説明

熱中性子遮蔽材料及びその製造方法

【課題】金属表面に、金属母材との密着性のよいB含有サーメット層を形成することにより、良好な耐食性とより高い熱中性子遮蔽能を持つ熱中性子遮蔽材料を提供すること。
【解決手段】
工具鋼、普通鋼、合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属母材上にサーメット層を形成させた熱中性子遮蔽材料であって、
前記サーメット層は、MM’B型複硼化物とM’基合金の結合相よりなる複硼化物サーメットであることを特徴とする(M=Mo,M’=NiまたはFe)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属母材上にサーメット層を有する熱中性子遮蔽材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の環境、エネルギー問題の観点からCOを排出しない原子力発電による電力供給の増加が予想される。使用済み核燃料の貯蔵容器や燃料輸送容器(キャスク)等には熱中性子吸収能の高い材料が使用されるが、原子力発電の稼動増加により、使用済み核燃料の貯蔵密度を増加させる必要がある。核燃料の収容能力を高めるためには、容器の肉厚を薄くする必要があり、より熱中性子吸収能に優れる材料が求められている。
【0003】
その一例として、使用済み核燃料を貯蔵する保管容器や燃料輸送容器を構成する材料として、熱中性子吸収能が大きいボロン(B)を添加したステンレス鋼やアルミニウム合金が提案されているが、Bの添加量が増加すると熱中性子遮蔽能は向上するが、熱間加工性を低下させるという問題点があり、Bの添加量は1質量%程度が上限とされていた。
Bの添加量を増加させるため、特許文献1には、ステンレス鋼などの金属表面に、酸化ガドリニウムと酸化ボロンの含有量が各々10〜20質量%である琺瑯剤を、塗布、焼き付け又は溶射により付着させた、使用済み核燃料の保管容器や燃料輸送容器材料などに用いる熱中性子遮蔽材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3789678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1において、中性子吸収能の高いボロン(B)またはガドリニウム(Gd)の酸化物を溶射で金属表面に付着させる場合には、酸化ボロン、酸化ガドリニウムといった酸化物単体、いわゆるセラミックスが、高温(約6000℃)のプラズマ溶射で溶射皮膜を形成するため、溶射粒子は基材に衝突する際に、冷却に伴う凝固・収縮によって皮膜には大きな引張応力が発生し、金属母材との高い密着力が得られないばかりでなく、0.05mm以上の膜厚が得られない。
また、塑性変形しにくい酸化物の溶射皮膜は、皮膜中にはマイクロクラックの発生、空隙(ポア)の残存が避けられないため、緻密な皮膜が得られない、という問題点がある。
さらに、使用済み核燃料を貯蔵する保管容器や燃料輸送容器は、輸送時や保管時には塩水、水等の雰囲気に曝される場合があるため耐食性が必要であるという課題もある。
そこで、本発明は、金属表面に、金属母材との密着性のよいB含有サーメット層を形成することにより、良好な耐食性とより高い熱中性子遮蔽能を持つ熱中性子遮蔽材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の熱中性子遮蔽材料は、金属母材上にサーメット層を有する熱中性子遮蔽材料であって、前記サーメット層が、MM’B型複硼化物とM’基合金の結合相よりなる複硼化物サーメットであることを特徴とする(M=Mo,M’=NiまたはFe)。
請求項2に記載の熱中性子遮蔽材料は、前記サーメット層は、複硼化物よりなる硬質相35〜95質量%と、残部が該硬質相を結合するNi基合金の結合相とからなり、B含有量が3〜7.5質量%、Mo含有量が、Mo/B原子比で0.8〜(1.6−0.05X)(X:含有するBの質量%、以下のX表記において同じ)、Cr含有量が(55−5X)%以下、残部が10質量%以上のNi、および不可避的不純物よりなることを特徴とする。
