説明

照明装置

【課題】客室内は間接光により柔らかく照らすることができ、客室内の天井部付近の広告面は直接光により明るく照らすことができ、光源を覆うカバー部分が万一破損しても破片が客室内に落下することを防止できる照明装置を提供する。
【解決手段】ケーシング11は、光源20から出射された光を下方に向けて反射し、該反射した間接光により客室内2を照らす反射面14aを内側に備えるケーシング本体12と、これより下方に一体に垂下し、光源20から出射された光のうち、下方に向かう直接光を遮るための受け部15と、から成り、光源20から出射された光のうち、ケーシング本体12の下端縁と受け部15の上端縁との間から側方に向かう直接光が、天井部3と側壁面部4の境界付近の広告6に到達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物の客室内における天井部に配置され、光源を、該光源から出射される光が主に側方に向かう状態に組み込むケーシングを有する照明装置に関し、特に鉄道車両の客室内における照明に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両や航空機等の客室内に用いる照明装置としては、蛍光管がむき出しの状態で天井部に取り付けられ、特別な配光制御は意図しないものが多かった。このような照明装置は、デザインが蛍光管の形状に制約されるため、装置のデザインの自由度が乏しく、また、蛍光管からの直接光が眩しく、特に客室内の窓上等にある広告を見る場合には、蛍光管の眩しさにより広告が見えにくいという問題があった。
【0003】
そこで最近は、蛍光灯の代わりにLEDランプを光源としたり、直接光ではなく間接光により客室内を照らすように構成された照明装置が主流となっている。例えば、特許文献1には、ケーシング内に表裏両面から発光する薄型照明灯を組み込み、前記ケーシングの開口面を覆う下面カバーに、前記薄型照明灯に対向する直接照明窓と、その外側に位置する間接照明窓とを設け、直接光および間接光を下方の車室内に向けて照射する照明装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ハウジング内に光源が両端に取り付けられた導光棒を収納し、前記ハウジングは、透光性を有する側壁部と、遮光性を有する底壁部とを備え、導光棒から照射された光は、ハウジングの側壁部を透過して車室内に間接光として照射され、導光棒から斜め上方に照射された光は、天井に反射されて車室内に間接光として照射される照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−302162号公報
【特許文献2】特開2009−96388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1,2に開示された従来の技術では、何れも車室内における下方への照射だけを意図しており、例えば鉄道車両の客室内のように、窓上となる天井部の隅に沿って様々な広告が展開されているような場合には、これら広告面のうち特に天井部に沿った面に対しては、直接光も間接光も届かないため、暗くて広告面が見えにくいという問題があった。
【0007】
また、何れの従来の技術でも、ケーシングやハウジングの開口を覆う下面カバーや底壁部がケーシング等から着脱し得る別体から構成されているにも関わらず、乗客が直接触れられる位置に配されており、直接触れることがなくても荷物等がぶつかる可能性は高い。これら別体であるカバー部分に何らかの衝撃が加わり、ケーシング等から予期せず外れたり、あるいは万一破損した場合には、そのまま客室内に落下してしまうため、安全上の問題があった。
【0008】
このような従来の技術が有する問題に鑑みて、本件発明者らは特願2010−266951号により、客室内の天井部の隅に沿って展開された広告面に対しても光を照射することができ、また、光源を覆うカバーが万一溶融したとしても、溶解物が下方に落下する虞のない照明装置を既に提案している。
ところが、このような照明装置でも、広告面に対する光の照射はあくまで間接光によるため、広告面を十分に明るく照射することができない虞があった。
【0009】
本発明は、以上のような従来の技術の有する問題点に着目してなされたものであり、1つの装置で直接光と間接光をそれぞれ目的に応じて分けて照射することにより、客室内は間接光により柔らかく照らすることができ、客室内の天井部付近の広告面は直接光により明るく照らすことができ、しかも、光源を覆うカバー部分が破損しにくく、万一破損しても破片が客室内に落下することを防止できる照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、以下の各項の発明に存する。
