説明

熱シール性包装材料

【課題】撥水性および非付着性を持ちつつ、耐熱性・密着性に優れた積層体ならびに包装材料を提供すること。
【解決手段】基材層(a)に熱シール層(b)が積層されており、熱シール層(b)の、基材層(a)と隣接していない面に、一次粒径が1μmから50μmの金平糖型のミクロン粒子(c)および一次粒径が5nmから1μmの疎水性微粒子と熱可塑性樹脂(d)との混合層である、微粒子含有層(e)を有している熱シール性包装材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等の生活用品、工業用品を包装するために用いる包装材料、特に内容物の非付着性に優れた包装材料に関する。具体的には、ヨーグルト、ゼリー、プリン、シロップなどの容器蓋材や、お粥、パスタソース、スープなどのレトルト食品包装材、化学品や医薬品等の液体、半固体、ゲル状物質などの保存用のフィルム材料、および化粧品・調味料、シロップ、洗顔クリームなどの保管用のプラスチック材料の熱接着層に付着防止性能を付与することにより、内容物の残存量低減、取り出し性・使いやすさの向上を可能にした熱シール性包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材料は生活の身の回りに多種多様に存在する。その内容物も多岐にわたり、例えばヨーグルト、液体洗剤、シャンプー、練り歯磨き、カレールー、パスタソース、調味料、シロップ、洗顔クリームなどのように、食品、飲料品、医薬品、化粧品、化学品等の生活用品、工業用品で、内容物の性状も固体、ゲル状、液体、粘性体など、広範囲に及ぶ。
【0003】
これらの内容物を包装するための包装材料においては、保存性、遮光性、熱接着性、耐熱性、耐久性などが要求される。
ところが、これらの特性を満たしている包装材料であっても、内容物が包装材料に付着するという問題がある。この問題によって、内容物を全て使い切ることが困難となり、それだけ無駄が生じることとなる。また、付着して残っている内容物については別途搾り出す、かき集めるなどして回収する手間がかかる上、その際に内容物が周囲へ飛散し、手や服を汚すなどして作業効率を低下させる。このため、包装材料において必要とされる上記項目に加え、内容物が付着しにくい性質(非付着性)を備えていることが望ましい。
【0004】
これに対し、付着を抑制する包装材料として、シール層に疎水性酸化物微粒子を三次元網目構造に積層した蓋材(特許文献1)が提案されている。また、ワックスを用いたものとしては、ワックス、固体微粒子、界面活性剤および分散媒を含有するコート剤塗膜を形成している包装材料(特許文献2)やワックスとそのワックス中に分散された充填剤とからなる付着防止性を有する包装容器用熱封緘性蓋材(特許文献3)、さらには、ワックスおよびエチレン-不飽和エステル重合体を成分として含み、ホットメルト接着剤からなる蓋材において、湿式シリカ粒子を付着している内容物付着防止蓋材(特許文献4)などが提案されている。
しかしながら、上記のような蓋材はワックスを用いているものについては特に熱に弱く、加熱によって付着防止性能が失われてしまったり、また、耐摩耗性や密着性も弱く、多少のひっかきによって性能を失ってしまったりすることが懸念される。
さらに、その他の添加剤を使用しており、それらの使用量を厳密に制御しなければ付着防止効果が低減するといったものについては、実用化を進める上でさらなる改善の余地がある。また、その性能を発揮する範囲は限定的であり、脂肪分を含んだ内容物に対する効果は弱い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4348401号公報
【特許文献2】特開2010−254377号公報
【特許文献3】特開2009−73523号公報
【特許文献4】特許第4668352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィルム包材は、その耐久性、形の自由度、柔軟度、操作性からさまざまな場面で活用されている。しかしながら、包装容器を開封する際の液はねや、内容物を注いだ後の注ぎ残りがあり、使用時や廃棄の際の操作性の不快感があった。
本発明は、内容物を注ぎだす際の液はね、注ぎ残りによる不快感を低減することを目的とし、撥水効果を向上させることを課題とする。さらに従来のものよりも耐熱性・密着性に優れていながら、良好な非付着性能を有する包装材料を提供することを目的とする。また、注ぎ残りを低減することで、ごみの削減、商品の有効利用につながり、エコな暮らしをサポートすることも可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、上記課題を解決するために、まず請求項1の発明は、少なくとも基材、熱シール層、微粒子含有層を有しており、微粒子含有層には、一次粒径が1μmから50μmの金平糖型のミクロン粒子、および一次粒径が5nmから1μmの疎水性微粒子が少なくとも一部に含まれることを特徴とする熱シール性包装材料である。
【0008】
請求項2に関わる発明は、前記の金平糖型のミクロン粒子は、材質表面の少なくとも一部にメチル基、アルキル基、フッ化アルキル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸、ヒドロキシル基のいずれかの官能基を有する無機酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載の熱シール性包装材料である。
【0009】
