熱交換システム
【課題】複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することを目的とする。
【解決手段】ヒートポンプサイクルにて冷媒を外気に放熱させる冷媒放熱器12および走行用電動モータMGの冷却水を外気に放熱させるラジエータ43を、冷媒と冷却水が熱交換可能に一体的に構成し、ラジエータ43へ流入する冷却水の温度が冷媒放熱器12へ流入する冷媒の温度より低い温度に設定された第2基準温度T2以上、第1基準温度T1以下となった際に、ラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を低下させる。これにより、冷媒と外気との不必要な熱交換を抑制して、冷媒の有する熱を効果的に外気に放熱させる。
【解決手段】ヒートポンプサイクルにて冷媒を外気に放熱させる冷媒放熱器12および走行用電動モータMGの冷却水を外気に放熱させるラジエータ43を、冷媒と冷却水が熱交換可能に一体的に構成し、ラジエータ43へ流入する冷却水の温度が冷媒放熱器12へ流入する冷媒の温度より低い温度に設定された第2基準温度T2以上、第1基準温度T1以下となった際に、ラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を低下させる。これにより、冷媒と外気との不必要な熱交換を抑制して、冷媒の有する熱を効果的に外気に放熱させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の流体を熱交換させる熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2に、圧縮機から吐出された吐出冷媒(第1流体)と車室内へ送風される送風空気(第3流体)とを熱交換させて送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置が開示されている。さらに、特許文献1、2の車両用空調装置には、吐出冷媒とは異なる熱媒体(第2流体)と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する構成についても記載されている。
【0003】
つまり、特許文献1、2の車両用空調装置には、複数種の流体(吐出冷媒、熱媒体、送風空気)を熱交換させる熱交換システムが適用されている。より詳細には、2種類の流体(第1、第2流体)の有する熱を別の流体(第3流体)に放熱させる熱交換システムが適用されていると表現することができる。
【0004】
具体的には、特許文献1では、吐出冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する暖房用熱交換器、および、燃焼式ヒータにて加熱された熱媒体であるブラインと送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱するヒータコアを、1つの熱交換器として一体的に構成した複合型の熱交換器を採用することによって、吐出冷媒およびブラインの有する熱を送風空気に放熱させる熱交換システムを実現している。
【0005】
さらに、特許文献1の複合型の熱交換器では、吐出冷媒よりも温度の高いブラインが流通するヒータコアを、暖房用熱交換器に対して送風空気流れ下流側に配置することによって、吐出冷媒と送風空気との温度差およびブラインと送風空気との温度差を確保している。これにより、暖房用熱交換器にて吐出冷媒の有する熱を確実に放熱させ、ヒータコアにてブラインの有する熱を確実に放熱させるようにしている。
【0006】
また、特許文献2では、特許文献1と同様の暖房用熱交換器、および、エンジンを冷却する冷却水(第2流体)と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱するヒータコアを、1つの熱交換器として一体的に構成した複合型の熱交換器を採用することによって、吐出冷媒および冷却水の有する熱を送風空気に放熱させる熱交換システムを実現している。
【0007】
さらに、特許文献2の複合型の熱交換器では、暖房用熱交換器にて冷媒を流通させる断面扁平形状の冷媒チューブ、および、ヒータコアにて冷却水を流通させる断面扁平形状の冷却水チューブの扁平面同士を接合することによって、熱交換器全体としての大型化の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3275415号公報
【特許文献2】特許第4311115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両では、車両燃費を向上させるために、車両走行中あるいは車両停車中にエンジンを停止させることがあるため、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両では、常時エンジンが作動する通常の車両に対して、エンジンの冷却水の温度が上昇しにくくなっている。
【0010】
そのため、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両に、特許文献1に開示された熱交換システムを適用し、ヒータコアのブラインとして、エンジンの冷却水を採用すると、吐出冷媒の温度よりも冷却水の温度が低くなっている際に、暖房用熱交換器では送風空気を加熱することができるものの、ヒータコアでは送風空気を加熱することができなくなってしまう。
【0011】
つまり、ヒータコアでは、温度の低い冷却水の有する熱を暖房用熱交換器に加熱された送風空気に放熱させることができず、逆に、暖房用熱交換器にて加熱された送風空気の熱が冷却水に放熱されてしまうという不必要な熱交換が行われてしまう。
【0012】
また、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両に、特許文献2に開示された熱交換システムを適用すると、吐出冷媒の温度よりも冷却水の温度が低くなっている際に、ヒータコアのみならず、暖房用熱交換器においても送風空気を充分に加熱することができなくなってしまうことがある。
【0013】
その理由は、特許文献2の熱交換器では、冷媒チューブと冷却水チューブとを直接接合しているので、吐出冷媒と送風空気との間の熱伝達率および冷却水と送風空気との間の熱伝達率よりも、冷媒と冷却水との間の熱伝達率が高くなってしまうからである。
【0014】
このように冷却水と送風空気との間の熱伝達率よりも、冷媒と冷却水との間の熱伝達率が高くなっていると、冷却水の温度が低下して吐出冷媒と冷却水との温度差が大きくなった際に、冷却水の温度が送風空気より高くなっていたとしても、吐出冷媒の有する熱の殆どが冷却水に放熱されてしまい、送風空気を充分に加熱することができなくなってしまう。
【0015】
以上の如く、特許文献1、2に開示された熱交換システムでは、2種類の流体(第1、第2流体)のうち、一方の流体に温度変化が生じると、2種類の流体(第1、第2流体)の有する熱を別の流体(第3流体)へ適切に放熱させることができなくなってしまい、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができなくなってしまう。
【0016】
本発明は、上記点に鑑み、複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1流体と第3流体とを熱交換させて前記第1流体の有する熱を前記第3流体に放熱させる第1熱交換器(12)と、第2流体と第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、
第1熱交換器(12)を流通する第1流体と第2熱交換器(43)を流通する第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、第1熱交換器(12)へ流入する第1流体の温度は、第1熱交換器(12)へ流入する第3流体の温度よりも高い値になっており、
第2流体流量調整手段(41、42)は、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が予め定めた第2基準温度(T2)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および第2基準温度(T2)よりも低い温度になっている際よりも第2流体の流入流量を減少させ、
さらに、第1基準温度(T1)および第2基準温度(T2)は、いずれも第1熱交換器(12)へ流入する第1流体の温度以下に設定されているとともに、第1基準温度(T1)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第3流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0018】
これによれば、第2流体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度となっている際には、第1熱交換器(12)にて第1流体の有する熱を第3流体に放熱させることができ、第2熱交換器(43)にて第2流体の有する熱を第3流体に放熱させることができる。すなわち、第1、第2熱交換器(12、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0019】
さらに、第2流体流量調整手段(41、42)が、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が第2基準温度(T2)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、第2流体の流入流量を減少させるので、第2流体の温度が第1基準温度(T1)以下となっている際にも第1、第2流体の有する熱を適切に放熱させることができる。
【0020】
つまり、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が第1基準温度(T1)以下となって第1流体の温度と第2流体の温度との温度差が拡大しても、第2流体の流入流量を減少させることによって、第1流体と第2流体との不必要な熱交換を抑制して、第1流体の有する熱を第3流体へ効率的に放熱させることができる。
【0021】
さらに、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が第2基準温度(T2)よりも低くなって第1流体の温度と第2流体の温度との温度差がさらに拡大した際には、第2流体の流入流量を減少させず、第1流体と第2流体との熱交換を促進させるので、第1流体の有する熱を第2流体および第3流体の双方へ放熱させて、第1流体の放熱量を増大させることができる。
【0022】
従って、第2流体の温度変化によらず、複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。なお、請求項に記載された「流入流量を減少させ」という用語には、単に流量を減少させることのみを意味するだけでなく流量を0とすること、すなわち、熱交換器へ流体を流入させないことを含む意味である。
【0023】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の熱交換システムにおいて、第1熱交換器(12)は、第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a)を有し、第2熱交換器(43)は、第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、複数の第1チューブ(12a)および複数の第2チューブ(43a)の外周には、第3流体を流通させる第3流体通路(50a)が形成されており、
第1チューブ(12a)の外表面および第2チューブ(43a)の外表面には、双方の熱交換器(12、43)における熱交換を促進するとともに、第1チューブ(12a)を流通する第1流体と第2チューブ(43a)を流通する第2流体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする。
【0024】
これによれば、第1チューブ(12a)の外表面および第2チューブ(43a)の外表面に、アウターフィン(50b)が接合されているので、極めて容易に、第1熱交換器(12)を流通する第1流体と第2熱交換器(43)を流通する第2流体との間の熱移動を可能とすることができる。
【0025】
しかも、第1流体と第2流体との間の熱移動は、アウターフィン(50b)を介して行われるので、第1流体の有する熱はアウターフィン(50b)に伝熱する際に第2流体よりも第3流体に放熱されやすくなる。従って、流入流量を減少させた際に、第1流体と第3流体とを効率的に熱交換させることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明のように、複数の第1チューブ(12a)のうち、少なくとも1つを、複数の第2チューブ(43a)の間に配置し、複数の第2チューブ(43a)のうち、少なくとも1つを、複数の第1チューブ(12a)の間に配置し、少なくとも第1チューブ(12a)と第2チューブ(43a)との間に形成される空間が第3流体通路(50a)を形成する構成とすることが望ましい。
【0027】
請求項4に記載の発明のように、第1熱交換器(12)に、第1チューブ(12a)を流通する第1流体の集合あるいは分配を行う第1タンク部(12b)を設け、第2熱交換器(43)に、第2チューブ(43a)を流通する第2流体の集合あるいは分配を行う第2タンク部(43b)を設け、さらに、複数の第1チューブ(12a)および複数の第2チューブ(43a)を、第3流体の流れ方向の上流側に位置する上流側チューブ群(50c)、および第3流体の流れ方向の下流側に位置する下流側チューブ群(50d)で構成することが望ましい。
【0028】
請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、第2熱交換器(43)を迂回させるように第2流体を流すバイパス通路(44)を備え、第2流体流量調整手段(41、42)が、第2流体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、第2流体の流入流量を減少させるようになっていてもよい。
【0029】
請求項6に記載の発明では、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を調整する放熱量調整手段(11b、33)を備え、放熱量調整手段(11b、33)は、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が予め第1基準温度(T1)以上に定められた保護基準温度よりも高い温度となる際に、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を低下させることを特徴とする。
【0030】
これによれば、第2流体の温度が保護基準温度より高い温度となっている際に、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を低下させることで、第2熱交換器(43)にて第2流体が有する熱の第3流体への放熱を促進して、第2流体の温度の低下を図ることができる。従って、第1、第2熱交換器(12、63、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0031】
請求項7、8に記載の発明のように、第1流体を、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒や、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体とすることが極めて有効である。
【0032】
