説明

照明装置

【課題】過大な点灯エネルギが必要であったり眼疲労が生じることなく、覚醒水準を向上できる照明装置を提供する。
【解決手段】白色光を主体として照射する主光源17と、単波長光を照射する単波長光光源18とを備える。単波長光は、脳波のα波とβ波との比率により求まるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる光とする。単波長光の強度は、通常の白色光の照明下での作業に単波長光が邪魔にならない程度とする。通常の白色光の照明下において、作業者に単波長光を曝露することで、作業者の覚醒水準を向上させる。単波長光光源18の強度の変化を繰り返すことで、覚醒水準を維持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、覚醒水準を向上させる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、照明環境により快適性や作業性等を向上させる照明装置が提案されている。
【0003】
例えば、照明光の光量を周期的に変化させることにより、その照明光の光量の変化に合わせて観測者が呼吸のリズムを整えるのを容易にし、観測者をリラックスさせる照明装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、オフィスの照明環境においては、執務時間や昼休み時間等の時間帯に応じて明るさを変化させるサーカディアン照明システムといわれる照明装置があり、朝の執務開始時や昼休み後の執務開始時に、机上面照度2500lxという高照度の光照射をすることで、執務者の覚醒水準を向上させ、集中力を高めたり眠気を防止している。
【0005】
また、発光装置において、赤、緑、青のLEDを用いて白色で照明するとともに、青としてピーク波長が異なる2種類の青のLEDを用い、その一方は睡眠を誘発するホルモンであるメラトニンの分泌を抑制するピーク波長の光を多く放出する青のLEDとし、他方はそのメラトニン分泌抑制効果のあるピーク波長の光の放出が少ない青のLEDとしたものがある。そして、赤、緑、一方の青のLEDを点灯したときは、メラトニンの分泌を抑制するピーク波長の光を多く含むので、室内の人に対してメラトニン分泌抑制効果を与え、覚醒効果をもたらすことを可能としている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−237391号公報(第1頁、図1−4)
【特許文献2】特開2005−63687号公報(第5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、覚醒水準を向上させるために、机上面照度2500lxという高照度の光照射を実現するには、非常に大きな点灯エネルギが必要になり、実際のオフィス等では実現が困難であり、また、机上面照度2500lxという明るさは、机上面の反射率によっては目にストレスを与える明るさであり、眼疲労が生じやすい問題がある。
【0007】
また、赤、緑のLEDに、睡眠を誘発するホルモンであるメラトニンの分泌を抑制するピーク波長の光を多く放出する青のLEDを用いることで、白色で照明しながら、室内の人に対してメラトニン分泌抑制効果を与え、覚醒効果をもたらすようにしているが、睡眠の誘発を抑制するだけで、十分な覚醒水準の向上が得られない問題がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、過大な点灯エネルギが必要であったり眼疲労が生じることなく、覚醒水準を確実に向上できる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の照明装置は、白色光を主体として照射する主光源と;脳波のα波とβ波との比率により求められるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる単波長光を照射する単波長光光源と;を具備しているものである。
【0010】
白色光を主体として照射する主光源は、例えば、蛍光ランプ、HIDランプ、白熱ランプ、発光ダイオードなどが用いられ、白色光を主体としていれば白色以外の色の光が含まれていてもよい。単波長光光源は、例えば、発光ダイオード、波長制御可能なHIDランプなどが用いられ、1種類の単波長光のみを照射しても、複数種類の単波長光を組み合わせて照射してもよい。単波長光には、例えば、青系、緑系、赤系等、各色系の単波長光を用いてもよいが、覚醒水準を向上させるうえでは波長が短い方が好ましい。脳波のα波とβ波との比率により求められるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる単波長光とは、被験者に白色光とともに単波長光を照射したときの被験者の脳波のα波とβ波を測定し、測定したα波とβ波との比率によりα波帯域率(α/α+β)を求め、このα波帯域率が例えば1より小さくなる単波長光をいう。
【0011】
請求項2記載の照明装置は、請求項1記載の照明装置において、単波長光光源の照射する単波長光の強度が主光源の照射する白色光の強度より小さいものである。
【0012】
単波長光の強度は、通常の白色光の照明下での作業に対して色の変化が目視しにくい、例えば1lx程度が好ましい。
【0013】
請求項3記載の照明装置は、請求項1または2記載の照明装置において、単波長光光源の強度の変化を繰り返させる制御部を具備しているものである。
【0014】
単波長光光源の強度の変化は、点滅でも、強弱でもよい。また、強度の変化の繰り返しは、定期的でも不定期的でもよい。
【0015】
