説明

熱アシスト磁気記録ヘッド内の温度センサ

【課題】 熱アシスト磁気記録ヘッド内の温度センサを提供する。
【解決手段】 レーザーのビームスポットを磁気媒体上に更に合焦することによって媒体を加熱するための光学トランスデューサ(又は、近接場光源)を含むTAR又はHAMR対応型ディスクストレージシステム内の加熱要素を駆動するための信号を提供する方法及び装置である。ストレージシステムは、レーザーの出力を調節するためにレーザー駆動装置にフィードバックループを提供する近接場トランスデューサに近接した温度センサを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、データストレージシステムに関し、且つ、更に詳しくは、熱アシスト記録用の近接場トランスデューサを有する書込みヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク駆動装置に使用される磁気媒体内における高ストレージビット密度により、データセルのサイズ(容積)は、セルの寸法が磁性材料の粒子サイズによって制限されるところまで低減されている。粒子サイズを更に低減することはできるが、セル内に保存されたデータの熱安定性が低下することになり得る。即ち、周囲温度におけるランダムな熱揺らぎが、データを消去するのに十分なものとなり得る。この状態は、「超常磁性限界」と呼ばれ、これにより、所与の磁気媒体の理論的な最大ストレージ密度が決定される。この限界は、磁気媒体の保磁力を増大させることにより、或いは、温度を低減することにより、上昇させてもよいが、温度の低減は、消費者用の市販のハードディスク駆動装置を設計する際には、常に実施可能というわけではない。その一方で、保磁力の増大には、高磁気モーメント材料を内蔵した書込みヘッド又は垂直磁気記録などの技法(或いは、これらの両方)が必要となる。
【0003】
更なる解決策が1つ提案されており、この解決策は、熱を使用して磁気媒体表面上の局所的領域の有効保磁力を低下させ、且つ、この加熱された領域内にデータを書き込んでいる。媒体を周囲温度まで冷却した際に、データ状態は「固定」状態となる。この技法は、広くは、「TAR又はTAMR(Thermally Assisted (Magnetic) Recording」、EAMR(Energy Assisted Magnetic Recording)」、又は「HAMR(Heat−Assisted Magnetic Recording)」と呼ばれており、本明細書においては、これらの名称は、相互交換可能に使用される。この技法は、水平及び垂直磁気記録システム並びに「ビットパターン媒体」に対して適用することができる。媒体表面の加熱は、合焦レーザービームや近接場光源などのいくつかの技法によって実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第2010/0163521号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、一般に、ディスク駆動装置上のTAR対応型ヘッドに関する。具体的には、本発明は、光学トランスデューサに近接して温度センサを配置し、加熱レーザーの出力を制御することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、ヘッドに近接した磁気媒体を加熱するように構成された光学トランスデューサと、この光学トランスデューサに熱的に結合するように構成された温度センサと、を有する磁気ディスクのヘッドを開示しており、この場合に、温度センサと光学トランスデューサは、第1距離だけ離隔している。
【0007】
本発明の別の実施形態は、レーザーから、ディスク駆動装置のヘッド内に配置された光学トランスデューサまで、光学エネルギーを伝播させるステップを有する方法を開示している。本方法は、光学トランスデューサに熱的に結合された温度センサの電気抵抗値を計測するステップを含み、この電気抵抗値は、センサの温度と相関しており、且つ、温度センサと光学トランスデューサは、第1距離だけ離隔している。又、本方法は、計測された電気抵抗値に基づいてレーザーによって伝播される光学エネルギーを調節するステップをも含む。
【0008】
上述の本発明の特徴を詳細に理解することができるように、以上において簡潔に概説した本発明について、添付図面にそのいくつかが示されている実施形態を参照し、更に具体的に説明することとする。但し、添付図面は、本発明の代表的な実施形態を示すものに過ぎず、従って、本発明には、その他の同様に有効な実施形態も可能であることから、これらの図面は、本発明の範囲の限定として見なすべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】本発明の実施形態によるディスク駆動装置システムを示す。
【図1B】本発明の実施形態によるディスク駆動装置システムを示す。
【図2】本発明の一実施形態によるディスク駆動装置のTAR対応型ヘッドの断面概略図を示す。