また、請求項9に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度は、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が予め定めた第2基準温度(T2)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および第2基準温度(T2)よりも低い温度になっている際よりも熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、第1基準温度(T1)および第2基準温度(T2)は、いずれも冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、第1基準温度(T1)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0033】
これによれば、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以上となっている際には、請求項1に記載の発明と同様に、冷媒放熱器(12)にて冷媒の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、熱媒体放熱器(43)にて熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0034】
さらに、熱媒体流量調整手段(41、42)が、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第2基準温度(T2)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体の流入流量を減少させるので、請求項1に記載の発明と同様に、熱媒体の温度が第2基準温度(T2)より低い温度となっている際にも吐出冷媒、熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0035】
その結果、冷媒、熱媒体および熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。
【0036】
特に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第2基準温度(T2)よりも低くなった際に、吐出冷媒と熱媒体との熱交換を促進させて、吐出冷媒の放熱量を増大できることは、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる点で極めて有効である。
【0037】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の熱交換システムにおいて、熱媒体流量調整手段(41、42)は、冷媒放熱器(12)における冷媒圧力が予め定めた基準冷媒圧力(P1)以上となっている際に、熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする。
【0038】
これによれば、基準冷媒圧力(P1)として、その飽和温度が冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体よりも高くなる圧力を設定しておくことで、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度を、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも確実に高い値とすることができる。また、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第2基準温度(T2)よりも低下した際に、吐出冷媒の温度と熱媒体の温度との温度差を充分に確保することもできる。
【0039】
請求項11に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度は、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した第3基準温度(T3)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および第3基準温度(T3)よりも低い温度になっている際よりも熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、第1基準温度(T1)および第3基準温度(T3)は、いずれも冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、第1基準温度(T1)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0040】
これによれば、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以上となっている際には、請求項1に記載の発明と同様に、冷媒放熱器(12)にて冷媒の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、熱媒体放熱器(43)にて熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0041】
さらに、熱媒体流量調整手段(41、42)が、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第3基準温度(T3)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体の流入流量を減少させるので、請求項1に記載の発明と同様に、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より低い温度となっている際にも吐出冷媒、熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0042】
また、第3基準温度(T3)が冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した値として設定されているので、冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の温度に応じて第3基準温度(T3)を設定できる。つまり、冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の温度が低くなるに伴って、熱媒体の流入流量を減少させる熱媒体の温度範囲、すなわち第3基準温度(T3)と第1基準温度(T1)との温度差を拡大することができる。
【0043】
従って、吐出冷媒の温度が低くなり、吐出冷媒の有する熱によって熱交換対象流体を加熱しにくくなるに伴って、熱媒体の流入流量を減少させる第3基準温度(T3)と第1基準温度(T1)との温度差を拡大することができ、より一層、吐出冷媒と熱媒体との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒と熱交換対象流体との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0044】
その結果、冷媒、熱媒体および熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。さらに、請求項9に記載の発明と同様に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第3基準温度(T3)よりも低くなった際に、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる。
【0045】
請求項12に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度は、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が予め定めた第1基準温度(T1)以下となった際に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際よりも熱媒体の流入流量を減少させるとともに、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)よりも低くなるに伴って、熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、第1基準温度(T1)は、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0046】
これによれば、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以上となっている際には、請求項1に記載の発明と同様に、冷媒放熱器(12)にて冷媒の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、熱媒体放熱器(43)にて熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0047】
さらに、熱媒体流量調整手段(41、42)が、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以下となった際に、熱媒体の流入流量を減少させるので、吐出冷媒と熱媒体との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒の有する熱を熱交換対象流体へ効率的に放熱させることができる。
【0048】
その後、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度がさらに低下するに伴って、熱媒体の流入流量を増加させるので、吐出冷媒の有する熱を熱媒体および熱交換対象流体の双方へ放熱させて、吐出冷媒の放熱量を増大させることができる。従って、請求項9に記載の発明と同様に、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる。
【0049】
その結果、冷媒、熱媒体および熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。
【0050】
請求項13に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度は、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した第3基準温度(T3)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および第3基準温度(T3)よりも低い温度になっている際よりも熱媒体の流入流量を減少させるとともに、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)よりも低くなるに伴って、熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、第1基準温度(T1)および第3基準温度(T3)は、いずれも冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、第1基準温度(T1)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0051】
これによれば、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以上となっている際には、請求項1に記載の発明と同様に、冷媒放熱器(12)にて冷媒の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、熱媒体放熱器(43)にて熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0052】
さらに、熱媒体流量調整手段(41、42)が、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第3基準温度(T3)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体の流入流量を減少させるので、請求項1に記載の発明と同様に、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より低い温度となっている際にも吐出冷媒、熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0053】
また、第3基準温度(T3)が冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した値として設定されているので、請求項11に記載の発明と同様に、吐出冷媒と熱媒体との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒と熱交換対象流体との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0054】
また、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)よりも低下するに伴って、熱媒体の流入流量を増加させるので、請求項12に記載の発明と同様に、吐出冷媒の有する熱を熱媒体および熱交換対象流体の双方へ放熱させて、吐出冷媒の放熱量を増大させることができる。従って、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる。
【0055】
その結果、冷媒、熱媒体および熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。
【0056】
請求項14に記載の発明では、請求項9ないし13のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、冷媒放熱器(12)は、冷媒が流通する複数の冷媒用チューブ(12a)を有し、熱媒体放熱器(43)は、熱媒体が流通する複数の熱媒体用チューブ(43a)を有し、複数の冷媒用チューブ(12a)および複数の熱媒体用チューブ(43a)の外周には、熱交換対象流体を流通させる熱交換対象流体通路(50a)が形成されており、冷媒用チューブ(12a)の外表面および熱媒体用チューブ(43a)の外表面には、双方の放熱器(12、43)における熱交換を促進するとともに、冷媒用チューブ(12a)を流通する冷媒と熱媒体用チューブ(43a)を流通する熱媒体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする。
【0057】
これによれば、冷媒用チューブ(12a)の外表面および熱媒体用チューブ(43a)の外表面に、アウターフィン(50b)が接合されているので、極めて容易に、冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体との間の熱移動を可能とすることができる。
【0058】
しかも、吐出冷媒と熱媒体との間の熱移動は、アウターフィン(50b)を介して行われるので、吐出冷媒の有する熱はアウターフィン(50b)に伝熱する際に熱媒体よりも熱交換対象流体に放熱されやすくなる。従って、流入流量を減少させた際に、吐出冷媒と熱交換対象流体とを効率的に熱交換させることができる。
【0059】
請求項15に記載の発明のように、請求項9ないし14のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、さらに、熱媒体放熱器(43)を迂回させるように熱媒体を流すバイパス通路(44)を備え、熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、流入流量を減少させるようになっていてもよい。
【0060】
