説明

照明装置

【課題】任意形状の被照射物体を高い精度で照射光によってコーティングすることができる照明装置を提供する。
【解決手段】照明制御装置1は、照射光信号を入力する照射光生成部11と、被照射物体20を照射光でコーティングさせるように照射光信号を補正するコーティング補正手段12,13と、補正処理された照射光信号を用いて投影をする照射光投影部2とを備える。照射光は、被照射物体20をコーティングするコーティング光と、被照射物体20の背景となる背景光とを含む。照明制御装置1は、被照射物体20の形状に合わせてコーティング光の輪郭をカットするように照射光信号を補正する第1のコーティング補正部12と、被照射物体20の原点位置と照射光投影部2との位置関係に応じて、コーティング光の輪郭を補正する第2のコーティング補正部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意形状の被制御機器の表面を覆うように照射光を照射する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、任意形状の照射光を照射する照明装置としては、下記の非特許文献1,2に記載されているように、投影機器にゴボやマスクなどと呼ばれるフィルタを設置し、当該投影機器から照射光が出射される投影部を遮光している。これにより、フィルタを通過した照射光は、特定の形に切り抜かれた状態となる。具体的には、従来の照明システムでは、丸、三角、四角などで構成されるベース形状で切り抜かれたフィルタ(ゴボなど)を投影機器に取り付けて、照射光の輪郭に形をつけている。
【0003】
また、従来の照明システムにおいて、被照射物体だけに照射したい場合は、投影機器から出射された照射光の投影位置を被照射物体の位置に合わせた後、投影機器の絞り機能やズーム機能によって大まかな照射光の輪郭を被照射物体の形状に合わせる動作を行っている。
【0004】
更に、従来においては、投影機器であるプロジェクタを照明器具(ライト)の代わりに使用して、空間演出を行う照明システムがある。この照明システムに使用される照明器具は、ムービングプロジェクタとも呼ばれる。このムービングプロジェクタは、照射光として映像光を出射する。このため、照射光の形、色を自由に設定して、動画として変化させることが可能である。
【0005】
しかしながら、この照明システムであっても、照射光に形をつける場合は、従来の照明システムと同様に、ベース形状を用いて、大まかに被照射物体の形状に照射光の輪郭を合わせる手法が採用されている。
【0006】
更にまた、従来においては、立体形状モデルに物体の表面テクスチャを効果的に表現することができる立体表示装置として、下記の特許文献1に記載された技術が知られている。
【非特許文献1】http://www.egghouse.com/gobo/about.htm
【非特許文献2】http://www.ushiolighting.co.jp/product/productimage/pdf/dl2.pdf
【特許文献1】特開2006−338181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の照明システムにおいては、被照射物体の形状に合わせて照射光の輪郭を変更できるものの、丸、三角、四角などで構成されるフィルタによって照射光の輪郭をベースとしているために、被照射物体の輪郭に大まかに照射光の形状を合わすことはできるものの、正確に被照射物体の輪郭に照射光の形状を合わせることは困難であった。すなわち、従来の照明システムにおいては、任意形状の被照射物体に合わせて照射光の輪郭を変更することは困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、任意形状の被照射物体を高い精度で照射光によってコーティングすることができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、任意形状の被照射物体に向けて照射光を投影する照明装置であって、照射光信号を入力する照射光信号入力手段と、被照射物体に照射光を照射させたときに、被照射物体を照射光でコーティングさせるように照射光信号入力手段により入力した照射光信号を補正するコーティング補正手段と、コーティング補正手段によって補正処理された照射光信号を用いて被照射物体に対して投影を行う照射光投影手段とを備える。このような照明装置において、照射光は、被照射物体をコーティングするコーティング光と、被照射物体の背景となる背景光とを含むものとする。
【0010】
コーティング補正手段は、上述の課題を解決するために、照射光のうちのコーティング光の輪郭を補正するように照射光信号を補正するものであり、被照射物体の形状に合わせて照射光のうちのコーティング光の輪郭をカットするように照射光信号を補正する第1のコーティング補正手段と、被照射物体の原点位置と照射光投影手段との位置関係に応じて、第1のコーティング補正手段により補正されたコーティング光の輪郭を補正する第2のコーティング補正手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被照射物体の形状に合わせて照射光のうちのコーティング光の輪郭をカットし、更に、被照射物体の原点位置と照射光投影手段との位置関係に応じてコーティング光の輪郭を補正するので、被照射物体の形状、被照射物体と照射光投影部との位置関係に基づいて、被照射物体を高い精度で照射光によってコーティングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
本発明は、例えば図1に示すように構成された照明制御装置1及び照射光投影部2からなるコーティング照明装置に適用される。このコーティング照明装置は、任意形状の被照射物体20に向けて照射光を投影することによって、図2に示すように単色の照射光が被照射物体20をコーティングしているように被照射物体20を観察させるものである。また、コーティング照明装置は、単色の照射光に限らず、複数色、若しくは映像の照射光によって被照射物体20をコーティングしても良い。
【0014】
通常、照射光投影範囲全体に亘って単色の照射光をプロジェクタから出射すると、図3に示すように、被照射物体20以外にも照射光が照射され被照射物体20の背後に影ができてしまう。これに対し、コーティング照明装置は、図2に示すように、被照射物体20の表面のみに単色の照射光を投影し、被照射物体20の背景には背景色の照射光を投影する。これによって、単色の照射光によって被照射物体20をコーティングする。なお、以下の説明では、図2に示したような被照射物体20をコーティングするための照射光を「コーティング光」と呼び、被照射物体20の背景となる照射光を「背景光」と呼ぶ。
【0015】
