説明

照明装置

【課題】 複数の照明装置が並べて設置される場合に照明装置各々の発光輝度又は発光色をほぼ一致させることができ、かつ寿命に差が生じないようにした照明装置を提供する。
【解決手段】 発光素子を有する発光部と、発光素子の発熱を放熱する放熱部と、発熱部に固定され発光部の発熱によって加熱されると形状を変えて放熱部に接触する形状変形部材と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を備え、発光輝度又は発光色を調整することができる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光源として有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた照明装置が提案されている。有機EL素子の照明装置(有機EL照明装置)には、面発光で形状に制約がないという特徴があり、そのような特徴はLED(発光ダイオード)照明装置等の他の照明装置では得られないので、今後の実用化に向けた更なる開発が期待されている。
【0003】
有機EL照明装置では、有機EL素子を照明のために長時間に亘って発光させたままにしておくことが多くあるので、素子自身の発熱によって高温状態になる。ところが、有機EL素子の高温状態の長く継続すると、有機EL素子の劣化が加速されて輝度低下が生じ、その結果、素子としての寿命が短くなることが知られている。
【0004】
一般に、照明装置等の光源を有する装置において、LED等の発光素子の使用寿命を延長するために、発光素子の温度を測定して測定温度が所望の温度になるように発光素子の作動の修正を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。従って、有機EL照明装置にもこの方法を適用することにより有機EL素子の使用寿命を長くすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−522349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の同一の照明装置を天井に並べて設置する場合には、全ての照明装置の発光輝度(又は発光色)を同一にする必要がある。これは照明装置を並べて設置すると照明装置毎の輝度の違いが目立つからである。しかしながら、発光輝度を同一にしても発光素子毎のばらつきのために照明装置各々の発光素子の温度が異なり、これにより照明装置毎に発光素子の劣化具合に差が生じて結果として照明装置毎の寿命が異なってしまうという問題があった。また、同一の部屋の天井であっても照明装置が設置される場所によって放熱作用が異なる。このため照明装置各々の発光素子の特性が同一の場合でも照明装置毎に発光素子の劣化具合に差が生じて結果として照明装置毎の寿命が異なってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記の欠点が一例として挙げられ、複数の照明装置が並べて設置される場合に照明装置各々の発光輝度又は発光色をほぼ一致させることができ、かつ寿命に差が生じないようにした照明装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明の照明装置は、発光素子を有する発光部と、前記発光素子の発熱を放熱する放熱部と、前記発熱部に固定され前記発光部の発熱によって加熱されると形状を変えて前記放熱部に接触する形状変形部材と、を備えることを特徴としている。
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
請求項1に係る発明の照明装置によれば、発熱部に固定され発光部の発熱によって加熱されると形状を変えて放熱部に接触する形状変形部材が備えられているので、発光部の温度の違いによって発光素子の劣化と共に生じる照明装置毎の発光輝度又は発光色のばらつきを防止することができる。
【0011】
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例として照明装置の構造を示す断面図である。
【図2】図1の照明装置の封止容器とヒートシンクとの間に僅かの空間を設けて放熱効率を最良な状態から低下させた状態を示す断面図である。
【図3】図1の照明装置の封止容器とヒートシンクとの間に更に空間を設けて放熱効率を更に低下した状態を示す断面図である。
【図4】図1の照明装置の発光EL素子の駆動系を示すブロック図である。
【図5】照明装置の工場出荷時における熱的結合状態の調整工程を示すフローチャートである。
【図6】照明装置の設置場所での熱的結合状態の調整工程を示すフローチャートである。
【図7】本発明の他の実施例として照明装置の構造を示す断面図である。
