説明

熱サイクル装置及び熱サイクル装置の制御方法

【課題】反応液を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置及び熱サイクル装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】反応液と、反応液とは比重が異なりかつ混和しない液体とが充填され、反応液及び前記液体のいずれか一方は所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、流路に対して反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、装着部及び温度勾配形成部の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換える駆動機構と、反応容器内からの所定の波長の光の強度を検出する検出部と、駆動機構を制御する制御部を含み、制御部は第1の配置と第2の配置との間で切換えさせるタイミングと検出部によって検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングに基づいて第1の配置及び第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる時間を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱サイクル装置及び熱サイクル装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子の利用技術の発展により、遺伝子診断や遺伝子治療など遺伝子を利用した医療が注目されている他、農畜産分野においても品種判別や品種改良に遺伝子を用いた手法が多く開発されている。遺伝子を利用するための技術として、PCR(Polymerase Chain Reaction)法などの技術が広く普及している。今日では、PCR法は生体物質の情報解明において必要不可欠な技術となっている。
【0003】
PCR法は、増幅の対象とする核酸(標的核酸)及び試薬を含む溶液(反応液)に熱サイクルを施すことで、標的核酸を増幅させる手法である。熱サイクルは、2段階以上の温度を周期的に反応液に施す処理である。PCR法においては、2段階又は3段階の熱サイクルを施す手法が一般的である。
【0004】
PCR法では一般に、チューブや生体試料反応用チップ(バイオチップ)と称する、生化学反応を行うための容器を使用する。しかし、従来の手法においては、必要な試薬等の量が多く、また反応に必要な熱サイクルを実現するために装置が複雑化したり、反応に時間がかかったりするという問題があった。そのため微少量の試薬や検体を用いてPCRを精度よく短時間で行うためのバイオチップや反応装置が必要とされていた。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1には、反応液と、反応液と混和せず反応液よりも比重の小さい液体とが充填された生体試料反応用チップを、水平方向の回転軸の周りに回転させることで、反応液を移動させて熱サイクルを施す生体試料反応装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−136250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の生体試料反応装置において所望の熱サイクルを反応液に施すためには、ミネラルオイル中を反応液が移動することが必要となる。しかし、ミネラルオイルの粘性が反応液の移動に対する抵抗となるので、ミネラルオイルの成分や温度、反応液量などによって、反応液の移動時間が変動してしまう。したがって、反応液を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることは難しかった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、反応液を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置及び熱サイクル装置の制御方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本形態に係る熱サイクル装置は、反応液と、前記反応液とは比重が異なり、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液及び前記反応液とは混和しない液体のいずれか一方は、所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、前記反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記流路に対して、前記反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における前記流路の最下点の位置が前記第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構と、前記反応容器内からの前記所定の波長の光の強度を検出する検出部と、前記駆動機構を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置と前記第2の配置との間で切換えさせるタイミングである切換タイミングと、前記検出部によって検出された前記光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングと、に基づいて、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置及び前記第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる時間である保持時間を決定する。
【0010】
本形態によれば、駆動機構は、装着部及び温度勾配形成部を、第1の配置と、重力の作用する方向における流路の最下点の位置が第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える。これにより、装着部に装着された反応容器の流路における、重力の作用する方向における最下点の位置が変化する。したがって、温度勾配形成部によって温度勾配が形成された流路内を、重力にしたがって反応液が移動するので、反応液に対して熱サイクルを施すことができる。また、本形態によれば、駆動機構によって装着部及び温度勾配形成部の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えさせるタイミングである切換タイミングと、検出部によって検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングとから、反応液が適切な位置に移動するまでの時間を推定できる。本形態によれば、切換えタイミングと検出タイミングとに基づいて保持時間を決定するので、反応液を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置を実現できる。
【0011】
(2)上述の熱サイクル装置において、前記制御部は、前記切換タイミングから前記検出タイミングまでの時間を計測する計測手段と、前記計測手段によって計測された前記時間に基づいて、前記保持時間を決定する決定手段と、を含んでもよい。
【0012】
本形態によれば、切換タイミングから検出タイミングまでの時間に基づいて保持時間を決定するので、反応液が適切な位置に移動するまでの時間に左右されず、反応液を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置を実現できる。
【0013】
(3)本形態に係る熱サイクル装置は、反応液と、前記反応液とは比重が異なり、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液及び前記反応液とは混和しない液体のいずれか一方は、所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、前記反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記流路に対して、前記反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における前記流路の最下点の位置が前記第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構と、前記反応容器内からの前記所定の波長の光の強度を検出する検出部と、前記駆動機構を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングから所定の時間が経過するまで、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置及び前記第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる。
【0014】
本形態によれば、駆動機構は、装着部及び温度勾配形成部を、第1の配置と、重力の作用する方向における流路の最下点の位置が第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える。これにより、装着部に装着された反応容器の流路における、重力の作用する方向における最下点の位置が変化する。したがって、温度勾配形成部によって温度勾配が形成された流路内を、重力にしたがって反応液が移動するので、反応液に対して熱サイクルを施すことができる。また、本形態によれば、検出部によって検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングから、反応液が適切な位置に移動するタイミングを推定できる。本形態によれば、装着部及び温度勾配形成部の配置を、検出タイミングを基準として所定の時間保持させるので、反応液を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置を実現できる。
【0015】
(4)上述の熱サイクル装置において、前記検出部は、前記第1の配置となった場合に、前記流路内において重力の作用する方向における最下点を含む領域からの前記光の強度を検出してもよい。
【0016】
これによって、第1の配置となった場合に、流路内において重力の作用する方向における最下点近傍に反応液が移動したか否かを容易に判定できる。したがって、より正確に検出タイミングを定めることができる。
【0017】
(5)上述の熱サイクル装置において、前記反応容器に充填された前記反応液は、前記蛍光物質を含み、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記光の強度が前記基準値を上回ったタイミングを前記検出タイミングとしてもよい。
【0018】
検出部によって検出される所定の波長の光を発する蛍光物質が、反応容器に充填された反応液に含まれているので、第1の配置において、流路内において重力の作用する方向における最下点近傍に反応液が移動した場合には、検出部によって検出される光の強度は大きくなる。したがって、制御部は、検出部によって検出される光の強度が基準値を上回ったタイミングを検出タイミングとすることによって、より正確に検出タイミングを定めることができる。
【0019】
(6)上述の熱サイクル装置において、前記反応容器に充填された前記反応液とは混和しない液体は、前記蛍光物質を含み、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記光の強度が前記基準値を下回ったタイミングを前記検出タイミングとしてもよい。
【0020】
