説明

熱サイクル装置及び熱サイクル方法

【課題】加熱時間の制御が容易な熱サイクル装置及び熱サイクル方法を提供する。
【解決手段】反応液と、前記反応液よりも比重が小さく、かつ前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が移動する流路110を含むバイオチップ100を装着する装着部11と、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に前記流路の第1領域を加熱する加熱部12と、前記装着部及び前記加熱部の配置を、第1の配置と第2の配置との間で切換える駆動機構20と、を含み、前記第1の配置は、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に前記第1領域が重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する配置であり、前記第2の配置は、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に前記反応液が移動する方向における位置が前記第1領域とは異なる前記流路の第2領域112が重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する配置である熱サイクル装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱サイクル装置及び熱サイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子の利用技術の発展により、遺伝子診断や遺伝子治療など遺伝子を利用した医療が注目されている他、農畜産分野においても品種判別や品種改良に遺伝子を用いた手法が多く開発されている。遺伝子を利用するための技術として、PCR(Polymerase Chain Reaction)法などの技術が広く普及している。今日では、PCR法は生体物質の情報解明において必要不可欠な技術となっている。
【0003】
PCR法は、増幅の対象とする核酸(標的核酸)及び試薬を含む溶液(反応液)に熱サイクルを施すことで、標的核酸を増幅させる手法である。熱サイクルは、2段階以上の温度を周期的に反応液に施す処理である。PCR法においては、2段階または3段階の熱サイクルを施す手法が一般的である。
【0004】
PCR法では一般に、チューブや生体試料反応用チップ(バイオチップ)と称する、生化学反応を行うための容器を使用する。しかしながら従来の手法においては、反応に必要な試薬等の量が多かったり、反応に必要な熱サイクルを実現するために装置が複雑化したり、反応に時間がかかったりするという問題があった。そのため、微少量の試薬や検体を用いてPCRを精度よく短時間で行うためのバイオチップや反応装置が必要とされていた。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1には、反応液と、反応液と混和せず反応液よりも比重の小さい液体(ミネラルオイル等、以下「液体」と称する)とが充填されたバイオチップを、水平方向の回転軸の周りに回転させることで、反応液を移動させて熱サイクルを施す生体試料反応装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−136250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された生体試料反応装置は、バイオチップを連続して回転させることで反応液に熱サイクルを施していた。しかしながら、反応液は回転に伴ってバイオチップの流路内を移動するので、反応液を所望の温度に所望の時間保持するためには、バイオチップの流路構造を複雑にするなどの工夫をする必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱時間の制御が容易な熱サイクル装置及び熱サイクル方法を提供することである。
【0009】
[適用例1]本適用例に係る熱サイクル装置は、反応液と、前記反応液よりも比重が小さく、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が対向する内壁に近接して移動する流路を含むバイオチップを装着する装着部と、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に、前記流路の第1領域を加熱する加熱部と、前記装着部及び前記加熱部の配置を、第1の配置と、第2の配置との間で切換える駆動機構と、を含み、前記第1の配置は、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に、前記第1領域が、重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する配置であり、前記第2の配置は、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に、前記反応液が移動する方向における位置が前記第1領域とは異なる前記流路の第2領域が、重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する配置である。
【0010】
本適用例に記載の熱サイクル装置は、装着部11の配置を切換えることで、バイオチップが第1の配置に保持された状態と、バイオチップが第2の配置に保持された状態とを切換えることができる。第1の配置は、バイオチップを構成する流路の第1領域が、重力の作用する方向における流路の最下部に位置する配置である。第2の配置は、反応液が移動する方向における位置が第1領域とは異なる流路の第2領域が、重力の作用する方向における流路の最下部に位置する配置である。つまり、重力の作用によって第1の配置においては反応液を第1領域に、第2の配置においては反応液を第2領域に保持できる。ここで、第1領域は加熱部によって加熱され、かつ、第2領域は反応液が移動する方向における位置が第1領域とは異なるため、第1領域と第2領域とは異なる温度となる。したがって、第1の配置または第2の配置にバイオチップを保持する間、反応液を所定の温度に保持できるので、加熱時間を容易に制御可能な熱サイクル装置を提供できる。
【0011】
[適用例2]上記適用例に記載の熱サイクル装置において、前記駆動機構は、前記第1の配置から前記第2の配置へ切換える場合と前記第2の配置から前記第1の配置へ切換える場合とで、反対方向に前記装着部及び前記加熱部を回転させてもよい。
【0012】
本適用例に記載の熱サイクル装置は、第1の配置から第2の配置へ切換える場合と、第2の配置から第1の配置へ切換える場合とで、装着部及び加熱部が、反対方向へ回転駆動するため、駆動によって生じる装置の配線の捩れを低減できる。したがって、装置の配線が損傷しにくいので、熱サイクルの信頼性を向上できる。
【0013】
[適用例3]上記適用例に記載の熱サイクル装置において、前記駆動機構は、前記第1の配置において第1の時間が経過した場合に、前記配置を前記第2の配置へ切り換え、前記第2の配置において第2の時間が経過した場合に、前記配置を前記第1の配置へ切り換えてもよい。
【0014】
本適用例に記載の熱サイクル装置は、第1の配置において第1の時間が経過した場合に、配置を第2の配置へ切り換え、第2の配置において第2の時間が経過した場合に、配置を第1の配置へ切り換えるため、第1の配置及び第2の配置における反応液を加熱する時間をより正確に制御できる。したがって、より正確な熱サイクルを反応液に施すことができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例に記載の熱サイクル装置において、前記装着部は、前記流路の長手方向に前記反応液が移動する前記バイオチップを装着し、前記第1領域は、前記長手方向における一方の端部を含む領域であり、前記第2領域は、前記長手方向における他方の端部を含む領域であってもよい。
【0016】
本適用例に記載の熱サイクル装置は、流路の長手方向に反応液が移動するバイオチップを装着部に装着した場合に、長手方向における一方の端部を含む領域が第1領域、長手方向における他方の端部を含む領域が第2領域となるので、簡易な形状の流路を有するバイオチップを使用した場合に、加熱時間を容易に制御可能な熱サイクル装置を提供できる。
【0017】
[適用例5]上記適用例における熱サイクル装置は、さらに、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に、前記第2領域を加熱する第2加熱部を含み、前記加熱部は、第1の温度に前記第1領域を加熱し、前記第2加熱部は、前記第1の温度とは異なる第2の温度に、前記第2領域を加熱してもよい。
【0018】
本適用例に記載の熱サイクル装置は、第2の温度に第2領域を加熱する第2加熱部を含むため、装着部にバイオチップを装着した場合に、バイオチップの第1領域及び第2領域の温度をより正確に制御できる。したがって、より正確な熱サイクルを反応液に施すことができる。
【0019】
[適用例6]上記適用例に記載の熱サイクル装置において、前記第1の温度は、前記第2の温度よりも高い温度であってもよい。
【0020】
本適用例に記載の熱サイクル装置は、第1の温度が、第2の温度よりも高い温度であるので、装着部にバイオチップを装着した場合に、バイオチップの第1領域及び第2領域の温度を熱サイクルに適した温度に制御できる。したがって、適切な熱サイクルを反応液に施すことができる。
【0021】
[適用例7]上記適用例に記載の熱サイクル装置において、前記第1の時間は、前記第2の時間よりも短くてもよい。
【0022】
本適用例に記載の熱サイクル装置は、第1の時間は第2の時間よりも短いので、装着部にバイオチップを装着した場合に、第1の温度と第2の温度とにおいて、バイオチップを保持する時間の長さを異ならせることができる。したがって、第1の温度と第2の温度とで加熱する時間が異なる反応を行う場合に、適切な熱サイクルを反応液に施すことができる。
【0023】
[適用例8]本適用例に記載の熱サイクル方法は、反応液と、前記反応液よりも比重が小さく、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が、対向する内壁に近接して移動する流路を含むバイオチップを装着部に装着することと、前記流路の第1領域が、重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する第1の配置に前記バイオチップを保持することと、前記第1領域を加熱することと、前記反応液が移動する方向における位置が前記第1領域とは異なる前記流路の第2領域が、重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する第2の配置に前記バイオチップを保持することと、を含む。
【0024】