【図8】図7の照明装置のいくつかの接触部を封止容器から離間させて放熱効率を最良な状態から低下させた状態を示す断面図である。
【図9】図7の照明装置の更に多くの接触部を封止容器から離間させて放熱効率を更に低下させた状態を示す断面図である。
【図10】本発明に関連した照明装置の構造を示す断面図である。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施例である照明装置の構成を示している。この照明装置は、透明基板11上に発光素子として有機EL素子12が形成されている。有機EL素子12は公知のものであるので、具体的に図示しないが、2つの電極(陽極及び陰極)が発光機能層を挟むように構成されている。陽極はITOやIZO等の光透過性を有する材料からなり、透明基板11上に形成されている。発光機能層は有機材料からなり、陽極側から順に例えば、ホール注入・輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層の積層した構造である。また、発光機能層は、例えば、真空蒸着法又はインクジェット法を用いて積層形成することができる。陰極はAlやAg等の金属材料からなる。
【0015】
透明基板11の有機EL素子12の形成面とは反対側の面が光放出面11aである。すなわち、有機EL素子12が駆動されると発光機能層において生成された光は陽極と透明基板11を介して放出されるのである。
【0016】
有機EL素子12を含む透明基板11上は例えば、熱硬化性樹脂からなる封止層13で覆われている。更に、透明基板11上の封止層13の周囲を覆うように封止容器14が接着されている。封止容器14は例えば、金属からなり、直方体形状の箱型のカバーであり、その一面に開口部を有する。封止容器14は金属だけでなく、樹脂やガラスなどでもよいし、形状も箱型だけでなく、シート状や板状でもよい。また、封止容器の代わりに、有機物あるいは無機物からなる薄膜で、有機EL素子12全体を被覆するように形成してもよい。有機EL素子12及び封止層13の部分が封止容器14の開口部側から封止容器14内に配置され、封止容器14の開口部周囲の端部が透明基板11上に接着され、これにより有機EL素子12の防湿の向上が図られている。
【0017】
これら透明基板11、有機EL素子12、封止層13、及び封止容器14が照明装置の発光部を構成している。
【0018】
封止容器14の外側主面には放熱部としてヒートシンク15が配置されている。ヒートシンク15はネジ16と共に放熱機構を構成し、有機EL素子12の発熱を外部に放熱するために設けられている。ヒートシンク15はアルミニウムや銅等の高伝熱性の金属からなり、平板部15aに対して複数の放熱フィン15bを有している。放熱フィン15bは等間隔に並んでいても良いが、照明装置内部の温度ムラに対応させて配置位置や形状が異なっていても良い。また、ヒートシンク15の平板部15aは透明基板11の平面とほぼ同じサイズを有し、透明基板11とヒートシンク15の平板部15aとは有機EL素子12及び封止層13を含む封止容器14を挟んだ構造となっている。よって、有機EL素子12の発熱は封止層13、そして封止容器14を介してヒートシンク15に伝熱して放熱される。
【0019】
透明基板11の端部には複数の貫通孔(図示せず)が形成され、その各貫通孔の位置に対応したヒートシンク15の平板部15aの端部の位置には貫通したネジ孔(図示せず)が形成されている。透明基板11の貫通孔各々には放熱調整手段としてネジ16が光放出面11a側から挿入されて回転自在に取り付けられている。またネジ16の頭部は透明基板11の光放出面11aに位置し、ネジ16は透明基板11に垂直な方向に移動しないように支持されている。ネジ16はヒートシンク15のネジ孔と累合し、透明基板11とヒートシンク15とが平行に位置するようにされている。ネジ16の頭部に形成されているプラス溝(図示せず)にプラスドライバの先端を挿入して、そのプラスドライバと共にネジ16を回転させる操作を行うと、ヒートシンク15が移動し、これにより封止容器14からヒートシンク15までの距離、すなわち熱的結合状態を調整することができる。熱的結合状態は封止容器14からヒートシンク15への熱伝導の程度であり、熱的結合状態に応じてヒートシンク15による放熱効率が変化する。
【0020】
図1に示すように、ネジ16が締め込まれて封止容器14とヒートシンク15とが密着した状態にあるときには放熱効率が最良な状態となる。
【0021】
図2に示すように、ネジ16が緩められると、ヒートシンク15が封止容器14から離れるので封止容器14とヒートシンク15との間に僅かの空間ができる。この図2の状態ではヒートシンク15による放熱効率が最良な状態から低下することになる。
【0022】
