説明

照明装置及びその発光制御方法

【課題】 照明装置の利用者が気付くことなく発光部の発光状態の発光素子と非発光状態の発光素子とを切り替えることができる照明装置及び発光制御方法を提供する。
【解決手段】 複数の発光素子を有する発光部と、複数の発光素子を個別に発光制御する制御部と、照明装置による照明範囲内の人間の存在を検知する人間感知手段とを含み、制御部は、人間感知手段によって人間の存在が検知されないとき、又は存在する人間の数が所定数より少ないことが検知されたときを切替タイミングとして設定し、その設定した切替タイミングで複数の発光素子の合計発光輝度を設定輝度に維持しつつ複数の発光素子のうちの発光状態にある第1発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に減少させ、かつ複数の発光素子のうちの非発光状態にある第2発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光領域を有する発光部を備え、複数の発光領域各々を個別に発光制御することができる照明装置及び発光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光源として有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた照明装置が提案されている。有機EL素子の照明装置(有機EL照明装置)には、面発光で形状に制約がないという特徴があり、そのような特徴はLED(発光ダイオード)照明装置等の他の照明装置では得られないので、今後の実用化に向けた更なる開発が期待されている。
【0003】
有機EL照明装置では、有機EL素子を照明のために長時間に亘って発光させたままにしておくことが多くあるので、素子自身の発熱によって高温状態になる。ところが、有機EL素子の高温状態の長く継続すると、有機EL素子の劣化が加速されて輝度低下が生じ、その結果、素子としての寿命が短くなることが知られている。
【0004】
一般に、照明装置において、LED等の発光素子の使用寿命を延長するために、複数の発光素子を用意して半数の発光素子と残りの発光素子とを交互に発光させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。従って、有機EL照明装置にもこの方法を適用することにより有機EL素子の使用寿命を長くすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−166065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、有機EL照明装置等の照明装置においては、発光状態の発光素子と非発光状態の発光素子とを切り替えるときに例えば、一瞬だけちらつきが生じるために、その切り替えを照明装置の利用者が気付いて違和感を感じるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記の欠点が一例として挙げられ、照明装置の利用者が気付くことなく発光部の発光状態の発光素子と非発光状態の発光素子とを切り替えることができる照明装置及び発光制御方法を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の照明装置は、複数の発光素子を有する発光部と、前記複数の発光素子を個別に発光制御する制御部と、を含む照明装置であって、前記照明装置による照明範囲内の人間の存在を検知する人間感知手段を更に含み、前記制御部は、前記人間感知手段によって人間の存在が検知されないとき、又は存在する人間の数が所定数より少ないことが検知されたときを切替タイミングとして設定し、その設定した前記切替タイミングで前記複数の発光素子の合計発光輝度を設定輝度に維持しつつ前記複数の発光素子のうちの発光状態にある第1発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に減少させ、かつ前記複数の発光素子のうちの非発光状態にある第2発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に増加させることを特徴としている。
【0009】
請求項8に係る発明の発光制御方法は、複数の発光素子を有する発光部を含む照明装置の発光制御方法であって、前記複数の発光素子を個別に発光制御する第1ステップと、前記照明装置による照明範囲内の人間の存在を検知する第2ステップと、前記第2ステップによって人間の存在が検知されないとき、又は存在する人間の数が所定数より少ないことが検知されたときを切替タイミングとして設定する第3ステップと、設定された切替タイミングで前記複数の発光素子の合計発光輝度を前記設定輝度に維持しつつ前記複数の発光素子のうちの発光状態にある第1発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に減少させ、かつ前記複数の発光素子のうちの非発光状態にある第2発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に増加させる第4ステップと、を含むことを特徴としている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