被照射物体20は、図4(a)に示すように、任意形状の立体物である。この被照射物体20は、図4(b)に示すように、コンピュータグラフィック技術によって、3次元的に再現され、あらゆる方向の形状データが解析される。また、画像センシング技術により、被照射物体20の撮影画像から被照射物体20を3次元的に再現しても良い。この形状データは、照明制御装置1に供給されて、後述の第1のコーディング補正部12及び第2のコーディング補正部13における補正処理に用いられる。
【0016】
後述するように、コーティング照明装置は、被照射物体20を照射光によってコーティングするために、照射光信号に歪み補正処理を施して照射光を照射光投影部2から出力するものである。従って、被照射物体20は、特に限定するものではなく、凹凸物体や、一様な平面(または曲面)で構成される空間でもよい。ただし、照射光投影部2から投影された照射光の色身の再現性を向上させるために、被照射物体20の表面は、スクリーン素材などで加工されていることが望ましい。
【0017】
照射光投影部2は、照明制御装置1から送信された照射光信号を受信して、コーティング光と背景光とからなる照射光を出射するプロジェクタからなる。
【0018】
照明制御装置1は、照射光生成部11と、第1のコーティング補正部12と、第2のコーティング補正部13とを備える。なお、図1に示した照明制御装置1は、CPU、ROM、RAM、ストレージ装置などを備えたコンピュータによるハードウエアで構成されているが、図1においては便宜的に機能ブロック毎に分けて、説明を行う。
【0019】
照射光生成部11は、照射光信号を入力する照射光信号入力手段として機能する。照射光生成部11は、外部のパーソナルコンピュータから照射光信号を入力しても良く、単色光の色が指定されたことによって単色の照射光信号を生成しても良い。また、この照射光信号は、平面映像として生成されている。
【0020】
この照射光信号は、例えば、図3に示すように単色の照明光をコーティング光とする場合、照射光投影範囲の全体が単色の映像信号である。また、照射光生成部11は、複数色のパターン画像又は映像となっている照射光をコーティング光とする場合にも、照射光投影範囲の全体がパターン画像又は映像となっている映像信号である。この照射光生成部11によって入力又は生成された照射光信号は、第1のコーティング補正部12及び第2のコーティング補正部13に供給される。
【0021】
第1のコーティング補正部12及び第2のコーティング補正部13は、被照射物体20に照射光を照射させたときに、被照射物体20を照射光でコーティングさせるように照射光生成部11から供給された照射光信号を補正する。第1のコーティング補正部12及び第2のコーティング補正部13は、照射光に含まれるコーティング光の輪郭を被照射物体20の輪郭と合致するように照射光信号を補正するものである。
【0022】
第1のコーティング補正部12は、被照射物体20の形状に合わせて照射光に含まれるコーティング光の輪郭をカットするように照射光信号を補正する。これにより、第1のコーティング補正部12は、被照射物体20のみにコーティング光を投影し、被照射物体20以外には背景光を投影するように、コーティング光の照射範囲をカッティング処理する。
【0023】
このような第1のコーティング補正部12は、図5(a)に示すように、照射光生成部11によって作成された平面映像100を入力する。次に第1のコーティング補正部12は、図5(b)に示すような座標パラメータとして被照射物体20の形状データ20’を入力し、平面映像100を被照射物体20の形状データ20’に貼り付けるマッピング処理を行う。このマッピング処理は、ユーザの視点位置から被照射物体20を見たときに、平面映像100の各画素が被照射物体20のどの部分に投影されるかを演算する。このマッピング処理によって、第1のコーティング補正部12は、平面映像100の各画素と被照射物体20上の座標との対応関係を決定する。
【0024】
これにより、平面映像100は、図5(c)のように、形状データ20’によって座標変換された3次元映像100’となる。ここで、平面映像100のうち、形状データ20’外の映像部分は除外されて、形状データ20’上にマッピングできる映像部分のみが残されることになる。すなわち、コーティング光とはならない部分は背景光となる。
【0025】
この3次元映像100’は、第1のコーティング補正部12によって図5(d)のように照射光投影部2であるプロジェクタの表示面上に投影される処理がなされる。この処理は、照射光投影部2の設置位置から被照射物体20にコーティング光を投影した時に、照射光投影部2の投影面が被照射物体20のどの部分に投影されるかを演算する。そして、この処理は、照射光投影部2の投影面と被照射物体20の座標との対応関係と、上記のマッピング処理で求めた被照射物体20の座標と平面映像100の各画素との対応関係とから、照射光投影部2の投影面と平面映像100の各画素との対応関係を求める。これにより、第1のコーティング補正部12は、平面映像100を変換して、図5(e)に示す平面映像100’’に再構成する。なお、この処理は、図8〜図13を参照して更に詳しく説明する。
【0026】
このようなマッピング処理を行うことにより、第1のコーティング補正部12は、照射光生成部11から供給された平面映像100を、任意形状の被照射物体20上のみにマッピングし、被照射物体20以外の部分にはマッピングしていない映像とすることができる。このマッピング処理を施した映像は、第1のコーティング補正部12によってコーティング光を被照射物体20に投影するための映像信号となる。コーティング光に対する背景光は、コーティング光に相当する映像部分以外の映像部分となる映像信号となる。第1のコーティング補正部12は、被照射物体20上に投影されるコーティング光の映像信号と背景光の映像信号とを含む照射光信号を第2のコーティング補正部13に供給する。
【0027】
ここで、照射光投影部2の投影範囲の中心軸と被照射物体20の中心位置(原点位置)とが一致する正対状態である場合には、上記のマッピング処理により補正した照射光信号によって、高い精度で被照射物体20をコーティング光によってコーティングすることができる。しかし、被照射物体20の原点位置と照射光投影部2の投影範囲の中心軸との配置関係が正対していない場合は、第1のコーティング補正部12だけでは、高い精度で被照射物体20をコーティング光するのに十分な補正ができない。すなわち、照射光投影部2の光軸が、被照射物体20の原点位置からずれている場合には、照射光投影部2の位置をパラメータとして照射光信号に補正をする必要がある。
【0028】