請求項4記載の照明装置は、請求項1ないし3いずれか一記載の照明装置において、単波長光光源は、青系の単波長光を照射するものである。
【0016】
覚醒水準を向上させるうえで、緑系や赤系よりも波長が短い青系が好ましい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の照明装置によれば、通常の白色光の照明環境において、脳波のα波とβ波との比率により求められるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる単波長光を付加するだけで、過大な点灯エネルギが必要であったり眼疲労が生じることなく、覚醒水準を確実に向上できる。
【0018】
請求項2記載の照明装置によれば、請求項1記載の照明装置の効果に加えて、単波長光の強度が白色光の強度より小さいため、付加する点灯エネルギを小さく、通常の白色光の照明下での作業の邪魔にならない。
【0019】
請求項3記載の照明装置によれば、請求項1または2記載の照明装置の効果に加えて、単波長光光源の強度の変化を繰り返させることにより、覚醒水準を維持できる。
【0020】
請求項4記載の照明装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の照明装置の効果に加えて、青系の単波長光を用いることにより、効果的に覚醒水準を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1ないし図4に第1の実施の形態を示し、図1は照明装置の光源面の正面図、図2は照明装置の側面図、図3は照明装置のブロック図、図4は照明装置の時間経過に対する単波長光の強度変化を示す説明図、図5は照明装置の白色光の種類および単波長光の有無とα波帯域率(α/α+β)との変化を示す説明図である。
【0023】
図2に示すように、照明装置の一例として卓上用の電気スタンドである作業用照明装置11を示し、この作業用照明装置11は、机上面に置く本体部12、この本体部12に対して可動自在なアーム部13、およびこのアーム部13の先端に取り付けられた灯体部14を備えている。
【0024】
灯体部14は、光源面15を有し、この光源面15には、反射面16が形成され、この反射面16に対向して、白色光を主体として照射する蛍光ランプである主光源17と、脳波のα波とβ波との比率により求められるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる単波長光を照射する発光ダイオード素子である単波長光光源18とが配置されている。この例では、3本の直管形の主光源17を平行に配置し、これら主光源17間に複数の単波長光光源18が等間隔に配置されている。
【0025】
なお、脳波のα波とβ波との比率により求められるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる単波長光とは、被験者に白色光とともに単波長光を照射したときの被験者の脳波のα波とβ波を測定し、測定したα波とβ波との比率によりα波帯域率(α/α+β)を求め、このα波帯域率が例えば1より小さくなる単波長光をいう。また、単波長光とは、例えば、波長のピーク値の半分の値での波長幅が50nm以下の波長光を単波長光と定義する。
【0026】
単波長光には、例えば、波長470nmの青系、波長550nmの緑系、波長670nmの赤系等やその他の各色系が用いることが可能であるが、覚醒水準を向上させるうえでは波長が短い方が好ましい。
【0027】
単波長光の強度は、白色光の強度より小さく、通常の白色光の照明下での作業に邪魔にならない程度が好ましく、例えば1lx程度が好ましい。
【0028】
図3に示すように、作業用照明装置11は、主光源17を点灯制御する主光源点灯回路や単波長光光源18を点灯制御する単波長光光源点灯回路を含む制御部19を有している。そして、制御部19は、主光源17の点灯時に単波長光光源18を点灯させるとともに、図4に示すように、単波長光光源18が照射する単波長光の強度を定期的あるいは不定期的に繰り返し変化させる制御をする。例えば、単波長光光源18の点滅を繰り返すもので、点灯時間が消灯時間より長い関係としている。
【0029】
次に、第1の実施の形態の作用を説明する。
【0030】
単波長光の有用性を検証するために、通常の白色光の照明下で、複数の波長の単波長光を被験者に曝露したときの被験者の生理反応について試験をし、統計をとった。試験では、図5に示すように、被験者に対して、750lxの昼光色、750lxの昼白色、750lxの昼光色+1lxの青色の単波長光をそれぞれ照射し、各照射状態で被験者の脳波のうちリラックス状態で発生するα波と緊張状態で発生するβ波とを測定し、測定したα波とβ波との比率によりα波帯域率(α/α+β)を求め、このα波帯域率により被験者の覚醒水準を検証した。
【0031】
その結果、図5に示すように、750lxの昼光色、750lxの昼白色の場合にはα波帯域率(α/α+β)が1.00程度であったのに対して、750lxの昼光色+1lxの青色の単波長光の場合にはα波帯域率(α/α+β)が0.90程度に低くなった。α波帯域率(α/α+β)は、値が小さい方が覚醒水準が高く、そのため、750lxの昼光色+1lxの青色の単波長光の場合が被験者の覚醒水準が向上する傾向が示された。
【0032】
単波長光の波長についても測定したところ、単波長光の波長が短い程、α波帯域率がより小さく、覚醒水準がより向上する傾向が示された。
【0033】
また、被験者のα波帯域率は、単波長光の暴露直後が最も大きく変化して小さな値となり、その値の状態を所定時間持続する傾向が示された。