[1]乗物(1)の客室内(2)における天井部(3)に配置され、光源(20)を、該光源(20)から出射される光が側方に向かう状態に組み込むケーシング(11,11A〜11C)を有する照明装置(10,10A〜11C)において、
前記ケーシング(11,11A〜11C)は、前記光源(20)から出射された光を下方に向けて反射し、該反射した間接光により客室内(2)を照らす反射面(14a〜14d)を内側に備えるケーシング本体(12,12A〜12C)と、該ケーシング本体(12,12A〜12C)より下方に一体に垂下し、前記光源(20)から出射された光のうち、下方に向かう直接光を遮るための受け部(15,15A〜15C)と、から成り、
前記ケーシング(11,11A〜11C)は、前記光源(20)から出射された光のうち、前記ケーシング本体(12,12A〜12C)の端縁と前記受け部(15,15A〜15C)の端縁との間から側方に向かう直接光が、前記天井部(3)と側壁面部(4)の境界付近に到達する状態に設置されることを特徴とする照明装置(10,10A〜11C)。
【0011】
[2]前記ケーシング(11,11A〜11C)は、前記光源(20)から出射された光のうち、前記ケーシング本体(12,12A〜12C)の端縁と前記受け部(15,15A〜15C)の端縁との間から側方に向かう直接光が、前記天井部(3)と側壁面部(4)の境界に沿って展開された広告(6)の全面を照射する状態に設置されることを特徴とする[1]に記載の照明装置(10,10A〜11C)。
【0012】
[3]前記ケーシング(11,11A〜11C)に対して前記光源(20)を外側から覆う状態に装着される保護カバー(30)を有し、
前記受け部(15,15A〜15C)は、前記保護カバー(30)の全域に対して鉛直方向に重なる位置まで少なくとも延出し、前記保護カバー(30)が破損した際にその破片を受け入れる形状に形成されたことを特徴とする[1]または[2]に記載の照明装置(10,10A〜11C)。
【0013】
[4]前記ケーシング(11,11A)は、長尺に延びており、
前記ケーシング本体(12,12A)の長手方向と並行に延びる両側部(14)は、それぞれ最上端となる中央部(13)から両側下方に向かって広がるように湾曲した円弧形断面に形成され、該円弧形断面の内側が前記反射面(14a,14b)として形成され、
前記受け部(15,15A)は、前記中央部(13)から下方に向かって一体に垂下する錨形断面に形成され、
前記ケーシング本体(12,12A)の両側部(14)の下端縁と、前記受け部(15,15A)における錨形断面の左右の上端縁は、その間より前記光源(20)から出射された光を側方に直接照射する位置関係に配置され、
前記光源(20)は、細幅状に延びる基板(21)上に複数並べて配列させたLED(22)であり、
前記光源(20)を含む前記基板(21)は、前記受け部(15,15A)における錨形断面の左右の内側に沿って、それぞれ上向きの角度で側方を向く状態に組み込まれ、
前記保護カバー(30)は、前記基板(21)と同じく細幅状に延びる板状に形成され、前記中央部(13)と前記受け部(15,15A)における錨形断面の左右の内側との間に沿って、それぞれ前記基板(21)を外側から覆う状態に装着されたことを特徴とする[3]に記載の照明装置(10,10A)。
【0014】
[5]前記ケーシング(11,11A,11B)は、前記天井部(3)の基準面より内側に埋め込まれた状態に設置されることを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載の照明装置(10,10A,10B)。
【0015】
[6]前記ケーシング(11C)は、前記天井部(3)の一部として一体に形成されたことを特徴とする[1],[2],[3]または[4]に記載の照明装置(10C)。
【0016】
次に、前述した解決手段に基づく作用を説明する。
前記[1]に記載の照明装置(10,10A〜11C)によれば、光源(20)は主に側方に光を出射する状態でケーシング(11,11A〜11C)に組み込まれており、光源(20)から出射された光の一部は、ケーシング本体(12,12A〜12C)にある反射面(14a〜14d)によって下方へ反射される。この反射した間接光によって、客室内(2)は照らされる。また、光源(20)から出射された光の一部は、客室側である下方にも向かうが、かかる下方に向かう直接光は、ケーシング本体(12,12A〜12C)より下方に一体に垂下した受け部(15,15A〜15C)によって遮られる。
【0017】
