照明装置及びそれを備えた液晶ディスプレイ装置
【課題】光取り出し効率の最適化を行って光取り出し効率の向上が可能であるとともに、射出光の射出角度による色度座標の変化を改善する上で有利な照明装置及びそれを備えた液晶ディスプレイ装置を提供すること。
【解決手段】透光性基板の、光源からの射出光が入射する面とは反対側の面に設けられた光取出しシートの透光性基板と対向する面とは反対側の面上に、互いに離間し且つ平行に配列された複数の第1レンズを備えた第1のレンズアレイ40と、互いに隣接し且つ平行に配列された複数の第2レンズを備えた第2のレンズアレイ50が形成され、複数の第1レンズは、一方向に沿って延在し且つ平行に配列され、複数の第2レンズは、第1のレンズアレイ40と交差する方向に沿って互いが隣接し且つ平行に配列され、第2のレンズアレイ50の最大高さH2は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1よりも低い。
【解決手段】透光性基板の、光源からの射出光が入射する面とは反対側の面に設けられた光取出しシートの透光性基板と対向する面とは反対側の面上に、互いに離間し且つ平行に配列された複数の第1レンズを備えた第1のレンズアレイ40と、互いに隣接し且つ平行に配列された複数の第2レンズを備えた第2のレンズアレイ50が形成され、複数の第1レンズは、一方向に沿って延在し且つ平行に配列され、複数の第2レンズは、第1のレンズアレイ40と交差する方向に沿って互いが隣接し且つ平行に配列され、第2のレンズアレイ50の最大高さH2は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1よりも低い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フラットパネルディスプレイ、液晶用バックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源等に用いられる、EL素子(エレクトロ・ルミネッセンス素子)と光取出しシートを備えた照明装置、及びこの照明装置を用いた表示装置、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機ELは、透光性基板上において、蛍光有機化合物を含む発光層を、陽極と陰極で挟んだ構造を有している。そして、陽極と陰極に直流電圧を印加し、発光層に電子及び正孔を注入して再結合させることにより励起子を生成し、この励起子の失活する際の光の放出を利用して、発光に至る。
従来では、これらのEL素子において、発光層から射出した光線が、透光性基板から射出する際に、透光性基板上において全反射し、光線がロスするという問題があった。なお、このときの光の外部取り出し効率は、一般に20[%]程度と言われている。そのため、高輝度が必要となればなるほど、より多くの投入電力が必要となるという問題があり、また、この場合、素子に及ぼす負荷が増大し、素子自体の信頼性を低下させるという問題がある。
【0003】
このような光の外部取り出し効率を向上させる目的で、素子基板に微細な凹凸を形成し、全反射によりロスしている光線を外部に取り出す技術が提案されている。この技術は、例えば、特許文献1に記載されているように、透光性基板の一方の面に、複数のマイクロレンズエレメントを平面的に配列して成るマイクロレンズアレイを形成する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−260845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、光取り出し効率の向上を図る上でも、射出光の射出角度による色度変化を抑制する上でも、十分なものとはいえなかった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、光取り出し効率の最適化を行って光取り出し効率の向上が可能であるとともに、射出光の射出角度による色度座標の変化を改善する上で有利な、EL素子、照明装置、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、光源と、
前記光源からの射出光が一方の面に入射する透光性基板と、
前記透光性基板の前記光源からの射出光が入射する面とは反対側の面に設けられた光取出しシートと、を備え、
前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面とは反対側の面上に、互いに離間し且つ平行に配列された複数の第1レンズを備えた第1のレンズアレイと、互いに隣接し且つ平行に配列された複数の第2レンズを備えた第2のレンズアレイと、が形成され、
前記複数の第1レンズは、一方向に沿って延在し且つ平行に配列され、
前記複数の第2レンズは、前記第1のレンズアレイと交差する方向に沿って、互いが隣接し且つ平行に配列され、
前記第2のレンズアレイの最大高さは、前記第1のレンズアレイの最大高さよりも低いことを特徴とするものである。
【0007】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に従属する発明であって、前記第1のレンズアレイの最大高さをH1とし、前記第2のレンズアレイの最大高さをH2とした場合に、
0.01<(H2/H1)<1の関係式が成立していることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に従属する発明であって、隣接する前記第1レンズ間の配置ピッチをP1とし、前記第1レンズのレンズ幅をL1とした場合に、
0.2<(L1/P1)<0.9の関係式が成立していることを特徴とするものである。
【0008】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に従属する発明であって、隣接する前記第2のレンズ間の配置ピッチをP2とし、前記第2のレンズのレンズ幅をL2とした場合に、
L2=P2の関係式が成立していることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記第1のレンズのレンズ幅をL1とし、前記第1のレンズアレイの最大高さをH1とし、前記第2のレンズのレンズ幅をL2とし、前記第2のレンズアレイの最大高さをH2とした場合に、
0.3<(H1/L1)<2の関係式と、0.3<(H2/L2)<2の関係式が成立していることを特徴とするものである。
【0009】
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記第1のレンズの前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角をθ1とし、前記第2のレンズの前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角をθ2とした場合に、
30°≦θ1≦75°の関係式と、30°≦θ2≦75°の関係式が成立していることを特徴とするものである。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記第1のレンズの前記配列方向と直交する方向から見た断面形状がプリズム形状であり、
前記第1のレンズの頂角θ1aは、前記第1のレンズのレンズ幅L1に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることを特徴とするものである。
【0011】
次に、本発明のうち、請求項8に記載した発明は、請求項1から請求項7のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記第2のレンズの前記配列方向と直交する方向から見た断面形状がプリズム形状であり、
前記第2のレンズの頂角θ2aは、前記第2のレンズのレンズ幅L2に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることを特徴とするものである。
【0012】
次に、本発明のうち、請求項9に記載した発明は、請求項1から請求項8のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記光取出しシートを配置したEL素子を用いて形成した発光手段を備えることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項10に記載した発明は、請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートを配置したEL素子を備えたディスプレイ装置であって、
前記EL素子は、画素駆動されることを特徴とするディスプレイ装置である。
【0013】
次に、本発明のうち、請求項11に記載した発明は、請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートと、画像表示素子と、を備える液晶ディスプレイ装置であって、
前記画像表示素子の背面に、前記光取出しシートを配置したことを特徴とするディスプレイ装置である。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項12に記載した発明は、請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートを配置したEL素子と、画像表示素子と、を備える液晶ディスプレイ装置であって、
前記EL素子は、画素駆動され、
前記画像表示素子の背面に、前記光取出しシートを配置したことを特徴とする液晶ディスプレイ装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のEL素子によれば、第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを交差するように配置し、第1のレンズアレイの最大高さH1と第2のレンズアレイの最大高さH2との比をH2/H1とし、第1のレンズアレイの配置ピッチP1に対する第1のレンズのレンズ幅L1の比をL1/P1とし、第1のレンズのレンズ幅L1及び第2のレンズのレンズ幅L2に対する、前記最大高さH1、H2の比であるH1/L1及びH2/L2を最適化することで、光の外部取出し効率、射出角度による色度座標の変化を改善することが可能となる。
さらに、本発明のEL素子を備える照明装置、ディスプレイ装置及び液晶ディスプレイ装置を用いることで、光の利用効率が高い、意匠性を有する照明装置、ディスプレイ装置及び液晶ディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態における、照明装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】構造層を備えていない構成の照明装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】光取出しシートの構成を示す図である。
【図4】光取出しシートの構成を示す図である。
【図5】本発明の第一実施形態の光取出しシートにおけるレンズアレイの断面形状を、頂角90度の三角プリズム形状としたときの、単位レンズに入射する光の入射角度を変更したときの光線図である。
【図6】本発明の第一実施形態の光取出しシートにおけるレンズアレイの断面形状を、非球面形状としたときの、単位レンズに入射する光の入射角度を変更したときの光線図である。
【図7】光取出しシートに、入射角度を0度から85度まで変化させた光を入射させたときの、入射光量に対する射出光量の割合(光利用効率)を示すグラフである。
【図8】射出光の配光特性図である。
【図9】相対光量及び相対色差を示す図である。
【図10】相対光量及び相対色差を示す図である。
【図11】相対光量及び相対色差を示す図である。
【図12】相対輝度と相対光量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。
(構成)
まず、図1を用いて、本実施形態の加飾フィルムの構成を説明する。
図1は、本実施形態における、照明装置の概略構成を示す断面図である。
図1中に示すように、EL素子101(エレクトロ・ルミネッセンス素子)と、第1の基板1Aと、第2の基板1Bと、発光層2と、陽極3と、陰極4と、光取出しシート7を備えている。なお、図1中では、光取出しシート7において、発光層2が設置されている面と反対側を照射方向Fとする。
【0018】
発光層2は、白色発光層としてもよく、または、青色、赤色、黄色、緑色などの発光層としてもよい。ここで、発光層2を白色発光層とする場合には、この発光層2の構成を、例えば、ITO/CuPc(銅フタロシアニン)/α−NPDにルブレン1%ドープ/ジナクチルアントラセンにペリレン1%ドープ/Alq3/フッ化リチウム/陰極としてAl、という構成とすればよい。
【0019】
また、発光層2の一方の面には、陽極3が形成されており、他方の面には陰極4が形成されている。発光層2は、陽極3と陰極4に電圧を印加することにより発光するものであり、これらの発光層2と陽極3及び陰極4を含んで、発光構造体100が構成されている。発光構造体100としては、従来公知のさまざまな構成が採用可能である。
すなわち、第一実施形態の照明装置は、光取出しシート7を配置したEL素子101を用いて形成した発光手段を備えている。
【0020】
なお、発光構造体100の構成は、この構成に限定されるものではなく、発光層2から射出する光線の波長を、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)とすることが可能な適宜材料を用いた任意の構成を採用することが可能である。また、フルカラーディスプレイ用途で使用する場合には、R、G、Bに対応した3種類の発光材料の塗り分けとすることや、白色光にカラーフィルターを重ねることにより、フルカラー表示が可能となる。
【0021】
第1の基板1Aは、陽極3が発光層2に臨む面と反対側の面とに形成されている。一方、第2の基板1Bは、陰極4が発光層2に臨む面と反対側の面とに形成されている。
すなわち、透光性基板(第1の基板1A、第2の基板1B)は、光源(発光構造体100)からの射出光が一方の面に入射するように形成されている。
第1の基板1A及び第2の基板1Bの材料としては、種々のガラス材料を用いることが可能である。また、第1の基板1A及び第2の基板1Bの材料としては、PMMA、ポリカーボネート、ポリスチレン等のプラスチック材料、あるいはアルミニウムなどの金属材料を用いることも可能であり、更に、その他の様々な材料を用いることが可能であるが、特に好ましいのは、シクロオレフィン系のポリマーであり、このポリマーは、加工性、及び、耐熱、耐水性、光学透光性等の材料特性の全てにおいて優れたものである。
【0022】
また、第1基板1Aは、発光構造体100(発光層2)から射出した光(射出光)をできるだけ透過させることができるように、全光線透過率を50%以上とすることの可能な材料で形成することが好ましい。
光取出しシート7は、第1の基板1Aが陽極3に臨む面と反対側の面に、接着層6を介して設けられている。
【0023】
接着層6を構成する粘・接着剤としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系の粘・接着剤が挙げられる。いずれの場合も、高温である光源に隣接して使用されるため、100℃で貯蔵弾性率G’が1.0E+04(Pa)以上であることが望ましい。この理由は、これよりも値が低いと、使用中に光取出しシート7と第1の基板1Aがずれてしまう可能性があるためである。そして、光取出しシート7と第1の基板1Aが大きくずれてしまうと、光取出しシート7に発光層2からの光が効率よく入射しないため、光の利用効率が低下してしまう。
【0024】
また、安定的に発光層2と光取出しシート7との間隙を確保するために、接着層6を構成する接・粘着剤層の中に、透明の微粒子、例えば、ビーズ等を混ぜても良い。また、接着層6を構成する粘・接着剤は、両面テープ状のものでも良いし、単層のものでもよい。
また、光取出しシート7は、発光層2からの光を偏向して、照射方向Fへ射出して光の外部取り出し効率を向上する機能を有する。
【0025】
また、光取出しシート7は、第1の基板1Aと反対側に臨む表面と、この表面に並べられた構造層5とを有している。
言い換えれば、EL素子101は、基板1Aと、基板1Aの一方の面に設けられ、陽極3と陰極4とに挟まれた発光層2とを備えている。さらに、基板1Aの他方の面に光取出しシート7が設けられ、光取出しシート7は、表面と、この表面に並べられた構造層5とを有している。
【0026】
発光層2から射出した光B0は、図1中に示すように、基板1Aを透過し(光B1)、構造層5に入射し、構造層5に入射した光B1の一部は、構造層5の射出面から外部へ射出される光B2となる。
ここで、図2中に示すように、照明装置の構成が、構造層5がなく平坦面である構成である場合、光B1の大部分は、平坦面で反射して再度発光層2に入射する光B12となる。この光B12は、照射方向Fに偏向されないため、光B12は損失してしまう。このため、EL素子101の光の外部取り出し効率を向上するには、光B12を減少させ、光B1を増加することが重要である。なお、図2は、構造層5を備えていない構成の照明装置の概略構成を示す断面図である。