本適用例に記載の熱サイクル方法は、第1の配置または第2の配置にバイオチップを保持することができ、第1の配置においては、バイオチップの第1領域を加熱することができる。第1の配置は、バイオチップを構成する流路の第1領域が、重力の作用する方向における流路の最下部に位置する配置である。第2の配置は、反応液が移動する方向における位置が第1領域とは異なる流路の第2領域が、重力の作用する方向における流路の最下部に位置する配置である。つまり、重力の作用によって第1の配置においては反応液を第1領域に、第2の配置においては反応液を第2領域に保持することができる。ここで、第1領域は加熱部によって加熱され、かつ、第2領域は反応液が移動する方向における位置が第1領域とは異なるため、第1領域と第2領域とは異なる温度となる。したがって、第1の配置または第2の配置にバイオチップを保持する間、反応液を所定の温度に保持できるので、加熱時間を容易に制御可能な熱サイクル方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施形態に係る熱サイクル装置の斜視図。(A)は蓋を閉じた状態、(B)は蓋を開けた状態を示す。
【図2】実施形態に係る熱サイクル装置における本体の分解斜視図。
【図3】実施形態に係るバイオチップの断面図。
【図4】実施形態に係る熱サイクル装置における本体の、図1(A)のA−A線における断面を模式的に示す断面図。(A)は第1の配置、(B)は第2の配置を示す。
【図5】実施形態に係る熱サイクル装置を用いた熱サイクル処理の手順を表すフローチャート。
【図6】変形例に係る熱サイクル装置の斜視図。(A)は蓋を閉じた状態、(B)は蓋を開けた状態を示す。
【図7】変形例に係るバイオチップの断面図。
【図8】変形例に係る熱サイクル装置における本体の、図6(A)のB−B線における断面を模式的に示す断面図。
【図9】実施例1における熱サイクル処理の手順を表すフローチャート。
【図10】実施例2における熱サイクル処理の手順を表すフローチャート。
【図11】実施例2における反応液の組成を示す表。
【図12】実施例における熱サイクル処理の結果を示す表。(A)は実施例1、(B)は実施例2の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて以下の順序に従って説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.実施形態
1−1.実施形態における熱サイクル装置の構成
1−2.実施形態における熱サイクル装置を用いた熱サイクル処理
2.変形例
3.実施例
実施例1.シャトルPCR
実施例2.1step RT−PCR
【0027】
1.実施形態
1−1.実施形態における熱サイクル装置の構成
図1は、実施形態に係る熱サイクル装置1の斜視図である。(A)は熱サイクル装置1の蓋50を閉じた状態、(B)は熱サイクル装置1の蓋50を開けた状態であり、装着部11にバイオチップ100が装着された状態を表す。図2は、実施形態に係る熱サイクル装置1における本体10の分解斜視図である。図4(A)は、実施形態に係る熱サイクル装置1における本体10の、図1(A)のA−A線における断面を模式的に示す断面図である。
【0028】
実施形態に係る熱サイクル装置1は、図1(A)に示すように、本体10及び駆動機構20を含む。図2に示すように、本体10は、装着部11、第1加熱部12(加熱部に相当)及び第2加熱部13を含む。第1加熱部12と第2加熱部13との間にはスペーサー14が設けられている。本実施形態の本体10においては、第1加熱部12が底板17の側、第2加熱部13が蓋50の側に配置されている。本実施形態の本体10においては、第1加熱部12、第2加熱部13、及びスペーサー14はフランジ16、底板17及び固定板19に固定されている。
【0029】
装着部11は、後述するバイオチップ100を装着する構造である。図1(B)および図2に示すように、本実施形態の装着部11は、バイオチップ100を差し込んで装着するスロット構造であり、第1加熱部12(加熱部)の第1ヒートブロック12b、スペーサー14、及び第2加熱部13の第2ヒートブロック13bを貫通する穴にバイオチップ100を差し込む構造となっている。装着部11の数は複数であってもよく、図1(B)の例では、20個の装着部11が本体10に設けられている。
【0030】
本実施形態の熱サイクル装置1は、バイオチップ100を第1加熱部12及び第2加熱部13に対して所定の位置に保持する構造を含むことが好ましい。これにより、第1加熱部12及び第2加熱部13によってバイオチップ100の所定の領域を加熱できる。より具体的には、図4に示すように、後述するバイオチップ100を構成する流路110の、第1領域111を第1加熱部12によって、第2領域112を第2加熱部13によって、加熱できる。本実施形態においてはバイオチップ100の位置を定める構造は底板17であり、図4(A)に示すように、バイオチップ100を底板17に接触する位置まで差し込むことで、第1加熱部12及び第2加熱部13に対してバイオチップ100を所定の位置に保持できる。
【0031】
第1加熱部12は、装着部11にバイオチップ100を装着した場合に、後述するバイオチップ100の第1領域111を第1の温度に加熱する。図4(A)に示す例では、第1加熱部12は本体10において、バイオチップ100の第1領域111を加熱する位置に配置されている。
【0032】
第1加熱部12は、熱を発生させる機構と、発生した熱をバイオチップ100に伝える部材とを含んでもよい。図2に示す例では、第1加熱部12は第1ヒーター12a及び第1ヒートブロック12bを含む。本実施形態においては、第1ヒーター12aはカートリッジヒーターであり、導線15によって図示しない外部電源に接続されている。第1ヒーター12aは第1ヒートブロック12bに挿入されており、第1ヒーター12aが発熱することで第1ヒートブロック12bが加熱される。第1ヒートブロック12bは、第1ヒーター12aから発生した熱をバイオチップ100に伝える部材である。本実施形態においてはアルミニウム製のブロックである。
【0033】
カートリッジヒーターは温度制御が容易であるので、第1ヒーター12aをカートリッジヒーターとすることで、第1加熱部12の温度を容易に安定させることができる。したがって、より正確な熱サイクルを実現できる。アルミニウムは熱伝導率が高いので、第1ヒートブロック12bをアルミニウム製とすることで、バイオチップ100を効率よく加熱できる。また、第1ヒートブロック12bに加熱ムラが生じにくいので、精度の高い熱サイクルを実現できる。また、加工が容易なので第1ヒートブロック12bを精度よく成型でき、加熱の精度を高めることができる。したがって、より正確な熱サイクルを実現できる。
【0034】
第1加熱部12は、装着部11にバイオチップ100を装着した場合に、バイオチップ100に接触していることが好ましい。これにより、第1加熱部12によってバイオチップ100を加熱した場合に、第1加熱部12の熱をバイオチップ100に安定して伝えることができるので、バイオチップ100の温度を安定させることができる。本実施形態のように、装着部11が第1加熱部12の一部として形成されている場合には、装着部11がバイオチップ100と接触することが好ましい。これにより、第1加熱部12の熱をバイオチップ100に安定して伝えることができるのでバイオチップ100を効率よく加熱できる。
【0035】
第2加熱部13は、装着部11にバイオチップ100を装着した場合に、バイオチップ100の第2領域112を、第1の温度とは異なる第2の温度に加熱する。図4(A)に示す例では、第2加熱部13は本体10において、バイオチップ100の第2領域112を加熱する位置に配置されている。図2に示すように、第2加熱部13は、第2ヒーター13b及び第2ヒートブロック13bを含む。第2加熱部13は、加熱するバイオチップ100の領域及び加熱する温度が第1加熱部12と異なる以外は、第1加熱部12と同様である。
【0036】
本実施形態においては、第1加熱部12及び第2加熱部13の温度は、図示しない温度センサー及び後述する制御部によって制御される。第1加熱部12及び第2加熱部13の温度は、バイオチップ100が所望の温度に加熱されるように設定されることが好ましい。本実施形態においては、第1加熱部12を第1の温度に、第2加熱部13を第2の温度に制御することで、バイオチップ100の第1領域111を第1の温度に、第2領域112を第2の温度に加熱できる。本実施形態における温度センサーは熱電対である。
【0037】
駆動機構20は、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13を駆動する機構である。本実施形態においては、駆動機構20は図示しないモーター及び駆動軸を含み、駆動軸と本体10のフランジ16とが接続されている。本実施形態における駆動軸は、装着部11の長手方向に対して垂直に設けられており、モーターを動作させると駆動軸を回転の軸として本体10が回転される。
【0038】
本実施形態の熱サイクル装置1は、図示しない制御部を含む。制御部は、後述する第1の温度、第2の温度、第1の時間、第2の時間、及び熱サイクルのサイクル数のうち、少なくとも1つを制御する。制御部が第1の時間または第2の時間を制御する場合には、制御部は駆動機構20の動作を制御することによって、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13が所定の配置に保持される時間を制御する。制御部は、制御する項目ごとに異なる機構を設けても、全項目を一括して制御するものであってもよい。
【0039】
本実施形態の熱サイクル装置1における制御部は電子制御であり、上記項目を全て制御する。本実施形態の制御部は図示しないCPU等のプロセッサー、及び、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置を含む。記憶装置には上記各項目を制御するための各種プログラム、データ等が記憶されている。また、記憶装置は各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを有する。
【0040】
本実施形態の本体10は、図2及び図4(A)の例に示すように、第1加熱部12と第2加熱部13との間にスペーサー14が設けられている。本実施形態のスペーサー14は、第1加熱部12または第2加熱部13を保持する部材である。スペーサー14を設けることにより、第1加熱部12と第2加熱部13との間の距離を、より正確に定めることができる。すなわち、後述するバイオチップ100の第1領域111及び第2領域112に対する第1加熱部12及び第2加熱部13の位置を、より正確に定めることができる。
【0041】