検出部によって検出される所定の波長の光を発する蛍光物質が、反応容器に充填された反応液とは混和しない液体に含まれているので、第1の配置において、流路内において重力の作用する方向における最下点近傍に反応液が移動した場合には、検出部によって検出される光の強度は小さくなる。したがって、制御部は、検出部によって検出される光の強度が基準値を下回ったタイミングを検出タイミングとすることによって、より正確に検出タイミングを定めることができる。
【0021】
(7)本形態に係る熱サイクル装置の制御方法は、反応液と、前記反応液とは比重が異なり、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記流路に対して、前記反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における前記流路の最下点の位置が前記第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構と、を含む熱サイクル装置の制御方法であって、前記反応容器に充填された前記反応液及び前記反応液とは混和しない液体のいずれか一方は、所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、切換えタイミングに基づいて、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置と前記第2の配置との間で切換えさせることと、前記反応容器内からの所定の波長の光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミング検出することと、前記切換タイミングと、前記検出タイミングとに基づいて、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置及び前記第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる時間である保持時間を決定することと、を含む。
【0022】
駆動機構によって装着部及び温度勾配形成部の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えられるタイミングである切換タイミングと、検出工程において検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングとから、反応液が適切な位置に移動するまでの時間を推定できる。本形態によれば、決定工程において、切換えタイミングと検出タイミングとに基づいて保持時間を決定するので、反応液を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置の制御方法を実現できる。
【0023】
(8)本形態に係る熱サイクル装置の制御方法は、反応液と、前記反応液とは比重が異なり、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記流路に対して、前記反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における前記流路の最下点の位置が前記第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構と、を含む熱サイクル装置の制御方法であって、前記反応容器に充填された前記反応液及び前記反応液とは混和しない液体のいずれか一方は、所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、前記反応容器内からの所定の波長の光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミング検出することと、前記検出タイミングから所定の時間を経過するまで、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置及び前記第2の配置のうち少なくとも一方に保持させることと、を含む。
【0024】
検出工程において検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングから、反応液が適切な位置に移動するタイミングを推定できる。本形態によれば、保持工程において、装着部及び温度勾配形成部の配置を、検出タイミングを基準として所定の時間保持させるので、反応液を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置の制御方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(A)は、実施形態に係る熱サイクル装置1の蓋70を閉じた状態を表す斜視図、図1(B)は、実施形態に係る熱サイクル装置1の蓋70を開けた状態を表す斜視図。
【図2】図1(A)のA−A線を通り回転軸Rに垂直な面における本体10を模式的に示す断面図。
【図3】実施形態に係る熱サイクル装置1に装着される反応容器100の構成を表す断面図。
【図4】図4(A)は、第1の配置における、図1(A)のA−A線を通り回転軸Rに垂直な面における断面を模式的に示す断面図、図4(B)は、第2の配置における図1(A)のA−A線を通り回転軸Rに垂直な面における断面を模式的に示す断面図。
【図5】第1具体例に係る熱サイクル装置1の機能ブロック図。
【図6】第1具体例に係る熱サイクル装置1の制御方法を説明するためのフローチャート。
【図7】熱サイクル装置1の制御方法の第1具体例における光の強度を示すグラフ。
【図8】熱サイクル装置1の制御方法の第1具体例における光の強度を示す他のグラフ。
【図9】第2具体例に係る熱サイクル装置1の機能ブロック図。
【図10】第2具体例に係る熱サイクル装置1の制御方法を説明するためのフローチャート。
【図11】熱サイクル装置1の制御方法の第2具体例における光の強度を示すグラフ。
【図12】熱サイクル装置1の制御方法の第2具体例における光の強度を示す他のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0027】
1.熱サイクル装置の全体構成
図1(A)は、本実施形態に係る熱サイクル装置1の蓋70を閉じた状態を表す斜視図、図1(B)は、本実施形態に係る熱サイクル装置1の蓋70を開けた状態を表す斜視図である。図2は、図1(A)のA−A線を通り回転軸Rに垂直な面における本体10を模式的に示す断面図である。図2において、矢印gは重力の作用する方向を表す。
【0028】
本実施形態に係る熱サイクル装置1は、反応液140と、反応液140とは比重が異なり、かつ、反応液140とは混和しない液体130とが充填され、反応液140が対向する内壁に沿って移動する流路110を含む反応容器100(詳細は「3.本実施形態に係る熱サイクル装置に装着される反応容器の構成」の項で後述される)を装着する装着部11と、装着部11に反応容器100を装着した場合に、流路110に対して、反応液140が移動する方向(詳細は「2.本実施形態に係る熱サイクル装置に装着される反応容器の構成」の項で後述される)に温度勾配を形成する温度勾配形成部30と、装着部11に反応容器100を装着した場合に、装着部11及び温度勾配形成部30の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における流路110の最下点の位置が第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構20と、反応容器100内からの所定の波長の光の強度を検出する検出部40と、駆動機構20を制御する制御部50と、を含む。また、反応容器100に充填された反応液140及び液体130のいずれか一方は、検出部40によって検出される前記所定の波長の光を発する蛍光物質を含む。
【0029】
図1(A)に示される例では、熱サイクル装置1は、本体10と駆動機構20とを含んで構成されている。図1(A)、図1(B)及び図2に示されるように、本体10は、装着部11及び温度勾配形成部30を含んで構成されている。
【0030】
温度勾配形成部30は、装着部11に反応容器100を装着した場合に、流路110に対して、反応液140が移動する方向に温度勾配を形成する。ここで、「温度勾配を形成する」とは、所定の方向に沿って温度が変化する状態を形成することを意味する。したがって、「反応液140が移動する方向に温度勾配を形成する」とは、反応液140が移動する方向に沿って温度が変化する状態を形成することを意味する。「所定の方向に沿って温度が変化する状態」は、例えば、所定の方向に沿って温度が単調に高く又は低くなっていてもよいし、所定の方向に沿って、温度が高くなる変化から低くなる変化へ、又は、低くなる変化から高くなる変化へ、途中で変化していてもよい。
【0031】
図1(A)、図1(B)及び図2に示される例では、温度勾配形成部30は、第1加熱部12及び第2加熱部13を含んで構成されている。熱サイクル装置1の本体10においては、第1加熱部12が蓋70から相対的に遠い側、第2加熱部13が蓋70から相対的に近い側に配置されている。また、第1加熱部12と第2加熱部13との間にはスペーサー14が設けられている。なお、所望の反応精度が確保できる程度に温度勾配が形成される限り、温度勾配形成部30に含まれる加熱部の数は任意である。例えば、温度勾配形成部30を1つの加熱部で構成することにより、使用する部材の数を減らすことができるので、製造コストを削減できる。
【0032】
第1加熱部12は、装着部11に反応容器100を装着した場合に、反応容器100の第1領域111を第1の温度に加熱する。図2に示される例では、第1加熱部12は、本体10において、反応容器100の第1領域111を加熱する位置に配置されている。
【0033】
第2加熱部13は、装着部11に反応容器100を装着した場合に、反応容器100の第2領域112を、第1の温度とは異なる第2の温度に加熱する。図2に示される例では、第2加熱部13は、本体10において、反応容器100の第2領域112を加熱する位置に配置されている。第2加熱部13の構成は、加熱される反応容器100の領域及び加熱する温度が第1加熱部12と異なる以外は、第1加熱部12と同様である。
【0034】
本実施形態においては、第2の温度は第1の温度よりも高い温度である。例えば、熱サイクル装置1をリアルタイムPCRに用いる場合には、第1の温度を63℃程度(アニーリング及び伸長反応を行う温度)とし、第2の温度を95℃程度(変性反応を行う温度)とすることができる。
【0035】
温度勾配形成部30は、熱を発生させる熱源部31と、熱源部31で発生した熱を装着部11に伝導させる熱伝導部32とを含んで構成されている。図2に示される例では、温度勾配形成部30の第1加熱部12は、熱源部31としての第1ヒーター12aと、熱伝導部32としての第1ヒートブロック12bとを含んで構成されている。また、温度勾配形成部30の第2加熱部13は、熱源部31としての第2ヒーター13aと、熱伝導部32としての第2ヒートブロック13bとを含んで構成されている。
【0036】
熱サイクル装置1においては、第1ヒーター12a及び第2ヒーター13aはカートリッジヒーターであり、導線によって図示しない外部電源に接続される。第1ヒーター12a及び第2ヒーター13aとしてはこれに限らず、カーボンヒーター、シートヒーター、IHヒーター(電磁誘導加熱器)、ペルチェ素子、加熱液体、加熱気体などを使用できる。本実施形態においては、第1ヒーター12aは第1ヒートブロック12bに挿入されており、第1ヒーター12aが発熱することで第1ヒートブロック12bが加熱される。同様に、第2ヒーター13aは第2ヒートブロック13bに挿入されており、第2ヒーター13aが発熱することで第2ヒートブロック13bが加熱される。
【0037】