【図3】本発明の一実施形態によるTAR対応型ヘッドの断面概略図を示す。
【図4A】本発明の実施形態によるTAR対応型ヘッドの断面概略図を示す。
【図4B】本発明の実施形態によるTAR対応型ヘッドの断面概略図を示す。
【図5】本発明の一実施形態によるワイヤパッドを有する温度センサの概略図である。
【図6A】本発明の実施形態による近接場トランスデューサと温度センサとの間のギャップに関係する分析データを示すグラフである。
【図6B】本発明の実施形態による近接場トランスデューサと温度センサとの間のギャップに関係する分析データを示すグラフである。
【図7A】本発明の実施形態による温度センサの長さに関係する分析データを示すグラフである。
【図7B】本発明の実施形態による温度センサの長さに関係する分析データを示すグラフである。
【図8A】本発明の実施形態による温度センサの厚さに関係する分析データを示すグラフである。
【図8B】本発明の実施形態による温度センサの厚さに関係する分析データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするために、可能な限り、同一の参照符号を使用して各図面に共通する同一の要素を表記している。1つの実施形態において開示されている要素は、具体的な記述を伴わない場合にも、その他の実施形態において有用に利用してもよいものと想定されている。
【0011】
以下においては、本発明の実施形態を参照する。但し、本発明は、特定の記述されている実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。その代わりに、異なる実施形態に関係しているかどうかを問わず、以下の特徴及び要素の任意の組合せが本発明を実装及び実施するために想定されている。更には、本発明の実施形態は、その他の可能な解決策を上回る且つ/又は従来技術を上回る利点を実現することになるが、本発明は、特定の利点が所与の実施形態によって実現されるかどうかによって限定されるものではない。従って、以下の態様、特徴、実施形態、及び利点は、例示を目的としたものに過ぎず、且つ、請求項に明示的に記述されている場合を除いて、添付の請求項の要素又は限定として見なすべきではない。同様に、「本発明」に対する参照も、本明細書に開示されている任意の発明主題の一般化として解釈するべきではなく、且つ、請求項に明示的に記述されている場合を除いて、添付の請求項の要素又は限定として見なすべきではない。
【0012】
本発明は一般的に、近接場トランスデューサを含むTAR又はHAMR対応型ディスクストレージシステム内の加熱要素を駆動するための信号を提供することに関し、更に一般的には、レーザーのビームスポットを磁気媒体上に更に合焦(focusing)することによって媒体を加熱するための光学トランスデューサ又は近接場光源に関する。このストレージシステムは、レーザーの出力を調節するためにレーザー駆動装置にフィードバックループを提供する近接場トランスデューサに近接した温度センサを含む。
【0013】
例示用のハードディスク駆動装置
図1Aは、本発明を実施するディスク駆動装置を示している。図示のように、少なくとも1つの回転可能な磁気ディスク112が、スピンドル114上において支持されており、且つ、ディスク駆動モーター118によって回転する。それぞれのディスク上の磁気記録は、磁気ディスク112上の同心データトラックの環状パターン(図示されてはいない)の形態を有する。
【0014】
少なくとも1つのスライダ113が、磁気ディスク112の近傍に配置されており、それぞれのスライダ113は、1つ又は複数の磁気ヘッド組立体121を支持している。これらの磁気ヘッド組立体121は、ディスク表面122を加熱するための放射源(例えば、レーザー又は電気抵抗ヒーター)を含んでもよい。磁気ディスクが回転するのに伴って、スライダ113は、ディスク表面122上において半径方向を内向き及び外向きに運動し、この結果、磁気ヘッド組立体121は、磁気ディスクの異なるトラックに対してアクセスしてもよく、そこで、望ましいデータが書き込まれる。それぞれのスライダ113は、サスペンション115によってアクチュエータアーム119に装着されている。サスペンション115は、ディスク表面122に対してスライダ113を付勢するわずかなスプリング力を提供する。それぞれのアクチュエータアーム119は、アクチュエータ手段127に装着されている。図1Aに示されているアクチュエータ手段127は、ボイスコイルモーター(Voice Coil Motor:VCM)であってよい。VCMは、固定磁界内において運動可能であるコイルを有し、コイルの運動の方向及び速度は、制御ユニット129によって供給されるモーター電流信号によって制御される。
【0015】
