説明

熱プレス装置及びそれを用いた昇華転写装置

【課題】時間的・経済的コストパフォーマンスに優れた熱プレス装置及びそれを用いた昇華転写装置を提供すること。
【解決手段】本発明による昇華転写装置は、加熱部に設けられた導体板をコイルの電磁誘導により発熱させることにより対象物の加熱を行う構成としたものである。コイルに流れる電流を制御することにより、導体の温度を瞬時にコントロールすることができることから、作業毎に予熱を行う必要がなくなり、作業中においても導体板を常に加熱しておく必要がなくない。これにより、熱プレス及び昇華転写の作業効率を向上させることを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱プレス装置及びそれを用いた昇華転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料品等の布地に対して図柄や文字等を転写するための装置として、所定の温度(昇華転写に必要な温度)に加熱された加圧部を用いて対象物に熱及び圧力を加える機構を備えた熱プレス装置が提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
このような装置を用いる場合、発熱体等の熱源を用いて加圧部を所定の温度に予熱し、予熱が完了した後に昇華転写を行うことが一般的である(例えば特許文献2の0022段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−308803号公報
【特許文献2】特開2006−321056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
予熱の間は昇華転写を行うことができないため、待機時間が長くなり作業効率が悪くなるという問題がある。
【0006】
一方、予熱に要する時間を可能な限り削減すべく、熱プレス装置の熱源を稼働させ続けることすると(例えば、特許文献2の0022段落参照)、電気代等の経済的コストが多くかかってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は経済的コストパフォーマンスに優れ、作業効率がよく、且つエコロジーな熱プレス装置及びそれを用いた昇華転写装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、第1の熱プレス装置として、導体部と、対象物を前記導体部と挟む対向部と、前記導体部を誘導加熱するコイル部と、当該コイル部に流れる電流を制御する制御部とを備える熱プレス装置が得られる。
【0009】
また、本発明によれば、第2の熱プレス装置として、第1の熱プレス装置であって、前記コイル部は複数設けられており、前記制御部は、前記コイル部の夫々に流れる前記電流を制御する熱プレス装置が得られる。
【0010】
また、本発明によれば、第3の熱プレス装置として、第1の熱プレス装置であって、前記コイル部は、前記導体部上を移動する熱プレス装置が得られる。
【0011】
また、本発明によれば、第4の熱プレス装置として、第1の熱プレス装置であって、前記コイル部は、前記導体部と共に前記対象物上を移動する熱プレス装置が得られる。
【0012】
また、本発明によれば、第5の熱プレス装置として、第1乃至第4の熱プレス装置であって、前記導体部は、板状部を有しており、前記対象物は、前記板状部及び前記対向部により挟持され、前記コイル部は、前記板状部を誘導加熱する熱プレス装置が得られる。
【0013】
また、本発明によれば、第6の熱プレス装置として、第1の熱プレス装置であって、前記導体部及び前記対向部は、ローラ形状を有しており、回転する前記導体部と、回転する前記対向部とによって前記対象物を熱プレスする熱プレス装置が得られる。
【0014】
また、本発明によれば、第7の熱プレス装置として、第1のいずれかの熱プレス装置であって、少なくとも2つ以上の第1プーリと、少なくとも2つ以上の第2プーリとを更に備えており、前記導体部は、帯状に形成された導体を輪状にしてなるものであり、前記第1プーリは、前記導体部の内部に配置され、前記導体部を支持しており、前記対向部は、帯状に形成され且つ輪状にしてなるものであり、前記第2プーリは、前記対向部の内部に配置され、前記対向部を支持しており、回転する前記第1プーリによって駆動される前記導体部と、回転する前記第2プーリによって駆動される前記対向部とによって前記対象物を熱プレスする熱プレス装置が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、第8の熱プレス装置として、第1乃至第7のいずれかの熱プレス装置であって、前記対向部は、前記導体部と共に前記対象物を挟持する対向導体部と、当該対向導体部を誘導加熱する対向コイル部とを備えている熱プレス装置が得られる。
【0016】
