説明

熱フィードバックつきボロメータ

本発明は、温度に依存した可変抵抗器(R)を有する電磁放射測定要素(3)と熱的接触状態にある、入射電磁放射の熱吸収用外表面(2)を含み、測定要素(3)は、設定温度(Tref)に等しい電気測定抵抗器の温度を保持するために抵抗加熱手段に加熱パワーを印加するための補正器(14)を備える加熱フィードバックループ(6)内に位置しているボロメータに関する。本発明によると、抵抗加熱手段が測定要素(3)を含み、補正器(14)は加熱パワーの周波数成分(S1)を発生させるように設計され、その加熱パワーが、要素(3)にDCを含まない信号を印加するために要素(3)と補正器(14)との間に設けられた結合手段(17)に印加され、この結合手段(17)とは別個の結合手段(19)が抵抗器を所定の直流動作点に維持するために要素(3)とDCバイアス手段(18)との間に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射電磁放射(incident radiation)の強度または存在を測定するためのボロメータに関する。
本発明の利用分野は、例えば、赤外線撮像または室温での赤外線サーモグラフィに使用される電磁放射センサである。
【背景技術】
【0002】
ボロメータは、普通には、可変温度依存性の抵抗と入射電磁放射または他の外部信号を吸収する物体とから構成される。この抵抗の変化を測定することにより、その温度を測定することが可能となり、この温度自体によって入射外部信号の変化を突き止めることができる。
【0003】
この種のセンサは電磁放射測定(radiometry)に応用することができ、ボロメータの表面で吸収された電磁放射エネルギーはボロメータの昇温を生じる。この場合、ボロメータの温度の測定は受け取ったパワーの間接的測定値を与える。
【0004】
ボロメータの動作原理は、時定数を縮小しうる小型化を想定したとしても本質的に比較的遅い熱現象に基づいている。
本システムの熱特性は、測定要素とサーモスタットとの間の熱コンダクタンス(熱伝導率)ならびに電磁放射にさらされている該要素の熱容量とに関係する。これらのパラメータが本システムの応答時間を決定する。
【0005】
ボロメータの性能の改善は、目的とする用途の感度および応答時間の高めるためのキーポイントである。これらの性能の改善は、熱フィードバックによって本システムのループを閉じることにより達成することができる。
【0006】
文献「薄膜白金温度計を用いた室温Si34/SiO2膜型の電気置換型放射計」G. Allgre, B. Guillet, D. Robbes, L. Mechin, S. Lebargy, S. Nicoletti, Institute of Physics Publishing, Measurement Scienece and Technology, 17 (2006) 1-7は、熱の電気置換によるフィードバック制御の原理を説明している。入射光の不存在下では、吸収用受光体を構成する膜の温度は、抵抗加熱装置および温度制御装置を用いてTrefの一定値に保持される。光が存在すると、膜をTrefの温度に保持するのに必要なパワーは、抵抗加熱装置と分断(チョップ)された入射光とにより提供される。前記2種類の加熱方法のいずれか一方を用いることにより同じ温度上昇を得るのに必要な等価電力を測定することによって、吸収用受光体に及ぼす入射パワー(入射電磁放射エネルギー)を推定することができる。
【0007】
この熱フィードバックを備えた公知の装置は占有体積が大きいという欠点があり、これはシステムの集積と小型化には不利に作用する。この欠点は、例えば、夜間撮影(暗視)用カメラを構成するのに使用されうるピクセルのマトリックスといった高集積用途の場合には致命的である。別の欠点は、熱の堆積と温度測定との間の遅延であり、それにより閉ループ内でのシステムの性能(利得<ゲイン>>マージンおよび位相マージン)が制限される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「薄膜白金温度計を用いた室温Si3N4/SiO2膜型の電気置換型放射計」G. Allgre, B. Guillet, D. Robbes, L. Mechin, S. Lebargy, S. Nicoletti, Institute of Physics Publishing, Measurement Scienece and Technology, 17 (2006) 1-7
【発明の概要】
【0009】
本発明は、従来技術の欠点を克服するボロメータの提供と、フィードバック制御の性能の改善を目的とする。
