説明

照明装置

【課題】照明装置を大面積化した際に、発光領域内での輝度のばらつきを抑制し、明るい照明装置を提供することを課題とする。
【解決手段】第1の発光ユニット14、中間導電層16、第2の発光ユニット18とこれらの発光ユニットを挟む第1の電極12、第2の電極20から成る発光セルを複数個設け、基板10上で直列接続する。この直列接続は、第1の発光セル101における第2の電極20aと、第2の発光セル102における第1の電極12bが、発光ユニットに形成された第2の開口部19bで接続する構造とする。中間導電層16は、発光ユニット14と他の発光ユニット20の端部に至らない内側に設けられている構成を含む。この構造により、一方の電極を構成する透明導電膜の抵抗率が、他方の電極を構成する金属電極に比較して高いことによる抵抗損失の影響を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネセンス(Electro Luminecence:EL)を利用した照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、10V程度の電圧を印加して100〜1000cd/mの輝度で発光する有機エレクトロルミネセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)が知られている。有機EL素子は、薄型化及び軽量化が可能であることから、表示装置や照明装置への応用が期待されている。しかし、実用化のためには、さらなる輝度の向上や劣化を抑制しなければならないことが指摘されている。
【0003】
一対の電極間に発光層を挟んだ有機EL素子は、光を外部に放射するために、少なくとも一方の電極を透明導電膜で形成する必要がある。透明導電膜は酸化インジウムや酸化亜鉛を主成分としているが、抵抗率が5×10−4Ω・cm程度であり、アルミニウムの3×10−6Ω・cmよりも100倍以上も高いことが知られている。すなわち、有機EL素子を照明の用途で面光源とし利用する場合、全面を同じ輝度で発光させるには、透明導電膜による抵抗損失を解決する必要があった。この問題点を解決するため、陽極の少なくとも一部分に、陽極より電気抵抗の低い補助電極を併設した構造が報告されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−134282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、補助電極を設ける場合、照明装置を大面積化した場合に、補助電極から離れた部分(例えば、照明装置の中心部)では、輝度低下が起きてしまう。補助電極の面積を拡大すると、有効発光面積が縮小してしまう。
【0005】
同一基板上に小面積のEL素子を複数個に分割して直列若しくは並列に接続する方法が考えられる。この場合、複数のEL素子を接続するための領域は発光しないので、照明装置における有効発光面積が縮小してしまう。すなわち、照明装置における照明パネルの単位面積当たりに換算した輝度効率は低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、照明装置を大面積化した際に、発光領域内での輝度のばらつきを抑制し、明るい照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一対の電極間に少なくとも一層の発光層を有する発光ユニットが複数個直列に接続された発光セルを複数備えた照明装置である。複数の発光セルは、直列接続となるように、一対の電極における一方の電極と他方の電極が異なる発光セル間で電気的に接続されている。直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には中間導電層が設けられている。中間導電層は、一の発光ユニットと他の発光ユニットの端部に至らない内側に設けられている構成を含む。
【0008】
本発明の照明装置は、複数の発光セルが直列接続となるように、複数の発光セルが接続される構成において、一対の電極における一方の電極と他方の電極が、発光層に形成され一方の電極を露出させる開口により接続される構成を含む。
【0009】
本発明において、発光ユニットとは、代表的には周期律第12族と第15族元素を含む母体材料と、発光中心を形成する不純物元素を含む一又は複数の層により構成される。発光ユニットは一対の電極と中間導電層を除いた要素を指す。
【0010】
中間導電層とは、一の発光ユニットと他の発光ユニットの間に挟まれ、一対の電極の一方を陽極、他方を陰極とした場合に、素子の陰極方向にホールを注入し、陽極方向に電子を注入する機能を持った層をいう。
【0011】
発光セルとは、一対の電極間に発光ユニットを挟んだものを指し、その積層体及びそれに付随する層構造若しくは電極構造などを含む場合もある。
【発明の効果】
【0012】
一対の電極間に発光層を介在させた発光セルを複数備え、複数の発光セルを直列接続となるように、一対の電極における一方の電極と他方の電極が異なる発光セル間で電気的に接続することにより、安定して発光させることができる。すなわち、一対の電極の内、一方の電極を構成する透明導電膜の抵抗率が金属電極に比較して高いことによる抵抗損失の影響を抑制することができる。
【0013】
一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には中間導電層を設けることにより、電流密度を高めることなく、発光輝度を高めることができる。また、中間導電層を、一の発光ユニットと他の発光ユニットの端部に至らない内側に設けることにより、発光セルの隣接間リーク電流を抑えることができる。
【0014】
複数の発光セルが接続される構成において、一対の電極における一方の電極と他方の電極が、発光層に形成され一方の電極を露出させる開口により接続される構成とすることで、実効的に発光に寄与する発光セルの面積を高めることができる。
【0015】
この構成により、照明装置を大面積化した際に、発光領域内での輝度のばらつきを抑制し、明るい照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、一対の電極間に少なくとも一層の発光層を有する発光ユニットが複数個直列に接続され、該直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には中間導電層が設けられている複数個の発光セルを備えた照明装置である。この複数個の発光セルの内、隣接するものについては互いに直列に接続されている。すなわち、一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続されている。発光セルは短冊状に形成され、その短尺方向に複数個が配列して電気的な直列接続を形成する。
【0017】
このように、発光セルを複数個に分割して、直列に接続することにより、一対の電極の一方若しくは双方が影響する抵抗損失を抑えることができる。例えば、一方の電極を酸化インジウムや酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜で形成する場合、抵抗率が5×10−4Ω・cm程度となりアルミニウムなどの金属よりも100倍程度高い値となる。この場合、発光セルを短冊状に形成し、その短尺方向に複数個を直列接続を形成するように配列させることで、照明装置における発光部の面積が増大しても、直列抵抗の増大を抑えることができる。
【0018】
一対の電極における一方の電極は透明電極とし、他方の電極は光反射性の電極とすることが好ましい。発光セルは光を放射するため、少なくとも一方を透明電極で形成することで有効に光を放射させることができる。また、他方の電極は少なくとも可視光帯域の反射率が高い金属で形成することが好ましい。透明電極が形成された面に、発光ユニットで発光した光を放射させるために有効である。また、他の態様として、両方の電極を透明電極で形成することもできる。この構成にすると、発光セルの両面から光を放射することができる。そのため、照明装置として意匠を凝らすことができる。
【0019】
複数の発光セルを直列に接続する構造において、その電気的接続部の構造は照明装置における有効発光面積に影響を与える。この照明装置を面光源として捉えた場合に、実効的な輝度(発光パネル1枚当たりの輝度)に影響を与えることとなる。そのため、発光に寄与しない直列接続部の面積は極力小さいことが望ましい。発光セルは、一対の電極と複数の発光ユニットを直列に接続した構成を有するが、この発光ユニットの下層にある電極を露出させる開口部を、発光ユニットに形成することで電気的接続部を形成する。この開口部を利用して、一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される構造を形成する。この開口部は、発光ユニットを直接的に加工して形成する。すなわち薄膜を除去して形成することができる。また、一対の電極として、短冊状若しくは矩形状の第1の電極、第2の電極及び発光ユニットをそれぞれ短尺方向にずらして配置させても同様な接続構造を形成することができる。