第1ヒートブロック12bは、第1ヒーター12aから発生した熱を装着部11と、装着部11に装着された反応容器100に伝える部材である。第2ヒートブロック13bは、第2ヒーター13aから発生した熱を装着部11と、装着部11に装着された反応容器100に伝える部材である。熱サイクル装置1においては、第1ヒートブロック12b及び第2ヒートブロック13bは、アルミニウム製のブロックである。カートリッジヒーターは温度制御が容易であるので、第1ヒーター12a及び第2ヒーター13aをカートリッジヒーターとすることで、第1加熱部12及び第2加熱部13の温度を容易に安定させることができる。したがって、より正確な熱サイクルを実現できる。
【0038】
ヒートブロックの材質は熱伝導率、保温性、加工しやすさ等の条件を考慮して適宜選択できる。例えば、アルミニウムは熱伝導率が高いので、第1ヒートブロック12b及び第2ヒートブロック13bをアルミニウム製とすることで、反応容器100を効率よく加熱できる。また、ヒートブロックに加熱ムラが生じにくいので、精度の高い熱サイクルを実現できる。また、加工が容易なので第1ヒートブロック12b及び第2ヒートブロック13bを精度よく成型でき、加熱の精度を高めることができる。したがって、より正確な熱サイクルを実現できる。なお、ヒートブロックの材質は、例えば銅合金を使用してもよく、複数の材質を組み合わせてもよい。
【0039】
第1加熱部12及び第2加熱部13は、装着部11に反応容器100を装着した場合に、反応容器100に接触していることが好ましい。これにより、第1加熱部12及び第2加熱部13によって反応容器100を加熱した場合に、第1加熱部12及び第2加熱部13の熱を反応容器100に安定して伝えることができるので、反応容器100の温度を安定させることができる。本実施形態のように、装着部11が第1加熱部12及び第2加熱部13の一部として形成されている場合には、装着部11が反応容器100と接触することが好ましい。これにより、第1加熱部12及び第2加熱部13の熱を反応容器100に安定して伝えることができるので反応容器100を効率よく加熱できる。
【0040】
なお、第1加熱部12と第2加熱部13とで異なる加熱機構を採用してもよい。また、第1ヒートブロック12bと第2ヒートブロック13bとが異なる材質であってもよい。
【0041】
なお、第2加熱部13の代わりに第2領域112を冷却する冷却部を設けてもよい。冷却部としては、例えばペルチェ素子を使用できる。これにより、例えば、反応容器100の第1領域111からの熱によって第2領域112の温度が低下しにくい場合にも、流路110に所望の温度勾配を形成できる。また、例えば、加熱と冷却を繰り返す熱サイクルを反応液140に施すことができる。
【0042】
第1加熱部12及び第2加熱部13の温度は、図示しない温度センサー及び後述される制御部50によって制御されてもよい。第1加熱部12及び第2加熱部13の温度は、反応容器100が所望の温度に加熱されるように設定されることが好ましい。本実施形態においては、第1加熱部12を第1の温度に、第2加熱部13を第2の温度に制御することで、反応容器100の第1領域111を第1の温度に、第2領域112を第2の温度に加熱できる。なお、第1加熱部12及び第2加熱部13の温度は、反応容器100の第1領域111及び第2領域112が所望の温度に加熱されるように制御されていればよい。例えば、反応容器100の材質や大きさを考慮することで、第1領域111及び第2領域112の温度をより正確に所望の温度に加熱できる。また、本実施形態における温度センサーは熱電対である。なお、温度センサーとしてはこれに限らず、例えば測温抵抗体やサーミスタを使用してもよい。
【0043】
装着部11は、反応容器100を装着する構造である。図1(B)及び図2に示される例では、熱サイクル装置1の装着部11は、反応容器100を差し込んで装着するスロット構造である。図2に示される例では、装着部11は、後述される、第1加熱部12の第1ヒートブロック12b、スペーサー14及び第2加熱部13の第2ヒートブロック13bを貫通する穴に反応容器100を差し込む構造となっている。本体10に設けられる装着部11の数は複数であってもよく、図1(B)に示される例では、20個の装着部11が本体10に設けられている。
【0044】
なお、本実施形態においては、装着部11がスロット構造である例を示したが、装着部11は反応容器100を保持できる構造であればよい。例えば、反応容器100の形状に合わせた窪みに反応容器100をはめ込む構造や、反応容器100を挟んで保持する構造を採用してもよい。
【0045】
本実施形態に係る熱サイクル装置1においては、反応容器100と装着部11とが勘合するように構成されている。反応容器100と装着部11とが勘合する構造は、例えば図1(B)及び図2に示されるように、反応容器100に設けた突出部113を、装着部11に設けた凹部にはめ込む構造が採用できる。これにより、温度勾配形成部30に対する反応容器100の向きを一定に保つことができる。したがって、熱サイクルの途中で反応容器100の向きが変化することを抑制できるので、反応液140に与えられる温度環境をより精密に制御できる。したがって、より正確な熱サイクルを反応液140に施すことができる。
【0046】
また、装着部11を反応容器100に密着させる機構を設けてもよい。装着部11を反応容器100に密着させる機構は、反応容器100の少なくとも一部を装着部11に密着させることができればよい。例えば、本体10や蓋70に設けたバネによって反応容器100を装着部11の一方の壁面に押し付けてもよい。これにより、温度勾配形成部30の熱を反応容器100にさらに安定して伝えることができるので、反応容器100の温度をさらに安定させることができる。
【0047】
装着部11は、反応容器100をそれぞれ装着する第1の装着部11a及び第2の装着部11bを含んで構成されている。装着部11が3つ以上の反応容器100を装着できる構成である場合には、第1の装着部11a及び第2の装着部11bは、装着部11のうち、任意に選択された2つの反応容器100を装着する部分であってもよい。
【0048】
図2に示されるように、第1の装着部11a及び第2の装着部11bは、温度勾配形成部30の熱伝導部32に設けられている。また、第1の装着部11a及び第2の装着部11bは、温度勾配形成部30の熱源部31からの距離が等しい位置に設けられている。ここで「距離が等しい」とは、完全に平行な状態のみならず、熱サイクル装置として所望の精度が確保できる程度に距離の差が小さい状態を含む。図2に示される例では、第1の装着部11aと第1ヒーター12aとの距離と、第2の装着部11bと第1ヒーター12aとの距離とが等しく構成されている。また、第1の装着部11aと第2ヒーター13aとの距離と、第2の装着部11bと第2ヒーター13aとの距離とが等しく構成されている。
【0049】
本実施形態によれば、第1の装着部11a及び第2の装着部11bは、熱源部31からの距離が等しい位置に設けられているので、熱源部31からの熱が熱伝導部32を介して均等に伝わる。したがって、精度良く温度を制御できる熱サイクル装置を実現できる。また、熱サイクル装置1をPCRに用いる場合には、第1の装着部11a及び第2の装着部11bに装着された反応容器100の温度ばらつきが抑制できるので、増幅率のばらつきを抑制できる。
【0050】
図2に示されるように、第1の装着部11aに装着される反応容器100における反応液140が移動する方向と、第2の装着部11bに装着される反応容器100における反応液140が移動する方向とが平行であってもよい。ここで「平行」とは、完全に平行な状態のみならず、熱サイクル装置として所望の精度が確保できる程度に平行に近い状態を含む。
【0051】
本実施形態によれば、第1の装着部11aに装着される反応容器100における反応液140が移動する方向と、第2の装着部11bに装着される反応容器100における反応液140が移動する方向とが平行であるため、駆動機構20によって装着部11の配置が切換えられた場合に、第1の装着部11aに装着される反応容器100における反応液140と、第2の装着部11bに装着される反応容器100における反応液140とは、同一のタイミングで移動する。換言すれば、2つの反応液140が移動を開始する時刻を同期させることができる。したがって、第1の装着部11aに装着される反応容器100と第2の装着部11bに装着される反応容器100とに対して、同一のタイミングで同一の時間条件の熱サイクルを施すことができる。なお、ここでの「同一」の程度は、反応の精度に影響が無い程度の範囲である。
【0052】
駆動機構20は、装着部11に反応容器100を装着した場合に、装着部11及び温度勾配形成部30の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における流路110の最下点の位置が第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える。第1の配置及び第2の配置については「3.熱サイクル装置の制御例」の項で詳述される。本実施形態に係る熱サイクル装置1においては、駆動機構20は、装着部11及び温度勾配形成部30を、重力の作用する方向に対して垂直な成分を有し、かつ、装着部11に反応容器100を装着した場合に流路110を反応液140が移動する方向に対して垂直な成分を有する回転軸Rで回転させる機構である。
【0053】
「重力の作用する方向に対して垂直な成分を有する」方向は、「重力の作用する方向に対して平行な成分」と「重力の作用する方向に対して垂直な成分」とのベクトル和で表した場合における、重力の作用する方向に対して垂直な成分を有する方向である。
【0054】
「流路110を反応液140が移動する方向に対して垂直な成分を有する」方向は、「流路110を反応液140が移動する方向に対して平行な成分」と「流路110を反応液140が移動する方向に対して垂直な成分」とのベクトル和で表した場合における、流路110を反応液140が移動する方向に対して垂直な成分を有する方向である。
【0055】
本実施形態に係る熱サイクル装置1においては、駆動機構20は、装着部11及び温度勾配形成部30を、同一の回転軸Rで回転させている。また、本実施形態においては、駆動機構20は図示しないモーター及び駆動軸を含み、駆動軸と本体10のフランジ16とが接続されて構成されている。駆動機構20のモーターを動作させると、駆動軸を回転軸Rとして本体10が回転される。回転軸Rと装着部11との位置関係については、「2.回転軸と装着部との位置関係」の項で詳述される。なお、駆動機構20としては、モーターに限らず、例えばハンドル、ぜんまい等を採用できる。
【0056】
本実施形態によれば、回転軸Rは、重力の作用する方向に対して垂直な成分を有し、かつ、装着部11に反応容器100を装着した場合に反応容器100の流路110を反応液140が移動する方向に対して垂直な成分を有する軸であるため、駆動機構20が装着部11を回転させることによって、装着部11に装着される反応容器100の流路110内の重力の作用する方向における最下点又は最上点の位置が変化する。これにより、温度勾配形成部30によって温度勾配が形成された流路110内を反応液140が移動する。したがって、簡易な構成で反応液140に対して熱サイクルを施すことができる。
【0057】
熱サイクル装置1は検出部40を含んで構成されている。検出部40は、反応容器100内からの所定の波長の光の強度を検出する。本実施形態においては、検出部40は、第1の波長の光の強度を検出する。検出部40としては、種々の公知の光検出器を用いることができる。本実施形態においては、検出部40は、蛍光検出器を含んで構成されている。検出部40に含まれる検出器の数は検出が問題なく行える限り任意である。図1(A)及び図1(B)に示される例では、検出部40は、検出器41a及び検出器42aを含んで構成されている。図1(A)及び図1(B)に示される例では、検出部40は、検出器41aをスライド棒41bに沿って移動させて蛍光検出を行う。同様に、検出部40は、検出器42aをスライド棒42bに沿って移動させて蛍光検出を行う。