スペーサー14の材質は必要に応じて適宜選択できるが、断熱材であることが好ましい。これにより、第1加熱部12及び第2加熱部13の熱が相互に及ぼす影響を少なくできるので、第1加熱部12及び第2加熱部13の温度制御が容易になる。スペーサー14が断熱材である場合には、装着部11にバイオチップ100を装着した場合に、第1加熱部12と第2加熱部13との間の領域においてバイオチップ100を囲むようにスペーサー14が配置されることが好ましい。これにより、バイオチップ100の第1加熱部12と第2加熱部13との間の領域からの放熱を抑制できるので、バイオチップ100の温度がより安定する。本実施形態においては、スペーサー14は断熱材であり、図4(A)の例においては、装着部11はスペーサー14を貫通している。これにより、第1加熱部12及び第2加熱部13によってバイオチップ100を加熱した場合に、バイオチップ100の熱が逃げにくくなるので、第1領域111及び第2領域112の温度をより安定させることができる。
【0042】
本実施形態の本体10は、固定板19を含む。固定板19は、装着部11、第1加熱部12及び第2加熱部13を保持する部材である。図1(B)及び図2に示す例においては、2枚の固定板19がフランジ16に嵌め合わされており、第1加熱部12、第2加熱部13及び底板17が固定されている。固定板19によって本体10の構造がより強固になるので、本体10が破損しにくくなる。
【0043】
本実施形態の熱サイクル装置1は、蓋50を含む。図1(A)及び図4(A)の例では、装着部11は蓋50によって覆われている。蓋50によって装着部11を覆うことで、第1加熱部12によって加熱をした場合に、本体10から外部への放熱を抑制できるので、本体10内の温度を安定させることができる。蓋50は、固定部51によって本体10に固定されてもよい。本実施形態においては、固定部51は磁石である。図1(B)及び図2の例に示すように、本体10の蓋50の接触する面には磁石が設けられている。図1(B)及び図2には示されていないが、蓋50にも、本体10の磁石が接触する位置に磁石が設けられており、蓋50で装着部11を覆うと、磁力によって蓋50が本体10に固定される。これにより、駆動機構20によって本体10を駆動した場合に蓋50が外れたり動いたりすることを防止できる。したがって、蓋50が外れることで熱サイクル装置1内の温度が変化することを防止できるので、より正確な熱サイクルを後述する反応液140に施すことができる。
【0044】
本体10は、気密性の高い構造であることが好ましい。本体10が気密性の高い構造であると、本体10内部の空気が本体10の外部に逃げにくいので、本体10内の温度がより安定する。本実施形態においては、図2に示すように、2個のフランジ16、底板17、2枚の固定板19、及び蓋50によって、本体10内部の空間が密閉される。
【0045】
固定板19、底板17、蓋50、フランジ16は断熱材を用いて形成されることが好ましい。これにより、本体10から外部への放熱をさらに抑制できるので、本体10内の温度をより安定させることができる。
【0046】
1−2.実施形態における熱サイクル装置を用いた熱サイクル処理
図3は、実施形態に係るバイオチップ100の断面図である。図4(A)及び図4(B)は、実施形態に係る熱サイクル装置1の、図1(A)のA−A線における断面を模式的に示す断面図である。図4(A)及び図4(B)は、熱サイクル装置1にバイオチップ100が装着された状態を示す。図4(A)は第1の配置、図4(B)は第2の配置を示す。図5は、実施形態における熱サイクル装置1を用いた熱サイクル処理の手順を表すフローチャートである。以下では、まず、実施形態に係るバイオチップ100について説明し、次に、バイオチップ100を用いた場合の、実施形態に係る熱サイクル装置1を用いた熱サイクル処理について説明する。
【0047】
図3の例に示すように、実施形態に係るバイオチップ100は流路110及び封止部120を含む。流路110には、反応液140と、反応液140よりも比重が小さく、かつ、反応液140とは混和しない液体(以下、「液体」という)130とが充填され、封止部120によって封止されている。
【0048】
流路110は、対向する内壁に近接して反応液140が移動するように形成されている。ここで、流路110の「対向する内壁」とは、流路110の壁面の、向かい合う位置関係にある2つの領域を意味する。「近接」とは、反応液140と流路110の壁面との距離が近いことを意味し、反応液140が流路110の壁面に接触する場合を含む。したがって、「対向する内壁に近接して反応液140が移動する」とは、「流路110の壁面の、向かい合う位置関係にある2つの領域の両方に対して距離が近い状態で、反応液140が移動する」こと、すなわち、対向する内壁に沿って反応液140が移動することを意味する。換言すると、流路110の対向する2つ内壁間の距離は、反応液140が該内壁に近接して移動する程度の距離である。
【0049】
バイオチップ100の流路110がこのような形状であると、流路110内を反応液140が移動する方向を規制できるので、後述する流路110の第1領域111と、第1領域111とは異なる第2領域112との間を反応液140が移動する経路をある程度規定できる。これにより、反応液140が第1領域111と第2領域112との間を移動する所要時間を、ある程度の範囲に制限できる。したがって、「近接」の程度は、第1領域111と、第2領域112との間を反応液140が移動する時間の変動が、両領域における反応液140の加熱時間に影響を与えない程度、すなわち、反応の結果に影響を与えない程度であることが好ましい。より具体的には、対向する内壁間の反応液140が移動する方向に対して垂直な方向における距離が、反応液140の液滴が2つ以上入らない程度であることが望ましい。
【0050】
図3の例では、バイオチップ100の外形は円柱状であり、中心軸方向(図3における上下方向)に流路110が形成されている。流路110の形状は、流路110の長手方向に対して垂直な方向の断面、すなわち流路110のある領域における反応液140が移動する方向に対して垂直な断面(これを流路110の「断面」とする)が円形の筒状である。したがって、本実施形態のバイオチップ100においては、流路110の対向する内壁は、流路110の断面の直径を構成する流路110の壁面上の2点を含む領域であり、対向する内壁に沿って反応液140が流路110の長手方向に移動する。
【0051】
バイオチップ100の第1領域111は、第1加熱部12によって第1の温度に加熱される、流路110の一部の領域である。第2領域112は、第2加熱部13によって第2の温度に加熱される、第1領域111とは異なる流路110の一部の領域である。本実施形態のバイオチップ100においては、第1領域111は、流路110の長手方向における一方の端部を含む領域であり、第2領域112は、流路110の長手方向における他方の端部を含む領域である。図4(A)及び図4(B)に示す例では、流路110の封止部120側の端部を含む点線で囲まれた領域が第2領域112であり、封止部120から遠い側の端部を含む点線で囲まれた領域が第1領域111である。
【0052】
流路110には、液体130と、反応液140とが充填されている。液体130は、反応液140とは混和しない、すなわち混ざり合わない性質であるため、図3に示すように、反応液140は液体130の中に液滴の状態で保持されている。反応液140は、液体130よりも比重が大きいため、流路110の重力方向における最下部の領域に位置している。液体130としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル又はパラフィンオイルを使用できる。反応液140は、反応に必要な成分を含む液体である。反応がPCRである場合には、PCRによって増幅されるDNA(標的核酸)、DNAを増幅するために必要なDNAポリメラーゼ、並びにプライマー等が含まれる。例えば、液体130としてオイルを用いてPCRを行う場合には、反応液140は上記の成分を含む水溶液であることが好ましい。
【0053】
以下、図4(A)、図4(B)、及び図5を参照しながら、実施形態に係る熱サイクル装置1を用いた熱サイクル処理を説明する。図4(A)及び図4(B)においては、矢印gの方向(図における下方向)が重力の作用する方向である。本実施形態においては、熱サイクル処理の例としてシャトルPCR(2段階温度PCR)を行う場合を説明する。なお、以下に説明する各工程は熱サイクル処理の一例を示すものである。必要に応じて工程の順序を入れ替えたり、2以上の工程を連続的にあるいは並行して行ったり、工程を追加したりしてもよい。
【0054】
シャトルPCRは、高温と低温の2段階の温度処理を繰り返し反応液に施すことにより、反応液中の核酸を増幅させる手法である。高温の処理においては2本鎖DNAの解離が、低温の処理においてはアニーリング(プライマーが1本鎖DNAに結合する反応)及び伸長反応(プライマーを始点としてDNAの相補鎖が形成される反応)が行われる。
【0055】
一般に、シャトルPCRにおける高温は80℃から100℃の間の温度、低温は50℃から70℃の間の温度である。各温度における処理は所定時間行われ、高温に保持する時間は低温に保持する時間よりも短いことが一般的である。例えば、高温が1秒から10秒程度、低温が10秒から60秒程度としてもよく、反応の条件によってはこれよりも長い時間であってもよい。
【0056】
なお、使用する試薬の種類や量によって、適切な時間、温度およびサイクル数(高温と低温を繰り返す回数)は異なるので、試薬の種類や反応液140の量を考慮して適切なプロトコルを決定した上で反応を行うことが好ましい。
【0057】
まず、本実施形態に係るバイオチップ100を、装着部11に装着する(ステップS101)。本実施形態では、液体130が充填された流路110に反応液140を導入後、封止部120によって封止されたバイオチップ100を装着部11に装着する。反応液140の導入は、マイクロピペットやインクジェット方式の分注装置等を用いて行うことができる。装着部11にバイオチップ100を装着した状態においては、第1加熱部12は第1領域111を、第2加熱部13は第2領域112を、それぞれ含む位置においてバイオチップ100に接している。本実施形態においては、図4(A)に示すようにバイオチップ100を底板17に接触するように装着することで、第1加熱部12及び第2加熱部13に対してバイオチップ100を所定の位置に保持できる。
【0058】
本実施形態においては、ステップS101における装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13、の配置は第1の配置である。図4(A)に示すように、第1の配置は、バイオチップ100の第1領域111を、重力の作用する方向における流路110の最下部に位置させる配置である。したがって、第1領域111は、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13が所定の配置にある場合に、重力の作用する方向における流路110の最下部に位置する流路110の一部の領域である。第1の配置においては、重力の作用する方向における流路110の最下部に第1領域111が位置しているので、液体130よりも比重の大きい反応液140は、第1領域111に位置している。本実施形態においては、装着部11にバイオチップ100を装着したら、蓋50によって装着部11を覆い、熱サイクル装置1を作動させる。本実施形態においては、熱サイクル装置1を作動させると、ステップS102及びステップS103が開始される。