請求項1に係る発明の照明装置及び請求項8に係る発明の発光制御方法によれば、発光部の発光状態の発光素子と非発光状態の発光素子との切り替えの際には、人間の存在が検知されないとき、又は存在する人間の数が所定数より少ないことが検知されたときが切替タイミングとされ、その切替タイミングで発光部の複数の発光素子の合計発光輝度が設定輝度に維持されつつ複数の発光素子のうちの発光状態にある第1発光領域の発光素子の発光輝度が時間を掛けて徐々に減少され、かつ複数の発光素子のうちの非発光状態にある第2発光領域の発光素子の発光輝度が時間を掛けて徐々に増加される。よって、発光部の発光状態の発光素子と非発光状態の発光素子との切り替えが発光部の合計発光輝度を変化させることなく時間を掛けて徐々に実行されるので、切り替えの際にはのちらつき等の違和感を照明装置の利用者に与えることなく発光領域の発光素子と非発光領域の発光素子との切り替えを実行することができる。また、各発光素子が高温のままで長時間に亘って継続されることが防止され、更に、発光部のうちの一部の発光素子の劣化が他の発光素子に比べて顕著に進むことがないので、複数の発光素子を有する発光部の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例として照明装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の照明装置の発光面の4つの領域を示す平面図である。
【図3】図1の照明装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図4】発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域との切り替えタイミングを示す図である。
【図5】本発明の他の実施例として照明装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図5の照明装置の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域とが市松模様を形成する格子状の発光領域を有する発光面を示す図である。
【図8】発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域とが半径方向に交互に位置する同心円状の発光領域を有する発光面を示す図である。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例である照明装置の構成を示している。この照明装置は、発光素子として有機EL素子からなる発光パネル部11(発光部)を備えている。発光パネル部11は面発光パネルであり、その正方形の発光面が4等分に分割されており、図2に示すように、4つの領域11a〜11dを有している。この領域分けは発光パネル部11に備えられた複数の有機EL素子のグループ分けに対応する。この実施例では分かり易くするために領域11aの有機EL素子を17a、領域11bの有機EL素子を17b、領域11cの有機EL素子を17c、領域11dの有機EL素子を17dとするが、領域毎に複数の有機EL素子が備えられても良い。なお、この実施例では4つの領域11a〜11dは正方形の形状であるが、三角形や円形等の他の形状でも良く、また等分される必要もない。
【0014】
照明装置は、AC−DCコンバータ12、制御部13、メモリ14及び操作部15を備えている。AC−DCコンバータ12は電源部16からの交流電圧を直流電圧に変換して出力する。電源部16は例えば、商業電源である。AC−DCコンバータ12の出力電圧は直流電源として発光パネル部11及び制御部13に供給される。制御部13は、例えば、CPUで構成され、発光パネル11の発光を領域11a〜11d毎に制御する。
【0015】
制御部13には発光パネル部11の他に、メモリ14及び操作部15が接続されている。メモリ14には制御部13の制御で必要なプログラムやデータが保存される。操作部15はユーザの入力操作に応じて発光パネル部11全体の輝度を設定する。操作部15では予め定められた輝度範囲で任意に輝度設定が可能である。また、操作部15には本照明装置の電源オン/オフスイッチが備えられ、その電源オン/オフスイッチがオン操作されると電源部16の電源電圧がAC−DCコンバータ12に供給され、電源オン/オフスイッチがオフ操作されると電源部16の電源電圧のAC−DCコンバータ12への供給が遮断される。なお、この実施例では操作部15で設定される輝度を設定輝度と称することにする。