また、本発明によれば、第9の熱プレス装置として、第1乃至第8のいずれかに記載の熱プレス装置であって、前記対象物の温度分布を計測すると共に当該温度分布に関する情報を前記制御部へ伝達するセンサ部を更に備えており、前記制御部は、前記温度分布に関する情報に基づいて前記電流を制御する熱プレス装置が得られる。
【0017】
また、本発明によれば、第10の熱プレス装置として、第9の熱プレス装置であって、前記センサ部は、サーモグラフィを備えている熱プレス装置が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、第11の熱プレス装置として、第1乃至第10のいずれかに記載の熱プレス装置であって、前記対象物に対し蒸気を吹きかけるスチーム部を更に備えている熱プレス装置が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、第12の熱プレス装置として、導体部と、対象物を前記導体部と挟み且つ当該導体部を誘導加熱するコイル部と、当該コイル部に流れる電流を制御する制御部とを備えている熱プレス装置が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、第1乃至第12のいずれかの熱プレス装置を用いた昇華転写装置が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱プレス装置は、コイル部を用いた誘導加熱を利用することにより導体部自体を発熱させることとし、導体部の温度を瞬時に上昇させることができる。これにより、昇華転写作業前に予熱を行う必要がなくなり、導体部の温度を高温に維持しておく必要もなくなる。従って、本発明によれば、熱プレス装置の使用時における作業効率の向上を図ることができると共に経済的コストを削減することもでき、併せてエコロジーな熱プレス装置及び昇華転写装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施の形態による構造を模式的に表した図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による変形例の構造を模式的に表した図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態による昇華転写装置の構造を模式的に表した図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態による昇華転写装置の構造を模式的に表した図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態による昇華転写装置の構造を模式的に表した図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態による昇華転写装置の構造を模式的に表した図である。
【図7】図6の昇華転写装置の構造の側面を模式的に表した図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態による昇華転写装置の構造を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態による熱プレス装置は、昇華転写を行うために用いられるものである。なお、熱プレス装置は、対象物に対して加圧及び加熱(以下、熱プレスと記載する)を行う工程を必要とする他の装置にも応用可能である。
【0024】
図1に示される昇華転写装置10は、加熱部20と、支持台30と、制御部40と、センサ部42とを備えている。本実施の形態において、昇華転写装置10による熱プレスの対象となるのは、布地50と昇華転写用シート60である。本実施の形態による布地50はポリエステル等の樹脂繊維素材からなるものを用いているが、ポリエステル等の樹脂繊維素材からなる衣料品及びファスナー等を用いることもできる。
【0025】
加熱部20は昇降可能に作られており、複数のコイル部22と、導体を板状に形成した導体板24とを備えている。複数のコイル部22の夫々はコイル23を有しており、各コイル部22に対して図示しない電源から電流が供給されることによりコイル23に電流が流れる。導体板24は磁性体からなるものであり、コイル部22の電磁誘導によって発熱する。導体板24は、発生した熱を効率よく布地50及び昇華転写用シート60に伝えるために、熱伝導率の高いものであることが好ましい。
【0026】
支持台30は、加熱部20に対向するように設けられている。布地50と当該布地の上に載せられた昇華転写シート60は、支持台30の上にセットされる。本実施の形態においては、熱プレスの対象となる布地50及び昇華転写シート60に対して発熱した導体板24が押し当てられることにより、両者に対して熱及び圧力が加わり、昇華転写シート60の図柄が布地50に昇華転写される。
【0027】