【0020】
このように、一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される構造において、発光ユニットの下層にある電極を露出させる開口部を発光ユニットに形成することで、接続のために必要とする面積を縮小することができる。この電気的接続部を形成するための開口部を、発光セルを形成する基板の端部に至らない内側に形成することにより、発光セルのリーク電流を抑制することができる。
【0021】
発光セルの構成に関し、直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には、該発光ユニットの端部に至らない内側に中間導電層を設ける構成とすることが好ましい。中間導電層は、一の発光ユニットと他の発光ユニットの間に挟まれ、一対の電極の一方を陽極、他方を陰極とした場合に、素子の陰極方向にホールを注入し、陽極方向に電子を注入する機能を持つ層である。
【0022】
中間導電層として、可視光を透過することができる透明導電膜材料を適用することができる。透明導電膜材料としては、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化亜鉛などであり、導電性金属酸化物の中から選択される。
【0023】
中間導電層の他の形態としては、陰極側に正孔発生層、陽極側に電子発生層を配置した積層構造としても良い。正孔発生層は無機化合物と有機化合物との複合材料でなり、この層において無機化合物は有機化合物に対して電子受容性を示す物質であり、有機化合物は正孔輸送性に優れた物質である。無機化合物としては特に限定されないが、遷移金属酸化物が好ましく、具体的には酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが好適である。
【0024】
有機化合物としては正孔輸送性有機化合物として正孔移動度が10−6cm/V・sec以上であるものを適用することが好ましい。例えば、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス{N−[4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル]−N−フェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などに代表される芳香族アミン化合物は、ホールを発生しやすく、有機化合物として好適な化合物群である。電子発生層は電子を発生できる層であれば特に限定はされないが、具体的には、電子輸送性の有機化合物と、その有機化合物に対して電子供与性を示す物質とを有する層を含んでいればよい。
【0025】
電子輸送性の有機化合物としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)−トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−ビフェニリル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)などを用いることができる。また、電子供与性を示す物質としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属、あるいはそれらの合金が挙げられる。また、酸化リチウム、酸化バリウム、窒化リチウム、窒化マグネシウム、窒化カルシウムなどのアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を用いることもできる。
【0026】
中間導電層を介して直列に接続する発光ユニットの数は二層に限定されない。発光ユニットを積層する毎に中間導電層を設ければ二層以上の発光ユニットを積層することができる。一対の電極間に複数の発光ユニットを中間導電層で仕切って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度で発光セルを発光させることができる。特に照明用途の場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、このような中間導電層を、発光ユニットの端部に至らない内側に設けることで、異なる発光セルの間にリーク電流が流れてしまうことを防止することができる。
【0027】
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じ要素を指す符号は異なる図面で共通して用い、その場合における繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例1】
【0028】
本実施例は、エレクトロルミネセンスを利用する照明装置において、発光領域内での輝度のばらつきを抑制し、明るい照明装置を提供するための構成について図1と図2を参照して説明する。なお、図1は本実施例に係る照明装置の作製方法及び構造を説明する断面図であり、図2は同平面図を示している。以下の説明では、適宜両図を参照して説明する。
【0029】
基板上に発光セルの一方の電極である第1の電極を形成する。第1の電極を透明電極で形成する場合には、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化亜鉛などの酸化物導電性材料を用いて形成することが好ましい。また、第1の電極を反射電極とする場合には、典型的にはアルミニウムを用いることが好ましい。アルミニウムは可視光帯域における反射率が高く、真空蒸着法やスパッタリング法で容易に形成することができるからである。その他の金属としては、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、銀などを用いることもできる。
【0030】
第1の電極は1枚の基板上で複数に分割することが好ましい。これは複数の発光セルを基板上に形成するためである。1枚の基板上で第1の電極を分割する数は任意であるが、発光セルを形成したときの直列抵抗の影響を考慮して寸法を決めることが好ましい。分割された後の第1の電極の形状も任意であるが、長方形若しくは短冊状とする場合には、短尺方向に発光セルが直列接続されるような配列とすることが好ましい。これは、第1の電極による直列抵抗の影響を抑えるためである。
【0031】
図1(A)及び図2(A)は、複数に分割された、第1の電極12a、12b、12cが基板10に形成された状態を示している。これは、基板10上に透明導電膜又は金属膜を全面に形成した後、第1の開口部13a、13b、13cを形成することにより形成することができる。第1の開口部はレーザ加工やリフトオフ加工で透明導電膜又は金属膜を直接的に加工しても良いし、フォトリソグラフィー技術を用いてマスクパターンを基板上に形成し、エッチング加工しても良い。第1の開口部13a、13bは第1の電極を隣接分離するために設けられている。
【0032】
第1の開口部13c、13dは基板10において発光セルが直列接続される方向(基板の長辺方向)と平行な方向に設けられている。第1の開口部13c、13dは基板10の端面にまで回り込んで透明導電膜又は金属膜が成膜された場合に、第1の電極が実質的に分離不能になるため、設けておくことが好ましい。
【0033】
次いで第1の発光ユニット、中間導電層、第2の発光ユニットを形成する。第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットは、代表的には周期律第12族と第15族元素を含む母体材料と、発光中心を形成する不純物元素を含む一又は複数の層により形成する。また、中間導電層は、正孔発生層と電子発生層を積層した構成とすることが好ましい。第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットで発光した光を有効に取り出すためである。その他に、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化亜鉛などの透明導電膜材料で形成しても良い。なお、発光ユニット、中間導電層及びこの両者を備えた発光セルの構成は、実施例4と実施例5で詳細に説明する。
【0034】
第1の発光ユニット、中間導電層及び第2の発光ユニットは、分割された第1の電極12a、12b、12c上に順次形成する。そして、第2の開口部を形成して複数に分割する。
【0035】