TAR又はHAMR対応型ディスク駆動装置100の動作の際には、磁気ディスク112の回転により、スライダ113とディスク表面122との間に、上向きの力又は揚力をスライダ113に対して作用させるエアベアリングが生成される。この結果、エアベアリングは、サスペンション115のわずかなスプリング力を相殺し、且つ、通常の動作の際に、わずかな実質的に一定の間隔だけ、ディスク112の表面から離れると共にわずかにその上方において、スライダ113を支持する。放射源は、高保磁力データビットを加熱させ、この結果、磁気ヘッド組立体121の書込み要素は、データビットを正しく磁化させることになる。
【0016】
ディスクストレージシステムの様々なコンポーネントの動作は、アクセス制御信号及び内部クロック信号などの、制御ユニット129によって生成される制御信号によって制御される。通常、制御ユニット129は、論理制御回路、ストレージ手段、及びマイクロプロセッサを有する。制御ユニット129は、ライン123上の駆動モーター制御信号及びライン128上のヘッド位置及びシーク制御信号などの、様々なシステム動作を制御するための制御信号を生成する。ライン128上の制御信号は、スライダ113をディスク112上の望ましいデータトラックに最適に移動させると共に位置決めさせるための望ましい電流プロファイルを提供する。書込み及び読取り信号は、組立体121上の書込み及び読取りヘッドとの間において、記録チャネル125を経由して伝送される。
【0017】
一般的な磁気ディスクストレージシステム及び図1Aの添付図面に関する上述の説明は、例示を目的としたものに過ぎない。ディスクストレージシステムは、多数のディスク及びアクチュエータを含んでもよく、且つ、それぞれのアクチュエータは、いくつかのスライダを支持してもよいことは、明らかであろう。
【0018】
図1Bは、本発明の一実施形態によるTAR対応型書込みヘッドの断面概略図である。ヘッド101は、レーザー駆動装置150によって電力供給されるレーザー155に対して動作可能に装着されている。レーザー155は、ヘッド101上に直接的に配置してもよく、或いは、スライダから離れたところに配置されたレーザー155から、光ファイバ又は導波路を通じて、放射を供給してもよい。同様に、レーザー駆動装置150の回路も、スライダ113上に配置してもよく、或いは、制御ユニット129などのディスク駆動装置100と関連するSOC(System−On−Chip)上に配置してもよい。ヘッド101は、レーザー155によって放出される放射を導波路135内に合焦するためのスポットサイズ変換器130を含む。別の実施形態においては、ディスク駆動装置100は、放出された放射がスポットサイズ変換器130に到達する前にレーザー155のビームスポットを合焦するための1つ又は複数のレンズを含んでもよい。導波路135は、ヘッド101の高さを貫通して、エアベアリング表面(ABS)に又はその近傍に配置された、例えば、プラズモン装置などの近接場トランスデューサ140まで放射を伝播させるチャネルである。近接場トランスデューサ140は、ディスク112上の隣接するデータトラックの加熱を回避するために、即ち、回折限度を格段に下回るビームスポットを生成するために、ビームスポットを更に合焦する。矢印142によって示されているように、この光学エネルギーは、近接場トランスデューサ140からヘッド101のABSの下方のディスク112の表面まで放出される。本明細書における実施形態は、任意の特定のタイプの近接場トランスデューサに限定されるものではなく、且つ、例えば、cアパーチャ、eアンテナプラズモン近接場源、又は当技術分野において既知の任意のその他の形状のトランスデューサと共に動作してもよい。
【0019】
温度センサ145を近接場トランスデューサ140に近接して配置してもよい。近接場トランスデューサ140は、導波路135によって伝播された放射のすべてを磁気媒体に対して転送することができないため、光学エネルギーの少なくとも一部分がヘッド101自体を加熱させる。温度センサ145は、サーミスタ又は抵抗値温度検出器(Resistance Temperature Detector:RTD)であってよく、この場合に、センサ145を構成する材料の電気抵抗値は、材料の温度が変化するのに伴って(比例して又は反比例して)変化する。温度センサ145は、このセンサ145の電気抵抗値を計測するために、レーザー駆動装置150又はなんらかのその他の制御装置に電気的に結合してもよい。次いで、この変化を、レーザー155の出力を調節するためのフィードバック制御信号として使用してもよい。例えば、レーザー駆動装置150は、温度センサ145の両端に一定の電圧を供給してもよい。計測された電流が減少を開始した場合に−例えば、センサ145の電気抵抗値が増大した場合に、レーザー駆動装置150は、レーザー155の出力を低減させて、温度センサ145の、並びに、恐らくは、ヘッド101のその他のコンポーネントの、温度を低減させてもよい。このフィードバック制御により、ディスク駆動装置100は、例えば、近接場トランスデューサの磁極先端部(pole tip)の突き出し又は金属拡散によるヘッド101の損傷を伴うことなしに、十分な温度においてTARを実行することができる。
【0020】
温度センサを有するTARヘッド