制御部40は、図示しない電源からコイル部22に供給される電流を制御するためのものである。具体的には、電流供給の有無、供給量、供給時間等についてコイル部22毎に独立して制御することができる。例えば、全てのコイル部22を用いて導体板24の全ての領域を同時に発熱させることや、一部のコイル部22を用いて導体板24の特定の領域のみ加熱することとしてもよい。
【0028】
更に、電流が供給されるコイル部22を順次切り替えていくことにより、導体板24の発熱する領域を移動させることも可能となる。かかる構成によれば、発熱領域を移動させるためにコイル部22自体を移動させる必要がないため、故障の原因となり得る可動部を少なくすることができる。
【0029】
センサ部42は、対象物(布地50及び昇華転写用シート60)の温度分布を測定するためのものである。センサ部42は、複数のセンサ素子46を備えている。各センサ素子46は、導体板24に近接して設けられており、導体板24の温度を測定することによって対象物の加熱温度を測定することとしている。センサ部42は、センサ素子46によって測定された温度に基づいて導体板24の温度分布を測定する。測定された温度分布は、温度分布に関する情報として制御部40へと送られる。制御部40は、当該情報に基づいて各コイル部22に供給される電流を制御することができる。なお、センサ部42による温度分布状態の測定を常時行うこととし、制御部40に対して温度分布に関する情報を常に送り続けることとしてもよい。これにより、導体板24を常に同一の温度で発熱させることができ、例えば、複数の布地50を処理する場合であっても全ての布地に対して同一の条件により加熱することができ同一の品質を保つことができる。
【0030】
その他、温度分布を測定する方法としては、センサ部42とサーモグラフィとを連携させることにより、導体部24又は熱プレスの対象物の温度分布を直接測定することとしてもよい。
【0031】
なお、必要に応じて、本実施の形態による昇華転写装置10は、昇華転写作業の際又は昇華転写作業の終了後に布地50に対して水蒸気等を吹きかけるスチーム部を更に備えることとしてもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態によれば、コイル部22の電磁誘導により導体板24自体を発熱させることとしているため、導体板24の温度を瞬時に上昇させることができる。そのため、昇華転写装置10の電源投入後においても最初の昇華転写作業をすぐに開始することができる。また、加熱が必要になった際にすばやく加熱を行うことも可能となるため、導体板24を常に発熱させている必要がない。従って、作業効率を向上させることができ且つ電気代等の経済的コストも削減することができる。
【0033】
なお、上述した実施の形態による昇華転写装置10は布地50の片面に対して昇華転写を行うこととしていたが、支持台30の代わりに図2に示されるような加熱部20’を設け、布地50の両面に対して昇華転写を行うこととしてもよい。布地50の両面に対して昇華転写を行う場合、図示されるように布地50を昇華転写用シート60、60’で挟むようにして加熱部20’の上にセットすればよい。
【0034】
(第2の実施の形態)
図3に示されるように、本発明の第2の実施の形態による昇華転写装置10aは、概略、上述した第1の実施の形態による昇華転写装置10(図1参照)のうち、加熱部20のコイル部22を移動可能にしたものであり、それ以外の点については第1の実施の形態による昇華転写装置10とほぼ同様の構造を有している。即ち、昇華転写装置10aは、加熱部20aと、支持台30と、制御部40と、センサ部42とを備えている。なお、第1の実施の形態による昇華転写装置10と同一の構成要素については同一の参照符号を付しその説明を省略する。
【0035】
図3に示されるように、加熱部20aはコイル部22a及び導体板24aを備えている。コイル部22aは導体板24aの上を移動可能に構成されている。本実施の形態においても、センサ部42はセンサ素子46を用いて導体板24aの温度分布を測定し、制御部40に温度分布に関する情報を送る。制御部40は、センサ部42から送られた情報に基づいて、コイル部22aの電流を制御可能に構成されている。例えば、移動するコイル部22aによって加熱される導体板24aの領域全てに対して同じ温度条件で加熱されるようにコイル部22aの電流を制御することも可能であり、複数の対象物に対して熱プレスを行う場合に全ての対象物に対して同一の温度条件で熱プレスを行うことも可能である。
【0036】
(第3の実施の形態)
図4に示されるように、本発明の第3の実施の形態による昇華転写装置10bは、概略、上述した実施の形態による昇華転写装置10(図1参照)の加熱部20自体を移動可能としたものであり、それ以外の点については第1の実施の形態による昇華転写装置10とほぼ同様の構造を有している。即ち、昇華転写装置10bは、加熱部20bと、支持台30と、制御部40と、センサ部42とを備えている。なお、本実施の形態においても、第1の実施の形態による昇華転写装置10と同一の構成要素については同一の参照符号を付しその説明を省略する。