このために、本発明の第1の目的は、入射電磁放射の熱吸収のための外表面を含み、この吸収表面は、温度に依存して可変性の電気測定抵抗器を有している、入射電磁放射を測定するための少なくとも1つの要素と熱的接触状態にあり、前記測定要素は、電気測定抵抗の温度を設定温度に等しく保持するために抵抗加熱手段に加熱パワーを印加するための補正器を含む加熱フィードバックループ内に位置しているボロメータであって、前記抵抗加熱手段が前記測定要素を含み、前記補正器は前記加熱パワーの周波数成分を発生させるために設けられ、その加熱パワーが前記測定要素に直流(DC)を含まないDCフリー信号を印加するために前記測定要素と前記補正器との間に設けられた第1の結合手段に印加され、前記第1の結合手段とは別個の第2の結合手段が、前記測定電気抵抗を所定のDC動作点に維持するために前記測定要素とDCバイアス手段との間に設けられていることを特徴とするボロメータである。
【0010】
本発明の他の特徴によると、下記の通りである:
・前記抵抗加熱手段が前記測定要素により形成される。
・前記第1の結合手段が容量性である。
【0011】
・前記熱フィードバックループと前記DCバイアス手段が、測定抵抗器内で消散されるパワーをその動作点を変化させずに変更するために設けられる。
・前記第1の結合手段が20kHz以上の周波数帯の信号を前記測定要素に印加する。
【0012】
・前記熱フィードバックループが前記測定要素内に存在する信号と所定の一定設定値の対応する信号との間の誤差信号を形成するための手段を備え、前記補正器は、この誤差信号に依存した交番信号(alternating signal)を、前記第1結合手段を介して前記測定要素に印加するために設けられる。
【0013】
・前記補正器が、前記誤差信号により振幅変調される交番信号を、前記第1結合手段を介して前記測定要素に印加するために設けられる。
・前記補正器が、前記誤差信号により振幅変調される第1の正弦波信号を、前記第1結合手段を介して前記測定要素に印加するために設けられる。
【0014】
・前記補正器が前記誤差信号に従って前記加熱パワーの周波数成分を線形化するための手段を備える。
・前記補正器の線形化手段が、中間信号を形成するための前記誤差信号のパルス幅変調の手段と、少なくとも第1の結合手段を介して前記測定要素に印加される第1の正弦波信号を形成するために第2の正弦波信号により前記中間信号を変調するための手段とを備える。
【0015】
・前記補正器がアナログ誤差信号をデジタル信号に変換するためのアナログ−デジタル変換手段を備え、前記誤差信号のパルス幅変調手段が前記中間信号を形成するために前記デジタル信号のための比例・積分型の補正器を備える。
【0016】
・前記補正器の線形化手段が、中間信号を形成するために前記誤差信号の平方根または前記誤差信号に比例する信号を形成するための手段と、前記交番信号を形成するためにこの中間信号を正弦波信号により変調する手段とを備える。
【0017】
・前記誤差信号を形成するための手段がデジタルである。
・前記測定抵抗器が例えば磁鉄鉱からなる。
本発明は、制限を意図しない例として示す以下の説明を、添付図面を参照しながら読むことにより、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るボロメータの熱的原理の説明図である。
【図2】第1の態様における本発明に係るボロメータの原理の電気回路図である。
【図3】第1の態様に係るボロメータで測定された信号の時間図(タイムチャート)である。
【図4】第2の態様における本発明に係るボロメータの原理の電気回路図である。
【図5】第3の態様における本発明に係るボロメータの原理の電気回路図である。
【図6】第3の態様の変更例における本発明に係るボロメータの原理の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面において、ボロメータ1は測定すべきパワーPINCを有する入射電磁放射を吸収する材料からなる表面2を備える。この電磁放射は、例えば、赤外線でよい。表面2は少なくとも1つの測定要素3の上に配置されている。測定要素3は、既知因子に従って、特に要素3の構成素材に応じて(これは当業者には公知であるので)抵抗値が温度に依存して変動する可変抵抗器Rを有する。抵抗器Rは例えば、金またはアルミニウム中に存在させた、抵抗変動の大きい磁鉄鉱(マグネタイト)または酸化マンガンから構成しうる。測定要素3は基体100上に設けられ、これは一定温度T0に保持されているサーモスタット101への決まった熱コンダクタンス(熱伝導率)Gthを有する。入射電磁放射PINCは、例えば公知のチョッパ(分断)装置200を介して、要素3に向けて表面2に送られる。この入射放射信号は角周波数Ωを有し、その値は事前に決定されている。もちろん、入射電磁放射(入射電磁波)は分断しなくてもよい。角周波数Ωは、チョッパ装置200を使用する場合にはその装置に関係し、および/または入射信号の経時変化に関係する。
