説明

照明装置

【課題】 本発明は、電子閃光装置等の照明装置に関し、バウンス光の色温度を調整することを目的とする。
【解決手段】 照明光を発光する発光部を備えた照明装置において、前記照明光のバウンス光の色温度を測定する第1の色温度測定部を有することを特徴とする。また、前記第1の色温度測定部は、前記照明光の発光方向に向けて設けられていることを特徴とする。さらに、環境光の色温度を測定する第2の色温度測定部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子閃光装置等の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自然な画像を得るために、閃光装置からの光を天井や壁に照射し、その反射光であるバウンス光により被写体を撮影するバウンス撮影が行われている。
【特許文献1】特許第3417613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のバウンス撮影では、閃光装置からの光を、赤みや青み等の色付きがある天井や壁に照射すると、バウンス光が色付いてしまい画像に色被りが発生するという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、バウンス光の色温度を調整することができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明の照明装置は、照明光を発光する発光部を備えた照明装置において、前記照明光のバウンス光の色温度を測定する第1の色温度測定部を有することを特徴とする。
【0006】
第2の発明の照明装置は、第1の発明の照明装置において、前記第1の色温度測定部は、前記照明光の発光方向に向けて設けられていることを特徴とする。
【0007】
第3の発明の照明装置は、第1または第2の発明の照明装置において、環境光の色温度を測定する第2の色温度測定部を有することを特徴とする。
【0008】
第4の発明の照明装置は、カメラの取付座に取付部を介して取り付けられる本体部と、前記本体部に回動可能に配置され照明光を発光する発光部と、前記照明光のバウンス光の色温度を測定する第1の色温度測定部とを有することを特徴とする。
【0009】
第5の発明の照明装置は、第4の発明の照明装置において、前記第1の色温度測定部は、前記発光部に前記照明光の発光方向に向けて設けられていることを特徴とする。
【0010】
第6の発明の照明装置は、第4または第5の発明の照明装置において、環境光の色温度を測定する第2の色温度測定部を有することを特徴とする。
【0011】
第7の発明の照明装置は、第6の発明の照明装置において、前記第2の色温度測定部は、前記本体部に設けられていることを特徴とする。
【0012】
第8の発明の照明装置は、照明光を発光する発光手段と、前記照明光のバウンス光の色温度を測定する第1の色温度測定手段と、前記第1の色温度測定手段で測定された前記バウンス光の色温度に基づいて前記照明光の色温度を調整する色温度調整手段とを有することを特徴とする。
【0013】
第9の発明の照明装置は、第8の発明の照明装置において、前記色温度調整手段は、前記照明光の色温度を変更可能な色温度変更手段と、前記色温度変更手段を制御する色温度制御手段とを有することを特徴とする。
【0014】
第10の発明の照明装置は、第9の発明の照明装置において、前記色温度調整手段は、前記第1の色温度測定手段で測定された前記バウンス光の色温度に基づいて前記照明光の色温度を設定する色温度設定手段を有することを特徴とする。
【0015】
第11の発明の照明装置は、第8ないし第10のいずれか1の発明の照明装置において、環境光の色温度を測定する第2の色温度測定手段を有し、前記色温度調整手段は、前記第1の色温度測定手段で測定された前記バウンス光の色温度を前記環境光の色温度に調整することを特徴とする。
【0016】
第12の発明の照明装置は、第8ないし第11のいずれか1の発明の照明装置において、前記色温度調整手段は、前記発光手段を予備発光して得られたバウンス光の色温度に基づいて前記照明光の色温度を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、バウンス光の色温度を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の照明装置の一実施形態を示している。この実施形態では、本発明がカメラ用の閃光装置に適用される。
【0020】
閃光装置11は、本体部13の下部に取付部15を有している。取付部15の上部には、発光部17が配置されている。発光部17は、図2に示すように、軸部19を中心にして本体部13に回動可能に配置されている。
【0021】
図3は、閃光装置11をカメラ21に取り付けバウンス撮影を行っている状態を示している。
【0022】
カメラ21はデジタルカメラである。閃光装置11の取付部15は、カメラ21の上面に配置される取付座(不図示)に装着されている。カメラ21には、撮影レンズ23が装着されている。閃光装置11の発光部17は、天井25に向けて回動されている。発光部17からの照明光Sは、天井25で反射し、反射光であるバウンス光Bにより被写体Hが撮影される。被写体Hの上方および側方には、室内を照明する光源であるランプ27,29が配置されている。
【0023】
図1において、発光部17には、キセノン管31、色温度変換フィルタ33、第1の色温度測定部35が設けられている。また、本体部13には、第2の色温度測定部37が設けられている。
【0024】
キセノン管31は、閃光からなる照明光を発光する。
【0025】
色温度変換フィルタ33は、キセノン管31で発光した照明光の色温度を変更可能とされている。色温度変換フィルタ33は、キセノン管31の前方に配置されており、キセノン管31で発光した照明光の色温度を調整する。色温度変換フィルタ33には、例えば、透明電極を備えたゲスト・ホスト(GH)液晶セルが用いられる。この液晶セルは、例えば、特許第3417613号公報等により周知であるため詳細な説明を省略する。
