説明

照明装置および培養装置

【課題】藻類を培養する培養液において培養密度が高くなっても、培養液内の藻類に良好に光照射を行うことで、藻類の光合成を促進させることが可能な、藻類の培養に適した照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】藻類を培養する培養液Sを照明する照明装置であって、培養液Sに磁場を生じさせる磁場発生部41と、磁場によって誘導電流を生じるコイルと、コイルと導通し誘導電流により発光する光源と、を有することを特徴とする照明装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置および培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所謂バイオリアクタは、化学反応と比べると反応速度は遅いが化学反応のように高温・高圧を必要としないため省エネルギー性に優れ、また反応設備を耐熱・耐圧とする必要がないという特長を有している。更には、反応に用いる生物種に応じて、特定の原料から目的とする生成物へ、副反応が少ない反応系を構築することができるという特長も備えていることから、工業的に有利な点が多く注目を浴びている。
【0003】
近年では、バイオリアクタとして、藻類、中でも微細藻類を用いたものが注目されている。例えば、光合成によって重油を生成する微細藻類については、増殖した微細藻類から油分を精製し、燃料(バイオディーゼル)として用いることで、石油枯渇に対する対策や、環境対策(温暖化対策)の一翼を担うことが期待されている。また、例えば抗酸化物質のアスタキサンチンのような、人体にとって生理的に有用な天然物であり藻類に蓄積される物質を、藻類を用いて生産する試みが成されている。
【0004】
このような藻類は、通常、光合成によって増殖する。そのため、藻類を培養する培養槽としては、光透過性を有するガラスやプラスチックなどの透明材料を用いて形成したものが用いられ、太陽光や別途設けた照明装置から発せられる光を用いて藻類の光合成を促進する構成としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−38156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献に記載された装置には、次のような問題がある。すなわち、上記の装置では、培養槽を透明な材料で形成することで、外部から照射される光を有効に用い光合成を行わせることとしているが、反応溶液中の培養密度が高くなると、培養槽内の藻類が外から差し込む光を遮断してしまい、培養槽内側にまで光が差し込みにくくなる。そのため、従来の培養槽を用いた場合には、内部の藻類の育成を阻害してしまい、高い培養密度で藻類を培養することが困難となるおそれがある。
【0007】
一方、上述のように、培養した藻類を用いてバイオディーゼルや生理有用物質を生産する場合、できるだけ高い培養密度で藻類を培養した方が、生産効率を向上させることができるため好ましい。
【0008】
このように、従来の装置では、所望の藻類の培養は可能であったが、目的とする用途に適した高い培養密度で藻類を培養することができなかった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、藻類の培養密度が高くなっても、良好に藻類に光照射を行い、藻類の光合成を促進させることが可能な照明装置を提供することを目的とする。また、そのような照明装置を有する藻類の培養装置を提供することをあわせて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の照明装置は、藻類を培養する培養液を該培養液内から照明する照明装置であって、前記培養液に磁場を生じさせる磁場発生部と、前記磁場によって誘導電流を生じるコイルと、前記コイルと導通し前記誘導電流により発光する光源と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、磁場発生部が生じさせる磁場によりコイルでは電磁誘導による誘導電流を生じ、光源が発光する。光源には外部から電力を供給する必要がないため、培養液中に光源とコイルとを配置して培養液内を照明することが容易である。したがって、培養する藻類の培養密度が高くなっても培養液中の藻類に光を照射することができ、高い培養密度で藻類を培養することを可能とする照明装置を提供することができる。
【0011】
ここで、培養液とは、淡水や海水など藻類の培養環境である水に藻類が分散しているものを指す。
【0012】
本発明においては、前記コイルおよび前記光源は光透過性の基体に収容され、前記培養液中に浮遊する光源装置を構成することが望ましい。
この構成によれば、培養液内に浮遊する光源装置が培養液内を移動し、磁場発生部によって磁場を生じさせている領域を通過する際に、光源装置内のコイルでは電磁誘導による誘導電流を生じ、光源が発光し、基体を介して培養液内の藻類に光を供給することができる。