図1(B)及び図2(B)は第1の発光ユニット、中間導電層及び第2の発光ユニットを分離する第2の開口部19a、19b、19cが形成された状態を示している。それにより、第1の電極12aに対応して第1の発光ユニット14a、中間導電層16a、第2の発光ユニット18aが形成されることとなる。他も同様に、第1の電極12bに対応して第1の発光ユニット14b、中間導電層16b、第2の発光ユニット18bが形成され、第1の電極12cに対応して第1の発光ユニット14c、中間導電層16c、第2の発光ユニット18cが形成されている。第1の発光ユニット、中間導電層及び第2の発光ユニットの積層体は、第1の開口部13a、13b、13cを被覆し、第1の電極12b、12cの端部にかかるように形成しても良い。
【0036】
第2の開口部19a、19b、19cは、第1の発光ユニット、中間導電層及び第2の発光ユニットを分離すると共に、第1の電極12a、12b、12cを露出させている。この露出面は第1の電極の表面であっても良いし、第1の電極を若干エッチングして除去された新しい表面でも良い。また、第1の電極を第2の開口部に合わせて除去してその側端面が露出する状態としても良い。
【0037】
次に、第2の発光ユニットと接触し、第2の開口部を介して第1の電極の露出面とも接触するように、第2の電極を形成する。第2の電極は、透明送電膜又は金属膜で形成する。この場合、第1の電極を透明導電膜で形成した場合には、第2の電極は金属膜で形成することが好ましい。第1の電極を金属膜で形成した場合には、第2の電極を透明導電膜で形成することもできる。また、両者を透明導電膜で形成しても良い。第2の電極は、第2の発光ユニット上から全面に被膜を形成し、第3の開口部を形成して、第1の電極と対を成すようにする。
【0038】
図1(C)及び図2(C)は、第2の電極20a、20b、20c、20dが形成された状態を示している。第3の開口部21a、21b、21cは第2の電極を分離している。第2の電極20aは、第1の電極12aに対応して形成され、この両者の間に第1の発光ユニット14a、中間導電層16a、第2の発光ユニット18aが挟まれている。これらが一体となって第1の発光セル101を形成している。第2の電極20aは、隣接する第1の電極12bと第2の開口部19bを介して電気的に接触している。第2の電極20bは、第1の電極12bに対応して形成され、この両者の間に第1の発光ユニット14b、中間導電層16b、第2の発光ユニット18bが挟まれている。これらが一体となって第2の発光セル102を形成している。第2の電極20bは、隣接する第1の電極12cと第2の開口部19cを介して電気的に接触している。第2の電極20cは、第1の電極12cに対応して形成され、この両者の間に第1の発光ユニット14c、中間導電層16c、第2の発光ユニット18cが挟まれている。これらが一体となって第3の発光セル103を形成している。
【0039】
このように、各層に応じた開口部を形成することにより、第1の発光セル101、第2の発光セル102、第3の発光セル103を基板10上で直列に接続させることができる。なお、第2の電極20dは、第1の発光セル101における第1の電極12aの取り出し端子である。すなわち、第2の電極20dと第2の電極20cの間に所定の電圧を印加することにより、第1の発光セル101、第2の発光セル102、第3の発光セル103を発光させることができる。
【0040】
本実施例に係る照明装置は、複数の発光セルを直列に接続する際に、電気配線を引き回す必要が無く、積層する被膜のみで電気的な接続をすることができる。それにより、照明装置における接点不良を無くすことができる。
【0041】
また、本実施例に係る照明装置は、1枚の基板上で発光セルを複数個に分割して直列に接続されているので、透明電極を用いることによる抵抗損失を抑えることができる。それにより、照明装置における発光部の面積が増大しても、直列抵抗の増大を抑えることができる。一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される構造において、発光ユニットの下層にある電極を露出させる開口部を発光ユニットに形成することで、接続のために必要とする面積を縮小することができる。
【実施例2】
【0042】
本実施例は、エレクトロルミネセンスを利用する照明装置において、発光領域内での輝度のばらつきを抑制し、明るい照明装置を提供するためであって、実施例1とは異なる構成について図3と図4を参照して説明する。なお、図3は本実施例に係る照明装置の作製方法及び構造を説明する断面図であり、図4は同平面図を示している。以下の説明では、適宜両図を参照して説明する。また、本実施例において、基板上で第1の電極を分離形成するまでは実施例1と同様であるので、その説明は省略する。
【0043】
図3(A)及び図4(A)は、第1の電極12a、12b、12cを被覆するように第1の発光ユニット14を形成する。その上に、中間導電層16a、16b、16cを分離形成する。中間導電層は、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化亜鉛などの透明導電膜材料で形成することが好ましい。第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットで発光した光を有効に取り出すためである。中間導電層は電子ビーム蒸着法、スパッタリング法などで形成することができる。この場合、シャドーマスク(所定のパターンで開口部が形成された金属やセラミクスで形成されたマスク。成膜時に基板に近接させて、被膜の付着を物理的に遮断することにより、基板上に所定のパターンを形成するためのもの。)を用いることで、第1の発光ユニット14上に分割した状態で形成することができる。勿論、中間導電層を分離形成する方法はこれに限定されず、フォトリソグラフィー技術を使ってマスクパターンを形成し、中間導電層を選択的に加工しても良い。分離形成される中間導電層16a、16b、16cは、いずれも第1の発光ユニット14の端部に至らない内側に形成されている。その後、第2の発光ユニットを形成し、実施例1と同様に開口部を形成する。
【0044】
図3(B)及び図4(B)は、第1の発光ユニット、中間導電層及び第2の発光ユニットを分離する第2の開口部19a、19b、19cが形成された状態を示している。それにより、第1の電極12aに対応して第1の発光ユニット14a、中間導電層16a、第2の発光ユニット18aが形成されることとなる。他も同様に、第1の電極12bに対応して第1の発光ユニット14b、中間導電層16b、第2の発光ユニット18bが形成され、第1の電極12cに対応して第1の発光ユニット14c、中間導電層16c、第2の発光ユニット18cが形成されている。
【0045】
図3(C)及び図3(C)は、実施例1と同様にして、第2の電極20a、20b、20c、20dが形成された状態を示している。第3の開口部21a、21b、21cは第2の電極を分離している。このようにして、第1の発光セル101、第2の発光セル102、第3の発光セル103を基板10上で直列に接続させることができる。
【0046】
この場合、中間導電層16a、16b、16cの端部は、第2の発光ユニット18a、18b、18cで覆われている。すなわち、中間導電層16a、16b、16cは、それぞれ、第1の発光ユニット14a、14b、14cと第2の発光ユニット18a、18b、18cの内側に形成されている。このような構成とすることで、中間導電層16a、16b、16cは、第2の開口部19a、19b、19cにおいて端部が露出しない構成とすることができる。また、基板10の周辺端部領域においても同様である。それにより、中間導電層16a、16b、16cが、第2の開口部19a、19b、19cで、それそれ、第2の電極20a、20b、20cと接触しない構造とすることができる。
【0047】
この構造は、中間導電層として比較的導電率の高い透明導電膜を用いて形成した場合に有用である。すなわち、中間導電層が原因となって、第2の電極にリーク電流が流れてしまうことを防止することができる。これは、第1の発光セル101、第2の発光セル102、第3の発光セル103の基板端部領域でも同様である。
【0048】
その他の構成については、実施例1と同様であるので、同じ作用効果を奏することができる。なお、発光ユニット、中間導電層及びこの両者を備えた発光セルの構成は、実施例4と実施例5で詳細に説明する。
【実施例3】
【0049】
本実施例は、エレクトロルミネセンスを利用する照明装置において、発光領域内での輝度のばらつきを抑制し、明るい照明装置を提供するためであって、実施例1及び実施例2とは異なる構成について図5と図6を参照して説明する。本実施例では、被膜の形成時にシャドーマスクを用い、比較的簡便に照明装置を作製する方法について説明する。なお、図5は本実施例に係る照明装置の作製方法及び構造を説明する断面図であり、図6は同平面図を示している。以下の説明では、適宜両図を参照して説明する。