【0016】
次に、かかる構成の照明装置の制御動作について図3のフローチャートを用いて説明する。
【0017】
制御部13は、操作部15の電源オン/オフスイッチがオンされると、AC−DCコンバータ12の出力電圧が供給されるので、制御動作を開始する。先ず、操作部15において設定されている設定輝度を読み取り(ステップS11)、前回選択した領域情報をメモリ14から読み出す(ステップS12)。そして、4つの領域11a〜11dのうちからステップS12の読み出し領域情報が示す領域の次の順番の領域を選択する(ステップS13)。
【0018】
発光のために4つの領域11a〜11dのうちの2つの領域の有機EL素子が用いられる。領域の選択順番は例えば、領域11a及び11d、そして領域11b及び11cの順番を繰り返す。ステップS12で読み出した領域が11a及び11dであれば、ステップS13では領域11b及び11cが選択される。
【0019】
制御部13は、ステップS13で新たな領域を選択すると、その選択した領域を設定輝度で発光制御する(ステップS14)。第1ステップとしてのステップS14では、ステップS11で読み取った設定輝度に応じた駆動電流を選択した2つの領域に属する有機EL素子に供給することが行われる。選択した2つの領域の有機EL素子だけによって設定輝度での発光が行われるように駆動電流が制御される。例えば、2つの領域の発光輝度は2つの領域の面積に単位面積当たりの輝度を乗算して得られるので、単位面積当たりの輝度と駆動電流値との関係が定まれば、発光状態にすべき2つの領域の面積毎に設定輝度に対する駆動電流値を決定することができる。なお、2つの領域の有機EL素子を駆動する場合の輝度と各有機EL素子の駆動電流との関係は制御部13内にデータとして予め保存されており、そのデータを用いて駆動電流が制御されるとする。
【0020】
ステップS14の実行後、制御部13は、タイマTA(図示せず)の時間計測を開始させる(ステップS15)。タイマTAは第1所定時間T1を計測するタイマである。第1所定時間T1は特に限定されないが、例えば、2時間である。また、第1所定時間T1は、ステップS13で選択した2つの領域の発光を開始してからその領域の有機EL素子の温度が所定の切替温度にほぼ達することが予測される時間であっても良い。ステップS15の実行後、制御部13はタイマTAによる計測時間が第1所定時間T1に達したか否かを判別する(ステップS16)。
【0021】
制御部13は、計測時間が第1所定時間T1に達したと判別したならば、領域11a〜11dのうちの発光状態にある2つの領域(第1発光領域に対応する領域Aとする)の輝度LAを輝度変化量ΔLだけ減算させ、非発光状態にある他の2つの領域(第2発光領域に対応する領域Bとする)の輝度LBを輝度変化量ΔLだけ加算させる(ステップS17)。輝度LAの初期値は設定輝度であり、輝度LBの初期値は0である。輝度変化量ΔLは設定輝度に比べて十分に小さい輝度である。ステップS17ではLA=LA−ΔL及びLB=LB+ΔLが算出される。そして、輝度LBが設定輝度以上であるか否かを判別する(ステップS18)。輝度LBが設定輝度より小であるならば、ステップS17の算出結果をそのまま維持し、領域Aの有機EL素子だけによって輝度LAでの発光が行われるように領域Aの有機EL素子の駆動電流を制御し、領域Bの有機EL素子だけによって輝度LBでの発光が行われるように領域Bの有機EL素子の駆動電流を制御する(ステップS19)。
【0022】
ステップS19の実行後、制御部13は、タイマTA,TB(図示せず)の時間計測を開始させる(ステップS20)。タイマTBは第2所定時間T2を計測するタイマである。第2所定時間T2は第1所定時間より十分に小なる時間であり、例えば、10秒である。ステップS20の実行後、制御部13はタイマTBによる計測時間が第2所定時間T2に達したか否かを判別する(ステップS21)。制御部13は、タイマTBの計測時間が第2所定時間T2に達したと判別したならば、ステップS17を再度実行する。ステップS17〜S21を繰り返すことにより、図4に示すように、第2所定時間T2毎に領域Aの発光輝度は設定輝度から輝度変化量ΔLだけ減少され、領域Bの発光輝度は0から輝度変化量ΔLだけ増加される。
【0023】
制御部13は、ステップS18の判別結果により輝度LBが設定輝度以上であるならば、LA=0及びLB=設定輝度と定める(ステップS22)。このように輝度LA,LBを設定すると、領域Bの有機EL素子だけによって輝度LB=設定輝度での発光が行われるように領域Bの有機EL素子の駆動電流を制御し、領域Aが非発光となるように領域Aの有機EL素子への駆動電流の供給を停止する(ステップS23)。