このために、コーティング照明装置は、被照射物体20の原点位置と照射光投影部2の位置との関係に応じて、第2のコーティング補正部13によって、さらに照射光信号に対して補正処理を行う。この補正処理は、映像作成の際に必要な映像表示パラメータに平行移動変換及び回転移動変換を施して映像表示パラメータを変更する。この場合、照射光投影範囲に沿って映像表示パラメータを上下左右方向に非対称な値に変換して映像表示パラメータを変更する。これによって、被照射物体20に対して照射光投影部2から照射光を任意の方向から投射しても、コーティング照明装置は、コーティング光を被照射物体20上のみに高精度に投影させるように、更にコーティング光の輪郭を補正する。
【0029】
具体的には、第2のコーティング補正部13は、予め、被照射物体20の位置、照射光投影部2の位置を入力しておき、照射光投影部2に対する被照射物体20の姿勢パラメータである補正パラメータを取得しておく。そして、第2のコーティング補正部13は、補正パラメータに基づいて、平行移動変換及び回転移動変換を実行する。
【0030】
また、コーティング照明装置は、照射光投影部2と被照射物体20との位置関係の他に、照射光投影部2の投影画角、光軸シフト量等の照射光投影部2の性能や観察者の位置も考慮して照射光信号の補正をしても良い。具体的には、コーティング照明装置は、予め設定しておいた観察者位置と、被照射物体20の形状と、照射光投影部2と被照射物体20との相対的な位置及び姿勢とを入力し、照射光を被照射物体20に投影した時に高い精度でコーティングできる補正パラメータとして、補正テーブルを作成しておく。この補正テーブルは、平面の投影面と任意形状である被照射物体20の投影面のメッシュモデルとの対応マップである。この対応マップは、当該補正テーブルに従って座標変換を行い、照射光信号の画素ごとに、平面表示用の映像信号を任意形状への表示用の出力映像信号に変換するためのものである。
【0031】
更に、このような補正テーブルを、観察者位置、被照射物体20の形状、照射光投影部2と被照射物体20との相対的な位置及び姿勢ごとに作成しておいて、第2のコーティング補正部13によって選択させて、補正を行わせても良い。
【0032】
更に、このコーティング照明装置は、上述したように映像のコーティング光を被照射物体20に投影する場合には、図7に示すように、観察者の視点位置を補正パラメータとした映像歪み補正処理を行う第3のコーティング補正部21を備えていることが望ましい。
【0033】
この第3のコーティング補正部21は、予め推奨される被照射物体20の視点位置がある場合には、当該視点位置から被照射物体20を観察した時の映像歪みを補正するための補正テーブルが格納されている。そして、第3のコーティング補正部21は、第2のコーティング補正部13から照射光信号が供給された場合に、補正テーブルに従って照射光信号の各画素を座標変換して、映像歪みがない映像とする。これにより、コーティング照明装置は、観察者の視点位置から被照射物体20に投影された映像を視認した場合に当該映像が歪みなく観察させるために映像光を歪ませることができる。
【0034】
また、この第3のコーティング補正部21は、観察者の視点位置を計測した値が入力される場合には、当該計測された値から視点位置パラメータを算出しても良い。これにより、第3のコーティング補正部21は、視点位置の移動後も、視点位置から歪みなく観賞できるように被照射物体20をコーティングするコーティング光を生成できる。
【0035】
以上説明したように、本発明を適用したコーティング照明装置によれば、被照射物体20の形状に基づいて照射光信号を補正し、更に、照射光投影部2と被照射物体20との位置関係に基づいて照射光信号を補正するので、高い精度で被照射物体20のみにコーティング光を照射することができる。
【0036】
また、このコーティング照明装置によれば、家具などを含む凹凸形状で構成される被照射物体20に歪みがなくなるように予め補正された映像を投影することができる。例えば、車の形をした被照射物体20に車の映像を投影することで、車両デザインのレビューなどをさせることができる。また、任意形状の広告看板や、装飾などにも活用できる。
【0037】
つぎに、上述したコーティング照明装置において、任意形状の被照射物体20に対して図6又は図7のように映像を投影しても、当該映像が歪み無く見ることができることの説明をする。
【0038】
例えば図8に示すように、任意形状の被照射物体20として、ユーザUに対して距離Lだけ離間し、ユーザUに対して斜めに傾斜して配置された平板状物体30を考える。この平板状物体30は、ユーザUの視点位置P1から視野角θ1で視認される。ユーザUの視野中心と交差する平板状物体30上の点P2からユーザUまでは、距離L1だけ離間している。
【0039】
視点位置P1と平板状物体30上の点P2との位置関係において、図9(a)に示すように、図9(b)に示す格子状の平面映像100(コーティング光)を、ユーザUから見る映像面40Uを介して平板状物体30上で見る場合を考える。この場合、映像面40Uに図9(b)に示す平面映像100が表示されていると同じ映像を平板状物体30に表示させる場合、映像面40U上の各座標と平板状物体30上の各座標との対応関係を取得する必要がある。模式的に図9(a)に示しているが、映像面40U上の点b1,b2,b3,b4,b5は、平板状物体30上の点a1,a2,a3,a4,a5に対応している。したがって、平板状物体30上の点a1,a2,a3,a4,a5に表示された映像は、ユーザUからは映像面40U上における点b1,b2,b3,b4,b5として視認される。
【0040】
また、図10に示すように、ユーザUの視線と平板状物体30とが交差する点P2と、照射光投影部2の投影位置P3とは、L2の距離となっている。また、照射光投影部2は、所定の投影画角θ2の範囲で投影光を投影する。
【0041】
この場合、照射光投影部2の映像面40Pと平板状物体30との位置関係は、図11に示すように、平板状物体30上の点a1,a2,a3,a4,a5が、映像面40P上の点c1,c2,c3,c4,c5に対応している。すなわち、照射光投影部2の投影位置P3から映像面40P上の点c1,c2,c3,c4,c5を延長した直線上の点が、平板状物体30の点a1,a2,a3,a4,a5となる。
【0042】
このようなユーザUの視点位置P1及び視野角θ1、平板状物体30の位置、照射光投影部2の投影位置P3及び投影画角θ2の関係から、図11(a)に示した照射光投影部2における映像面40P上の点c1,c2,c3,c4,c5に映像を投影させると、平板状物体30上の点a1,a2,a3,a4,a5に映像が投影される。その結果、平板状物体30上の点a1,a2,a3,a4,a5が、図9における映像面40U上の点b1,b2,b3,b4,b5として視認されることとなる。したがって、ユーザUに平面映像100を視認させるためには、照射光投影部2は、映像面40U上の各座標に対応した平板状物体30上の各座標と、映像面40P上の各座標に対応した平板状物体30上の各座標との対応関係に基づいて、図11(b)に示すように歪ませた平面映像100’’を投影する必要がある。