【0037】
図4に示されるように、加熱部20bは、コイル部22b及び導体板24bを備えており、加熱部20b自体が布地50及び昇華転写シート60の上を移動可能となるように構成されている。即ち、コイル部22bは、導体板24bと共に移動する。本実施の形態においても、センサ部42はセンサ素子46を用いて導体板24bの温度分布を測定し、制御部40に当該温度分布に関する情報を送る。制御部40は、センサ部42から送られた情報に基づいて、コイル部22bの電流を制御可能に構成されている。例えば、加熱部20bの移動する領域全てに対して同じ温度条件で加熱されるようにコイル部22bの電流を制御することも可能であり、複数の対象物に対して熱プレスを行う場合に全ての対象物に対して同一の温度条件で熱プレスを行うことも可能である。
【0038】
本実施の形態による昇華転写装置10bにおいては、加熱部20bを対象物上で動かすことができる構成としているため、加熱部20bより大きな対象物に対しても熱プレスを行うことができることから第1及び第2の実施の形態と比較して加熱部の小型化を図ることができる。
【0039】
以上、本発明の第1乃至第3の実施の形態について説明したが、昇華転写を布地等の両面に対して行う場合、昇華転写装置を構成する2つの加熱部として、第1乃至第3の実施の形態において用いられていた加熱部20〜20bを適宜組み合わせることとしてもよい。
【0040】
(第4の実施の形態)
図5に示されるように、本発明の第4の実施の形態による昇華転写装置10cは、円筒形状を有する加熱部20c、20c’と、固定部材30c、30c’と、制御部40と、センサ部42とを備えている。昇華転写装置10cによる熱プレスは、対象物(ファスナー51及び昇華転写シート60、60’)を回転する加熱部20c、20c’の間に通すことにより行う。本実施の形態による昇華転写装置10cは、特に、紐類やファスナー等の長尺物に対して加熱部を大きくすることなく昇華転写を行うことができる。図示されたファスナー51は昇華転写用シート60、60’に挟まれた状態で熱プレスされ、ファスナー51の両面に対して昇華転写が行われる。
【0041】
加熱部20cは、複数のコイル部22c及び円筒状に形成された導体ローラ24cを備えている。導体ローラ24cは、図示しない駆動部により回転可能に構成されている。コイル部22cは導体ローラ24cの内部に配置されており、導体ローラ24cのうち熱プレスの対象物と接触する部位が発熱するように固定部材30cによって固定されている。
【0042】
同様に、加熱部20c’も複数のコイル部22c’と、ローラ状に形成された導体ローラ24c’を備えている。導体ローラ24c’は、図示しない駆動部により回転可能に構成されている。コイル部22c’は導体ローラ24c’の内部に配置されており、導体ローラ24c’のうち熱プレスの対象物と接触する部位が発熱するように固定部材30c’によって固定されている。
【0043】
昇華転写作業時には、対象物が2つの導体ローラ24c、24c’の間を通過できるように導体ローラ24c、24c’は互いに逆方向に回転する(図5の矢印の向きを参照)。なお、本実施の形態による昇華転写装置10cは、2つの加熱部20c、20c’を用いてファスナー51の両面に対して昇華転写を行うものであったが、一方の加熱部20c’を発熱しないローラ(例えば、コイル部22c’を取り外した構成等)に変更し、昇華転写シート60のみを用いてファスナー51の片面に昇華転写をすることとしてもよい。
【0044】
本実施の形態においても、センサ部42はセンサ素子46を用いて導体ローラ24c、24c’の温度分布を測定し、制御部40に当該温度分布に関する情報を送る。制御部40は、センサ部42から送られた情報に基づいて、各コイル部22c、22c’の電流を制御可能に構成されている。例えば、加熱部20c、20c’の間を通過するファスナー51及び昇華転写用シート60、60’に対して常に同一の温度条件によって加熱が行われるよう制御することも可能である。
【0045】
(第5の実施の形態)
図6及び図7に示されるように、本発明の第5の実施の形態による昇華転写装置10dは、ベルトコンベア状の加熱部20d、20d’と、制御部40と、センサ部42とを備えている。なお、図6においては、後述するコイル部22d、22d’、制御部40、センサ部42、加圧ローラ90及び駆動部100は省略されている。昇華転写装置10dによる熱プレスも上述した第4の昇華転写装置10cと同様に、対象物(ファスナー51及び昇華転写シート60、60’)を2つの加熱部20d、20d’の間に通すことにより行う。本実施の形態による昇華転写装置10dも、特に、紐類やファスナー等の長尺物に対して加熱部を大きく(長く)することなく昇華転写を行うことができる。図示されたファスナー51は、昇華転写用シート60、60’に挟まれた状態で熱プレスされ、ファスナー51の両面に対して昇華転写が行われる。
【0046】