これにより、光源(20)からの直接光が客室内(2)に届くことはなく、前述したように客室内(2)は反射面(14a〜14d)により反射拡散された間接光によって照らされる。従って、客室内(2)における眩しさを低減して柔らかく照らすことができ、また、間接照明としての演出効果も高めることができる。ここで反射面(14a〜14d)の形状を工夫することにより、客室内(2)での目的や用途に応じた様々な配光制御も可能となる。また、受け部(15,15A〜15C)は、ケーシング本体(12,12A〜12C)に一体に設けられるものであり、着脱自在な別部材のように外れる虞はない。
【0018】
ケーシング(11,11A〜11C)は、光源(20)から出射された光のうち、ケーシング本体(12,12A〜12C)の端縁と受け部(15,15A〜15C)の端縁との間から側方に向かう直接光が、客室内(2)の天井部(3)と側壁面部(4)の境界付近に到達する状態に設置される。そのため、従来のように客室内(2)において座席のある領域を照射するだけでなく、特に、客室内(2)の天井部(3)と側壁面部(4)の境界付近、すなわち一般に窓上の広告(6)スペースに対しては、直接光を照射することで明るく目立たせることができる。
【0019】
より具体的には、前記[2]に記載したように、ケーシング(11,11A〜11C)を、光源(20)から出射された光のうち、ケーシング本体(12,12A〜12C)の端縁と受け部(15,15A〜15C)の端縁との間から側方に向かう直接光が、天井部(3)と側壁面部(4)の境界に沿って展開された広告(6)の全面を照射する状態に設置すると良い。ここでの「状態」とは、ケーシング(11,11A〜11C)の取り付け位置や向き、角度ないし傾斜の姿勢等を意味する。
【0020】
これにより、天井部(3)と側壁面部(4)の境界に沿って、例えば、天井面(天井部(3)の基準面)から側壁面部(4)に亘り曲がるように展開された広告(6)の全面、特に天井面に沿った部分にも直接光を照射することができる。また、1つの照明装置(10,10A〜11C)によって広告(6)の全面を照射する配光とすることが可能となり、広告(6)に班、影、線等が生じることなく、乗客からは広告(6)がより見やすくなる。
【0021】
また、前記[3]に記載の照明装置(10,10A〜11C)のように、ケーシング(11,11A〜11C)に、光源(20)を外側から覆う状態に保護カバー(30)を装着しても良い。光源(20)から照射された光は保護カバー(30)を透過することにより、光源(20)の輝度が低減されて過度の強い光の照射を防止することができる。また、光源(20)の故障の原因となり得る他の物体の接触を防ぎ、光源(20)を保護することができる。
【0022】
保護カバー(30)は、前記受け部(15,15A〜15C)のようにケーシング本体(12,12A〜12C)に一体に設けられるものではなく、後付けされる別部材であり、外から衝撃が加わると外れたり破損する虞がある。ここで受け部(15,15A〜15C)は、保護カバー(30)の全域に対して鉛直方向に重なる位置まで少なくとも延出し、保護カバー(30)が破損した際には、その破片を受け入れる形状に形成されている。従って、保護カバー(30)が予期せず外れたり万一破損した場合には、その破片は受け部(15,15A〜15C)によって受け止められて客室内(2)に落下することはない。これにより、十分な安全性を確保することができる。
【0023】
前記[4]に記載の照明装置(10,10A)によれば、前記ケーシング(11,11A)は、長尺に延びており、そのケーシング本体(12,12A)の長手方向と並行に延びる両側部(14)は、それぞれ最上端となる中央部(13)から両側下方に向かって広がるように湾曲した円弧形断面に形成され、該円弧形断面の内側が前記反射面(14a,14b)として形成されている。
【0024】
そして、前記受け部(15,15A)は、ケーシング本体(12,12A)の中央部(13)から下方に向かって一体に垂下する錨形断面に形成されている。ここでケーシング本体(12,12A)の両側部(14)の下端縁と、受け部(15,15A)における錨形断面の左右の上端縁は、その間より前記光源(20)から出射された光を側方に直接照射する位置関係に配置する。前記光源(20)は、細幅状に延びる基板(21)上に複数並べて配列させたLED(22)である。
【0025】
前記光源(20)を含む前記基板(21)は、前記受け部(15,15A)における錨形断面の左右の内側に沿って、それぞれ上向きの角度で側方を向く状態に組み込まれる。また、前記保護カバー(30)は、前記基板(21)と同じく細幅状に延びる板状に形成され、前記中央部(13)と前記受け部(15,15A)における錨形断面の左右の内側との間に沿って、それぞれ前記基板(21)を外側から覆う状態に装着される。これにより、照明装置(10,10A)のユニットが完成する。なお、受け部(15,15A)における錨形断面の内側が、保護カバー(30)の破片等を受け止める空間となる。