【0043】
このようなコーティング光の投影動作を実現するために、照明制御装置1は、図9に示すように、ユーザUの視点位置P1を示す視点位置及び視線方向を示す視点位置姿勢パラメータ及びユーザUの視野角θ1を示す視野角パラメータを取得する。これらのユーザUのパラメータは、上述した映像面40Uを定める。
【0044】
また、照射光投影部2から出射されたコーティング光を投影する平板状物体30の形状データを取得する。この形状データは、例えばCADデータである。ここで、視点位置姿勢パラメータは、3次元座標空間における、X,Y,Z軸上の位置および軸周りの回転角度を数値で定義したものである。この視点位置姿勢パラメータは、視点位置P1と平板状物体30との距離L1と、視点位置P1に対する平板状物体30の姿勢を一意に定める。また、平板状物体30の形状データとは、CAD等で作成された電子データを基に、3次元座標空間における形状領域を定義したものである。この形状データは、視点位置P1から見た平板状物体30の形状を一意に定める。このような平板状物体30の形状データとユーザUのパラメータとは、映像面40Uの座標と平板状物体30上の座標との対応関係を定める。
【0045】
また、図10に示すように照射光投影部2が設置されたことに対し、照明制御装置1は、照射光投影部2の投影位置P3及び当該照射光投影部2の光軸方向を示す位置姿勢パラメータ及び照射光投影部2の投影画角θ2を示す投影画角パラメータを取得する。この照射光投影部2の位置姿勢パラメータ及び投影画角パラメータは、照射光投影部2が平板状物体30に対して投影する映像面40Pを表す。この映像面40Pが定まると、照射光投影部2から投影されるコーティング光が映像面40Pを介して平板状物体30のどの座標に投影されるかが定められる。すなわち、照射光投影部2の位置姿勢パラメータ及び投影画角パラメータと、平板状物体30の位置姿勢パラメータ及び形状データとは、照射光投影部2から出射されたコーティング光によって覆われる平板状物体30の範囲が一意に決まる。照射光投影部2がプロジェクタである場合、投影位置P3はバックフォーカス及び打ち込み角で定義され、投影画角θ2は投影位置P3から一定距離での水平及び垂直方向の投影範囲から算出される。
【0046】
そして、照明制御装置1は、平板状物体30に表示されるコーティング光の画素(a1,a2,a3,a4,a5)と照射光投影部2の投影位置P3とを結ぶ直線と、映像面40Pとの交点(c1,c2,c3,c4,c5)に画素を配置して平面映像100’’を構成し、その平面映像100’’を平板状物体30に投影させる。そして、映像面40P上の点c1,c2,c3,c4,c5、平板状物体30上の点a1,a2,a3,a4,a5、映像面40U上の点b1,b2,b3,b4,b5という経路でユーザUにとって歪みのない映像を視認させることができる。
【0047】
同様に、被照射物体20が平板状物体30のような形状ではなく、ドーム型のものであっても歪みなくコーティングして、被照射物体20をユーザUに視認させることができる。図12(a)に示すように被照射物体20がドーム型物体30であり、図12(b)に示すように、ユーザUに格子状のコーティング光を視認させる場面を考える。この場合、ユーザUからは、映像面40U上の点b1,b2,b3,b4,b5の延長線上におけるドーム型物体30上の点a1,a2,a3,a4,a5が視認される。これに対し、照射光投影部2は、図13(a)に示すように映像面40Pに投影光を投影する。この映像面40Pにおける点c1,c2,c3,c4,c5を通過した投影光は、ドーム型物体30における点a1,a2,a3,a4,a5に投影されて、図12(a)に示す映像面40Uの点b1,b2,b3,b4,b5として視認される。したがって、照射光投影部2は、映像面40Pに対して図13(b)に示すように歪ませた平面映像100’’を投影する。これに対し、ユーザUは、図12(b)に示すような歪みのない平面映像100を視認することができる。
【0048】
つぎに、上述したコーティング照明装置に対して新たな構成を付加したものについて説明する。
【0049】
「照射光パターン」
また、このコーティング照明装置は、照射光生成部11が、照射光パターンの照射光信号を予め複数格納する照射光パターン格納部と、照射光パターン格納部に格納された何れかの照射光パターンを選択して照射光信号を読み出す照射光パターン選択部とを備えていても良い。この照射光パターン格納部は、図示しないストレージからなり、照射光パターン選択部は、何れかの照射光パターンを選択する操作インターフェース等からなる。
【0050】
複数の照射光パターンとしては、図3に示すような単色のコーティング光によって被照射物体20をコーティングする照射光パターン、図6(a)に示すように所定の模様のコーティング光によって被照射物体20をコーティングする照射光パターン、図6(b)に示すように映像のコーティング光によって被照射物体20をコーティングする照射光パターンなどが挙げられる。
【0051】
このようなコーティング照明装置における照射光生成部11は、例えばコーティング照明装置の管理者や観察者によって、照射光パターンを選択する操作インターフェースを備え、当該操作インターフェースの操作に基づいて何れかの照射光パターンを選択する。そして、照射光生成部11は、選択された照射光パターンを第1のコーティング補正部12及び第2のコーティング補正部13に供給する。
【0052】
その後、第1のコーティング補正部12及び第2のコーティング補正部13は、照射光パターン選択部により選択された照射光パターンの照射光信号を補正する。照射光投影部2は、当該補正された照射光信号を投影して、照射光パターン選択部により選択された照射光パターンのコーティング光により被照射物体20をコーティングすることができる。
【0053】
このようなコーティング照明装置は、予め複数の照射光パターンを用意しておくことにより、使用する照射光パターンを簡単且つ瞬時に切り換えることができる。
【0054】
「漏れ光抑制」
また、このコーティング照明装置における照明制御装置1は、図14に示すように、被照射物体20から漏れて背後に投影されてしまう漏れ光を抑制する漏れ光抑制部14を備えていても良い。
【0055】
ここで、上述したコーティング照明装置は、任意形状の被照射物体20をコーティングするようにコーティング光を投影するものである。したがって、被照射物体20の縁部まで精度良くコーティング光によってコーティングしようとすると、コーティング光が被照射物体20外となり、漏れ光として背後に投影されてしまう。この漏れ光は、照射光投影部2や被照射物体20の位置姿勢パラメータの微小ズレ、照射光投影部2(プロジェクタ)の個体差に起因して発生する。しかし、このパラメータや機器精度には限界があるので、漏れ光を発生させないように完璧に被照射物体20をコーティングするように映像信号を補正することは至難となる。
