説明

照明装置

【課題】格別な施工工事を必要とせず、また光源からの発熱の対策のための付帯的な手段も不要であり、かつ天井面を間接的に照明する機能を果たすダウンライトとして好適に利用することができる照明装置を提供すること。
【解決手段】照明用光源として利用される面発光体1と、前記面発光体からの出射光を配光案内する灯具本体5とにより構成される。前記灯具本体5には、面発光体1の発光面を囲撓するようにして面発光体に装着される灯具取り付け部6と、前記灯具取り付け部に続いて窓孔により構成され、前記面発光体の発光面に直交しない方向への前記出射光を通過させる第1光案内部7と、前記第1光案内部に続いて筒体状に形成され、筒体内に向かう前記面発光体の発光面に直交する方向の前記出射光を通過させる第2光案内部8が具備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源として有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に代表される面発体を用い、前記面発体からの光を配光制御する筒体状の配光制御部材を備えることにより、例えばダウンライトとして利用可能な照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より各種店舗やショーウインドウ、エントランスホールやオフィスなどにおいて、主にその直下位置を照明するダウンライトが用いられている。また昨今においては生活様式の多様化に伴い、一般の住居の一部においても前記したダウンライトが採用される趨勢にある。
【0003】
従来の前記したダウンライトとしては、天井面に埋め込むタイプのものが提供されており、したがって、これを設置するには天井面に設置用の開口を施す必要があり、ダウンライトの設置に際して施工工事が必要となる。それ故、天井面への孔開け加工が困難な場合にはこれを設置することは不可能である。
【0004】
また、従来の前記したダウンライトは、その光源に白熱ランプもしくはハロゲンランプ等が用いられており、したがって前記光源からの発熱の対策が必要となる。その対策の一つとして器具本体の裏面に多数の放熱フィンを施したもの(特許文献1,2)や、器具本体の裏面に比較的広い面積の断熱板が取り付けられるように構成したもの(特許文献3)も提案されている。
【特許文献1】特開平5−47208号公報
【特許文献2】特開平9−293410号公報
【特許文献3】特開2007−95394号公報
【0005】
前記特許文献に開示されたダウンライトによると、光源からの発熱の対策のための付帯的な構成を施すことにより大型化し、例えば天井懐が浅い場合には、これを取り付けることができない等、ダウンライトの取り付けのための制約が大きい。
【0006】
一方、前記したダウンライトは、専らその直下位置をスポット状に照明する機能を持たせたものが主流であり、天井面を含む室内全体は他の照明器具により照明されるように使い分けがなされている。このためにダウンライトと室内全体を照明する他の照明器具を併用する必要があり、1つの器具によってダウンライトと天井面を含む間接照明の機能を果たす形態のものも求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、前記した従来のものの問題点および要求に基づいてなされたものであり、器具の取り付けに際して格別な施工工事を必要とせず、光源からの発熱の対策のための付帯的な手段も不要であり、かつ主照射の機能以外に取り付け位置の周囲も間接的に照明する機能を果たす例えばダウンライトとして好適に利用することができる照明装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる照明装置は、照明用光源として利用される面発光体と、前記面発光体からの出射光を配光案内する灯具本体とからなる照明装置であって、前記灯具本体には、前記面発光体の発光面を囲撓するようにして面発光体に装着される灯具取り付け部と、前記灯具取り付け部に続いて光透過材料もしくは窓孔により構成され、前記面発光体の発光面に直交しない方向への前記出射光を通過させる第1光案内部と、前記第1光案内部に続いて筒体状に形成され、筒体内に向かう前記面発光体の発光面に直交する方向の前記出射光を通過させる第2光案内部とが具備されている点に特徴を有する。
【0009】
この場合、一つの好ましい形態においては、前記第2光案内部を構成する筒体内には、前記面発光体に直交する方向に仕切り面を形成したルーバーが配置された構成にされる。
【0010】
また、他の好ましい形態においては、前記第2光案内部を構成する筒体の上端部には、前記面発光体から到来する光の一部を反射させる反射部材が形成された構成にされる。
【0011】