【0059】
ステップS102では、第1加熱部12及び第2加熱部13によりバイオチップ100を加熱する。第1加熱部12と第2加熱部13とは、バイオチップ100の異なる領域を異なる温度に加熱する。すなわち、第1加熱部12は第1領域111を第1の温度に加熱し、第2加熱部13は第2領域112を第2の温度に加熱する。これにより、流路110の第1領域111と第2領域112との間には、第1の温度と第2の温度との間で温度が漸次変化する温度勾配が形成される。本実施形態においては、第1の温度は、熱サイクル処理において目的とする反応に適した温度のうち相対的に高い温度であり、第2の温度は、熱サイクル処理において目的とする反応に適した温度のうち、相対的に低い温度である。したがって本実施形態のステップS102においては、第1領域111から第2領域112へ向けて温度が低くなる温度勾配が形成される。本実施形態の熱サイクル処理はシャトルPCRであるので、第1の温度は2本鎖DNAの解離に適した温度、第2の温度はアニーリング及び伸長反応に適した温度とすることが好ましい。
【0060】
ステップS102における、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置は第1の配置であるので、ステップS102においてバイオチップ100を加熱すると、反応液140は第1の温度に加熱される。したがって、ステップS102においては、反応液140に対して第1の温度における反応が行われる。
【0061】
ステップS103では、第1の配置において、第1の時間が経過したか否かを判定する。本実施形態においては、判定は図示しない制御部によって行われる。第1の時間は、第1の配置に装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13を保持する時間である。本実施形態において、ステップS101での装着に続いてステップS103が行われる場合、すなわち1回目のステップS103が行われる場合には、熱サイクル装置1を作動させてからの時間が第1の時間に達したか否かが判定される。第1の配置においては、反応液140は第1の温度に加熱されるので、第1の時間は、目的とする反応において反応液140を第1の温度で反応させる時間とすることが好ましい。本実施形態においては、2本鎖DNAの解離に必要な時間とすることが好ましい。
【0062】
ステップS103において、第1の時間が経過したと判定した場合(yes)は、ステップS104へ進む。第1の時間が経過していないと判定した場合(no)は、ステップS103が繰り返される。
【0063】
ステップS104では、駆動機構20によって本体10を駆動し、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を第1の配置から第2の配置へ切換える。第2の配置は、第2領域112を重力の作用する方向において流路110の最下部に位置させる配置である。換言すると、第2領域112は、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13が、第1の配置とは異なる所定の配置にある場合に、重力の作用する方向における流路110の最下部に位置する領域である。
【0064】
本実施形態のステップS104では、図4(A)の状態から、図4(B)の状態へと装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を切換える。本実施形態の熱サイクル装置1においては、制御部の制御によって駆動機構20が本体10を回転駆動する。駆動軸を回転の軸として、モーターによってフランジ16を回転駆動すると、フランジ16に固定されている装着部11、第1加熱部12及び第2加熱部13が回転される。駆動軸は装着部11の長手方向に対して垂直な方向の軸であるので、モーターの動作によって駆動軸が回転すると、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13が回転される。図4(A)及び図4(B)に示す例では、本体10を180°回転させる。これにより、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置が第1の配置から第2の配置へ切換えられる。
【0065】
ステップS104においては、第1領域111と第2領域112との重力の作用する方向における位置関係が第1の配置とは逆になるので、反応液140は重力の作用によって第1領域111から第2領域112へと移動する。装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置が第2の配置に達した場合に、制御部が駆動機構20の動作を停止すると、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置が第2の配置に保持される。装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置が第2の配置に達したら、ステップS105が開始される。
【0066】
ステップS105では、第2の配置において、第2の時間が経過したか否かを判定する。第2の時間は、第2の配置に装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13を保持する時間である。本実施形態においては、第2領域112はステップS102において第2の温度に加熱されているので、本実施形態のステップS105においては、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置が第2の配置に達してからの時間が第2の時間に達したか否かが判定される。第2の配置においては、反応液140は第2領域112に保持されるので、本体10が第2の配置に保持されている時間、反応液140は第2の温度に加熱される。したがって、第2の時間は、目的とする反応において、反応液140を第2の温度に加熱する時間とすることが好ましい。本実施形態においては、アニーリングと伸長反応に必要な時間とすることが好ましい。
【0067】
ステップS105において、第2の時間が経過したと判定した場合(yes)は、ステップS106へ進む。第2の時間が経過していないと判定した場合(no)は、ステップS105が繰り返される。
【0068】
ステップS106では、熱サイクルの回数が所定のサイクル数に達したか否かを判定する。具体的には、ステップS103からステップS105までの手順が、所定回数完了したか否かを判定する。本実施形態においては、ステップS103及びステップS105が完了した回数は、「yes」と判定された回数で判定される。ステップS103からステップS105までが1回行われると、反応液140に熱サイクルが1サイクル施されるので、ステップS103からステップS105が行われた回数を、熱サイクルのサイクル数とすることができる。したがって、ステップS106により、目的とする反応に必要な回数の熱サイクルが施されたか否かを判定できる。
【0069】
ステップS106において、熱サイクルが予定のサイクル数行われた(yes)と判定した場合には、処理を完了する(END)。熱サイクルが予定のサイクル数行われていない(no)と判定した場合には、ステップS107へ移行する。
【0070】
ステップS107では、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を、第2の配置から第1の配置へ切換える。駆動機構20によって本体10を駆動することで、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を第1の配置とすることができる。装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置が第1の配置に達したら、ステップS103が開始される。
【0071】
ステップS107に続いてステップS103が行われる場合、すなわち2回目以降のステップS103においては、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置が第1の配置に達してからの時間が第1の時間に達したか否かが判定される。
【0072】
駆動機構20によって装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13を回転させる方向は、ステップS104における回転と、ステップS107における回転とで、反対方向であることが好ましい。これにより、回転によって導線15などの配線に生じた捩れを解消できるので、配線の劣化を抑制できる。回転の方向は、駆動機構20による1回の動作毎に反転させることが好ましい。これにより、同方向への回転を複数回連続して行う場合と比較して、配線が捩れる程度を軽減できる。
【0073】
1−3.実施形態に係る熱サイクル装置及び熱サイクル処理の効果
本実施形態に係る熱サイクル装置及び熱サイクル方法によれば、以下の効果を得ることができる。
【0074】
(1)本実施形態の熱サイクル装置1は第1加熱部12及び第2加熱部13を含むので、第1の配置においては第1の温度に、第2の配置においては第2の温度に、反応液140を加熱する。駆動機構20によって装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を切換えることで、重力の作用によって反応液140を移動させて加熱する温度を切換える。第1の配置及び第2の配置においてバイオチップ100を保持する時間の長さが反応液140を加熱する時間に相当する。したがって、熱サイクル処理において反応液140を加熱する時間を容易に制御できる。
【0075】
(2)本実施形態の熱サイクル装置1は、第1の時間が経過した場合に第1の配置から第2の配置へ、第2の時間が経過した場合に第2の配置から第1の配置へ、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を切換える。これにより、反応液140は第1の温度に第1の時間、第2の温度に第2の時間加熱されるので、反応液140を加熱する時間をより正確に制御できる。したがって、より正確な熱サイクルを反応液140に施すことができる。
【0076】
2.変形例
以下、実施形態に基づいて変形例について説明する。図6は、変形例に係る熱サイクル装置2の斜視図である。図6(A)は蓋50を閉じた状態、図6(B)は蓋50を開けた状態を示す。図7は、変形例4に係るバイオチップ100aの断面図である。図8は、変形例に係る熱サイクル装置2の本体10aの、図6(A)のB−B線における断面を模式的に示す断面図である。以下の変形例は、相互に矛盾しない構成である限り任意の組み合わせが可能であり、図6(A)、図6(B)並びに図8に示す熱サイクル装置2は、変形例1、4、16、17の構成を組み合わせた例である。該当する変形例については、図6ないし図8を参照して説明する。以下においては実施形態とは異なる構成について詳述し、実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