【0024】
第2ステップに相当するステップS17〜S23を実行することにより、図4に示すように、第2所定時間T2毎に領域Aの発光輝度は設定輝度から輝度変化量ΔLだけ減少され、領域Bの発光輝度は0から輝度変化量ΔLだけ増加され、最終的に領域Aの発光輝度が0、領域Bの発光輝度が設定輝度になる。また、第2所定時間T2毎の輝度増減の際の領域A,Bの合計発光輝度は常に設定輝度となる。全体の切り替えの時間は5〜10分程度で良い。
【0025】
ステップS23の実行後、制御部13は選択領域情報として領域Bを示す情報をメモリ14に書き込み(ステップS24)、その後、ステップS16を再度実行する。ステップS24の書き込み内容は、電源オン/オフスイッチが次にオフからオンされた直後に制御部13によるステップS12の実行で読み出されることになる。また、ステップS24以後ではそれまでの領域Bが新たな発光状態の領域Aとなり、領域Aが新たな非発光状態の領域Bとなる。
【0026】
このように実施例においては、発光パネル部11の4つの領域11a〜11dのうちの領域11a,11dからなる領域と、領域11b,11cからなる領域とを第1所定時間T1毎に切り替えて発光させることが行われる。切り替え直前に例えば、領域11a,11dからなる領域が発光中の領域Aであり、領域11b,11cからなる領域が非発光の領域Bであるとすると、その切り替えの際には、領域11a,11dの発光輝度が徐々に減少され、領域11b,11cの発光輝度が徐々に増加され、更に、領域11a,11dの発光輝度と領域11b,11cの発光輝度の合計輝度は設定輝度とされる。最終的には領域11a,11dが非発光となり、領域11b,11cの発光だけで設定輝度が得られる。次の切り替え直前には領域11a,11dからなる領域が非発光の領域Bであり、領域11b,11cからなる領域が発光中の領域Aとなり、同様に徐々に発光輝度が増減する切り替え動作が行われる。
【0027】
よって、発光パネル部11の領域11a〜11dを第1所定時間T1毎に発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域とを切り替えるので、発光パネル部11の有機EL素子の温度が長時間に亘って高温のままであることが防止され、これにより有機EL素子の長寿命化を図ることができる。また、切り替えの際には発光状態の発光領域の有機EL素子の発光輝度を徐々に低下させる一方、非発光状態の発光領域の有機EL素子の発光輝度を徐々に増加させ、かつその発光輝度の合計が設定輝度になるように制御するので、その切り替えの際に照明装置の利用者が気付くようなちらつき等の変化が生じない。よって、違和感を利用者に与えることなく発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域との切り替えを実行することができる。
【0028】
なお、第1所定時間T1については周囲温度を考慮して設定することができる。例えば、周囲温度が高いほど第1所定時間T1を短く設定しても良い。
【0029】
照明装置の動作環境温度26℃に対して発光パネルの動作温度60℃では寿命は1/4程度に悪化することが分かっている。有機EL材料のガラス転移温度(80℃以上)になると、大幅に悪化すると考えられる。また、発光効率も動作温度が高くなるほど同様に悪化すると考えられる。従って、上記のように発光部の発光状態の発光素子と非発光状態の発光素子との切り替えることにより、各発光素子が高温のままで長時間に亘って継続されることが防止され、更に、発光部のうちの一部の発光素子の劣化が他の発光素子に比べて顕著に進むことがないので、複数の発光素子を有する発光部の長寿命化を図ることができる。
【0030】
図5は本発明の他の実施例である照明装置の構成を示している。この図5の照明装置は、領域11a〜11d各々の有機EL素子17a〜17dの温度を検出する温度センサ18a〜18dを備えている。温度センサ18a〜18d各々の出力は制御部13に接続されている。その他の構成は図1に示した照明装置の構成と同一であり、同一符号を用いているので、それらのここでの説明は省略される。
【0031】
次に、かかる図5の構成の照明装置の制御動作について図6のフローチャートを用いて説明する。
【0032】
制御部13は、制御動作を開始すると、図3のフローチャートとステップS11〜S14と同様のステップS31〜S34を実行して読み取った設定輝度に応じた駆動電流を、領域11a〜11dのうちから選択した2つの領域に属する有機EL素子に供給することが行われる。
【0033】