請求項3に関わる発明は、前記の金平糖型のミクロン粒子は、材質表面の少なくとも一部にメチル基、アルキル基、フッ化アルキル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸、ヒドロキシル基のいずれかの官能基を有する有機物であることを特徴とする、請求項1に記載の熱シール性包装材料である。
【0010】
請求項4に関わる発明は、前記の金平糖型のミクロン粒子は、材質表面がメチル基、アミノ基、エポキシ基、テトラメトキシシラン、イミダゾール基、あるいはシランカップリング剤のいずれかの処理をした官能基を付与したシリコーンであることを特徴とする、請求項1に記載の熱シール性包装材料である。
【0011】
請求項5に関わる発明は、前記疎水性微粒子の表面は、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかの疎水処理を施してあることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱シール性包装材料である。
【0012】
請求項6に関わる発明は、前記金平糖型のミクロン粒子は、コート層での上から見た際の占有面積が全体表面積の10%以上の占有率であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の熱シール性包装材料である。
【0013】
請求項7に関わる発明は、前記微粒子含有層には、アクリル、EVA、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン、ポリエステルシリコーン、フッ素シリコーン、シラン、シリル化ウレタンアクリル、ポバール、エバール、アモルファスシリカ、ウレタン、塩酢ビ、ポリアミド、硝化綿、ゾルゲル、SBR、アクリルシリコーン、アルキルオリゴマー、メジウムのいずれかの熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の熱シール性包装材料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の包装材料によれば、微粒子含有層には、一次粒径が1から50μmの金平糖型
のミクロン粒子、および一次粒径が5nmから1μmの疎水性微粒子が含まれることで、良好な熱接着性を維持しながらも、優れた非付着性を発揮する包装材料を得ることができる。すなわち、熱シール層の種類、厚み等の制限を受けることなく、熱接着性を実用上阻害せずに、高い非付着性を得ることができる。
【0015】
微粒子含有層に金平糖型の粒子を用いることで、粒径に対する見かけの表面積が増大する。また、金平糖型の粒子を用いることで、1μmから50μmのコア粒子の周りに無数の小突起を有しているおり、さらにそのまわりに5nmから1μmの疎水性微粒子と混在することで、ミクロンオーダーの粒子の周りそれより小さいオーダーの突起があり、その表面にナノ粒子が存在するというより複雑なフラクタル構造をとることで、これまでのものよりも優れた非付着効果を得ることができる。さらに、粒子に突起部があることで引っかかりができるために熱接着層への密着力が向上するという効果が得られる。
【0016】
従来の技術では熱シール層のミクロンオーダーの凹凸によって得ていた構造効果を、微粒子含有層に用いられる金平糖型粒子によって付与することで、耐熱性、密着性に優れた付着防止層(熱シール層および微粒子含有層)を得ることができる。
【0017】
以上のように、本発明の包装材料によれば、金平糖型粒子と疎水性微粒子を溶剤と熱可塑性樹脂で分散した撥水性コート剤を熱シール層上に塗布乾燥するという簡単な製造方法で、従来技術のものよりも非付着性および耐熱性、耐摩耗性に優れた包装材料の生産が可能となる。さらに、包装材料の形態によらずさまざまな用途に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に関わる包装材料の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の包装材料は、少なくとも基材、熱シール層、微粒子含有層を有しており、微粒子含有層には、一次粒径が1μmから50μmの金平糖型のミクロン粒子、および一次粒径が5nmから1μmの疎水性微粒子が含まれることを特徴とする。
【0020】
図1に本発明の包装材料の断面構造の模式図を示す。基材層(a)に熱シール層(b)が積層されているおり、熱シール層(b)の、基材層(a)と隣接していない面には、一次粒径が1μmから50μmの金平糖型のミクロン粒子(c)および一次粒径が5nmから1μmの疎水性微粒子(d)の混合層である、微粒子含有層(e)を有している。
【0021】
基材層(a)には、例えば、紙、合成材料、積層材料等の公知の材料用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト樹脂(PEN)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)などのポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などのポリオレフィン樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアクリロニトリル樹脂(PAN)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)などの延伸又は無延伸フィルム、ナイロン−6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押出しフィルム、ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体共押出しフィルムなどのいずれかが好適に使用できる。