図3に示すように、ネジ16が更に緩められると、封止容器14とヒートシンク15との間に封止容器14の高さ程の空間ができる。この図3の状態ではヒートシンク15による放熱効率が更に低下することになる。
【0023】
このようにネジ16を締め込んだり、又は緩めたりすることにより封止容器14とヒートシンク15との間の距離を調整し、これにより放熱効率を設定することができる。放熱効率を照明装置毎に設定することにより、後述するように、各照明装置の発光輝度と発光部の温度とを同一にすることができる。
【0024】
なお、発光部の温度とは有機EL素子12の温度、透明基板11の光放出面11aの温度、又は封止容器14の温度である。有機EL素子12の温度を測定するためには温度センサが封止容器14内に内蔵される。
【0025】
照明装置には図4に示すように、上記の構成の他に発光調整手段として制御回路17及び操作部18が設けられている。制御回路17は、電源が照明装置に投入されると、有機EL素子12の陽極と陰極とに駆動電圧を印加し、有機EL素子12の陽極と陰極との間に流れる駆動電流又は駆動電圧を操作部18における取付者等のユーザの入力操作に応じて調整することにより有機EL素子12の発光輝度を入力操作に対応した輝度に制御することができる。
【0026】
かかる本発明による照明装置では工場出荷時に又はその設置場所で封止容器14とヒートシンク15との熱的結合状態が調整される。次に、熱的結合状態を工場出荷時に調整する場合及び設置場所で調整する場合の調整工程についてフローチャートを用いて説明する。
【0027】
工場出荷時に調整する場合には、図5に示すように先ず、照明装置への電源供給が開始され(ステップS11)、発光輝度が操作部18の入力操作に応じて調整される(ステップS12)。ステップS11では、有機EL素子12の陽極と陰極との間に制御回路17から駆動電圧が印加される。発光調整ステップのステップS12では有機EL素子12を流れる駆動電流又は印加電圧の調整により有機EL素子12の発光輝度が上記の入力操作に対応した輝度に調整される。発光輝度の測定のために例えば、輝度計を用いることにより発光輝度を所定の発光輝度に調整することができる。
【0028】
ステップS12の実行後、所定の平衡時間の経過があったか否かが判別される(ステップS13)。所定の平衡時間は有機EL素子12の温度が安定するために要する時間である。
【0029】
所定の平衡時間の経過後、発光部の温度が例えば、温度センサ(図示せず)によって検出され(ステップS14)、検出された温度が所定の発熱温度に等しいか否かが判別される(ステップS15)。ステップS14は温度検出ステップである。所定の発熱温度は例えば、発光部の駆動電流−温度特性に応じて定められた温度である。検出された温度が所定の発熱温度に等しくない場合には熱的結合状態が調整される(ステップS16)。ステップS16は熱的結合調整ステップである。例えば、検出された温度が所定の発熱温度より高い場合には熱的結合状態が密になるようにユーザのドライバ操作に応じてネジ16が締められ、封止容器14とヒートシンク15との間の距離が狭くされ、これにより放熱効率が高められる。一方、検出された温度が所定の発熱温度より低い場合には熱的結合状態が疎になるようにネジ16が緩められ、封止容器14とヒートシンク15との間の距離が広くされ、これにより放熱効率が低くされる。
【0030】
熱的結合状態の調整後、所定の平衡時間の経過があったか否かが判別される(ステップS17)。所定の平衡時間の経過後、ステップS14が再実行される。すなわち、発光部の温度が検出され、その検出温度が所定の発熱温度に等しくなるまでステップS14〜S17の実行が繰り返される。検出温度が所定の発熱温度に等しくなると熱的結合状態の調整工程が終了する。
【0031】
設置場所で調整する場合には、複数の照明装置が設置されていることが前提となり、複数の照明装置各々の発光輝度が入力操作に応じて調整されると共に発光部の温度が所定の発熱温度に調整される。具体的には、図6に示すように、先ず、設置された複数の照明装置各々への電源供給が開始され(ステップS21)、複数の照明装置各々の発光輝度が入力操作に応じて調整される(ステップS22)。ステップS21では、複数の照明装置各々の有機EL素子12の陽極と陰極との間に電源電圧が印加される。発光調整ステップであるステップS22では複数の照明装置各々の有機EL素子12を流れる電流又は印加電圧の調整により有機EL素子12の発光輝度が上記の入力操作に対応した輝度に調整される。発光輝度の測定のために例えば、輝度計を用いることにより各照明装置の発光輝度を所定の発光輝度に調整することができる。また、各照明装置の発光輝度を目視してほぼ一致させても良い。
【0032】
ステップS22の実行後、所定の平衡時間の経過があったか否かが判別される(ステップS23)。所定の平衡時間は有機EL素子12の温度が安定するために要する時間である。