請求項16ないし請求項20に記載の発明は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、冷媒放熱器(12)から流出した第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、第2熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、第1熱媒体放熱器(63)を流通する第1熱媒体と第2熱媒体放熱器(43)を流通する第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度は、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっている熱交換システムを対象としている。
【0061】
請求項16に記載の発明では、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が予め定めた第5基準温度(T5)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に第2熱媒体の流入流量を減少させ、さらに、前記第4基準温度(T4)および前記第5基準温度(T5)は、いずれも前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第4基準温度(T1)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする。
【0062】
これによれば、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以上となっている際には、第1熱媒体放熱器(63)にて第1熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、第2熱媒体放熱器(43)にて第2熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0063】
さらに、第2熱媒体流量調整手段(41、42)が、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第5基準温度(T5)以上、かつ、第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるので、第2熱媒体の温度が第5基準温度(T5)より低い温度となっている際にも第1、第2熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0064】
従って、第1、第2熱媒体、熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、第2熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。
【0065】
特に、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第5基準温度(T5)よりも低くなった際に、各熱媒体の熱交換を促進させて、第1熱媒体の放熱量を増大できることは、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる点で極めて有効である。
【0066】
請求項17に記載の発明のように、第2熱媒体流量調整手段(41、42)にて、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度が予め定めた第1熱媒体基準温度(Tα)以上となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させることが望ましい。
【0067】
請求項18に記載の発明では、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度から予め定めた温度を減算した第6基準温度(T6)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に第2熱媒体の流入流量を減少させ、さらに、第4基準温度(T4)は、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする。
【0068】
これによれば、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以上となっている際には、第1熱媒体の有する熱および第2熱媒体の有する熱の双方を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0069】
さらに、第2熱媒体流量調整手段(41、42)が、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第6基準温度(T6)以上、かつ、第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるので、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)より低い温度となっている際にも第1、第2熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0070】
また、第6基準温度(T6)が第1熱媒体放熱器(63)における第1熱媒体の温度から所定温度を減算した値として設定されているので、第1熱媒体の有する熱によって熱交換対象流体を加熱しにくくなるに伴って、第6基準温度(T6)と第4基準温度(T4)との温度差を拡大することができ、各熱媒体における不必要な熱交換を抑制して、第1熱媒体と熱交換対象流体との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0071】
請求項19に記載の発明では、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が予め定めた第4基準温度(T4)以下となった際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)よりも低くなるに伴って、第2熱媒体の流入流量を増加させ、さらに、第4基準温度(T4)は、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする。
【0072】
これによれば、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以上となっている際には、第1熱媒体の有する熱および第2熱媒体の有する熱の双方を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0073】
さらに、第2熱媒体流量調整手段(41、42)が、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるので、第1、第2熱媒体における不必要な熱交換を抑制して、第1熱媒体の有する熱を熱交換対象流体へ効率的に放熱させることができる。
【0074】
その後、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度がさらに低下するに伴って、第2熱媒体の流入流量を増加させるので、第1熱媒体の有する熱を第2熱媒体および熱交換対象流体の双方へ放熱させて、第1熱媒体の放熱量を増大させることができる。この結果、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力の増大を図ることができる。
【0075】
請求項20に記載の発明では、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第1熱媒体放熱器(63)に流入する第1熱媒体の温度から予め定めた温度を減算した第6基準温度(T6)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)よりも低くなるに伴って、第2熱媒体の流入流量を増加させ、さらに、第4基準温度(T4)は、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする。
【0076】
これによれば、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以上となっている際には、第1熱媒体の有する熱および第2熱媒体の有する熱の双方を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0077】
また、第2熱媒体流量調整手段(41、42)が、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第6基準温度(T6)以上、かつ、第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるので、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)より低い温度となっている際にも各熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0078】
さらに、第6基準温度(T6)が第1熱媒体放熱器(63)における第1熱媒体の温度から所定温度を減算した値として設定されているので、各熱媒体における不必要な熱交換を抑制して、第1熱媒体と熱交換対象流体との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0079】
さらにまた、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度がさらに低下するに伴って、第2熱媒体の流入流量を増加させるので、第1熱媒体の有する熱を第2熱媒体および熱交換対象流体の双方へ放熱させて、第1熱媒体の放熱量を増大させることができる。この結果、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力の増大を図ることができる。
【0080】
請求項21に記載の発明のように、第1熱媒体放熱器(63)を構成する第1熱媒体用チューブ(63a)の外表面、および第2熱媒体放熱器(43)を構成する第2熱媒体用チューブ(43a)の外表面に、アウターフィン(50b)を接合することで、極めて容易に、第1熱媒体放熱器(63)を流通する第1熱媒体と第2熱媒体放熱器(43)を流通する第2熱媒体との間の熱移動を可能とすることができる。
【0081】
特に、第1熱媒体と第2熱媒体との間の熱移動は、アウターフィン(50b)を介して行われるので、第1熱媒体の有する熱はアウターフィン(50b)に伝熱する際に第2熱媒体よりも熱交換対象流体に放熱されやすくなる。従って、第2熱媒体の流入流量を減少させた際に、第1熱媒体と熱交換対象流体とを効率的に熱交換させることができる。
【0082】
請求項22に記載の発明のように、さらに、第2熱媒体放熱器(43)を迂回させるように第2熱媒体を流すバイパス通路(44)を備え、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、第2熱媒体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、第2熱媒体の流入流量を減少させるようになっていてもよい。
【0083】
請求項23および24に記載の発明は、第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a、63a)を有し、第1流体と第3流体とを熱交換させて第1流体の有する熱を第3流体に放熱させる第1熱交換器(12、63)と、第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、第2流体と第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、第1熱交換器(12、63)を流通する第1流体と第2熱交換器(43)を流通する第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、複数の第1チューブ(12a、63a)のうち少なくとも1つは、複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、複数の第2チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、複数の第1チューブ(12a、63a)の間に配置され、第1チューブ(12a、63a)と第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、第3流体が流通する第3流体通路(50a)を形成しており、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度、および第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度は、第1、第2熱交換器(12、63、43)へ流入する前の第3流体の温度よりも高い値になっている熱交換システムを対象としている。
【0084】
請求項23に記載の発明は、第2流体流量調整手段(41、42)は、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度が第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度以上となり、かつ、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体と第2熱交換器(41、42)へ流入する第2流体との温度差が予め定めた基準温度差(ΔTTth)以上となる際に、第2流体の流入流量を減少させることを特徴とする。
【0085】
これによれば、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度が第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度以上となる場合に、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度と、第1熱交換器(12)に流入する温度との温度差が基準温度差(ΔTTth)以上に拡大した際には、第2流体の流入流量を減少させるので、第2熱交換器(43)における第2流体と第3流体との熱交換を抑制して、第2流体の温度の上昇を図ることができる。これにより、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度と、第1熱交換器(12)に流入する第1流体の温度との温度差を縮小させることが可能となる。この結果、第1、第2熱交換器(12、63、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換の実現を図ることができる。
【0086】
請求項24に記載の発明は、第2流体流量調整手段(41、42)は、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度が第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度よりも低くなり、かつ、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体と第2熱交換器(43)へ流入する第2流体との温度差が予め定めた基準温度差(ΔTTth)以上となる際に、第2流体の流入流量を増加させることを特徴とする。
【0087】
これによれば、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度が第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度より低くなる場合に、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度と、第1熱交換器(12)に流入する温度との温度差が基準温度差(ΔTTth)以上に拡大した際には、第2流体の流入流量を増加させるので、第2熱交換器(43)にて第2流体が有する熱の第3流体への放熱を促進して、第2流体の温度の低下を図ることができる。これにより、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度と、第1熱交換器(12、63)に流入する第1流体の温度との温度差を縮小させることが可能となる。この結果、第1、第2熱交換器(12、63、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換の実現を図ることができる。