(変形例1)
実施形態においては、熱サイクル装置1が検出装置を含まない例を示したが、図6(A)及び図6(B)に示すように、本変形例に係る熱サイクル装置2は蛍光検出器40を含んでもよい。これにより、例えばリアルタイムPCRのような蛍光検出を伴う用途に熱サイクル装置2を使用できる。蛍光検出器40の数は検出が問題なく行える限り任意である。本変形例においては、1個の蛍光検出器40をスライド22に沿って移動させて蛍光検出を行う。蛍光検出を行う場合には、本体10aの第2加熱部13側に測定窓18(図8参照)を設けることが好ましい。これにより、蛍光検出器40と、反応液140との間に存在する部材を少なくすることができるので、より適切な蛍光測定ができる。
【0078】
本変形例においては、図6(A)、図6(B)並びに図8に示す熱サイクル装置2においては、蓋50の側に第1加熱部12が設けられ、蓋50から遠い側に第2加熱部13が設けられている。すなわち、第1加熱部12及び第2加熱部13と、本体10に含まれる他の部材との位置関係が熱サイクル装置1とは異なっている。位置関係が異なる以外は、第1加熱部12及び第2加熱部13の機能は第1実施形態と同様である。本変形例においては、図8に示すように、第2加熱部13に測定窓18が設けられている。これにより、低温側(アニーリング及び伸長反応を行う温度)で蛍光測定を行うリアルタイムPCRにおいて適切な蛍光測定ができる。蓋50の側から蛍光測定を行う場合には、封止部120や蓋50が測定に影響を与えない設計とすることが好ましい。
【0079】
(変形例2)
実施形態においては、第1の温度及び第2の温度は熱サイクル処理の開始から終了まで一定としたが、第1の温度及び第2の温度のうち少なくとも一方を処理の途中で変更してもよい。第1の温度及び第2の温度は、制御部の制御によって変更できる。第1加熱部12および装着部11の配置を切換えて反応液140を移動させることで、変更された温度に反応液140を加熱できる。したがって、加熱部の数を増やしたり、装置の構造を複雑にしたりすることなく、例えば逆転写PCR(RT−PCR、反応の概要は実施例にて説明する)のような、2種類以上の温度の組み合わせを必要とする反応を行うことができる。
【0080】
(変形例3)
実施形態においては、装着部11がスロット構造である例を示したが、装着部11はバイオチップ100を保持できる構造であればよい。例えば、バイオチップ100の形状に合わせた窪みにバイオチップ100をはめ込む構造や、バイオチップ100を挟んで保持する構造を採用してもよい。
【0081】
(変形例4)
実施形態においては、バイオチップ100の位置を定める構造は底板17であったが、位置を定める構造は所望の位置にバイオチップ100を保持できるものであればよい。位置を定める構造は、熱サイクル装置1に設けられた構造であっても、バイオチップ100に設けられた構造であっても、両方の組み合わせであってもよい。例えば、螺子、差込式の棒、バイオチップ100に突出部を設けた構造、装着部11とバイオチップ100とが勘合する構造を採用できる。螺子や棒を用いる場合には、螺子の長さやねじ込む長さ、棒を差込む位置を変更することで、熱サイクルの反応条件やバイオチップ100の大きさ等に合わせて保持する位置を調節できるようにしてもよい。
【0082】
バイオチップ100と装着部11とが勘合する構造は、例えば図6、図7、図8に示すように、バイオチップ100に設けた突出部113を、装着部11に設けた凹部60にはめ込む構造が採用できる。これにより、第1加熱部12または第2加熱部13に対するバイオチップ100の向きを一定に保つことができる。したがって、熱サイクルの途中でバイオチップ100の向きが変化することを抑制できるので、加熱をより精密に制御できる。従って、より正確な熱サイクルを反応液に施すことができる。
【0083】
(変形例5)
実施形態においては、第1加熱部12と第2加熱部13とがともにカートリッジヒーターである例を示したが、第1加熱部12は第1領域111を第1の温度に加熱できるものであればよい。第2加熱部13は第2領域112を第2の温度に加熱できるものであればよい。例えば、第1加熱部12及び第2加熱部13としては、カーボンヒーター、シートヒーター、IH(電磁誘導加熱)、ペルチェ素子、加熱液体、加熱気体を使用できる。また、第1加熱部12と第2加熱部13とで異なる加熱機構を採用してもよい。
【0084】
(変形例6)
実施形態においては、バイオチップ100を第1加熱部12と第2加熱部13によって加熱する例を示したが、第2加熱部13の代わりに第2領域112を冷却する冷却部を設けてもよい。冷却部としては、例えばペルチェ素子を使用できる。これにより、例えば、バイオチップ100の第1領域111からの熱によって第2領域112の温度が低下しにくい場合にも、流路110に所望の温度勾配を形成できる。また、例えば、加熱と冷却を繰り返す熱サイクルを反応液140に施すことができる。
【0085】
(変形例7)
実施形態においては、第1ヒートブロック12b及び第2ヒートブロック13bの材質がアルミニウムである例を示したが、ヒートブロックの材質は熱伝導率、保温性、加工しやすさ等の条件を考慮して選択できる。例えば銅合金を使用してもよく、複数の材質を組み合わせてもよい。また、第1ヒートブロック12bと第2ヒートブロック13bとが異なる材質であってもよい。
【0086】
(変形例8)
実施形態に例示したように、装着部11が第1加熱部12の一部として形成されている場合には、装着部11をバイオチップ100に密着させる機構を設けてもよい。密着させる機構は、バイオチップ100の少なくとも一部を装着部11に密着させることができればよい。例えば、本体10や蓋50に設けたバネによってバイオチップ100を装着部11の一方の壁面に押し付けてもよい。これにより、第1加熱部12の熱をバイオチップ100にさらに安定して伝えることができるので、バイオチップ100の温度をさらに安定させることができる。
【0087】
(変形例9)
実施形態においては、第1加熱部12及び第2加熱部13の温度が、バイオチップ100を加熱する温度と実質的に等しくなるよう制御される例を示したが、第1加熱部12及び第2加熱部13の温度制御は、実施形態に限定されない。第1加熱部12及び第2加熱部13の温度は、バイオチップ100の第1領域111及び第2領域112が所望の温度に加熱されるように制御されていればよい。例えば、バイオチップ100の材質や大きさを考慮することで、第1領域111及び第2領域112の温度をより正確に所望の温度に加熱できる。
【0088】
(変形例10)
実施形態においては、駆動機構20がモーターである例を示したが、駆動機構20は装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13を駆動できる機構であればよい。駆動機構20が装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13を回転させる機構である場合、駆動機構20は遠心力によって液体130の温度勾配が乱されない程度の回転速度に制御可能であることが好ましい。また、配線に生じた捩れを解消するために、回転の方向を反転させることができるものであることが好ましい。このような機構としては、例えばハンドル、ぜんまい等を採用できる。
【0089】
(変形例11)
実施形態においては、装着部11が第1加熱部12の一部である例を示したが、駆動機構20を動作させた場合に両者の位置関係が変化しない限り、装着部11と第1加熱部12とは別の部材であってもよい。装着部11と第1加熱部12とが別の部材である場合には、両者が直接または他の部材を介して固定されていることが好ましい。また、装着部11と第1加熱部12とは同一の機構によって駆動されても、別個の機構によって駆動されてもよいが、両者の位置関係を一定に保つように動作することが好ましい。これにより、駆動機構20を動作させた場合に装着部11と第1加熱部12との位置関係を一定に維持できるので、バイオチップ100の所定の領域を所定の温度に加熱できる。なお、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13を駆動する機構が別個の機構である場合には、両者を合わせて駆動機構20とする。
【0090】
(変形例12)
実施形態においては、温度センサーが熱電対である例を示したが、例えば測温抵抗体やサーミスタを使用してもよい。
【0091】
(変形例13)
実施形態においては、固定部51が磁石である例を示したが、固定部51は蓋50と本体10を固定できるものであればよい。例えば、蝶番やキャッチクリップを採用してもよい。
【0092】
(変形例14)
実施形態においては、駆動軸の方向は装着部11の長手方向に対して垂直であるとしたが、駆動軸の方向は、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えることができる限り任意である。駆動機構20が装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13を回転駆動する機構である場合、装着部11の長手方向に対して非平行な直線を回転の軸とすることで、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を切換えることができる。
【0093】
(変形例15)
実施形態においては、制御部は電子制御である例を示したが、第1の時間または第2の時間を制御する制御部(時間制御部)は、第1の時間または第2の時間を制御できるものであればよい。すなわち、駆動機構20の動作または停止のタイミングを制御できるものであればよい。また、熱サイクルのサイクル数を制御する制御部(サイクル数制御部)は、サイクル数を制御できるものであればよい。時間制御部およびサイクル数制御部としては、例えば、物理的な機構や電子制御機構、及びこれらの組み合わせを採用できる。
【0094】
(変形例16)
熱サイクル装置は、図6(A)及び図6(B)に例示するように、設定部25を含んでもよい。設定部25はUI(ユーザーインターフェイス)であり、熱サイクルの条件を設定する機器である。設定部25を操作することにより、第1の温度、第2の温度、第1の時間、第2の時間、及び熱サイクルのサイクル数のうち、少なくとも1つを設定できる。設定部25は制御部と機械的または電子的に連動しており、設定部25での設定が制御部の制御に反映される。これにより、反応の条件を変更できるので、所望の熱サイクルを反応液140に施すことができる。設定部25は、上記のいずれかの項目を個別に設定できるものであっても、例えば事前に登録した複数の反応条件の中から1つを選択すると、必要な項目が自動的に設定されるものであってもよい。図6の例では設定部25はボタン式であり、項目別にボタンを押すことで反応条件を設定できる。
【0095】
(変形例17)