【0026】
以上のような各照明装置(10,10A,10B)は、例えば前記[5]に記載したように、乗物(1)の客室内(2)における天井部(3)の基準面より内側にケーシング(11,11A,11B)を埋め込む状態に設置すると良い。これにより、客室内(2)における照明による演出効果を高めることができる。
【0027】
さらに、前記[6]に記載したように、前記ケーシング(11C)を、天井部(3)の一部として一体に形成しても良い。このような場合には、天井部(3)の基準面との接続箇所に継ぎ目が生じることもなく、外観を美しく仕上げることができる。しかも、反射面(14d)を広く取れるので、よりいっそう効率が良い客室内(2)における間接照明を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る照明装置によれば、1つの装置から直接光と間接光をそれぞれ目的に応じて分けて照射することを可能とし、客室内は間接光により柔らかく照らして眩しさを抑制することができ、客室内の天井部付近の広告面は直接光により明るく目立たせることができ、しかも、光源を覆うカバー部分が破損しにくいと共に、万一破損しても破片が客室内に落下することを防止することにより、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る照明装置の一端部を拡大して示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施の形態に係る照明装置の全体を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施の形態に係る照明装置を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第1実施の形態に係る照明装置の直接光および間接光の照射範囲を模式的に示す縦断面図である。
【図5】本発明の第1実施の形態に係る照明装置を鉄道車両の客室内の天井部に取り付けた状態を概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施の形態に係る照明装置を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第3実施の形態に係る照明装置を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第4実施の形態に係る照明装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき、本発明を代表する各種実施の形態を説明する。
図1〜図5は、本発明の第1実施の形態を示している。
図1に示すように、照明装置10は、光源20を、出射する光が主に側方に向かう状態に組み込むケーシング11と、前記光源20を外側から覆う状態で前記ケーシング11に装着する保護カバー30とから成る。かかる照明装置10は、乗物の客室内2における天井部3に配置されるものであるが、以下、鉄道車両1に適用した例について説明する。
【0031】
図5に示すように、照明装置10は、鉄道車両1の客室内2の天井部3に設置されるものであり、天井部3に沿って前後方向に延びるように設置される。照明装置10は、長手方向に延びる複数のユニットが一列となるように順次繋がれている。ユニットの主要部を成すケーシング11は、その開口側を下方に向けた状態で天井部3に設置されている。天井部3には、前後方向に延びる中心線を対称軸として、左右対称に並ぶ一対の凹溝3a,3aが形成されており、それぞれの凹溝3aにケーシング11は埋設されている。
【0032】
図1〜図3に示すように、ケーシング11は全体的には長尺に延びた形状であり、ケーシング本体12と、該ケーシング本体12より下方に一体に垂下する受け部15と、から成る。ケーシング11は、アルミニウム等の金属や不燃性の樹脂等により容易に押出し成形することができる形状となっている。ケーシング本体12は、後述する光源20から側方に出射された光を下方に向けて反射し、該反射した間接光により客室内2を照らす反射面14aを内側に備えている。
【0033】