【0088】
請求項25に記載の発明では、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を調整する放熱量調整手段(11b、33)を備え、放熱量調整手段(11b、33)は、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が予め定められた保護基準温度よりも高い温度となる際に、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を低下させることを特徴とする。
【0089】
これによれば、第2流体の温度が保護基準温度より高い温度となっている際に、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を低下させることで、第2熱交換器(43)にて第2流体が有する熱の第3流体への放熱を促進して、第2流体の温度の低下を図ることができる。従って、第1、第2熱交換器(12、63、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0090】
請求項26に記載の発明ように、第1流体が、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒である場合、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が保護基準温度よりも高い温度となる際に、放熱量調整手段(11b)にて圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させるようにしてもよい。これによれば、第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることができる。
【0091】
請求項27に記載の発明のように、第1流体が、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体である場合、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が保護基準温度よりも高い温度となる際に、放熱量調整手段(11b)にて圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させるようにしてもよい。これによれば、第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることができる。
【0092】
請求項28に記載の発明のように、ヒートポンプサイクル(10)の蒸発器(16)にて空調対象空間に送風する送風空気と冷媒とを熱交換させて、前記送風空気を冷却する空調装置に適用され、第1流体がヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体、または、圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒である場合、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が保護基準温度よりも高い温度となる際に、蒸発器(16)へ流入する空調対象空間から循環導入される内気と空調対象空間の外部から導入される外気との導入割合を、内気が増加するように変化させることで、蒸発器(16)の熱負荷を低下させるようにしてもよい。
【0093】
これによれば、外気よりも温度低い内気の導入割合を増加させることで、蒸発器(16)にて必要な冷媒の吸熱量を少なくすることができ、蒸発器(16)の熱負荷を低下させることができる。この結果、圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させることができ、第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることができる。
【0094】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の熱交換器構造体の外観斜視図である。
【図3】第1実施形態の熱交換器構造体の模式的な一部分解斜視図である。
【図4】第1実施形態の熱交換器構造体における冷媒の流れおよび冷却水の流れを説明するための模式的な斜視図である。
【図5】(a)は、冷却水温度が所定の温度となっている際のアウターフィンの温度分布を示す温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィンの温度分布を模式的に表した説明図である。
【図6】(a)は、冷却水温度が別の所定の温度となっている際のアウターフィンの温度分布を示す温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィンの温度分布を模式的に表した説明図である。
【図7】(a)は、冷却水温度が別の温度条件となっている際のアウターフィンの温度分布を示す温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィンの温度分布を模式的に表した説明図である。
【図8】(a)は、冷却水温度がさらに別の温度条件となっている際のアウターフィンの温度分布を示す温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィンの温度分布を模式的に表した説明図である。
【図9】第2実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図10】第3実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図11】第4実施形態の冷却水ポンプの作動を説明するための説明図である。
【図12】第5実施形態の熱交換器構造体の模式的な一部分解斜視図である。
【図13】第5実施形態に係る熱交換器構造体のヘッダタンク部長手方向の模式的な断面図である。
【図14】第6実施形態に係る制御装置が実行する冷却水ポンプの吐出流量制御の流れを示すフローチャートである。
【図15】第7実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図16】第7実施形態に係る車両用空調装置の一部を変更した全体構成図である。
【図17】他の実施形態に係る熱交換器構造体のヘッダタンク部長手方向の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
(第1実施形態)
図1〜8により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の熱交換システムを、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータMGから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。
【0097】
ハイブリッド車両は、車両の走行負荷等に応じてエンジンを作動あるいは停止させて、エンジンおよび走行用電動モータMGの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータMGのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、ハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力をエンジンのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させることができる。
【0098】
本実施形態の車両用空調装置1に適用される熱交換システムは、蒸気圧縮式の冷凍サイクルで構成されるヒートポンプサイクル10、および、走行用電動モータMGを冷却する冷却水が循環する冷却水循環回路40等によって構成されている。
【0099】
まず、ヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。このヒートポンプサイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。なお、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0100】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。固定容量型圧縮機11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0101】
電動モータ11bは、後述する制御装置から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ11bが圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0102】
圧縮機11の冷媒吐出口には、冷媒放熱器12の冷媒入口側が接続されている。冷媒放熱器12は、エンジンルーム内に配置されて、圧縮機から吐出された吐出冷媒(第1流体)と送風ファン13から送風された熱交換対象流体としての外気(第3流体)とを熱交換させて、吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させる放熱用熱交換器である。
【0103】
また、送風ファン13は、制御装置から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。さらに、本実施形態の冷媒放熱器12は、走行用電動モータMGを冷却する熱媒体である冷却水(第2流体)と送風ファン13から送風された外気とを熱交換させる後述するラジエータ(熱媒体放熱器)43と一体的に構成されている。
【0104】
このため、本実施形態の送風ファン13は、冷媒放熱器12およびラジエータ43の双方に向けて外気を送風する室外送風手段を構成している。なお、一体化された冷媒放熱器12およびラジエータ43(以下、熱交換器構造体50という)の詳細構成については後述する。
【0105】
冷媒放熱器12の冷媒出口側には、冷媒放熱器12から流出した冷媒の気液を分離して、余剰液相冷媒を蓄えるレシーバ14が配置されている。さらに、レシーバ14の液相冷媒出口には、温度式膨張弁15の入口側が接続され、温度式膨張弁15の出口側には、冷媒蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。
【0106】
温度式膨張弁15は、冷媒蒸発器16出口側の冷媒通路に配置された図示しない感温部を有し、冷媒蒸発器16出口側冷媒の温度と圧力とに基づいて、冷媒蒸発器16出口側冷媒の過熱度を検知し、冷媒蒸発器16出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定範囲の値となるように機械的機構により弁開度(冷媒流量)を調整する減圧手段である。
【0107】
冷媒蒸発器16は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、温度式膨張弁15によって減圧膨張された低圧冷媒と車室内へ送風される送風空気と熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。冷媒蒸発器16の冷媒出口側には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
【0108】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の冷媒蒸発器16、電気ヒータ36等を収容したものである。
【0109】
ケーシング31は、その内部に車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
【0110】
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0111】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0112】
送風機32の空気流れ下流側には、冷媒蒸発器16および電気ヒータ36が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、冷媒蒸発器16は、電気ヒータ36に対して、送風空気の流れ方向上流側に配置されている。電気ヒータ36は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、制御装置がPTC素子に電力を供給することによって発熱して、冷媒蒸発器16通過後の空気を加熱する加熱手段である。
【0113】
さらに、冷媒蒸発器16の空気流れ下流側であって、かつ、電気ヒータ36の空気流れ上流側には、冷媒蒸発器16通過後の送風空気のうち、電気ヒータ36を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。また、電気ヒータ36の空気流れ下流側には、電気ヒータ36にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気と電気ヒータ36を迂回して加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間35が設けられている。
【0114】
ケーシング31の空気流れ最下流部には、混合空間35にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的には、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
【0115】
従って、エアミックスドア34が電気ヒータ36を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間35にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。なお、エアミックスドア34は、制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0116】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0117】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0118】
次に、冷却水循環回路40について説明する。冷却水循環回路40は、作動時に発熱を伴う車載機器である走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路に、熱媒体としての冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を流通させて走行用電動モータMGを冷却する熱媒体循環回路である。この冷却水循環回路40には、冷却水ポンプ41、ラジエータ43が配置されている。
【0119】
冷却水ポンプ41は、冷却水循環回路40において、冷却水を走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路へ圧送する電動式の水ポンプであり、制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。
【0120】
そして、制御装置が冷却水ポンプ41を作動させると、冷却水は、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→ラジエータ43→冷却水ポンプ41の順に循環する。従って、冷却水ポンプ41は、ラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(第2流体流量調整手段)を構成している。