【0027】
EL素子101において、発光層2から射出した光B0(図1参照)は、射出角度により色味(媒体における微細な色合い)が変化する。ここで、EL素子101の光射出面側に構造層5を設けることにより、発光層2から射出した光B0は、構造層5で偏向され、射出光B2として照射方向Fに射出される。このとき構造層5の形状を変化させて、射出光B2の射出方向を変化させることで、射出角度による色味の変化を抑制することが可能となる。
ここで、光の外部取り出し効率やEL素子の色差を改善する方法として、従来では、プリズムなどの構造を形成する方法や、透明基材にフィラーを塗布して凹凸面を形成した拡散フィルムを設置する方法や、略半球状のマイクロレンズを形成する方法がある。
【0028】
しかしながら、上記のような、プリズムなどの構造を形成する方法では、以下に記載する問題がある。
プリズムなどの直線形状が大部分を形成する構造では、直線形状により傾斜角度が一定となるため、ある特定の角度の光のみ、外部取り出し効率を向上させることが可能となる。しかし、上述した特定の角度以外の光は、光の外部取り出し効率が小さくなり、総合的には、外部取り出し効率小さくなる問題が生じる。また、EL素子101の射出角度による色度座標の変化は、プリズム形状だと傾斜角が一定であり、特定の角度の入射光を特定の角度の射出光へと偏向するため、色度の角度による変化への改善効果は低い。
【0029】
また、上記のような、透明基材にフィラーを塗布して凹凸面を形成した拡散フィルムを設置する方法では、以下に記載する問題がある。
フィラーを塗布して、凹凸面を形成する場合、凹凸面の形状はフィラーの隆起の度合いにより決定されるため、高精度な凹凸面の形成ができない。そのため、凹凸面に光を制御する充分な形状を形成することが出来ないという問題が生じる。これは、例えば、フィラーを隆起することで略半円形状を形成しようとした場合、フィラーの隆起が不十分となり略半球形状の一部分のみが形成される。すなわち、略半球形状の高さと、幅の比をアスペクト比(高さ/幅)とした場合、アスペクト比が小さくなってしまうため、結果として外部取り出し効率が小さくなる問題が生じる。
【0030】
また、上記のような、マイクロレンズを形成する方法では、以下に記載する問題がある。
マイクロレンズは、上述の拡散フィラーと比較して、高精度に成形することが可能であり、アスペクト比を大きくして、略半球形状を成形することが可能である。しかし、EL素子の発光層からの光は等方的であるため、略半球型が好ましいが、略半球型のマイクロレンズでは、面全体を埋めることは出来ず、平坦面が発生する。そして、平坦面が発生すると、図2中に示すように、光B12が発生し、照射方向Fに射出しないため、光の利用効率が低下する。
【0031】
また、六方配置のような最密構造が、最も面全体を埋めることが可能であるが、このような形状を作成する場合、さらに高精度な成形が要求され、マイクロレンズの重なりなどの不具合が発生しやすい。また、隙間が少ない状態でマイクロレンズを成形すると、各マイクロレンズ間のわずかな隙間の距離のズレが、マクロなムラとして見えてしまうので好ましくない。そのため、実質的な面積率は76%前後となる。結果として、約24%は平坦面があるため、光の外部取り出し効率が不十分となる問題が発生する。
【0032】
以上により、EL素子101の光の外部取り出し効率を向上するために、図3中に示す光取出しシート7を、EL素子101の表面に設ける。なお、図3は、光取出しシート7の構成を示す図であり、図3(a)は、光取出しシート7の上方斜視図、図3(b)は、図3(a)のB線矢視図、図3(c)は、図3(a)のC線矢視図である。また、図3(a)は、第1のレンズアレイ40、第2のレンズアレイ50の断面形状を、凸状の非球面レンズ形状とした場合の斜視図である。
【0033】
図3中に示すように、光取出しシート7の構造層5は、光透過性の基材8の一方の面、即ち照射方向Fの面(この面を表面と定義)8aに、第1のレンズアレイ40として、一方向に沿って延在し且つ隣接する第一レンズとの間に平坦面を有しながら、互いに離間し且つ平行に配列された第1のレンズアレイ40を備えている。また、構造層5は、第1のレンズアレイ40の平坦面を占有するように、第1のレンズアレイ40と交差する方向に沿って、互いが隣接し且つ平行に配列された複数の第2のレンズを備えた第2のレンズアレイ50が形成されている。なお、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50は、基材8上に別体として配置したものであってもよいし、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50を、基材8を一体成型したものであってもよい。
【0034】
また、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイとしては、例えば、断面が凸状のレンズまたは三角プリズム形状などを用いることも可能である。
なお、第1のレンズアレイ40が備える複数の第1レンズは、一方向に沿って延在し且つ平行に配列されている構成であってもよい。
また、第2のレンズアレイ50が備える複数の第2のレンズは、第1のレンズアレイ40と交差する方向に沿って、互いが隣接し且つ平行に配列されている構成であってもよい。
【0035】
また、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50は、互いに交差するように配列する。
この理由を、以下に記載する。
第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50が、互いに交差することなく一方向に延在する帯状を呈した場合、延在する一方向に関しては、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50は傾斜角を有していない、すなわち、平面状の効果と同等となり、図2中に示す光B12のように、外部に取り出すことが出来ない光となるため、光の外部取り出し効率が小さくなる課題が生じる。
【0036】
そのため、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50は、断面が凸状のレンズまたはプリズム形状を形成し、一方向に延在する帯状を呈し、この帯状の凸状のレンズまたはプリズム形状が、互いに交差するように配列することで、2次元方向に対して、傾斜角を設けることが可能となるため、光の取出し効率が大きくなり好適である。
さらに、上述のように配列することで、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50が照射方向Fに射出する光の配光分布を、2次元方向に調整することが可能となる。そのため、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50を任意の形状にすることで、射出光を対称な配光分布にすることが可能となる、あるいは、射出角度による色差を改善することが可能となるため好適である。
【0037】
また、EL素子101を照明用途として用いる場合は、少なくとも2次元的に配光分布を調整する必要がある。
その理由として、例えば、照明装置の設置場所によっては、ある特定方向には、照射する必要がなく、広い配光分布ではなく正面方向の輝度向上を要求することがある。
または、構造層5に入射する光B1が、非対称な配光分布になる場合であり、かつ照明装置から射出される光の配光分布が、対称な配光分布であることが要求される場合、照明装置から射出される光の配光分布を、1次元方向のみの調整で対称な配光分布にすることは困難であるため、2次元方向の調整が可能である、本実施形態の構成が好適である。
【0038】
また、本実施形態の構成のように、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50を略直行して配列した形状では、光を2次元的に広げるために、新たにレンズシートを追加することなく、適切な配光分布に調整することが可能となり、照明装置の軽量化、薄型化、低コスト化を図ることも可能である。
特に、発光層2から射出される光は、配光分布が広いブロードな指向性を有する光である。そのため、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50は、上述の広い配光分布を、照射方向Fに偏向するように設計することが好適である。
【0039】
第1のレンズアレイ40は、基材8の表面8aに接触する第一レンズのレンズ幅をL1とし、表面8aから頂部までの最大高さをH1とし、第1のレンズアレイ40の頂点間の距離(第1のレンズ間の配置ピッチ)をP1とし、最大傾斜角をθ1とする。ここで、最大傾斜角θ1は、第1のレンズの、光取出しシート7の透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角である。
【0040】
また、第2のレンズアレイ50は、表面8aに接触する底部の幅(第2のレンズのレンズ幅)をL2とし、表面8aから頂部までの最大高さをH2とし、第2のレンズアレイ50の頂点間の距離(第2のレンズ間の配置ピッチ)をP2とし、最大傾斜角をθ2とする。ここで、最大傾斜角θ2は、第2のレンズの、光取出しシート7の透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角である。
ここで、第一実施形態では、第2のレンズ間の配置ピッチP2と、第2のレンズのレンズ幅L2が等しい。すなわち、第一実施形態では、L2=P2の関係式が成立している。
また、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50の形状は、同じでも良いし、異なっていても良い。ここで、直交する第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50の形状を異なる形状にすることにより、構造層5に入射した光B1が照射方向Fへ射出する際に、光の配向分布を2次元に調整することが可能となる。
【0041】
さらに、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状は、三角形状以外にも、多角形状、完全な半円形状(球面レンズ)、半楕円形(楕円面レンズ)や放物線形(放物面レンズ)などの非半円形状(いわゆる2次の非球面形状)のもの、さらには、2次以降の項を有する高次非球面形状のもの、高次非球面形状と多角形形状を組み合わせたものでもよく、その組み合わせ方は自由である。なお、図4は、光取出しシート7の構成を示す図であり、図4(a)は、光取出しシート7の上方斜視図、図4(b)は、図4(a)のB線矢視図、図4(c)は、図4(a)のC線矢視図である。また、図4(a)は、第1のレンズアレイ40、第2のレンズアレイ50の断面形状を、三角形状とし、第1のレンズアレイ40の頂角θ1a及び第2のレンズアレイ50の頂角θ2aに曲面形状を形成したときの斜視図である。
【0042】
ここで、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を、多角形状もしくは非球面形状にすることにより、レンズ側面の適切な傾きをもった面積を調整することができるため、より高次に射出光の光線方向を調整することが可能となる。
また、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を、レンズ側面の傾きを複数有する形状にすることにより、光取出しシート7からの射出角度がレンズ側面の傾きにより変化するため、射出光の色の角度依存性を制御することが可能となる。
【0043】
さらには、レンズ頂点に曲面を有するレンズ形状にすることにより、耐擦性の向上が見込まれる。
本実施形態の光取出しシート7は、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50との、2種類のレンズ形状が構造体5に存在するため、頂角90度の三角プリズムをクロスで配置したクロスプリズム形状よりも、光の利用効率及び射出角度による色差を改善することが可能である。
【0044】
図5中に、本実施形態の光取出しシート7におけるレンズアレイの断面形状を、頂角90度の三角プリズム形状としたときの、単位レンズに入射する光の入射角度を変更したときの光線図を示す。なお、図5(a)は、単位レンズに入射する光の入射角度が10度のときの光線図であり、図5(b)は、単位レンズに入射する光の入射角度が30度のときの光線図であり、図5(c)は、単位レンズに入射する光の入射角度が50度のときの光線図である。
【0045】
また、図6中に、本発明の光取出しシート7におけるレンズアレイの断面形状を、非球面形状としたときの、単位レンズに入射する光の入射角度を変更したときの光線図を示す。なお、図6(a)は、単位レンズに入射する光の入射角度が10度のときの光線図であり、図6(b)は、単位レンズに入射する光の入射角度が30度のときの光線図であり、図6(c)は、単位レンズに入射する光の入射角度が50度のときの光線図である。
図5中に示すように、レンズアレイの断面形状が三角プリズム形状である場合、入射光の角度によらず、射出光は、ほぼ直線的に進行する。なお、図5中では、光(入射光及び射出光のうち少なくとも一方)を、符号501、502、503を付して示している。
【0046】
一方、図6中に示すように、レンズアレイの断面形状が非球面レンズ形状である場合、入射光の角度により、射出光は、広角領域に進行するか、複数の射出角度に狭角的に進行するか、その射出光の振る舞いは多種多様である。なお、図6中では、光(入射光及び射出光のうち少なくとも一方)を、符号601、602、603を付して示している。
また、EL素子101から発光する光が、射出角度により異なる発光分布を有する場合、照射方向F側からEL素子101を観察すると、視野角度により色差が変化するという問題がある。
これに対し、本実施形態の光取出しシート7であれば、EL素子101から発光される光の射出角度により、レンズアレイの断面形状におけるレンズの傾斜角を最適化することにより、色の角度依存性の小さいEL素子を作製することが可能となる。
【0047】
図7は、光取出しシート7に、入射角度を0度から85度まで変化させた光を入射させたときの、入射光量に対する射出光量の割合(光利用効率)を示すグラフである。図7中において、横軸は、単位レンズの入射面に入射する光の入射角度である。また、図7中において、縦軸は、光利用効率であり、単位レンズに入射する光の強度を100%としたとき、単位レンズの射出面から射出される光の割合である。なお、図7中においては、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を90度プリズム形状にしたときの光の利用効率をAと記載し、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を非球面レンズ形状にしたときの光の利用効率をBと記載した。
【0048】
第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を、頂角90度のプリズム形状にした場合、入射角度0度付近の光は全反射されて正面方向に射出せず、入射角度30度から60度の範囲の光利用効率が高く、入射角度30度付近の光は正面方向へ偏向されるため、集光効果の高い光取出しシート7となる。
一方、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を、非球面レンズ形状にした場合、入射角度0度から30度領域の光の利用効率が高く、入射角度0度付近の光は拡散されて正面方向へ射出されるため、上記の三角プリズム形状と比較すると、拡散性の高い光取出しシート7となる。
【0049】
したがって、光取出しシート7に入射する光B1の入射光の配光特性に合わせて、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を最適化することにより、EL素子の発光効率は向上する。例えば、入射光B1が30度から60度の領域の光量が多い配光特性であれば、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状は、頂角90度のプリズム形状が高効率となり、入射光B1が0度から30度の領域の光量が多い配光特性であれば、レンズアレイの断面形状は非球面レンズ形状である方が高効率となる。
【0050】
また、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2との比H2/H1は、1未満とする。すなわち、第2のレンズアレイ50の最大高さH2は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1よりも低い。
これは、以下に記載する理由による。
上記の比H2/H1が1であると、光取出しシート7を作製するための金型及びシートを作製する際の精度が、非常に難易度が高くなる。このため、高さの精度が高い方向もしくは低い方向に少しでも変位する(ずれる)と、第1のレンズアレイ40の最大高さH1が、第2のレンズアレイ50の最大高さH2より高い部分と、低い部分が光取出しシート7の面内に混在することにより、視認性が低下する。