詳しく言えばケーシング本体12は、その長手方向と並行に延びる両側部14が、それぞれ最上端となる中央部13から両側下方に向かって広がるように湾曲した円弧形断面に形成され、該円弧形断面の内側が反射面14aとして形成されている。このように、ケーシング本体12は、その断面形状において左右一対となる反射面14aを内側に備えている。各反射面14aは、光反射効率が高くなる表面処理が施されている。具体的には例えば、白色塗料を塗布したり、あるいは鏡面加工しても良い。
【0034】
図4に示すように、後述する光源20から左右2方向へ出射された光は、それぞれ光源20が対向する側にある反射面14aにより反射されて下方の客室内2に向かうように設定されている。ただし、各反射面14aにより反射された間接光の一部は、次述する受け部15によって光源20からの直接光と共に下方への照射が遮られる。なお、各反射面14aにより反射された間接光は、受け部15の下方の位置で交差する(図4参照)。
【0035】
図1〜図3に示すように、受け部15は、光源20から出射された光のうち、下方に向かう直接光や、前述した各反射面14aにより反射された間接光の一部を遮る部位であり、ケーシング本体12と一体的に成形されている。詳しく言えば受け部15は、ケーシング本体12の中央部13の中心から下方に向かって一体に垂下する錨形断面に形成されている。かかる受け部15は、中央部13の中央より垂下する支持脚15aと、該支持脚15aの下端より両側上方に向かって湾曲した円弧形断面の底壁15bと、から成る。
【0036】
ケーシング本体12の両側部14の下端縁と、受け部15の底壁15bの上端縁とは、その間より光源20から出射された光を側方に直接照射する位置関係に配置されている(図4参照)。ケーシング本体12の中央部13と受け部15の底壁15bとの間は、光源20の収納空間となっており、支持脚15aで区画された両側に、それぞれ光源20が組み込まれている。光源20の種類は特に限定されないが、LEDであることが好ましい。LEDは小型であること、低消費電力であること、長寿命であることという利点を有する。
【0037】
本実施の形態における光源20は、細幅状に延びる基板21上に表面実装型のLEDチップ22を等間隔に複数配列させて固定したものである。ここでLEDチップ22は、一般的であるので詳細な説明は省略するが、基板21に対して直交する光軸を中心に所定角度の放射範囲で光を出射するタイプが用いられる。LEDチップ22の発光色は任意に選択できる。基板21はその一面が実装面であり、該実装面上にLEDチップ22が電気的に接続される配線回路が形成されている。なお、基板21の実装面上には、LEDチップ22を覆うように蛍光体層を積層させても良い。
【0038】
図3に示すように、光源20の基板21は、ケーシング11の前記収納空間を仕切る底壁15bの両側に沿って、それぞれ上向きの角度で側方を向く状態に組み込まれている。詳しく言えば、ケーシング本体12の中央部13より垂下する支持脚15aの両脇と、底壁15bの左右の中程に、互いに対向する一対のレール溝16,16が設けられており、各レール溝16の間に、基板21の両側端縁がそれぞれ摺動可能に嵌合する状態で取り付けられている。
【0039】
光源20を外側から覆う保護カバー30は、前記基板21と同じく細幅状に延びる同形状の平板状に形成されている。保護カバー30の材質は、アクリル樹脂やPC樹脂等の光透過性材料であれば特に限定されないが、加工の容易性等の理由からガラスではなく合成樹脂であることが好ましい。なお、保護カバー30は無色透明の他、有色透明であっても良く、また、保護カバー30に光拡散剤を含有させて、保護カバー30内で積極的に光を拡散させても良い。
【0040】
図3に示すように、保護カバー30は、前記中央部13と前記受け部15の底壁15bの内側との間に沿って、それぞれ光源20の基板21を外側から覆う状態に装着されている。詳しく言えば、ケーシング本体12の中央部13の両端下方と、受け部15の底壁15bの左右上端縁には、互いに対向する一対のレール溝17,17が設けられており、各レール溝17の間に、保護カバー30の両側端縁がそれぞれ摺動可能に嵌合する状態で取り付けられている。ここで保護カバー30は、水平面に対して垂直となる状態に配され、受け部15の底壁15bの左右上端縁よりやや内側に位置している。
【0041】
このように、受け部15、特にその底壁15bは、保護カバー30の全域に対して鉛直方向に重なる位置まで少なくとも延出しており、保護カバー30が万一破損した際に、その破片(溶融物も含む)を受け入れる形状に形成されている。ここで保護カバー30は、水平面に対する垂直面をなすことから、下方から乗客の荷物等が直接的には当たりにくい構造となっており、また、万一何らかの衝撃が加わり破損した場合には、その破片は内側に向かうことになり、底壁15b上に受け止められるようになっている。
【0042】