【0056】
そこで、このコーティング照明装置は、第1のコーティング補正部12及び第2のコーティング補正部13によって補正した映像信号を加工することにより、漏れ光を発生させないのではなく、発生した漏れ光が目立たないようにする。
【0057】
漏れ光抑制部14は、第1のコーティング補正部12及び第2のコーティング補正部13によって補正された映像信号が供給される。漏れ光抑制部14は、供給された映像信号に対して、漏れ光を抑制する処理を施して照射光投影部2に供給する。
【0058】
漏れ光抑制部14の漏れ光抑制処理としては、被照射物体20のうちで予め設定された大きさ以下の領域にはコーティング光を投影しないように照射光信号を補正することが挙げられる。具体的には、図15に示すように、人型の被照射物体20のうちで、所定の大きさより大きい領域20aにはコーティング光を投影するが、所定の大きさ以下の手先部分及び足部分などの領域20bにはコーティング光を投影しない。これにより、コーティング照明装置は、照射光投影部2から被照射物体20に向けて投影されたコーティング光が、当該被照射物体20から漏れて被照射物体20の背景に投影されることを抑制することができる。なお、図15には、ユーザインターフェースとして、実際にコーティング光をどのように投影するかをユーザが確認できるモニタ装置3を備え、当該モニタ装置3に投影状態3aを表示させている。
【0059】
また、漏れ光抑制部14は、図16に示すように、被照射物体20のうち所定幅の輪郭部分20cに投影するコーティング光の照明効果を変化させても良い。例えば、輪郭部分20cには、コーティング光を投影しないことが挙げられる。
【0060】
これにより、照明制御装置1は、照射光投影部2から被照射物体20に向けて投影されたコーティング光が、当該被照射物体20から漏れて被照射物体20の背景に投影されることを目立たなくする。このようにコーティング照明装置は、被照射物体20のうちの細い部分や細かい部分にコーティング光の投影領域を設定すると漏れ光の発生確率が高くなるので、予め設定された大きさ以下の領域20bを、コーティング光の投影領域から除外する。
【0061】
更に、漏れ光抑制部14は、図17に示すように、輪郭部分20dの所定幅における内側から外側に向かうに従って次第にコーティング光の照明効果を変化させても良い。これによっても、照明制御装置1は、照射光投影部2から被照射物体20に向けて投影されたコーティング光が、当該被照射物体20から漏れて被照射物体20の背景に投影されることを目立たなくすることができる。
【0062】
具体的には、輪郭部分20dにおいて変化させる照明効果としては、照度、輝度、光度、光束、色温度、演色性などが挙げられる。そして、漏れ光抑制部14は、被照射物体20から漏れた漏れ光が背景に投影されても目立たなくなるように輪郭部分20dにおけるコーティング光の照明効果を変更する。例えば漏れ光抑制部14は、被照射物体20における輪郭部分20dでのコーティング光の照度を下げることによって、漏れ光を目立たなくする。また、漏れ光抑制部14は、照度をゼロに設定した輪郭部分20dの幅を大きくすることでコーティング光の投影領域を徐々に小さくして、漏れ光を徐々に減少させることができる。さらに、漏れ光抑制部14は、漏れ光が消えるまで輪郭部分20dの幅を大きくしてもよい。なお、漏れ光を少なくするために設定する輪郭部分20dは、コーティング光の投影領域の減少面積に応じて決定することが望ましい。
【0063】
更にまた、漏れ光抑制部14は、図18に示すように、星型の被照射物体20における鋭角部分にはコーティング光を投影しないように映像信号を補正しても良い。この場合、漏れ光抑制部14は、コーティング光の鋭角部分を丸めるように加工する。これによって、当該鋭角部分は、コーティング光が投影されない領域20fとなる。このように鋭角部分では漏れ光が発生しやすいことに対し、コーティング光に丸みを持たせて、漏れ光の発生を抑制する。
【0064】
更にまた、漏れ光抑制部14は、照射光投影部2により投影するコーティング光を所定幅で振動させても良い。これにより、被照射物体20に投影されないコーティング光が漏れ光として発生していても、振動によって、ユーザUから視認される照度を低くすることができる。したがって、漏れ光抑制部14によれば、照射光投影部2から被照射物体20に向けて投影されたコーティング光が、当該被照射物体から漏れて被照射物体の背景に投影されることを目立たなくすることができる。
【0065】
更にまた、漏れ光を抑制する構成としては、図19に示すように、被照射物体20に対してコーティング光を投影する照射光投影部2の他に、被照射物体20の背面20’に漏れ光を抑制する背景光を投影する照射光投影部2’を備えていても良い。この照射光投影部2’は、図20に示すように、その投影範囲52が被照射物体20には含まれないように設置されている。これにより、照射光投影部2のコーティング光の投影範囲51が被照射物体20からずれて漏れ光が背面20’発生しても、背景光によって漏れ光を目立たなくすることができる。
【0066】
この背面20’に投影する光は、漏れ光を目立たなくするように設定された照明効果(照度、輝度、光度、光束、色温度、演色性)であれば良い。例えば、照射光投影部2’は、背面20’にホワイトライトなどを照射する。これにより、色が重なることで白い光になる性質を利用して、漏れ光を目立たなくすることができる。
【0067】
このように背面20’に背景光を投影することにより、図21に示すように、被照射物体20に対してはコーティング光をコーティングした上で、背面20’を背景光の投影範囲52によって照明演出することもできる。この図21に示す例は、2台の照射光投影部2’を用いて、各被照射物体20の背面20’の照明演出を行っている。また、この図21に示す例では、図22に示すように、各被照射物体20に対して2台の照射光投影部2を用いて照明演出を行っていることに対し、被照射物体20ごとに2台の照射光投影部2を用いて、各被照射物体20をコーティングすることができる。
【0068】
「反射鏡」
更に、このコーティング照明装置は、照射光投影部2と被照射物体20との間の光軸上に反射鏡を配置して、照射光の投影距離を長く調整することができ、又は、照射光投影部2を見えない位置に配置することもできる。更に、照射光投影部2をコンパクトな構成にする場合であっても、反射鏡によって照射光の投影距離を長くして、比較的大きいサイズの被照射物体20をコーティングすることができる。
【0069】
「立体映像」
