説明

熱に敏感な材料の気化

粒子状材料を受け取って気化させるための気化装置であって、粒子状材料の受け入れに適した空隙を規定するリガンドからなる網状材料構造を持ち、その空隙が網状材料構造の体積の85%超を占めることで、粒子状材料をその空隙に供給するのが容易になるとともに、気化した材料がその空隙から広がるのが容易になっている構成のヒーター(30)と;リガンドによって熱を発生させるか伝えることで、空隙の中にある粒子状材料を気化させてその空隙の中を移動させる熱発生手段とを備える気化装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給源の材料が気化して蒸気柱が発生する温度にその材料を加熱し、基板の表面に薄膜を形成するという物理的蒸着の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
OLEDデバイスは、基板と、アノードと、有機化合物からなる正孔輸送層と、適切なドーパントを含む有機発光層と、有機電子輸送層と、カソードを備えている。OLEDデバイスが魅力的なのは、駆動電圧が低く、高輝度で、視野角が広く、フル-カラーのフラット発光ディスプレイが可能だからである。Tangらは、この多層OLEDデバイスを、譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第4,885,211号に記載している。
【0003】
真空環境における物理的蒸着は、小分子OLEDデバイスで利用されているように、有機薄膜材料を堆積させる主要な方法である。このような方法は周知であり、例えば、Barrのアメリカ合衆国特許第2,447,789号や、Tanabeらのヨーロッパ特許第0 982 411号に記載されている。OLEDデバイスの製造に用いられる有機材料は、速度に依存した望ましい気化温度またはそれに近い温度に長時間にわたって維持したとき、分解することがしばしばある。敏感な有機材料をより高温にすると、分子の構造が変化し、それに伴って材料の性質が変化する可能性がある。
【0004】
このような材料が熱に敏感であるという問題を解決するには、ほんの少量の有機材料を供給源に装填し、加熱をできるだけ少なくする。このようにすると、材料は、顕著な分解を引き起こす閾値温度に到達する前に消費される。この方法の限界は、ヒーターの温度に制約があるために利用できる気化速度が非常に小さいことと、供給源に存在する材料が少量であるためにその供給源の稼働時間が非常に短いことである。堆積速度が小さいこと、そして供給源に材料を頻繁に再充填せねばならないことは、OLED製造設備のスループットにとって大きな制約となる。
【0005】
装填した有機材料の全体をほぼ同じ温度に加熱することの二次的な帰結は、追加するドーパントなどの有機材料を、そのドーパントが気化するときの挙動および蒸気圧が、ホスト材料が気化するときの挙動および蒸気圧と非常に近い場合を除き、ホスト材料に混合できないことである。ドーパントがそのようなものであることは一般にはないため、従来の装置では、ホスト材料とドーパント材料を同時に堆積させるのに別々の供給源を用いる必要がある。これら複数の供給源を角度をつけて配置し、それぞれの供給源から蒸発した材料をOLED基板上の共通の一点に収束させる必要がある。互いに離した複数の供給源をこのように利用すると、同時に堆積できる材料の数が明らかに制限されるとともに、ホストとドーパントからなる膜が明らかに一様でなくなる。
【0006】
OLEDデバイスで使用される有機材料は、気化速度と供給源の温度の関係が比例状態から大きくはずれている。供給源の温度がわずかに変化すると気化速度が非常に大きく変化する。それにもかかわらず、多くの装置では、供給源の温度を、気化速度を制御するための唯一の手段として利用している。温度をうまく制御するため、従来の蒸着源では、よく断熱された熱伝導率の大きな材料で構成されていて固体部の体積が有機装填物の体積よりもはるかに大きい加熱構造が一般に利用されている。大きな熱伝導率によって構造全体の温度がうまく一様になり、大きな熱質量が、温度のゆらぎを小さくして温度を極めて小さな範囲内に維持することを助ける。このような方法により、定常状態での気化速度の安定性に関しては望ましい効果がもたらされたが、作動開始時に好ましくないことが起こる。このような装置は、作動させるとき何時間にもわたって動作させた後に、定常状態の熱平衡になって安定な気化速度が実現されるのが一般的である。
【0007】