【0050】
図5(A)及び図6(A)は、複数に分割された、第1の電極12a、12b、12cが基板10に形成された状態を示している。さらに、第1の電極12a上に第1の発光ユニット14a及び中間導電層16aが形成され、第1の電極12b上に第1の発光ユニット14b及び中間導電層16bが形成され、第1の電極12c上に第1の発光ユニット14c及び中間導電層16cが形成される状態を示している。
【0051】
第1の電極を透明電極で形成する場合には、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化亜鉛などの酸化物導電性材料を用いて形成することが好ましい。また、第1の電極を反射電極とする場合には、典型的にはアルミニウムを用いることが好ましい。その他の金属として、チタン、タンタル、モリブデン、タングステン、銀などを用いることもできる。第1の電極は、真空蒸着若しくはスパッタリングによる成膜時にシャドーマスクを用いて複数に分離形成することができる。また、導電性ペーストを用いてスクリーン印刷で形成することもできる。この場合、図6(A)に示すように、第1の電極12a、12b、12cは、基板10の端部に至らない内側に形成することが好ましい。それにより、基板10の端部を介してリークする電流を防止することができる。
【0052】
第1の発光ユニット及び中間導電層も同様に、真空蒸着若しくはスパッタリングによる成膜時にシャドーマスクを用いて複数に分離形成する。第1の発光ユニット及び中間導電層は連続して成膜することができるので、略同じパターンで形成される。すなわち、同じシャドーマスクを用いて第1の発光ユニットと中間導電層を形成するので、中間導電層が第1の電極と接触してしまうことを防ぐことができる。
【0053】
図5(B)及び図6(B)は、第2の発光ユニットを形成した状態を示している。第2の発光ユニットは、第1の発光ユニットとは異なるシャドーマスクで形成する。この場合、第2の発光ユニット18aは、中間導電層16a上に形成され、その側端部及び第1の発光ユニット14aの側端部を覆うように形成する。第2の発光ユニット18b、第2の発光ユニット18cについても同様である。第2の発光ユニットは、第1の電極を完全に被覆するものではなく、少なくとも一方の側端部を露出させるように形成する。このような形状はシャドーマスクを用いて形成することができる。
【0054】
図5(C)及び図6(C)は、シャドーマスクを使って、第2の電極20a、20b、20cを形成した状態を示している。第2の電極20aは、第1の電極12aに対応して形成され、この両者の間に第1の発光ユニット14a、中間導電層16a、第2の発光ユニット18aが挟まれている。これらが一体となって第1の発光セル101を形成している。第2の電極20bは、第1の電極12bに対応して形成され、この両者の間に第1の発光ユニット14b、中間導電層16b、第2の発光ユニット18bが挟まれている。これらが一体となって第2の発光セル102を形成している。第2の電極20cは、第1の電極12cに対応して形成され、この両者の間に第1の発光ユニット14c、中間導電層16c、第2の発光ユニット18cが挟まれている。これらが一体となって第3の発光セル103を形成している。
【0055】
第2の電極は第2の発光ユニットと接し、隣接する発光セルの第1の電極と電気的な接続関係を構成している。すなわち、第2の電極20aは、隣接する第1の電極12bと電気的に接触するように延設されている。また、第2の電極20bは、隣接する第1の電極12cと電気的に接触するように延設されている。なお、第2の電極20dは、第1の発光セル101における第1の電極12aの取り出し端子である。すなわち、第2の電極20dと第2の電極20cの間に所定の電圧を印加することにより、第1の発光セル101、第2の発光セル102、第3の発光セル103を発光させることができる。
【0056】
このようにして、第1の発光セル101、第2の発光セル102、第3の発光セル103を基板10上で直列に接続させることができる。この場合、中間導電層16a、16b、16cの端部は、第2の発光ユニット18a、18b、18cで覆われている。すなわち、中間導電層16a、16b、16cは、それぞれ、第1の発光ユニット14a、14b、14cと第2の発光ユニット18a、18b、18cの内側に形成されている。このような構成とすることで、中間導電層16a、16b、16cが、それそれ、第2の電極20a、20b、20cと接触しない構造とすることができる。
【0057】
この構造は、実施例2と同様に、中間導電層が原因となって、第2の電極にリーク電流が流れてしまうことを防止することができる構造である。これは、第1の発光セル101、第2の発光セル102、第3の発光セル103の基板端部領域でも同様である。
【0058】
その他の構成については、実施例1及び実施例2と同様であるので、同じ作用効果を奏することができる。なお、発光ユニット、中間導電層及びこの両者を備えた発光セルの構成は、実施例4と実施例5で詳細に説明する。
【実施例4】
【0059】
本実施例は、発光ユニットの発光層として適した発光材料について説明する。本実施例で例示する発光材料は、実施例1乃至3の発光ユニットに適用することができる。なお、本実施例で例示する発光材料は、母体材料及び発光中心となる少なくとも1種類以上の不純物元素で構成される材料である。なお、これら不純物元素は母体材料を構成する元素を含まない。
【0060】
発光材料に用いる母体材料は無機材料として、硫化物、酸化物、窒化物を用いる。硫化物としては、例えば、硫化亜鉛(ZnS)、硫化カドミウム(CdS)、硫化カルシウム(CaS)、硫化イットリウム(Y)、硫化ガリウム(Ga)、硫化ストロンチウム(SrS)、硫化バリウム(BaS)などを用いることができる。酸化物としては、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)などを用いることができる。また、窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)などを用いることができる。さらに、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)なども用いることができ、硫化カルシウム−ガリウム(CaG2S)、硫化ストロンチウム−ガリウム(SrGa)、硫化バリウム−ガリウム(BaGa)、などの3元系の混晶であってもよい。
【0061】
不純物元素としては、金属イオンの内殻電子遷移を利用した発光中心を形成するものとして、マンガン(Mn)、銅(Cu)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)などの金属元素を用いることができる。なお、電荷補償として、フッ素(F)、塩素(Cl)などのハロゲン元素が添加されていてもよい。
【0062】
また、ドナー−アクセプタ再結合を利用した発光中心として、第一の不純物元素及び第二の不純物元素を含む発光材料を用いることができる。第一の不純物元素としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)などの金属元素、珪素(Si)などを用いることができる。第二の不純物元素は、例えば、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)などを用いることができる。
【0063】
本実施例に係る発光材料は固相反応、すなわち、母体材料及び不純物元素を秤量し、乳鉢で混合、電気炉で加熱して反応させる方法により、母体材料に不純物元素を含有させる。例えば、母体材料と、第一の不純物元素又は第一の不純物元素を含む化合物と、第二の不純物元素又は第二の不純物元素を含む化合物をそれぞれ秤量し、乳鉢で混合した後、電気炉で加熱、焼成を行う。焼成温度は、700〜1500℃が好ましい。温度が低すぎる場合は固体反応が進まず、温度が高すぎる場合は母体材料が分解してしまうからである。なお、粉末状態で焼成を行ってもよいが、ペレット状態で焼成を行うことが好ましい。
【0064】
また、固相反応を利用する場合の不純物元素として、第一の不純物元素と第二の不純物元素で構成される化合物を組み合わせて用いてもよい。この場合、不純物元素が拡散されやすく固相反応が進みやすくなるため、均一な発光材料を得ることができる。さらに余分な不純物元素が入らないため、純度の高い発光材料が得ることができる。第一の不純物元素と第二の不純物元素で構成される化合物としては、例えば、フッ化銅(CuF)、塩化銅(CuCl)、ヨウ化銅(CuI)、臭化銅(CuBr)、窒化銅(CuN)、リン化銅(CuP)、フッ化銀(CuF)、塩化銀(CuCl)、ヨウ化銀(CuI)、臭化銀(CuBr)、塩化金(AuCl)、臭化金(AuBr)、塩化白金(PtCl)などを用いることができる。また、第二の不純物元素の代わりに第三の不純物元素を含んだ発光材料を用いてもよい。