更に、このコーティング照明装置は、立体映像を表示させるための照射光信号を照射光投影部2に供給して、被照射物体20に投影されるコーティング光を立体映像として観察させても良い。このコーティング照明装置は、相互に視差が与えられた右眼用の照射光信号と左眼用の照射光信号とを照射光生成部11によって生成し、それぞれの照射光信号に対して、第1のコーティング補正部12、第2のコーティング補正部13、及び第3のコーティング補正部21による補正処理を施す。
【0070】
この場合、コーティング照明装置は、観察者に右眼と左眼とで透過する映像光の偏光方向が異なる偏光メガネを装着させて、偏光方式又は時分割方式で照射光投影部2から相互に視差が与えられ且つ偏光方向が異なる複数種の照射光を出射する。偏光方式で被照射物体20に立体映像を表示する場合、被照射物体20の表面材料として映像光の偏光方向を保持する素材のものを使用し、照射光投影部2の2個の光出射口から偏光方向が異なる右眼用照射光と左眼用照射光を出射させる。また、時分割方式で被照射物体20に立体映像を表示する場合、1個の光出射口から右眼用照射光と左眼用照射光とを時分割で交互に出射し、右眼用照射光と左眼用照射光との出射タイミングと液晶シャッタメガネの右眼及び左眼シャッタの切り替えタイミングとの同期を取る。
【0071】
これにより、このコーティング照明装置によれば、高い精度で任意形状の被照射物体20上のみにコーティング光を投影し、且つ、当該被照射物体20上の立体映像を歪み無く観察者に観察させることができる。
【0072】
「照射光投影範囲、コーティング範囲の変更」
コーティング照明装置は、照射光投影部2の画角を調整することにより、照射光投影部2の照射光投影範囲を変更させても良い。このようなコーティング照明装置は、照射光投影部2の画角を調整した照射光投影範囲の空間内において、被照射物体20をコーティング光でコーティングすることができる。
【0073】
また、コーティング照明装置は、被照射物体20内においてコーティングを実施したい空間領域を指定しても良い。このようなコーティング照明装置において、被照射物体20内においてコーティングする部分には、コーティング光を投影し、被照射物体20内においてコーティングしない部分には、背景光を投影することになる。このように、被照射物体20内においてコーティング光によってコーティングする部分とコーティングしない部分とを区別する信号は、コーティング照明装置に予め供給される。そして、コーティング照明装置は、照射光生成部11から第1のコーティング補正部12に供給する照射光信号を、被照射物体20内でコーティングする部分のみをコーティング光とし、それ以外を背景光とする照射光信号に修正して、第1のコーティング補正部12に供給する。
【0074】
また、このコーティングすることができる部分とコーティングしない部分とは、観察者によって変更するようにしても良い。例えば、被照射物体20の内のコーティングする領域は、被照射物体20の全体がコーティングされている状態を100%として、被照射物体20の形状パラメータで指定された原点位置(基点)からの3次元方向のパーセンテージで設定することができる。
【0075】
「複数の被照射物体20に対するコーティング」
更に、複数の被照射物体20に対してコーティングすることができる部分を選択する場合、全ての被照射物体20を同様にコーティングしても良く、個々の被照射物体20に対してコーティングする部分を指定しても良い。例えば、単一の照射光投影部2の照射光投影範囲に複数の被照射物体20が存在する場合には、照射光投影範囲に複数のコーティング光の投影領域を設けて、照射光投影範囲の個々の被照射物体20をコーティングすることができる。この場合、第1のコーティング補正部12は、単一の平面映像100に対して、複数の被照射物体20の形状データ20’をマッピング処理する必要がある。
【0076】
また、コーティング照明装置は、複数の被照射物体20に対して、個別の照射光パターンを選択しても良い。このようなコーティング照明装置は、上述の照射光パターンを選択する操作インターフェースによって、個々の被照射物体20に照射光パターンが割り当てられる。そして、照射光投影部2に対する個々の被照射物体20の概略位置に対応して個々の選択された照射光パターンを含む平面映像100を照射光生成部11によって生成し、第1のコーティング補正部12によって、照射光投影範囲内の個々の被照射物体20の形状にマッピング処理される。
【0077】
更に、コーティング照明装置は、複数の被照射物体20に対して、個別に照射光パターンを割り当てるために、複数の被照射物体20を個々に識別する被照射体識別手段(カメラ等)を備えていても良い。そして、コーティング照明装置は、各被照射物体20ごとに予め設定された照射光パターンのいずれかを指定して、その照射光パターンでコーティングする。また、コーティング照明装置は、照射光投影部2と被照射物体20との距離を距離センサによって検出し、当該距離に基づいて、照射光投影部2からの距離が所定の範囲内にある被照射物体20に対してコーティングしても良い。なお、照射光投影部2と被照射物体20との距離は、照射光投影部2の固定点と被照射物体20の固定点の距離を、各固定点に磁気センサをつけて検出できる。
【0078】
「被照射物体20の形状変化」
コーティング照明装置においては、被照射物体20が予め設定された形状パターンに従って形状変化させることができても良い。なお、被照射物体20の位置は固定とする。
【0079】
このようなコーティング照明装置は、観察者等の操作インターフェースに対する操作に従って被照射物体20の形状を変化させる駆動機構等を備える。このコーティング照明装置は、予め駆動機構により変更される被照射物体20の形状パターンを設定しておき、被照射物体20の形状パターンに対応した形状パラメータを格納している。
【0080】
そして、駆動機構によって被照射物体20の形状パターンを変化させた場合、コーティング照明装置は、当該形状パターンの形状パラメータを呼び出して、図5に示したように第1のコーティング補正部12によって照射光信号のマッピング処理を行う。これにより、コーティング照明装置は、被照射物体20の形状パターンを予め形状パラメータとして記憶しておくことにより、被照射物体20の形状パターンを変化させても、簡単に第1のコーティング補正部12によって補正処理をすることができ、当該形状を照射光によってコーティングすることができる。
【0081】
更に、コーティング照明装置は、被照射物体20の任意の形状変化に追従して、第1のコーティング補正部12によってマッピング処理を行っても良い。このようなコーティング照明装置は、観察者が操作する操作インターフェースによって被照射物体20の形状が任意に変化していることを検出するカメラ等の検出手段と、当該被照射物体20の輪郭(形状パラメータ)を検出する輪郭検出手段が必要となる。
【0082】