ステップS34の実行後、選択した2つの領域(発光中の領域A)に対応した温度センサ(例えば、領域11a及び11dが選択されているならば温度センサ18a及び18d)の温度を検出し(ステップS35)、それらの温度センサによって検出された温度の少なくとも一方が所定の切替温度以上であるか否かを判別する(ステップS36)。すなわち、選択した2つの領域各々の有機EL素子の温度が所定の切替温度以上であるか否かが判別される。所定の切替温度は例えば、有機EL素子の劣化が急速に進むとされる素子温度(例えば、80℃)より若干低い温度であり、素子の温度特性に応じて定められる。
【0034】
制御部13は、温度センサによって検出された温度の少なくとも一方が所定の切替温度以上であると判別したならば、領域11a〜11dのうちの発光中の2つの領域(領域Aとする)の輝度LAを輝度変化量ΔLだけ減算させ、非発光中の他の2つの領域(領域Bとする)の輝度LBを輝度変化量ΔLだけ加算させる(ステップS37)。そして、輝度LBが設定輝度以上であるか否かを判別する(ステップS38)。輝度LBが設定輝度より小であるならば、ステップS17の算出結果をそのまま維持し、領域Aの有機EL素子だけによって輝度LAでの発光が行われるように領域Aの有機EL素子の駆動電流を制御し、領域Bの有機EL素子だけによって輝度LBでの発光が行われるように領域Bの有機EL素子の駆動電流を制御する(ステップS39)。
【0035】
ステップS39の実行後、制御部13は、タイマTBの時間計測を開始させる(ステップS40)。タイマTBは第2所定時間T2を計測するタイマである。ステップS40の実行後、制御部13はタイマTBによる計測時間が第2所定時間T2に達したか否かを判別する(ステップS41)。制御部13は、タイマTBの計測時間が第2所定時間T2に達したと判別したならば、ステップS17を再度実行する。ステップS37〜S41を繰り返すことにより、第2所定時間T2毎に領域Aの発光輝度は設定輝度から輝度変化量ΔLだけ減少され、領域Bの発光輝度は0から輝度変化量ΔLだけ増加される。
【0036】
制御部13は、ステップS41の判別結果により輝度LBが設定輝度以上であるならば、LA=0及びLB=設定輝度と定める(ステップS42)。このように輝度LA,LBを設定すると、領域Bの有機EL素子だけによって輝度LB=設定輝度での発光が行われるように領域Bの有機EL素子の駆動電流を制御し、領域Aが非発光となるように領域Aの有機EL素子への駆動電流の供給を停止する(ステップS43)。
【0037】
ステップS43の実行後、制御部13は選択領域として領域Bをメモリ14に書き込み(ステップS44)、その後、ステップS35を再度実行する。図3のフローチャートのS17〜S24と同一である。また、ステップS44以後ではそれまでの領域Bが新たな発光状態の領域Aとなり、領域Aが新たな非発光状態の領域Bとなる。
【0038】
このように図5の照明装置においては、発光パネル部11の4つの領域11a〜11dのうちの領域11a,11dからなる領域と、領域11b,11cからなる領域とを発光中の領域の有機EL素子の温度が所定の切替温度に達する毎に切り替えて発光させることが行われる。切り替え直前に例えば、領域11a,11dからなる領域が発光中の領域Aであり、領域11b,11cからなる領域が非発光の領域Bであるとすると、その切り替えの際には、領域11a,11dの発光輝度が徐々に減少され、領域11b,11cの発光輝度が徐々に増加され、更に、領域11a,11dの発光輝度と領域11b,11cの発光輝度の合計輝度は設定輝度とされる。最終的には領域11a,11dが非発光となり、領域11b,11cの発光だけで設定輝度が得られる。次の切り替え直前には領域11a,11dからなる領域が非発光の領域Bであり、領域11b,11cからなる領域が発光中の領域Aとなり、同様に徐々に発光輝度が増減する切り替え動作が行われる。
【0039】
よって、発光パネル部11の発光中の領域の有機EL素子の温度が所定の切替温度に達する毎発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域とに切り替えるので、発光パネル部11の有機EL素子の温度が長時間に亘って高温のままであることが防止され、これにより有機EL素子の長寿命化を図ることができる。また、切り替えの際には発光状態の発光領域の有機EL素子の輝度を徐々に低下させる一方、非発光状態の発光領域の有機EL素子の輝度を徐々に増加させ、かつその発光輝度の合計が設定輝度になるように制御するので、その切り替えの際に照明装置の利用者が気付くようなちらつき等の変化が生じない。よって、違和感を利用者に与えることなく発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域との切り替えを実行することができる。
【0040】