【0051】
さらに、上記の比H2/H1が1よりも大きいと、複数の第2のレンズが隣接して密に配列された第2のレンズアレイ50の最大高さH2が、複数の第1のレンズが疎に配列された第1のレンズアレイ40の最大高さH1より高位となり、第2のレンズアレイ50が光取出しシート7の最表層に位置するため、耐擦性が低下し好ましくない。
第1のレンズアレイ40の最大高さH1、または、第2のレンズアレイ50の最大高さH2が0.300mmよりも大きくなると、レンズ(第一のレンズ、第二のレンズ)の形状が目視で観測されるため、好ましくない。さらに、上記の最大高さH1または最大高さH2が0.030mmよりも小さくなると、回折光が発生して、レンズとしての効果が低減するため、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2の比H2/H1は、0.01より大きいことが望ましい。
すなわち、0.01<(H2/H1)<1の関係式が成立していることが望ましい。
【0052】
図8は、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対する第1のレンズのレンズ幅L1の比率L1/P1と、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2の比H2/H1を、それぞれ、設定した値としたときの射出光の配光特性図である。なお、図8(a)は、上記の比率L1/P1を1とし、上記の比H2/H1を0.5としたときの射出光の配光特性図であり、図8(b)は、上記の比率L1/P1を0.6とし、上記の比H2/H1を0.5としたときの射出光の配光特性図である。また、図8(c)は、上記の比率L1/P1を0.4とし、上記の比H2/H1を0.5としたときの射出光の配光特性図である。ここで、図8中では、第1のレンズアレイ40の延在方向の配光特性を0degとし、第1のレンズアレイ40の延在方向と直交する方向の配光特性を90degとし、斜め方向の配光特性を45degとした。
【0053】
通常、断面形状が非球面形状や三角プリズム形状であるレンズアレイを、対外に直交する方向に配列した場合、射出される光B2は、0deg方向、45deg方向、90deg方向で、それぞれ、光の集光特性が異なるため、射出面F側から観測した際、方位角での射出光の配光特性が異なる。
これは、例えば、上記の比H2/H1を0.5とし、上記の比率L1/P1の値を1とした場合、光取出しシート7における第1のレンズアレイ40のレンズの支配率が大きくなるため、第1のレンズアレイ40の延在方向と直交する方向、すなわち、0deg方向の射出光の集光効果が大きくなる(図8(a)参照)。
【0054】
一方、上記の比率L1/P1の値が小さくなるにつれて、光取出しシート7における第2のレンズアレイ50のレンズ効果が大きくなるため、第2のレンズアレイ50の延在方向と直交する方向、すなわち、90deg方向の射出光の集光効果が大きくなる(図8(c)参照)。
本実施形態の光取出しシート7は、上記の比率L1/P1と上記の比H2/H1を任意の値に最適化することにより、光取出しシート7における第1のレンズアレイ40のレンズ効果と第2のレンズアレイ50のレンズ効果を制御することが可能となるため、射出方向Fから観測した場合の、方位角方向での射出光の配光特性を制御することが可能となる(図8(b)参照)。
【0055】
図9は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2の比H2/H1を0.5とし、第1のレンズアレイ40のレンズ幅L1及び第2のレンズアレイ50のレンズ幅L2に対する、最大高さの比H1/L1とH2/L2を、それぞれ、0.7とし、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の最大傾斜角度θ1、θ2を、それぞれ70度とし、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対する第1のレンズのレンズ幅L1の比率L1/P1を0から1まで変化させたときの、相対光量及び相対色差を示す図である。
【0056】
図9(a)中において、横軸は、配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比L1/P1を示し、縦軸は、上記の比L1/P1を変化させたときの相対光量を示している。
ここで、相対光量とは、EL素子101に頂角が90度のクロスプリズム形状をした光取り出しフィルムを使用したときに、入射した光B1が、照射方向Fに射出した光の積算光量を1としたときの値である。
【0057】
また、図9(b)中において、横軸は、配置ピッチP1に対するレンズ幅の比L1/P1を示し、縦軸は、光取出しシート7を使用しないときの、測定視野が0度から80度の範囲における、色度座標(u’、v’)の最大変化量を1.00としたときの相対色差である。
図9中に示すように、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比率L1/P1が大きくなるに従い、相対光量が上昇して上記の比L1/P1が0.5のとき最大となり、相対色差は減少して上記の比L1/P1が0.4のとき最小となる。
【0058】
これは、上記の比L1/P1が1のとき、すなわち、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1とレンズ幅L1が同じであるとき、第1のレンズアレイ40は、連続して密に配列されており、第2のレンズアレイ50を第1のレンズアレイ40と交差する方向に配列しても、第2のレンズアレイ50が光取出しシート7を占有する割合が小さいため、入射光B1に対し、第1のレンズアレイ40が延在する方向のレンズ効果が低いため、相対光量が減少し、また色差の改善効果も小さいためである。
【0059】
一方、上記の比L1/P1の値を小さくすると、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1が小さくなり、第1のレンズアレイ40における凸部が一定間隔を空けて配列されているため、第2のレンズアレイ50を第1のレンズアレイ40と交差する方向に配列すると、光取出しシート7を占有する第2のレンズアレイ50の割合が上昇し、入射光B1に対する第2のレンズアレイ50のレンズ効果が大きくなるため、相対光量は上昇して色差は改善する。
【0060】
さらに、上記の比L1/P1の値を小さくしていくと、第1のレンズアレイ40のレンズ効果が減少するため、相対光量が低下して色差は悪化する。
以上の理由から、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比率L1/P1は、0から1の間で変化させることにより積算光量は上昇し、色差は改善するが、好ましくは、積算光量の最大値からの減少率が2%以内である0.2<(L1/P1)<0.9の範囲内であることが望ましい。
また、積算光量の上昇率は高い方が好ましいため、より好ましくは、積算光量の最大値からの減少率が1%以内である0.35<L1/P1<0.75であることが望ましい。
【0061】
図10は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2の比H2/H1を0.5とし、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比L1/P1を0.4とし、第1のレンズアレイ40の最大傾斜角度θ1及び第2のレンズアレイ50の最大傾斜角度θ2を、それぞれ70度とし、第1のレンズのレンズ幅L1に対する最大高さH1の比H1/L1、及び第2のレンズのレンズ幅L2に対する最大高さH2の比H2/L2を変化させたときの、相対光量及び相対色差を示す図である。
【0062】
図10(a)中において、横軸は、レンズ幅L(L1、L2)に対する最大高さH(H1、H2)の比H/Lを示し、縦軸は、相対光量を示している。
ここで、相対光量とは、EL素子101に頂角が90度のクロスプリズム形状をした光取り出しフィルムを使用したときに、入射した光B1が、照射方向Fに射出した光の積算光量を1としたときの値である。
【0063】
また、図10(b)中において、横軸は、レンズ幅L(L1、L2)に対する最大高さH(H1、H2)の比H/Lを示し、縦軸は、光取出しシート7を使用しないときの、測定視野0度から80度の範囲における色度座標(u’、v’)の最大変化量を1.00としたときの相対色差を示している。
図10中に示すように、上記の比H/Lが大きくなるに従って、相対光量は上昇し、相対色差は小さくなるので、上記の比H/Lは大きい方が好ましいが、色差の変化量が20%以上改善するとともに、上記の比H/Lが大きくなると、光取出しシート7の作製が困難となる。このため、より好ましくは、0.3<H/L<2の範囲内であることが望ましい。
【0064】
すなわち、0.3<H1/L1<2の関係式と、0.3<H2/L2<2の関係式が成立していることが望ましい。
ここで、照明装置として用いた場合、色度の視野角度によるズレは小さい方が好ましく、より好ましくは、色差の変化量が40%以上改善しているとともに、上記の比H/Lの増加率に対する相対色差の改善効果は、H/Lが大きくなるほど減少し、H/Lが1.6より大きくなるとほぼ一定の値となるため、0.7<H/L<1.6の範囲内であることが望ましい。
【0065】
図11は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2の比H2/H1を0.5とし、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比L1/P1を0.4とし、第1のレンズアレイ40の最大傾斜角度θ1及び第2のレンズアレイ50の最大傾斜角度θ2を変化させたときの、相対光量及び相対色差を示す図である。
【0066】
図11中において、横軸は、第1のレンズアレイ40における最大傾斜角θ1及び第2のレンズアレイ50の最大傾斜角θ2を示し、縦軸は、光取出しシート7を使用しないときの、測定視野0度から80度の範囲における色度座標(u’、v’)の最大変化量を1.00としたときの相対色差を示している。
図11中に示すように、最大傾斜角θ(θ1、θ2)が大きくなるに従い、相対色差が小さくなるので、最大傾斜角θは大きい方が望ましいが、相対色差の改善率が20%以上であるとともに、最大傾斜角θが大きくなると、光取出しシート7の作製が困難である。
このため、より好ましくは、30度≦θ1≦75度の範囲内であるとともに、30度≦θ2≦75度の範囲内であることが望ましい。
【0067】
すなわち、30°≦θ1≦75°の関係式と、30°≦θ2≦75°の関係式が成立していることが望ましい。
ここで、照明装置として用いた場合、色度の視野角度によるズレは小さい方が好ましく、より好ましくは、色差の変化量が40%以上改善する、50度≦θ1≦75度、50度≦θ2≦75度の範囲内であることが望ましい。
図12は、第1のレンズアレイ40の断面形状がプリズム形状である場合に、頂角θ1aに曲率形状を付与したとき、または、第2のレンズアレイ50の断面形状がプリズム形状である場合、頂角θ1aに曲率形状を付与したときの、相対輝度と相対光量を示した図である。
【0068】
図12中において、横軸は、レンズアレイにおけるレンズ幅L1、L2に対する曲率の割合を示し、縦軸は、相対光量(図12(a))と相対輝度(図12(b))を示している。ここで、相対輝度と相対光量は、頂角θ1a、θ2aに曲率形状を付与していないときの輝度と光量を1.00としたときの値である。
図12(a)中に示すように、レンズ幅L1、L2に対する頂角の曲率の割合を増加させるに従い、相対光量は上昇し、レンズ幅L1、L2に対し曲率を40%形成したときに最大となり、さらに曲率を上昇させると効率は減少する。これは、曲率を付与していないと三角プリズムの傾斜面で全反射されていた光線が、頂角に曲率を付与することにより透過光量が増加するためである。
【0069】
また、図12(b)中に示すように、レンズ幅L1、L2に対する頂角の曲率の割合を増加させると、相対輝度は減少する。
以上により、相対光量が上昇しても、相対輝度が減少すると視認性が低下するため、レンズ幅L1、L2に対する曲率の割合は、相対輝度が10%低下する、0%以上50%以下の範囲内であることが好適である。
【0070】
すなわち、第1のレンズの頂角θ1aは、第1のレンズのレンズ幅L1に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることが好適である。
同様に、第2のレンズの頂角θ2aは、第2のレンズのレンズ幅L2に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることが好適である。
なお、光取出しシート7の基材表面8aに第1のレンズアレイ40の最大高さH1より高いレンズ高さを有するマイクロレンズアレイを形成していてもよい。
【0071】
この場合、上記のようなマイクロレンズアレイを形成することにより、光取出しシート7における最も高さの高い位置がマイクロレンズ形状となるため、障害物と接触する際に点接触となり、耐擦性が向上する。
光取出しシート7を成型する材料としては、発光層2から射出される光の波長に対して光透過性を有するものを用いることが可能であり、例えば、光学用部材に使用可能なプラスチック材料を用いることが可能である。
【0072】
このような材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネ−ト樹脂、ポリスチレン樹脂、MS(アクリルとスチレンの共重合体)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂、あるいは、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー又はアクリレート系等からなる放射線硬化性樹脂などの透明樹脂が挙げられる。
【0073】
また、用途により、上記の透明樹脂中に微粒子を分散させて使用してもよい。この場合、透明樹脂中に微粒子を分散させることにより、光取出しシート7に入射した光が照射方向Fに射出する際に、より拡散性が上昇するため、色度の視野角度による変化を改善することが可能であり、また、照明装置として使用した際、欠陥が観測されにくくなる利点がある。
【0074】
上記の微粒子としては、無機酸化物からなる粒子又は樹脂からなる粒子を用いることが可能である。この場合、例えば、無機酸化物からなる透明粒子としては、シリカやアルミナ、酸化チタン等からなる粒子を挙げることができる。また、樹脂からなる透明粒子としては、アクリル粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体、メラミン一ホルマリン縮合物の粒子、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン一ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリフルオロビニリデン)、及びETFE(エチレン一テトラフルオロエチレン共重合体)等の含フッ素ポリマー粒子、シリコーン樹脂粒子等を挙げることができる。これらの微粒子は、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0075】
そして、光取出しシート7は、上記のような材料を金型に流し込み凝固されることで成型される。
このような金型の作製方法としては、金型に対して、各種レンズ形状を有する切削工具を用いて切削し、断面形状が第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の凹凸部に対応した形状となる部分を作製する。
【0076】
また、このような金型で光取出しシート7を作製する方法の他、第1のレンズアレイ40の凹凸部や、第2のレンズアレイ50の凹凸部、基材8の形成方法としては、熱可塑性樹脂や紫外線硬化性樹脂と上記の形状が賦形した金型を用いて、押出し成形や射出成形、UV成形法などで成形することが可能である。この際、第1のレンズアレイ40の凹凸部や、第2のレンズアレイ50の凹凸部及び基材8を、別体として成形してもよいし、一体品として成形(一体成形)してもよい。また、第1のレンズアレイ40の凹凸部や、第2のレンズアレイ50及び基材8を成形する場合には、内部にフィラーなど拡散剤を分散させて成形することも可能である。
【0077】
また、帯電防止剤として、導電性微粒子のアンチモン含有酸化スズ(以下、ATO)や、スズ含有酸化インジウム(ITO)等の超微粒子を分散させてもよい。この場合、帯電防止剤を分散することで、光取出しシート7の防汚性を向上することが可能となる。
また、UV成形法のような、構造層5が基材8を別体にて成形する場合は、基材8としては、透明なフィルムであり、セルローストリアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタアクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂の延伸又は未延伸フィルムを使用することが可能である。