図2は、本発明の一実施形態によるTAR対応型ディスク駆動装置の断面概略図を示している。具体的には、図2は、熱をディスクに伝播させるための光学チャネル又は導波路135を使用するTARディスク駆動装置用のエアベアリングヘッド101と、関連する垂直磁気記録ディスク112と、の一部分を示している。ディスク112は、基板と、垂直磁気記録層(Recording Layer:RL)246と、を含む。一実施形態においては、ディスク112は、任意選択の「軟磁性(soft)」の又は相対的に低保磁力の透磁性基層(SUL)を含んでもよい。但し、SULは、TARディスク駆動装置100にとって必須ではない。
【0021】
RL246は、特殊な成長促進型の底層上に成長させたコバルト−クロミウム(CoCr)合金粒状層或いはプラチナ(Pt)又はパラジウム(Pd)の薄膜を有するCoの交互に変化する薄膜からなる多層などの、垂直磁気異方性を有する任意の媒体であってよい。また、RL246は、FePtやFeNiPtなどのL1規則合金であってもよい。また、ディスク112は、RL246上に保護膜(図示されてはいない)を含んでもよい。
【0022】
ヘッド101は、トレーリング表面211と、このトレーリング表面211に対して略垂直に方向付けされたABS表面と、を有する。ヘッド101は典型的に、アルミナ/チタニウム−カーバイドの複合体(Al/TiC)などの複合材料から形成され、且つ、読取り及び書込み要素を支持しており、これらの読取り及び書込み要素は、通常は、トレーリング表面211上の一連の薄膜及び構造体として形成される。ディスク112は、トレーリング表面から離れると共にヘッド101のその他の層に向かう方向223に回転してもよい。ABSは、ディスク112に対向するスライダの記録層に対向している表面である。図2は、非常に小さな形状を示すことの難しさに起因し、且つ、わかりやすくするために、正確な縮尺によって描画されてはおらず、間隔や絶縁層などの構造体をヘッドから省略していることに留意されたい。
【0023】
ヘッド101は、遮蔽体S1と遮蔽体S2との間に配置された従来の磁気抵抗読取り磁極215と、書込み磁極220a、戻り磁極(return pole)220b、及び導電性コイル225を有する磁気ヨーク220を含む従来の垂直書込みヘッドと、を含む。書込み磁極220aは、NiFeやFeCoNi合金などの従来の高モーメント材料から形成されている。書込みコイル225は、ヨーク220の周りに巻回されており、電流方向は、「X」によってマーキングされたコイル断面により、紙面に入ってゆく方向が、そして、実線の円によってマーキングされたコイル断面により、紙面から出てくる方向が、示されている。書込み電流パルスがコイル225を通じて流れた際に、書込み磁極220aは、矢印230によって表されている磁束をRL246に向かって誘導する。磁束230は、更に、戻り磁極220bに到達する前に、基板又はSUL層を通って進んでいる。但し、本発明は、上述の構造及び材料に限定されるものではない。例えば、コイル225は、螺旋コイルであってもよく、且つ、書込み磁極220aは、ラップアラウンド遮蔽体を含んでもよい。更には、本発明は、本明細書に記述されている機能を実行することができる任意の記録ヘッドと共に動作してもよい。
【0024】
また、ヘッド101は、ABSにおいて又はこの近傍において近接場トランスデューサ140を有する導波路135を含んでもよい。図示のように、導波路135及び近接場トランスデューサ140は、ヨーク220を通じて延在しており、且つ、書込み磁極220aと戻り磁極220bとの間に配置されている。破線によって表記されているように、ヨーク220は、書込み磁極220aを戻り磁極220bに対して連続的に接続してもよい。導波路135及び近接場トランスデューサ140は、回転する磁気ディスク112の一部分が書込み磁極220aの下方を通過する前に、近接場トランスデューサ140がその部分の上方を通過するように、任意の場所に製造されてもよい。具体的には、導波路135は、遮蔽体S2と戻り磁極220bとの間に、或いは、(ディスク112が図示の方向223とは反対に回転している場合には)書込み磁極220bとヘッド101の外側面231との間に、配置してもよい。
【0025】
ディスク112に書き込んでいる際に、RL246は、ヘッド101との関係において、矢印223によって示されている方向に運動する。TARにおいては、磁気記録領域227、228、229を書込み磁極220aからの書込み磁界によって方向付けしてもよいように、トランスデューサ140から放出される光学エネルギー142によって一時的にRL246の保磁力(H)を低下させる。磁気記録領域227、228、229は、書込み磁界(H)がHを上回っている場合に、書込み磁界によって方向付けされた状態となる。データトラック内のRL246の領域が、書込み磁極220aからのHと、近接場トランスデューサ140からの光学エネルギー142の結果として得られる熱と、にさらされた後に、この領域の温度は、Curie温度未満に降下し、且つ、磁気の向きと関連するデータが記録される。具体的には、(予め記録された領域227、228、及び229などの)記録された領域間における遷移が、読取り磁極215によって読み取ることができる書き込まれたデータ「ビット」を表している。このように、近接場トランスデューサ140は、光学エネルギー142を使用してRL層246を加熱すると共にその保磁力を低下させる。