【0026】
第1の色温度測定部35は、図2に示すように、キセノン管31で発光し色温度変換フィルタ33を通過した照明光Sのバウンス光Bの色温度を測定する。第1の色温度測定部35は、測色センサ(不図示)を有している。測色センサは、例えば、互いに異なるフィルタ特性を持った2種類または3種類の光学フィルタを通した光をそれぞれ受光素子で受け、その光強度の比率から色温度を測定する。測色センサは、例えば、特許第3417613号公報等により周知であるため詳細な説明を省略する。第1の色温度測定部35の測色センサは、照明光Sの発光方向に向けて設けられている。従って、バウンス光Bの色温度を確実に測定することができる。
【0027】
第2の色温度測定部37は、環境光の色温度を測定する。環境光とは、閃光装置11から発生する照明光S以外の光であり、図3では、室内を照明するランプ27,29の光である。第2の色温度測定部37は、測色センサ(不図示)、光拡散部材37aを有している。測色センサには、第1の色温度測定部35の測色センサと同様のものを用いることができる。測色センサは、光拡散部材37a内に収容されている。光拡散部材37aは、例えば、乳白色の部材からなる。第2の色温度測定部37は、図3に示すように、カメラ21に閃光装置11を装着した時に、被写体H側を向くように本体部13に設けられている。従って、環境光の色温度を確実に測定することができる。
【0028】
図4は、上述した閃光装置11およびカメラ21の要部を示すブロック図である。
【0029】
閃光装置11をカメラ21に取り付けることにより、閃光装置11側のデータバス11Aがカメラ21側のデータバス21Aに接続されている。
【0030】
カメラ21は、撮像素子41、A/D変換部43、内部メモリ45を有している。また、カメラ側CPU47、画像処理部49、測光センサ51、シャッタ53、メインミラー55を有している。
【0031】
撮像素子41は受光面の結像を光電変換してアナログ画像信号を生成する。A/D変換部43は、撮像素子41のアナログ画像信号をデジタル画像信号に変換する。内部メモリ45は、画像処理部49での画像処理の前工程および後工程でのデータを一時的に保存する。画像処理部49は、デジタル画像信号に所定の画像処理を施して画像データを生成する。
【0032】
カメラ側CPU47は、所定のシーケンスプログラムに従って各部動作を制御する。具体的には、メインミラー55およびシャッタ53等の駆動制御や、撮影時の画像処理プロセスの制御などを実行する。カメラ側CPU47には、レリーズスイッチ57からの半押し信号および全押し信号が入力される。
【0033】
閃光装置11は、閃光装置側CPU61、充電/発光回路63、キセノン管31、バウンス状態検出部65を有している。また、色温度設定部67、第1の色温度測定部35、第2の色温度測定部37、色温度制御部69、色温度変換フィルタ33を有している。
【0034】
閃光装置側CPU61は、所定のシーケンスプログラムに従って各部動作を制御する。具体的には、充電/発光回路63等の駆動制御を実行する。バウンス状態検出部65は、閃光装置11の発光部17がバウンス撮影状態にあるか否かを検出する。具体的には、本体部13に対する発光部17の回動角度を検出し、所定の角度範囲にあるときにバウンス状態にあると判断する。
【0035】
色温度設定部67は、第1の色温度測定部35で測定されたバウンス光Bの色温度および第2の色温度測定部37で測定された環境光の色温度を入力する。そして、バウンス光Bの色温度に基づいて本発光時の照明光Sの色温度が環境光の色温度になるような色温度を設定する。例えば、赤みが強い天井25であればバウンス光Bの色温度が第1の色温度測定部35により低く測定される。この場合には、色温度設定部67は、照明光Sの色温度が環境光の色温度になるように、バウンス光Bの色温度より高めに照明光Sの色温度を設定する。一方、環境光が、例えばタングステンランプであれば、バウンス光Bの色温度をより低い色温度に設定する。
【0036】
色温度制御部69は、キセノン管31で発光した照明光Sの色温度が、色温度設定部67で設定された色温度になるように色温度変換フィルタ33を制御する。
【0037】
図5は、上述した閃光装置11およびカメラ21の撮影処理の要部を示すタイミングチャートである。
【0038】
D1においてレリーズスイッチ57が全押しされると、D2においてバウンス光Bの測色が行われる。バウンス光Bの測色は、閃光装置11を予備発光し、第1の色温度測定部35によりバウンス光Bの色温度を測定することにより行われる。図3に示すように閃光装置11の発光部17を天井25に向けた状態でキセノン管31を予備発光する。D3は、この時の予備発光波形を示している。そして、天井25で反射したバウンス光Bを発光部17に配置される第1の色温度測定部35で測色する。
【0039】
次に、D4において環境光の測色が行われる。環境光の測色は、閃光装置11の本体部13に配置される第1の色温度測定部35により環境光の色温度を測定することにより行われる。
【0040】
次に、D5において色温度変換フィルタ33のフィルタ色が変更される。フィルタ色の変更は、色温度設定部67で設定された色温度になるように色温度制御部69を介して色温度変換フィルタ33を制御することにより行われる。
【0041】
次に、D6においてシャッタ53が開閉される。シャッタ53の開に伴いD7において充電/発光回路63に本発光開始信号が出力されキセノン管31の発光が開始される。そして、所定時間経過後のD8において充電/発光回路63に本発光停止信号が出力されキセノン管31の発光が停止される。D9は、この時の本発光波形を示している。
【0042】
上述した閃光装置11では、第1の色温度測定部35で測定されたバウンス光Bの色温度に基づいて照明光Sの色温度が環境光の色温度になるように調整される。従って、天井25に赤みや青み等の色付きがある場合にも、色被りを心配することなくバウンス撮影を行うことができる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0043】