【0121】
ラジエータ43は、エンジンルーム内に配置されて、走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路から流出した冷却水(第2流体)と送風ファン13から送風された外気(第3流体)とを熱交換させて、冷却水の有する熱を外気に放熱させる放熱用熱交換器である。
【0122】
従って、この冷却水循環回路40では、制御装置が冷却水ポンプ41を作動させると、冷却水が走行用電動モータMGを通過する際に、走行用電動モータMGの廃熱を吸熱して走行用電動モータMGを冷却する。さらに、走行用電動モータMGの廃熱を吸熱して昇温した冷却水は、ラジエータ43へ流入して外気に放熱して冷却される。換言すると、走行用電動モータMGは、冷却水を加熱する外部熱源としての機能を果たしている。
【0123】
次に、図2〜図4を用いて、熱交換器構造体50の詳細構成について説明する。なお、図2は、熱交換器構造体50の外観斜視図であり、図3は、熱交換器構造体50の模式的な一部分解斜視図であり、図4は、熱交換器構造体50における冷媒の流れおよび冷却水の流れを説明するための模式的な斜視図である。
【0124】
まず、熱交換器構造体50は、冷媒放熱器12およびラジエータ43を1つの熱交換器として一体的に構成した複合型の熱交換器である。冷媒放熱器12およびラジエータ43は、それぞれ冷媒または冷却水を流通させる複数本のチューブ12a、43a、この複数本のチューブの両端側に配置されてそれぞれのチューブを流通する冷媒または冷却水の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用タンク12b、43b等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器として構成されている。
【0125】
具体的には、冷媒放熱器12は、第1流体としての冷媒が流通する複数本の冷媒用チューブ(第1チューブ)12a、および、複数本の冷媒用チューブ12aの積層方向に延びて冷媒用チューブ12aを流通する冷媒の集合あるいは分配を行う冷媒用ヘッダタンク部(第1タンク部)12bを有し、冷媒用チューブ12aを流通する冷媒と冷媒用チューブ12aの周囲を流れる第3流体としての空気(送風ファン13から送風された外気)とを熱交換させる第1熱交換器である。
【0126】
一方、ラジエータ43は、第2流体としての冷却水が流通する複数本の熱媒体用チューブ43a、および、熱媒体用チューブ(第2チューブ)43aの積層方向に延びて熱媒体用チューブ43aを流通する冷却水の集合あるいは分配を行う熱媒体用ヘッダタンク部(第2タンク部)43bを有し、熱媒体用チューブ43aを流通する冷却水と熱媒体用チューブ43aの周囲を流れる空気(送風ファン13から送風された外気)とを熱交換させる第2熱交換器である。
【0127】
また、これらの冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aは、その板面に凹凸部が設けられた一対の板状部材同士を最中合わせ状に接合することによって形成された、いわゆるプレートチューブで構成されている。さらに、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aは、伝熱性に優れる金属(本実施形態では、アルミニウム合金)で形成されている。
【0128】
さらに、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aは、図2、図3に示すように、冷媒用ヘッダタンク部12bと熱媒体用ヘッダタンク部43bとの間に配置されている。つまり、冷媒用ヘッダタンク部12bは、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの長手方向一端側に配置されており、熱媒体用ヘッダタンク部43bは、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの長手方向他端側に配置されている。
【0129】
冷媒用チューブ12aの内部には、冷媒用チューブ12aの長手方向(送風ファン13から送風された外気の流れ方向に直交する方向)に延びる冷媒流路が、送風ファン13から送風された外気の流れ方向Xに沿って2列に並べて設けられている。この冷媒流路の断面形状は、外気の流れ方向Xに沿って延びる扁平形状になっている。
【0130】
さらに、図3に示すように、2列に並べて設けられた双方の冷媒流路の冷媒用ヘッダタンク部12b側の端部は、冷媒用チューブ12a側の端部で外部に開口している。本実施形態では、この冷媒流路の開口する側の端部に冷媒用ヘッダタンク部12bを配置することで、冷媒用ヘッダタンク部12bの内部空間と双方の冷媒流路とを連通させている。
【0131】
一方、2列に並べて設けられた冷媒流路の双方の熱媒体用ヘッダタンク部43b側の端部は、冷媒用チューブ12aの外部に開口することなく、2列の冷媒流路同士が冷媒用ターン部12cによって接続されている。これにより、熱媒体用ヘッダタンク部43bの内部空間と冷媒用チューブ12aは連通することなく、2列の冷媒流路同士が互いに連通している。
【0132】
従って、本実施形態の冷媒用チューブ12aでは、図4の実線矢印に示すように、冷媒用ヘッダタンク部12bから2列に並べて設けられた一方の冷媒流路へ流入した冷媒が、冷媒用ターン部12cにて、その流れ方向を転換させて他方の冷媒流路へ流入し、冷媒用ヘッダタンク部12bへ戻る。
【0133】
熱媒体用チューブ43aの基本的構成は、冷媒用チューブ12aと同様である。従って、熱媒体用チューブ43aの内部には、熱媒体用チューブ43aの長手方向に延びる断面扁平形状の熱媒体流路が、送風ファン13から送風された外気の流れ方向Xに沿って2列に並べて設けられている。
【0134】
さらに、熱媒体用チューブ43aの熱媒体流路は、熱媒体用ヘッダタンク部43b側の端部にて熱媒体用ヘッダタンク部43bの内部空間と連通しており、双方の熱媒体流路の冷媒用ヘッダタンク部12b側の端部が、冷媒用ターン部12cと同様の構成の熱媒体用ターン部43cによって接続されている。
【0135】
従って、本実施形態の熱媒体用チューブ43aでは、図4の破線矢印に示すように、熱媒体用ヘッダタンク部43bから2列に並べて設けられた一方の熱媒体流路へ流入した冷媒が、熱媒体用ターン部43cにて、その流れ方向を転換させて他方の熱媒体流路へ流入し、熱媒体用ヘッダタンク部43bへ戻る。
【0136】
また、それぞれの冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aは、その外表面の平面同士が互いに平行に、所定の間隔を開けて交互に積層配置されている。つまり、冷媒用チューブ12aは、熱媒体用チューブ43aの間に配置され、逆に、熱媒体用チューブ43aは、冷媒用チューブ12aの間に配置されている。
【0137】
そして、冷媒用チューブ12aと熱媒体用チューブ43aとの間に形成される空間は、送風ファン13によって送風された外気が流通する外気通路50a(第3流体通路、熱交換対象流体通路)を形成している。換言すると、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの外周には、外気を流通させる外気通路50aが形成されている。
【0138】
さらに、外気通路50aには、冷媒放熱器12における冷媒と外気との熱交換およびラジエータ43における冷却水と外気との熱交換を促進するとともに、冷媒用チューブ12aを流通する冷媒と熱媒体用チューブ43aを流通する冷却水との間の熱移動を可能とするアウターフィン50bが、対向する冷媒用チューブ12aの外表面および熱媒体用チューブ43aの外表面に接合された状態で配置されている。
【0139】
なお、本実施形態の冷媒用ヘッダタンク部12b、熱媒体用ヘッダタンク部43bおよびアウターフィン50bは、冷媒用チューブ12a、熱媒体用チューブ43aと同一の金属材料で形成されており、ろう付け接合されることにより一体化されている。また、図3では、図示の明確化のため、アウターフィン50bの記載を省略している。
【0140】
本実施形態では、この熱交換器構造体50を採用していることにより、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で熱交換を行う熱交換システムが構成されている。より詳細には、2種類の流体(冷媒、冷却水)の有する熱を別の流体(空気)に放熱させる熱交換システムが構成されている。
【0141】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。本実施形態の制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器11、13、41等の作動を制御する。
【0142】
また、制御装置の入力側には、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、冷媒蒸発器16の吹出空気温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ、圧縮機11吐出冷媒温度を検出する吐出冷媒温度センサ、圧縮機11吐出冷媒圧力を検出する吐出圧力検出手段としての吐出圧力センサ、冷媒放熱器12における冷媒温度を検出する冷媒温度検出手段としての冷媒温度センサ、走行用電動モータMGから流出する冷却水温度Twを検出する冷却水温度検出手段としての冷却水温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0143】
なお、走行用電動モータMGから流出する冷却水温度Twは、ラジエータ43へ流入する冷却水の温度でもあるので、走行用電動モータMGの冷却水通路出口側からラジエータ43の冷却水入口側へ至る範囲の冷却水温度を検出するように配置されていてもよい。
【0144】
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、車両用空調装置の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
【0145】
なお、制御装置は、圧縮機11の電動モータ11b等を制御する制御手段が一体に構成され、これらの作動を制御するものであるが、本実施形態では、制御装置のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。例えば、圧縮機11の作動を制御する構成が吐出能力制御手段を構成し、熱媒体流量調整手段である冷却水ポンプ41の作動を制御する構成が熱媒体流量制御手段を構成している。
【0146】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。図示しない車両起動スイッチが投入(ON)された状態で、操作パネルの車両用空調装置の作動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が予め記憶回路に記憶されている空調制御用のプログラムを実行する。このプログラムが実行されると、制御装置が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。
【0147】
そして、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、制御装置の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
【0148】
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置に記憶された制御マップを参照して、冷媒蒸発器16の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。
【0149】
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された冷媒蒸発器16からの吹出空気温度Teとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて冷媒蒸発器16からの吹出空気温度が目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
【0150】
また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、目標吹出温度TAOおよび冷媒蒸発器16からの吹出空気温度に基づいて、予め制御装置に記憶された制御マップを参照して、車室内へ吹き出される空気の温度が車室内温度設定スイッチによって設定された乗員の所望の温度となるように決定される。
【0151】
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。
【0152】
従って、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された吐出冷媒が冷媒放熱器12へ流入して、送風ファン13から送風された外気と熱交換して放熱する。なお、本発明者の試験検討によれば、このヒートポンプサイクル10では、通常運転時には、吐出冷媒の圧力が基準冷媒圧力P1(具体的には、約1.5MPa)以上となり、この際の冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度(壁面温度)は、圧縮機11から吐出された高温冷媒によって、60℃〜65℃程度まで上昇することが判っている。
【0153】
冷媒放熱器12から流出した冷媒は、レシーバ14にて気液分離される。レシーバ14から流出した液相冷媒は、温度式膨張弁15にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。この際、温度式膨張弁15では、冷媒蒸発器16出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定範囲の値となるように弁開度が調整される。
【0154】
温度式膨張弁15にて減圧膨張された低圧冷媒は、冷媒蒸発器16へ流入して、送風機32によって送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される送風空気が冷却される。冷媒蒸発器16から流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0155】
一方、冷媒蒸発器16にて冷却された送風空気(冷風)は、エアミックスドア34の開度に応じた風量の送風空気(冷風)が電気ヒータ36にて加熱され、混合空間35にて電気ヒータ36を迂回して流れた送風空気と混合されて温度調整される。そして、温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
【0156】
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温が外気温より低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現され、内気温が外気温より高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
【0157】
次に、冷却水循環回路40の冷却水ポンプ41の作動について説明する。前述の如く、本実施形態のハイブリッド車両では、制御装置が車両の走行負荷等に応じて、エンジンあるいは走行用電動モータMGを作動させる。走行用電動モータMGは作動時に発熱を伴う車載機器なので、制御装置が走行用電動モータMGを作動させることによって、冷却水の温度が上昇する。
【0158】
さらに、走行用電動モータMGの温度(冷却水温度)は、走行用電動モータMGの内部に封入された潤滑用オイルの粘度増加によるフリクションロスを低減するために設定された最低保護温度Tlw(本実施形態では、60℃)以上となり、走行用電動モータMGのオーバーヒートを抑制するために設定された最高保護温度Thi(本実施形態では、65℃)以下となっていることが望ましい。