図7に示されるように、加熱部20dは、複数のコイル部22dと、導体ベルト24dと、駆動輪70と、従動輪80とを備えている。各コイル部22dはコイル23を備えている。コイル部22dには図示しない電源から電流が供給され、コイル23の電磁誘導により導体ベルト24dを発熱させることができ、当該発熱した導体ベルト24dは、対象物を加熱する。導体ベルト24dは幅広に形成された導体の帯を輪状に形成したものである。導体ベルト24dの縁部には、当該縁部に沿って一定の間隔をおいて連続する複数の孔部28が設けられている(図6参照)。駆動輪70は、複数の突起72を有しており、当該突起72を導体ベルト24dの孔部28に掛けた状態で回転することにより導体ベルト24dを循環させる。突起72は、孔部28同士の間隔と同じ間隔で設けられている。従動輪80は、駆動輪70により循環させられる導体ベルト24dによって回転しつつ導体ベルト24dが弛まないように支持をする。
【0047】
同様に、加熱部20d’も、複数のコイル部22d’と、導体ベルト24d’と、駆動輪70’と、従動輪80’とを備えている。コイル部22d’には図示しない電源から電流が供給され、各コイル部22d’の備えるコイル23の電磁誘導により導体ベルト24d’を発熱させることができ、当該発熱した導体ベルト22d’は、対象部を加熱する。導体ベルト24d’は幅広に形成された導体の帯を輪状に形成したものであり、導体ベルト24d’の縁部には一定の間隔をおいて連続する複数の孔部28’が設けられている(図6参照)。駆動輪70’は、孔部28同士の間隔と同じ間隔で設けられた複数の突起72’を有しており、当該突起72’を導体ベルト24d’の孔部28’に掛けた状態で回転することにより導体ベルト24d’を循環させる。従動輪80’は、循環する導体ベルト24d’によって回転しつつ導体ベルト24d’が弛まないように支持をする。
【0048】
図7に示されるように、駆動輪70、70’は、導体ベルト24d、24d’の間に対象物を通すことができるように互いに逆向きに回転する(矢印の向きを参照)。本実施の形態においては、回転する駆動部100との間に架けられた駆動ベルト110、110’によって駆動部100、100’の回転を駆動輪70、70’に伝えることにより、駆動輪70、70’の回転を行うこととしているが、他の方法により駆動輪70、70’を回転させることとしてもよい。
【0049】
なお、対象物の加圧をより確実にするためには、本実施の形態において用いられているような加圧ローラ90、90’を加熱部20d、20d’内に設けることとしてもよい。加圧ローラ90、90’は、導体ベルト24d、24d’越しに対象物を加圧するものであり、導体ベルト24d、24d’の間を通過した対象物に対して所定の圧力をかけることができる。
【0050】
本実施の形態においても、センサ部42はセンサ素子46を用いて導体ベルト24d、24d’の温度分布を測定し、制御部40に当該温度分布に関する情報を送る。制御部40は、センサ部42から送られた情報に基づいて、各コイル部22d、22d’の電流を制御可能に構成されている。例えば、加熱部20d、20d’の間を通過する対象物に対して常に同一の温度条件によって加熱が行われるよう制御することも可能である。
【0051】
(第6の実施の形態)
図8に示されるように、本実施の形態による昇華転写装置10eは、概略、上述した第1の実施の形態による昇華転写装置10(図1参照)の導体板24を支持台30側へ取り付けてなるものであり、それ以外の点については第1の実施の形態による昇華転写装置10とほぼ同様の構造を有している。即ち、昇華転写装置10eは、加熱部20eと、支持台30と、制御部40と、センサ部42とを備えている。なお、本実施の形態において、第1の実施の形態による昇華転写装置10と同一の構成要素については同一の参照符号を付しその説明を省略する。
【0052】
図8に示されるように、本実施の形態による加熱部20eは、コイル部22e及び支持台30側に設けられている導体板24eにより構成されている。本実施の形態による熱プレスは、コイル部22eにより対象物を加圧し、同時に各コイル部22eに設けられているコイル23の電磁誘導により導体板24eを発熱させ当該発熱した導体板24eにより支持台30上の対象物を加熱するものである。
【0053】
本実施の形態においても、センサ部42はセンサ素子46を用いて導体板24eの温度分布を測定し、制御部40に当該温度分布に関する情報を送る。制御部40は、センサ部42から送られた情報に基づいて、コイル部22eの電流を制御可能に構成されている。例えば、導体板24eの領域全てに対して同じ温度条件で加熱されるようにコイル部22eの電流を制御することも可能であり、複数の対象物に対して熱プレスを行う場合に全ての対象物に対して同一の温度条件で熱プレスを行うことも可能である。
【0054】