このようなコーティング照明装置は、輪郭検出手段によって、照射光投影部2から被照射物体20を見たときの形状が更新された場合には、第1のコーティング補正部12によって、当該輪郭検出手段によって検出された輪郭(形状パラメータ)の被照射物体20をコーティングするようにマッピング処理を行う。
【0083】
これによって、コーティング照明装置は、被照射物体20が任意形状に変化するときでも、形状パラメータを更新して、マッピング処理を行うことができる。
【0084】
「シンボルの表示」
コーティング照明装置は、被照射物体20上にコーティングを実施している時に、当該コーティングされている被照射物体20上に文字や記号などのシンボルをカッティング挿入しても良い。なお、照射光投影部2と被照射物体20との間の位置関係の変化はさせない。
【0085】
このようなコーティング照明装置は、白黒等の2色で構成される文字又は記号、図柄などのシンボルを格納するシンボル格納手段と、格納されたシンボルを選択する操作インターフェース等のシンボル選択手段と、コーティングされた被照射物体20上におけるシンボルを挿入する場所を指定するシンボル挿入箇所指定手段と、シンボルの大きさを指定するシンボル径設定手段と、シンボルのカット対象(2色のどちらかをカットする)を切り替えるカット対象切り替え手段とを備える。このシンボル挿入箇所指定手段は、シンボルの挿入箇所を、被照射物体20の形状パラメータで指定された原点位置(基点)から3次元方向の距離で設定する。
【0086】
このようなコーティング照明装置は、上述の照射光パターンとは異なり、照射光の指定された場所に、指定された大きさのシンボルを挿入することができる。
【0087】
また、コーティング照明装置は、文字や図柄など任意のシンボルを読み込み、挿入することができる。このコーティング照明装置は、文字や図柄などの任意のシンボルを読み込むシンボル読込手段(例えば、スキャナ)と、読み込まれたシンボルを白黒など2色で構成される画像に変換するシンボル画像変換手段とを備える。このコーティング照明装置は、被照射物体20をコーティングしている照射光の一部に、読み込まれたシンボルをカットして挿入することができる。このコーティング照明装置は、例えばスキャナで読み込んだ紙に手書きされた文字や図柄、又は手持ちの画像を挿入することができる。
【0088】
更に、コーティング照明装置は、カットデザインをリアルタイムに更新するために、手書きされた文字や図柄を2色で構成される画像としてリアルタイムに読み込むリアルタイムシンボル読込手段(例えば、タブレットPC)を備える。コーティング照明装置は、被照射物体20をコーティングしている照射光の一部に、手書きされたシンボルをカットして挿入する。これにより、その場で書いた文字や図柄を挿入でき、レビューなどができる。
【0089】
「照射光投影部2と被照射物体20との位置関係の更新」
コーティング照明装置は、移動可能な載置台に被照射物体20が搭載されている場合においては、被照射物体20の移動に自動的に追従して、被照射物体20をコーティングしても良い。このコーティング照明装置は、被照射物体20を移動させる被照射物体可動手段と、被照射物体20の位置、姿勢を取得する被照射物体位置姿勢センシング手段と、位置姿勢センシングの出力値から位置姿勢パラメータを算出する被照射物体位置姿勢パラメータ算出手段とを備える。
【0090】
このようなコーティング照明装置は、被照射物体20の位置を変化させた場合に、被照射物体20の位置、姿勢を取得し、取得した被照射物体20の照射光投影部2に対する位置、姿勢から位置姿勢パラメータを算出する。これにより、コーティング照明装置は、被照射物体20が移動しても、第2のコーティング補正部13によって照射光投影部2と被照射物体20との配置に基づいて照射光信号を補正して、高い精度で被照射物体20をコーティングすることができる。
【0091】
また、コーティング照明装置は、移動可能な載置台に照射光投影部2が搭載されている場合においては、照射光投影部2の移動に自動的に追従して、被照射物体20をコーティングしても良い。このコーティング照明装置は、照射光投影部2を移動させる照射光投影部可動手段と、照射光投影部2の位置、姿勢を取得する照射光投影部位置姿勢センシング手段と、位置姿勢センシングの出力値から位置姿勢パラメータを算出する照射光投影部位置姿勢パラメータ算出手段とを備える。
【0092】
このようなコーティング照明装置は、照射光投影部2の位置を変化させた場合に、照射光投影部2の位置、姿勢を取得し、取得した被照射物体20の照射光投影部2に対する位置、姿勢から位置姿勢パラメータを算出する。これにより、コーティング照明装置は、照射光投影部2が移動しても、第2のコーティング補正部13によって照射光投影部2と被照射物体20との配置に基づいて照射光信号を補正して、高い精度で被照射物体20をコーティングすることができる。例えば、観察者が照射光投影部2と被照射物体20の間に立ってしまい、照射光を遮ってしまう(影ができる)状況において、影が回避される方向に照射光投影部2を動かした場合でも、照射光投影部2の位置を追従するようにセンシングして、コーティング光で被照射物体20をコーティングし続けられる。
【0093】
なお、上述したように、照射光投影部2と被照射物体20との光軸上に反射鏡を設けた構成においては、反射鏡で反射することを考慮した照射光投影部2の仮想位置を照射光投影部2の位置姿勢パラメータとして第2のコーティング補正部13に入力して、照射光信号の補正を行わせる。
【0094】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明を適用したコーティング照明装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用したコーティング照明装置によって任意形状の被照射物体をコーティングした様子を示す図である。
【図3】照射光投影範囲の全体に光を照射した様子を示す図である。
【図4】本発明を適用したコーティング照明装置における被照射物体の形状データについて説明する図である。
【図5】本発明を適用したコーティング照明装置における第1のコーティング補正部のマッピング処理について説明する図である。
【図6】本発明を適用したコーティング照明装置により照射光パターンを選択して、被照射物体をコーティングした様子を示す図である。
【図7】本発明を適用したコーティング照明装置の他の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明を適用したコーティング照明装置において、平板状の被照射物体に対するユーザの視点位置、視野角及び距離を示す図である。
【図9】本発明を適用したコーティング照明装置において、ユーザから平板状の被照射物体を見たときにユーザが視認する映像について説明する図である。
【図10】本発明を適用したコーティング照明装置において、平板状の被照射物体に対する照射光投影部の投影位置、投影画角及び距離を示す図である。