(1)上述した実施形態では、バウンス光Bの色温度を環境光の色温度になるようにした例について説明したが、例えば、バウンス光Bの色温度を5000〜5500K程度の標準的な撮影用照明光の色温度になるようにしても良い。
【0044】
(2)上述した実施形態では、第1の色温度測定部35と第2の色温度測定部37を別々に設けた例について説明したが、例えば、第1の色温度測定部35に指向性を持たせ第2の色温度測定部37の機能を付与するようにしても良い。
【0045】
(3)上述した実施形態では、第2の色温度測定部37を閃光装置11側に設けた例について説明したが、例えば、カメラ21側に設けるようにしても良い。
【0046】
(4)上述した実施形態では、天井25に照明光Sを反射してバウンス撮影を行った例について説明したが、例えば、壁等に照明光を反射してバウンス撮影を行っても良い。
【0047】
(5)上述した実施形態では、デジタルカメラ21による撮影に本発明を適用した例について説明したが、フィルムカメラ等による撮影にも適用することができる。
【0048】
(6)上述した実施形態では、カメラ21に着脱可能な閃光装置11に本発明を適用した例について説明したが、例えば、カメラに内蔵等される閃光装置にも適用することができる。
【0049】
(7)上述した実施形態では、閃光装置11に本発明を適用した例について説明したが、閃光装置以外の照明装置にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の照明装置の一実施形態を示す説明図である。
【図2】図1の閃光装置のバウンス状態を示す説明図である。
【図3】図1の閃光装置によりバウンス撮影している状態を示す説明図である。
【図4】図1の閃光装置およびカメラを示すブロック図である。
【図5】図1の閃光装置およびカメラの動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0051】
11…閃光装置、13…本体部、15…取付部、17…発光部、21…カメラ、25…天井、27,29…ランプ、31…キセノン管、33…色温度変換フィルタ、35…第1の色温度測定部、37…第2の色温度測定部、47…カメラ側CPU、61…閃光装置側CPU、67…色温度設定部、69…色温度制御部、H…被写体、S…照明光、B…バウンス光。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を発光する発光部を備えた照明装置において、
前記照明光のバウンス光の色温度を測定する第1の色温度測定部を有することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1記載の照明装置において、
前記第1の色温度測定部は、前記照明光の発光方向に向けて設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の照明装置において、
環境光の色温度を測定する第2の色温度測定部を有することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
カメラの取付座に取付部を介して取り付けられる本体部と、
前記本体部に回動可能に配置され照明光を発光する発光部と、
前記照明光のバウンス光の色温度を測定する第1の色温度測定部と、
を有することを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項4記載の照明装置において、
前記第1の色温度測定部は、前記発光部に前記照明光の発光方向に向けて設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の照明装置において、
環境光の色温度を測定する第2の色温度測定部を有することを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項6記載の照明装置において、
前記第2の色温度測定部は、前記本体部に設けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項8】
照明光を発光する発光手段と、
前記照明光のバウンス光の色温度を測定する第1の色温度測定手段と、
前記第1の色温度測定手段で測定された前記バウンス光の色温度に基づいて前記照明光の色温度を調整する色温度調整手段と、
を有することを特徴とする照明装置。
【請求項9】
請求項8記載の照明装置において、
前記色温度調整手段は、
前記照明光の色温度を変更可能な色温度変更手段と、
前記色温度変更手段を制御する色温度制御手段と、
を有することを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項9記載の照明装置において、
前記色温度調整手段は、前記第1の色温度測定手段で測定された前記バウンス光の色温度に基づいて前記照明光の色温度を設定する色温度設定手段を有することを特徴とする照明装置。
【請求項11】
請求項8ないし請求項10のいずれか1項記載の照明装置において、
環境光の色温度を測定する第2の色温度測定手段を有し、
前記色温度調整手段は、前記第1の色温度測定手段で測定された前記バウンス光の色温度を前記環境光の色温度に調整することを特徴とする照明装置。
【請求項12】
請求項8ないし請求項11のいずれか1項記載の照明装置において、
前記色温度調整手段は、前記発光手段を予備発光して得られたバウンス光の色温度に基づいて前記照明光の色温度を調整することを特徴とする照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−256849(P2008−256849A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97535(P2007−97535)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】