このような供給源のさらに別の制約は、装填する有機材料が消費されるにつれて蒸気用マニホールドの形状が変化することである。この変化があるため、気化速度を一定に維持するにはヒーターの温度を変化させねばならない。穴から出てくる蒸気柱の全体的な形状は、特に、材料で満杯の供給源の内部における蒸気流に対するコンダクタンスが十分に小さいため供給源内で一様でない気化からの圧力勾配が維持されるとき、供給源の内部における有機材料の厚さと分布の関数として変化する可能性のあることが観察されている。この場合、装填材料が消費されるにつれてコンダクタンスが大きくなり、圧力分布が改善され、したがって気柱の全体的な形状が改善される。
【0008】
有機材料の中には熱に極めて敏感で蒸気圧が比較的低いものがある。そうした材料を気化させるとき、必要に応じて材料が冷たい貯蔵場所から加熱領域に計量供給される場所でさえ、困難に遭遇する。従来の装置の粉末供給路により、すぐに気化する材料から熱を逃がし、そのことによって熱に敏感で蒸気圧が低い材料の気化を工業的に実用的な程度に防ぐことができる。従来の装置における粉末供給路に沿った熱伝導は、極めて熱に敏感ないくつかの材料が分解する1つの原因でもあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の1つの目的は、分解を引き起こす可能性のある温度に曝露されることを制限しつつ有機材料を気化させる装置と方法を提供することである。本発明のさらに別の目的は、1つの蒸発源だけで2種類以上の有機材料成分の堆積が可能になるようにすることである。本発明のさらに別の目的は、安定な気化速度を迅速に実現することである。本発明のさらに別の目的は、有機材料を大量に装填した状態、そしてヒーターの温度を安定にした状態で安定な気化速度を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、粒子状材料を受け取って気化させるための気化装置であって、
(a)粒子状材料の受け入れに適した空隙を規定するリガンドからなる網状材料構造を持ち、その空隙が網状材料構造の体積の85%超を占めることで、粒子状材料をその空隙に供給するのが容易になるとともに、気化した材料がその空隙から広がるのが容易になっている構成のヒーターと;
(b)上記リガンドによって熱を発生させるか伝えることで、上記空隙の中にある粒子状材料を気化させてその空隙の中を移動させる熱発生手段とを備える気化装置によって達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の1つの利点は、本発明の装置では有機材料のほんの一部だけが、制御された速度で短時間加熱されることである。粒子は非常に素早く気化するため、熱をより冷たい面に伝えたり散逸させたりすることができない。その結果、気化可能な材料は、気化するまで純度と構造を維持する。バルクの有機材料は、望む気化温度よりもはるかに低い温度に維持される。
【0012】
本発明のさらに別の利点は、所定の堆積速度において加熱装置を従来のいくつかの気化装置よりも低い温度に維持できるため、気化する材料が分解する確率が小さくなることである。
【0013】
本発明のさらに別の利点は、有機材料を連続的に補充しつつ、そしてヒーターの温度を安定に保ったまま、安定な気化速度を維持できることである。したがってこの装置により、温度に非常に敏感な有機材料でさえ分解するリスクが実質的に低下した状態で供給源をより長時間作動させることができる。
【0014】
本発明のさらに別の利点は、異なる気化速度と分解温度閾値を有する複数の材料を同一の供給源の中で同時に昇華させられることである。
【0015】
本発明のさらに別の利点は、有機材料の粉末の体積を計量供給する速度を制御することで直線的な気化速度にできることである。
【0016】
本発明のさらに別の利点は、有機材料の計量供給速度を制御することで、気化を迅速に停止・再開させて安定な気化速度を素早く実現できるため、蒸着チェンバーの壁面の汚染が減り、基板のコーティングを行なっていないときに有機材料が節約される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】本発明による気化システムの一実施態様の断面図である。
【図1b】本発明による気化装置の別の一実施態様を示している。
【図2a】本発明による気化装置の別の一実施態様の断面図である。
【図2b】加熱用の電流輸送要素を備える図2aの気化装置の別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで図1を参照すると、本発明による装置の一実施態様の断面図が示されている。気化システム10は、ヒーター30を有するマニホールド20を備えている。ヒーター30は、支持体40によって所定の位置に保持することができる。ヒーター30は、粒子状材料80を受け入れて気化させる。ヒーター30はリガンドからなる網状材料構造を持ち、そのリガンドが、材料内に空隙を規定している。空隙は網状材料の体積の85%超を占めているため、粒子状材料を空隙に供給するのが容易になるとともに、気化した材料が空隙から周囲の環境に広がるのが容易になっている。