【0026】
導波路135は、例えば、780nm周辺のレーザー放射源の波長の放射に対して透過性を有する高屈折率誘電材料などのコア材料251から形成されている。代表的な放射透過性材料には、例えば、TiO及びTaが含まれる。放射透過性コア材料251は、クラッド材料252a、bによって取り囲まれており、このクラッド材料は、コア材料251よりも小さな屈折率を有すると共に、例えば、レーザー155などのレーザー放射源の波長の放射に対する透過性をも有する。代表的なクラッド材料には、SiO及びAlが含まれる。
【0027】
また、ヘッド101は、近接場トランスデューサ140に近接した温度センサ145を含んでもよい。温度センサ145は、トランスデューサ140から放出される熱のうちの磁気ディスク112には伝達されない部分を計測する。一実施形態においては、ヘッド温度がレーザー出力に比例しているため、温度センサ145を使用して一定のレーザー出力を維持してもよい。この代わりに、又はこれに加えて、温度センサ145を使用してヘッド101を損傷から保護してもよい。いくつかの例においては、トランスデューサ140からヘッド101に伝達される熱は、ヘッド101の正常な読取り/書込み機能を妨げるのに又はヘッド101を損傷させるのに十分なものとなろう。温度センサ145は、ヘッド101の上部に、即ち、ABSの反対側に、配置されているコネクタパッド(図示されてはいない)に対する電気接続を提供する少なくとも1つのワイヤパッド260に接続してもよい。ワイヤパッド260から、ワイヤにより、図1Bに示されているように、温度センサ145をレーザー駆動装置150に対して電気的に接続してもよい。
【0028】
一実施形態においては、温度センサ145は、クラッド252a又は252b内に埋め込まれている。別の実施形態においては、センサ145と書き込みパッド260の両方をクラッド252a又は252b内に埋め込んでもよい。或いは、この代わりに、センサ145及び書き込みパッド260を、クラッド252bと書込み磁極220aとの間に、或いは、クラッド252aと戻り磁極220bとの間に、配置してもよい。
【0029】
一実施形態においては、温度センサ145及び書込みパッド260は、非磁性且つ絶縁性の材料によって取り囲まれている。一実施形態においては、センサ145は、クラッド252内に配置するのではなく、導波路135と戻り磁極220bとの間に配置された別個の非磁性且つ絶縁性の材料内に埋め込まれてもよい。
【0030】
一実施形態においては、温度センサ145は、ヨーク220の境界の外側に配置されてもよい。例えば、温度センサは、戻り磁極220bと遮蔽体S1との間に存在してもよく、或いは、書込み磁極220aの左側に存在してもよく、即ち、読取り磁極215と対向する側とは反対側の書込み磁極220aの側が、温度センサ145と対向している。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態によるTAR対応型ヘッドの断面概略図を示している。図示のように、ヘッド101のこの部分は、導波路135を含んでいるが、クラッド252b(並びに、ヘッド101の背面上の任意のクラッド)は、温度センサ145、ワイヤパッド260、及びヒートシンク305の細部を更に明瞭に示すために取り除かれている。近接場トランスデューサ140は、このトランスデューサ140から過剰な熱を除去するためのヒートシンク305に対して直接的に又は熱的に結合してもよい。図3は、ヘッド101の断面図であるため、示されているヒートシンク305の反対側に配置された別のヒートシンクが存在してもよい。戻り磁極220bは、温度センサ145と遮蔽体層S1、S2又は読取り磁極215(図示されてはいない)との間に、示されている。
【0032】
一実施形態においては、温度センサ145の電気抵抗値は、その温度に従って変化する。例えば、選択された材料に応じて、センサ145の電気抵抗値は、その温度が低下するのに伴って増大する場合もある。或いは、電気抵抗値は、その温度が上昇した際に増大する場合もある。温度センサ145用の好適な材料には、Ta、Pt、Au、Rh、NiFe、又はその合金が含まれる。一実施形態においては、一定の電圧(又は、一定の電流)をセンサの両端に印加してもよい。この結果得られる電流を時間に伴ってプロットし、温度センサ145の抵抗値の変化を判定することができる。この変化を使用し、レーザー155から放出される放射を増大又は低減させてもよい。
【0033】