請求項3に記載の熱中性子遮蔽材料は、前記サーメット層は、複硼化物よりなる硬質相35〜95質量%と、残部が該硬質相を結合するFe基合金の結合相とからなり、B含有量が、3〜7.5質量%、Mo含有量が、Mo/B原子比で0.8〜(1.6−0.05X)、Crおよび/又はNi含有量が、いずれか一方または両者の合計で(55−5X)%質量以下、C含有量が、0.95質量%以下、残部が10質量%以上のFe、および不可避的不純物よりなることを特徴とする。
請求項4に記載の熱中性子遮蔽材料は、前記金属母材は、普通鋼、合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼又はアルミニウム合金であることを特徴とする。
請求項5に記載の熱中性子遮蔽材料の製造方法は、請求項1〜4いずれかに記載の熱中性子遮蔽材料の製造方法であって、前記サーメット層を金属母材上に溶射によって形成することを特徴とする。
なお、本明細書におけるサーメットとは、金属とセラミックの複合材料を意味する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱中性子遮蔽材料は、普通鋼、合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金などの金属母材上にサーメット層を形成させ、サーメット層は、複硼化物よりなる硬質相と、残部が硬質相を結合する結合相と、からなる複硼化物サーメットであり、前記サーメット層は、MM’B型複硼化物とM’基合金の結合相とよりなる複硼化物サーメット(ここでM=Mo,M’=NiまたはFe)であるので、良好な耐食性および高い熱中性子遮蔽能を有している。
また、現在使用されている普通鋼、合金鋼、ステンレス鋼又はアルミニウム合金の表面に、三元硼化物、M’金属相を有するサーメットで溶射層を形成することで、熱中性子遮蔽能を向上させて安全性を高めることができ、肉厚を薄くすることが可能となり、使用済核燃料の貯蔵密度を増加することができる。
さらに、本発明の熱中性子遮蔽材料は、輸送時や保管時には塩水、水等の雰囲気に対する十分な耐食性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】金属母材とサーメット層との密着性を評価する試験方法についての概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の熱中性子遮蔽材料は、金属母材上にサーメット層を形成させたものであり、サーメット層は、複硼化物よりなる硬質相と、残部が硬質相を結合する結合相と、からなる。すなわち、MM’B型複硼化物とM’基合金の結合相とよりなる複硼化物サーメットである。ここで、M=Mo,M’=NiまたはFeである。
【0010】
また、サーメット層は、複硼化物よりなる硬質相35〜95質量%と、残部が該硬質相を結合するNi基合金又はFe基合金の結合相とからなり、
B含有量が、3〜7.5質量%、
Mo含有量が、Mo/B原子比で0.8〜(1.6−0.05X)、
Cr含有量が(55−5X)質量%以下、
残部が10質量%以上のNi、および不可避的不純物よりなる。
【0011】
なお、上記結合相は、Ni基合金に代えてFe基合金に変更することも可能であり、この場合、サーメット層は、複硼化物よりなる硬質相35〜95質量%と、残部が該硬質相を結合するFe基の結合相とからなり、
B含有量が、3〜7.5質量%、
Mo含有量が、Mo/B原子比で0.8〜(1.6−0.05X)、
Crおよび/又はNi含有量が、いずれか一方または両者の合計で(55−5X)質量%以下、
C含有量が、0.05〜0.95%質量以下、
残部が10質量%以上のFe、および不可避的不純物よりなる。
【0012】
Bは、サーメット層中の複硼化物を形成するために必要不可欠な元素であり、サーメット層中に、3〜7.5質量%含有させる。B含有量が3質量%未満になると、複硼化物の形成量が少なく、組織中の硬質相の割合が少なくなるため、得られたサーメット層の十分な硬度と耐摩耗性を付与することができない。一方、7.5質量%を超えると、硬度は高くなるがサーメット層の強度(靭性や耐熱衝撃性)の低下をもたらす。よって、本サーメット層中のB含有量は、3〜7.5質量%とする。
形成されるサーメット層には複硼化物が含まれるため中性子遮蔽能力に優れている。
【0013】