【0065】
第三の不純物元素は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)などを用いることができる。これらの不純物元素の濃度は、母体材料に対して0.01〜10mol%であれば良く、好ましくは0.1〜5mol%の範囲である。
【0066】
高い電気導電性を有する発光材料としては、母体材料として、上述した材料を用い、上述した第一の不純物元素及び第二の不純物元素及び第三の不純物元素を含む発光材料を添加した発光材料を用いることができる。これらの不純物元素の濃度は、母体材料に対して0.01〜10mol%であれば良く、好ましくは0.1〜5mol%の範囲であれば良い。
【0067】
第二の不純物元素と第三の不純物元素で構成される化合物としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、ヨウ化リチウム(LiI)、臭化銅(LiBr)、塩化ナトリウム(NaCl)などのハロゲン化アルカリ、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミニウムアンチモン(AlSb)、ガリウムリン(GaP)、ガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、インジウムヒ素(InAs)、インジウムアンチモン(InSb)などを用いることができる。
【0068】
母体材料として、上述した材料を用い、上述した第一の不純物元素及び第二の不純物元素及び第三の不純物元素を含む発光材料を用いた発光層は、高電界により加速されたホットエレクトロンを必要とすることなく、発光することが可能である。つまり、発光素子に高電圧を印加する必要がなくなるため、低駆動電圧で動作可能な発光素子を得ることができる。また、低駆動電圧で発光可能であるため、消費電力も低減された発光素子を得ることができる。また、さらに他の発光中心となる元素が含まれていてもよい。
【0069】
また、母体材料として上述した材料を用い、第二の不純物元素及び第三の不純物元素及び上述した金属イオンの内殻電子遷移を利用した発光中心を含む発光材料を用いることができる。この場合、発光中心となる金属イオンは、母体材料に対して0.05〜5atom%であることが好ましい。また、第二の不純物元素の濃度は、母体材料に対して0.05〜5atom%であることが好ましい。また、第三の不純物元素の濃度は、母体材料に対して0.05〜5atom%であることが好ましい。このような構成の発光材料は、低電圧で発光可能である。よっって、低駆動電圧で発光可能な発光素子を得ることができるため、消費電力が低減された発光素子を得ることができる。また、さらに他の発光中心となる元素が含まれていてもよい。
【0070】
例えば、特開2005−336275号公報に開示されているものとして、母体材料としてZnS、第1の不純物としてCu、第2の不純物としてCl及びGa、第3の不純物元素してAsを含み、さらに他の発光中心としてMnを含む発光材料を用いることも可能である。このような発光材料を形成するには、以下に示す方法を用いることができる。ZnSに、硫酸銅(CuS)、硫黄、酸化亜鉛(ZnO)を配合した発光体(ZnS:Cu,Cl)にMnを加え、真空中で2〜4時間程度焼成する。焼成温度は700〜1500℃であることが好ましい。この焼成したものを粉砕して粒径5〜20μmにし、粒径1〜3μmのGaAsを加え撹拌する。この混合物を硫黄ガスを含む窒素気流中で約500〜800℃で2〜4時間焼成することにより、発光材料を得ることができる。この発光材料を用いて、蒸着法などにより薄膜を形成することにより、発光素子の発光層として用いることができる。
【0071】
また、上記の発光材料に対して、さらに、不純物元素を添加することにより、発光材料の結晶系を制御することができる。結晶系を制御できる不純物としては、立方晶系のものとして、GaP、GaAs、GaSb、InP、InAs、InSb、Si、Geなどを挙げることができる。また、六方晶系のものとして、GaN、InNを挙げることができる。他にもAlP、AlN、AlSbなどを用いることができる。発光材料の結晶系を制御することにより、発光効率を向上させることができる。
【0072】
本実施例の発光材料を用いることにより、実施例1乃至3の照明装置を低電圧で駆動させることができる。また、照明装置を直流電圧で発光させることも可能となる。
【実施例5】
【0073】
本実施例は、発光ユニットと、当該発光ユニットを用いた発光セルの構成について図面を参照して説明する。
【0074】
図7(A)は、第1の電極12、第1の発光ユニット14、中間導電層16、第2の発光ユニット18、第2の電極20が積層された発光セルを示している。この発光セルは、第1の電極12と、第2の電極20の間に電圧を印加することで発光させることができる。
【0075】
第1の電極12は、種々の金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。第1の電極12を透明電極とする場合には、酸化インジウム酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム酸化スズ、酸化インジウム酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム酸化スズなどを用いて形成する。これらの導電性金属酸化物膜は、スパッタリングにより作製することができる。例えば、酸化インジウム酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム−酸化スズは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。第1の電極12を金属電極とする場合には、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)などを用いることができる。
【0076】
第2の電極20は、第1の電極12と同様にして形成することができる。第2の電極20は第1の電極12と対を成して形成するので、一方の電極を透明電極とする場合には、他方を金属電極で形成すれば良い。また、両方の電極を透明電極で形成しても良い。
【0077】
第1の発光ユニット14及び第2の発光ユニット18は、発光層201により形成されている。この発光層201は、実施例4で説明した発光材料を用いて作製することができる。
【0078】
中間導電層16は、中間導電層、第2の発光ユニットを形成する。第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットは、代表的には周期律第12族と第15族元素を含む母体材料と、発光中心を形成する不純物元素を含む一又は複数の層により形成する。また、中間導電層は、酸化インジウム、酸化インジウム酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム酸化亜鉛などの透明導電膜材料で形成することが好ましい。第1の発光ユニット及び第2の発光ユニットで発光した光を有効に取り出すためである。中間導電層の他の構成として、正孔発生層と電子発生層を積層した構成としても良い。
【0079】
正孔発生層は無機化合物と有機化合物との複合材料で形成することができる。正孔発生層を形成するものとして、無機化合物は有機化合物に対して電子受容性を示す物質であり、有機化合物は正孔輸送性に優れた物質である。無機化合物としては特に限定されないが、遷移金属酸化物が好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムが好適である。いずれにしても、中間導電層16は可視光領域の吸収ができるだけ小さいことが望ましい。
【0080】
有機化合物としては正孔輸送層の材料として、TDATA、MTDATA、m−MTDAB、TPD、NPB、DNTPD、TCTAなどに代表される芳香族アミン化合物は、ホールを発生しやすく、有機化合物として好適な化合物群である。
【0081】
電子発生層としては、電子輸送性の有機化合物と、その有機化合物に対して電子供与性を示す物質とを有する層を含んでいればよい。電子輸送性の有機化合物としては、Alq、Almq、BeBq、BAlq、Zn(BOX)、Zn(BTZ)、BPhen、BCP、PBD、OXD−7、TPBI、TAZ、p−EtTAZなどを用いることができる。また、電子供与性を示す物質としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ金属又はアルカリ土類金属、あるいはそれらの合金がある。また、酸化リチウム、酸化バリウム、窒化リチウム、窒化マグネシウム、窒化カルシウムなどのアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物を用いることもできる。