【0058】
検出部40は、第1の配置となった場合に、流路110内において重力の作用する方向における最下点を含む領域からの光の強度を検出してもよい。反応液140は、流路110内を重力の作用する方向における最下点近傍に向かって移動するので、装着部11及び温度勾配形成部30が第1の配置である場合には、重力の作用する方向における流路110の最下点を含む領域に反応液140が移動する。そのため、重力の作用する方向における流路110の最下点近傍における所定の波長の光の強度を検出部40によって検出することで、第1の配置において、流路110内において重力の作用する方向における最下点近傍に反応液140が移動したか否かを容易に判定できる。
【0059】
また、第1の配置となった場合に、流路110内において重力の作用する方向における最下点近傍に焦点を合わせたセルフォックレンズなどを用いて、第1の配置となった場合に流路110内において重力の作用する方向における最下点近傍からの光に対する感度を高めてもよい。なお、「3.熱サイクル装置の制御例」の項で後述される制御例においては、検出部40は、第1の配置となった場合に、流路110内において重力の作用する方向における最下点を含む領域からの光の強度を検出する場合を例にとり説明する。
【0060】
蛍光検出を行う場合には、本体10には、装着部11の内部を蛍光検出できる測定窓18が設けられていることが好ましい。これにより、検出部40と、反応液140との間に存在する部材を少なくすることができるので、より適切な蛍光測定ができる。
【0061】
検出部40は、検出タイミングを決定することを目的とした検出に加えて、例えばリアルタイムPCRのような反応における蛍光検出に使用することもできる。図2に示される例では、蓋70に遠い側に設けられた第1加熱部12に測定窓18が設けられている。これにより、低温(アニーリング及び伸長反応を行う温度)側で蛍光測定を行うリアルタイムPCR等の反応に熱サイクル装置1を用いる場合に、反応容器100の封止部120(後述)や蓋70の影響を受けずに適切な蛍光測定ができる。蓋70の側から蛍光測定を行う場合には、反応容器100の封止部120や蓋70が測定に影響を与えない設計とすることが好ましい。
【0062】
熱サイクル装置1は、制御部50を含んでいてもよい。制御部50は、駆動機構20を制御する。制御部50は、温度勾配形成部30を制御してもよい。制御部50による制御例については、「3.熱サイクル装置の制御例」の項で詳述される。制御部50は、専用回路により実現して後述される制御を行うように構成されていてもよい。また、制御部50は、例えばCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(不図示)に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、後述される制御を行うように構成されていてもよい。この場合、記憶装置は、制御に伴う中間データや制御結果などを一時的に記憶するワークエリアを有していてもよい。
【0063】
熱サイクル装置1の本体10は、図1(A)、図1(B)及び図2に示されるように、第1加熱部12と第2加熱部13との間にスペーサー14が設けられている。スペーサー14は、第1加熱部12又は第2加熱部13を保持する部材である。スペーサー14を設けることにより、第1加熱部12と第2加熱部13との間の距離を、より正確に定めることができる。すなわち、反応容器100の第1領域111及び第2領域112に対する第1加熱部12及び第2加熱部13の位置を、より正確に定めることができる。
【0064】
スペーサー14の材質は必要に応じて適宜選択できるが、断熱材であることが好ましい。これにより、第1加熱部12及び第2加熱部13の熱が相互に及ぼす影響を少なくできるので、第1加熱部12及び第2加熱部13の温度制御が容易になる。スペーサー14が断熱材である場合には、装着部11に反応容器100を装着した場合に、第1加熱部12と第2加熱部13との間の領域において反応容器100を囲むようにスペーサー14が配置されることが好ましい。これにより、反応容器100の第1加熱部12と第2加熱部13との間の領域からの放熱を抑制できるので、反応容器100の温度がより安定する。本実施形態においては、スペーサー14は断熱材であり、図2に示される例では、装着部11はスペーサー14を貫通して構成されている。これにより、第1加熱部12及び第2加熱部13によって反応容器100を加熱した場合に、反応容器100の熱が逃げにくくなるので、第1領域111及び第2領域112の温度をより安定させることができる。
【0065】
熱サイクル装置1は、蓋70を含んでいてもよい。図1(A)及び図2に示される例では、蓋70は、装着部11を覆うように設けられている。蓋70が装着部11を覆うことで、第1加熱部12によって加熱をした場合に、熱サイクル装置1から外部への放熱を抑制できるので、熱サイクル装置1内の温度を安定させることができる。蓋70は、固定部71によって本体10に固定されてもよい。本実施形態においては、固定部71は磁石である。なお、固定部71としてはこれに限らず、例えば、蝶番やキャッチクリップを採用してもよい。図1(B)及び図2に示される例では、本体10の蓋70が接触する面の一部には磁石が設けられている。蓋70にも、本体10の磁石が接触する位置に磁石が設けられており、蓋70で装着部11を覆うと、磁力によって蓋70が本体10に固定される。これにより、駆動機構20によって本体10を駆動した場合に蓋70が外れたり動いたりすることを防止できる。したがって、蓋70が外れることで熱サイクル装置1内の温度が変化することを防止できるので、より正確な熱サイクルを後述する反応液140に施すことができる。
【0066】
本体10は、気密性の高い構造であることが好ましい。本体10が気密性の高い構造であると、本体10内部の空気が本体10の外部に逃げにくいので、本体10内の温度がより安定する。
【0067】
熱サイクル装置1は、反応容器100を第1加熱部12及び第2加熱部13に対して所定の位置に保持する構造を含むことが好ましい。これにより、第1加熱部12及び第2加熱部13によって反応容器100の所定の領域を加熱できる。より具体的には、反応容器100を構成する流路110の、第1領域111を第1加熱部12によって、第2領域112を第2加熱部13によって、加熱できる。本実施形態においては反応容器100の位置を定める構造は第2ヒートブロック13bである。
【0068】
なお、反応容器100の位置を定める構造は所望の位置に反応容器100を保持できるものであればよい。反応容器100の位置を定める構造は、熱サイクル装置1に設けられた構造であっても、反応容器100に設けられた構造であっても、両方の組み合わせであってもよい。例えば、螺子、差込式の棒、反応容器100に突出部113を設けた構造、装着部11と反応容器100とが嵌合する構造を採用できる。螺子や棒を用いる場合には、螺子の長さやねじ込む長さ、棒を差込む位置を変更することで、熱サイクルの反応条件や反応容器100の大きさ等に合わせて保持する位置を調節できるようにしてもよい。
【0069】
熱サイクル装置1は、本体10の温度を一定に保つ機構を有してもよい。これにより、反応容器100の温度がより安定するので、より正確な熱サイクルを反応液140に施すことができる。本体10を保温する機構としては、例えば恒温槽を採用できる。
【0070】
図1(A)、図1(B)及び図2に示されるスペーサー14は、透明であってもよい。これにより、透明な反応容器100を熱サイクル処理に使用した場合に、装置の外部から反応液140が移動する様子を観察できる。したがって、熱サイクル処理が適切に行われているか否かを、目視により確認できる。したがって、ここでの「透明」の程度は、これらの部材を熱サイクル装置1に採用して熱サイクル処理を行った場合に、反応液140の移動が視認できる程度であればよい。
【0071】
熱サイクル装置1の内部を観察するためには、スペーサー14を透明にしても、スペーサー14を無くしてもよい。観察者と観察対象の反応容器100の間に存在する部材が少ないほど、物体による光の屈折の影響が少なくなるので、内部の観察が容易になる。また、スペーサー14をなくすことにより、部材が少なくなるため、製造コストを削減できる。
【0072】
本実施形態においては、熱サイクル装置1が蓋70を含む例を示したが、蓋70は無くてもよい。これにより、使用する部材の数を減らすことができるので、製造コストを削減できる。
【0073】
熱サイクル装置1は、図1(A)及び図1(B)に示されるように、表示部24を含んでもよい。表示部24は表示装置であり、熱サイクル装置1に関する各種情報を表示する。例えば、制御部50が表示部24を制御してもよい。表示部24は、操作部25で設定される熱サイクル条件や熱サイクル処理中に計測された時間や温度を表示してもよい。例えば、操作部25を操作して設定を行う場合には入力された条件を表示したり、熱サイクル処理中には温度センサーによって測定された温度、第1の配置又は第2の配置において経過した時間、熱サイクルを施したサイクル数を表示したりしてもよい。また、熱サイクル処理が終了した場合や、装置に何らかの異常が発生した場合にも、その旨を表示してもよい。さらに、音声による通知を行ってもよい。表示や音声による通知を行うことで、熱サイクル処理の進行や終了を装置の使用者が容易に把握できる。
【0074】
熱サイクル装置1は、図1(A)及び図1(B)に示されるように、操作部25を含んでもよい。操作部25はUI(ユーザーインターフェイス)であり、熱サイクル条件を設定するための操作を受け付ける機器である。操作部25を操作することにより、熱サイクル条件として、例えば、第1の温度、第2の温度、第1の配置が保持される保持時間、第2の配置が保持される保持時間、及び熱サイクルのサイクル数のうち、少なくとも1つを設定できるように構成されていてもよい。操作部25は制御部50と機械的又は電子的に連動しており、操作部25での設定が制御部50による制御に反映される。これによって、反応液140に施される熱サイクル条件を変更できるので、所望の熱サイクルを反応液140に施すことができる。操作部25は、上述のいずれかの項目を個別に設定できるものであっても、例えば事前に登録した複数の熱サイクル条件の中から1つを選択すると、必要な項目を制御部50が設定するものであってもよい。図1(A)及び図1(B)に示される例では、操作部25はボタン式であり、項目別にボタンを押すことで熱サイクル条件を設定できる。
【0075】
2.本実施形態に係る熱サイクル装置に装着される反応容器の構成
図3は、本実施形態に係る熱サイクル装置1に装着される反応容器100の構成を表す断面図である。図3において、矢印gは重力の作用する方向を表す。
【0076】
反応容器100は、反応液140と、反応液140とは比重が異なり、かつ、反応液140とは混和しない液体130(以下、「液体130」という)とが充填され、反応液140が対向する内壁に沿って移動する流路110を含む。本実施形態においては、液体130は、反応液140よりも比重が小さく、かつ、反応液140とは混和しない液体である。なお、液体130として、例えば、反応液140とは混和せず、かつ、反応液140よりも比重が大きい液体を採用してもよい。図3に示される例では、反応容器100は流路110及び封止部120を含む。流路110には、反応液140と、液体130とが充填され、封止部120によって封止されている。また、反応容器100は、検出部40によって行われる蛍光検出に支障がない程度に、所定の波長の光に対して透明性のある材料(所定の波長の光が透過する)で構成されている。
