
<実施例12〜14>
θ1をそれぞれ10°、20°、30°とした以外は、実施例11と同じ条件である。
【0063】
以上のような条件でシミュレーションを行った結果を表2に示す。表2においては、実施例3の場合の照度を1とした場合の相対照度で表している。



【0064】
【表2】

【0065】
上記の結果から、反射鏡の有機EL素子に対する傾きや有機EL素子のガラス板に対する傾きは、読取対象部分Rの照度に大きく影響を与えることが分かった。これらの傾きの最適値は、光源の出射特性や、光源と読取対象部分Rとの相対的な位置関係に依存するので、それぞれの場合において、試作やシミュレーションによって最適値を求める必要がある。
【0066】
<実施例15>
図6に示すように、幅4.5mmのセンサの両側に発光部の幅が8mmの有機EL素子を設け、有機EL素子の発光部の中央部からセンサの中央部までの距離を7mmとした原稿読取装置において、センサの上方であり、有機EL素子の発光部の中央部から上方14mmの位置にある読取対象部分Rの照度を、光学シミュレーションにより計算した。また、有機EL素子の光出射面上には、有機EL素子の基板の屈折率とほぼ等しい屈折率を有する材料からなる母材中に、これらとは屈折率の異なる微小なビーズを散在させた光拡散フィルムが設けられている。
【0067】
長さが有機EL素子と同じで幅が5mmの板状反射鏡を、有機EL素子の発光部に沿って配置した。有機EL素子は、ガラス板に対して斜めになるように配置されており、原稿上における、有機EL素子を含む仮想平面と、反射鏡を含む仮想平面とによって囲まれた部分の一部である読取対象部Rにおいて、当該一部である読取対象部Rで反射された光をセンサで読み取る。反射鏡は正反射するものとし、反射率を95%とした。また、透明板であるガラス板の原稿を載置する側の面に対する法線と反射鏡とのなす角を20°、ガラス板の原稿を載置する側の面と平行な平面と有機EL素子とのなす角を30°とした。
【0068】
<比較例4>
図7に示すように、幅4.5mmのセンサの両側に発光部の幅が8mmの有機EL素子を設け、有機EL素子同士の距離が5.5mmである原稿読取装置において、有機EL素子の光出射面から上方14mmの位置にある読取対象部分Rの照度を、光学シミュレーションにより計算した。また、有機EL素子の光出射面上には実施例15と同様の光拡散フィルムが設けられている。
【0069】
比較例4のシミュレーション結果における照度を1とした場合の実施例15の相対照度は、1.76であった。従って、有機EL素子の光出射面上に反射部材である反射鏡を設けず、有機EL素子の光出射面と、透明板であるガラス板の原稿を載置する側の面とが平行になるように有機EL素子を配置した場合と比べて原稿の読取対象部Rにおける照度が高くなることが確認された。
【0070】
なお、実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
【0071】
○ 光源として有機EL素子6を用いたが、光源として他の発光装置、例えばLEDや冷陰極管、無機EL素子等も用いることができる。LEDや冷陰極管、無機EL素子等を用いた場合でも、反射部材を使って照明対象に光源からの光を集光することができる。
【0072】
○ 上記実施形態では、有機EL素子6は基板側から光が出射される、いわゆるボトムエミッションタイプであったが、基板とは反対側から光が出射されるトップエミッションタイプであってもよい。トップエミッションタイプの有機EL素子を光源として採用する場合には、第二電極23および保護膜24を透明にする必要がある。また、基板20および第一電極21は透明である必要はない。
【0073】
○ 原稿読取装置をスキャナ1に用いたが、スキャナ1以外にも、ファクシミリ装置やコピー装置にも用いることができる。
【0074】
○ 照明装置4をスキャナ1に用いたが、スキャナ1用以外の照明装置として用いてもよい。
【0075】
○ スキャナ1において、照明装置4は2つ同時に用いる必要はなく、1つのみであってもよい。
【0076】
○ スキャナ1において、センサ5と照明装置6とを一体的に走査する必要はなく、例えば、センサ5をガラス板2に対して固定し、照明装置6のみを走査してもよい。この場合、原稿3からの反射光は別途光学系を用いてセンサ5に導けばよい。
【0077】
○ 図8に示すように、反射鏡7の反射面は湾曲形状であってもよい。この場合、反射鏡7を含む仮想平面とは、照明装置4の有機EL素子6の光が出射される側の面に対して垂直な断面形状における反射鏡7と有機EL素子6との接続部分71と、反射鏡7の端部72とを結んだ平面73のことを意味する。
【0078】
○ 反射鏡7の反射面は一部が正反射面であり、一部が湾曲形状であってもよい。
【0079】
○ 照明装置4が2つの有機EL素子から構成されていてもよい。即ち、有機EL素子6の光が出射される側に、反射部材の替わりに、有機EL素子6とは別の有機EL素子を設けてもよい。この場合、前記別の有機EL素子の金属電極が反射部材の役割を果たすこととなる。照明装置4が2つの有機EL素子から構成されているため、1つの有機EL素子から構成される場合と比べて、原稿3の読取対象部Rに到達する光量を多くすることができる。従って、原稿3の読取対象部Rでの照度をより高くすることができる。
【0080】