【0082】
いずれにしても、第1の発光ユニット14と第2の発光ユニット18に挟まれる中間導電層16は、第1の電極12と第2の電極20に電圧を印加したときに、一方の側の発光ユニットに電子を注入し、他方の側の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。
【0083】
図7(A)では、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、同様に、3つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても適用することができる。一対の電極間に複数の発光ユニットを中間導電層で連結することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度で発光させつつ劣化を抑制することができる。
【0084】
図7(B)は、第1の発光ユニット14及び第2の発光ユニット18の構成として、発光層201とバリア層202を組み合わせたものである。バリア層202は発光層201の陰極側に配置することが好ましい。バリア層202は膜厚を0.1〜2nm程度とし、トンネル電流が流れる厚さで形成する。バリア層202は、絶縁性又は半絶縁性の金属酸化物又は金属窒化物を用いることができる。例えば、アルミニウム、タングステン、クロム、モリブデン、チタンなどの酸化物又は窒化物を用いることができる。このような金属酸化物又は金属窒化物の薄膜はスパッタリング法で形成することができる。また、金属電極の表面を陽極酸化して形成することもできる。
【0085】
バリア層202を設けることにより、電極と発光層の界面でキャリアが再結合してしまうことを防止することができる。また、発光層に注入されたキャリアに対しバリアとなるので、キャリアが発光に寄与せずそのまま電極や中間導電層に流れ込んでしまう確率を抑制することができる。このような構成とすることで、発光効率を高めることができる。なお、図7(B)は、第1の電極12が陽極、第2の電極20が陰極の場合を想定している。第1の電極12を陰極、第2の電極20を陽極とする場合には、バリア層202の配置は反転する。
【0086】
図7(C)は、第1の発光ユニット14及び第2の発光ユニット18の構成として、発光層201の両側にバリア層202を設けたものである。バリア層202は膜厚を0.1〜2nm程度とし、トンネル電流が流れる厚さで形成する。ことで、図7と同様の効果が得られる。また、バリア層202を10nm〜1000nmとすると、交流駆動により発光させることもできる。
【0087】
図8(A)、(B)は、発光セルにおいて、無機材料で形成される発光層に、キャリア注入性を高めるために有機無機複合材料層を組み合わせる態様を示している。この場合も発光セルは、第1の電極12、第1の発光ユニット14、中間導電層16、第2の発光ユニット18、第2の電極20で構成される。
【0088】
図8(A)は、第1の発光ユニット14及び第2の発光ユニット18の構成として、発光層201と有機無機複合材料層203を組み合わせる構成を示している。有機無機複合材料層203は正孔を注入するものとして、発光層201の陽極側に設けることが好ましい。図8(A)は、第1の電極12が陽極、第2の電極20が陰極の場合を想定している。第1の電極12を陰極、第2の電極20を陽極とする場合には、有機無機複合材料層203の配置を反転させれば良い。
【0089】
有機無機複合材料層203は、有機化合物と無機化合物とを複合してなる有機無機複合材料である。有機無機複合材料に用いる有機化合物として、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマーなど)などを化合物を用いることができる。なお、有機無機複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/V・sec以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。以下では、有機無機複合材料に用いることのできる有機化合物を例示する。
【0090】
芳香族アミン化合物としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:TPD)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)などを挙げることができる。
【0091】
また、以下に示す有機化合物を用いることにより、450nm〜800nmの波長領域において、吸収ピークを有しない有機無機複合材料を得ることができる。例えば、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)などを挙げることができる。
【0092】
カルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)などがある。
【0093】
また、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(N−カルバゾリル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(略称:CzPA)、2,3,5,6−トリフェニル−1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼンなどを用いることができる。
【0094】
また、450nm〜800nmの波長領域において、吸収ピークを有しない有機無機複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDNA)、9,10−ジ(ナフタレン−1−イル)−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(4−フェニルフェニル)−2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ジ(4−メチルナフタレン−1−イル)アントラセン(略称:DMNA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(ナフタレン−1−イル)フェニル]アントラセン、9,10−ビス[2−(ナフタレン−1−イル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(ナフタレン−1−イル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ジ(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレンなどがある。また、この他、ペンタセン、コロネンなども用いることができる。このように、1×10−6cm/V・sec以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0095】
450nm〜800nmの波長領域において、吸収ピークを有しない有機無機複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)などがある。
【0096】
ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)などの高分子化合物を用いることもできる。
【0097】
有機無機複合材料に用いる無機化合物としては、遷移金属酸化物が好ましい。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物であることが好ましい。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く扱いやすいので好ましい材料である。
【0098】
上記のような有機化合物と無機化合物を複合化して(互いに相互作用させて)、得られる有機無機複合材料は、正孔注入性、正孔輸送性に優れている。また導電性が高い。よって、電極からキャリアを注入しやすく、発光層へ効率良くキャリアを輸送することができる。また、導電性金属酸化物、各種金属とオーム接触をすることが可能となるため、仕事関数に依らず電極を形成する材料を選択することができる。また、450nm〜800nmの波長領域において、吸収ピークを有しない有機無機複合材料を、有機無機複合材料層203として用いることにより、発光層201の発光を吸収することなく効率良く透過し、外部取り出し効率を向上させることができる。
【0099】