【0077】
流路110は、対向する内壁に沿って反応液140が移動するように形成されている。ここで、流路110の「対向する内壁」とは、流路110の壁面の、向かい合う位置関係にある2つの領域を意味する。「沿って」とは、反応液140と流路110の壁面との距離が近い状態を意味し、反応液140が流路110の壁面に接触する状態を含む。したがって、「対向する内壁に沿って反応液140が移動する」とは、「流路110の壁面の、向かい合う位置関係にある2つの領域の両方に対して距離が近い状態で、反応液140が移動する」ことを意味する。換言すれば、流路110の対向する2つ内壁間の距離は、反応液140が該内壁に沿って移動する程度の距離である。
【0078】
反応容器100の流路110がこのような形状であると、流路110内を反応液140が移動する方向を規制できるので、流路110内を反応液140が移動する経路をある程度規定できる。これにより、流路110内を反応液140が移動する所要時間を、ある程度の範囲に制限できる。したがって、流路110の対向する2つ内壁間の距離は、流路110内を反応液140が移動する時間のバラツキによって生じる、反応液140に対して施される熱サイクル条件のバラツキが、所望の精度を満たせる程度、すなわち、反応の結果が所望の精度を満たせる程度であることが好ましい。より具体的には、流路110の対向する2つの内壁間の反応液140が移動する方向に対して垂直な方向における距離が、反応液140の液滴が2つ以上入らない程度であることが望ましい。
【0079】
図3に示される例では、反応容器100の外形は円柱状であり、中心軸に沿う方向(図3における上下方向)を長手方向とする流路110が形成されている。流路110の形状は、流路110の長手方向に対して垂直な方向の断面、すなわち流路110のある領域における反応液140が移動する方向に対して垂直な断面(これを流路110の「断面」とする)が円形となる円柱状である。したがって、反応容器100においては、流路110の対向する内壁は、流路110の断面の中心を挟んで対向する流路110の壁面上の2点を含む領域である。また、「反応液140が移動する方向」は、流路110の長手方向となる。
【0080】
なお、流路110の断面の形状は円形に限らず、多角形や楕円形など、対向する内壁に沿って反応液140が移動できる限り任意である。例えば、反応容器100の流路110の断面が多角形の場合には、「対向する内壁」は、流路110に内接する断面が円形の流路を仮定した場合に、該流路の対向する内壁であるものとする。すなわち、流路110に内接する、断面が円形の仮想流路の対向する内壁に沿って反応液140が移動するように流路110が形成されていればよい。これにより、流路110の断面が多角形の場合にも、第1領域111と第2領域112との間を反応液140が移動する経路をある程度規定できる。したがって、反応液140が第1領域111と第2領域112との間を移動する所要時間を、ある程度の範囲に制限できる。
【0081】
反応容器100の第1領域111は、第1加熱部12によって第1の温度に加熱される、流路110の一部の領域である。第2領域112は、第2加熱部13によって第1の温度とは異なる第2の温度に加熱される、第1領域111とは異なる流路110の一部の領域である。図3に示される例では、第1領域111は、流路110の長手方向における一方の端部を含む領域であり、第2領域112は、流路110の長手方向における他方の端部を含む領域である。図3に示される例では、流路110のうち封止部120に相対的に近い側の端部を含む点線で囲まれた領域が第1領域111であり、流路110のうち封止部120に相対的に遠い側の端部を含む点線で囲まれた領域が第2領域112である。本実施形態に係る熱サイクル装置1は、温度勾配形成部30の第1加熱部12が反応容器100の第1領域111を第1の温度に加熱し、温度勾配形成部30の第2加熱部13が反応容器100の第2領域112を第2の温度に加熱することにより、反応容器100の流路110に対して、反応液140が移動する方向に温度勾配を形成する。
【0082】
流路110には、液体130と、反応液140とが充填されている。液体130は、反応液140とは混和しない、すなわち混ざり合わない性質であるため、図3に示されるように、反応液140は液体130の中に液滴の状態で保持されている。反応液140は、液体130よりも比重が大きいため、流路110の重力の作用する方向における最下部の領域に位置している。液体130としては、例えば、ジメチルシリコーンオイル又はパラフィンオイルを使用できる。反応液140は、反応に必要な成分を含む液体である。反応がPCRである場合には、反応液140には、PCRによって増幅されるDNA(標的核酸)、DNAを増幅するために必要なDNAポリメラーゼ、並びにプライマー等が含まれる。例えば、液体130としてオイルを用いてPCRを行う場合には、反応液140は上述の成分を含む水溶液であることが好ましい。
【0083】
反応容器100に充填された反応液140又は液体130は、検出部40によって検出される所定の波長(本実施形態においては、第1の波長)の光を発する蛍光物質を含んでいる。すなわち、第1の波長の光を発する蛍光物質は、反応液140及び液体130のうちの一方にのみ含まれている。したがって、検出部40によって第1の波長の光の強度を検出することで、反応容器100内における反応液140の位置を推定できる。蛍光物質は、特定のDNAと相補的に結合する蛍光プローブや、蛍光を発する蛍光色素であってもよい。
【0084】
反応液140が、例えば蛍光プローブとして第1の波長の光を発する蛍光物質を含んでいる場合には、液体130は第1の波長とは異なる第2の波長の光を発する蛍光物質を含んでいてもよい。これによって、例えば、第2の波長の光の強度を測定することによって、反応容器100に充填された液体130の量を推定できる。
【0085】
液体130が第1の波長の光を発する蛍光物質を含んでいる場合には、反応液140は第1の波長とは異なる第2の波長の光を発する蛍光物質を含んでいてもよい。これによって、例えば、反応液140がPCR用の反応液であり、第2の波長の光を発する蛍光物質が特定のDNAと相補的に結合する蛍光プローブである場合には、第2の波長の光の強度を測定することによって、反応液140に含まれる特定のDNAの量を推定できる。
【0086】
3.熱サイクル装置の制御例
次に、本実施形態に係る熱サイクル装置1の熱サイクル処理手順例について説明する。以下では、駆動機構20が、装着部11に反応容器100を装着した場合に、装着部11及び温度勾配形成部30を、第1の配置と、流路110内において重力の作用する方向における最下点の位置が第1の配置とは異なる第2の配置との間で回転させる制御を例にとり説明する。
【0087】
図4(A)は、第1の配置における、図1(A)のA−A線を通り回転軸Rに垂直な面における断面を模式的に示す断面図、図4(B)は、第2の配置における図1(A)のA−A線を通り回転軸Rに垂直な面における断面を模式的に示す断面図である。図4(A)及び図4(B)において、白抜き矢印は本体10の回転方向、矢印gは重力の作用する方向を表す。
【0088】
図4(A)に示されるように、第1の配置は、流路110のうち封止部120に相対的に遠い側の端部が重力の作用する方向における最下点となる配置である。すなわち、第1の配置は、装着部11に反応容器100を装着した場合に、反応容器100の第1領域111を、重力の作用する方向における流路110の最下部に位置させる配置である。図4(A)に示される例では、第1の配置では、液体130よりも比重が大きい反応液140は第1領域111に存在する。したがって、反応液140は第1の温度の下に置かれる。
【0089】
図4(B)に示されるように、第2の配置は、流路110のうち封止部120に相対的に近い側の端部が重力の作用する方向における最下点となる配置である。すなわち、第2の配置は、装着部11に反応容器100を装着した場合に、反応容器100の第2領域112を、重力の作用する方向における流路110の最下部に位置させる配置である。図4(B)に示される例では、第2の配置では、液体130よりも比重が大きい反応液140は第2領域112に存在する。したがって、反応液140には第2の温度の下に置かれる。
【0090】
駆動機構20が、装着部11及び温度勾配形成部30を、第1の配置と、第1の配置とは異なる第2の配置との間で回転させることにより、重力の作用によって反応液140が流路110の第1の領域と第2の領域とを移動する。したがって、繰り返し配置を切換えることにより、反応液140は、第1の温度と第2の温度とに交互にさらされるので、反応液140に対して熱サイクルを施すことができる。
【0091】
また、本実施形態に係る熱サイクル装置1は、装着部11の配置を切換えることで、反応容器100が第1の配置に保持された状態と、反応容器100が第2の配置に保持された状態とを切換えることができる。したがって、第1の配置又は第2の配置に反応容器100を保持する間、反応液140を所定の温度に保持できるので、加熱時間を容易に制御可能な熱サイクル装置を提供できる。
【0092】
駆動機構20は、第1の配置から第2の配置へと回転させる場合と、第2の配置から第1の配置へと回転させる場合とで、反対方向に装着部11及び温度勾配形成部30を回転させてもよい。これにより、回転によって生じる導線などの配線の捩れを低減するための特別な機構が不要となる。したがって、小型化に適した熱サイクル装置を実現できる。また、第1の配置から第2の配置へと回転させる場合の回転数、及び、第2の配置から第1の配置へと回転させる場合の回転数は、1回転未満(回転角度が360°未満)であることが好ましい。これにより、配線が捩れる程度を軽減できる。
【0093】
3−1.熱サイクル装置の制御方法の第1具体例
図5は、第1具体例に係る熱サイクル装置1の機能ブロック図である。図6は、第1具体例に係る熱サイクル装置1の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0094】
第1具体例に係る熱サイクル装置1の制御方法は、切換えタイミングに基づいて、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えさせることと、反応容器100内からの所定の波長の光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミング検出することと、切換タイミングと、検出タイミングとに基づいて、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置及び第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる時間である保持時間を決定することと、を含む。
【0095】
図5及び図6に示される例では、熱サイクル装置1の制御部50が、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えさせるタイミングである切換タイミングと、検出部40によって検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングと、に基づいて、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置及び第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる時間である保持時間を決定する。例えば、制御部50は、切換タイミングから検出タイミングまでの時間に、予め設定された時間を加えて保持時間を決定してもよい。また例えば、制御部50は、切換タイミングから検出タイミングまでの時間に基づいて、反応液140が流路110内の残りの距離を移動するために必要な時間を推定し、推定された時間に、切換タイミングから検出タイミングまでの時間と予め設定された時間を加えて保持時間を決定してもよい。