【0013】
本発明においては、前記光源装置の比重を、以下の2通りに設定することができる。まず、前記光源装置の比重は、前記培養液の比重と同等またはそれ以上とすることが可能である。
この構成によれば、光源装置は培養液の液面に浮き上がることがないため、確実に培養液の内部照明することができる。
【0014】
または、本発明においては、前記光源装置の比重は、前記培養液の比重よりも小さく、前記光源装置を繋ぎ止める繋止部材を有することとしても良い。
この構成によれば、光源装置が培養液内に浮遊して培養液を照明することができる。また、繋止部材により光源装置を繋ぎ止めることができるため、例えば海や池などで用いる場合に光源装置が離散してしまうことがない。したがって、確実に培養液の内部照明することができる。
【0015】
本発明においては、前記光源装置は、互いに直交するように配置されている3つの前記コイルと、前記3つのコイルに各々接続されている前記光源と、を有していることが望ましい。
この構成によれば、磁場発生部によって磁場を生じさせている領域を通過する光源装置の姿勢がどのようなものであっても、いずれかのコイルでは誘導電流が生じ、誘導電流が発生したコイルに接続する光源が発光することとなる。そのため、発光時間が長くなり(発光しない時間が短くなり)、より効率的に藻類の培養を行うことが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記光源は、第1の光源と第2の光源とを有し、前記第1の光源と前記第2の光源とは、互いに異なる波長帯域の光を発することが望ましい。
この構成によれば、幅広い波長帯域に光を発することが可能となり、多種の藻類の光合成に適した光を発する光源装置とすることができる。
【0017】
本発明においては、前記光源は、第1の光源と第2の光源とを有し、前記第1の光源および前記第2の光源は、発光ダイオードであり、通電方向が互いに反対になるように前記コイルに接続されていることが望ましい。
この構成によれば、コイルでいずれの向きに誘導電流が生じても、第1の光源と第2の光源とのどちらかは発光するため、光源装置が発光しない時間が短くなる。
【0018】
また、本発明の培養装置は、藻類を培養する培養装置であって、前記藻類を含む培養液を貯留する貯留槽と、上述の照明装置と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、培養する藻類の培養密度が高くなっても、培養液内から藻類に光を照射し藻類の光合成を良好に起こさせることができ、高密度で藻類を培養することを可能な培養装置とすることができる。
【0019】
本発明においては、前記培養液を撹拌する撹拌翼と、前記撹拌翼が接続し前記撹拌翼を回転させる回転軸と、を含む撹拌装置を有し、前記磁場発生部は、前記撹拌翼に設けられていることが望ましい。
この構成によれば、撹拌翼の回転によって培養液内で磁場が発生している領域が変わる。そのため、培養密度が高くなることで培養液が対流し難くなり、光源装置が移動し難くなったとしても、磁場が発生している領域が移動することにより、光源装置内のコイルでは磁束密度が変化して電磁誘導が生じ、良好な発光を行わせることができる。
【0020】
その場合、前記磁場発生部が永久磁石であると装置構成を簡便にすることができ好ましい。
【0021】
また、本発明においては、前記磁場発生部は、前記貯留槽の外部に設けられ、前記貯留槽の内部に磁場を発生させることとしても良い。
この構成によれば、磁場発生部が培養液に浸漬することがないため、磁場発生部として電気的に制御する装置構成を採用しやすく、例えばマグネトロンのような電磁波発生装置を用いて磁場を発生させることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、培養する藻類の培養密度が高くなっても培養液に浮遊する光源装置を発光させることで、藻類に光を照射することができ、藻類の光合成を良好に起こさせることができ、高密度で藻類を培養することを可能な培養装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る培養装置と照明装置とを示す模式図である。
【図2】光源装置を示す模式図である。
【図3】光源装置の変形例を示す模式図である。
【図4】光源装置の変形例を示す模式図である。
【図5】光源装置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の実施形態に係る照明装置および藻類の培養装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0025】
図1は、本発明の培養装置と培養装置が備える照明装置とを示す模式図である。図に示すように、本実施形態の培養装置1は、藻類を培養するための培養液Sを貯留する貯留槽2、貯留槽2に設けられ培養液Sを撹拌する撹拌器3、培養液Sを照明する照明装置4と、を有している。