本実施の形態による昇華転写装置10eにおいては、複数のコイル部22eを用いて導体板24eを加熱することとしていたが、例えば、コイル部22eを移動可能にし対象物上を移動可能にしてもよい。即ち、上述した第2の実施の形態による昇華転写装置10a(図3参照)の導体板24aを支持台30側に取り付けるような構成としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10〜10e 昇華転写装置
20〜20c、20’、20c’〜20e’ 加熱部
22〜22c、22’、22c’〜20e’ コイル部
23 コイル
24、24a、24b、24e、24’ 導体板
24c、24c’ 導体ローラ
24d、24d’ 導体ベルト
28、28’ 孔部
30 支持台
30c 固定部材
40 制御部
42、42’ センサ部
46、46’ センサ素子
50 布地
51 ファスナー
60、60’ 昇華転写用シート
70、70’ 駆動輪
72、72’ 突起
80、80’ 従動輪
90、90’ 加圧ローラ
100、100’ 駆動部
110、110’ 駆動ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体部と、対象物を前記導体部と挟む対向部と、前記導体部を誘導加熱するコイル部と、当該コイル部に流れる電流を制御する制御部とを備える
熱プレス装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱プレス装置であって、
前記コイル部は複数設けられており、
前記制御部は、前記コイル部の夫々に流れる前記電流を制御する
熱プレス装置。
【請求項3】
請求項1に記載の熱プレス装置であって、
前記コイル部は、前記導体部上を移動する
熱プレス装置。
【請求項4】
請求項1に記載の熱プレス装置であって、
前記コイル部は、前記導体部と共に前記対象物上を移動する
熱プレス装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱プレス装置であって、
前記導体部は、板状部を有しており、
前記対象物は、前記板状部及び前記対向部により挟持され、
前記コイル部は、前記板状部を誘導加熱する
熱プレス装置。
【請求項6】
請求項1に記載の熱プレス装置であって、
前記導体部及び前記対向部は、ローラ形状を有しており、
回転する前記導体部と、回転する前記対向部とによって前記対象物を熱プレスする
熱プレス装置。
【請求項7】
請求項1に記載の熱プレス装置であって、
少なくとも2つ以上の第1プーリと、少なくとも2つ以上の第2プーリとを更に備えており、
前記導体部は、帯状に形成された導体を輪状にしてなるものであり、
前記第1プーリは、前記導体部の内部に配置され、前記導体部を支持しており、
前記対向部は、帯状に形成され且つ輪状にしてなるものであり、
前記第2プーリは、前記対向部の内部に配置され、前記対向部を支持しており、
回転する前記第1プーリによって駆動される前記導体部と、回転する前記第2プーリによって駆動される前記対向部とによって前記対象物を熱プレスする
熱プレス装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の熱プレス装置であって、
前記対向部は、前記導体部と共に前記対象物を挟持する対向導体部と、当該対向導体部を誘導加熱する対向コイル部とを備えている
熱プレス装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の熱プレス装置であって、
前記対象物の温度分布を計測すると共に当該温度分布に関する情報を前記制御部へ伝達するセンサ部を更に備えており、
前記制御部は、前記温度分布に関する情報に基づいて前記電流を制御する
熱プレス装置。
【請求項10】
請求項9に記載の熱プレス装置であって、
前記センサ部は、サーモグラフィを備えている
熱プレス装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の熱プレス装置であって、
前記対象物に対し蒸気を吹きかけるスチーム部を更に備えている
熱プレス装置。
【請求項12】
導体部と、対象物を前記導体部と挟み且つ当該導体部を誘導加熱するコイル部と、当該コイル部に流れる電流を制御する制御部とを備えている
熱プレス装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の熱プレス装置を用いた昇華転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−230788(P2011−230788A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101612(P2010−101612)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(503212571)楽プリ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】