一実施形態においては、温度センサ145を監視回路(例えば、レーザー駆動装置150)に対して電気的に接続するために、ヘッド101は、温度センサ145の両側に接続されたワイヤパッド260を有してもよい。わかりやすくするために、図3には、ワイヤパッド260の反対側に配置されているワイヤパッドは省略されている。一実施形態においては、ワイヤパッド260を構成する材料の電気抵抗値は、温度センサ145に使用されている材料よりも温度に対する依存性が低い。即ち、ワイヤパッド260の電気抵抗値は、温度センサ145よりも温度変動の影響を受けにくい。一実施形態においては、ワイヤパッド260は、Ruを含んでもよい。但し、一実施形態においては、ワイヤパッド260の材料は、温度センサ145に使用されている材料と同一のものであってもよい。
【0034】
図3には示されていないが、ワイヤパッド260は、ヘッド101の上部に配置されたコネクタパッドに到達するまで、ABSから離れるように延在してもよい。これらのパッド260は、広がるか又は拡幅してもよく、且つ、Cu又はTaのリード線を含んでもよい。
【0035】
コア251は、近接場トランスデューサ140において終端してもよい。トランスデューサ140は、アンテナ325と、誘電体320と、を少なくとも含む。一実施形態においては、トランスデューサは、磁極リップ(pole lip)315を含んでもよい。アンテナ325は、Cu、Au、Ag、又はこれらの合金であってもよい。誘電体320は、アパーチャ又は開口部であり、このアパーチャ又は開口部は、SiO又はその他の誘電材料などの放射透過性材料によって充填されてもよい。一実施形態においては、誘電体320は、クラッド252と同一の材料から構成されてもよい。磁極リップ315は、Ni、Co、Fe、又はこれらのなんらかの組合せ又は合金から構成されてもよい。トランスデューサ140の構造は、Balamane他の特許文献1に記述されている近接場光源に類似したものであってよく、この特許出願の内容は、本引用により、本明細書に包含される。トランスデューサ140は、アンテナ325及び誘電体320を使用してビームスポットを磁性媒体112上に更に合焦(focus)している。
【0036】
図4A及び図4Bは、本発明の実施形態によるTAR対応型ヘッドの断面概略図を示している。図4Aにおいて、クラッド252bは、その内部に埋め込まれたセンサ145を有する状態において示されている。この結果、センサ145は電気的に絶縁され、これにより、電流がセンサを通じて流れて温度センサ145内の抵抗値の変化を検出することが可能になっている。図示されてはいないが、ワイヤパッド260は、クラッド252b内に、或いは、別個の誘電材料内に、埋め込まれてもよい。
【0037】
一実施形態においては、温度センサ145は、ABSから少なくとも5nmだけ離れたところに配置される。一実施形態においては、センサ145は、ABSから少なくとも15nmだけ離れている。別の実施形態においては、センサ145は、ABSから少なくとも20nmだけ離れている。別の実施形態において、センサは、ABSから少なくとも15nm又は20nmだけ、但し、ABSから60nm以下だけ、離れている。但し、図4Bは、温度センサ145をABS上に配置してもよいことを示している。
【0038】
分析データ
図5は、本発明の一実施形態によるワイヤパッドを有する温度センサの概略図である。図示のように、温度センサ145は、両端部において、2つのワイヤパッド260a、bに接続されている。但し、ワイヤパッド260a、bは、電位がワイヤパッド260a、bの両端に印加された際に電流が温度センサ145の少なくとも一部分を流れることを許容するなんらかの方式によって温度センサ145に接続してもよい。B−Bというラベルが付与された破線は、センサ145及びワイヤパッド260a、bの図3に示されている断面図を示している。
【0039】
更には、本明細書において使用されている矢印502は、3次元の図3及び図5に示されている構造の厚さの方向に対応しており、矢印504は、その長さの方向に対応しており、且つ、矢印506は、その高さの方向に対応している。
【0040】
図6A及び図6Bは、本発明の実施形態による近接場トランスデューサと温度センサとの間のギャップに関係する分析データを示すグラフである。図6A及び図6Bは、いずれも、トランスデューサ140と温度センサ145との間のギャップ距離に応じた温度及び電気抵抗値を示している。これらの結果は、それぞれ、25nm、92nm、及び0.8μmに設定されたセンサ145の厚さ、高さ、及び長さにおいて得たものである。ギャップ距離は、図3において、A−Aというラベルが付与された破線によって示されており、且つ、センサ145及びトランスデューサ140(例えば、磁極リップ315、誘電体320、又はアンテナ325)の2つの最も近接した地点(或いは、面)の間の距離を表している。
【0041】