ヒーター30用の有用な1つの網目状材料は、網目状ガラス状炭素である。網目状ガラス状炭素は、粒子状材料を受け入れることのできる空隙を規定するガラス様炭素リガンドからなる開放孔発泡材料である。網目状ガラス状炭素は、空隙の体積を97%という大きな値にすることができる。このような材料は、例えばStillerらによるアメリカ合衆国特許第5,888,469号とStankiewiczによるアメリカ合衆国特許第6,103,149号に記載されていて、いくつかの企業(例えばERGマテリアルズ・アンド・アエロスペース社(オークランド、カリフォルニア州)、アルトラメット社(パコイマ、カリフォルニア州))から市販されている。このような材料は、被覆されていない状態で、またはリガンド上に同形の耐熱性金属またはセラミックの被覆を有する状態で入手できる。被覆は、ガラス状炭素リガンドの熱伝導率を改善するのに役立つ。有用な耐熱性金属のいくつかの例として、タングステン、レニウム、タンタル、ニオブ、モリブデンなどがある。有用なセラミック被覆のいくつかの例は、炭化ケイ素、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化ジルコニウムである。セラミック被覆の場合には、電流を用いてヒーター30を加熱するこの明細書に記載したいくつかの実施態様において、導電性セラミックが有用である可能性がある。したがってこの点に関して金属炭化物が有用である。炭化ケイ素は導電性がよくないが、ガラス状炭素構造の表面を覆う炭化ケイ素は、熱伝導率と導電率の両方が優れた加熱構造を形成する。
【0019】
容器70が粒子状材料80を保持していて、その材料の供給源として機能することができる。粒子状材料80は、供給装置60によって容器70からヒーター30に供給できるため、粒子状材料80はヒーター30の空隙の中に配置される。本発明で利用できる供給装置のいくつかの例が、譲受人に譲渡されたLongらによるアメリカ合衆国特許出願公開第2006/0062918号に記載されている。粒子状材料80は供給装置60の端部まで供給されてヒーター30に受け入れられる。したがって粒子状材料80の供給速度を制御することにより、安定な気化速度を実現できる。供給を停止・開始することで、気化を素早く停止・再開させることができる。ヒーター30は、粒子状材料80に気化に必要な温度に加熱される。粒子状材料は、加熱されるリガンドに囲まれた環境中にあるため、素早く気化させることができる。したがって他の気化法と比べて迅速かつ完全な気化に必要な温度がより低くなる。材料の気化が早いため、同じ方法で複数の材料の混合物を単一の材料と同じように効率的に気化させることができる。加熱は、従来技術で知られているさまざまな方法によって実現できる。加熱は、例えばヒーター30のリガンドで熱を発生させ、または外部で熱を発生させ、次いでその熱をヒーター30のリガンドを通じて伝えることによって実現できる。網状材料構造が導電性である場合には、電流がリガンド(例えば支持体40に電気的接点を含めることができる)を通って流れることができるため、その電流によって熱が発生する。図1aの構成では、望ましい導電率は、熱伝導率を大きくする被覆(例えば上記の炭化ケイ素)を有する網状炭素マトリックスによって与えることができる。あるいは別の一実施態様では、熱は、ヒーター30と接触する独立した加熱要素(図示せず)(例えばタングステン線)によって発生させることができる。別の一実施態様では、ヒーター30を熱伝達支持体35(例えば図1bに示してある、ヒーター30の底部に取り付けた金属板)で支えることができる。熱は、例えば独立した加熱要素から熱伝達支持体35に伝えることができるため、その支持体は、ヒーター30のリガンドを通じた熱伝導によってそのヒーターを素早く加熱することができる。この明細書では、ヒーター30を加熱源と合わせて気化装置(例えば気化装置25)と呼ぶ。粒子状材料80は、網状材料構造の空隙の中に入ると、そのまわりを取り囲んでいる網状材料構造の熱によって気化する。粒子状材料80として、昇華するもの、すなわち固体状態から直接蒸気の状態に変化するもの、または気化する前に液体状態を経るものが可能である。網状構造により、気化した粒子状材料80がその網状構造の空隙から容易に広がっていく。
【0020】
ヒーター30の中で効率的に気化させるには、粒子状材料80が200μm以下の有効直径を持つことが望ましい。粒子状材料80を空隙に容易に供給できるようにするため、網状材料構造の空隙は、粒子状材料の有効直径以上の有効直径を持つ必要がある。空隙の有効直径は、粒子状材料80の有効直径の2倍超であることが望ましく、3.5倍超であることが有用である。このようにすると、粒子状材料80の気化に十分な温度と組み合わせることで、網状材料構造の中に滞在する粒子状材料80の平均滞在時間を2秒未満にすることができる。