【0159】
そこで、本実施形態では、走行用電動モータMGが作動している際には、冷却水温度センサによって検出された冷却水温度Twが最低保護温度Tlw以上、かつ、最高保護温度Thi以下となるように、制御装置が冷却水ポンプ41の作動を制御する。
【0160】
具体的には、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際には、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量としてラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を減少させ、最高保護温度Thiを超えた際には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量として流入流量を増加させる。これにより、走行用電動モータMGが作動している際には、冷却水温度Twは、最低保護温度Tlw〜最高保護温度Thiの範囲に制御される。
【0161】
なお、走行用電動モータMGの作動時であって、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際には、ラジエータ43における冷却水の放熱を抑制するために、冷却水ポンプ41の作動を停止させることが望ましい。ところが、冷却水ポンプ41の作動を完全に停止させてしまうと、冷却水温度センサが走行用電動モータMGの冷却水通路から流出した冷却水温度Twの変化を適切に検出できなくなってしまう。
【0162】
そこで、本実施形態では、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とする際には、冷却水温度センサが冷却水通路から流出した冷却水温度Twの変化を適切に検出できる程度であって、ラジエータ43にて冷却水と外気との熱交換が殆ど行われない程度の流入流量としている。また、大流量とする際には、ラジエータ43にて冷却水と外気、あるいは、冷却水と吐出冷媒との熱交換を充分に行うことのできる流入流量としている。
【0163】
一方、走行用電動モータMGが作動していない際には、走行用電動モータMGは発熱していないので、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回ることがある。例えば、車両起動直後等には、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを大きく下回る。そこで、本実施形態の制御装置では、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際に、冷却水温度Twに応じて冷却水ポンプ41の吐出流量を変化させている。
【0164】
具体的には、吐出冷媒の圧力が前述の基準冷媒圧力P1以上となっており、冷却水温度Twが予め定めた第2基準温度T2(具体的には、50℃)以上、かつ、予め定めた第1基準温度T1(具体的には、60℃)以下となっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とし、さらに、冷却水温度Twが第2基準温度T2よりも低い温度になっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量としている。
【0165】
なお、本実施形態では、第1基準温度T1を最低保護温度Tlwと同じとしているが、この第1基準温度T1は、冷媒放熱器12へ流入する吐出冷媒の温度(例えば、吐出冷媒の取り得る温度範囲の最大値)よりも低い値であって、ラジエータ43へ流入する外気の温度よりも高い値に設定すればよい。また、第2基準温度T2は、第1基準温度T1よりも低い温度に設定すればよい。
【0166】
本実施形態では、以上の如く、制御装置が冷却水ポンプ41の作動を制御することによって、熱交換器構造体50では、以下のような熱交換が行われることになる。熱交換器構造体50における冷媒、冷却水および空気(外気)の熱交換については、図5〜図8を用いて説明する。
【0167】
(A)最低保護温度Tlw<冷却水温度Tw≦最高保護温度Thiの場合
まず、冷却水温度Twが最低保護温度Tlw(60℃)より高く、かつ、最高保護温度Thi(65℃)以下となっている際の熱交換器構造体50における冷媒、冷却水および空気(外気)の熱交換については、図5、図6を用いて説明する。
【0168】
なお、図5(a)は、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aの表面温度(壁面温度)が65℃となっており、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度(壁面温度)が65℃となっており、さらに、外気温が35℃となっている際のアウターフィン50bにおける温度分布のシミュレーション結果を三次元的に示した温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィン50bにおける温度分布を模式的に表した説明図である。
【0169】
また、図6は、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aの表面温度が60℃となり、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度が65℃となっている際の図5と同様の温度分布図(a)と説明図(b)である。さらに、図5、図6では、熱の移動を破線矢印で示している。
【0170】
図5に示すように、熱媒体用チューブ43aの表面温度と冷媒用チューブ12aの表面温度が同じとなっている際には、冷却水の有する熱と圧縮機11から吐出された吐出冷媒の有する熱がアウターフィン50bを介して外気通路50aを流れる外気に放熱される。この際、アウターフィン50bのうち、熱媒体用チューブ43a側の50%が冷却水の有する熱を外気に放熱させるために利用され、残余の冷媒用チューブ12a側の50%が吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用される。
【0171】
また、図6に示すように、熱媒体用チューブ43aの表面温度と冷媒用チューブ12aの表面温度が5℃の差があっても、冷却水の有する熱と吐出冷媒の有する熱がアウターフィン50bを介して外気に放熱される。この際、アウターフィン50bのうち、熱媒体用チューブ43a側の65%程度が冷却水の有する熱を外気に放熱させるために利用され、残余の冷媒用チューブ12a側の35%程度が吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用される。
【0172】
つまり、冷却水温度Twが60℃より高く、かつ、65℃以下となっている際のように、熱媒体用チューブ43aの表面温度と冷媒用チューブ12aの表面温度との温度差が所定温度差(本実施形態では、5℃)以下になっていれば、アウターフィン50bのうち、冷却水の有する熱を外気に放熱させるために利用される範囲と冷媒の有する熱を外気に放熱させる範囲が温度差に応じて調整されて、冷却水の有する熱および吐出冷媒の有する熱が適切に外気に放熱される。
【0173】
すなわち、冷媒放熱器12では、吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させることができ、ラジエータ43では、冷却水の有する熱を外気に放熱させることができる。その結果、複数種の流体間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0174】
(B)第2基準温度T2≦冷却水温度Tw≦第1基準温度T1の場合
次に、吐出冷媒の圧力が前述の基準冷媒圧力P1以上となっており、さらに、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)以上となっており、かつ、第1基準温度T1(60℃)以下となっている際の熱交換器構造体50における冷媒、冷却水および空気(外気)の熱交換について、図7を用いて説明する。
【0175】
なお、図7は、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aの表面温度が55℃となっており、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度が65℃となっている際の図5と同様の温度分布図(a)と説明図(b)である。
【0176】
図7に示すように、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)以上となっており、かつ、第1基準温度T1(60℃)以下となっている際には、冷却水ポンプ41の吐出流量が小流量となり、実質的に冷却水ポンプ41の作動が停止しているので、冷却水の有する極僅かな熱が外気に放熱され、吐出冷媒の有する熱が外気に放熱される。つまり、アウターフィン50bのほぼ全域(99%)が吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用される。
【0177】
従って、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下となって、吐出冷媒の温度と冷却水の温度との温度差が拡大しても、吐出冷媒と冷却水との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒の有する熱を外気へ効率的に放熱させることができる。
【0178】
すなわち、冷媒放熱器12では、吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させることができ、ラジエータ43では、冷却水と外気あるいは冷却水と吐出冷媒との熱交換を抑制できる。その結果、複数種の流体間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0179】
(C)冷却水温度Tw<第2基準温度T2の場合
次に、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)を下回っている際の熱交換器構造体50における冷媒、冷却水および空気(外気)の熱交換について、図8を用いて説明する。なお、図8は、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aの表面温度が45℃となり、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度が65℃となっている際の図5と同様の温度分布図(a)と説明図(b)である。
【0180】
図8に示すように、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)を下回っている際には、冷却水ポンプ41の吐出流量が大流量となるものの、冷却水の有する熱が外気に放熱されることはなく、吐出冷媒の有する熱が外気に放熱されるとともに、ラジエータ43にて、冷却水と吐出冷媒との熱交換がなされる。この際、吐出冷媒側からは、冷却水循環回路40全体の熱量分の吐出冷媒が有する熱量を冷却水側へ移動させることができるため、吐出冷媒と冷却水の温度差が大きく、かつ、冷却水の温度が低い場合、吐出冷媒の有する熱を非常に多く冷却水循環回路40側へ移動させることができる。
【0181】
つまり、アウターフィン50bの全域が吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用されるとともに、アウターフィン50bを介して、吐出冷媒の有する熱が冷却水へも放熱される。従って、冷却水温度Twが第2基準温度T2を下回って、吐出冷媒と冷却水との温度差が大幅に拡大した際には、吐出冷媒と冷却水との熱交換を促進させて、吐出冷媒の有する熱を外気および冷却水の双方に放熱させることができ、結果として吐出冷媒側の熱交換量(放熱量)を大きくすることができる。
【0182】
特に、車両起動時に行うクールダウン運転時等において有効である。すなわち、走行用電動モータMGの発熱量が小さく、冷却水の温度が低い場合、冷却水循環回路40における走行用電動モータMGの冷却性能は必要とされないが、ヒートポンプサイクル10側では、最大冷房能力で運転する必要があるため、吐出冷媒の有する熱をより多く放熱することができることで、効率的な空調運転を実現できるからである。
【0183】
以上の如く、本実施形態では、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。特に、吐出冷媒と冷却水との温度差が拡大した際に、吐出冷媒と冷却水との熱交換を促進させて、吐出冷媒の放熱量を増大できることは、ヒートポンプサイクル10の冷凍能力を増大できる点で極めて有効である。
【0184】
従って、第2基準温度T2については、第1基準温度T1よりも低い温度であって、かつ、吐出冷媒と冷却水との熱交換を促進させた際に、吐出冷媒の放熱量を増大させてヒートポンプサイクル10の冷凍能力を増大できる温度に設定すればよい。
【0185】
さらに、本実施形態では、制御装置が吐出冷媒の圧力が基準冷媒圧力P1以上となっている際に、冷却水の流量を低下させるので、吐出冷媒の温度が確実に60℃〜65℃程度となり、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)を下回っている際に、吐出冷媒の温度と冷却水の温度との温度差を充分に確保することができる。
【0186】
さらに、本実施形態では、冷媒放熱器12およびラジエータ43を熱交換器構造体50として構成しているので、極めて容易に、吐出冷媒と冷却水との間の熱移動を可能とすることができる。
【0187】
しかも、吐出冷媒と冷却水との間の熱移動は、アウターフィン50bを介して行われるので、吐出冷媒の有する熱はアウターフィン50bに伝熱する際に冷却水よりも外気に放熱されやすくなる。従って、冷却水の流入流量を減少させた際に、吐出冷媒の有する熱を効率的に外気に放熱することができる。
【0188】
(第2実施形態)
本実施形態では、図9の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して冷却水循環回路40の構成を変更している。具体的には、この冷却水循環回路40には、冷却水ポンプ41、ラジエータ43の他に、電気式の三方弁42、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流すバイパス通路44が設けられている。なお、図9では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
【0189】
三方弁42は、冷却水ポンプ41の入口側とラジエータ43の出口側とを接続して冷却水をラジエータ43へ流入させる熱媒体回路、および、冷却水ポンプ41の入口側とバイパス通路44の出口側とを接続して冷却水をラジエータ43を迂回させて流す熱媒体回路を切り替える機能を果たす。また、この三方弁42は、制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0190】
つまり、本実施形態の冷却水循環回路40では、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→ラジエータ43→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる熱媒体回路と、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→バイパス通路44→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる熱媒体回路とを切り替えることができる。
【0191】