熱サイクル装置は、図6(A)及び図6(B)に例示するように表示部24を含んでもよい。表示部24は表示装置であり、熱サイクル装置に関する各種情報を表示する。表示部24は、設定部25で設定される条件や熱サイクル処理中の実際の時間や温度を表示してもよい。例えば、設定を行う場合には入力された条件を表示したり、熱サイクル処理中には温度センサーによって測定された温度、第1の配置または第2の配置において経過した時間、熱サイクルを施したサイクル数を表示したりしてもよい。また、熱サイクル処理が終了した場合や、装置に何らかの異常が発生した場合にも、その旨を表示してもよい。さらに、音声による通知を行ってもよい。表示や音声による通知を行うことで、熱サイクル処理の進行や終了を装置の使用者が容易に把握できる。
【0096】
(変形例18)
実施形態においては、流路110の断面が円形のバイオチップ100を例示したが、流路110の形状は、対向する内壁に近接して反応液140が移動できる限り任意である。すなわち、反応液が第1領域111と第2領域112との間を移動する時間の変動が、両領域における反応液140の加熱時間に影響を与えない限り任意である。なお、バイオチップ100の流路110の断面が多角形の場合には、「対向する内壁」は、流路110に内接する断面が円形の流路を仮定した場合に、該流路の対向する内壁であるものとする。すなわち、流路110に内接する、断面が円形の仮想流路の対向する内壁に近接して反応液140が移動するように流路110が形成されていればよい。これにより、流路110の断面が多角形の場合にも、第1領域111と第2領域112との間を反応液140が移動する経路を、ある程度規定できる。したがって、反応液140が第1領域111と第2領域112との間を移動する所要時間を、ある程度の範囲に制限できる。
【0097】
(変形例19)
実施形態においては、液体130は反応液140よりも比重が小さい液体であるとしたが、液体130は、反応液140とは混和せず、かつ、反応液140と比重が異なる液体であればよい。例えば、反応液140とは混和せず、かつ、反応液140よりも比重が大きい液体を採用してもよい。液体130が反応液140よりも比重が大きい場合には、反応液140は重力方向における流路110の最上部に位置する。
【0098】
(変形例20)
実施形態においては、ステップS104における回転の方向と、ステップS107における回転の方向を反対方向としたが、同じ方向への回転を複数回行った後に、反対方向へ同じ回数回転させてもよい。これにより、配線に生じた捩れを解消できるので、反対方向への回転を行わない場合と比較して、配線の劣化を抑制できる。
【0099】
(変形例21)
実施形態における熱サイクル装置1は、第1加熱部12及び第2加熱部13を含んだが、第2加熱部13は無くてもよい。すなわち、加熱部は第1加熱部12のみであってもよい。これにより、使用する部材の数を減らすことができるので、製造コストを削減できる。
【0100】
本変形例においては、第1加熱部12によってバイオチップ100の第1領域111を加熱することにより、第1領域111から距離が離れるにつれて温度が低くなるバイオチップ100に温度勾配が形成される。第2領域112は、第1領域111とは異なる領域であるので、第1領域111よりも低い第2の温度に維持される。本変形例においては、第2の温度は、例えばバイオチップ100の設計や液体130の性質、第1加熱部12の温度の設定等によって制御される。
【0101】
本変形例においては、駆動機構20によって装着部11および第1加熱部12の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えることで、反応液140を第1領域111と第2領域112との間で移動させることができる。第1領域111と第2領域112とは異なる温度に維持されているので、反応液140に熱サイクルを施すことができる。
【0102】
第2加熱部13が無い場合には、スペーサー14は第1加熱部12を保持する。これにより、本体10における第1加熱部12の位置をより正確に定めることができるので、第1領域111をより確実に加熱できる。スペーサー14が断熱材である場合には、第1加熱部12によって加熱される領域以外のバイオチップ100の領域を囲むようにスペーサー14を配置することで、第1領域111及び第2領域112の温度をより安定させることができる。
【0103】
本変形例の熱サイクル装置は、本体10の温度を一定に保つ機構を有してもよい。これにより、バイオチップ100の第2領域112の温度がより安定するので、より正確な熱サイクルを反応液140に施すことができる。本体10を保温する機構としては、例えば恒温槽が使用できる。
【0104】
(変形例22)
実施形態においては、熱サイクル装置1が蓋50を含む例を示したが、蓋50は無くてもよい。これにより、使用する部材の数を減らすことができるので、製造コストを削減できる。
【0105】
(変形例23)
実施形態においては、熱サイクル装置1がスペーサー14を含む例を示したが、スペーサー14は無くてもよい。これにより、使用する部材の数を減らすことができるので、製造コストを削減できる。
【0106】
(変形例24)
実施形態においては、熱サイクル装置1が底板17を含む例を示したが、図8に示すように、底板17は無くてもよい。これにより、使用する部材の数を減らすことができるので、製造コストを削減できる。
【0107】
(変形例25)
実施形態においては、熱サイクル装置1が固定板19を含む例を示したが、固定板19は無くてもよい。これにより、使用する部材の数を減らすことができるので、製造コストを削減できる。
【0108】
(変形例26)
実施形態においては、スペーサー14と固定板19が別個の部材である例を示したが、図8に示すように、スペーサー14と固定板19と一体に形成されていてもよい。また、底板17とスペーサー14、あるいは底板17と固定板19とが一体に形成されていてもよい。
【0109】
(変形例27)
スペーサー14及び固定板19は、透明であってもよい。これにより、透明なバイオチップ100を熱サイクル処理に使用した場合に、装置の外部から反応液140が移動する様子を観察できる。したがって、熱サイクル処理が適切に行われているか否かを、目視により確認できる。したがって、ここでの「透明」の程度は、これらの部材を熱サイクル装置1に採用して熱サイクル処理を行った場合に、反応液140の移動が視認できる程度であればよい。
【0110】
(変形例28)
熱サイクル装置1の内部を観察するためには、スペーサー14を透明にして固定板19を無くしても、固定板19を透明にしてスペーサー14を無くしても、スペーサー14と固定板19の両方を無くしてもよい。観察者と観察対象のバイオチップ100の間に存在する部材が少ないほど、物体による光の屈折の影響が少なくなるので、内部の観察が容易になる。また、部材が少なければ、製造コストを削減できる。
【0111】
(変形例29)
熱サイクル装置1の内部を観察するためには、図6及び図8に例示するように、本体10aに観察窓23を設けてもよい。観察窓23は、例えば、スペーサー14または固定板19に形成された穴やスリットであってもよい。図8の例では、観察窓23は固定板19と一体に形成された透明なスペーサー14に設けられた凹部である。観察窓23を設けることで、観察者と観察対象のバイオチップ100の間に存在する部材の厚みを少なくできるので、内部の観察が容易になる。
【0112】
(変形例30)
実施形態においては、本体10の底板17側に第1加熱部12が、蓋50の側に第2加熱部13が配置されている例を示したが、図8に示すように、蓋50の側に第1加熱部12が配置されていてもよい。第1加熱部12が蓋50の側に配置されている場合には、実施形態のステップS101においてバイオチップ100を装着した場合の装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置は第2の配置である。すなわち、第2領域112が重力の作用する方向における流路110の最下部に位置する配置である。したがって、本変形例の熱サイクル装置2を実施形態に係る熱サイクル処理に適用した場合には、バイオチップ100を装着部11に装着したら、第1の配置への切換えが行われる。具体的には、ステップS101からステップS102及びステップS103へ移行する前に、ステップS107の処理が行われる。
【0113】
(変形例31)
実施形態においては、第1加熱部12及び第2加熱部13によってバイオチップ100を加熱する工程(ステップS102)と、第1の時間が経過したか否かの判定を行う工程(ステップS103)とが、バイオチップ100を装着部11に装着したら(ステップS101)開始される例を示したが、ステップS102を開始するタイミングは実施形態に限定されない。ステップS103において計時が開始される時点までに第1領域111が第1の温度に加熱される限り、ステップS102は任意のタイミングで開始してよい。ステップS102を行うタイミングは、使用するバイオチップ100の大きさや材料、第1ヒートブロック12bの加熱に必要な時間等を考慮して決定される。例えば、ステップS101より前、ステップS101と同時、及びステップS101より後でステップS103より前、のいずれかとしてもよい。
【0114】
(変形例32)
実施形態においては、第1の温度、第2の温度、第1の時間、第2の時間、及び熱サイクルのサイクル数、駆動機構20の動作を制御部によって制御する例を示したが、これらの項目のうち少なくとも1つを使用者が制御することも可能である。使用者が第1の温度または第2の温度を制御する場合は、例えば温度センサーによって測定された温度を表示部24で表示し、使用者が設定部25を操作して温度を調節してもよい。使用者が熱サイクルのサイクル数を制御する場合、所定回数に達した場合に使用者が熱サイクル装置1を停止させる。サイクル数の計数は、使用者が行っても、熱サイクル装置1が計数を行ってサイクル数を表示部24に表示してもよい。
【0115】
使用者が第1の時間または第2の時間を制御する場合には、使用者が所定の時間に達したか否かを判断し、熱サイクル装置2に装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を切換えさせる。すなわち、図5のステップS103及びステップS105と、ステップS104及びステップS107の少なくとも一部を使用者が行う。時間は熱サイクル装置2とは連動しないタイマーを用いて計測しても、熱サイクル装置2の表示部24で経過した時間を表示してもよい。配置の切換えは、設定部25(UI)を操作することで行っても、駆動機構20にハンドルを採用して手動で行ってもよい。
【0116】
(変形例33)
実施形態においては、駆動機構20の回転によって装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を切換える場合の回転角度が180°である例を示したが、回転角度は、第1領域111と第2領域112との、重力方向における上下の位置関係が変化する角度であればよい。例えば、回転角度を180°未満であれば、反応液140の移動速度が遅くなる。したがって、回転角度を調節することで、反応液140が第1の温度と第2の温度との間を移動する時間を調節できる。すなわち、反応液140の温度が第1の温度と第2の温度との間で変化する時間を調節できる。