【0026】
貯留槽2内に貯留される培養液Sは、培養する対象の藻類と、藻類の培養環境である分散媒と、を含んでいる。培養できる藻類としては、例えば、クロレラやアスタキサンチンを生産するためのヘマトコッカス属の藻類、油分を生産するためのボツリオコッカス属の藻類などを挙げることができる。分散媒は、培養する藻類の種類により、淡水・海水など藻類に適した分散媒を選択することができる。
【0027】
貯留槽2は、密閉型のものでも良く開放形のものでも良い。側壁2aや蓋部2bを光透過性の材料で形成し、太陽光や不図示の外部照明からの光が培養液Sに照射される構成とすると良い。
【0028】
撹拌器3は、回転軸31と撹拌翼32と、モーター33とを有し、撹拌翼32の回転により培養液Sを撹拌する。撹拌翼32としては、通常知られたスクリュー翼、プロペラ翼、アンカー翼、パドル翼、ピッチドパドル翼、タービン翼、大型格子翼等を用いることができる。また、エアレーション設備を撹拌器として用い、培養液S内に空気を送り込むことで、酸素を溶け込ませつつ空気の泡により培養液Sを撹拌することもできる。
【0029】
照明装置4は、マグネトロンのような、電磁波を発生する電磁波発生部(磁場発生部)41と、複数の光源装置42と、を有している。電磁波発生部41は、貯留槽2内の培養液Sに電磁波を照射する。その際、電磁波の強度を時間的に変化させることで、磁場の磁束密度を時間的に変化させることとしても良い。
【0030】
光源装置42は、内部にコイルに接続された光源を有しており、電磁波発生器41から発せられる電磁波(電磁波の磁場成分)によって、コイルで誘導電流が生じ、この誘導電流によってコイルに接続された光源が発光する構成となっている。
【0031】
具体的には、本実施形態の光源装置42は、図2に示すように、コイル421と、コイル421に並列に接続された光源(第1の光源)422、光源(第2の光源)423と、コイル421および光源422,423を内部に有する光源基体424と、を有して構成されている。
【0032】
光源422,423は、発光ダイオードであり、通電方向が互いに逆方向となるようにして、コイル421に接続されている。これにより、コイル421から流れる電流の向きがいずれの方向であっても、また交流であっても光を発することができる。
【0033】
また、2つの光源422,423が発する光の波長は、培養する藻類の吸収する光の波長に応じて選択される。光源422,423が各々発する光の波長帯域は同じまたは互いに重なりあっていても良く、また互いに異なっていても構わない。2つの光源422,423が発する光の波長を異ならせると、広い波長帯域の光を発する光源とすることができる。
【0034】
光源基体424は、透明な形成材料で形成されている。例えば、ガラスや光透過性を有する合成樹脂を用いて形成されている。光源基体424は、中空に構成されて内部空間にコイル421,光源422,423を有する回路を内包することとしても良く、樹脂材料で形成する場合には、上記回路を包埋することとしても良い。
【0035】
光源基体424の外形は、図2に示すように球形であっても良く、また楕円体、立方体、多角柱などの他の形状を有していても良い。光源基体424の大きさWは、藻類の培養に邪魔にならない大きさであれば良く、例えば1cm程度の球形とすることができる。
【0036】
光源基体424の表面は、平滑に設けられていても良く、凹凸を有しているものとしても良い。表面に凹凸を有している場合、培養する藻類が付着しながら増殖する場合がある。このような場合には、光源装置42を網などで回収することにより、表面に付着する藻類も同時に回収することができ、藻類の分離が容易となる。
【0037】
このような光源装置42の比重は、培養液Sの比重と略同等であり、培養液Sの中に浮遊することが可能な比重に構成される。光源装置42がこのような比重であれば、培養液Sの撹拌により培養液S内を自由に移動することが可能となる。例えば、培養液Sの分散液が海水である場合、比重が1.03程度にしておくと培養液Sの中に浮遊し、目的とする挙動を取ることが可能となる。
【0038】
光源基体424を合成樹脂にて形成する場合、合成樹脂は比重が水よりも小さいものが多いため、光源装置42全体の比重は1.03よりも小さくなることが多くなる。このような場合には、光源基体424に比重を調節するために金属片等の比重が高いものを埋め込む等して、全体の比重を調節すると良い。
【0039】
このような比重の調整は、光源42の作成において行うものとしても良く、例えば、淡水用に比重を調整した光源装置と、海水用に比重を調整した光源装置と、を作成することで適宜使い分けることとしても良い。または、使用者が培養に用いる培養液Sに応じてその都度、光源装置42の比重の調整をすることとしても構わない。
【0040】