【0096】
図5に示される例では、制御部50は、切換タイミングから検出タイミングまでの時間を計測する計測手段52と、計測手段52によって計測された前記時間に基づいて、保持時間を決定する決定手段54と、を含んで構成されている。また、図5に示される例では、制御部50は、駆動機構20を制御する駆動機構制御手段56を含んで構成されている。計測手段52、決定手段54及び駆動機構制御手段56は、専用回路により実現して後述される制御を行うように構成されていてもよい。また、計測手段52、決定手段54及び駆動機構制御手段56は、例えばCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(不図示)に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、後述される制御を行うように構成されていてもよい。
【0097】
図6に示される例では、まず、切換えタイミングに基づいて、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えさせる(ステップS100)。第1具体例においては、図5に示されるように、制御部50の駆動機構制御手段56が、切換えタイミングに基づいて、駆動機構20を制御するための情報を含む駆動機構制御情報D5を駆動機構20に出力する。また、駆動機構制御手段56は、切換えタイミングに関する情報を含む切換えタイミング情報D4を計測手段52に出力する。なお、切換えタイミングは、例えば、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を切換え始めるタイミングでもよいし、装着部11及び温度勾配形成部30の配置を切換え終えるタイミングでもよい。
【0098】
図6に示される例では、ステップS100の後に、反応容器100内からの所定の波長の光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングを検出する。基準値は、反応液140又は液体130に含まれている蛍光物質の量などを考慮して設計されていてもよいし、実験的に決定されていてもよい。
【0099】
より具体的には、まず、ステップS100の後に、反応容器100内からの所定の波長(本実施形態においては、第1の波長)の光の強度を検出する(ステップS102)。第1具体例においては、制御部50の計測手段52が、検出部40によって検出された第1の波長の光の強度に関する情報を含む検出結果情報D1の入力を検出部40から受け付ける。
【0100】
ステップS102の後に、検出部40によって検出された第1の波長の光の強度が基準値を跨いで変化したか否かを判定する(ステップS104)。検出部40によって検出された第1の波長の光の強度が基準値を跨いで変化していない場合(ステップS104でNOの場合)には、ステップS102及びステップS104を再び行う。検出部40によって検出された第1の波長の光の強度が基準値を跨いで変化した場合(ステップS104でYESの場合)には、このタイミングを検出タイミングとして、後述されるステップS106を行う。
【0101】
なお、検出工程のより具体的な例については、「3−1−1.反応液140が蛍光物質を含む場合」及び「3−1−2.液体130が蛍光物質を含む場合」の項で詳述される。
【0102】
図6に示される例では、ステップS104の後に、切換タイミングと、検出タイミングとに基づいて、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置及び第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる時間である保持時間を決定する(ステップS106)。図5に示される例では、まず、制御部50の計測手段52が、切換えタイミング情報D4に基づいて決定した切換えタイミングと、検出結果情報D1に基づいて決定した検出タイミングとに基づいて、切換えタイミングから検出タイミングまでの時間を第1時間として計測し、第1時間に関する情報を含む第1時間情報D2を決定手段54に出力する。次に、切換えタイミングから検出タイミングまでの時間に基づいて保持時間を決定する。図6に示される例では、保持時間は第1の配置を保持する時間である。例えば、反応液140を第1の温度の下に置かれるべき時間である第2時間に、第1時間を加えて保持時間としてもよい。決定手段54は、保持時間に関する情報を含む保持時間情報D3を駆動機構制御手段56に出力する。駆動機構制御手段56は、保持時間情報D3に基づいて、その後の駆動機構20を制御する。
【0103】
本実施形態によれば、装着部11の配置が、第1の配置と、重力の作用する方向における流路110の最下点の位置が第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換えられる。これにより、装着部11に装着された反応容器100の流路110における、重力の作用する方向における最下点の位置が変化する。したがって、温度勾配が形成された流路110内を、重力にしたがって反応液140が移動するので、反応液140に対して熱サイクルを施すことができる。また、本実施形態によれば、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えさせるタイミングである切換タイミングと、検出部40によって検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングとから、反応液140が適切な位置に移動するまでの時間を推定できる。第1具体例によれば、切換えタイミングと検出タイミングとに基づいて保持時間を決定するので、反応液140を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置及び熱サイクル装置の制御方法を実現できる。
【0104】
また、第1具体例によれば、所望の熱サイクルを確実に施すために、余裕を持たせて長めに保持時間を設定する必要がないため、短時間で熱サイクルを施すことができる。
【0105】
また、第1具体例によれば、切換タイミングから検出タイミングまでの時間に基づいて保持時間を決定するので、反応液140が適切な位置に移動するまでの時間に左右されず、反応液140を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置及び熱サイクル装置の制御方法を実現できる。
【0106】
3−1−1.反応液140が蛍光物質を含む場合
次に、反応容器100に充填された反応液140が蛍光物質を含む場合について、第1具体例をより詳細に説明する。
【0107】
図7は、熱サイクル装置1の制御方法の第1具体例における光の強度を示すグラフである。図7の横軸は時間、縦軸は検出部40で検出される光の強度を表す。
【0108】
図7に示される例では、時刻t0が装着部11及び温度勾配形成部30の配置を切換え終えるタイミング(切換えタイミング)である。図7には、第1状態〜第3状態までの3つの状態が例示されている。図7に示される例では、制御部50は、検出部40によって検出された光の強度が基準値を上回ったタイミングを検出タイミングとしている。また、検出タイミングを決定するための基準値を第1基準値V1としている。
【0109】
第1状態では、時刻t0の後、時刻t1において、検出部40で検出される光の強度が第1基準値V1を上回っている。したがって、制御部50の計測手段52は、時刻t1を検出タイミングとして、切換えタイミングから検出タイミングまでの時間である第1時間を計測する。決定手段54は、計測手段52で計測された第1時間に、予め設定された第2時間を加えて保持時間を決定する。
【0110】
検出部40によって検出される所定の波長(本実施形態においては、第1の波長)の光を発する蛍光物質が、反応容器100に充填された反応液140に含まれているので、第1の配置において、流路110内において重力の作用する方向における最下点近傍に反応液140が移動した場合には、検出部40によって検出される光の強度は大きくなる。したがって、制御部50は、検出部40によって検出される光の強度が基準値を上回ったタイミングを検出タイミングとすることによって、より正確に検出タイミングを定めることができる。
【0111】
第2状態では、時刻t0の後、検出部40で検出される光の強度は大きくなるものの、第1基準値V1を上回らない。第2状態となる場合としては、例えば、反応容器100が正しく装着部11に装着されていない場合、反応容器100に充填された反応液140の量が不十分である場合などがある。
【0112】
第3状態では、時刻t0の後、検出部40で検出される光の強度は大きくならず一定である。第3状態となる場合としては、例えば、反応容器100が装着部11に装着されていない場合、反応容器100に反応液140が充填されていない場合、反応液140が反応容器100の第2領域112などの内壁に付着して第1領域111まで移動していない場合などがある。
【0113】
第2状態及び第3状態のように、所定時間内に第1基準値V1を上回らない場合には、異常が発生したものとして、制御部50は、表示部24に異常である旨のメッセージを表示させたり、駆動機構20の動作を停止させたりしてもよい。これによって、熱サイクル装置1が所望の熱サイクルを反応液140に施せなくなる状態であることをユーザーに通知できる。
【0114】
3−1−2.液体130が蛍光物質を含む場合
次に、反応容器100に充填された液体130が蛍光物質を含む場合について、第1具体例をより詳細に説明する。
【0115】
図8は、熱サイクル装置1の制御方法の第1具体例における光の強度を示す他のグラフである。図8の横軸は時間、縦軸は検出部40で検出される光の強度を表す。
【0116】
図8に示される例では、時刻t10が装着部11及び温度勾配形成部30の配置を切換え終えるタイミング(切換えタイミング)である。図8には、第4状態〜第6状態までの3つの状態が例示されている。図8に示される例では、制御部50は、検出部40によって検出された光の強度が基準値を下回ったタイミングを検出タイミングとしている。また、検出タイミングを決定するための基準値を第2基準値V2としている。
【0117】
第4状態では、時刻t10の後、時刻t11において、検出部40で検出される光の強度が第2基準値V2を下回っている。したがって、制御部50の計測手段52は、時刻t11を検出タイミングとして、切換えタイミングから検出タイミングまでの時間である第1時間を計測する。決定手段54は、計測手段52で計測された第1時間に、予め設定された第2時間を加えて保持時間を決定する。
【0118】
検出部40によって検出される所定の波長(本実施形態においては、第1の波長)の光を発する蛍光物質が、反応容器100に充填された液体130に含まれているので、第1の配置において、流路110内において重力の作用する方向における最下点近傍に反応液140が移動した場合には、検出部40によって検出される光の強度は小さくなる。したがって、制御部50は、検出部40によって検出される光の強度が基準値を下回ったタイミングを検出タイミングとすることによって、より正確に検出タイミングを定めることができる。
【0119】
第5状態では、時刻t10の後、検出部40で検出される光の強度は小さくなるものの、第2基準値V2を下回らない。第5状態となる場合としては、例えば、反応容器100が正しく装着部11に装着されていない場合、反応容器100に充填された反応液140の量が不十分である場合などがある。