【0117】
3.実施例
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【実施例1】
【0118】
シャトルPCR
本実施例においては、図9を参照して、変形例1の熱サイクル装置2を用いた、蛍光測定を伴うシャトルPCRを説明するが、上述の実施形態および各変形例を適用してもよい。図9は、本実施例における熱サイクルの手順を示すフローチャートである。図5と比較すると、ステップS201およびステップS202を含む点が異なっている。本実施例における蛍光検出器40はFLE1000(日本板硝子社製)である。
【0119】
本実施例のバイオチップ100は外形が円柱状であり、内径2mm、長さ25mmの円筒形の流路110を有する。バイオチップ100は100度以上の耐熱性を有するポリプロピレン樹脂で形成されている。流路110内には、ジメチルシリコーンオイル(KF−96L−2cs、信越シリコーン社製)が約130μl充填されている。本実施例の反応液140aは、ヒトβアクチンDNA1μl(DNA量は10^3コピー/μl)、PCRマスターミックス(GeneAmp(登録商標)Fast PCR Master Mix (2x)、Applied Biosystems社製)10μl、プライマー及びプローブ(Pre‐Developed TaqMan(登録商標) Assay Reagents Human ACTB、Applied Biosystems社製)1μl、PCR Water(Water, PCR Grade、Roche Diagnostics社製)8μlの混合物である。DNAは、市販のTotal RNA (qPCR Human Reference Total RNA、Clontech社製)から逆転写したcDNAを使用した。
【0120】
まず、マイクロピペットを用いて1μlの反応液140aを流路110に導入した。反応液140aは水溶液であるので、上述のジメチルシリコーンオイルとは混和しない。液体130中に直径約1.5mmの球形をした液滴の状態で保持された。また、上述のジメチルシリコーンオイルの比重は25℃で約0.873であるので、反応液140a(比重約1.0)は重力が作用する方向における流路110の最下部に位置した。次いで流路110の一方の端部を栓で封止して、熱サイクル処理を開始した。
【0121】
まず、本実施例のバイオチップ100を、熱サイクル装置2の装着部11に装着する(ステップS101)。本実施例においては、上述のバイオチップ100を14本使用した。このときの装着部11および第1加熱部12の配置は第2の配置であり、反応液140aは第2領域112に、すなわち第2加熱部13の側に位置している。蓋50によって装着部11を覆い、熱サイクル装置2を作動させると、ステップS201が行われる。
【0122】
ステップS201では、蛍光検出器40により蛍光測定が行われる。本実施例においては、第2の配置において、測定窓18と蛍光検出器40とが対向する。したがって、第2の配置において蛍光検出器40を動作させると、測定窓18を介して蛍光測定が行われる。本実施例においては、スライド22に沿って蛍光検出器40を移動させることで、複数のバイオチップ100に対して順次測定を行った。ステップS201において、全てのバイオチップ100の測定が完了すると、ステップS207が行われる。本実施例においては、全ての測定窓18に対して蛍光測定が完了したら、ステップS207に移行する。
【0123】
ステップS207では、第2の配置から第1の配置への切換えが行われる。すなわち、ステップS207は、実施形態のステップS107と実質的に同様である。これにより、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13が第1の配置に保持されるので、反応液140aが第1領域111に移動する。
【0124】
続いて、ステップS102及びステップS202が開始される。ステップS102では、第1加熱部12及び第2加熱部13によってバイオチップ100が加熱される。本実施例においては、第1の温度は95℃、第2の温度は66℃である。これにより、バイオチップ100の第1領域111から第2領域112へ向けて、95℃から66℃へと温度が低くなる温度勾配が形成される。ステップS102においては、反応液140aは第1領域111にあるので95℃に加熱される。
【0125】
ステップS202では、第1の配置において第3の所定の時間が経過したか否かを判定する。本実施例のバイオチップ100の大きさであれば、加熱開始から温度勾配が形成されるまでの時間は無視できる程度であるので、加熱開始と同時に、第3の時間の計測を開始してもよい。本実施例における第3の所定の時間は10秒であり、ステップS202ではPCRのホットスタートが行われる。ホットスタートは、反応液140aに含まれるDNAポリメラーゼを熱によって活性化させ、DNAの増幅が可能な状態にする処理である。10秒が経過していないと判定された場合(no)には、ステップS202が繰り返される。10秒が経過したと判定された場合(yes)には、ステップS103へ移行する。
【0126】
ステップS103では、第1の配置において第1の所定の時間が経過したか否かを判定する。本実施例における第1の時間は1秒である。すなわち、95℃で2本鎖DNAを解離させる処理が1秒間行われる。ステップS202及びステップS103は、ともに第1の温度における処理であるため、ステップS202に次いでステップS103を行う場合には、実質的にポリメラーゼの活性化とDNAの解離とが並行に進行する。ステップS103においては第1の配置において1秒が経過したか否かを判定する。1秒が経過していないと判定された場合(no)には、ステップS103が繰り返される。1秒が経過したと判定された場合(yes)には、バイオチップ100の第2領域112が重力の作用する方向における最下部に位置するように、駆動機構20によって本体10aを回転させる(ステップS104)。これにより、反応液140aは重力の作用によって流路110の95℃の領域から66℃の領域へと移動する。本実施例においては、ステップS104における回転に要する時間は3秒であり、この間に反応液140aが第2領域112へと移動する。駆動機構20は制御部の制御により、第2の配置に達した場合に動作を停止し、ステップS105が開始される。
【0127】
ステップS105では、第2の配置において第2の所定の時間が経過したか否かを判定する。本実施例における第2の時間は15秒である。すなわち、66℃でのアニーリングと伸長反応が15秒間行われる。ステップS105においては第2の配置において15秒が経過したか否かを判定する。15秒が経過していないと判定された場合(no)には、ステップS105が繰り返される。15秒が経過したと判定された場合(yes)には、続いて熱サイクルのサイクル数が所定のサイクル数に達したか否かが判定される(ステップS106)。本実施例における所定のサイクル数とは50回である。すなわち、ステップS103からステップS105までの工程が50回行われたか否かを判定する。サイクル数が50回未満の場合には、所定のサイクル数に達していない(no)と判定し、ステップS107へ移行する。
【0128】
ステップS107では、バイオチップ100の第1領域111が重力の作用する方向における最下部に位置するように、駆動機構20によって本体10aを回転させる。これにより、反応液140aは重力の作用によって流路110の66℃の領域から95℃の領域へと移動する。駆動機構20は制御部の制御により、第1の配置に達した場合に動作を停止し、2回目の熱サイクルが開始される。すなわち、再びステップS103からステップS106が繰り返される。ステップS106において、熱サイクルが50回行われたと判定した場合(yes)には、蛍光測定を行い(ステップS206)、加熱を停止して熱サイクル処理を完了する。
【0129】
2回の蛍光測定(ステップS201及びステップS206)の結果を、図12(A)に示した。熱サイクル処理を施す前の蛍光輝度(強度)を「反応前」、熱サイクルを所定回数施した後の蛍光輝度を「反応後」として示した。輝度変化率(%)は次の式(1)で算出した値である。
(輝度変化率)=100*{(反応後)−(反応前)}/(反応前)・・・(1)
【0130】
本実施例で使用したプローブはTaqManプローブである。このプローブは核酸が増幅されると検出される蛍光輝度が増加する性質を有する。図12(A)に示す通り、熱サイクル処理を行う前と比較して、熱サイクル処理を行った後では反応液140の蛍光輝度は増加した。算出された輝度変化率は核酸が十分に増幅されたことを示す値であり、本実施例の熱サイクル装置2によって核酸が増幅されたことが確認できた。
【0131】
本実施例においては、まず、反応液140aを95℃に1秒間保持し、駆動機構20によって本体10aを半回転させることで66℃に15秒間保持できる。再度駆動機構20によって本体10aを半回転させることで、再び反応液140aを95℃に保持できる。すなわち、駆動機構20によって装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置を切換えることにより、第1の配置及び第2の配置に所望の時間反応液140aを保持できる。したがって、熱サイクル処理において第1の時間と第2の時間が異なる場合にも、加熱する時間を容易に制御できるので、所望の熱サイクルを反応液140aに施すことができる。
【0132】
本実施例においては、第1の温度における加熱時間が1秒、第2の温度における加熱時間が15秒、反応液140aが第1領域111と第2領域112の間を移動するのに要する時間が3秒(往復で6秒)であるので、1サイクルの所要時間は22秒である。したがって、サイクル数が50回である場合には、ホットスタートを含めて約19分で熱サイクルを完了できる。
【実施例2】
【0133】
1step RT−PCR
本実施例においては、図10を参照して、変形例1及び2に係る熱サイクル装置を用いた1step RT−PCRを説明する。図10は、本実施例における熱サイクルの手順を示すフローチャートである。本実施例の熱サイクル装置は、第2加熱部13の温度を処理の途中で変更できる以外は、実施例1の熱サイクル装置2と同様である。他の構成については上述の各変形例を適用しても、同様に実施可能である。本実施例における蛍光検出器40は2104 EnVision マルチラベルカウンター(PerkinElmer 社製)である。
【0134】