【0078】
また、基材8の厚みは、基材8がもつ剛性にもよるが、50μm以上300μm以下の範囲内とすることが、加工性等の取扱い面から見て好ましい。
また、構造層5が基材8と強固に接着しない場合や、寒熱、吸脱湿等の外的影響で接着力が低下したりするときは、構造層5と基材8との間に、両材料に対して接着性の高いプライマ層を設けてもよいし、構造層5にプライマ層の作用を付加してもよい。あるいは、コロナ放電処理等の易接着処理を施してもよい。
以上、光取出しシート7についての代表的な例を説明してきたが、本実施形態の光学特性を達成することが可能であれば、上記以外の材料や構造、プロセスなどを使用して、光取出しシート7を作製することも可能である。
【0079】
(ディスプレイ装置)
第一実施形態の照明装置を用いて形成したディスプレイ装置の構成としては、例えば、第一実施形態の照明装置が備える光取出しシート7を配置したEL素子101を備え、EL素子101が、画素駆動される構成としてもよい。
また、第一実施形態の照明装置を用いて形成したディスプレイ装置の構成としては、例えば、第一実施形態の照明装置が備える光取出しシート7と、画像表示素子を備え、画像表示素子の背面に、光取出しシート7を配置した構成としてもよい。
また、第一実施形態の照明装置を用いて形成したディスプレイ装置の構成としては、例えば、第一実施形態の照明装置が備える光取出しシート7を配置したEL素子101と、画像表示素子を備え、EL素子101が画素駆動されるとともに、画像表示素子の背面に、光取出しシート7を配置した構成としてもよい。
【0080】
(実施例)
以下、図1から図12を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。具体的には、二種類の比較例(比較例1、2)サンプルと、11種類の本発明例サンプルを作製し、これらの物性を比較した結果を説明する。なお、本発明例サンプルの構成は、上述した第一実施形態の構成と同様の構成を含んでいる。
【0081】
(比較例1)
比較例1としては、EL素子101のガラス表面に光取出しシート7を貼らない構成のサンプルを用いた。
(比較例2)
比較例2のサンプルは、以下の手順で作製した。
まず、光取出しシート7として、厚さ188μmの透明PET基材上に、屈折率1.50のUV硬化性アクリル系樹脂を塗布し、頂角が90度のクロスプリズム形状が切削されているシリンダー金型を使用して、紫外線硬化型樹脂が塗布されたフィルムを搬送しながらUV光を透明PET側から露光することにより、UV硬化型樹脂を硬化させた。さらに、硬化後のUV硬化型樹脂を、透明PETフィルムから金型を剥離することにより、光取出しシート7を作製した。
【0082】
上記のようにして得られた光取出しシート7を、粘着剤を介して、第一実施形態のEL素子101に貼合することにより、比較例2のサンプルを作製した。
このとき、第一のレンズアレイ40のレンズ形状の構成は、配置ピッチが140μmである、凸状のシリンドリカル形状であり、第二のレンズアレイ50のレンズ形状の構成は、配置ピッチが30μmである、頂角が90度の三角プリズムである。
【0083】
(本発明例)
本発明例のサンプルは、以下の手順で作製した。
まず、厚さが188μmの透明PET基材上に、構造層5のパターンを形成する屈折率1.50のUV硬化性アクリル系樹脂を塗布し、構造層5の形状に切削したシリンダー金型を使用して、紫外線硬化型樹脂が塗布されたフィルムを搬送しながらUV光を透明PET側から露光することにより、UV硬化型樹脂を硬化させた。さらに、硬化後のUV硬化型樹脂を、透明PETフィルムから金型を剥離することにより、光取出しシート7を作製した。
上記のようにして得られた光取出しシート7を、粘着剤を介して、上述した第一実施形態のEL素子101に貼合することにより、本発明例のサンプルを11種類作製した。
【0084】
以下、11種類の本発明例は、それぞれ、下記のパラメータにより作製した。
(本発明例1)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.070mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.400mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.035mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
【0085】
(本発明例2)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.070mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.200mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.035mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
【0086】
(本発明例3)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.070mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.111mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.035mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
そして、本発明例1〜3の各光取出しシート7を、それぞれ、第一実施形態のEL素子101に配置して、積算光量を測定した。その結果を、以下の表1に示す。ここで、表1中に示す相対光量とは、比較例2における積算光量を1.00としたときの値である。
【0087】
【表1】
【0088】
表1中に示すように、レンズアレイにおけるL1/P1の値を0.25から0.90の範囲にすることにより、相対光量が上昇することが明らかである。
【0089】
(本発明例4)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.030mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.150mm、最大傾斜角θ1を55度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.015mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.500mm、最大傾斜角θ2を55度とした。
【0090】
(本発明例5)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.100mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を75度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.050mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を75度とした。
そして、本発明例4、5の各光取出しシート7を、それぞれ、第一実施形態のEL素子101に配置し、色度を測定した。その結果を、表2中に示す。ここで、表2中に示す相対色差とは、比較例1における色差を1.00としたときの値である。
【0091】
【表2】
【0092】
表2中に示すように、レンズ幅Lに対する最大高さHの比H/Lを、0.30以下にすることにより、比較例1、すなわち、第一実施形態の光取出しシート7を用いないときと比較して、色差が20%以上改善することが明らかである。
【0093】
(本発明例6)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.023mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を25度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.012mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を25度とした。
【0094】
(本発明例7)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.029mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を30度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.014mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を30度とした。
【0095】
(本発明例8)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.137mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.068mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
そして、本発明例6〜8の各光取出しシート7を、それぞれ、第一実施形態のEL素子101に配置して、色度を測定した。その結果を表3中に示す。ここで、表3中に示す相対色差とは、比較例1における色差を1.00としたときの値である。
【0096】
【表3】
【0097】
表3中に示すように、レンズの最大傾斜角θ(θ1、θ2)を30度以上とすることにより、比較例1、すなわち、第一実施形態の光取出しシート7を用いないときと比較して、色差が20%以上改善することが明らかである。
【0098】
(本発明例9)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.087mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.043mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
また、第1のレンズアレイ40の頂角θ1aへ、レンズ幅L1に対する0%の曲率を付与し、第2のレンズアレイ50の頂角θ2aへ、レンズ幅L2に対する0%の曲率を付与した。
【0099】
(本発明例10)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.087mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.043mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
また、第1のレンズアレイ40の頂角θ1aへ、レンズ幅L1に対する50%の曲率を付与し、第2のレンズアレイ50の頂角θ2aへ、レンズ幅L2に対する50%の曲率を付与した。
【0100】
(本発明例11)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.087mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.043mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
【0101】
また、第1のレンズアレイ40の頂角θ1aへ、レンズ幅L1に対する60%の曲率を付与し、第2のレンズアレイ50の頂角θ2aへ、レンズ幅L2に対する60%の曲率を付与した。
そして、本発明例9〜11の各光取出しシート7を、それぞれ、第一実施形態のEL素子101に配置して、その輝度を測定した。その結果を表4中に示す。ここで、表4中に示す相対光量及び相対輝度とは、本発明例9における輝度を1.00としたときの値である。
【0102】
【表4】
【0103】
表4中に示すように、レンズの頂角に曲率を付与することにより、相対光量は増加するが、相対輝度は減少する。したがって、相対光量が増加していても、相対輝度が10%以上低下すると視認性が低下することを確認した。
【符号の説明】
【0104】
1A 基板(透光性基板)
1B 基板(透光性基板)
2 発光層
3 陽極
4 陰極
5 構造層
6 接着層
7 光取出しシート
8 基材
8a 基材表面
8b 基材裏面
40 第1のレンズアレイ
50 第2のレンズアレイ
100 発光構造体
101 EL素子
B0、B1、B2、B12 光
501,502,503,601、602、603 光
P1 第1のレンズアレイの配置ピッチ
P2 第2のレンズアレイの配置ピッチ
L1 第1のレンズアレイのレンズ幅
L2 第2のレンズアレイのレンズ幅
H1 第1のレンズアレイの最大高さ
H2 第2のレンズアレイの最大高さ
θ1 第1のレンズアレイの最大傾斜角
θ1a 第1のレンズアレイの頂角
θ2 第2のレンズアレイの最大傾斜角
θ2a 第2のレンズアレイの頂角
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、フラットパネルディスプレイ、液晶用バックライト、照明用光源、電飾、サイン用光源等に用いられる、EL素子(エレクトロ・ルミネッセンス素子)と光取出しシートを備えた照明装置、及びこの照明装置を用いた表示装置、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機ELは、透光性基板上において、蛍光有機化合物を含む発光層を、陽極と陰極で挟んだ構造を有している。そして、陽極と陰極に直流電圧を印加し、発光層に電子及び正孔を注入して再結合させることにより励起子を生成し、この励起子の失活する際の光の放出を利用して、発光に至る。
従来では、これらのEL素子において、発光層から射出した光線が、透光性基板から射出する際に、透光性基板上において全反射し、光線がロスするという問題があった。なお、このときの光の外部取り出し効率は、一般に20[%]程度と言われている。そのため、高輝度が必要となればなるほど、より多くの投入電力が必要となるという問題があり、また、この場合、素子に及ぼす負荷が増大し、素子自体の信頼性を低下させるという問題がある。
【0003】
このような光の外部取り出し効率を向上させる目的で、素子基板に微細な凹凸を形成し、全反射によりロスしている光線を外部に取り出す技術が提案されている。この技術は、例えば、特許文献1に記載されているように、透光性基板の一方の面に、複数のマイクロレンズエレメントを平面的に配列して成るマイクロレンズアレイを形成する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−260845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術では、光取り出し効率の向上を図る上でも、射出光の射出角度による色度変化を抑制する上でも、十分なものとはいえなかった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、光取り出し効率の最適化を行って光取り出し効率の向上が可能であるとともに、射出光の射出角度による色度座標の変化を改善する上で有利な、EL素子、照明装置、ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、光源と、
前記光源からの射出光が一方の面に入射する透光性基板と、
前記透光性基板の前記光源からの射出光が入射する面とは反対側の面に設けられた光取出しシートと、を備え、
前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面とは反対側の面上に、互いに離間し且つ平行に配列された複数の第1レンズを備えた第1のレンズアレイと、互いに隣接し且つ平行に配列された複数の第2レンズを備えた第2のレンズアレイと、が形成され、
前記複数の第1レンズは、一方向に沿って延在し且つ平行に配列され、
前記複数の第2レンズは、前記第1のレンズアレイと交差する方向に沿って、互いが隣接し且つ平行に配列され、
前記第2のレンズアレイの最大高さは、前記第1のレンズアレイの最大高さよりも低いことを特徴とするものである。
【0007】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に従属する発明であって、前記第1のレンズアレイの最大高さをH1とし、前記第2のレンズアレイの最大高さをH2とした場合に、
0.01<(H2/H1)<1の関係式が成立していることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に従属する発明であって、隣接する前記第1レンズ間の配置ピッチをP1とし、前記第1レンズのレンズ幅をL1とした場合に、
0.2<(L1/P1)<0.9の関係式が成立していることを特徴とするものである。
【0008】