【図11】本発明を適用したコーティング照明装置において、照射光投影部から平板状の被照射物体に光投影する様子を説明する図である。
【図12】本発明を適用したコーティング照明装置において、ユーザからドーム型の被照射物体を見たときにユーザが視認する映像について説明する図である。
【図13】本発明を適用したコーティング照明装置において、照射光投影部からドーム型の被照射物体に光投影する様子を説明する図である。
【図14】本発明を適用したコーティング照明装置において、被照射物体から背面に漏れる漏れ光を抑制する構成を示すブロック図である。
【図15】本発明を適用したコーティング照明装置において、所定の大きさ以下の領域にはコーティング光を投影しないことを示す図である。
【図16】本発明を適用したコーティング照明装置において、被照射物体の輪郭部分にはコーティング光を投影しないことを示す図である。
【図17】本発明を適用したコーティング照明装置において、被照射物体の輪郭部分の照明効果を次第に変更することを説明する図である。
【図18】本発明を適用したコーティング照明装置において、被照射物体の鋭角部分に対して丸みを持たせたコーティング光を投影することを示す図である。
【図19】被照射物体をコーティングする照射光投影部とは別に、被照射物体の背面に背景光を投影する照射光投影部の配置を説明する正面図である。
【図20】被照射物体をコーティングする照射光投影部とは別に、被照射物体の背面に背景光を投影する照射光投影部の配置を説明する上面図である。
【図21】本発明を適用したコーティング照明装置によって被照射物体をコーティング光でコーティングすると共に背面に背景光を投影した状態を示す図である。
【図22】比較例としての照明効果を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
1 照明制御装置
2 照射光投影部
3 モニタ装置
11 照射光生成部
12 第1のコーディング補正部
13 第2のコーディング補正部
14 漏れ光抑制部
20 被照射物体
21 第3のコーティング補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意形状の被照射物体に向けて照射光を投影する照明装置であって、
照射光信号を入力する照射光信号入力手段と、
前記被照射物体に前記照射光を照射させたときに、前記被照射物体を照射光でコーティングさせるように前記照射光信号入力手段により入力した照射光信号を補正するコーティング補正手段と、
前記コーティング補正手段によって補正処理された照射光信号を用いて前記被照射物体に対して投影を行う照射光投影手段とを備え、
前記照射光は、前記被照射物体をコーティングするコーティング光と、前記被照射物体の背景となる背景光とを含み、
前記コーティング補正手段は、前記照射光のうちのコーティング光の輪郭を補正するように照射光信号を補正するものであり、
前記被照射物体の形状に合わせて照射光のうちのコーティング光の輪郭をカットするように前記照射光信号を補正する第1のコーティング補正手段と、
前記被照射物体の原点位置と前記照射光投影手段との位置関係に応じて、前記第1のコーティング補正手段により補正されたコーティング光の輪郭を補正する第2のコーティング補正手段とを備えること
を特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記照射光信号入力手段で生成される照射光パターンの照射光信号を予め複数格納する照射光パターン格納手段と、
前記照射光パターン格納手段に格納された何れかの照射光パターンを選択して照射光信号を読み出す照射光パターン選択手段とを備え、
前記コーティング補正手段は、前記照射光パターン選択手段により選択された照射光パターンの照射光信号を補正し、前記照射光投影手段は、当該補正された照射光信号を投影して、前記照射光パターン選択手段により選択された照射光パターンのコーティング光により前記被照射物体をコーティングすることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記照射光投影手段と前記被照射物体との間に反射鏡を配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記コーティング光は、時間軸上で画像を更新する映像であり、
前記照射光信号入力手段に映像信号を入力可能とし、
前記被照射物体を観察する観察者の視点の位置及び姿勢を入力する視点位置姿勢入力手段と、
前記視点位置姿勢入力手段により入力した観察者の視点から前記被照射物体に投影された映像を視認した場合に当該映像が歪みなく観察させるために映像光を歪ませるように前記映像光信号に補正をする第3のコーティング補正手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記照射光投影手段は、1又は複数の映像光出射部から相互に視差が与えられた映像光を出射して、前記被照射物体に立体映像を表示させることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記被照射物体のうちで予め設定された大きさ以下の領域にはコーティング光を投影しないように前記照射光信号を補正する漏れ光抑制手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記被照射物体のうちの所定幅の輪郭部分に投影する照明光の照明効果を変化させて、前記照明光投影手段から前記被照射物体に向けて投影されたコーティング光が、当該被照射物体から漏れて前記被照射物体の背景に投影された漏れ光を目立たなくする漏れ光抑制手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記漏れ光抑制手段は、前記輪郭部分の所定幅における内側から外側に向かうに従って次第にコーティング光の照明効果を変化させることを特徴とする請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記照射光投影手段により投影するコーティング光を所定幅で振動させて、前記照明光投影手段から前記被照射物体に向けて投影されたコーティング光が、当該被照射物体から漏れて前記被照射物体の背景に投影された漏れ光を目立たなくする漏れ光抑制手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−49007(P2009−49007A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188848(P2008−188848)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】