MoはB同様硬質相となる硼化物を形成するために必要不可欠な元素である。また、Moの一部は結合相に固溶して、合金の機械的特性および耐摩耗性を向上させる他に、還元性雰囲気に対する耐食性を向上させる。
MoNiB型またはMoFeB型複硼化物は、MoとBの化学量論比は1:1であるが、実際は完全な化学量論的な化合物ではなく、数%の組成範囲を有するため、Mo/Bの原子比(以下Mo/B比と略す)は1である必要はないが、1の前後のある特定の範囲にすることが重要である。
【0014】
MoNiB型複硼化物サーメットの場合、
Mo/B比が0.8より小さい場合には、MoNiB型複硼化物とは異なる、Cr53 などのM'53 型(M':Crを主体とし、Mo、Ni等を含む)硼化物やNi3 BなどのM"3 B型(M":Niを主体とし、Cr、Mo等を含む)などの他の硼化物が第3相として形成され、サーメット層の強度の低下が著しい。Mo/B比が(1.6−0.05X)より大きい場合には、Mo−Ni系の金属間化合物を第3相として形成し、サーメット層の強度の低下を招く。
【0015】
MoFeB型複硼化物サーメットの場合、
Mo/B比が0.8より小さい場合には、MoFeB型複硼化物とは異なる、FeB等のFe硼化物が形成するため、耐摩耗性および耐食性が低下することに加え、サーメット層の強度が低下する。Mo/B比が(1.6−0.05X)を超える場合、MCやM23(Mは金属を表す)などの炭化物およびFe―Mo間の金属間化合物の形成量が増加するために強度の低下を招く。
【0016】
MoNiB型複硼化物サーメットの場合、
Niは、BおよびMo同様に、本サーメット層中の複硼化物の形成に必要不可欠な元素であり、結合相を構成する主な元素であり、サーメット層中に10質量%以上含有させることが望ましい。Ni含有量が10質量%未満の場合は、溶射時に十分な液相が出現せず緻密な溶射層が得られず、強度の低下が著しい。これは結合相中のNiが少ないと複硼化物との結合力が弱まることに加え、結合相の強度が低下し、ひいてはサーメット層の強度低下を招くためである。
【0017】
MoNiB型複硼化物サーメットの場合、CrをNiと置換するように添加してもよい。
Crは、サーメット層中の複硼化物中のNiと置換固溶し、複硼化物を構成する元素である。また、添加したCrは、結合相中にも固溶し、サーメット層の耐食性、耐摩耗性、高温特性、および機械的特性を大幅に向上させる効果がある
サーメット層中のCr含有量が、(55−5X)質量%を超えると、Crなどの硼化物を形成し、強度が低下する。
【0018】
MoFeB型複硼化物サーメットの場合、
Feは、BおよびMo同様に、本サーメット層中の複硼化物の形成に必要不可欠な元素であり、結合相を構成する主な元素であり、サーメット層中に10質量%以上含有させることが望ましい。Fe含有量が10質量%未満の場合は、溶射時に十分な液相が出現せず緻密な溶射層が得られず、強度の低下が著しい。これは結合相中のFeが少ないと複硼化物との結合力が弱まることに加え、結合相の強度が低下し、ひいてはサーメット層の強度低下を招くためである。
【0019】
MoFeB型複硼化物サーメットの場合、Ni又は/及びCrをFeと置換するように添加してもよい。
Ni又は/およびCrは、サーメット層の耐食性および耐酸化性を向上させる効果を示す。また、NiとCrを組み合わせて使用(複合含有)することで、結合相をマルテンサイト、フェライト、オーステナイトおよびこれらの混相組織に任意に制御することにより、機械的特性および耐摩耗性を低減することなく、用途に応じた耐食性、耐熱性の付与が可能である。Ni又は/およびCrの含有量は、単体含有あるいは複合含有した場合のいずれも含有量が35質量%を超えて添加すると、耐食性および耐熱性は非常に優れるものの、強度の低下を生じる。よって、Ni又は/およびCrの含有量は、単体含有あるいは複合含有した場合の合計量で、(55−5X)質量%にすることが望ましい。
【0020】
なお、本発明の溶射用の粉末を製造する過程で含まれる不可避的不純物(Si、Al、Mg、P、S、N、O、C等)や他の元素(希土類等)が、サーメット層の特性を損なわない程度にごく少量含まれても差し支えないことは勿論である。
Cについては、MoFeB型複硼化物サーメットの場合、