またはこれらの2つ以上のフィルムを積層した複合フィルムであっても構わない。アルミニウム箔等の金属箔や紙も単体もしくは積層して用いることが出来る。
また、基材層の厚さは、通常、加工性を考慮して3μm〜150μmの範囲内で適宜選択される。加えて、公知の材料で構成されている各層が任意の位置に積層されても良い。例えば、印刷層、印刷保護層(いわゆるオーバープリント層)、着色層、接着剤層、接着強
化層、プライマーコート層、アンカーコート層、防滑剤層、滑剤層、防曇剤層等が挙げられる。
【0022】
熱シール層(b)としては、公知の材料を使用することができる。例えば、シーラントフィルムのPE、PP、EVA、スチレンゴム、SBR、アクリル、ポリエステル、熱溶融性のフッ素樹脂などである。より具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などの樹脂、またはこれらの樹脂を成膜化したフィルム、もしくはアクリル系、ポリエステル系、エチレン系、EVA系、塩酢ビ系、変性オレフィン系、合成ゴム系、ビニール系、EAA系、ウレタン系、イミン系などのラッカータイプ接着剤、主成分がエチレン酢酸ビニル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系、合成ゴム系、アクリル系、ポリウレタン系などのホットメルト接着剤等の接着剤を使用することができる。
これらの熱シール層の厚さは特に限定されないが、密封性、生産性、コスト等の観点より通常1μm〜150μm程度とすることが好ましい。
【0023】
金平糖型ミクロン粒子(c)とは、球状の粒子に、粒径より小さな複数の突起を有している粒子を指す。
微粒子含有層に金平糖型の粒子を用いることで、粒径に対する見かけの表面積が増大する。その一次粒径が1μmから50μmであると、一次粒径が5nmから1μmの疎水性微粒子と混在することで、ミクロンオーダーの粒子の周りにナノ粒子が付着したフラクタル構造をとり、より優れた非付着効果を得ることができる。さらに、粒子に突起部があることで引っかかりができるために、球状のミクロン粒子を用いた場合に比べて熱シール層への密着力が向上するという効果が得らる。
金平糖型ミクロン粒子(c)の材質表面は、必要によって表面処理を施してもよいが、素材に特に限定はない。例えば表面の官能基は、シラノール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、メチル基、アミノ基、エポキシ基、テトラメトキシシラン、イミダゾール基、あるいはシランカップリング剤によって表面を処理したものなどが挙げられる。
金平糖型ミクロン粒子(c)の材質は、無機酸化物としては例えば酸化珪素、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄などが挙げられる。また、有機物としては例えばポリスチレン、ポリ乳酸、アクリル、キトサン、デキストラン、アルブミン、アガロース、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
金平糖型粒子(c)の一次粒径が1μmより小さすぎると、微粒子含有層(e)に埋まってしまう部分が多くなり、ミクロン凹凸形状の構造効果が得られないため、撥水性が低下する。また、金平糖型粒子(c)の一次粒径が50μmより大きすぎると、微粒子含有層(e)中での金平糖粒子の接する面積が低下するので、脱落しやすくなってしまうため蓋材として好ましくない。
金平糖型粒子(c)について、その形状はミクロン粒子の表面積に対して、小突起の表面積が15%以上あることが好ましい。例えば、一次粒径20μmのミクロン粒子の表面に、小突起の粒径が2μmのものを60個程度所持しているものが挙げられる。小突起の表面積が、ミクロン粒子の表面積の15%より 少なすぎると、微粒子含有層(e)との密着性において、球状形状のミクロン粒子を用いた場合と有意な差が得られず、良好な密着性が得られない。
【0024】
疎水性微粒子(d)としては金属もしくは無機化合物の微粒子の表面上に撥水処理を施したものが好ましく使用出来る。たとえば、表面上にトリメチルシリル処理を施した酸化珪素、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。
疎水性微粒子としては、疎水性を有するものであれば特に限定されず、表面処理により疎水化されたものであっても良い。例えば、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルを有するものが挙げられる。とりわけ、より優れた非付着性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。
【0025】
微粒子含有層(e)においては、熱接着層(b)との密着性を高めるために、熱可塑性樹脂成分を用いる。熱可塑性樹脂としては密着性を高めるものであれば特に制限はないが、例えばポリエステル樹脂、EVA樹脂、SBR樹脂、ポリオレフィン、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。
【0026】
微粒子含有層(e)の塗布方法は、ロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート、キスリバースコート、ダイコート、ディップコート、スプレーコート、刷毛塗り等の公知の方法を採用することができる。
【0027】
