説明

熱エネルギーを迅速に移送する装置

隣接する手段2の対流能と比較して大きな速度で熱源(A)から到着点(B)に熱エネルギーを迅速に移送し、到着点(B)に配置された変換装置3によって熱エネルギーが電気エネルギーに変換されることを可能にし、熱エネルギーがコーティング4によって移送され、コーティング4は秩序ある幾何学的構造を形成する原子を有する一つ以上のナノ材料からなる、装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源から他の場所への熱エネルギー移送の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、請求項1の前段に述べるように、熱勾配が見られる任意の物体に適用することができる熱エネルギー移送のための装置に関する。
【0003】
ナノ材料の発見及び取り扱いは、既存の材料の効率の悪さに起因して、他の方法では実施できないであろう用途において新たな興味を引き起こしている。
【0004】
「ナノテクノロジー」という用語は、その寸法が数十億分の1メートルのオーダーである、物体、装置、材料、アロイ、及びコーティングを作成するために使用される実験的な手順を示す。
【0005】
「ナノ材料」という用語は、正確な機能の組を提供するためにそのナノ構造が設計されかつ変更されるという事実によって特徴付けられるナノ構造材料を示す
【0006】
100ナノメートル未満の寸法を有する結晶構造は、特別な加工方法を用いることによって、マクロスケールで利用することができる特別な性質を有する。ナノテクノロジーは、それらの分子構造に起因して顕著な特性を有する新しい機能性材料、道具、及びシステムを作るために、及び既存の工程及び製品に品質及び特徴を与えるために使用することができる。これは、ナノスケールにおいて物体は、マクロスケールにおけるときと比較して非常に容易に、それらの色、形状、及び相を変えることができるためである。機械的強度、面積と質量との間の比、伝導性、及び弾性等の基本的性質は、自然界に存在しない新たなグループの材料を作るために設計され得る。
【0007】
これらのナノ材料の製造には、本質的に二つの方法が存在する。
【0008】
一つはIBMのBinnig及びRohrerにより開発された、原子スケール制御顕微鏡であり、彼らはこの仕事でノーベル賞を受賞した。もう一つはボトムアッププロセスであり、その寸法が数十億分の1メートルのオーダーである単分子層が形成され、導電性ポリマー、蛋白質、又は核酸等の有機材料から始まり、その後幅広い用途に適する材料及び装置がこれらの上に構築されかつ組み立てられる。
【0009】
本発明者は、エネルギー量の多寡にかかわらず、ナノ材料のコーティングを用いた熱エネルギーの迅速な移動によって、熱エネルギー又は地熱エネルギー(又は何らかのかたちでそれらに由来する)に保存される熱の、電気エネルギーへの変換を可能にすることを目的としている。
【0010】
熱エネルギーを電気エネルギーに(又はその逆)変換するために、二つの周知の物理現象、すなわちペルティエ効果及びゼーベック効果、を用いる電子装置が知られている。
【0011】
熱エネルギーを電気エネルギーへと効率よく変換するために、熱エネルギーが流れる間の損失をなくすことが可能な最も効率的な方法で、熱源から他の場所へのエネルギー移送が可能でなくてはならない。
【0012】
環境との他の交換が無視できることを確実にするために、熱移送は本質的に可能な限り短い時間で実行されるべきである。そのような交換が散逸を、及び結果的に望ましくないエネルギー損失を引き起こす可能性があるからである。
【0013】
この理由で、装置は通常高い熱伝導性を有する材料でコーティングされ、熱が適切な熱勾配を形成することによって決定され得る方向に流れることを可能にする。
【0014】
残念ながら、対流的又は伝導性流体が使用される既知のコーティング及び装置は、高い熱散逸によって特徴付けられ、これによって本発明者は熱移送の革新的な装置を提案する考えを持つに至った。
【0015】
用語「伝導性」は、温度勾配に起因して、単位時間の間にかつ特定の条件で、単位面積の表面に対して垂直な方向に移送される熱の量を示す。
【0016】
熱エネルギーの移送は、温度勾配Tによってのみ起こる。簡単にいえば、これは物質が熱を伝える能力を示す。
【0017】
原則として、熱伝導性は導電性に応じて変化する;金属は双方の形態の伝導性で高い値を有する。顕著な例外はダイヤモンドであり、これは高い熱伝導率を有するが、低い導電性を有する。
【0018】
熱伝導性は下記の因子によって影響されることが知られている。
・材料の化学組成
・材料の密度(kg/m
・材料の分子構造