そして、三方弁42が、冷却水をラジエータ43を迂回させて流す熱媒体回路に切り替えると、冷却水はラジエータ43へ流入しなくなる。すなわち、ラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を減少させることができる。従って、本実施形態の三方弁42は、熱媒体流量調整手段を構成している。
【0192】
さらに、本実施形態では、車両起動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が予め定めた所定吐出流量となるように、冷却水ポンプ41を作動させる。そして、走行用電動モータMGが作動している際には、冷却水温度Twが最低保護温度Tlw以上、かつ、最高保護温度Thi以下となるように、制御装置が三方弁42の作動を制御する。
【0193】
具体的には、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際には、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流す熱媒体回路に切り替え、最高保護温度Thiを超えた際には、ラジエータ43に冷却水を流入させる熱媒体回路に切り替える。なお、本実施形態では、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流す熱媒体回路に切り替えても冷却水ポンプ41の吐出流量を変化させないので、冷却水温度Twの変化を確実に検出できる。
【0194】
さらに、走行用電動モータMGが作動していない際には、吐出冷媒の圧力が前述の基準冷媒圧力P1以上となっており、冷却水温度Twが第1実施形態と同様に決定された第2基準温度T2以上、かつ、第1実施形態と同様に決定された第1基準温度T1以下となっている場合に、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流す熱媒体回路に切り替え、さらに、冷却水温度Twが第2基準温度T2よりも低い温度になっている場合には、ラジエータ43に冷却水を流入させる熱媒体回路に切り替える。
【0195】
その他の構成および作動は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の熱交換システムにおいても、第1実施形態の熱交換システムと実質的に同様に作動させることができ、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0196】
(第3実施形態)
本実施形態では、図10の全体構成図に示すように、第2実施形態のヒートポンプサイクル10の構成を変更している。本実施形態のヒートポンプサイクル10では、車室内へ送風される送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房運転(加熱運転)および送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転(冷却運転)における冷媒回路を切替可能に構成されている。
【0197】
具体的には、本実施形態の圧縮機11の冷媒吐出口には、室内凝縮器37の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器37は、車両用空調装置1の室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する高温高圧冷媒と冷媒蒸発器16通過後の車室内送風空気とを熱交換させる加熱手段(加熱用熱交換器)である。従って、本実施形態では、電気ヒータ36を廃止している。
【0198】
室内凝縮器37の冷媒出口側には、暖房運転時に室内凝縮器37から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房運転用の減圧手段としての暖房用固定絞り17が接続されている。この暖房用固定絞り17としては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用できる。暖房用固定絞り17の出口側には、冷媒放熱器12の冷媒入口側が接続されている。
【0199】
なお、本実施形態では、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路を切り替えることによって、冷房運転時には冷媒の有する熱を外気へ放熱させる放熱用熱交換器として冷媒放熱器12を機能させ、暖房運転時には、冷媒に外気の有する熱を吸熱させる吸熱用熱交換器として冷媒放熱器12を機能させる。そこで、本実施形態の以下の説明では、「冷媒放熱器12」を「室外熱交換器12」と表現する。
【0200】
さらに、室内凝縮器37の冷媒出口側には、室内凝縮器37から流出した冷媒を、暖房用固定絞り17を迂回させて室外熱交換器12側へ導く固定絞り迂回用通路17aが接続されている。この固定絞り迂回用通路17aには、固定絞り迂回用通路17aを開閉する開閉弁17bが配置されている。開閉弁17bは、制御装置から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0201】
また、冷媒が開閉弁17bを通過する際に生じる圧力損失は、固定絞り17を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、室内凝縮器37から流出した冷媒は、開閉弁17bが開いている場合には固定絞り迂回用通路17a側を介して室外熱交換器12へ流入し、開閉弁17bが閉じている場合には暖房用固定絞り17を介して室外熱交換器12へ流入する。
【0202】
これにより、開閉弁17bは、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の開閉弁17bは、冷媒流路切替手段としての機能を果たす。なお、このような冷媒流路切替手段としては、室内凝縮器37出口側と暖房用固定絞り17入口側とを接続する冷媒回路および室内凝縮器37出口側と固定絞り迂回用通路17a入口側とを接続する冷媒回路を切り替える電気式の三方弁等を採用してもよい。
【0203】
室外熱交換器12の出口側には、電気式の三方弁17cが接続されている。この三方弁17cは、制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、上述した開閉弁17bとともに、冷媒流路切替手段を構成している。
【0204】
より具体的には、三方弁17cは、暖房運転時には、室外熱交換器12の出口側と後述するアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時には、室外熱交換器12の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0205】
冷房用固定絞り19は、冷房運転時に室外熱交換器12から流出した冷媒を減圧膨張させる冷房運転用の減圧手段であり、その基本的構成は、暖房用固定絞り17と同様である。さらに、冷房用固定絞り19の出口側には、冷媒蒸発器16の冷媒入口側が接続され、冷媒蒸発器16の冷媒出口側には、アキュムレータ18の入口側が接続されている。
【0206】
アキュムレータ18は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える低圧側冷媒用の気液分離器である。アキュムレータ18の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入側が接続されている。従って、このアキュムレータ18は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されてしまうことを抑制して、圧縮機11の液圧縮を防止する機能を果たす。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0207】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態の車両用空調装置1では、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路を切り替えることによって、車室内を暖房する暖房運転(加熱運転)および車室内を冷房する冷房運転(冷却運転)を行うことができる。
【0208】
まず、暖房運転について説明する。暖房運転は、図示しない車両起動スイッチが投入(ON)された状態で、操作パネルの車両用空調装置の作動スイッチが投入(ON)され、さらに、操作パネルに設けられた選択スイッチによって暖房運転モードが選択されると開始される。
【0209】
暖房運転時には、制御装置が、開閉弁17bを閉じるとともに、三方弁17cを室外熱交換器12の出口側とアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10は、図10の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。
【0210】
この冷媒流路の構成で、制御装置が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。そして、第1実施形態と同様に、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、制御装置の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
【0211】
そして、決定された作動状態が得られるように制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。
【0212】
そして、暖房運転時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が室内凝縮器37へ流入する。室内凝縮器37へ流入した冷媒は、送風機32から送風されて冷媒蒸発器16を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する。これにより、車室内送風空気が加熱される。
【0213】
室内凝縮器37から流出した高圧冷媒は、開閉弁17bが閉じているので、暖房用固定絞り17へ流入して減圧膨張される。暖房用固定絞り17にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換器12へ流入する。室外熱交換器12へ流入した低圧冷媒は、送風ファン13によって送風された外気から吸熱して蒸発する。
【0214】
室外熱交換器12から流出した冷媒は、三方弁17cが、室外熱交換器12の出口側とアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、アキュムレータ18へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ18にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0215】
この際、冷却水循環回路40では、走行用電動モータMGの作動時には、第2実施形態と同様に、冷却水温度Twが最低保護温度Tlw以上、かつ、最高保護温度Thi以下となるように三方弁42の作動が制御される。従って、走行用電動モータMGが作動している際には、室外熱交換器12へ流入した低圧冷媒は、アウターフィン50bを介して冷却水の有する熱を効率的に吸熱することができる。
【0216】
また、走行用電動モータMGが作動していない時であって、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwよりも低く、かつ、冷媒温度センサによって検出された室外熱交換器12における冷媒温度が0℃より高くなっている際に、制御装置が三方弁42の作動を制御して、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流す熱媒体回路に切り替える。
【0217】
従って、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwよりも低く、かつ、冷媒温度センサによって検出された室外熱交換器12における冷媒温度が0℃より高くなっている際には、冷却水が室外熱交換器12を流通する冷媒に放熱することや、冷却水が室外熱交換器12を流通する冷媒から吸熱することはない。
【0218】
一方、走行用電動モータMGが作動していない時であって、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwより低く、かつ、冷媒温度センサによって検出された室外熱交換器12における冷媒温度が0℃以下の場合には、室外熱交換器12の外表面に着霜が生じている可能性があるので、制御装置が三方弁42の作動を制御して、ラジエータ43へ冷却水を流入させる熱媒体回路へ切り替える。
【0219】
これにより、冷却水の有する熱がアウターフィン50bを介して室外熱交換器12へ伝熱され、室外熱交換器12の除霜を行うことができる。
【0220】
次に、冷房運転について説明する。冷房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって冷房運転モードが選択されると開始される。冷房運転時には、制御装置が、開閉弁17bを開くとともに、三方弁17cを室外熱交換器12の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0221】
これにより、ヒートポンプサイクル10は、図10の破線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。つまり、第1、第2実施形態と同等の冷媒流路構成に切り替えられる。さらに、冷房運転時には、制御装置が第2実施形態と同様に、各制御対象機器の作動を制御する。
【0222】
従って、本実施形態の熱交換システムにおいても、第2実施形態と同様に、冷房運転時に、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0223】
(第4実施形態)
第1実施形態では、制御装置が、吐出冷媒の圧力が基準冷媒圧力P1以上となっており、冷却水温度Twが第2基準温度T2以上、かつ、第1基準温度T1以下となっている場合に、冷却水ポンプ41の吐出流量を減少させた例について説明したが、本実施形態では、制御装置による冷却水ポンプ41の制御態様を変更している。なお、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0224】
まず、本実施形態では、走行用電動モータMGが作動している際には、第1実施形態と同様に、冷却水温度センサによって検出された冷却水温度Twが最低保護温度Tlw以上、かつ、最高保護温度Thi以下となるように、制御装置が冷却水ポンプ41の作動を制御する。
【0225】
一方、走行用電動モータMGが作動していない際には、冷却水温度Twが第3基準温度T3以上、かつ、第1実施形態と同様に決定された第1基準温度T1(具体的には、60℃)以下となっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とし、さらに、冷却水温度Twが第1基準温度T1よりも低い温度になるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させている。
【0226】
さらに、冷却水温度Twが第3基準温度T3よりも低い温度になっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量としている。また、第3基準温度T3は、吐出圧力センサおよび冷媒温度センサによって検出された圧縮機11吐出冷媒圧力および冷媒放熱器12における冷媒温度に基づいて求められる冷媒放熱器12における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた所定温度ΔT(本実施形態では、10℃)を減算した値としている。
【0227】