以上のような照明装置10のケーシング11は、光源20から出射された光のうち、ケーシング本体12の両側部14の下端縁と、受け部15の底壁15bの上端縁との間から側方に向かう直接光が、客室内2の天井部3と側壁面部4の境界付近に到達する状態に設置される。詳しく言えば、天井部3と側壁面部4の境界に沿って広告6が展開されており、ケーシング11の隙間より側方に出射された直接光は、前記広告6の全面(特に天井面に沿った面)に到達する状態に設置される。
【0043】
次に、第1実施の形態に係る照明装置10の作用について説明する。
図5に示すように、本照明装置10は、鉄道車両1の客室内2の天井部3に、ケーシング11をその開口側を下方に向けて凹溝3a内に埋め込む状態に設置する。照明装置10は、ケーシング本体12の中央部13の上端面において、取付金具やネジ等の固定手段を介して凹溝3aに取り付けられる。ここで、照明装置10のユニットを成すケーシング11を複数繋げることにより、所望の長さまで適宜延ばすことができる。
【0044】
本実施の形態では、ケーシング本体12の両側部14の下端縁が天井部3の基準面と同じ高さ位置となるため、照明装置10と天井部3の一体感が高まる。また、天井部3の中心線を対称軸として、左右対称に並ぶように一対の照明装置10を設置するから、客室内2を左右両側からバランス良く広範囲に照らすことができる。なお、左右の照明装置10は、それぞれ個別に点灯制御できるようにしても良い。
【0045】
しかも、本照明装置10では、光源20にLEDチップ22を用いたことにより、所望の明るさを低い電力消費で得られるばかりでなく、蛍光灯等に比べて装置全体を小型化することができ、乗客に対しての圧迫感が少なく、客室内2に合わせて形状も自由にデザインすることが可能となる。また、ユニットの主要部を成すケーシング11は、アルミニウム等の金属により容易に押出し成形することができる形状であり、製造コストも低減することができる。
【0046】
図4に示すように、光源20は主に側方に光を出射する状態でケーシング11に組み込まれており、光源20から出射された光のうち水平面より上向きの光は、ケーシング本体12の両側部14の内側にある反射面14aによって下方へ反射される(図4中の濃い墨色部分)。この反射した間接光によって客室内2は照らされる。また、光源20から出射された光のうち水平面より下向きの光の一部は、ケーシング本体12より下方に一体に垂下した受け部15によって遮られる。
【0047】
これにより、光源20からの直接光が客室内2(のうち座席5のある領域)に届くことはなく、前述したように客室内2は反射面14aにより反射拡散された間接光によって照らされる。従って、客室内2における眩しさを低減して全体的に柔らかく照らすことができ、落ち着いた雰囲気が醸し出され、間接照明としての演出効果を高めることができる。ここで反射面14aの形状を工夫することにより、客室内2での目的や用途に応じた様々な配光制御も可能となる。具体的な配光制御としては、客室内2を均一に照射したり、通路や座席5等の特定部位を明るくしたりすること等が考えられる。
【0048】
また、照明装置10のうち側壁面部4を向く側にある光源20から側方に出射された光は、ケーシング本体12の片側の側部14の下端縁と、受け部15の底壁15bの上端縁との間を通り、そのまま直接光として、客室内2の天井部3と側壁面部4の境界付近まで到達する。そのため、照明装置10は、従来のように客室内2において座席5のある領域を照射するだけでなく、特に、客室内2の天井部3と側壁面部4の境界付近、すなわち一般に窓上の広告スペースに対しては直接光を照射することができる。
【0049】
これにより、図5に示すように、天井部3と側壁面部4の境界に沿って、例えば、天井部3の基準面から側壁面部4に亘り曲がるように展開された広告6の全面、特に天井面に沿った部分も、直接光で明るく照らして目立たせることができる。また、1つの照明装置10によって広告6の全面を照射する配光とすることが可能となり、広告6に班、影、線等が生じることなく、乗客からは広告6がより見やすくなる。
【0050】
さらに、照明装置10のうち車両中央を向く側にある光源20から側方に出射された光も、反対側の側部14の下端縁と、受け部15の底壁15bの上端縁との間を通り、そのまま直接光として、客室内2の天井部3付近に沿うように車両中央側まで到達する。そのため、照明装置10は、窓上の広告スペースに対してだけでなく、天井部3の中心線に沿って中吊り広告が設置されている場合には、この中吊り広告も前記窓上の広告6と同様に、直接光で明るく照らして目立たせることができる。
【0051】