○ 反射鏡7の有機EL素子6の光が出射される側の面との接続部分に、有機EL素子6の光が出射される側の面と反射鏡7との間に集光される光を、有機EL素子6の光が出射される側の面と反射鏡7との外側に出射するように反射する平坦部が形成されていてもよい。この場合、例えば、図9に示すように、反射鏡7は、反射鏡711と反射鏡712の二部材より構成され、反射鏡7の有機EL素子6との接続部分に設けられる反射鏡712が平坦部となる。当然、反射鏡7が一部材で構成されており、反射鏡7の有機EL素子6の光が出射される側の面との接続部分から所定の位置で、反射鏡7の反射面が有機EL素子6の光が出射される側の面側に近づくように屈曲する屈曲部を設けてもよい。この場合、反射鏡7の有機EL素子6の光が出射される側の面との接続部分から屈曲部までが平坦部となる。反射鏡7の有機EL素子6の光が出射される側の面との接続部分に平坦部がない場合、有機EL素子6から発せられた光が前記接続部分に集光してしまう可能性があり、有機EL素子6から発せられた光を有効に利用できない場合がある。しかし、この場合、反射鏡7の有機EL素子6の光が出射される側の面との接続部分に平坦部が形成されているため反射鏡7と有機EL素子6の光が出射される側の面との接続部分で有機EL素子6から発せられた光が集光することを抑制できる。なお、図1から図9において、図示の都合上、一部のハッチングを省略してある。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施形態におけるスキャナ装置の模式断面図。
【図2】図1のセンサおよび照明装置の模式平面図。
【図3】図2中の有機EL素子のA−A線における模式断面図。
【図4】第1の実施形態に対する実施例のシミュレーションの条件を示す模式図。
【図5】第2の実施形態におけるスキャナ装置の模式断面図。
【図6】第2の実施形態に対する実施例のシミュレーションの条件を示す模式図。
【図7】比較例4に対するシミュレーションの条件を示す模式図。
【図8】別例における照明装置の模式図。
【図9】別例における照明装置の平坦部の模式図。
【符号の説明】
【0082】
1・・・原稿読取装置としてのスキャナ、2・・・透明板としてのガラス板、3・・・原稿、4・・・照明装置、5・・・センサ、6・・・光源としての有機EL素子、7・・・反射部材としての反射鏡、25・・・光取り出し用光学部材としての光拡散フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源に対して光が出射される側に設けられた反射部材とを有する照明装置であって、
前記反射部材は、前記光源からの光を集光する
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記光源が、線状に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記反射部材は、前記光源の長手方向に沿って設けられている、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光源の光が、出射される側に光取り出し用光学部材が設けられている、請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光取り出し用光学部材が光拡散フィルムである、請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記反射部材の反射面は、入射した光を正反射する正反射面である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記反射部材の反射面は、湾曲形状である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
照明装置と、センサと、原稿を載置する透明板とを有する原稿読取装置であって、
前記照明装置は、光源と、該光源に対して光が出射される側に設けられた反射部材とを有しており、
前記反射部材は、前記光源からの光を前記原稿に集光し、
前記照明装置と前記センサとが前記透明板に沿って走査されるとともに、前記原稿で反射された光を前記センサで読み取る
ことを特徴とする原稿読取装置。
【請求項8】
前記光源が、線状に形成された有機エレクトロルミネッセンス素子であり、前記反射部材は、前記光源の長手方向に沿って設けられている、請求項7に記載の原稿読取装置。
【請求項9】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子の光が出射される側の面は、前記透明板に対して斜めに配置されており、前記原稿上における、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を含む仮想平面と、前記反射部材を含む仮想平面とによって囲まれた部分の一部において、当該一部で反射された光を前記センサで読み取る請求項8に記載の原稿読取装置。
【請求項10】
前記光源の光が出射される側に光拡散フィルムが設けられている、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の原稿読取装置。
【請求項11】
前記反射部材の反射面は、入射した光を正反射する正反射面である請求項7から請求項10のいずれか一項に記載の原稿読取装置。
【請求項12】
前記反射部材の反射面は、湾曲形状である請求項7から請求項11のいずれか一項に記載の原稿読取装置。
【請求項13】
前記照明装置が前記センサに対して対称に2つ設けられている請求項7〜12のいずれか一項に記載の原稿読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−13913(P2007−13913A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328909(P2005−328909)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】