なお、上記した各実施例においては、切り替えの際に領域A,Bの輝度を所定時間T2毎に輝度変化量ΔLの割合で段階的に変化させているが、領域A,Bの輝度を連続的に変化させても良いことは勿論である。
【0041】
また、上記した実施例においては、発光パネル部11の発光面が予め領域11a〜11dに分割されているが、本発明はこれに限らず、制御部13の制御により単一の連続した発光面を発光状態の発光領域の有機EL素子と非発光状態の発光領域の有機EL素子とに分けても良い。
【0042】
更に、上記した実施例においては、発光パネル部11の領域11a〜11dを制御上は第1及び第2発光領域に対応した領域A,Bの2領域に分けて制御しているが、2領域以外の複数の領域に分けて制御しても良い。例えば、4つの領域に分けて制御する場合には領域11a,11b,11c,11dの順に切り替えても良い。
【0043】
また、上記した実施例においては、設定輝度は操作部15における操作に応じて決定されるが、予め定められた固定輝度であっても良い。
【0044】
また、上記した実施例においては、発光部の発光素子として有機EL素子が用いられているが、本発明はこれに限定されず、無機EL素子等の他の発光素子を用いることができる。
【0045】
なお、本発明でいう発光輝度を徐々に増減することは照明装置の利用者が気付かない程度の輝度変化速度であることを意味する。例えば、照明装置を市松模様の発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域とを切り替え、照明装置の利用者は机上のみを注視した状態で一般事務作業を行っているとすると、切り替えを開始してから切り替えが完了するまでの切り替え時間が5分より短い場合には利用者が気付き易く、5分以上になると、ほとんど気付かないという結果が得られている。すなわち、照明装置の輝度変化を切り替え時間に対応させて知覚可能な輝度変化速度未満の切替速度にすることが望ましい。
【0046】
上記した実施例では、発光部の発光素子として有機EL素子が用いられているが、有機EL素子の配光曲線はLED(発光ダイオード)等の他の発光素子と異なり、完全拡散反射面とほぼ同等であるために有機EL素子に指向性はほんどんなく、有機EL素子の発光部を用いることは発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域との切り替えを利用者が気付き難いという利点がある。また、有機EL素子は面光源であるため、蛍光灯やLED等の高輝度の部分が集中する点光源よりも利用者が切り替えを気付き難いこともある。更に、有機EL素子は他の発光素子と比べて、低輝度から高輝度まで連続的に滑らかに輝度変化させることができるので、発光輝度を徐々に増減するための発光素子として好適である。また、有機EL素子は他の発光素子と比べて、発光領域の形状の自由度が高いので、発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域との切り替えに利用者が気付き難い形状にすることができる。例えば、発光面に図7に示すように格子状に発光領域を形成して発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域とが市松模様を形成するように配置しても良いし、また図8に示すように、発光面に同心円で区分された発光領域を形成して発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域とが半径方向に交互に位置するように用いも良い。
【0047】
図7及び図8に示したように照明装置の複数の発光領域各々が細かい場合には切り替え時間が短くても切り替えが気付かれ難く、一方、複数の発光領域各々が粗い場合には切り替え時間を長くしないと切り替えが気付かれ易い。例えば、複数の発光領域が直線上に配置され、配置順に発光状態にある発光領域の切り替えを行うならば、その切り替えは明らかに気付かれ易い。これに対して、図7及び図8に示したように複数の発光領域(発光素子)が配列されている場合には複数の発光領域の配列に応じて切替速度を変化させることができる。すなわち、切替速度が速くしても(切り替え時間を短くしても)切り替えを気付かれることがない。切り替え時間を短くするメリットはより細かく制御できるので発光温度を低く保つことができる。
【0048】
また、上記した実施例においては、切り替え実行の切替タイミングの例として発光状態が所定時間T1経過したタイミングと、有機EL素子の温度が所定の切替温度に達するタイミングとを示したが、照明装置が設けられた部屋等の照明範囲内に人間が存在しないタイミング、又は存在する人間が所定数より少ないタイミングでも良い。例えば、照明装置の照明範囲内における人間の存在を検知する人間感知センサを設けて人間感知センサの出力に応じて照明範囲内に人間が存在しないことが検知されたときに発光状態の発光領域と非発光状態の発光領域との切り替えが開始されるようにすることができる。