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の本質は、材料の分子構造の変更に基づく。
【0020】
本発明の目的は、隣接する手段の対流能(convective capacity)と比較して大きな速度で、慣性が無くても熱エネルギーを移送することができ、その結果所定のエネルギー、特に電気エネルギーへの効率のよい変換を可能とする、熱エネルギーを移送する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、請求項1に規定される特徴を有する移送装置によって達成される。
【0022】
本発明によって提案される装置の有利な実施形態は従属請求項2〜4に記載される。
【0023】
本発明によって得られる他の主要な利点は、以下のとおりである:高い熱伝導性、発電の可能性、及び良好な熱散逸。
【0024】
本発明は、本発明の範囲を逸脱することなく技術的又は構造的変更が随時行われうるため非制限的な例としてのみ提供される、本発明の実際の実施形態の概略的な説明である添付される図面を参照して、さらに完全に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明によって提供される装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、隣接する手段2の対流能と比較して大きい速度で熱エネルギーを熱源Aから他の場所Bへと移送し、結果的に、到着した場所Bに位置する変換装置3によって熱エネルギーが電気エネルギーに変換されることを可能にするための装置1を示す。
【0027】
当該装置1は、幾何学的に秩序ある構造を有する一つ以上のナノ材料からなるコーティング4によって熱エネルギーを移送する
【0028】
一つの実施形態において、コーティング4は、有利には、当該分子内に存在する元々の原子と置換された原子を有する分子レベルにおいてナノメートルオーダーの厚みを有する。
【0029】
そのような置換は全く新規のアロイを生成する。高い熱伝導率は、ナノ材料の幾何学的構造の結果として、及び使用される原子のタイプの結果として実現され、これらの因子両方の相乗効果である。
【0030】
明らかに、本発明により提案される熱エネルギー移送装置は、様々な分野において(例えば工作機械、電気モーター、光起電性パネル、及び燃焼機関)、多くの用途、すなわち熱移送が必要とされるもの全てに使用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 装置
2 隣接する手段
3 変換装置
4 コーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する手段(2)の対流能と比較して大きな速度で熱源(A)から到着点(B)に熱エネルギーを迅速に移送し、到着点(B)に配置された変換装置(3)によって熱エネルギーが電気エネルギーに変換されることを可能にする装置(1)であって、
前記熱エネルギーがコーティング(4)によって移送され、前記コーティング(4)の厚みは移送されるエネルギーの量に応じて、及び一つ以上のナノ材料からなるコーティングを形成するのに使用されるプロセスに応じて変化し、前記ナノ材料は高い熱伝導性を与える秩序構造を、使用されるコーティング法によって可能となる範囲まで再現することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記原子が金属である、請求項1に記載の熱エネルギー移送装置。
【請求項3】
前記原子が非金属である、請求項1に記載の熱エネルギー移送装置。
【請求項4】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換するための熱光起電力手段(5)を備えることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の熱エネルギー移送装置。
【請求項5】
ペルティエ−ゼーベック電池を備えることを特徴とする、請求項1から4の何れか一項に記載の熱エネルギー移送装置。

【図1】
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【公表番号】特表2012−510150(P2012−510150A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536960(P2011−536960)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003231
【国際公開番号】WO2010/061236
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(511126143)