微粒子含有層(e)の塗工液の溶媒は特に限定されず、例えばアルコール(エタノール、IPA、メタノール)、シクロヘキサン、トルエン、アセトン、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の水系溶剤もしくは有機溶剤を適宜選択することができる。この際、分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤等を併用することもできる。
【0028】
金平糖型のミクロン粒子は、コート層での上から見た際の占有面積が全体表面積の10%以上の占有率であることが必要である。占有面積がそれ以下であると、凹凸の隙間に内容物(たとえばヨーグルト)が入り込んでしまい、優れた非付着性が得られない。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を示し本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は実施例に限定されない。
【0030】
《実施例1》
PETフィルム(25μm)基材のコロナ処理を施した面に、グラビア印刷法により、ポリエステル系のアンカーコートを1g/m塗布し、その上にポリアクリレートを主成分とするラッカータイプ接着剤を3g/m塗布することで、熱シール層とした。この熱シール層の上に、エタノール溶液に分散させた疎水性シリカ微粒子(日本アエロジル;R812S 一次粒径7nm)、エタノール溶液に分散させた金平糖型のメチル基を一部持つシリカ粒子(一次粒径20μm)、熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂がそれぞれ乾燥重量で0.4g/m、0.2g/m、0.9g/mとなるように塗布し、80℃で1分間乾燥させることで熱シール性包装材料のサンプルを得た。
【0031】
《実施例2》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、用いた金平糖型粒子はメチル基を一部持つシリカ粒子(一次粒径30μm)とした。
【0032】
《実施例3》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、用いた金平糖型粒子はメチル基を一部持つシリカ粒子(一次粒径40μm)とした。
【0033】
《実施例4》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、用いた金平糖型粒子はメチル基を一部持つアクリル粒子(一次粒径20μm)とした。
【0034】
《実施例5》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、用いた金平糖型粒子はメチル基を一部持つシリコーン粒子(一次粒径20μm)とした。
【0035】
《実施例6》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、ミクロン粒子の占有面積が50%となるように配合を調整し塗工した。
【0036】
《実施例7》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、ミクロン粒子の占有面積が90%となるように配合を調整し塗工した。
【0037】
《実施例8》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、疎水性微粒子の表面官能基がジメチル基のものを用いた。
【0038】
《実施例9》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、疎水性微粒子の表面官能基がアルキル基のものを用いた。
【0039】
《実施例10》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、疎水性微粒子の一次粒径が50nmのものを用いた。
【0040】
《実施例11》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、疎水性微粒子の一次粒径が90nmのものを用いた。
【0041】
《実施例12》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、用いた熱可塑性樹脂の材質をEVAとした。
【0042】
《比較例1》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、用いた金平糖型粒子はメチル基を一部持つシリカ粒子の一次粒径が0.5μmのものを用いた。
【0043】
《比較例2》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、用いた金平糖型粒子はメチル基を一部持つシリカ粒子の一次粒径が80μmのものを用いた。
【0044】
《比較例3》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、用いたミクロン粒子は球状のものを用いた。
【0045】
《比較例4》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、ミクロン粒子の占有面積が1%となるように塗工した。
【0046】
《比較例5》
実施例1と同様の手順で熱シール性包装材料のサンプルを作製した。ただし、疎水性微粒子として一次粒径が3μmのものを用いた。
【0047】
《比較例6》
実施例1と同様の手順で、熱可塑性樹脂を用いずに熱シール性包装材料のサンプルを作製した。
【0048】
上記の熱シール性包装材料を用いて、内容物として水道水とヨーグルトとの熱シール層に対する転落性と密着性の評価を行った。評価方法は以下の通りである。
《評価》