一実施形態においては、センサ145及びヒートシンク305は、直接的に接触してもよい。但し、いくつかのケースにおいては、センサ145及び近接場トランスデューサ140は、直接的に接触しなくてもよい。温度センサ145の金属材料は、トランスデューサ140の効率性を妨げる場合があり、且つ、プラズモン装置の機能を妨げる場合がある。従って、一実施形態においては、センサ145及びトランスデューサ140は、温度センサ145とトランスデューサ140が直接的に接触しないように、例えば、クラッド252bなどの非磁性且つ非導電性の材料によって分離されている。但し、温度センサ145がトランスデューサから離れて配置されるほど、トランスデューサ140によって生成される温度変動に対する温度センサの感度は低下する。
【0042】
図6Aは、ギャップ距離を増大させることによってトランスデューサから遠く離れるように温度センサ145を移動させることに伴う負の影響を示している。ギャップ距離が増大するのに伴って、センサ145の温度は低下する。温度センサ145の電気抵抗値はその温度に対応しているため、トランスデューサ140の温度を正しく計測するディスク駆動装置の能力は、キャップ距離の増大に伴って低下する。
【0043】
一実施形態においては、近接場トランスデューサ140と温度センサ145との間のギャップ距離は、10nmを上回っている。一実施形態においては、ギャップ距離は、20nmを上回っている。一実施形態においては、ギャップ距離は、100nm未満である。一実施形態においては、ギャップ距離は、10〜50nmである。一実施形態においては、ギャップ距離は、15〜35nmである。一実施形態においては、ギャップ距離は、25nmなどのように、20〜30nmである。
【0044】
図6Bは、様々なギャップ距離において、ワイヤパッド260とセンサ145の合計抵抗値をセンサ145のみの抵抗値と比較している。
【0045】
図7A及び図7Bは、本発明の実施形態による温度センサ145の長さに関係する分析データを示すグラフである。これらの結果は、50nmのギャップ距離と、それぞれ、25nm及び92nmに設定されたセンサ145の厚さ及び高さと、において得たものである。図7Aは、温度センサ145の長さの変化がトランスデューサ140の温度を検出するセンサ145の能力に対してほとんど影響を及ぼさないことを示している。即ち、長さは、200nm〜1400nmであってよい。図7Bは、図示の長さによって実現されることになる可能な抵抗値を示している。従って、回路設計者は、フィードバック回路に最良に整合する抵抗値(並びに、対応する長さ)を選択してもよい。
【0046】
図8A及び図8Bは、本発明の実施形態による温度センサの厚さに関係する分析データを示すグラフである。これらの計測値は、50nmのギャップ距離と、それぞれ、0.8μm及び92nmに設定されたセンサ145の長さ及び高さと、において得たものである。長さと同様に、図8Aは、温度センサ145の厚さの変化がトランスデューサ140の温度を検出するセンサ145の能力に対してほとんど影響を及ぼさないことを示している。図8Bは、図示の厚さによって実現されることになる可能な抵抗値を示している。
【0047】
一実施形態においては、温度センサ145の厚さは、10〜50nmであり、高さは、50〜150nmであり、且つ、長さは、0.7〜0.9μmである。別の実施形態においては、温度センサ145の厚さは、15〜35nmであり、高さは、80〜110nmであり、且つ、長さは、0.75〜0.85μmである。
【0048】
一実施形態においては、それぞれのワイヤパッド260の厚さは、10〜50nmであり、高さは、500〜1000nmであり、且つ、長さは、300〜600nmである。別の実施形態においては、それぞれのワイヤパッド260の厚さは、20〜40nmであり、高さは、600〜800nmであり、且つ、長さは、350〜550nmである。
【0049】
以上の内容は、本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲を逸脱することなしに、本発明のその他の且つ更なる実施形態を考案してもよい。従って、本発明の範囲は、添付の請求項によって規定される。
【符号の説明】
【0050】
100 ディスク駆動装置
101 ヘッド
112 磁気媒体
118 駆動モーター
125 記録チャネル
129 制御ユニット
140 光学トランスデューサ
145 温度センサ
215 読取り磁極
220a 書込み磁極
220b 戻り磁極
260 ワイヤパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク駆動装置のヘッドであって、
前記ヘッドに近接した磁気媒体を加熱するように構成された光学トランスデューサと、
前記光学トランスデューサに熱的に結合されるように構成された温度センサと、
を備え、
前記温度センサと前記光学トランスデューサは、第1距離だけ離隔している、ヘッド。
【請求項2】
前記温度センサと前記光学トランスデューサとの間の前記第1距離は、5〜150nmである請求項1に記載のヘッド。
【請求項3】
前記温度センサと前記光学トランスデューサとの間の前記第1距離は、10〜50nmである請求項2に記載のヘッド。
【請求項4】
前記磁気媒体内に保存されたデータを読み取るように構成された読取り磁極と、