粉末表面の酸化物を還元する役割を有している。また一部は結合相中に固溶して硬度の向上をもたらす。含有量が0.05質量%未満では効果が少なく、1質量%を超えると炭化物の形成を促進し、サーメット層の強度が低下する傾向を示す。また、耐食性の低下にも繋がる。
したがって、Cの含有量は、0.05〜1質量%にすることが望ましい。
【0021】
サーメット層中に含まれる複硼化物の量は、溶射層全体の35〜95質量%の範囲であることが好ましい。複硼化物の量が35質量%未満になると、十分な中性子遮蔽能が得られない。一方、複硼化物の量が95質量%を超えると塑性変形能の高い結合相が少なくなり、セラミックス量が多くなることにより、溶射ではポア等の欠陥を生じ、緻密な溶射皮膜が得られず、金属母材との優れた密着力が得られない。
よって、本サーメット層中の複硼化物の割合は、35〜95質量%とすることが望ましい。
【0022】
<サーメット層の厚み>
本発明の熱中性子遮蔽材料における溶射層の厚みとしては、0.05〜5mmとすることが好適である。
サーメット層を溶射により形成する場合、溶射層は,すでに形成されている溶射皮膜上に新たな粉末粒子が高速で衝突することによって、緻密な皮膜が形成される。このため、サーメット層の厚みが0.05mm未満の場合は、溶射皮膜の厚さが薄く、緻密なサーメット層が得られず、一方、サーメット層の厚みが5mmを超える場合は、溶射皮膜の厚さが厚くなり、溶射皮膜中の残留応力が高くなり溶射皮膜に割れを発生しやすくなり、良好な耐食性や高い熱中性子遮蔽能を備えた熱中性子遮蔽材料が得られない。よって、熱中性子遮蔽材料におけるサーメット層の厚みとしては、0.05〜5mmとすることが望ましい。
【0023】
<金属母材上へのサーメット層の形成>
本実施形態の熱中性子遮蔽材料は、サーメット層の配合になるように溶射用粉末を調整し、普通鋼、合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、又はアルミニウム合金などの金属母材上に溶射ガンを使用して,所定の厚みになるように噴射して形成する。
溶射ガンの溶射粉末投入容器に、MM’B(M,M’=遷移金属)型複硼化物粉末、金属粉末を混合調整して投入し、高速フレーム溶射法を適用して、大気中で溶射施工することが好ましい。
高速フレーム溶射法は、溶射技術の中でも比較的低温で溶射層を形成するため、サーメット材料や複硼化物サーメットに好適に採用でき、溶射皮膜中の引張の残留応力を低減でき、金属母材との高い密着力を得ることができる。
また、本実施形態のサーメット層は、塑性変形能の高い金属相を含むため、ポア等の欠陥が極めて少なく、緻密な皮膜が得られ、優れた密着力を有している。
加えて、高速フレーム溶射を用いた場合、材料の組成変動を抑制することができ、優れた耐食性を発揮できる。
【0024】
<溶射粉末の粒度>
溶射粉末の粒度としては、通常、プラズマ溶射法では15〜100μm程度のものを用いることができるが、上記高速フレーム溶射を用いた場合では、20〜60μm程度のものを用いることが好ましい。
溶射粉末の粒度が粗いと、緻密な溶射層を形成することが困難となりサーメット層にポア等の欠陥ができやすく硬度が低下する。
一方、溶射粉末の粒度が微細になると、溶射粉末の流動性が低下し溶射作業性を損なう。
【実施例】
【0025】
<実施例1>
以下に実施例を示し、本発明についてさらに詳細に説明する。
表1に、実施例1において、形成したサーメット層の組成、形成したサーメット層の硼化物と結合層の割合を示す。
実施例1において、表1に示すサーメット層組成となるように、溶射用原料粉末の複硼化物及び結合相となる金属粉の割合を調整して、金属母材上にサーメット層を形成した。
なお、溶射の金属母材には図1に示すステンレス鋼(SUS316L)の試験片を用いた。
【0026】
【表1】

【0027】
溶射粉は、まず、表1の実施例1組成の溶射層組成になるように原料粉末を配合し、ボールミルでの湿式粉砕した。
次に、湿式粉砕した粉末をスプレードライヤーによって造粒し、1150℃で1時間保持し、硬質相となるMM’B型の複硼化物を反応形成させた。
その後、この形成されたMM’B型複硼化物サーメットを分級して、サーメット層形成用の20〜60μmの大きさの溶射粉末を完成させた。
一方、サーメット層を形成させる金属母材の表層にはショット(ホワイトアルミナ♯20)を使用し、金属母材の表面を粗面化した。