【0020】
図面に示した態様では、測定要素3は例えば純粋に抵抗性(抵抗型)である。
さらに、例えば、別の信号測定要素3を設けてもよい。もちろん、例えば、複数の測定要素のアレイ(列)の場合のように、複数の測定要素3を設けてもよい。
【0021】
本発明によると、測定抵抗器Rは、温度量の測定と、熱量のフィードバック制御の両方の目的で使用される。
図1〜3に示した第1の態様では、測定要素3の温度を設定温度Trefに等しく保持するために、測定要素3はその第1および第2の2つの端子4、5を経て熱フィードバックループ6に接続される。ループ6は次のものを備える:要素3の両端子での電圧を増幅するための装置7および減算要素8。減算要素8は、増幅装置7の電圧出力10に接続された第1の入力9と、所定の一定設定電圧V1を賦課するモジュール12に接続された第2の入力11とを備え、この減算装置8の出力13上で、これらの2つの入力9、11の間の差Vchauff、即ち、誤差信号を形成する。減算装置8の出力13は、補正器モジュール14の入力15に接続される。補正器モジュール14は、その出力16を経て、その入力15上に存在する信号に依存して交番(交流)信号S1を印加する。出力16は第1の結合手段17を経て測定要素3に接続される。
【0022】
熱フィードバックループ6とは別個のモジュール18が、第2の結合手段19を経て測定要素3の直流(DC)動作点の所定のバイアス電流Ipolを賦課するために設けられ、一方では、第1の結合手段17が測定要素3にゼロ平均の周波数成分S1を印加する。例えば、図2において、結合手段17、19は要素3の第1端子4により形成された同じノード(接続点)に接続されており、要素3の第2端子5は接地されている。
【0023】
周波数信号S1は、測定要素3の抵抗器Rを加熱するために使用される。従って、ループ6の抵抗加熱要素は、測定要素3を含んでいる。
加熱信号S1による熱フィードバックは、測定抵抗器Rの温度を温度Trefに従わせるが、それを通って流れるバイアス電流Ipolに関係するその動作点は変更を受けない。
【0024】
1態様において、ループ6の抵抗加熱要素は測定要素3のみからなる。
図示の態様では、第1の結合手段17は容量性(容量型)で、決まった値のキャパシタンス(静電容量)Cを形成する1または2以上のキャパシタを含んでいる。第2の結合手段19は単なる電気導体(導線)により形成されている。
【0025】
加熱信号S1は、例えば、20kHz以上の周波数帯の高周波信号である。
1態様において、補正器14は、正弦波信号であって、例えば、入力15上の信号に比例する第1の加熱信号S1を形成する。この加熱信号S1は、例えば、差信号Vchauffの当該周波数を有する第2の正弦波信号S2による振幅変調によって形成される。このために、補正器14は、例えば周波数逓倍器(マルチプライア、multiplier)141を含んでおり、この周波数逓倍器141は、第2の正弦波信号sin(ω・t)を与えるためのモジュール143に接続された第1の入力142と、例えば、モジュール145を経て所定の一定逓倍係数Kを与える入力15に接続された第2の入力144と、出力16に接続された出力146とを備えている。要素141、143は、交番信号S1を形成するために入力144上の中間信号を正弦波信号S2で変調するための手段を形成する。
【0026】
例えば、S1=Vchauff・sin(ω・t)であり、
chauffは入力144上に存在する信号であり、
tは時間であり、
ωは所定の角周波数である。
【0027】
そうなると、測定抵抗器Rを流れる電流は次式で示される:
I(t)=Ipol+(Vchauff/R)・sin(ω・t)
I(t)の平均値はIpolに等しい。
【0028】
そこで、測定抵抗器RにおけるパワーP(t)は次式で示され:
P(t)=R・{Ipol2+2・Ipol・(Vchauff/R)・sin(ω・t)+((Vchauff/R)・sin(ω・t))2}
次式で示される平均値を有する。
【0029】
【数1】

【0030】
測定抵抗Rは次式に等しい。
【0031】
【数2】

【0032】
S:感度、
s:測定抵抗器Rの端子4、5間でのボロメータの出力電圧、