【0033】
所定の平衡時間の経過後、複数の照明装置各々の発光部の温度が例えば、温度センサ(図示せず)によって検出される(ステップS24)。複数の照明装置のうちの最も温度が高い照明装置を照明装置Aとして選択され、その照明装置Aの放熱効率が最大となるように封止容器14とヒートシンク15との熱的結合状態がユーザのドライバ操作に応じて調整される(ステップS25)。熱的結合調整ステップであるステップS25においては照明装置Aに対して例えば、図1に示したように封止容器14とヒートシンク15とを密着させて放熱機構による放熱効率が最大となるようにされる。
【0034】
照明装置Aの熱的結合状態の調整後、所定の平衡時間の経過があったか否かが判別される(ステップS26)。所定の平衡時間の経過後、照明装置Aの発光部の温度が検出される(ステップS27)。ステップS27は温度検出ステップである。照明装置Aの放熱効率を高くしたことによりステップS27で検出された照明装置Aの発光部の温度はステップS24で検出された温度より低下する。
【0035】
その後、照明装置A以外の照明装置各々の封止容器14とヒートシンク15との熱的結合状態が調整される(ステップS28)。熱的結合調整ステップであるステップS28においては、照明装置A以外の照明装置についてステップS24で検出された温度がステップS27で検出された照明装置Aの温度より高い場合にはその照明装置については熱的結合状態が密になるようにドライバ操作に応じてネジ16が締め込まれ、封止容器14とヒートシンク15との間の距離が狭くされ、これにより放熱効率が高められる。一方、照明装置A以外の照明装置についてステップS24で検出された温度がステップS27で検出された照明装置Aの温度より低い場合にはその照明装置については熱的結合状態が疎になるようにネジ16が緩められ、封止容器14とヒートシンク15との間の距離が広くされ、これにより放熱効率が低められる。
【0036】
照明装置A以外の照明装置各々の熱的結合状態の調整後、所定の平衡時間の経過があったか否かが判別される(ステップS29)。所定の平衡時間の経過後、照明装置A以外の照明装置各々の発光部の温度が検出される(ステップS30)。ステップS30は温度検出ステップである。検出された温度各々がステップS27で検出された照照明装置Aの温度に等しいか否かが判別される(ステップS31)。照明装置Aの温度と異なる温度の照明装置があるならば、その照明装置の熱的結合状態がドライバ操作に応じて調整される(ステップS32)。ステップS32はステップS28と同様の熱的結合調整ステップである。ステップS32の実行後、ステップS29〜S31が再度実行される。この結果、照明装置A以外の照明装置各々の発光部の温度が照明装置Aの発光部の温度に等しくなると、熱的結合状態の調整工程が終了する。
【0037】
このように実施例の照明装置を部屋の例えば、天井に複数分並べて配置した場合に、各照明装置の発光輝度と発光部の温度とを互いに一致させることができる。よって、発光部の温度の違いによって有機EL素子の劣化と共に生じる照明装置毎の発光輝度のばらつきを防止することができる。すなわち、各照明装置の発光部の温度を一致させたことにより各照明装置の有機EL素子の劣化がほぼ同じように進行していくことなり、これにより各照明装置の寿命をほぼ一致させることができると共に各照明装置の有機EL素子の劣化に伴って変化する発光輝度をほぼ一致させることができる。また、複数の照明装置各々の熱的結合状態を設置場所で調整する場合には、更に、設置場所の温度分布や空気の流れを反映した調整が可能となる。
【0038】
図7は本発明の他の実施例である照明装置の構成を示している。この図7の照明装置において、透明基板11、有機EL素子12、封止層13及び封止容器14は図1に示した照明装置のものと同一であるので、それらについては同一符号が用いられている。
【0039】
図7の照明装置において、ヒートシンク21は、発光調整手段としてのネジ23及び接触部23aと共に放熱機構を構成する。ヒートシンク21は平板部21a及び複数のフィン21bを含み、図1に示した照明装置のヒートシンク15と同一の形状を有している。ヒートシンク21は円柱状の支柱22によって透明基板11に固定されている。透明基板11の端部とヒートシンク21の平板部21aの端部との間に支柱22は配置され、透明基板11とヒートシンク21の平板部21aとが平行にされている。平板部21aと封止容器14との間には空間が設けられている。
【0040】