【0034】
そこで、単波長光の曝露を一時中断し、再度曝露するというように、単波長光の強度を繰り返し変化させたところ、α波帯域率が減衰つまり大きくならず、覚醒水準が向上した状態が継続する傾向が示された。
【0035】
このような結果から、通常の白色光の照明下で、脳波のα波とβ波との比率により求められるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる単波長光を曝露することで、覚醒水準が向上することが示され、特に、波長の短い単波長光を用いることにより、覚醒水準をより向上でき、さらに、単波長光の強度を繰り返し変化させることにより、覚醒水準の高い状態を継続できることが示された。
【0036】
したがって、作業用照明装置11において、通常の白色光の照明下での作業に単波長光が邪魔にならない程度の単波長光を付加するだけで、作業者の覚醒水準を向上でき、集中力を高め、作業効率を向上でき、それでいて、従来のような高照度の光照射をする場合に比べて、点灯エネルギが過大になることがなく容易に実現可能で、眼疲労が生じることもない。
【0037】
さらに、脳波のα波とβ波との比率により求められるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる単波長光を用いるため、従来のようにメラトニン分泌抑制効果を基準に定義された青色光を用い、睡眠の誘発を抑制するだけの場合に比べて、覚醒水準を確実に向上させることができる。
【0038】
また、作業者に近い場所に配置する電気スタンドのような作業用照明装置11に単波長光光源18を付加することにより、単波長光が減衰しにくく、覚醒水準をより効果的に向上させることができるとともに、より少ない点灯エネルギで済む。この場合、単波長光光源18と机上面との距離が比較的近いが、単波長光光源18から照射される単波長光は机上面の拡散面で拡散して他の色と混ざるため、単波長光が目立つことはない。
【0039】
なお、単波長光光源18は、主光源17の近傍に配置することにより、作業者に対してあまり意識させずに単波長光を曝露して覚醒水準を向上させることができるが、主光源17とは別の場所に配置してもよく、この場合、例えば、作業者から目視可能な場所に単波長光光源18を配置すれば、覚醒水準をより効果的に向上させることができる。
【0040】
また、主光源と単波長光光源とを備え照明装置としては、例えば、オフィスや学校の天井面等に設置される照明装置等にも適用でき、作業効率のよい照明環境を提供できる。
【0041】
次に、図6に第2の実施の形態を示す。図6は照明装置を用いた道路照明システムの説明図である。
【0042】
例えば、高速道路等の道路の路面21を照明する複数の照明装置22が道路に沿って所定間隔に設置されている。照明装置22は、白色光を主体として照射する例えばHIDランプ等を内蔵した第1の照明装置22aと、白色光を主体して照明する例えばHIDランプ等の主光源と単波長光を照射する発光ダイオードや波長制御可能なHIDランプ等の単波長光光源とを備えた第2の照明装置22bとを備え、例えば、道路に沿って3つ毎に第1の照明装置22aと第2の照明装置22bとを交互に設置する。
【0043】
そして、この道路を運転者が運転する車23が走行することにより、車23の運転者に対して単波長光が所定間隔で曝露される。そのため、運転者の覚醒水準が向上するとともに維持され、眠気が解消され、集中力が高まり、事故防止に貢献できる。
【0044】
また、トンネル内に設置されるトンネル用照明装置にも同様に適用できる。
【0045】
なお、照明装置に用いる単波長光光源は、1種類の単波長光のみを照射しても、複数種類の単波長光を組み合わせて照射してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す照明装置の光源面の正面図である。
【図2】同上照明装置の側面図である。
【図3】同上照明装置のブロック図である。
【図4】同上照明装置の時間経過に対する単波長光の強度変化を示す説明図である。
【図5】同上照明装置の白色光の種類および単波長光の有無とα波帯域率(α/α+β)との変化を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示す照明装置を用いた道路照明システムの説明図である。
【符号の説明】
【0047】
11 照明装置としての作業用照明装置
17 主光源
18 単波長光光源
19 制御部
22b 照明装置としての第2の照明装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光を主体として照射する主光源と;
脳波のα波とβ波との比率により求められるα波帯域率(α/α+β)により定義される覚醒水準が得られる単波長光を照射する単波長光光源と;
を具備していることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
単波長光光源の照射する単波長光の強度が主光源の照射する白色光の強度より小さい
ことを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
単波長光光源の強度の変化を繰り返させる制御部を具備している
ことを特徴とする請求項1または2記載の照明装置。
【請求項4】
単波長光光源は、青系の単波長光を照射する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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