INC:測定される電磁放射パワー(radiated power)、
α:抵抗の温度係数(TCR)、
η:吸収層2の吸収因子、
pol:バイアス電流、
R:ボロメータの測定抵抗、
th:ボロメータの測定抵抗器とT0でのサーモスタット101の方向へのその周囲との間の熱伝導率、
Ω:入射電磁放射信号の角周波数、
th:熱容量。
【0033】
従って、測定抵抗器を通って流れる平均電流が値Ipolで一定のままであるとすれば、測定抵抗器内で消散されるパワー、従ってその温度を、その動作点を変化させずに変化させることができる。
【0034】
図3は、横軸の時間t(単位:秒)に対する、ガラス膜・金属抵抗器R上のでボロメータで行われた種々の電圧測定値(単位:ボルト)の変化を示す。方形波信号PINCは入射パワーの印加に対応する。この熱刺激に対して、本閉ループシステムはリターン信号Vchauffで応答し、この信号が、その包絡(enveloped)信号Vchauffにより振幅変調された高周波キャリア(搬送波)に対応する信号V1を介して容量結合により測定抵抗器Rに印加される。
【0035】
従って、本発明は製造方法の単純化を示すと同時に熱フィードバック制御を可能にし、フィードバック制御の積分可能性(integrability)を高め、その性能改善を可能にする。性能改善は、特に測定と加熱抵抗との間の最終的な近接さのために時定数の低減と感度の増大を含んでおり、それは最終的には老化(エージング)に関係するTCR(抵抗の温度係数)変化に対するより良好な不感受性につながる。
【0036】
図1〜3に示した第1の態様に従った別の態様では、信号S1のパワーを差信号Vchauffまたは要素2により測定された温度信号に依存して線形化することができる手段20がさらに設けられている。図4では、この線形化手段20は、例えば、振幅変調周波数逓倍器141の上流側で、入力15の下流側の位置、例えば、モジュール145と周波数逓倍器141との間(または変更例ではモジュール145と入力15との間)の位置に配置された平方根を形成するモジュールの形態をとる。従って、モジュール20は入力144上で√Vchauffに比例する信号を形成する。そのため、要素2に手段17によって印加された信号のパワーP(S1)は、差信号Vchauffに比例する。
【0037】
図5に示した第3の態様では、差信号Vchauffの関数として信号S1のパワーを線形化するための手段20は別の形態をとる。差信号Vchauffはデジタル補正器14においてデジタル化される。この差信号はコントローラ(制御装置)内で、信号9のデジタル化とコントローラ内のメモリに格納された値による差の計算とによって形成することもできる。この補正器14は、マイクロコントローラ140、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータまたは他の手段によって適用される。このために、差信号Vchauffは、補正器14の入力15上に存在するアナログ差信号Vchauffからデジタル信号S10を与えるアナログ/デジタル変換器(ADC)147に送られて補正器14内に入る。このデジタル信号S10は、第3の中間信号S3(いわゆる熱フィードバック信号)を形成するために、パルス幅変調モジュール148によりパルス幅変調(PWM)される。このモジュール148は、例えば、信号S10に比例・積分補正を適用するための比例・積分コントローラPIを備えている。この第3のパルス幅変調された中間信号S3のデューティサイクル(動作周期)βは、%で表して次式に等しい。
【0038】
β=100・tON/T
式中
ONは信号S3が第1レベル、例えば、高レベル1に存在している時間の長さであり、
Tは信号S3の所定かつ一定の時間間隔であり、
OFF=T−tONは、信号S3が第1レベルとは異なる第2のレベル(このレベルは例えば低レベルである)に存在している時間の長さである。パルス幅変調された中間信号S3の平均値は、本コントローラの出力での信号値に等しい。
【0039】
補正器14は、その出力144で第3の中間信号S3を与える。出力144は、第3の中間信号S3の第1および第2のレベルの一方だけ、例えば、tONに対応する第1のレベルだけに対して第4の正弦波信号S4を、そしてS3の他方のレベル、例えば、tOFFに対応する第2のレベルに対しては一定信号、例えば、ゼロ信号を、出力146上で与えるように、モジュール143の第2の正弦波搬送波信号S2による第3の中間信号S3の振幅変調を行うために周波数逓倍器141に接続される。
【0040】