【0049】
更に、上記した実施例の発光パネル部11、AC−DCコンバータ12、制御部13、メモリ14及び操作部15は照明装置のケース(図示せず)内に収められても良く、或いは発光パネル部11から制御部13、操作部15等の他の部分が分離されても良い。
【符号の説明】
【0050】
11 発光パネル部
12 AC−DCコンバータ
13 制御部
14 メモリ
15 操作部
16 電源部
17a〜17d 有機EL素子
18a〜18d 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を有する発光部と、
前記複数の発光素子を個別に発光制御する制御部と、を含む照明装置であって、
前記照明装置による照明範囲内の人間の存在を検知する人間感知手段を更に含み、
前記制御部は、前記人間感知手段によって人間の存在が検知されないとき、又は存在する人間の数が所定数より少ないことが検知されたときを切替タイミングとして設定し、その設定した前記切替タイミングで前記複数の発光素子の合計発光輝度を設定輝度に維持しつつ前記複数の発光素子のうちの発光状態にある第1発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に減少させ、かつ前記複数の発光素子のうちの非発光状態にある第2発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に増加させることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記照明装置の利用者が前記発光部の輝度変化を知覚可能な輝度変化速度未満の切替速度で前記第1発光領域及び前記第2発光領域各々の発光素子の発光輝度を変化させることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の発光素子の配列に応じて前記切替速度を変化させることを特徴とする請求項2記載の照明装置。
【請求項4】
前記制御部は前記第1発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に減少させる場合に切替時間の経過後に前記第1発光領域の発光素子を非発光状態に制御し、第2発光領域の発光素子を前記設定輝度での発光状態に制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1記載の照明装置。
【請求項5】
入力操作に応じて輝度を設定する操作部を更に含み、前記設定輝度は前記操作部によって設定された輝度であることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項6】
前記設定輝度は予め定められた一定輝度であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1記載の照明装置。
【請求項7】
前記発光素子は有機EL素子からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1記載の照明装置。
【請求項8】
複数の発光素子を有する発光部を含む照明装置の発光制御方法であって、
前記複数の発光素子を個別に発光制御する第1ステップと、
前記照明装置による照明範囲内の人間の存在を検知する第2ステップと、
前記第2ステップによって人間の存在が検知されないとき、又は存在する人間の数が所定数より少ないことが検知されたときを切替タイミングとして設定する第3ステップと、
設定された切替タイミングで前記複数の発光素子の合計発光輝度を前記設定輝度に維持しつつ前記複数の発光素子のうちの発光状態にある第1発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に減少させ、かつ前記複数の発光素子のうちの非発光状態にある第2発光領域の発光素子の発光輝度を、時間を掛けて徐々に増加させる第4ステップと、を含むことを特徴とする発光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−38062(P2013−38062A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60152(P2012−60152)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【分割の表示】特願2011−549782(P2011−549782)の分割
【原出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】