【0021】
ヒーター30は、水平になっていてもよいし、角度をつけて配置されていてもよい。角度をつけてヒーター30を配置することにはいくつかの利点がある。例えば空隙の中に粒子状材料80を容易に供給することや、気化した材料を空隙から容易に広がらせることができる。第1に、ヒーター30の上に落下する粒子状材料80が一点にかたまることがより少なくなるため、粒子状材料80がヒーター30の空隙に供給される可能性が大きくなる。第2に、重力で落下する粒子状材料80はヒーター30内でより長い経路をたどるため、気化する前にヒーター30から出ていく確率が小さくなる。ヒーター30の角度は水平に対して30°〜70°であると有用である。ヒーター30の典型的な厚さは0.5〜5cmである。粒子状材料80をヒーターの空隙にさらに容易に供給するため、ヒーター30を振動させることができる。網状炭素構造は非常に堅固であり、振動を伝える際の損失が非常に少ない。そのためほとんど感知できないレベルの振動が、粉末をヒーターの空隙に侵入させるのに非常に有効である。
【0022】
空隙のサイズと粒子の有効直径の比、ヒーター30の角度と厚さ、ヒーター30の振動の有無、ヒーター30の温度のすべてが、所定の粒子状材料80の気化速度に影響を与えることができる。したがって、粒子状材料80を最適に気化させるためのヒーター30の正確な特性と方向は、粒子状材料の特性に依存する。
【0023】
粒子状材料80が高温になっている時間をさらに短くするには、粒子状材料80をヒーター30に到達する前に冷却することが有用である可能性がある。例えば基部50は、外部冷却装置(図示せず)を有する金属構造にすることができる。粒子状材料80は、供給装置60を通じてその基部を通過するときに冷却されるため、ヒーター30からマニホールド20の壁部と供給装置60の端部に熱が伝わる効果が小さくなり、大量の粒子状材料80が、気化温度よりもはるかに低い温度に維持される。
【0024】
マニホールド20は、ヒーター30によって発生した気化材料を容易に受け入れられる配置にされている。ヒーター30によって発生した熱、またはヒーター30によって伝えられた熱によって空隙内の粒子状材料80が気化し、気化した材料がヒーター30の網状材料構造によって空隙を通って移動し、マニホールド20に供給される。その後、気化した材料は開口部90を通過し、望む基板上の材料を被覆することができる。マニホールド20が図1aの位置にあることで、鉛直な方向を向いた基板を被覆することができる。開口部90の位置と、被覆される基板の位置および向きには、さまざまなバリエーションが可能であることが理解されよう。
【0025】
ここで図2aと図2bを参照すると、粒子状材料を受け入れて気化させるための本発明による気化装置の別の一実施態様が示されている。図2aは、気化装置の一部であるヒーターの断面図である。このヒーターは、上に説明した網状材料構造を有する。この実施態様では、ヒーター110は、図示した向きで動作するように設計されている。粒子状材料80は、経路の一部が傾斜している粒子経路120を通って落下する。したがって粒子状材料80は、上に説明したようにして粒子経路120の下部にあるヒーター110の空隙に供給され、その場所で、リガンドによって発生した熱、またはリガンドによって伝えられた熱で気化することができる。
【0026】
図2bは、切断線130で切断して図2aに対して垂直な方向から見た図であり、ヒーター110を備える気化装置100の断面図を示している。ヒーター110は、導電性プレート150aと150bに挟まれている。導電性プレート150aと150bは、ヒーター110のリガンドに電流を流す電極として機能することのできる導電性金属であり、その電流によって熱が発生する。導電性プレート150aと150bにはさまざまな金属を使用できる。チタンは化学的に比較的不活性であってしかも高温で強度を保持できるため、通常はチタンを使用できる。可塑性材料140aと140bは、ヒーター110および導電性プレート150aと150bの表面の凹凸に適合させることのできる導電性かつ伝熱性の材料であるため、ヒーター110と導電性プレート150a、150bの間の電気的接触がよりよくなる。有用な可塑性材料の一例は、GRAFOIL(登録商標)である。UCAカーボン・カンパニー社(ウィルミントン。デラウェア州)が、優れた引っ張り強度を示すとともに炭素元素が一般に97重量%を超えるロール状のシート製品としてのGRAFOIL(登録商標)可撓性グラファイトを製造している。
【0027】