また、ケーシング11には、光源20を外側から覆う保護カバー30を装着している。よって、光源20から照射された光は保護カバー30を透過することにより、光源20の輝度が低減されて過度の強い光の照射を防止することができる。また、光源20の故障の原因となり得る他の物体の接触を防ぎ、光源20を保護することができる。ここで保護カバー30は、水平面に対して垂直となる状態に取り付けられており、下からの物が触れることはあり得るが、保護カバー30に対して衝撃が垂直方向から強く加わる可能性は低い。また、保護カバー30の垂直面には埃がたまることもない。
【0052】
保護カバー30は合成樹脂で形成すれば、仮に乗客の荷物等が当たっても蛍光管のように容易に破損することはないが、保護カバー30が予期せず外れたり万一破損した場合には、その破片は受け部15によって受け止められて客室内2に落下することはない。受け部15は、ケーシング本体12に一体成形されており、着脱自在な別部材のように外れる虞はない。かかる受け部15は、保護カバー30の全域に対して鉛直方向に重なる位置まで少なくとも延出し、保護カバー30が万一破損した際には、その破片を受け入れる形状に形成されている。このような受け部15により、十分な安全性を確保することができる。
【0053】
図6は、本発明の第2実施の形態を示している。
本実施の形態に係る照明装置10Aは、前述した第1実施の形態に係る照明装置10と基本的な構成は共通するが、ケーシング11Aのケーシング本体12Aにある反射面14bの断面形状が異なっている。なお、第1実施の形態と同種の部位には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
本実施の形態では、ケーシング本体12Aの両側部14,14の内側にある反射面14bが、両側方向に並ぶ複数の円弧状断面の曲面が連なるように形成されている。このような構成の反射面14bによれば、限られた両側部14,14の内側スペースにおいて、より広い間接光の照射範囲を得ることができる。
【0055】
図7は、本発明の第3実施の形態を示している。
本実施の形態に係る照明装置10Bは、前述した第1,第2実施の形態に係る照明装置10,10Aが左右対称の断面形状であるのに対して、左右非対称の断面形状に構成されている。本実施の形態では、側部14が片側にのみ延びる形状であり、側部14のない反対側は、光源20より直接光をそのまま側方に向けて照射するように構成されている。なお、第1実施の形態と同種の部位には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0056】
本実施の形態では、側部14のない側にある光源20から出射された光は、ケーシング本体12Bの端縁と受け部15Bの端縁との間から、そのまま直接光として前述した客室内2の天井部3と側壁面部4の境界付近まで到達する。一方、側部14のある側にある光源20から出射された光は、側方よりも上方に向かって側部14の内側にある反射面14cによって下方へ反射され、間接光として客室内2を照らすことになる。なお、本実施の形態における反射面14cも、両側方向に並ぶ複数の円弧状断面の曲面が連なるように形成されている。
【0057】
図8は、本発明の第4実施の形態を示している。
本実施の形態に係る照明装置10Cは、前述した第1実施の形態に係る照明装置10と基本的な構成は共通するが、ケーシング11Cは、前記天井部3の一部として一体に形成されている。なお、第1実施の形態と同種の部位には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
本実施の形態によれば、天井部3の成形時にケーシング11Cも同時に成形することが可能であり製造コストを低減することができる。また、天井部3の基準面とケーシング11Cとの間に継ぎ目が生じることもなく、外観を美しく仕上げることができる。しかも、天井部3の一部をそのまま利用した反射面14dは広い面積を確保することができ、よりいっそう効率が良い客室内2における間接照明を実現することができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述したような実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、鉄道車両1の客室内2の天井部3に設置する例を説明したが、航空機や自動車等の他の乗物における客室内の間接照明に適用しても良い。また、ケーシング11,11A〜11Cの具体的な形状も図示した例に限定されることはない。
【0060】