RT−PCR(reverse transcription‐polymerase chain reaction)は、RNAの検出または定量を行うための手法である。逆転写酵素を用いて45℃でRNAを鋳型としてDNAへの逆転写を行い、逆転写によって合成されたcDNAをPCRによって増幅する。一般的なRT−PCRでは、逆転写反応の工程とPCRの工程とは独立しており、逆転写の工程とPCRの工程との間で、容器を交換したり、試薬を追加したりする。これに対し1step RT−PCRは、専用の試薬を用いることで逆転写およびPCRの反応を連続して行う。本実施例は1step RT−PCRを例とするので、実施例1のシャトルPCRの処理と本実施例の処理とを比較すると、逆転写を行うための処理(ステップS203―ステップS204)及びシャトルPCRへ移行するための処理(ステップS205)が行われる点が異なっている。
【0135】
本実施例のバイオチップ100は、反応液140bに含まれる成分が異なる以外は、実施例1と同様である。反応液140bは、1step RT−PCR用の市販のキット(One Step SYBR(登録商標) PrimeScript(登録商標) PLUS RT-PCR kit、タカラバイオ社製)を図11の組成に調製したものを使用した。
【0136】
実施例1と同様にして反応液140bを導入したバイオチップ100を3本用いて反応を行った。まず、ステップS101においてバイオチップ100を装着部11に装着する。熱サイクル装置を作動させると、ステップS201が行われる。これにより、熱サイクル処理を施す前の、反応液140bの蛍光輝度が測定される。
【0137】
続いて、ステップS102及びステップS203が開始される。本実施例のステップS102においては、第1加熱部12によってバイオチップ100の第1領域111が95℃に、第2加熱部13によって第2領域112が42℃に加熱される。本実施例においては、ステップS101における装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置は第2の配置である。したがって、反応液140bは第2領域112にあるので42℃に加熱され、RNAからDNAへの逆転写が行われる。
【0138】
ステップS203では、第2の配置において第4の時間が経過したか否かを判定する。すなわち、判定する時間の長さが異なる以外は、ステップS105と同様である。本実施例における第4の時間は300秒である。ステップS203は、300秒が経過していないと判定した場合(no)は、ステップS203が繰り返され、300秒が経過したと判定した場合(yes)には、ステップS207へ移行する。
【0139】
ステップS207において、装着部11、第1加熱部12並びに第2加熱部13の配置が第2の配置から第1の配置へ切換えられると、ステップS204が開始される。
【0140】
ステップS204では、第1の配置において第5の時間が経過したか否かを判定する。ステップS204は、判定する時間の長さが異なる以外は、ステップS103と同様である。本実施例における第5の時間は10秒である。第1領域111は95℃に加熱されているので、ステップS207によって第1領域111へ移動した反応液140bは95℃に加熱される。95℃で10秒間加熱することによって、逆転写酵素が失活する。ステップS204は、10秒が経過していないと判定した場合(no)は、ステップS204が繰り返され、10秒が経過したと判定した場合(yes)には、ステップS205へ移行する。
【0141】
ステップS205は、第2加熱部13がバイオチップ100を加熱する温度を変更する工程である。本実施例においては、第2領域112の温度が60℃となるよう、第2加熱部13によってバイオチップ100を加熱する。これにより、第1領域111が95℃、第2領域112が60℃となるので、バイオチップ100の流路110にシャトルPCRに適した温度勾配が形成される。ステップS205によって第2加熱部13の温度を変更したら、ステップS103へ移行する。
【0142】
ステップS205に続いてステップS103が行われる場合は、ステップS205が完了してから経過した時間が、第1の所定の時間に達したか否かが判定される。ステップS103は、温度センサーで温度を測定し、所望の温度に達したら開始してもよい。本実施例においては、温度の変更に要する時間が無視できる程度であるので、ステップS205とステップS103を同時に開始する。ステップS107に続いて行われる場合のステップS103は、実施形態および実施例1と同様である。
【0143】
本実施例におけるステップS103以降の処理は、熱サイクル処理の具体的な反応条件が異なる以外は実施例1と同様である。ステップS103からステップS107を繰り返すことにより、シャトルPCRが行われる。具体的には、95℃で5秒、60℃で30秒の熱サイクルが、実施例1と同様の工程を経て40回繰り返され、DNAが増幅される。
【0144】
2回の蛍光測定(ステップS201及びステップS206)の結果を、図12(B)に示した。実施例1と同様にして輝度変化率を算出した。本実施例で使用したプローブはSYBR Green Iである。このプローブも、核酸増幅に伴い検出される蛍光輝度が増加する。図12(B)に示す通り、熱サイクル処理を行う前と比較して、熱サイクル処理を行った後では反応液140の蛍光輝度は増加した。算出された輝度変化率は核酸が十分に増幅されたことを示す値であり、本実施例の熱サイクル装置2によって核酸が増幅されたことが確認できた。
【0145】
本実施例においては、加熱温度を途中で変更することにより変更された温度に反応液140bを加熱できる。したがって、実施例1(シャトルPCR)と同様の効果に加えて、加熱部の数を増やしたり、装置の構造を複雑にしたりすることなく、加熱温度の異なる処理を1台の装置で行うことができるという効果を得ることができる。さらに、反応液140bを第1の配置および第2の配置においてバイオチップ100を保持する時間を変更することで、装置やバイオチップの構造を複雑にすることなく、途中で加熱時間を変更する必要のある反応を行うことができる。
【0146】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0147】
1,2…熱サイクル装置、10,10a…本体、11…装着部、12…第1加熱部(加熱部)、12a…第1ヒーター、12b…第1ヒートブロック、13…第2加熱部、13a…第2ヒーター、13b…第2ヒートブロック、14…スペーサー、15…導線、16…フランジ、17…底板、18…測定窓、19…固定板、20…駆動機構、22…スライド、23…観察窓、24…表示部、25…設定部、40…蛍光検出器、50…蓋、51…固定部、100,100a…バイオチップ、110…流路、111…第1領域、112…第2領域、113…突出部、120…封止部、130…液体、140,140a,140b…反応液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液と、前記反応液よりも比重が小さく、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が対向する内壁に近接して移動する流路を含むバイオチップを装着する装着部と、
前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に、前記流路の第1領域を加熱する加熱部と、
前記装着部及び前記加熱部の配置を、第1の配置と、第2の配置との間で切換える駆動機構と、
を含み、
前記第1の配置は、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に、前記第1領域が、重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する配置であり、
前記第2の配置は、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に、前記反応液が移動する方向における位置が前記第1領域とは異なる前記流路の第2領域が、重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する配置である、
熱サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱サイクル装置であって、
前記駆動機構は、
前記第1の配置から前記第2の配置へ切換える場合と前記第2の配置から前記第1の配置へ切換える場合とで、反対方向に前記装着部及び前記加熱部を回転させる、
熱サイクル装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱サイクル装置であって、
前記駆動機構は、
前記第1の配置において第1の時間が経過した場合に、前記配置を前記第2の配置へ切り換え、
前記第2の配置において第2の時間が経過した場合に、前記配置を前記第1の配置へ切り換える、
熱サイクル装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱サイクル装置であって、
前記装着部は、
前記流路の長手方向に前記反応液が移動する前記バイオチップを装着し、
前記第1領域は、前記長手方向における一方の端部を含む領域であり、前記第2領域は、前記長手方向における他方の端部を含む領域である、
熱サイクル装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の熱サイクル装置であって、
さらに、前記装着部に前記バイオチップを装着した場合に、前記第2領域を加熱する第2加熱部を含み、
前記加熱部は、第1の温度に前記第1領域を加熱し、
前記第2加熱部は、前記第1の温度とは異なる第2の温度に、前記第2領域を加熱する、
熱サイクル装置。
【請求項6】
請求項5に記載の熱サイクル装置であって、
前記第1の温度は、前記第2の温度よりも高い温度である、
熱サイクル装置。
【請求項7】
請求項6に記載の熱サイクル装置であって、
前記第1の時間は、前記第2の時間よりも短い、
熱サイクル装置。
【請求項8】
反応液と、前記反応液よりも比重が小さく、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が、対向する内壁に近接して移動する流路を含むバイオチップを装着部に装着することと、
前記流路の第1領域が、重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する第1の配置に前記バイオチップを保持することと、
前記第1領域を加熱することと、
前記反応液が移動する方向における位置が前記第1領域とは異なる前記流路の第2領域が、重力の作用する方向における前記流路の最下部に位置する第2の配置に前記バイオチップを保持することと、
を含む、
熱サイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−115208(P2012−115208A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268090(P2010−268090)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】