次に、本発明のうち、請求項4に記載した発明は、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に従属する発明であって、隣接する前記第2のレンズ間の配置ピッチをP2とし、前記第2のレンズのレンズ幅をL2とした場合に、
L2=P2の関係式が成立していることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項5に記載した発明は、請求項1から請求項4のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記第1のレンズのレンズ幅をL1とし、前記第1のレンズアレイの最大高さをH1とし、前記第2のレンズのレンズ幅をL2とし、前記第2のレンズアレイの最大高さをH2とした場合に、
0.3<(H1/L1)<2の関係式と、0.3<(H2/L2)<2の関係式が成立していることを特徴とするものである。
【0009】
次に、本発明のうち、請求項6に記載した発明は、請求項1から請求項5のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記第1のレンズの前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角をθ1とし、前記第2のレンズの前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角をθ2とした場合に、
30°≦θ1≦75°の関係式と、30°≦θ2≦75°の関係式が成立していることを特徴とするものである。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項7に記載した発明は、請求項1から請求項6のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記第1のレンズの前記配列方向と直交する方向から見た断面形状がプリズム形状であり、
前記第1のレンズの頂角θ1aは、前記第1のレンズのレンズ幅L1に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることを特徴とするものである。
【0011】
次に、本発明のうち、請求項8に記載した発明は、請求項1から請求項7のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記第2のレンズの前記配列方向と直交する方向から見た断面形状がプリズム形状であり、
前記第2のレンズの頂角θ2aは、前記第2のレンズのレンズ幅L2に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることを特徴とするものである。
【0012】
次に、本発明のうち、請求項9に記載した発明は、請求項1から請求項8のうちいずれか1項に従属する発明であって、前記光取出しシートを配置したEL素子を用いて形成した発光手段を備えることを特徴とするものである。
次に、本発明のうち、請求項10に記載した発明は、請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートを配置したEL素子を備えたディスプレイ装置であって、
前記EL素子は、画素駆動されることを特徴とするディスプレイ装置である。
【0013】
次に、本発明のうち、請求項11に記載した発明は、請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートと、画像表示素子と、を備える液晶ディスプレイ装置であって、
前記画像表示素子の背面に、前記光取出しシートを配置したことを特徴とするディスプレイ装置である。
【0014】
次に、本発明のうち、請求項12に記載した発明は、請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートを配置したEL素子と、画像表示素子と、を備える液晶ディスプレイ装置であって、
前記EL素子は、画素駆動され、
前記画像表示素子の背面に、前記光取出しシートを配置したことを特徴とする液晶ディスプレイ装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のEL素子によれば、第1のレンズアレイと第2のレンズアレイとを交差するように配置し、第1のレンズアレイの最大高さH1と第2のレンズアレイの最大高さH2との比をH2/H1とし、第1のレンズアレイの配置ピッチP1に対する第1のレンズのレンズ幅L1の比をL1/P1とし、第1のレンズのレンズ幅L1及び第2のレンズのレンズ幅L2に対する、前記最大高さH1、H2の比であるH1/L1及びH2/L2を最適化することで、光の外部取出し効率、射出角度による色度座標の変化を改善することが可能となる。
さらに、本発明のEL素子を備える照明装置、ディスプレイ装置及び液晶ディスプレイ装置を用いることで、光の利用効率が高い、意匠性を有する照明装置、ディスプレイ装置及び液晶ディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態における、照明装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】構造層を備えていない構成の照明装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】光取出しシートの構成を示す図である。
【図4】光取出しシートの構成を示す図である。
【図5】本発明の第一実施形態の光取出しシートにおけるレンズアレイの断面形状を、頂角90度の三角プリズム形状としたときの、単位レンズに入射する光の入射角度を変更したときの光線図である。
【図6】本発明の第一実施形態の光取出しシートにおけるレンズアレイの断面形状を、非球面形状としたときの、単位レンズに入射する光の入射角度を変更したときの光線図である。
【図7】光取出しシートに、入射角度を0度から85度まで変化させた光を入射させたときの、入射光量に対する射出光量の割合(光利用効率)を示すグラフである。
【図8】射出光の配光特性図である。
【図9】相対光量及び相対色差を示す図である。
【図10】相対光量及び相対色差を示す図である。
【図11】相対光量及び相対色差を示す図である。
【図12】相対輝度と相対光量を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態は本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。
(構成)
まず、図1を用いて、本実施形態の加飾フィルムの構成を説明する。
図1は、本実施形態における、照明装置の概略構成を示す断面図である。
図1中に示すように、EL素子101(エレクトロ・ルミネッセンス素子)と、第1の基板1Aと、第2の基板1Bと、発光層2と、陽極3と、陰極4と、光取出しシート7を備えている。なお、図1中では、光取出しシート7において、発光層2が設置されている面と反対側を照射方向Fとする。
【0018】
発光層2は、白色発光層としてもよく、または、青色、赤色、黄色、緑色などの発光層としてもよい。ここで、発光層2を白色発光層とする場合には、この発光層2の構成を、例えば、ITO/CuPc(銅フタロシアニン)/α−NPDにルブレン1%ドープ/ジナクチルアントラセンにペリレン1%ドープ/Alq3/フッ化リチウム/陰極としてAl、という構成とすればよい。
【0019】
また、発光層2の一方の面には、陽極3が形成されており、他方の面には陰極4が形成されている。発光層2は、陽極3と陰極4に電圧を印加することにより発光するものであり、これらの発光層2と陽極3及び陰極4を含んで、発光構造体100が構成されている。発光構造体100としては、従来公知のさまざまな構成が採用可能である。
すなわち、第一実施形態の照明装置は、光取出しシート7を配置したEL素子101を用いて形成した発光手段を備えている。
【0020】
なお、発光構造体100の構成は、この構成に限定されるものではなく、発光層2から射出する光線の波長を、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)とすることが可能な適宜材料を用いた任意の構成を採用することが可能である。また、フルカラーディスプレイ用途で使用する場合には、R、G、Bに対応した3種類の発光材料の塗り分けとすることや、白色光にカラーフィルターを重ねることにより、フルカラー表示が可能となる。
【0021】
第1の基板1Aは、陽極3が発光層2に臨む面と反対側の面とに形成されている。一方、第2の基板1Bは、陰極4が発光層2に臨む面と反対側の面とに形成されている。
すなわち、透光性基板(第1の基板1A、第2の基板1B)は、光源(発光構造体100)からの射出光が一方の面に入射するように形成されている。
第1の基板1A及び第2の基板1Bの材料としては、種々のガラス材料を用いることが可能である。また、第1の基板1A及び第2の基板1Bの材料としては、PMMA、ポリカーボネート、ポリスチレン等のプラスチック材料、あるいはアルミニウムなどの金属材料を用いることも可能であり、更に、その他の様々な材料を用いることが可能であるが、特に好ましいのは、シクロオレフィン系のポリマーであり、このポリマーは、加工性、及び、耐熱、耐水性、光学透光性等の材料特性の全てにおいて優れたものである。
【0022】
また、第1基板1Aは、発光構造体100(発光層2)から射出した光(射出光)をできるだけ透過させることができるように、全光線透過率を50%以上とすることの可能な材料で形成することが好ましい。
光取出しシート7は、第1の基板1Aが陽極3に臨む面と反対側の面に、接着層6を介して設けられている。
【0023】
接着層6を構成する粘・接着剤としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系の粘・接着剤が挙げられる。いずれの場合も、高温である光源に隣接して使用されるため、100℃で貯蔵弾性率G’が1.0E+04(Pa)以上であることが望ましい。この理由は、これよりも値が低いと、使用中に光取出しシート7と第1の基板1Aがずれてしまう可能性があるためである。そして、光取出しシート7と第1の基板1Aが大きくずれてしまうと、光取出しシート7に発光層2からの光が効率よく入射しないため、光の利用効率が低下してしまう。
【0024】
また、安定的に発光層2と光取出しシート7との間隙を確保するために、接着層6を構成する接・粘着剤層の中に、透明の微粒子、例えば、ビーズ等を混ぜても良い。また、接着層6を構成する粘・接着剤は、両面テープ状のものでも良いし、単層のものでもよい。
また、光取出しシート7は、発光層2からの光を偏向して、照射方向Fへ射出して光の外部取り出し効率を向上する機能を有する。
【0025】
また、光取出しシート7は、第1の基板1Aと反対側に臨む表面と、この表面に並べられた構造層5とを有している。
言い換えれば、EL素子101は、基板1Aと、基板1Aの一方の面に設けられ、陽極3と陰極4とに挟まれた発光層2とを備えている。さらに、基板1Aの他方の面に光取出しシート7が設けられ、光取出しシート7は、表面と、この表面に並べられた構造層5とを有している。
【0026】
発光層2から射出した光B0は、図1中に示すように、基板1Aを透過し(光B1)、構造層5に入射し、構造層5に入射した光B1の一部は、構造層5の射出面から外部へ射出される光B2となる。
ここで、図2中に示すように、照明装置の構成が、構造層5がなく平坦面である構成である場合、光B1の大部分は、平坦面で反射して再度発光層2に入射する光B12となる。この光B12は、照射方向Fに偏向されないため、光B12は損失してしまう。このため、EL素子101の光の外部取り出し効率を向上するには、光B12を減少させ、光B1を増加することが重要である。なお、図2は、構造層5を備えていない構成の照明装置の概略構成を示す断面図である。
【0027】
EL素子101において、発光層2から射出した光B0(図1参照)は、射出角度により色味(媒体における微細な色合い)が変化する。ここで、EL素子101の光射出面側に構造層5を設けることにより、発光層2から射出した光B0は、構造層5で偏向され、射出光B2として照射方向Fに射出される。このとき構造層5の形状を変化させて、射出光B2の射出方向を変化させることで、射出角度による色味の変化を抑制することが可能となる。
ここで、光の外部取り出し効率やEL素子の色差を改善する方法として、従来では、プリズムなどの構造を形成する方法や、透明基材にフィラーを塗布して凹凸面を形成した拡散フィルムを設置する方法や、略半球状のマイクロレンズを形成する方法がある。
【0028】
しかしながら、上記のような、プリズムなどの構造を形成する方法では、以下に記載する問題がある。
プリズムなどの直線形状が大部分を形成する構造では、直線形状により傾斜角度が一定となるため、ある特定の角度の光のみ、外部取り出し効率を向上させることが可能となる。しかし、上述した特定の角度以外の光は、光の外部取り出し効率が小さくなり、総合的には、外部取り出し効率小さくなる問題が生じる。また、EL素子101の射出角度による色度座標の変化は、プリズム形状だと傾斜角が一定であり、特定の角度の入射光を特定の角度の射出光へと偏向するため、色度の角度による変化への改善効果は低い。
【0029】
また、上記のような、透明基材にフィラーを塗布して凹凸面を形成した拡散フィルムを設置する方法では、以下に記載する問題がある。
フィラーを塗布して、凹凸面を形成する場合、凹凸面の形状はフィラーの隆起の度合いにより決定されるため、高精度な凹凸面の形成ができない。そのため、凹凸面に光を制御する充分な形状を形成することが出来ないという問題が生じる。これは、例えば、フィラーを隆起することで略半円形状を形成しようとした場合、フィラーの隆起が不十分となり略半球形状の一部分のみが形成される。すなわち、略半球形状の高さと、幅の比をアスペクト比(高さ/幅)とした場合、アスペクト比が小さくなってしまうため、結果として外部取り出し効率が小さくなる問題が生じる。
【0030】
また、上記のような、マイクロレンズを形成する方法では、以下に記載する問題がある。
マイクロレンズは、上述の拡散フィラーと比較して、高精度に成形することが可能であり、アスペクト比を大きくして、略半球形状を成形することが可能である。しかし、EL素子の発光層からの光は等方的であるため、略半球型が好ましいが、略半球型のマイクロレンズでは、面全体を埋めることは出来ず、平坦面が発生する。そして、平坦面が発生すると、図2中に示すように、光B12が発生し、照射方向Fに射出しないため、光の利用効率が低下する。
【0031】
また、六方配置のような最密構造が、最も面全体を埋めることが可能であるが、このような形状を作成する場合、さらに高精度な成形が要求され、マイクロレンズの重なりなどの不具合が発生しやすい。また、隙間が少ない状態でマイクロレンズを成形すると、各マイクロレンズ間のわずかな隙間の距離のズレが、マクロなムラとして見えてしまうので好ましくない。そのため、実質的な面積率は76%前後となる。結果として、約24%は平坦面があるため、光の外部取り出し効率が不十分となる問題が発生する。
【0032】
以上により、EL素子101の光の外部取り出し効率を向上するために、図3中に示す光取出しシート7を、EL素子101の表面に設ける。なお、図3は、光取出しシート7の構成を示す図であり、図3(a)は、光取出しシート7の上方斜視図、図3(b)は、図3(a)のB線矢視図、図3(c)は、図3(a)のC線矢視図である。また、図3(a)は、第1のレンズアレイ40、第2のレンズアレイ50の断面形状を、凸状の非球面レンズ形状とした場合の斜視図である。
【0033】
図3中に示すように、光取出しシート7の構造層5は、光透過性の基材8の一方の面、即ち照射方向Fの面(この面を表面と定義)8aに、第1のレンズアレイ40として、一方向に沿って延在し且つ隣接する第一レンズとの間に平坦面を有しながら、互いに離間し且つ平行に配列された第1のレンズアレイ40を備えている。また、構造層5は、第1のレンズアレイ40の平坦面を占有するように、第1のレンズアレイ40と交差する方向に沿って、互いが隣接し且つ平行に配列された複数の第2のレンズを備えた第2のレンズアレイ50が形成されている。なお、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50は、基材8上に別体として配置したものであってもよいし、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50を、基材8を一体成型したものであってもよい。
【0034】
また、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイとしては、例えば、断面が凸状のレンズまたは三角プリズム形状などを用いることも可能である。
なお、第1のレンズアレイ40が備える複数の第1レンズは、一方向に沿って延在し且つ平行に配列されている構成であってもよい。
また、第2のレンズアレイ50が備える複数の第2のレンズは、第1のレンズアレイ40と交差する方向に沿って、互いが隣接し且つ平行に配列されている構成であってもよい。
【0035】
また、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50は、互いに交差するように配列する。