【0028】
その後、用意した原料粉末を溶射して、母材上に厚み0.3mmの、実施例1の組成のサーメット層を形成した。
用いた溶射機は、高速フレーム溶射機(PRAXAIR/TAFA製JP-5000)で、以下の条件でサーメット層を形成した。
溶射距離(基材と溶射ガンとの距離):380mm
酸素流量:1900scfh
灯油流量:5gph
【0029】
<比較例1>
また、比較のため、結合相を形成しない(サーメットとならない)複硼化物のみを溶射用粉末として用いて形成した溶射層を比較例として示す。
比較例1においては、実施例1と、溶射用原料粉末が異なるが、溶射条件等、その他の条件においては同様である。
【0030】
<実施例、比較例の評価>
<金属母材との密着性評価>
実施例1、比較例1について、金属母材の表面に形成した溶射層との密着性を評価した。
密着性評価はねじり試験機を用いて行った。試験方法は、ねじり試験機に取り付けられるような試験片を作成し、試験片の一端を固定し、他端を回転させて行った(図1参照)。
回転により、溶射層に剥離又はクラックを生じた時のトルク値を溶射層の密着力とした。
実施例1の密着力は大きく高い値を示したが、比較例1は低いトルク値を示した。
その結果を表2に示す。
【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明の熱中性子遮蔽材料は、優れた耐食性、および熱中性子遮断性を維持しつつ、高硬度材料であり、耐食耐摩耗に優れた材料であり、肉厚を薄くすることが可能となり、使用済核燃料の貯蔵密度を増加することができる。
さらに、本発明の熱中性子遮蔽材料は、使用済核燃料の輸送時や保管時の塩水、水等の雰囲気に対する十分な耐食性を有しており、熱中性子遮断性を要する部材に広く適用でき、産業上の利用可能性が極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属母材上にサーメット層を有する熱中性子遮蔽材料であって、
前記サーメット層が、
M’B型複硼化物とM’基合金の結合相よりなる複硼化物サーメットであることを特徴とする熱中性子遮蔽材料。(M=Mo,M’=NiまたはFe)
【請求項2】
前記サーメット層は、
複硼化物よりなる硬質相35〜95質量%と、残部が該硬質相を結合するNi基合金の結合相とからなり、
B含有量が、3〜7.5質量%、
Mo含有量が、Mo/B原子比で0.8〜(1.6−0.05X)(X:含有するBの質量%、以下のX表記において同じ)、
Cr含有量が(55−5X)質量%以下、
残部が10質量%以上のNi、および不可避的不純物よりなることを特徴とする、請求項1に記載の熱中性子遮蔽材料。
【請求項3】
前記サーメット層は、
複硼化物よりなる硬質相35〜95質量%と、
残部が該硬質相を結合するFe基合金の結合相とからなり、
B含有量が、3〜7.5質量%、
Mo含有量が、Mo/B原子比で0.8〜(1.6−0.05X)(X:含有するBの質量%)、
Crおよび/又はNi含有量が、いずれか一方または両者の合計で(55−5X)質量%以下、
C含有量が、0.95質量%以下、
残部が10質量%以上のFe、および不可避的不純物よりなることを特徴とする、請求項1に記載の熱中性子遮蔽材料。
【請求項4】
前記金属母材は、普通鋼、合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼又はアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱中性子遮蔽材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱中性子遮蔽材料の製造方法であって、前記サーメット層を金属母材上に溶射によって形成することを特徴とする熱中性子遮蔽材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−42317(P2012−42317A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183484(P2010−183484)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)