ヒートシンク21の平板部21aのフィン21b間の部分には貫通したネジ孔(図示せず)が各々形成されている。ネジ孔にはネジ23が回転自在に累合している。ネジ23はフィン21b側に例えば、プラス溝が形成された頭部を有し、頭部から伸張した螺旋ネジの端部に外観がナット形状の接触部23aを有している。接触部23aはそのネジ23の端部に固着されている。ネジ23及び接触部23aは銅や鉄等の高伝熱性の金属からなる。プラスドライバ(図示せず)を用いたドライバ操作に応じてネジ23を平板部21aに締め込んだ状態では接触部23aが封止容器14に当接する。接触部23aが封止容器14に当接した部分は封止容器14とヒートシンク21との間の伝熱を行う。すなわち、有機EL素子12の熱は封止層13、封止容器14、接触部23a、そしてネジ23を介してヒートシンク21に伝熱して放熱される。一方、ドライバ操作に応じてネジ23を平板部21aから緩めた状態では接触部23aが封止容器14から離れる。接触部23aが封止容器14から離れた部分は封止容器14とヒートシンク21との間の伝熱をほとんど行わない。よって、各ネジ23を回転させて接触部23aが封止容器14に当接したか否かに応じて封止容器14とヒートシンク21との熱的結合状態を調整することができ、接触部23aが封止容器14に当接した部分、すなわち接触面積が多いほど放熱効率が高くなる。
【0041】
図7に示すように、全てのネジ23が締め込まれると、全ての接触部23aが封止容器14に当接するので、ヒートシング21による放熱効率が最良な状態となる。
【0042】
図8に示すように、図7の状態からドライバ操作に応じて4つのネジ23が緩められると、それらの接触部23aが封止容器14から離れてその分だけ接触面積が低下する。図8の状態ではヒートシング21による放熱効率が最良な状態から低下することになる。
【0043】
図9に示すように、更に2つのネジ23が緩められると、6つの接触部23aが封止容器14から離れるのでその分だけ接触面積が更に低下する。図9の状態ではヒートシング21による放熱効率が更に低下することになる。
【0044】
このように複数のネジ23を全て締め込んだり、その一部又は全てを緩めたりすることにより封止容器14とヒートシンク21との熱的結合状態、すなわち放熱効率を設定することができる。放熱効率を照明装置毎に設定することにより、各照明装置の発光輝度と発光部の温度とをほぼ同一にすることができる。
【0045】
よって、図7の照明装置についても工場出荷時に図5に示したように、封止容器14とヒートシンク23との熱的結合状態を調整することができ、又はその設置場所では図6に示したように、封止容器14とヒートシンク23との熱的結合状態を調整することができる。
【0046】
図7の照明装置の工場出荷時に封止容器14とヒートシンク21との熱的結合状態が調整される場合には、図5のステップS16では、検出された発光部の温度が所定の発熱温度より高い場合には熱的結合状態が密になるようにいくつかのネジ23が締め込まれて封止容器14に当接する接触部23aの数が増加され、これにより放熱効率が高められる。一方、検出された発光部の温度が所定の発熱温度より低い場合には熱的結合状態が疎になるようにいくつかのネジ23が緩められ、封止容器14から離れた接触部23aの数が増加され、これにより放熱効率が低くされる。
【0047】
また、図7の照明装置各々の封止容器14とヒートシンク21との熱的結合状態が設置場所で調整される場合には、図6のステップS25では、照明装置Aの熱的結合状態が例えば、図7に示したように全てのネジ23が締め込まれて全ての接触部23aを封止容器14に当接させ、これにより放熱効率が高められる。また、図6のステップS28及びS32では、照明装置A以外の照明装置についてステップS24で検出された温度がステップS27で検出された照明装置Aの温度より高い場合にはその照明装置については熱的結合状態が密になるようにいくつかのネジ23が締められて封止容器14に当接する接触部23aの数が増加され、これにより放熱効率が高められる。一方、照明装置A以外の照明装置についてステップS24で検出された温度がステップS27で検出された照明装置Aの温度より低い場合にはその照明装置については熱的結合状態が疎になるようにいくつかのネジ236が緩められ、封止容器14から離れた接触部23aの数が増加され、これにより放熱効率が低くされる。
【0048】
なお、図7には9個のネジ23を示しているが、ネジ23の数は特に限定されず、9個より多くても又は少なくても良い。
【0049】
また、上記した実施例においては、有機EL素子の発光輝度を入力操作に応じて調整しているが、本発明は赤色、青色及び緑色各々の有機EL素子を有するカラー発光部を備える照明装置において、入力操作に応じて各有機EL素子の駆動電流又は駆動電圧を制御して発光部の発光色を調整するものでも良い。
【0050】
また、上記した実施例においては、放熱部としてヒートシンクを示したが、ヒートパイプ等の他の放熱手段を用いても良い。
【0051】