この理由を、以下に記載する。
第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50が、互いに交差することなく一方向に延在する帯状を呈した場合、延在する一方向に関しては、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50は傾斜角を有していない、すなわち、平面状の効果と同等となり、図2中に示す光B12のように、外部に取り出すことが出来ない光となるため、光の外部取り出し効率が小さくなる課題が生じる。
【0036】
そのため、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50は、断面が凸状のレンズまたはプリズム形状を形成し、一方向に延在する帯状を呈し、この帯状の凸状のレンズまたはプリズム形状が、互いに交差するように配列することで、2次元方向に対して、傾斜角を設けることが可能となるため、光の取出し効率が大きくなり好適である。
さらに、上述のように配列することで、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50が照射方向Fに射出する光の配光分布を、2次元方向に調整することが可能となる。そのため、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50を任意の形状にすることで、射出光を対称な配光分布にすることが可能となる、あるいは、射出角度による色差を改善することが可能となるため好適である。
【0037】
また、EL素子101を照明用途として用いる場合は、少なくとも2次元的に配光分布を調整する必要がある。
その理由として、例えば、照明装置の設置場所によっては、ある特定方向には、照射する必要がなく、広い配光分布ではなく正面方向の輝度向上を要求することがある。
または、構造層5に入射する光B1が、非対称な配光分布になる場合であり、かつ照明装置から射出される光の配光分布が、対称な配光分布であることが要求される場合、照明装置から射出される光の配光分布を、1次元方向のみの調整で対称な配光分布にすることは困難であるため、2次元方向の調整が可能である、本実施形態の構成が好適である。
【0038】
また、本実施形態の構成のように、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50を略直行して配列した形状では、光を2次元的に広げるために、新たにレンズシートを追加することなく、適切な配光分布に調整することが可能となり、照明装置の軽量化、薄型化、低コスト化を図ることも可能である。
特に、発光層2から射出される光は、配光分布が広いブロードな指向性を有する光である。そのため、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50は、上述の広い配光分布を、照射方向Fに偏向するように設計することが好適である。
【0039】
第1のレンズアレイ40は、基材8の表面8aに接触する第一レンズのレンズ幅をL1とし、表面8aから頂部までの最大高さをH1とし、第1のレンズアレイ40の頂点間の距離(第1のレンズ間の配置ピッチ)をP1とし、最大傾斜角をθ1とする。ここで、最大傾斜角θ1は、第1のレンズの、光取出しシート7の透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角である。
【0040】
また、第2のレンズアレイ50は、表面8aに接触する底部の幅(第2のレンズのレンズ幅)をL2とし、表面8aから頂部までの最大高さをH2とし、第2のレンズアレイ50の頂点間の距離(第2のレンズ間の配置ピッチ)をP2とし、最大傾斜角をθ2とする。ここで、最大傾斜角θ2は、第2のレンズの、光取出しシート7の透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角である。
ここで、第一実施形態では、第2のレンズ間の配置ピッチP2と、第2のレンズのレンズ幅L2が等しい。すなわち、第一実施形態では、L2=P2の関係式が成立している。
また、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50の形状は、同じでも良いし、異なっていても良い。ここで、直交する第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50の形状を異なる形状にすることにより、構造層5に入射した光B1が照射方向Fへ射出する際に、光の配向分布を2次元に調整することが可能となる。
【0041】
さらに、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状は、三角形状以外にも、多角形状、完全な半円形状(球面レンズ)、半楕円形(楕円面レンズ)や放物線形(放物面レンズ)などの非半円形状(いわゆる2次の非球面形状)のもの、さらには、2次以降の項を有する高次非球面形状のもの、高次非球面形状と多角形形状を組み合わせたものでもよく、その組み合わせ方は自由である。なお、図4は、光取出しシート7の構成を示す図であり、図4(a)は、光取出しシート7の上方斜視図、図4(b)は、図4(a)のB線矢視図、図4(c)は、図4(a)のC線矢視図である。また、図4(a)は、第1のレンズアレイ40、第2のレンズアレイ50の断面形状を、三角形状とし、第1のレンズアレイ40の頂角θ1a及び第2のレンズアレイ50の頂角θ2aに曲面形状を形成したときの斜視図である。
【0042】
ここで、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を、多角形状もしくは非球面形状にすることにより、レンズ側面の適切な傾きをもった面積を調整することができるため、より高次に射出光の光線方向を調整することが可能となる。
また、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を、レンズ側面の傾きを複数有する形状にすることにより、光取出しシート7からの射出角度がレンズ側面の傾きにより変化するため、射出光の色の角度依存性を制御することが可能となる。
【0043】
さらには、レンズ頂点に曲面を有するレンズ形状にすることにより、耐擦性の向上が見込まれる。
本実施形態の光取出しシート7は、第1のレンズアレイ40と第2のレンズアレイ50との、2種類のレンズ形状が構造体5に存在するため、頂角90度の三角プリズムをクロスで配置したクロスプリズム形状よりも、光の利用効率及び射出角度による色差を改善することが可能である。
【0044】
図5中に、本実施形態の光取出しシート7におけるレンズアレイの断面形状を、頂角90度の三角プリズム形状としたときの、単位レンズに入射する光の入射角度を変更したときの光線図を示す。なお、図5(a)は、単位レンズに入射する光の入射角度が10度のときの光線図であり、図5(b)は、単位レンズに入射する光の入射角度が30度のときの光線図であり、図5(c)は、単位レンズに入射する光の入射角度が50度のときの光線図である。
【0045】
また、図6中に、本発明の光取出しシート7におけるレンズアレイの断面形状を、非球面形状としたときの、単位レンズに入射する光の入射角度を変更したときの光線図を示す。なお、図6(a)は、単位レンズに入射する光の入射角度が10度のときの光線図であり、図6(b)は、単位レンズに入射する光の入射角度が30度のときの光線図であり、図6(c)は、単位レンズに入射する光の入射角度が50度のときの光線図である。
図5中に示すように、レンズアレイの断面形状が三角プリズム形状である場合、入射光の角度によらず、射出光は、ほぼ直線的に進行する。なお、図5中では、光(入射光及び射出光のうち少なくとも一方)を、符号501、502、503を付して示している。
【0046】
一方、図6中に示すように、レンズアレイの断面形状が非球面レンズ形状である場合、入射光の角度により、射出光は、広角領域に進行するか、複数の射出角度に狭角的に進行するか、その射出光の振る舞いは多種多様である。なお、図6中では、光(入射光及び射出光のうち少なくとも一方)を、符号601、602、603を付して示している。
また、EL素子101から発光する光が、射出角度により異なる発光分布を有する場合、照射方向F側からEL素子101を観察すると、視野角度により色差が変化するという問題がある。
これに対し、本実施形態の光取出しシート7であれば、EL素子101から発光される光の射出角度により、レンズアレイの断面形状におけるレンズの傾斜角を最適化することにより、色の角度依存性の小さいEL素子を作製することが可能となる。
【0047】
図7は、光取出しシート7に、入射角度を0度から85度まで変化させた光を入射させたときの、入射光量に対する射出光量の割合(光利用効率)を示すグラフである。図7中において、横軸は、単位レンズの入射面に入射する光の入射角度である。また、図7中において、縦軸は、光利用効率であり、単位レンズに入射する光の強度を100%としたとき、単位レンズの射出面から射出される光の割合である。なお、図7中においては、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を90度プリズム形状にしたときの光の利用効率をAと記載し、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を非球面レンズ形状にしたときの光の利用効率をBと記載した。
【0048】
第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を、頂角90度のプリズム形状にした場合、入射角度0度付近の光は全反射されて正面方向に射出せず、入射角度30度から60度の範囲の光利用効率が高く、入射角度30度付近の光は正面方向へ偏向されるため、集光効果の高い光取出しシート7となる。
一方、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を、非球面レンズ形状にした場合、入射角度0度から30度領域の光の利用効率が高く、入射角度0度付近の光は拡散されて正面方向へ射出されるため、上記の三角プリズム形状と比較すると、拡散性の高い光取出しシート7となる。
【0049】
したがって、光取出しシート7に入射する光B1の入射光の配光特性に合わせて、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状を最適化することにより、EL素子の発光効率は向上する。例えば、入射光B1が30度から60度の領域の光量が多い配光特性であれば、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の断面形状は、頂角90度のプリズム形状が高効率となり、入射光B1が0度から30度の領域の光量が多い配光特性であれば、レンズアレイの断面形状は非球面レンズ形状である方が高効率となる。
【0050】
また、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2との比H2/H1は、1未満とする。すなわち、第2のレンズアレイ50の最大高さH2は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1よりも低い。
これは、以下に記載する理由による。
上記の比H2/H1が1であると、光取出しシート7を作製するための金型及びシートを作製する際の精度が、非常に難易度が高くなる。このため、高さの精度が高い方向もしくは低い方向に少しでも変位する(ずれる)と、第1のレンズアレイ40の最大高さH1が、第2のレンズアレイ50の最大高さH2より高い部分と、低い部分が光取出しシート7の面内に混在することにより、視認性が低下する。
【0051】
さらに、上記の比H2/H1が1よりも大きいと、複数の第2のレンズが隣接して密に配列された第2のレンズアレイ50の最大高さH2が、複数の第1のレンズが疎に配列された第1のレンズアレイ40の最大高さH1より高位となり、第2のレンズアレイ50が光取出しシート7の最表層に位置するため、耐擦性が低下し好ましくない。
第1のレンズアレイ40の最大高さH1、または、第2のレンズアレイ50の最大高さH2が0.300mmよりも大きくなると、レンズ(第一のレンズ、第二のレンズ)の形状が目視で観測されるため、好ましくない。さらに、上記の最大高さH1または最大高さH2が0.030mmよりも小さくなると、回折光が発生して、レンズとしての効果が低減するため、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2の比H2/H1は、0.01より大きいことが望ましい。
すなわち、0.01<(H2/H1)<1の関係式が成立していることが望ましい。
【0052】
図8は、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対する第1のレンズのレンズ幅L1の比率L1/P1と、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2の比H2/H1を、それぞれ、設定した値としたときの射出光の配光特性図である。なお、図8(a)は、上記の比率L1/P1を1とし、上記の比H2/H1を0.5としたときの射出光の配光特性図であり、図8(b)は、上記の比率L1/P1を0.6とし、上記の比H2/H1を0.5としたときの射出光の配光特性図である。また、図8(c)は、上記の比率L1/P1を0.4とし、上記の比H2/H1を0.5としたときの射出光の配光特性図である。ここで、図8中では、第1のレンズアレイ40の延在方向の配光特性を0degとし、第1のレンズアレイ40の延在方向と直交する方向の配光特性を90degとし、斜め方向の配光特性を45degとした。
【0053】
通常、断面形状が非球面形状や三角プリズム形状であるレンズアレイを、対外に直交する方向に配列した場合、射出される光B2は、0deg方向、45deg方向、90deg方向で、それぞれ、光の集光特性が異なるため、射出面F側から観測した際、方位角での射出光の配光特性が異なる。
これは、例えば、上記の比H2/H1を0.5とし、上記の比率L1/P1の値を1とした場合、光取出しシート7における第1のレンズアレイ40のレンズの支配率が大きくなるため、第1のレンズアレイ40の延在方向と直交する方向、すなわち、0deg方向の射出光の集光効果が大きくなる(図8(a)参照)。
【0054】
一方、上記の比率L1/P1の値が小さくなるにつれて、光取出しシート7における第2のレンズアレイ50のレンズ効果が大きくなるため、第2のレンズアレイ50の延在方向と直交する方向、すなわち、90deg方向の射出光の集光効果が大きくなる(図8(c)参照)。
本実施形態の光取出しシート7は、上記の比率L1/P1と上記の比H2/H1を任意の値に最適化することにより、光取出しシート7における第1のレンズアレイ40のレンズ効果と第2のレンズアレイ50のレンズ効果を制御することが可能となるため、射出方向Fから観測した場合の、方位角方向での射出光の配光特性を制御することが可能となる(図8(b)参照)。
【0055】
図9は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2の比H2/H1を0.5とし、第1のレンズアレイ40のレンズ幅L1及び第2のレンズアレイ50のレンズ幅L2に対する、最大高さの比H1/L1とH2/L2を、それぞれ、0.7とし、第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の最大傾斜角度θ1、θ2を、それぞれ70度とし、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対する第1のレンズのレンズ幅L1の比率L1/P1を0から1まで変化させたときの、相対光量及び相対色差を示す図である。
【0056】
図9(a)中において、横軸は、配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比L1/P1を示し、縦軸は、上記の比L1/P1を変化させたときの相対光量を示している。
ここで、相対光量とは、EL素子101に頂角が90度のクロスプリズム形状をした光取り出しフィルムを使用したときに、入射した光B1が、照射方向Fに射出した光の積算光量を1としたときの値である。
【0057】
また、図9(b)中において、横軸は、配置ピッチP1に対するレンズ幅の比L1/P1を示し、縦軸は、光取出しシート7を使用しないときの、測定視野が0度から80度の範囲における、色度座標(u’、v’)の最大変化量を1.00としたときの相対色差である。
図9中に示すように、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比率L1/P1が大きくなるに従い、相対光量が上昇して上記の比L1/P1が0.5のとき最大となり、相対色差は減少して上記の比L1/P1が0.4のとき最小となる。
【0058】