【0120】
第6状態では、時刻t10の後、検出部40で検出される光の強度は小さくならず一定である。第6状態となる場合としては、例えば、反応容器100が装着部11に装着されていない場合、反応容器100に反応液140が充填されていない場合、反応液140が反応容器100の第2領域112などの内壁に付着して第1領域111まで移動していない場合などがある。
【0121】
第5状態及び第6状態のように、所定時間内に第2基準値V2を下回らない場合には、異常が発生したものとして、制御部50は、表示部24に異常である旨のメッセージを表示させたり、駆動機構20の動作を停止させたりしてもよい。これによって、熱サイクル装置1が所望の熱サイクルを反応液140に施せなくなる状態であることをユーザーに通知できる。
【0122】
3−2.熱サイクル装置の制御方法の第2具体例
図9は、第2具体例に係る熱サイクル装置1の機能ブロック図である。図10は、第2具体例に係る熱サイクル装置1の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【0123】
第2具体例に係る熱サイクル装置1の制御方法は、反応容器100内からの所定の波長の光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミング検出することと、検出タイミングから所定の時間を経過するまで、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置及び第2の配置のうち少なくとも一方に保持させることと、を含む。
【0124】
図9及び図10に示される例では、熱サイクル装置1の制御部50が、検出部40によって検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングから所定の時間を経過するまで、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置及び第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる。
【0125】
図9に示される例では、制御部50は、検出部40の検出結果に基づいて検出タイミングを決定するタイミング決定手段58と、駆動機構20を制御する駆動機構制御手段56を含んで構成されている。駆動機構制御手段56及びタイミング決定手段58は、専用回路により実現して後述される制御を行うように構成されていてもよい。また、駆動機構制御手段56及びタイミング決定手段58は、例えばCPU(Central Processing Unit)がROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置(不図示)に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、後述される制御を行うように構成されていてもよい。
【0126】
図10に示される例では、まず、切換えタイミングに基づいて、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置と第2の配置との間で切換えさせる(ステップS200)。第2具体例においては、図9に示されるように、制御部50の駆動機構制御手段56が、切換えタイミングに基づいて、駆動機構20を制御するための情報を含む駆動機構制御情報D5を駆動機構20に出力する。なお、切換えタイミングは、例えば、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を切換え始めるタイミングでもよいし、装着部11及び温度勾配形成部30の配置を切換え終えるタイミングでもよい。
【0127】
図10に示される例では、ステップS200の後に、反応容器100内からの所定の波長の光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングを検出する。基準値は、反応液140又は液体130に含まれている蛍光物質の量などを考慮して設計されていてもよいし、実験的に決定されていてもよい。
【0128】
より具体的には、まず、ステップS200の後に、反応容器100内からの所定の波長(本実施形態においては、第1の波長)の光の強度を検出する(ステップS202)。第2具体例においては、制御部50のタイミング決定手段58が、検出部40によって検出された第1の波長の光の強度に関する情報を含む検出結果情報D1の入力を検出部40から受け付ける。
【0129】
ステップS202の後に、検出部40によって検出された第1の波長の光の強度が基準値を跨いで変化したか否かを判定する(ステップS204)。検出部40によって検出された第1の波長の光の強度が基準値を跨いで変化していない場合(ステップS204でNOの場合)には、ステップS202及びステップS204を再び行う。検出部40によって検出された第1の波長の光の強度が基準値を跨いで変化した場合(ステップS204でYESの場合)には、このタイミングを検出タイミングとして決定し、検出タイミングに関する情報を含む検出タイミング情報D6を駆動機構制御手段56に出力する。
【0130】
なお、検出工程のより具体的な例については、「3−2−1.反応液140が蛍光物質を含む場合」及び「3−2−2.液体130が蛍光物質を含む場合」の項で詳述される。
【0131】
図10に示される例では、ステップS204の後に、検出タイミングから所定の時間を経過するまで、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置及び第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる(ステップS206)。図9及び図10に示される例では、制御部50の駆動機構制御手段56が、検出タイミング情報D6に基づいて、検出タイミングから所定の時間を経過するまで、駆動機構20によって装着部11及び温度勾配形成部30の配置を第1の配置に保持させるように、駆動機構20に駆動機構制御情報D5を出力する。
【0132】
本実施形態によれば、装着部11の配置が、第1の配置と、重力の作用する方向における流路110の最下点の位置が第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換えられる。これにより、装着部11に装着された反応容器100の流路110における、重力の作用する方向における最下点の位置が変化する。したがって、温度勾配が形成された流路110内を、重力にしたがって反応液140が移動するので、反応液140に対して熱サイクルを施すことができる。また、本実施形態によれば、検出部40によって検出された光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングから、反応液140が適切な位置に移動するタイミングを推定できる。第2具体例によれば、装着部11及び温度勾配形成部30の配置を、検出タイミングを基準として所定の時間保持させるので、反応液140を所望の時間にわたって所望の温度状態とすることができる熱サイクル装置及び熱サイクル装置の制御方法を実現できる。
【0133】
また、第2具体例によれば、所望の熱サイクルを確実に施すために、余裕を持たせて配置を保持する時間を長めに設定する必要がないため、短時間で熱サイクルを施すことができる。
【0134】
3−2−1.反応液140が蛍光物質を含む場合
次に、反応容器100に充填された反応液140が蛍光物質を含む場合について、第2具体例をより詳細に説明する。
【0135】
図11は、熱サイクル装置1の制御方法の第2具体例における光の強度を示すグラフである。図11の横軸は時間、縦軸は検出部40で検出される光の強度を表す。
【0136】
図11に示される例では、時刻t20が装着部11及び温度勾配形成部30の配置を切換え終えるタイミング(切換えタイミング)である。図11には、第7状態〜第9状態までの3つの状態が例示されている。図11に示される例では、制御部50は、検出部40によって検出された光の強度が基準値を上回ったタイミングを検出タイミングとしている。また、検出タイミングを決定するための基準値を第1基準値V1としている。
【0137】
第7状態では、時刻t20の後、時刻t21において、検出部40で検出される光の強度が第1基準値V1を上回っている。したがって、制御部50のタイミング決定手段58は、時刻t21を検出タイミングとして決定する。駆動機構制御手段56は、タイミング決定手段58で決定された検出タイミングから、予め設定された第3時間が経過するまで、第1の配置を保持させるように、駆動機構20に駆動機構制御情報D5を出力する。
【0138】
検出部40によって検出される所定の波長(本実施形態においては、第1の波長)の光を発する蛍光物質が、反応容器100に充填された反応液140に含まれているので、第1の配置において、流路110内において重力の作用する方向における最下点近傍に反応液140が移動した場合には、検出部40によって検出される光の強度は大きくなる。したがって、制御部50は、検出部40によって検出される光の強度が基準値を上回ったタイミングを検出タイミングとすることによって、より正確に検出タイミングを定めることができる。
【0139】
第8状態では、時刻t20の後、検出部40で検出される光の強度は大きくなるものの、第1基準値V1を上回らない。第8状態となる場合としては、例えば、反応容器100が正しく装着部11に装着されていない場合、反応容器100に充填された反応液140の量が不十分である場合などがある。
【0140】
第9状態では、時刻t20の後、検出部40で検出される光の強度は大きくならず一定である。第9状態となる場合としては、例えば、反応容器100が装着部11に装着されていない場合、反応容器100に反応液140が充填されていない場合、反応液140が反応容器100の第2領域112などの内壁に付着して第1領域111まで移動していない場合などがある。
【0141】
第8状態及び第9状態のように、所定時間内に第1基準値V1を上回らない場合には、異常が発生したものとして、制御部50は、表示部24に異常である旨のメッセージを表示させたり、駆動機構20の動作を停止させたりしてもよい。これによって、熱サイクル装置1が所望の熱サイクルを反応液140に施せなくなる状態であることをユーザーに通知できる。
【0142】
3−2−2.液体130が蛍光物質を含む場合
次に、反応容器100に充填された液体130が蛍光物質を含む場合について、第2具体例をより詳細に説明する。
【0143】
図12は、熱サイクル装置1の制御方法の第2具体例における光の強度を示す他のグラフである。図12の横軸は時間、縦軸は検出部40で検出される光の強度を表す。
【0144】
図12に示される例では、時刻t30が装着部11及び温度勾配形成部30の配置を切換え終えるタイミング(切換えタイミング)である。図12には、第10状態〜第12状態までの3つの状態が例示されている。図12に示される例では、制御部50は、検出部40によって検出された光の強度が基準値を下回ったタイミングを検出タイミングとしている。また、検出タイミングを決定するための基準値を第2基準値V2としている。
【0145】
第10状態では、時刻t30の後、時刻t31において、検出部40で検出される光の強度が第2基準値V2を下回っている。したがって、制御部50のタイミング決定手段58は、時刻t31を検出タイミングとして決定する。駆動機構制御手段56は、タイミング決定手段58で決定された検出タイミングから、予め設定された第3時間が経過するまで、第1の配置を保持させるように、駆動機構20に駆動機構制御情報D5を出力する。
【0146】