更に、上記した実施例においては、発光部の発光素子として有機EL素子が用いられているが、本発明はこれに限定されず、LED(発光ダイオード)等の他の発光素子を用いることができる。
【0052】
ヒートシンクと発光部との距離や接触面積を制御する方法としては、ネジをドライバで回す方法以外にも、ステッピングモーターなどとギアを組み合わせて距離を調整する方法や、電磁石を使ったソレノイドアクチュエータなどでも良い。また、距離の微調整のためにこれらにピエゾアクチュエータを組み合わせても良い。これらの調整方法は電気的に制御することが可能であるため、出荷や設置のときだけでなく、照明装置の使用中でも制御することが可能となる。これにより照明装置周辺に放熱に影響するような環境の変化があった場合でも、照明装置毎の温度ムラの発生を防ぐことができる。
【0053】
図10は更に本発明に関連した照明装置の構成を示している。この図10の照明装置において、透明基板11、有機EL素子12、封止層13、封止容器14、ヒートシンク15、及びネジ16は図1に示した照明装置のものと同一であるので、それらについては同一符号が用いられている。
【0054】
図10の照明装置は、更に、複数のバイメタル31を備えている。各バイメタル31は長手板状であり、その一端部分が封止容器14外側に固着されている。各バイメタル31は温度上昇に従ってヒートシンク15側に湾曲するようになっている。バイメタル31の他端がヒートシンク15に機械的に接触すると、そのバイメタル31は封止容器14とヒートシンク15との間の伝熱を行う。ネジ16は封止容器14とヒートシンク15との間の距離を調整するものであり、バイメタル31がヒートシンク15に接触する温度を所定の温度Tに設定することができる。
【0055】
図10の照明装置においては、有機EL素子12の熱は封止層13、そして封止容器14を介してバイメタル31を加熱する。バイメタル31の温度が所定の温度Tに達するとバイメタル31はヒートシンク15に接触し、これにより有機EL素子12の熱は封止層13、封止容器14、そしてバイメタル31を介してヒートシンク15に伝熱して放熱される。従って、照明装置毎に個別にネジ16によって封止容器14とヒートシンク15との間の距離を調整することにより、全ての照明装置についてバイメタル31の温度が所定の温度Tに達したときにバイメタル31がヒートシンク15に接触して封止容器14とヒートシンク15との熱的結合状態を密にすることができる。
【0056】
なお、図10には3つのバイメタル31を示しているが、バイメタル31の数は特に限定されず、3つより多くても又は少なくても良い。また、バイメタルに代えて形状記憶合金を用いてもバイメタルの場合と同様に動作させることができる。
【符号の説明】
【0057】
11 透明基板
12 有機EL素子
13 封止層
14 封止容器
15,21 ヒートシンク
16,23 ネジ
22 支柱
23a 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する発光部と、
前記発光素子の発熱を放熱する放熱部と、
前記発熱部に固定され前記発光部の発熱によって加熱されると形状を変えて前記放熱部に接触する形状変形部材と、を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記発光部と前記放熱部との間の距離を調整する調整手段を含み、前記調整手段による前記発光部と前記放熱部との間の距離の調整によって前記形状変形部材が前記放熱部に接触する温度が設定されることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記放熱部は平板部と前記平板部に設けられた複数のフィンとを有するヒートシンクからなり、前記平板部は前記発光部の透明基板と平行に配置され、
前記調整手段は前記透明基板の端部に形成された貫通孔内に回転自在に支持され、前記平板部の前記貫通孔に対応する位置に形成されたネジ孔に回転自在に累合した複数のネジからなり、前記ネジ各々を回転することにより前記発光部と前記放熱部との間の距離を調整し得ることを特徴とする請求項2記載の照明装置。
【請求項4】
前記形状変形部材はバイメタルであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−33715(P2013−33715A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67532(P2012−67532)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2012−510832(P2012−510832)の分割
【原出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】