これは、上記の比L1/P1が1のとき、すなわち、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1とレンズ幅L1が同じであるとき、第1のレンズアレイ40は、連続して密に配列されており、第2のレンズアレイ50を第1のレンズアレイ40と交差する方向に配列しても、第2のレンズアレイ50が光取出しシート7を占有する割合が小さいため、入射光B1に対し、第1のレンズアレイ40が延在する方向のレンズ効果が低いため、相対光量が減少し、また色差の改善効果も小さいためである。
【0059】
一方、上記の比L1/P1の値を小さくすると、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1が小さくなり、第1のレンズアレイ40における凸部が一定間隔を空けて配列されているため、第2のレンズアレイ50を第1のレンズアレイ40と交差する方向に配列すると、光取出しシート7を占有する第2のレンズアレイ50の割合が上昇し、入射光B1に対する第2のレンズアレイ50のレンズ効果が大きくなるため、相対光量は上昇して色差は改善する。
【0060】
さらに、上記の比L1/P1の値を小さくしていくと、第1のレンズアレイ40のレンズ効果が減少するため、相対光量が低下して色差は悪化する。
以上の理由から、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比率L1/P1は、0から1の間で変化させることにより積算光量は上昇し、色差は改善するが、好ましくは、積算光量の最大値からの減少率が2%以内である0.2<(L1/P1)<0.9の範囲内であることが望ましい。
また、積算光量の上昇率は高い方が好ましいため、より好ましくは、積算光量の最大値からの減少率が1%以内である0.35<L1/P1<0.75であることが望ましい。
【0061】
図10は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2の比H2/H1を0.5とし、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比L1/P1を0.4とし、第1のレンズアレイ40の最大傾斜角度θ1及び第2のレンズアレイ50の最大傾斜角度θ2を、それぞれ70度とし、第1のレンズのレンズ幅L1に対する最大高さH1の比H1/L1、及び第2のレンズのレンズ幅L2に対する最大高さH2の比H2/L2を変化させたときの、相対光量及び相対色差を示す図である。
【0062】
図10(a)中において、横軸は、レンズ幅L(L1、L2)に対する最大高さH(H1、H2)の比H/Lを示し、縦軸は、相対光量を示している。
ここで、相対光量とは、EL素子101に頂角が90度のクロスプリズム形状をした光取り出しフィルムを使用したときに、入射した光B1が、照射方向Fに射出した光の積算光量を1としたときの値である。
【0063】
また、図10(b)中において、横軸は、レンズ幅L(L1、L2)に対する最大高さH(H1、H2)の比H/Lを示し、縦軸は、光取出しシート7を使用しないときの、測定視野0度から80度の範囲における色度座標(u’、v’)の最大変化量を1.00としたときの相対色差を示している。
図10中に示すように、上記の比H/Lが大きくなるに従って、相対光量は上昇し、相対色差は小さくなるので、上記の比H/Lは大きい方が好ましいが、色差の変化量が20%以上改善するとともに、上記の比H/Lが大きくなると、光取出しシート7の作製が困難となる。このため、より好ましくは、0.3<H/L<2の範囲内であることが望ましい。
【0064】
すなわち、0.3<H1/L1<2の関係式と、0.3<H2/L2<2の関係式が成立していることが望ましい。
ここで、照明装置として用いた場合、色度の視野角度によるズレは小さい方が好ましく、より好ましくは、色差の変化量が40%以上改善しているとともに、上記の比H/Lの増加率に対する相対色差の改善効果は、H/Lが大きくなるほど減少し、H/Lが1.6より大きくなるとほぼ一定の値となるため、0.7<H/L<1.6の範囲内であることが望ましい。
【0065】
図11は、第1のレンズアレイ40の最大高さH1に対する第2のレンズアレイ50の最大高さH2の比H2/H1を0.5とし、第1のレンズアレイ40の配置ピッチP1に対するレンズ幅L1の比L1/P1を0.4とし、第1のレンズアレイ40の最大傾斜角度θ1及び第2のレンズアレイ50の最大傾斜角度θ2を変化させたときの、相対光量及び相対色差を示す図である。
【0066】
図11中において、横軸は、第1のレンズアレイ40における最大傾斜角θ1及び第2のレンズアレイ50の最大傾斜角θ2を示し、縦軸は、光取出しシート7を使用しないときの、測定視野0度から80度の範囲における色度座標(u’、v’)の最大変化量を1.00としたときの相対色差を示している。
図11中に示すように、最大傾斜角θ(θ1、θ2)が大きくなるに従い、相対色差が小さくなるので、最大傾斜角θは大きい方が望ましいが、相対色差の改善率が20%以上であるとともに、最大傾斜角θが大きくなると、光取出しシート7の作製が困難である。
このため、より好ましくは、30度≦θ1≦75度の範囲内であるとともに、30度≦θ2≦75度の範囲内であることが望ましい。
【0067】
すなわち、30°≦θ1≦75°の関係式と、30°≦θ2≦75°の関係式が成立していることが望ましい。
ここで、照明装置として用いた場合、色度の視野角度によるズレは小さい方が好ましく、より好ましくは、色差の変化量が40%以上改善する、50度≦θ1≦75度、50度≦θ2≦75度の範囲内であることが望ましい。
図12は、第1のレンズアレイ40の断面形状がプリズム形状である場合に、頂角θ1aに曲率形状を付与したとき、または、第2のレンズアレイ50の断面形状がプリズム形状である場合、頂角θ1aに曲率形状を付与したときの、相対輝度と相対光量を示した図である。
【0068】
図12中において、横軸は、レンズアレイにおけるレンズ幅L1、L2に対する曲率の割合を示し、縦軸は、相対光量(図12(a))と相対輝度(図12(b))を示している。ここで、相対輝度と相対光量は、頂角θ1a、θ2aに曲率形状を付与していないときの輝度と光量を1.00としたときの値である。
図12(a)中に示すように、レンズ幅L1、L2に対する頂角の曲率の割合を増加させるに従い、相対光量は上昇し、レンズ幅L1、L2に対し曲率を40%形成したときに最大となり、さらに曲率を上昇させると効率は減少する。これは、曲率を付与していないと三角プリズムの傾斜面で全反射されていた光線が、頂角に曲率を付与することにより透過光量が増加するためである。
【0069】
また、図12(b)中に示すように、レンズ幅L1、L2に対する頂角の曲率の割合を増加させると、相対輝度は減少する。
以上により、相対光量が上昇しても、相対輝度が減少すると視認性が低下するため、レンズ幅L1、L2に対する曲率の割合は、相対輝度が10%低下する、0%以上50%以下の範囲内であることが好適である。
【0070】
すなわち、第1のレンズの頂角θ1aは、第1のレンズのレンズ幅L1に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることが好適である。
同様に、第2のレンズの頂角θ2aは、第2のレンズのレンズ幅L2に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることが好適である。
なお、光取出しシート7の基材表面8aに第1のレンズアレイ40の最大高さH1より高いレンズ高さを有するマイクロレンズアレイを形成していてもよい。
【0071】
この場合、上記のようなマイクロレンズアレイを形成することにより、光取出しシート7における最も高さの高い位置がマイクロレンズ形状となるため、障害物と接触する際に点接触となり、耐擦性が向上する。
光取出しシート7を成型する材料としては、発光層2から射出される光の波長に対して光透過性を有するものを用いることが可能であり、例えば、光学用部材に使用可能なプラスチック材料を用いることが可能である。
【0072】
このような材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネ−ト樹脂、ポリスチレン樹脂、MS(アクリルとスチレンの共重合体)樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、シクロオレフィンポリマー等の熱可塑性樹脂、あるいは、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー又はアクリレート系等からなる放射線硬化性樹脂などの透明樹脂が挙げられる。
【0073】
また、用途により、上記の透明樹脂中に微粒子を分散させて使用してもよい。この場合、透明樹脂中に微粒子を分散させることにより、光取出しシート7に入射した光が照射方向Fに射出する際に、より拡散性が上昇するため、色度の視野角度による変化を改善することが可能であり、また、照明装置として使用した際、欠陥が観測されにくくなる利点がある。
【0074】
上記の微粒子としては、無機酸化物からなる粒子又は樹脂からなる粒子を用いることが可能である。この場合、例えば、無機酸化物からなる透明粒子としては、シリカやアルミナ、酸化チタン等からなる粒子を挙げることができる。また、樹脂からなる透明粒子としては、アクリル粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子及びその架橋体、メラミン一ホルマリン縮合物の粒子、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン一ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PVDF(ポリフルオロビニリデン)、及びETFE(エチレン一テトラフルオロエチレン共重合体)等の含フッ素ポリマー粒子、シリコーン樹脂粒子等を挙げることができる。これらの微粒子は、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0075】
そして、光取出しシート7は、上記のような材料を金型に流し込み凝固されることで成型される。
このような金型の作製方法としては、金型に対して、各種レンズ形状を有する切削工具を用いて切削し、断面形状が第1のレンズアレイ40及び第2のレンズアレイ50の凹凸部に対応した形状となる部分を作製する。
【0076】
また、このような金型で光取出しシート7を作製する方法の他、第1のレンズアレイ40の凹凸部や、第2のレンズアレイ50の凹凸部、基材8の形成方法としては、熱可塑性樹脂や紫外線硬化性樹脂と上記の形状が賦形した金型を用いて、押出し成形や射出成形、UV成形法などで成形することが可能である。この際、第1のレンズアレイ40の凹凸部や、第2のレンズアレイ50の凹凸部及び基材8を、別体として成形してもよいし、一体品として成形(一体成形)してもよい。また、第1のレンズアレイ40の凹凸部や、第2のレンズアレイ50及び基材8を成形する場合には、内部にフィラーなど拡散剤を分散させて成形することも可能である。
【0077】
また、帯電防止剤として、導電性微粒子のアンチモン含有酸化スズ(以下、ATO)や、スズ含有酸化インジウム(ITO)等の超微粒子を分散させてもよい。この場合、帯電防止剤を分散することで、光取出しシート7の防汚性を向上することが可能となる。
また、UV成形法のような、構造層5が基材8を別体にて成形する場合は、基材8としては、透明なフィルムであり、セルローストリアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリメタアクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂の延伸又は未延伸フィルムを使用することが可能である。
【0078】
また、基材8の厚みは、基材8がもつ剛性にもよるが、50μm以上300μm以下の範囲内とすることが、加工性等の取扱い面から見て好ましい。
また、構造層5が基材8と強固に接着しない場合や、寒熱、吸脱湿等の外的影響で接着力が低下したりするときは、構造層5と基材8との間に、両材料に対して接着性の高いプライマ層を設けてもよいし、構造層5にプライマ層の作用を付加してもよい。あるいは、コロナ放電処理等の易接着処理を施してもよい。
以上、光取出しシート7についての代表的な例を説明してきたが、本実施形態の光学特性を達成することが可能であれば、上記以外の材料や構造、プロセスなどを使用して、光取出しシート7を作製することも可能である。
【0079】
(ディスプレイ装置)
第一実施形態の照明装置を用いて形成したディスプレイ装置の構成としては、例えば、第一実施形態の照明装置が備える光取出しシート7を配置したEL素子101を備え、EL素子101が、画素駆動される構成としてもよい。
また、第一実施形態の照明装置を用いて形成したディスプレイ装置の構成としては、例えば、第一実施形態の照明装置が備える光取出しシート7と、画像表示素子を備え、画像表示素子の背面に、光取出しシート7を配置した構成としてもよい。
また、第一実施形態の照明装置を用いて形成したディスプレイ装置の構成としては、例えば、第一実施形態の照明装置が備える光取出しシート7を配置したEL素子101と、画像表示素子を備え、EL素子101が画素駆動されるとともに、画像表示素子の背面に、光取出しシート7を配置した構成としてもよい。
【0080】
(実施例)
以下、図1から図12を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。尚、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。具体的には、二種類の比較例(比較例1、2)サンプルと、11種類の本発明例サンプルを作製し、これらの物性を比較した結果を説明する。なお、本発明例サンプルの構成は、上述した第一実施形態の構成と同様の構成を含んでいる。
【0081】
(比較例1)
比較例1としては、EL素子101のガラス表面に光取出しシート7を貼らない構成のサンプルを用いた。
(比較例2)
比較例2のサンプルは、以下の手順で作製した。
まず、光取出しシート7として、厚さ188μmの透明PET基材上に、屈折率1.50のUV硬化性アクリル系樹脂を塗布し、頂角が90度のクロスプリズム形状が切削されているシリンダー金型を使用して、紫外線硬化型樹脂が塗布されたフィルムを搬送しながらUV光を透明PET側から露光することにより、UV硬化型樹脂を硬化させた。さらに、硬化後のUV硬化型樹脂を、透明PETフィルムから金型を剥離することにより、光取出しシート7を作製した。
【0082】
上記のようにして得られた光取出しシート7を、粘着剤を介して、第一実施形態のEL素子101に貼合することにより、比較例2のサンプルを作製した。
このとき、第一のレンズアレイ40のレンズ形状の構成は、配置ピッチが140μmである、凸状のシリンドリカル形状であり、第二のレンズアレイ50のレンズ形状の構成は、配置ピッチが30μmである、頂角が90度の三角プリズムである。
【0083】
(本発明例)
本発明例のサンプルは、以下の手順で作製した。
まず、厚さが188μmの透明PET基材上に、構造層5のパターンを形成する屈折率1.50のUV硬化性アクリル系樹脂を塗布し、構造層5の形状に切削したシリンダー金型を使用して、紫外線硬化型樹脂が塗布されたフィルムを搬送しながらUV光を透明PET側から露光することにより、UV硬化型樹脂を硬化させた。さらに、硬化後のUV硬化型樹脂を、透明PETフィルムから金型を剥離することにより、光取出しシート7を作製した。
上記のようにして得られた光取出しシート7を、粘着剤を介して、上述した第一実施形態のEL素子101に貼合することにより、本発明例のサンプルを11種類作製した。
【0084】
以下、11種類の本発明例は、それぞれ、下記のパラメータにより作製した。
(本発明例1)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.070mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.400mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.035mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
【0085】
(本発明例2)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.070mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.200mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.035mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
【0086】
(本発明例3)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.070mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.111mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.035mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