また、有機化合物と無機化合物とを複合した有機無機複合材料を含む層は導電性が高いため、有機無機複合材料を含む層を厚膜化した場合でも、駆動電圧の上昇を抑制することができる。よって、駆動電圧の上昇を抑制しつつ、外部への光の取り出し効率が高くなるように有機無機複合材料を含む層の膜厚を最適化することが可能となる。また、駆動電圧を上昇させることなく、光学設計による色純度の向上を実現することができる。
【0100】
なお、有機無機複合材料を含む層の製造方法は、湿式法、乾式法を問わず、どのような手法を用いても良い。例えば、有機無機複合材料を含む層は、上述した有機化合物と無機化合物との共蒸着で作製することができる。また、上述した有機化合物と金属アルコキシドを含む溶液を塗布し、焼成することによって得ることもできる。なお、酸化モリブデンは真空中で蒸発しやすく、作製プロセスの面からも好ましい。
【0101】
このように、第1の電極12(陽極)と発光層201の間、若しくは中間導電層16と発光層201の間に有機無機複合材料層203を設けることで、発光層に対する正孔の注入性を向上させることができる。発光層201を形成する母材料は導電型がn型であるので、正孔注入性を向上させる有機無機複合材料層203を組み合わせることにより、キャリアの注入性を高めることができる。それにより、照明装置において、低電圧の点灯を可能とし、発光効率を高めることができる。すなわち、低消費電力化を図ることができる。
【0102】
図8(B)は発光層201の一方の面に有機無機複合材料層203を設け、他方の面にバリア層202を設ける構成を示している。バリア層202は、電極と発光層の界面でキャリアが再結合してしまうことを防止することができる。また、発光層に注入されたキャリアに対しバリアとなるので、キャリアが発光に寄与せずそのまま電極や中間導電層に流れ込んでしまう確率を抑制することができる。このように、有機無機複合材料層203とバリア層202を組み合わせることにより、より発光効率を高めることができる。
【0103】
本実施例で示す発光セルの構成は、実施例1乃至3の照明装置と組み合わせることができる。
【実施例6】
【0104】
実施例1乃至5により、複数の発光セルを基板上で直列に接続した照明装置の態様を、図9を参照して説明する。図9は照明装置の斜視図を示している。
【0105】
基板10には、発光セルを直列に接続した発光セルアレイ形成領域24を有している。発光セルの直列接続構造は、実施例1乃至3の構成を適用している。さらに、本実施例の態様では、発光セルアレイ形成領域24を、基板10を基板上で複数に分割している。基板上で発光セルアレイ形成領域を複数に分割することで、照明装置の外形寸法が大型化した場合でも、電極により抵抗損失の影響を低減することができる。また、個別の発光セルアレイ形成領域に対応して点灯回路を設けることにより、明るさ調整機能を付加することができる。
【0106】
基板10の光放射面には拡散板28が設けられている。拡散板28は光を均一化すると共に、直列接続構造を持つ発光セルアレイ形成領域24の非発光領域(暗点部)を目立たなくして隠す機能を有する。封止板26は、発光セルアレイ形成領域24を保護するために設ける。封止板26は、ガラス、プラスチックの硬質材の他に、柔軟な可撓性フィルムを貼り付けても良い。また、封止板26側に光を放射する場合は、拡散板でそれを代用することもできる。封止板26は、基板10の端部に形成する取り出し電極30a、30b、32a、32bを露出させるように取り付けると良い。なお、発光セルアレイに対応して、取り出し電極30aと取り出し電極32a、取り出し電極30bと取り出し電極32bが設けられている。
【0107】
本発明に係る照明装置は、発光セルを直列に接続した発光セルアレイを薄膜で形成することができるので、薄型の照明装置を実現できる。実施例1乃至5で説明した発光セルアレイは、各層を薄膜で形成することができるので、20μmを超えない厚さで形成することができる。そのため、住宅の照明として用いる場合にも、壁、天井あるいは床面に、照明装置を突出させずに埋め込むことができる。勿論、薄型の液晶ディスプレーのバックライトとしても用いることができる。
【実施例7】
【0108】
本実施例は、本発明に係る照明装置の様々な態様について例示する。
【0109】
図10は、照明装置303を液晶表示装置のバックライトとして用いる態様を示している。照明装置303は実施例1乃至6で説明されるものと同様の構成を有しており、薄型で発光効率が高いという特徴を有している。この照明装置303は、液晶パネル302の背面側(表示面とは反対側)に配置され、筐体301、304によって収納される。液晶パネル302には、ドライバIC305などが実装されていても良い。
【0110】
筐体301、304の形状は用途に応じて様々な形状に変容する。例えば、ノート型パーソナルコンピュータや液晶テレビジョンなどの民生用途では、意匠を凝らした筐体に照明装置303が収納されることにより外観上は目立たなくなる。しかしながら、照明装置303は薄型であることから、筐体の中に容易に収納することができる。それにより、意匠設計の自由度を高めることができる。また、照明装置303を高輝度で発光させることにより、コントラストの高い液晶表示装置を提供することができる。また、低消費電力化にも寄与することができる。
【0111】
図11はテレビジョン装置400であり、筐体401、支持台402、表示部403、スピーカー部404、ビデオ入力端子405を含む。このテレビジョン装置において、表示部403は、透過型の液晶ディスプレーであり、バックライトとして実施例1乃至6で説明したものと同様の照明装置を含んでいる。この照明装置は、発光効率が高く、駆動電圧が低いという特徴を有している。また、外部からの衝撃などによる短絡を防止することも可能である。従って、このテレビジョン装置は低消費電力化が図られている。このような特徴により、テレビジョン装置において、電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができ、筐体401や支持台402の小型軽量化を図ることが可能である。それにより住環境に適合した製品を提供することができる。
【0112】
図12は、実施例1乃至6で説明したものと同様の照明装置を室内の照明器具501、502として用いた例である。照明器具501は天井に取り付け、照明器具502は壁に埋め込んだ態様と示している。本発明に係る照明装置は、大型化が可能であり、また大型化しても面内で均一な明るさを得ることができる。さらに薄型で低消費電力であるという特徴を備えている。
【0113】
図13は、照明器具501を天井に取り付けた状態を例示している。この照明器具501は、発光セルアレイが形成される基板10、封止板26、取り付けヒンジ34、カバー材36を含んでいる。照明装置の取り出し電極30a、30bは基板10の端部に設けられ、取り付けヒンジ34の一部がコネクタとして利用されている。カバー材36は調光機能を備えている。これらの要素が一体となった照明器具501を天井に取り付けても、図13で示すように天井面から殆ど突出させずに取り付けることができる。また、取り付けヒンジ34を強固な構造部材として設計すれば、天井の中に埋め込むこともできる。
【0114】
このように、本発明を適用した発光装置を、室内の照明器具501、502として用いた部屋に、図11で説明すテレビジョン装置400を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。このような場合、照明器具501、502及びテレビジョン装置400共に低消費電力であるので、電気料金を心配せずに、明るい部屋で迫力のある映像を鑑賞することができる。
【0115】
照明装置としては、本実施例で例示したものに限られず、住宅や公共施設の照明をはじめ、様々な形態の照明装置として応用することができる。このような場合において、本発明に係る照明装置は、発光媒体が薄膜状であるので、意匠の自由度が高いので、様々な商品を市場に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】実施例1に係る照明装置の構成を示す断面図。
【図2】実施例1に係る照明装置の構成を示す平面図。
【図3】実施例2に係る照明装置の構成を示す断面図。
【図4】実施例2に係る照明装置の構成を示す平面図。
【図5】実施例3に係る照明装置の構成を示す断面図。
【図6】実施例3に係る照明装置の構成を示す平面図。
【図7】第1の電極、第1の発光ユニット、中間導電層、第2の発光ユニット、第2の電極が積層された発光セルを示す図。
【図8】第1の電極、第1の発光ユニット、中間導電層、第2の発光ユニット、第2の電極が積層された発光セルを示す図。
【図9】照明装置の構成を示す斜視図。
【図10】照明装置を液晶表示装置のバックライトとして用いる態様を示す図。
【図11】照明装置を用いた電気器具の一例を示す図。