熱シンク160も含まれている。熱シンク160によって網状ヒーターの温度を急速に変化させることができるため、粉末の計量供給速度による制御を超えて堆積速度を細かく時間制御することが可能になる。導電性プレート150bは熱抵抗器として機能するため、リガンドで電気抵抗によって発生した熱と熱シンク160に向かって流れる熱の間のバランスによって網状ヒーターの温度を制御することができる。実際には、熱シンク160は、気化システム10のより広い構造(例えば水冷される基部)に接触するように形成することができる。
【0028】
この実施態様の1つの利点は、電気的接点同士の距離が図1におけるよりも短いことである。このようにすると、被覆されていない網状ガラス状炭素を導電性網状材料構造として使用することが可能になる。なぜならその熱伝導率は、この距離で熱を熱シンク160に伝えるのに適しているからである。被覆されていない網状ガラス状炭素は製造が簡単であり、はるかに安価である。ヒーター110は、厚くなりすぎてはならず(そうなると、ヒーター110を素早く冷やす能力が損なわれるだろうからである)、小さくなりすぎてもいけない(そうなると、気化した材料がヒーター110の空隙を通って伝わり、導電性プレート150aと150bの間でヒーター110の縁部の壁から逃げ出すはずである)。ヒーター110は、Z軸方向が0.5cm〜5cmである。この構成の別の利点は、たとえ粒子がヒーター110の空隙に入らなくても、加熱されたチェンバーの中(粒子経路120の内部)に留まるために気化することである。この実施態様のさらに別の利点は、ヒーター110が厚くないため、導電性プレート150aと150bの間を流れる電流を調節することによってヒーターの温度を素早く変えられることである。この温度調節は、気化速度の第2の制御手段になりうる。
【符号の説明】
【0029】
10 気化システム
20 マニホールド
25 気化装置
30 ヒーター
35 熱伝達支持体
40 支持体
50 基部
60 供給装置
70 容器
80 粒子状材料
90 開口部
100 気化装置
110 ヒーター
120 粒子の経路
130 切断線
140a 可塑性材料
140b 可塑性材料
150a 導電性プレート
150b 導電性プレート
160 熱シンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状材料を受け取って気化させるための気化装置であって、
(a)粒子状材料の受け入れに適した空隙を規定するリガンドからなる網状材料構造を持ち、その空隙が網状材料構造の体積の85%超を占めることで、粒子状材料をその空隙に供給するのが容易になるとともに、気化した材料がその空隙から広がるのが容易になっている構成のヒーターと;
(b)上記リガンドによって熱を発生させるか伝えることで、上記空隙の中にある粒子状材料を気化させてその空隙の中を移動させる熱発生手段とを備える気化装置。
【請求項2】
上記網状材料構造が導電性であり、上記熱発生手段が、上記リガンドに電流を流して熱を発生させる、請求項1に記載の気化装置。
【請求項3】
上記網状材料構造がガラス状炭素を含む、請求項2に記載の気化装置。
【請求項4】
上記網状材料構造が、ガラス状炭素と、耐火性金属または導電性セラミックからなる同形の被覆とをリガンドの表面に備える、請求項2に記載の気化装置。
【請求項5】
上記耐火性金属が、タングステン、タンタル、モリブデンのいずれかを含む、請求項4に記載の気化装置。
【請求項6】
上記導電性セラミックが炭化ケイ素である、請求項4に記載の気化装置。
【請求項7】
それぞれの空隙が、上記粒子状材料の有効直径以上の有効直径を持つ、請求項1に記載の気化装置。
【請求項8】
それぞれの空隙が、上記粒子状材料の有効直径の2倍を超える有効直径を持つ、請求項7に記載の気化装置。
【請求項9】
上記網状材料構造の中に上記粒子状材料が滞在する平均滞在時間が2秒未満である、請求項1に記載の気化装置。
【請求項10】
上記粒子状材料として、固体状態から蒸気状態へと変化するもの、または気化する前に液体状態を通過するものが選択される、請求項1に記載の気化装置。
【請求項11】
上記網状材料構造が振動する、請求項1に記載の気化装置。
【請求項12】
上記熱発生手段が独立した加熱要素である、請求項1に記載の気化装置。
【請求項13】
上記粒子状材料が上記網状材料構造に到達する前にその粒子状材料を冷却する手段をさらに備える、請求項1に記載の気化装置。
【請求項14】
粒子状材料を気化させるための気化システムであって、
(a)粒子状材料の供給源と;
(b)粒子状材料の受け入れに適した空隙を規定するリガンドからなる網状材料構造を持ち、その空隙が網状材料構造の体積の85%超を占めることで、粒子状材料をその空隙に供給するのが容易になるとともに、気化した材料がその空隙から広がるのが容易になっている構成のヒーターと;
(c)そのヒーターによって生成された気化した材料を受け入れる位置にあるマニホールドと;
(d)上記粒子状材料を上記ヒーターに供給してその材料を空隙の中に配置する手段と;