前記磁気媒体にデータを保存するように構成された書込み磁極と、
を更に備え、
前記温度センサは、前記書込み磁極と前記読取り磁極との間に存在する、請求項1に記載のヘッド。
【請求項5】
前記温度センサは、エアベアリング表面から離れるように奥まった位置にある、請求項1に記載のヘッド。
【請求項6】
前記磁気媒体内に保存されたデータを読み取るように構成された読取り磁極を更に備え、前記温度センサは、前記光学トランスデューサと前記読取り磁極との間に配置されている、請求項1に記載のヘッド。
【請求項7】
前記磁気媒体内にデータを保存するように構成された書込み磁極及び戻り磁極を更に備え、前記光学トランスデューサは、前記書込み磁極と前記戻り磁極との間に配置されており、且つ、前記温度センサは、前記光学トランスデューサと前記戻り磁極との間に配置されている、請求項6に記載のヘッド。
【請求項8】
前記温度センサに接続された少なくとも1つのワイヤパッドを更に備える請求項1に記載のヘッド。
【請求項9】
前記少なくとも1つのワイヤパッドは、前記温度センサの材料とは異なる材料を有しており、前記少なくとも1つのワイヤパッドの前記材料の電気抵抗値は、前記温度センサの材料に比べて、温度に基づく変化がより小さい、請求項8に記載のヘッド。
【請求項10】
前記温度センサは、Ta、Pt、Au、Rh、NiFe、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを有し、且つ、前記少なくとも1つのワイヤパッドは、Ru、Cu、Ta、Cr、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを有する、請求項8に記載のヘッド。
【請求項11】
レーザーから、ディスク駆動装置のヘッド内に配置された光学トランスデューサまで、光学エネルギーを伝播させるステップと、
前記光学トランスデューサに熱的に結合された温度センサの電気抵抗値を計測するステップであって、前記電気抵抗値は、前記温度センサの温度と相関しており、且つ、前記温度センサ及び前記光学トランスデューサは、第1距離だけ離隔している、ステップと、
前記計測された電気抵抗値に基づいて前記レーザーによって伝播される前記光学エネルギーを調節するステップと、
を有する方法。
【請求項12】
前記温度センサは、前記光学トランスデューサから5〜150nmのところに配置されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度センサは、前記光学トランスデューサから10〜50nmのところに配置されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
磁気媒体内に保存されたデータを読み取るように構成された読取り磁極と、
前記磁気媒体にデータを保存するように構成された書込み磁極と、
を更に備え、前記温度センサは、前記書込み磁極と前記読取り磁極の間に存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記温度センサは、エアベアリング表面から離れるように奥まった位置にある、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
磁気媒体内に保存されたデータを読み取るように構成された読取り磁極を更に備え、前記温度センサは、前記光学トランスデューサと前記読取り磁極との間に配置されている、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記磁気媒体内にデータを保存するように構成された書込み磁極及び戻り磁極を更に備え、前記光学トランスデューサは、前記書込み磁極と前記戻り磁極との間に配置されており、且つ、前記温度センサは、前記光学トランスデューサと前記戻り磁極との間に配置されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記温度センサに接続された少なくとも1つのワイヤパッドを更に有する請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのワイヤパッドは、前記温度センサの材料とは異なる材料を有しており、前記少なくとも1つのワイヤパッドの前記材料の電気抵抗値は、前記温度センサの材料に比べて、温度に基づく変化がより小さい、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記温度センサは、Ta、Pt、Au、Rh、NiFe、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを有し、且つ、前記少なくとも1つのワイヤパッドは、Ru、Cu,Ta、Cr、及びこれらの組合せのうちの少なくとも1つを有する、請求項18に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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