加えて、前記面発光体を囲むようにして金属性素材による磁気吸着部が形成され、当該磁気吸着部に対して前記灯具本体における灯具取り付け部が、磁気吸着手段により着脱可能に取り付けられるように構成されていることが望ましい。
【0012】
そして、前記面発光体として有機EL素子を好適に採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
前記した構成の照明装置によると、第1光案内部が光透過材料もしくは窓孔により形成され、面発光体からの発光面に直交しない方向への出射光を通過させるように成されるので、これが淡い光で天井面を間接的に照明する機能を果たすことができる。また第2光案内部が筒体状に形成され、前記面発光体の発光面に直交する方向の出射光が前記筒体内を通過するように作用するので、これが所定のカットオフ角度を有するダウンライトとしての機能を果たすことができ、装飾効果にも優れた照明装置を提供することができる。
【0014】
加えて、前記面発光体として有機EL素子を採用することにより、発熱を伴うことなく高い発光効率を得ることができ、きわめて軽量かつ薄型化が可能であるという特質をそのまま生かすことができる。これにより、器具の取り付けに際して格別な施工工事を必要とせず、光源からの発熱の対策のための付帯的な手段も不要となる。
【0015】
そして、前記面発光体を囲むようにして金属性素材により磁気吸着部を形成し、前記した第1および第2の光案内部を備えた灯具本体を磁気吸着手段により着脱可能に取り付けられるように構成することで、例えば灯具本体の清掃時等においての取り扱いを容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明にかかる照明装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1A〜図1Cは、その第1の実施の形態を示したものであり、図1Aは例えば天井面に有機EL素子からなる面発光体、および灯具本体を順に取り付ける状況を示した断面図であり、図1Bは照明装置を下側から視た状態の底面図、図1Cは灯具本体を斜め上方から視た状態の斜視図である。
【0017】
図1Aおよび図1Bに示すように面発光体1は、矩形状に成形された有機EL素子により構成されており、図1Aに示すように前記面発光体1の四辺を囲むようにして金属性素材による磁気吸着部2が取り付けられている。そして、面発光体1における発光面1aが下向きとなるようにして、その裏面において接着シート3を介して天井等の取り付け面4に取り付けられる。また前記取り付け面4には、必要に応じて面発光体1としての前記有機EL素子に給電するための給電線(図示せず)を通す開口4aが設けられる。
【0018】
なお、前記取り付け面4が金属製の素材により構成されている場合においては、前記接着シート3に代えてマグネットシートを用いることで、面発光体1の四辺を囲む前記磁気吸着部2を利用して、面発光体1を前記取り付け面4に取り付けることができる。
【0019】
以上のようにして取り付け面4に取り付けられた前記面発光体1には、符号5で示す灯具本体が取り付けられる。この灯具本体5には図1B、図1Cにも示されているとおり、前記した面発光体1の発光面1aを囲撓するようにして面発光体1に装着される灯具取り付け部6が具備されている。
【0020】
この灯具取り付け部6は、前記面発光体1の四辺を囲むようにして取り付けられた前記磁気吸着部2と同様の矩形状の口径寸法に形成されている。したがって灯具取り付け部6を、金属製の素材により形成することで、矩形状の開口が形成された符号9で示すマグネットシートを介することで、灯具本体5を面発光体1の磁気吸着部2に取り付けることができる。
【0021】
前記灯具本体5には、前記面発光体1の発光面1aに直交しない方向への出射光を通過させる第1光案内部7が形成されている。すなわち第1光案内部7は、図1Cに示されたように灯具取り付け部6と後述する筒体状の第2光案内部8とを連結する4本のリブ部材5aにより仕切られた窓孔により構成されている。
【0022】
また、前記第2光案内部8は方形状の筒体(第2光案内部と同一の符号8で示す。)により構成されており、筒体内に向かう前記面発光体1の発光面1aに直交する方向の出射光を通過させるように機能する。すなわち、前記筒体8が所定の長さ寸法に形成されることで、前記面発光体1からの出射光が所定のカットオフ角度をもって下方に投射され、これがダウンライトとしての機能を果たすように作用する。
【0023】
なお、前記した灯具本体5は、好ましくはその全体が厚さの薄い(例えば0.8mm程度の)金属板を折り曲げ加工することにより形成され、これに例えばメラミン樹脂の焼き付け塗装が施されることにより構成される。したがって、灯具本体5は軽量に形成させることができ、図示例に示すようにマグネットシート9を利用することで、天井面等に着脱可能に取り付けることが可能である。