このような照明装置4では、貯留槽2内の培養液Sの撹拌により培養液Sに浮遊している光源装置42が培養液S内を移動し、電磁波発生器41から電磁波が照射される領域を横切る。光源装置42内のコイル421では、電磁波が照射される領域を横切る際の磁束密度の変化により、電磁誘電による誘導電流を生じ、光源422または光源423が発光する。
【0041】
また、培養装置1は、貯留槽2内に培養液Sを供給する供給装置や、貯留槽2内の培養液Sを排出するためのポンプなどの排出装置を有していても良い。
【0042】
さらに、このような培養装置1は、回分式の運転制御がなされても良く、連続式の運転制御が成されても良い。
【0043】
以上のような構成の培養装置1および照明装置4によれば、培養液Sに浮遊する光源装置42が培養液S内で発光し、培養液Sに含まれる藻類に光を供給することができる。そのため、藻類の培養密度が高くなっても貯留槽2の内側の藻類にも光を照射することができ、藻類の光合成を良好に起こさせることができることから、高密度で藻類を培養することが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態においては、マグネトロンなどの電磁波発生器41を用いることとしたが、電磁石や永久磁石を用いて、これらから得られる磁場を用いて光源装置42のコイルに電磁誘導を起こさせることとしても良い。この場合、図1に示すように、貯留槽2に設けることとしても良いが、他の場所に設置することもできる。
【0045】
例えば、撹拌翼32に永久磁石を設けることとすると、撹拌翼32の回転によって、撹拌翼32の近傍に浮遊する光源装置42内で電磁誘導が生じ、光源装置42を発光させることができる。このような構成とすると、撹拌翼32の回転によって培養液S内で磁場が発生している領域が変わることとなる。そのため、培養密度が高くなることで培養液Sが対流し難くなり、光源装置42が移動し難くなったとしても、磁場が発生している領域が移動することにより、光源装置42内のコイルでは磁束密度が変化して電磁誘導が生じ、良好な発光を行わせることができる。
【0046】
また、光源装置42は、図2に示すような構成だけでなく、図3に示すように、複数のコイル421を有することとしても良く、また複数の光源422,423が直列(図3(a))または並列(図3(b))にコイル421と接続されることとしても良い。これらの光源422,423は、互いに同じ波長帯域の光を発するものを用いても良く、互いに異なる波長帯域の光を発するものを用いても良い。
【0047】
さらに、光源装置42が複数のコイル421を有する場合、図4に示すように、少なくとも3つのコイル421が、互いに直交するように配置され、各々のコイル421に光源422,423が接続されている構成を採用することができる。
【0048】
このような構成の光源装置42では、電磁波が照射される領域を通過する光源装置42の姿勢がどのようなものであっても、いずれかのコイルでは誘導電流が生じ、誘導電流が発生したコイルに接続する光源422,423が発光することとなる。そのため、発光時間が長くなり(発光しない時間が短くなり)、より効率的に藻類の培養を行うことが可能となる。
【0049】
複数のコイルは、図4に示すように、それぞれ電気的に独立して光源と接続した回路を構成していても良く、または1つの回路の中に3以上のコイルを有し、これらのコイルが互いに直交するように配置されていることとしても良い。
【0050】
また、図5(a)に示すように、複数(図では3つ)の光源装置42が柔軟な紐状部材43によって互いに連結した光源装置44を用いることもできる。このような光源装置44を用いると、培養後に培養液Sからの光源装置44の回収が容易となる。
【0051】
また、図5(a)に示すような光源装置42(光源装置44)を、培養液よりも小さい比重を有するものとして形成し、さらに光源装置44を培養槽2の内壁に繋ぎ止める紐状部材(繋止部材)43を有することとしても良い。
【0052】
このような構成と類似した外形形状を有する装置構成として、上記繋止部材に対応する部材を導電線とし、該導電線を介して導電線と接続された光源装置に電力を供給する構成が考えられる。しかしこの場合、液中に浮遊する光源装置の動きによって導電線に張力がかかり断線しやすいこと、光源装置の数を増やすためには電気的に接続するための加工が必要となること、など不都合が生じることが考えられる。これに対して、本実施形態の光源装置42(光源装置44)を繋止部材で繋止した構成では、そのような想定される不具合が生じず、良好に光照射が可能となり好ましい。
【0053】