その後、第4の信号S4は、搬送波S2の周波数付近で例えば帯域フィルタ149を介して周波数信号S1を形成するために結合手段17によって送られる。
信号S10の関数として比例・積分コントローラにより計算されたデジタル値は、信号S3の平均値に等しい、即ち、β・Vmaxに等しい。Vmaxは、デューティサイクルβが100%の場合におけるデジタル成分の出力での最大電圧である。
【0041】
S2=Kampl. sin(ω・t)
S4=Kmult.S3・S2=Kmult.・Kampl. sin(ω・t)・S3、
ここで、Kampl.は定数であり、Kmult.は周波数逓倍器に結びついた定数である。
【0042】
信号S4のRMS値は次式で算出される。
【0043】
【数3】

【0044】
式中、P(S1)は、信号S1のパワーであり、符号∝は比例を意味する。
測定抵抗器に印加されたフィードバックパワーは従ってコントローラ158の出力で算出された値に正比例する。本システムはそうなると完全に線形である。線形化のための仮定と補正器の計算をする必要がなくなる。
【0045】
パルス幅変調では、それにより信号S1のパワーを差信号Vchauffの関数として線形化することが可能となる。本システムはまた、使用の単純性が増す。開ループ−閉ループの移行はより良好に制御されうる。コントローラ、従って閉ループ性能のセットアップはより単純である。デジタル平方根関数を用いることによるアナログ線形化におけるような線形化もむろん適用可能であるが、パルス幅変調(PWM)の使用により補関数(余関数)または他の計算を全く必要とせずに直接的な線形化が可能となる。
【0046】
もちろん、上述した態様において、振幅変調は、周波数逓倍器141または例えばトランジスタを用いた単純なスイッチにより行うこともできる。
図6は、図5の変更例を示し、ここでは差信号Vchauffはデジタル信号であって、出力9上に存在するアナログ温度信号をアナログ/デジタル変換器(コンバータ)147でデジタル信号に変換した後に形成され、この出力9が入力15に直接接続されている。要素8、11および15は、変換器147の出力S10でのデジタル化出力9とデジタルモジュール12により与えられる一定のデジタル信号V1との間のデジタル差信号Vchauffを形成するためにデジタルである。このデジタル差信号Vchauffはモジュール148に送られる。一定のデジタル値V1は、マイクロコントローラまたはたの手段のメモリ12内に予め記録された設定値である。
【0047】
本発明は、熱置換技術のあらゆる応用分野で実施可能である。主な想定利用分野は室温でのボロメトリー(電磁放射測定)である。本発明は、赤外線カメラ、ピクセルのマトリックス、およびあらゆる赤外線画像化可視化装置、特に遠赤外線(1テラヘルツ台の周波数)域でのかかる装置に応用されうる。この分野での典型的な応用は、暗視(夜間視覚)用の赤外線サーモグラフィまたは視覚増強装置である。
【0048】
本発明は、軍事分野にも民生分野にも応用できる。交通安全に関する規定の範囲内での民生用途は運転の補助である。その場合、赤外線サーモグラフィは、衝突防止のための安全性の向上、夜間視覚の補助および高温生物物体の位置推定のために開発中の構想の1つである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射電磁放射の熱吸収のための表面(2)を含み、この吸収表面は、温度に依存して抵抗が可変性の電気測定抵抗器(R)を備えた、入射電磁放射を測定するための少なくとも1つの要素(3)と熱的接触状態にあり、前記測定要素(3)は、電気測定抵抗器(R)の温度を設定温度(Tref)に等しい温度に保持するために抵抗加熱手段に加熱パワーを印加するための補正器(14)を備える加熱フィードバック制御ループ(6)内に位置しているボロメータであって、
前記抵抗加熱手段が前記測定要素(3)を含み、前記補正器(14)は前記加熱パワーの周波数成分(S1)を発生させるために設けられ、その加熱パワーが、前記測定要素(3)にDC成分を全くもたない信号を印加するために前記測定要素(3)と前記補正器(14)との間に設けられた第1の結合手段(17)に印加され、前記電気測定抵抗器を所定の直流動作点に維持するために、前記第1の結合手段(17)とは別個の第2の結合手段(19)が前記測定要素(3)と直流バイアス手段(18)との間に設けられていることを特徴とするボロメータ。
【請求項2】
前記抵抗加熱手段が前記測定要素(3)により形成されていることを特徴とする、請求項1記載のボロメータ。
【請求項3】
前記第1の結合手段(17)が容量性であることを特徴とする、請求項1または2記載のボロメータ。