【0024】
図2は、前記した面発光体1としての有機EL素子(面発光体と同一の符号1で示す。)の構成例を説明するものであり、図2においては有機EL素子1を構成する各層を層方向に分離した状態で示している。すなわち、この種の有機EL素子1は、例えばガラス等の透明な素材により形成された基板1Aの片面に、第1電極となる例えばITOによる透明電極1Bが形成される。
【0025】
また、前記透明電極1Bに重畳されるようにして有機発光層Cが成膜される。この有機発光層は、例えばホール輸送層、発光層、電子輸送層などにより構成されるが、図においては一層の有機発光層1Cとして示している。そして、前記有機発光層1Cに重畳されるようにして第2電極となる例えばアルミニウムなどによる対向電極1Dが形成される。
【0026】
これに加えて、図には示していないが対向電極1Dの背面側には封止基板が配置され、この封止基板は、前記した前面側のガラス基板1Aの周縁部において封止部材により封止される。
【0027】
そして、前記透明電極1Bと、対向電極1Dとの間には直流電源Eが接続され、これにより有機発光層1Cにおける前記透明電極1Bと対向電極1Dで挟まれた部分が発光し、その光は前記透明電極1Bおよびガラス基板1Aを透過して外部に導出される。
【0028】
前記した有機EL素子1によると直流の低電圧により駆動されることで高い発光効率を有し、軽量かつ薄型化が可能であると共に、ほとんど発熱がないという特質を有しており、この発明にかかる照明装置に好適に採用することができる。
【0029】
次に図3A〜図3Cは、この発明にかかる照明装置における第2の実施の形態を示したものであり、これら各図はすでに説明した図1A〜図1Cに示した第1の実施の形態と同様の図示状態にされている。そして、図1A〜図1Cに示した第1の実施の形態における各部と同様の機能を果たす部分を同一符号で示しており、したがってその詳細な説明は省略する。
【0030】
図3A〜図3Cに示す第2の実施の形態においては、第2光案内部を構成する方形状の筒体8内には、面発光体としての前記した有機EL素子1の発光面1aに直交する方向に仕切り面を形成したルーバー8aが配置されている。すなわちこの実施の形態におけるルーバー8aは、方形状の筒体8内を水平方向にそれぞれ3分割するようにして井桁状に構成されている。
【0031】
したがって前記したルーバー8aを備えることにより、面発光体としての前記した有機EL素子1からの出射光を、より狭いカットオフ角度をもって下方に投射させることができ、その直下位置をよりスポット状に照明する機能を持たせたことができる。
【0032】
図4A〜図4Cは、この発明にかかる照明装置における第3の実施の形態を示したものであり、これら各図はすでに説明した図1A〜図1C、図3A〜図3Cに示した第1および第2の実施の形態と同様の図示状態にされている。そして、第1および第2の実施の形態における各部と同様の機能を果たす部分を同一符号で示しており、したがってその詳細な説明は省略する。
【0033】
図4A〜図4Cに示す第3の実施の形態においては、第2光案内部を構成する筒体8の上端部に、前記した面発光体としての有機EL素子1から到来する光の一部を反射させる反射部材8bが形成されている。すなわち、図に示す実施の形態においては、方形状に形成された前記筒体8の上端部が、筒体8の外側に向かって水平状態に湾曲するようにして形成されており、水平状態に形成された鍔状の部分が前記反射部材8aを構成している。
【0034】
したがって前記した構成によると、図4Aに示すように窓孔により構成された第2光案内部8を通過する面発光体1からの光の一部は、矢印cで示すように鍔状に形成された反射部材8aにより反射され、矢印dで示すように面発光体1の取り付け面4側に投射される。したがって、灯具本体5を天井面に取り付ける場合においては、面発光体1からの光の一部が天井面に向かって到達する間接照明の度合いを大きくさせることができる。
【0035】
以上の説明で明らかなとおり、この発明にかかる照明装置は面発光体1と灯具本体5とにより構成され、前記灯具本体5には灯具取り付け部、第1光案内部、第2光案内部が具備されているので、前記面発光体からの光の一部を淡い光で灯具取り付け面(天井面)を照明する機能を果たすと共に、所定のカットオフ角度を有するダウンライトとしての機能を持たせることができる。
【0036】
また、器具の取り付けに際して格別な施工工事を必要とせず、さらに光源からの発熱の対策のための付帯的な手段も不要であるなど、前記した発明の効果に記載した作用効果を得ることができる。
【0037】
なお、以上説明した実施の形態においては、灯具本体における第2光案内部を構成する筒体部は、方形状になされているが、これは例えば円筒状またはその他の形状を選択することができ、同様にルーバーの形状も井桁状に構成されることなく例えば筒体部と同心状に形成させることもできる。