検出部40によって検出される所定の波長(本実施形態においては、第1の波長)の光を発する蛍光物質が、反応容器100に充填された液体130に含まれているので、第1の配置において、流路110内において重力の作用する方向における最下点近傍に反応液140が移動した場合には、検出部40によって検出される光の強度は小さくなる。したがって、制御部50は、検出部40によって検出される光の強度が基準値を下回ったタイミングを検出タイミングとすることによって、より正確に検出タイミングを定めることができる。
【0147】
第11状態では、時刻t30の後、検出部40で検出される光の強度は小さくなるものの、第2基準値V2を下回らない。第11状態となる場合としては、例えば、反応容器100が正しく装着部11に装着されていない場合、反応容器100に充填された反応液140の量が不十分である場合などがある。
【0148】
第12状態では、時刻t30の後、検出部40で検出される光の強度は小さくならず一定である。第12状態となる場合としては、例えば、反応容器100が装着部11に装着されていない場合、反応容器100に反応液140が充填されていない場合、反応液140が反応容器100の第2領域112などの内壁に付着して第1領域111まで移動していない場合などがある。
【0149】
第11状態及び第12状態のように、所定時間内に第2基準値V2を下回らない場合には、異常が発生したものとして、制御部50は、表示部24に異常である旨のメッセージを表示させたり、駆動機構20の動作を停止させたりしてもよい。これによって、熱サイクル装置1が所望の熱サイクルを反応液140に施せなくなる状態であることをユーザーに通知できる。
【0150】
なお、上述した実施形態及び変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば各実施形態及び各変形例は、複数を適宜組み合わせることが可能である。
【0151】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0152】
1 熱サイクル装置、10 本体、11 装着部、11a 第1の装着部、11b 第2の装着部、12 第1加熱部、12a 第1ヒーター、12b 第1ヒートブロック、13 第2加熱部、13a 第2ヒーター、13b 第2ヒートブロック、14 スペーサー、18 測定窓、20 駆動機構、21 軸受け、22 スライド棒、23 観察窓、24 表示部、25 操作部、30 温度勾配形成部、31 熱源部、32 熱伝導部、40 検出部、41a,42a 検出器、41b,42b スライド棒、50 制御部、52 計測手段、54 決定手段、56 駆動機構制御手段、58 タイミング決定手段、70 蓋、71 固定部、100 反応容器、110 流路、111 第1領域、112 第2領域、113 突出部、120 封止部、130 液体、140 反応液、D1 検出結果情報、D2 第1時間情報、D3 保持時間情報、D4 切換えタイミング情報、D5 駆動機構制御情報、D6 検出タイミング情報、R 回転軸、V1 第1基準値、V2 第2基準値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液と、前記反応液とは比重が異なり、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液及び前記反応液とは混和しない液体のいずれか一方は、所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、前記反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、
前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記流路に対して、前記反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、
前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における前記流路の最下点の位置が前記第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構と、
前記反応容器内からの前記所定の波長の光の強度を検出する検出部と、
前記駆動機構を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置と前記第2の配置との間で切換えさせるタイミングである切換タイミングと、
前記検出部によって検出された前記光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングと、に基づいて、
前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置及び前記第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる時間である保持時間を決定する、熱サイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱サイクル装置において、
前記制御部は、
前記切換タイミングから前記検出タイミングまでの時間を計測する計測手段と、
前記計測手段によって計測された前記時間に基づいて、前記保持時間を決定する決定手段と、
を含む、熱サイクル装置。
【請求項3】
反応液と、前記反応液とは比重が異なり、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液及び前記反応液とは混和しない液体のいずれか一方は、所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、前記反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、
前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記流路に対して、前記反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、
前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における前記流路の最下点の位置が前記第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構と、
前記反応容器内からの前記所定の波長の光の強度を検出する検出部と、
前記駆動機構を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記検出部によって検出された前記光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミングから所定の時間が経過するまで、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置及び前記第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる、熱サイクル装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱サイクル装置において、
前記検出部は、前記第1の配置となった場合に、前記流路内において重力の作用する方向における最下点を含む領域からの前記光の強度を検出する、熱サイクル装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱サイクル装置において、
前記反応容器に充填された前記反応液は、前記蛍光物質を含み、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記光の強度が前記基準値を上回ったタイミングを前記検出タイミングとする、熱サイクル装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱サイクル装置において、
前記反応容器に充填された前記反応液とは混和しない液体は、前記蛍光物質を含み、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記光の強度が前記基準値を下回ったタイミングを前記検出タイミングとする、熱サイクル装置。
【請求項7】
反応液と、前記反応液とは比重が異なり、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、
前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記流路に対して、前記反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、
前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における前記流路の最下点の位置が前記第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構と、
を含む熱サイクル装置の制御方法であって、
前記反応容器に充填された前記反応液及び前記反応液とは混和しない液体のいずれか一方は、所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、
切換タイミングに基づいて、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置と前記第2の配置との間で切換えさせることと、
前記反応容器内からの所定の波長の光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミング検出することと、
前記切換タイミングと、前記検出タイミングとに基づいて、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置及び前記第2の配置のうち少なくとも一方に保持させる時間である保持時間を決定することと、
を含む、熱サイクル装置の制御方法。
【請求項8】
反応液と、前記反応液とは比重が異なり、かつ、前記反応液とは混和しない液体とが充填され、前記反応液が対向する内壁に沿って移動する流路を含む反応容器を装着する装着部と、
前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記流路に対して、前記反応液が移動する方向に温度勾配を形成する温度勾配形成部と、
前記装着部に前記反応容器を装着した場合に、前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を、第1の配置と、重力の作用する方向における前記流路の最下点の位置が前記第1の配置とは異なる第2の配置との間で切換える駆動機構と、
を含む熱サイクル装置の制御方法であって、
前記反応容器に充填された前記反応液及び前記反応液とは混和しない液体のいずれか一方は、所定の波長の光を発する蛍光物質を含み、
前記反応容器内からの所定の波長の光の強度が基準値を跨いで変化するタイミングである検出タイミング検出することと、
前記検出タイミングから所定の時間を経過するまで、前記駆動機構によって前記装着部及び前記温度勾配形成部の配置を前記第1の配置及び前記第2の配置のうち少なくとも一方に保持させることと、
を含む、熱サイクル装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−68462(P2013−68462A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205938(P2011−205938)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】