また、前記第1〜第3の実施の形態においては、天井部3に凹溝3aを設けて、この凹溝3aにケーシング11,11A,11Bを埋め込むように取り付けたが、天井部3に凹溝3aを設けることなく、天井部3の基準面上にケーシング11,11A,11Bをそのまま出っ張る状態で取り付けても良い。また、前記各種実施の形態では、光源20としてLEDチップ22を使用した例を説明したが、他に例えば、小型電球等を使用しても良い。さらに、保護カバー30は、必ずしも設ける必要はなく省略してもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る照明装置は、鉄道車両や航空機、自動車等の客室内の間接照明等に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…鉄道車両
2…客室内
3…天井部
3a…凹溝
4…側壁面部
5…座席
6…広告
10,10A,10B,10C…照明装置
11,11A,11B,11C…ケーシング
12,12A,12B,12C…ケーシング本体
13…中央部
14…側部
14a,14b,14c,14d…反射面
15,15A,15B,15C…受け部
15a…支持脚
15b…底壁
16…レール溝
17…レール溝
20…光源
21…基板
22…LEDチップ
30…保護カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物の客室内における天井部に配置され、光源を、該光源から出射される光が側方に向かう状態に組み込むケーシングを有する照明装置において、
前記ケーシングは、前記光源から出射された光を下方に向けて反射し、該反射した間接光により客室内を照らす反射面を内側に備えるケーシング本体と、該ケーシング本体より下方に一体に垂下し、前記光源から出射された光のうち、下方に向かう直接光を遮るための受け部と、から成り、
前記ケーシングは、前記光源から出射された光のうち、前記ケーシング本体の端縁と前記受け部の端縁との間から側方に向かう直接光が、前記天井部と側壁面部の境界付近に到達する状態に設置されることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記ケーシングは、前記光源から出射された光のうち、前記ケーシング本体の端縁と前記受け部の端縁との間から側方に向かう直接光が、前記天井部と側壁面部の境界に沿って展開された広告の全面を照射する状態に設置されることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記ケーシングに対して前記光源を外側から覆う状態に装着される保護カバーを有し、
前記受け部は、前記保護カバーの全域に対して鉛直方向に重なる位置まで少なくとも延出し、前記保護カバーが破損した際にその破片を受け入れる形状に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記ケーシングは、長尺に延びており、
前記ケーシング本体の長手方向と並行に延びる両側部は、それぞれ最上端となる中央部から両側下方に向かって広がるように湾曲した円弧形断面に形成され、該円弧形断面の内側が前記反射面として形成され、
前記受け部は、前記中央部から下方に向かって一体に垂下する錨形断面に形成され、
前記ケーシング本体の両側部の下端縁と、前記受け部における錨形断面の左右の上端縁は、その間より前記光源から出射された光を側方に直接照射する位置関係に配置され、
前記光源は、細幅状に延びる基板上に複数並べて配列させたLEDであり、
前記光源を含む前記基板は、前記受け部における錨形断面の左右の内側に沿って、それぞれ上向きの角度で側方を向く状態に組み込まれ、
前記保護カバーは、前記基板と同じく細幅状に延びる板状に形成され、前記中央部と前記受け部における錨形断面の左右の内側との間に沿って、それぞれ前記基板を外側から覆う状態に装着されたことを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記ケーシングは、前記天井部の基準面より内側に埋め込まれた状態に設置されることを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記天井部の一部として一体に形成されたことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−91472(P2013−91472A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236241(P2011−236241)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(390010054)コイト電工株式会社 (136)
【Fターム(参考)】