【請求項4】
前記熱フィードバック制御ループ(6)と前記直流バイアス手段(18)とが、測定抵抗器(R)内で消散されるパワーをその動作点を変化させずに変更するために設けられることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のボロメータ。
【請求項5】
前記第1の結合手段(17)が20kHz以上の周波数帯の信号を前記測定要素(3)に印加することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のボロメータ。
【請求項6】
前記熱フィードバック制御ループ(6)が、前記測定要素(3)内に存在する信号と所定の一定設定値をもつ対応する信号(V1)との間で誤差信号(Vchauff)を形成するための手段(7、8、12)を備え、前記補正器(14)は、この誤差信号(Vchauff)に依存した交番信号(S1)を、前記第1結合手段(17)を介して前記測定要素(3)に印加するために設けられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のボロメータ。
【請求項7】
前記補正器(14)が、前記誤差信号(Vchauff)により振幅変調された交番信号(S1)を、前記第1結合手段(17)を介して前記測定要素(3)に印加するために設けられることを特徴とする、請求項6記載のボロメータ。
【請求項8】
前記補正器(14)が、前記誤差信号(Vchauff)により振幅変調された第1の正弦波信号(S1)を、前記第1結合手段(17)を介して前記測定要素(3)に印加するために設けられることを特徴とする、請求項6または7記載のボロメータ。
【請求項9】
前記補正器(14)が、前記誤差信号(Vchauff)の関数として前記加熱パワーの周波数成分(S1)を線形化するための手段(20)を備えることを特徴とする、請求6〜8のいずれかに記載のボロメータ。
【請求項10】
前記補正器(14)の線形化手段(20)が、中間信号(S3)を形成するために前記誤差信号(Vchauff)のパルス幅変調のための手段(148)と、少なくとも前記第1の結合手段(17)を介して前記測定要素(3)に印加される第1の正弦波信号(S1)を形成するために第2の正弦波信号(S2)により前記中間信号(S3)を変調するための手段とを備えることを特徴とする、請求項9記載のボロメータ。
【請求項11】
前記補正器(14)がアナログ誤差信号(Vchauff)をデジタル信号(S10)に変換するためのアナログ/デジタル変換手段(147)を備え、前記誤差信号(Vchauff)のパルス幅変調手段(148)が、前記中間信号(S3)を形成するために前記デジタル信号(S10)のための比例・積分型の補正器を備えることを特徴とする、請求項10記載のボロメータ。
【請求項12】
前記補正器(14)の線形化手段(20)が、中間信号(144)を形成するために誤差信号(Vchauff)の平方根または誤差信号(Vchauff)に比例する信号を形成するための手段(148)と、前記交番信号(S1)を形成するためにこの中間信号(144)を正弦波信号(S2)により変調するための手段(141、143)とを備えることを特徴とする、請求項9記載のボロメータ。
【請求項13】
前記誤差信号(Vchauff)を形成するための手段(7、8、12)がデジタルであることを特徴とする、請求項6〜12のいずれかに記載のボロメータ。
【請求項14】
前記測定抵抗器(R)が磁鉄鉱からなることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載のボロメータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−539447(P2010−539447A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523532(P2010−523532)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061899
【国際公開番号】WO2009/034066
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(505179971)サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク(セーエヌエールエス) (18)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【Fターム(参考)】