【0038】
また、実施の形態においては、第1光案内部7は、灯具取り付け部6と筒体状の第2光案内部8とを連結する4本のリブ部材5aにより仕切られた窓孔により構成されているが、これは利用形態に応じて例えば和紙もしくは合成樹脂等の光透過材料により構成することもできる。また前記窓孔に平板状の光透過部材を嵌め込んだ構成にすることもできる。
【0039】
また、前記した説明においては、この発明にかかる照明装置の面発光体1を天井面に取り付けてダウンライトとして利用する例を示しているが、この面発光体1は壁面(横壁)に取り付けることもでき、さらに前記面発光体1を例えば支柱の先端部に取り付けてスタンドライトもしくはスポットライトとして機能させるように利用することも可能である。
【0040】
さらに、この発明にかかる照明装置においては、面発光体として望ましくは有機EL素子が用いられるが、これ以外に、無機EL素子などの面発光素子を利用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】この発明にかかる第1の実施の形態における照明装置を取り付ける状況を示した断面図である。
【図1B】同じく照明装置を下側から視た状態の底面図である。
【図1C】同じく灯具本体を斜め上方から視た状態の斜視図である。
【図2】面発光体としての有機EL素子の構成例を説明する模式図である。
【図3A】この発明にかかる第2の実施の形態における照明装置を取り付ける状況を示した断面図である。
【図3B】同じく照明装置を下側から視た状態の底面図である。
【図3C】同じく灯具本体を斜め上方から視た状態の斜視図である。
【図4A】この発明にかかる第3の実施の形態における照明装置を取り付ける状況を示した断面図である。
【図4B】同じく照明装置を下側から視た状態の底面図である。
【図4C】同じく灯具本体を斜め上方から視た状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 面発光体(有機EL素子)
1a 発光面
2 磁気吸着部
3 接着シート
4 取り付け面
5 灯具本体
5a リブ部材
6 灯具取り付け部
7 第1光案内部(窓孔)
8 第2光案内部(筒体)
8a ルーバー
8b 反射部材
9 マグネットシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明用光源として利用される面発光体と、前記面発光体からの出射光を配光案内する灯具本体とからなる照明装置であって、
前記灯具本体には、前記面発光体の発光面を囲撓するようにして面発光体に装着される灯具取り付け部と、
前記灯具取り付け部に続いて光透過材料もしくは窓孔により構成され、前記面発光体の発光面に直交しない方向への前記出射光を通過させる第1光案内部と、
前記第1光案内部に続いて筒体状に形成され、筒体内に向かう前記面発光体の発光面に直交する方向の前記出射光を通過させる第2光案内部と、
が具備されていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第2光案内部を構成する筒体内には、前記面発光体に直交する方向に仕切り面を形成したルーバーが配置されていることを特徴とする請求項1に記載された照明装置。
【請求項3】
前記第2光案内部を構成する筒体の上端部には、前記面発光体から到来する光の一部を反射させる反射部材が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された照明装置。
【請求項4】
前記面発光体を囲むようにして金属性素材による磁気吸着部が形成され、当該磁気吸着部に対して前記灯具本体における灯具取り付け部が、磁気吸着手段により着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された照明装置。
【請求項5】
前記面発光体が有機EL素子により構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された照明装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2010−9969(P2010−9969A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168799(P2008−168799)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(504265754)財団法人山形県産業技術振興機構 (60)
【出願人】(506077153)
【出願人】(505459998)株式会社アンデザイン (2)
【Fターム(参考)】