(e)上記リガンドによって熱を発生させるか伝えることで、上記空隙の中にある粒子状材料を気化させて上記マニホールドに供給する手段とを備える気化システム。
【請求項15】
上記網状材料構造が導電性であり、上記熱発生手段が、上記リガンドに電流を流して熱を発生させる、請求項14に記載の気化システム。
【請求項16】
上記網状材料構造がガラス状炭素を含む、請求項15に記載の気化システム。
【請求項17】
上記網状材料構造が、ガラス状炭素と、耐火性金属または導電性セラミックからなる同形の被覆とをリガンドの表面に備える、請求項15に記載の気化システム。
【請求項18】
上記耐火性金属が、タングステン、タンタル、モリブデンのいずれかを含む、請求項17に記載の気化システム。
【請求項19】
上記導電性セラミックが炭化ケイ素である、請求項17に記載の気化システム。
【請求項20】
それぞれの空隙が、上記粒子状材料の有効直径以上の有効直径を持つ、請求項14に記載の気化システム。
【請求項21】
それぞれの空隙が、上記粒子状材料の有効直径の2倍を超える有効直径を持つ、請求項20に記載の気化システム。
【請求項22】
上記網状材料構造の中に上記粒子状材料が滞在する平均滞在時間が2秒未満である、請求項14に記載の気化システム。
【請求項23】
上記粒子状材料として、固体状態から蒸気状態へと変化するもの、または気化する前に液体状態を通過するものが選択される、請求項14に記載の気化システム。
【請求項24】
上記網状材料構造が振動する、請求項14に記載の気化システム。
【請求項25】
上記熱発生手段が独立した加熱要素である、請求項14に記載の気化システム。
【請求項26】
上記粒子状材料が上記網状材料構造に到達する前にその粒子状材料を冷却する手段をさらに備える、請求項14に記載の気化システム。
【請求項27】
粒子状材料を受け取って気化させる方法であって、
(a)粒子状材料の受け入れに適した空隙を規定するリガンドからなる網状材料構造として、その空隙が網状材料構造の体積の85%超を占めることで、粒子状材料をその空隙に供給するのが容易になるとともに、気化した材料がその空隙から広がるのが容易になっている構成の網状材料構造を用意するステップと;
(b)リガンドによって熱を発生させるか伝えることで、上記空隙の中にある粒子状材料を気化させてその空隙の中を通過させるステップとを含む方法。
【請求項28】
上記網状材料構造が導電性であり、電流が上記リガンドを流れて熱を発生させる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
上記網状材料構造がガラス状炭素を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記網状材料構造が、ガラス状炭素と、耐火性金属または導電性セラミックからなる同形の被覆とをリガンドの表面に備える、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
上記耐火性金属が、タングステン、タンタル、モリブデンのいずれかを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
上記導電性セラミックが炭化ケイ素である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
それぞれの空隙が、上記粒子状材料の有効直径以上の有効直径を持つ、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
それぞれの空隙が、上記粒子状材料の有効直径の2倍を超える有効直径を持つ、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
上記網状材料構造の中に上記粒子状材料が滞在する平均滞在時間が2秒未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
上記網状材料構造を振動させるステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
上記粒子状材料が上記網状材料構造に到達する前にその粒子状材料を冷却するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2010−535941(P2010−535941A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519943(P2010−519943)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/009316
【国際公開番号】WO2009/020562
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】