【図12】照明装置の一例を示す図。
【図13】図12の照明装置の取り付け構造を示す図。
【符号の説明】
【0117】
10 基板
12 第1の電極
12a 第1の電極
12b 第1の電極
12c 第1の電極
13a 第1の開口部
13b 第1の開口部
13c 第1の開口部
13d 第1の開口部
14 第1の発光ユニット
14a 第1の発光ユニット
14b 第1の発光ユニット
14c 第1の発光ユニット
16 中間導電層
16a 中間導電層
16b 中間導電層
16c 中間導電層
18 第2の発光ユニット
18a 第2の発光ユニット
18b 第2の発光ユニット
18c 第2の発光ユニット
19a 第2の開口部
19b 第2の開口部
19c 第2の開口部
20 第2の電極
20a 第2の電極
20b 第2の電極
20c 第2の電極
20d 第2の電極
21a 第3の開口部
21b 第3の開口部
21c 第3の開口部
24 発光セルアレイ形成領域
26 封止板
28 拡散板
30a 取り出し電極
30b 取り出し電極
32a 取り出し電極
32b 取り出し電極
34 取り付けヒンジ
36 カバー材
101 第1の発光セル
102 第2の発光セル
103 第3の発光セル
201 発光層
202 バリア層
203 有機無機複合材料層
301 筐体
302 液晶パネル
303 照明装置
304 筐体
305 ドライバIC
400 テレビジョン装置
401 筐体
402 支持台
403 表示部
404 スピーカー部
405 ビデオ入力端子
501 照明器具
502 照明器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、少なくとも一層の発光層を有する発光ユニットが複数個直列に接続され、該直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には中間導電層が設けられる発光セルを複数個有し、
前記一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される電気的接続部を有し、
該電気的接続部は、前記発光層の下層側に形成される一方又は他方の電極を露出させる開口部で形成されること
を特徴とする照明装置。
【請求項2】
基板上に、
一対の電極間に、少なくとも一層の発光層を有する発光ユニットが複数個直列に接続され、該直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には中間導電層が設けられる発光セルを複数個有し、
前記一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される電気的接続部を有し、
該電気的接続部は、前記発光層の下層側に形成される一方又は他方の電極を露出させる開口部で形成され、前記基板の端部に至らない内側にあること
を特徴とする照明装置。
【請求項3】
一対の電極間に、少なくとも一層の発光層を有する発光ユニットが複数個直列に接続され、該直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には、該発光ユニットの端部に至らない内側に中間導電層が設けられる発光セルを複数個有し、
前記一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される電気的接続部を有し、
該電気的接続部は、前記発光層の下層側に形成される一方又は他方の電極を露出させる開口部で形成されること
を特徴とする照明装置。
【請求項4】
基板上に、
一対の電極間に、少なくとも一層の発光層を有する発光ユニットが複数個直列に接続され、該直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には、該発光ユニットの端部に至らない内側に中間導電層が設けられる発光セルを複数個有し、
前記一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される電気的接続部を有し、
該電気的接続部は、前記発光層の下層側に形成される一方又は他方の電極を露出させる開口部で形成され、前記基板の端部に至らない内側にあること
を特徴とする照明装置。
【請求項5】
一対の電極間に、少なくとも一層の発光層を有する発光ユニットが複数個直列に接続され、該直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には、
端部が前記発光ユニットで被覆される中間導電層が設けられる発光セルを複数個有し、
前記一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される電気的接続部を有し、
該電気的接続部は、前記発光層の下層側に形成される一方又は他方の電極を露出させる開口部で形成されること
を特徴とする照明装置。
【請求項6】
基板上に、
一対の電極間に、少なくとも一層の発光層を有する発光ユニットが複数個直列に接続され、該直列接続関係にある一の発光ユニットと他の発光ユニットとの間には、
端部が前記発光ユニットで被覆される中間導電層が設けられる発光セルを複数個有し、
前記一対の電極における一方の電極と他方の電極が、異なる発光セル間で直列接続される電気的接続部を有し、
該電気的接続部は、前記発光層の下層側に形成される一方又は他方の電極を露出させる開口部で形成され、前記基板の端部に至らない内側にあること
を特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記発光層は、第2族の元素と第16族の元素を含む化合物または第12族の元素と第16族の元素を含む化合物である母体材料と発光中心である不純物元素とを含むこと
を特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記母体材料は、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化カルシウム、硫化イットリウム、硫化ガリウム、硫化ストロンチウム、硫化バリウム、酸化亜鉛、酸化イットリウム、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、セレン化亜鉛、テルル化亜鉛、硫化カルシウム−ガリウム、硫化ストロンチウム−ガリウム、硫化バリウム−ガリウムのいずれかであること
を特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記不純物元素は、発光中心となる金属元素であること
を特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項7において、
前記不純物元素は複数種含まれており、
発光中心となる金属元素と、
フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)のいずれか一と、
リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)のいずれか一であること
を特徴とする照明装置。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記金属元素は、母体材料に対して0.05乃至5atomic%の濃度で含まれていること
を特徴とする照明装置。
【請求項12】
請求項7において、
前記不純物元素は複数種含まれており、銅、銀、金、白金、珪素のいずれか一と、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムのいずれか一であること
を特徴とする照明装置。
【請求項13】
請求項7において、
前記不純物元素は複数種含まれており、銅、銀、金、白金、珪素のいずれか一と、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマスのいずれか一であること
を特徴とする照明装置。
【請求項14】
請求項7において、
前記不純物元素は複数種含まれており、銅、銀、金、白金、珪素のいずれか一と、
フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウムのいずれか一と、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマスのいずれか一であること
を特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−227232(P2007−227232A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48452(P2006−48452)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】