このような構成を採用すると、例えば、本実施形態で採用した培養槽2に代えて、海や池の中に仕切りを設け海水や淡水を培養液として用い、仕切られた領域内で藻類を培養する場合に適した構成とすることができる。すなわち、図5(b)に示すように、符号Bで示す海や池の底に、光源装置42を繋止部材43で繋ぎ止めることにより、光源装置44自身は浮かび上がろうとする一方で、繋止部材43が光源装置44をつなぎ止めるために、光源装置44が水中に浮遊させつつも水面にまで浮かび上がってしまうことを抑制した構成とすることができる。このような構成を採用し、別途設ける磁場発生部から磁場を発生させることにより、光源装置44の系外への拡散や一箇所への凝集を防ぎ、効率的な光照射が可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、光源装置42は培養液Sと略同等な比重であることとしたが、撹拌装置3の撹拌によって生じる培養液S内の対流により、培養液S内を流動することができるならば、光源装置42の比重は培養液Sよりも大きい比重であることとしても構わない。すなわち、光源装置42の比重が培養液Sよりも大きく、培養液Sを攪拌せずに静置した場合には光源装置42は底部に沈降したとしても、攪拌によって生じる培養液Sの対流により巻き上がり培養液S内を流動することが可能な程度の比重としておくと、攪拌時には光源装置42が培養液S内を流動し、本実施形態と同様に効果的な光照射が可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、光源装置42が培養液S内に浮遊する構成として記載したが、光源装置42が例えば貯留槽の内壁に固定されている構成を採用することも可能である。このような構成であっても、磁場発生部から発生する磁界によって光源装置42内のコイルで誘導電流が生じ、光源を発光させて培養液S内から藻類を照明することができる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…培養装置、2…貯留槽、3…撹拌装置、4…照明装置、31…回転軸、32…撹拌翼、41…磁場発生部、42,44…光源装置、47…繋止部材、421…コイル、422…光源(第1の光源)、423…光源(第2の光源)、S…培養液、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類を培養する培養液を該培養液内から照明する照明装置であって、
前記培養液に磁場を生じさせる磁場発生部と、
前記磁場によって誘導電流を生じるコイルと、
前記コイルと導通し前記誘導電流により発光する光源と、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記コイルおよび前記光源は光透過性の基体に収容され、前記培養液中に浮遊する光源装置を構成することを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記光源装置の比重は、前記培養液の比重と同等またはそれ以上であることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光源装置の比重は、前記培養液の比重よりも小さく、
前記光源装置を繋ぎ止める繋止部材を有することを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光源装置は、互いに直交するように配置されている3つの前記コイルと、
前記3つのコイルに各々接続されている複数の前記光源と、を有していることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項6】
前記光源は、第1の光源と第2の光源とを有し、
前記第1の光源と前記第2の光源とは、互いに異なる波長帯域の光を発することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光源は、第1の光源と第2の光源とを有し、
前記第1の光源および前記第2の光源は、発光ダイオードであり、通電方向が互いに反対になるように前記コイルに接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
藻類を培養する培養装置であって、
前記藻類を含む培養液を貯留する貯留槽と、
請求項1から7のいずれか1項に記載の照明装置と、を有することを特徴とする培養装置。
【請求項9】
前記培養液を撹拌する撹拌翼と、前記撹拌翼が接続し前記撹拌翼を回転させる回転軸と、を含む撹拌装置を有し、
前記磁場発生部は、前記撹拌翼に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の培養装置。
【請求項10】
前記磁場発生部は、永久磁石であることを特徴とする請求項9に記載の培養装置。
【請求項11】
前記磁場発生部は、前記貯留槽の外部に設けられ、前記貯留槽の内部に磁場を発生させることを特徴とする請求項8に記載の培養装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−250760(P2011−250760A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127925(P2010−127925)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】