転落性については、各作製サンプルの微粒子含有層側を試験面とし、この面を上面として水平な平台に固定して準備した。そこへ水道水、もしくはヨーグルトを至近距離から垂らし、平台を水平から傾け、液滴が転げ落ちる角度(転落角)をもって転落性を評価した。転落角20度以下を◎、20度超80度以下を○、試験面に付着が一部残るものを△、付着してしまうものを×とした。結果は表1に示した。
密着性については、セロハンテープを試験面に貼り付けたのちに剥離させ、その表面にて撥水性を見ることで、微粒子含有層の表面がセロハンテープに取られていないかどうかを確認した。セロハンテープ剥離後の表面にて撥水性があるものを○、水が少量付着してしまったものを△とした。結果は表1に示した。
【表1】

評価結果
【0049】
表1の結果から、実施例1〜12に示した本発明のフィルムでは密着性を有していることと同時に、高い非付着性を発揮していることがわかる。
ただし、比較例1,2の結果からも解るように、ミクロン粒子の一次粒径が請求項1の範囲より小さくなってしまうと、優れた非付着性が得られず、請求項1の範囲を超えると密着性が得られない。
比較例3の結果から分かるように、ミクロン粒子の形状が球状であると密着性が低下する。このことから、ミクロン粒子は金平糖型であることで、塗膜の密着性が向上していると言える。
比較例4・5の結果から解るように、用いる疎水性微粒子の一次粒径が請求項1の範囲を超える、あるいはミクロン粒子の占有面積が請求項6の範囲外であると、表面の煩雑さが足りないために優れた非付着性が得られない。
比較例6の結果から分かるように、請求項7に記載したとおり、熱可塑性樹脂を使用しないと密着性が得られない。
【0050】
このように本発明の熱シール性包装材料を用いた包装材料フィルムは熱シール層との密着性が高いことに加え、撥水性や撥ヨーグルト性が付与されており、内容物の付着による取り出し後の残存量を低減して取り出し性の向上を可能にした。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の包装材料は、蓋材、ピロー袋、ガセット袋、自立袋、三方シール袋、四方シール袋等の袋体詰替え容器、成形容器、包装シート、チューブ等の様々な用途に効果的に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
(a)…基材
(b)…熱シール層
(c)…金平糖型ミクロン粒子
(d)…疎水性微粒子および熱可塑性樹脂層
(e)…微粒子含有層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材、熱シール層、微粒子含有層を有しており、微粒子含有層には、一次粒径が1μmから50μmの金平糖型のミクロン粒子、および一次粒径が5nmから1μmの疎水性微粒子が少なくとも一部に含まれることを特徴とする熱シール性包装材料。
【請求項2】
前記の金平糖型のミクロン粒子は、材質表面の少なくとも一部にメチル基、アルキル基、フッ化アルキル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸、ヒドロキシル基のいずれかの官能基を有する無機酸化物であることを特徴とする、請求項1に記載の熱シール性包装材料。
【請求項3】
前記の金平糖型のミクロン粒子は、材質表面の少なくとも一部にメチル基、アルキル基、フッ化アルキル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸、ヒドロキシル基のいずれかの官能基を有する有機物であることを特徴とする、請求項1に記載の熱シール性包装材料。
【請求項4】
前記の金平糖型のミクロン粒子は、材質表面がメチル基、アミノ基、エポキシ基、テトラメトキシシラン、イミダゾール基、あるいはシランカップリング剤のいずれかの処理をした官能基を付与したシリコーンであることを特徴とする、請求項1に記載の熱シール性包装材料。
【請求項5】
前記疎水性微粒子の表面は、ジメチルシリル、トリメチルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサン、アミノアルキルシリル、アルキルシリル、メタクリルシリルのいずれかの疎水処理を施してあることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の熱シール性包装材料。
【請求項6】
前記金平糖型のミクロン粒子は、コート層での上から見た際の占有面積が全体表面積の10%以上の占有率であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の熱シール性包装材料。
【請求項7】
前記微粒子含有層には、アクリル、EVA、ポリエステル、ポリオレフィン、シリコーン、ポリエステルシリコーン、フッ素シリコーン、シラン、シリル化ウレタンアクリル、ポバール、エバール、アモルファスシリカ、ウレタン、塩酢ビ、ポリアミド、硝化綿、ゾルゲル、SBR、アクリルシリコーン、アルキルオリゴマー、メジウムのいずれかの熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の熱シール性包装材料。

【図1】
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【公開番号】特開2013−71336(P2013−71336A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212636(P2011−212636)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】