そして、本発明例1〜3の各光取出しシート7を、それぞれ、第一実施形態のEL素子101に配置して、積算光量を測定した。その結果を、以下の表1に示す。ここで、表1中に示す相対光量とは、比較例2における積算光量を1.00としたときの値である。
【0087】
【表1】
【0088】
表1中に示すように、レンズアレイにおけるL1/P1の値を0.25から0.90の範囲にすることにより、相対光量が上昇することが明らかである。
【0089】
(本発明例4)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.030mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.150mm、最大傾斜角θ1を55度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.015mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.500mm、最大傾斜角θ2を55度とした。
【0090】
(本発明例5)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.100mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を75度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.050mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を75度とした。
そして、本発明例4、5の各光取出しシート7を、それぞれ、第一実施形態のEL素子101に配置し、色度を測定した。その結果を、表2中に示す。ここで、表2中に示す相対色差とは、比較例1における色差を1.00としたときの値である。
【0091】
【表2】
【0092】
表2中に示すように、レンズ幅Lに対する最大高さHの比H/Lを、0.30以下にすることにより、比較例1、すなわち、第一実施形態の光取出しシート7を用いないときと比較して、色差が20%以上改善することが明らかである。
【0093】
(本発明例6)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.023mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を25度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.012mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を25度とした。
【0094】
(本発明例7)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.029mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を30度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.014mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を30度とした。
【0095】
(本発明例8)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.137mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.068mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
そして、本発明例6〜8の各光取出しシート7を、それぞれ、第一実施形態のEL素子101に配置して、色度を測定した。その結果を表3中に示す。ここで、表3中に示す相対色差とは、比較例1における色差を1.00としたときの値である。
【0096】
【表3】
【0097】
表3中に示すように、レンズの最大傾斜角θ(θ1、θ2)を30度以上とすることにより、比較例1、すなわち、第一実施形態の光取出しシート7を用いないときと比較して、色差が20%以上改善することが明らかである。
【0098】
(本発明例9)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.087mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.043mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
また、第1のレンズアレイ40の頂角θ1aへ、レンズ幅L1に対する0%の曲率を付与し、第2のレンズアレイ50の頂角θ2aへ、レンズ幅L2に対する0%の曲率を付与した。
【0099】
(本発明例10)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.087mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.043mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
また、第1のレンズアレイ40の頂角θ1aへ、レンズ幅L1に対する50%の曲率を付与し、第2のレンズアレイ50の頂角θ2aへ、レンズ幅L2に対する50%の曲率を付与した。
【0100】
(本発明例11)
第1のレンズアレイ40の最大高さH1を0.087mm、レンズ幅L1を0.100mmとし、配置ピッチP1を0.500mm、最大傾斜角θ1を70度とした。これに加え、第2のレンズアレイ50のレンズ高さH2を0.043mm、レンズ幅L2を0.050mmとし、配置ピッチP2を0.050mm、最大傾斜角θ2を70度とした。
【0101】
また、第1のレンズアレイ40の頂角θ1aへ、レンズ幅L1に対する60%の曲率を付与し、第2のレンズアレイ50の頂角θ2aへ、レンズ幅L2に対する60%の曲率を付与した。
そして、本発明例9〜11の各光取出しシート7を、それぞれ、第一実施形態のEL素子101に配置して、その輝度を測定した。その結果を表4中に示す。ここで、表4中に示す相対光量及び相対輝度とは、本発明例9における輝度を1.00としたときの値である。
【0102】
【表4】
【0103】
表4中に示すように、レンズの頂角に曲率を付与することにより、相対光量は増加するが、相対輝度は減少する。したがって、相対光量が増加していても、相対輝度が10%以上低下すると視認性が低下することを確認した。
【符号の説明】
【0104】
1A 基板(透光性基板)
1B 基板(透光性基板)
2 発光層
3 陽極
4 陰極
5 構造層
6 接着層
7 光取出しシート
8 基材
8a 基材表面
8b 基材裏面
40 第1のレンズアレイ
50 第2のレンズアレイ
100 発光構造体
101 EL素子
B0、B1、B2、B12 光
501,502,503,601、602、603 光
P1 第1のレンズアレイの配置ピッチ
P2 第2のレンズアレイの配置ピッチ
L1 第1のレンズアレイのレンズ幅
L2 第2のレンズアレイのレンズ幅
H1 第1のレンズアレイの最大高さ
H2 第2のレンズアレイの最大高さ
θ1 第1のレンズアレイの最大傾斜角
θ1a 第1のレンズアレイの頂角
θ2 第2のレンズアレイの最大傾斜角
θ2a 第2のレンズアレイの頂角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの射出光が一方の面に入射する透光性基板と、
前記透光性基板の前記光源からの射出光が入射する面とは反対側の面に設けられた光取出しシートと、を備え、
前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面とは反対側の面上に、互いに離間し且つ平行に配列された複数の第1レンズを備えた第1のレンズアレイと、互いに隣接し且つ平行に配列された複数の第2レンズを備えた第2のレンズアレイと、が形成され、
前記複数の第1レンズは、一方向に沿って延在し且つ平行に配列され、
前記複数の第2レンズは、前記第1のレンズアレイと交差する方向に沿って、互いが隣接し且つ平行に配列され、
前記第2のレンズアレイの最大高さは、前記第1のレンズアレイの最大高さよりも低いことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第1のレンズアレイの最大高さをH1とし、前記第2のレンズアレイの最大高さをH2とした場合に、
0.01<(H2/H1)<1の関係式が成立していることを特徴とする請求項1に記載した照明装置。
【請求項3】
隣接する前記第1レンズ間の配置ピッチをP1とし、前記第1レンズのレンズ幅をL1とした場合に、
0.2<(L1/P1)<0.9の関係式が成立していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した照明装置。
【請求項4】
隣接する前記第2のレンズ間の配置ピッチをP2とし、前記第2のレンズのレンズ幅をL2とした場合に、
L2=P2の関係式が成立していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項5】
前記第1のレンズのレンズ幅をL1とし、前記第1のレンズアレイの最大高さをH1とし、前記第2のレンズのレンズ幅をL2とし、前記第2のレンズアレイの最大高さをH2とした場合に、
0.3<(H1/L1)<2の関係式と、0.3<(H2/L2)<2の関係式が成立していることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項6】
前記第1のレンズの前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角をθ1とし、前記第2のレンズの前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角をθ2とした場合に、
30°≦θ1≦75°の関係式と、30°≦θ2≦75°の関係式が成立していることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項7】
前記第1のレンズの前記配列方向と直交する方向から見た断面形状がプリズム形状であり、
前記第1のレンズの頂角θ1aは、前記第1のレンズのレンズ幅L1に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項8】
前記第2のレンズの前記配列方向と直交する方向から見た断面形状がプリズム形状であり、
前記第2のレンズの頂角θ2aは、前記第2のレンズのレンズ幅L2に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項9】
前記光取出しシートを配置したEL素子を用いて形成した発光手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートを配置したEL素子を備えたディスプレイ装置であって、
前記EL素子は、画素駆動されることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートと、画像表示素子と、を備える液晶ディスプレイ装置であって、
前記画像表示素子の背面に、前記光取出しシートを配置したことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
【請求項12】
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートを配置したEL素子と、画像表示素子と、を備える液晶ディスプレイ装置であって、
前記EL素子は、画素駆動され、
前記画像表示素子の背面に、前記光取出しシートを配置したことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
【請求項1】
光源と、
前記光源からの射出光が一方の面に入射する透光性基板と、
前記透光性基板の前記光源からの射出光が入射する面とは反対側の面に設けられた光取出しシートと、を備え、
前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面とは反対側の面上に、互いに離間し且つ平行に配列された複数の第1レンズを備えた第1のレンズアレイと、互いに隣接し且つ平行に配列された複数の第2レンズを備えた第2のレンズアレイと、が形成され、
前記複数の第1レンズは、一方向に沿って延在し且つ平行に配列され、
前記複数の第2レンズは、前記第1のレンズアレイと交差する方向に沿って、互いが隣接し且つ平行に配列され、
前記第2のレンズアレイの最大高さは、前記第1のレンズアレイの最大高さよりも低いことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第1のレンズアレイの最大高さをH1とし、前記第2のレンズアレイの最大高さをH2とした場合に、
0.01<(H2/H1)<1の関係式が成立していることを特徴とする請求項1に記載した照明装置。
【請求項3】
隣接する前記第1レンズ間の配置ピッチをP1とし、前記第1レンズのレンズ幅をL1とした場合に、
0.2<(L1/P1)<0.9の関係式が成立していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した照明装置。
【請求項4】
隣接する前記第2のレンズ間の配置ピッチをP2とし、前記第2のレンズのレンズ幅をL2とした場合に、
L2=P2の関係式が成立していることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項5】
前記第1のレンズのレンズ幅をL1とし、前記第1のレンズアレイの最大高さをH1とし、前記第2のレンズのレンズ幅をL2とし、前記第2のレンズアレイの最大高さをH2とした場合に、
0.3<(H1/L1)<2の関係式と、0.3<(H2/L2)<2の関係式が成立していることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項6】
前記第1のレンズの前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角をθ1とし、前記第2のレンズの前記光取出しシートの前記透光性基板と対向する面と反対側の面からの最大傾斜角をθ2とした場合に、
30°≦θ1≦75°の関係式と、30°≦θ2≦75°の関係式が成立していることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項7】
前記第1のレンズの前記配列方向と直交する方向から見た断面形状がプリズム形状であり、
前記第1のレンズの頂角θ1aは、前記第1のレンズのレンズ幅L1に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項8】
前記第2のレンズの前記配列方向と直交する方向から見た断面形状がプリズム形状であり、
前記第2のレンズの頂角θ2aは、前記第2のレンズのレンズ幅L2に対して0%以上50%以下の範囲内の曲率を有していることを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項9】
前記光取出しシートを配置したEL素子を用いて形成した発光手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した照明装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートを配置したEL素子を備えたディスプレイ装置であって、
前記EL素子は、画素駆動されることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートと、画像表示素子と、を備える液晶ディスプレイ装置であって、
前記画像表示素子の背面に、前記光取出しシートを配置したことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
【請求項12】
請求項1から請求項9のうちいずれか1項に記載した照明装置が備える光取出しシートを配置したEL素子と、画像表示素子と、を備える液晶ディスプレイ装置であって、
前記EL素子は、画素駆動され、
前記画像表示素子の背面に、前記光取出しシートを配置したことを特徴とする液晶ディスプレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−199063(P2012−199063A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62257(P2011−62257)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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