なお、本実施形態では、より正確な冷媒放熱器12における吐出冷媒の飽和温度を求めるために、吐出圧力センサおよび冷媒温度センサの双方のセンサの検出値を用いているが、もちろん、吐出圧力センサおよび冷媒温度センサのうちいずれか一方のみを採用して飽和温度を求めてもよい。
【0228】
従って、本実施形態では、図11の説明図に示すように、冷却水ポンプ41の作動が制御されて、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換が行われる。
【0229】
具体的には、走行用電動モータMGが作動している際、すなわち、図11の斜線ハッチングに示す領域では、冷却水温度Twが最低保護温度Tlw〜最高保護温度Thiの範囲に制御されるので、第1実施形態の「(A)最低保護温度Tlw<冷却水温度Tw≦最高保護温度Thiの場合」の欄で説明したように、冷却水の有する熱および吐出冷媒の有する熱が適切に外気に放熱される。
【0230】
また、冷却水温度Twが第3基準温度T3以上であって、かつ、第1基準温度T1以下になっている際、すなわち、図11の網掛ハッチングに示す領域では、冷却水ポンプ41の吐出流量が低下するので、第1実施形態の「(B)第2基準温度T2≦冷却水温度Tw≦第1基準温度T1の場合」の欄で説明したように、アウターフィン50bが吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用され、吐出冷媒の有する熱を外気へ効率的に放熱させることができる。
【0231】
この際、第3基準温度T3が冷媒放熱器12における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した値として設定されているので、冷媒放熱器12における吐出冷媒の温度に応じて第3基準温度T3を設定できる。つまり、冷媒放熱器12における吐出冷媒の温度が低くなるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を減少させる温度範囲、すなわち第3基準温度T3と第1基準温度T1との温度差を拡大することができる。
【0232】
従って、吐出冷媒の温度が低くなり、吐出冷媒の有する熱によって熱交換対象流体を加熱しにくくなるに伴って、第3基準温度T3と第1基準温度T1との温度差を拡大することができ、より一層、吐出冷媒と冷却水との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒と外気との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0233】
さらに、本実施形態では、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下となって、さらに温度低下するに伴って、冷却水をラジエータ43へ流入させる流入流量を徐々に増加させるので、第1実施形態の「(C)冷却水温度Tw<第2基準温度T2の場合」の欄で説明したように、吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるだけでなく、冷却水にも放熱させて吐出冷媒の放熱量を徐々に増大させることができる。
【0234】
また、冷却水温度Twが第3基準温度T3より下回った際、すなわち、図11の点ハッチングに示す領域では、再び冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とするので、第1実施形態の「(C)冷却水温度Tw<第2基準温度T2の場合」の欄で説明したように、吐出冷媒と冷却水との熱交換を促進させ、吐出冷媒の有する熱を外気および冷却水の双方に放熱させて、吐出冷媒の放熱量を増大させることができる。
【0235】
以上の如く、本実施形態では、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。さらに、第3基準温度T3を冷媒放熱器12における吐出冷媒の温度に応じて第3基準温度T3を設定しているので、ヒートポンプサイクル10の作動状態が変化しても、複数種の流体間で適切な熱交換を行うことができる。
【0236】
なお、本実施形態の冷却水ポンプ41の制御のうち、冷却水温度Twが第1基準温度T1よりも低い温度になるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させる制御を廃止してもよい。
【0237】
つまり、冷却水温度Twが第3基準温度T3以上、かつ、第1実施形態と同様に決定された第1基準温度T1(具体的には、60℃)以下となっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とし、冷却水温度Twが第3基準温度T3よりも低い温度になっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とする制御を行うようにしてもよい。
【0238】
また、本実施形態の冷却水ポンプ41の制御のうち、冷却水温度Twが第3基準温度T3よりも低い温度になっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とする制御を廃止してもよい。
【0239】
つまり、冷却水温度Twが第1基準温度T1(具体的には、60℃)以下となっている場合には、一旦、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量に減少させて、その後、冷却水温度Twが第1基準温度T1よりもさらに低い温度になるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させる制御を行うようにしてもよい。
【0240】
また、本実施形態にて説明した制御態様を第2、第3実施形態の車両用空調装置1に適用してもよい。この場合は、第2、第3実施形態の三方弁42を廃止して、ラジエータ43へ流入させる流入流量とバイパス通路44へ流入させる迂回流量との流量比を調整する流量調整弁を採用すればよい。
【0241】
そして、制御装置が流量調整弁の作動を制御して、本実施形態にて説明した制御態様と同様にラジエータ43へ流入させる冷却水の流入流量を変化させることで、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0242】
(第5実施形態)
本実施形態では、図12の熱交換器構造体50の模式的な一部分解斜視図に示すように、熱交換器構造体50の構成を変更している。
【0243】
本実施形態の冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aおよびラジエータ43の熱媒体用チューブ43aは、長手方向垂直断面の形状が偏平形状の偏平チューブが採用されている。そして、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aが、それぞれ送風ファン13によって送風された外気の流れ方向Xに沿って2列配置されている。
【0244】
図13は、熱交換器構造体50のヘッダタンク部長手方向の模式的な断面図である。なお、図13では、図示の明確化のため、冷媒用チューブ12aを点ハッチングとし、熱媒体用チューブ43aを網掛ハンチングで示している。
【0245】
図13に示すように、各チューブ12a、43aにおける外気の流れ方向Xの上流側(風上側)に位置する上流側チューブ群50cは、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの外表面の平坦面同士が互いに平行に、かつ、対向するように所定の間隔をあけて交互に積層配置されている。同様に、各チューブ12a、43aにおける外気の流れ方向Xの下流側(風下側)に位置する下流側チューブ群50dについても、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aが所定の間隔をあけて交互に積層配置されている。
【0246】
冷媒用チューブ12aと熱媒体用チューブ43aとの間に形成される空間は、送風ファン13によって送風された外気が流通する外気通路50a(第3流体通路)を形成している。この外気通路50aには、アウターフィン50bが配置されている。
【0247】
次に、冷媒用ヘッダタンク部12bおよび熱媒体用ヘッダタンク部43bについて説明する。これらタンク部12b、43bの基本構成は同様である。冷媒用ヘッダタンク部12bは、2列に配置された冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの双方が固定される冷媒側固定プレート部材121、冷媒側固定プレート部材121に固定される冷媒側中間プレート部材122、および冷媒側タンク形成部材123を有している。
【0248】
冷媒側中間プレート部材122には、冷媒側固定プレート部材121に固定されることで、冷媒側固定プレート部材121との間に熱媒体用チューブ43aに連通する複数の空間を形成する複数の凹み部122bが形成されている。この空間は、外気の流れ方向Xに2列並んだ熱媒体用チューブ43a同士を互いに連通させる連通空間としての機能を果たす。
【0249】
また、冷媒側中間プレート部材122のうち、冷媒用チューブ12aに対応する部位には、その表裏を貫通する連通穴122aが設けられ、この連通穴122aには冷媒用チューブ12aが貫通している。これにより、冷媒用チューブ12aが冷媒側タンク形成部材123に形成される空間に連通している。
【0250】
冷媒側タンク形成部材123は、冷媒側固定プレート部材121および冷媒側中間プレート部材122に固定されることによって、その内部に冷媒の集合を行う集合空間123a、および冷媒の分配を行う分配空間123bを形成するものである。具体的には、冷媒側タンク形成部材123は、平板金属にプレス加工を施すことで、その長手方向から見たとき、二山状(W字状)に形成されている。
【0251】
そして、冷媒側タンク形成部材123の二山状の中央部が冷媒側中間プレート部材122に接合されることで、集合空間123aおよび分配空間123bが区画されている。この中央部は、冷媒側中間プレート部材122に形成された凹み部122bに適合する形状に形成され、集合空間123aおよび分配空間123bは、冷媒側固定プレート部材121および冷媒側中間プレート部材122の接合部位から内部の冷媒が漏れないように区画されている。
【0252】
さらに、冷媒用チューブ12aは、冷媒側中間プレート部材122の連通穴122aを貫通して、冷媒側タンク形成部材123の内部に形成される集合空間123aまたは分配空間123bへ突出していることにより、外気の流れ方向Xの風上側に配置された冷媒用チューブ12aが集合空間123aに連通し、外気の流れ方向Xの風下側に配置された冷媒用チューブ12aが分配空間123bに連通している。
【0253】
一方、熱媒体用ヘッダタンク部43bについても、冷媒用ヘッダタンク部12bと同様の構成の熱媒体側固定プレート部材431、熱媒体側固定プレート部材431に固定される熱媒体側中間プレート部材432、並びに、熱媒体側タンク形成部材433を有している。
【0254】
さらに、熱媒体側固定プレート部材431と熱媒体側中間プレート部材432との間には、熱媒体側中間プレート部材432に設けられた凹み部432bによって、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷媒用チューブ12a同士を互いに連通させる冷媒用連通空間が形成されている。
【0255】
また、熱媒体側中間プレート部材432のうち熱媒体用チューブ43aに対応する部位にはその表裏を貫通する連通穴432aが設けられ、この連通穴432aには熱媒体用チューブ43aが貫通している。
【0256】
さらに、熱媒体側タンク形成部材433は、熱媒体側固定プレート部材431および熱媒体側中間プレート部材432に固定されることによって、内部に熱媒体側タンク形成部材433の中央部によって区画された冷却水の集合空間433aおよび冷却水の分配空間433bを形成している。なお、本実施形態では、外気の流れ方向Xの風上側に分配空間433bが配置され、外気の流れ方向Xの風下側に集合空間433aが配置されている。
【0257】
従って、本実施形態の熱交換器構造体50では、冷媒側ヘッダタンク部12bの分配空間123bへ流入した冷媒が、2列に並んだ冷媒用チューブ12aのうち、外気の流れ方向Xの風下側に配列された各冷媒用チューブ12aへ流入する。
【0258】
そして、風下側に配列された各冷媒用チューブ12aから流出した冷媒が、熱媒体用ヘッダタンク部43bの熱媒体側固定プレート部材431と熱媒体側中間プレート部材432との間に形成された冷媒用連通空間を介して、外気の流れ方向Xの風上側に配列された各冷媒用チューブ12aへ流入する。
【0259】
さらに、風上側に配列された各冷媒用チューブ12aから流出した冷媒は、冷媒側ヘッダタンク部12bの集合空間123aにて集合して、外部に流出していく。つまり、本実施形態の熱交換器構造体50では、冷媒が、風下側の冷媒用チューブ12a→熱媒体用ヘッダタンク部43bの冷媒用連通空間→風上側の冷媒用チューブ12aの順にUターンしながら流れることになる。
【0260】
同様に、冷却水については、風上側の熱媒体用チューブ43a→冷媒側ヘッダタンク部12bの冷却媒体用連通空間→風下側の熱媒体用チューブ43aの順にUターンしながら流れることになる。従って、隣り合う冷媒用チューブ12aを流通する冷媒と熱媒体用チューブ43aを流通する冷却水とは、その流れ方向が互いに対向する方向となる。
【0261】
なお、冷媒側中間プレート部材122を挟み込んだ状態で冷媒側固定プレート部材121と冷媒側タンク形成部材133がかしめによって固定され、また、熱媒体側中間プレート部材432を挟み込んだ状態で熱媒体側固定プレート部材431と熱媒体側タンク形成部材433が、かしめによって固定されている。
【0262】
さらに、かしめ固定された状態の熱交換器構造体50全体を加熱炉内へ投入して加熱し、各構成部品表面に予めクラッドされたろう材を融解させ、さらに、再びろう材が凝固するまで冷却することで、各構成部品が一体にろう付けされる。これにより、冷媒放熱器12とラジエータ43とが一体化されている。
【0263】
その他のヒートポンプサイクル10の構成および作動については、上述の各実施形態と同様である。従って、本実施形態の熱交換器構造体50を用いた熱交換システムにおいても、上述の各実施形態の熱交換システムと同様に、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
(第6実施形態)
本実施形態では、熱交換器構造体50に流入する吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTの拡大によって、熱交換器構造体50にて各流体(冷媒、冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことが困難となることに着眼し、上述の各実施形態に対して制御装置による冷却水ポンプ41の制御態様を変更している。なお、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0264】
本実施形態では、吐出冷媒の温度TT1、冷却水の温度TT2との温度差ΔTT、および吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTに応じて、冷却水ポンプ41の吐出流量を変化させている。
【0265】
図14は、本実施形態に係る制御装置が実行する冷却水ポンプ41の吐出流量制御の流れを示すフローチャートである。図14に示す制御ルーチンは、操作パネルの車両用空調装置の作動スイッチが投入されると実行される。
【0266】
図14に示すように、制御装置では、吐出冷媒温度センサの検出信号や冷却水温度センサの検出信号といった各種信号を読み込む(S100)。そして、ステップS100にて読み込んだ吐出冷媒温度センサの検出信号や冷却水温度センサの検出信号から吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTT(絶対値)を算出する(S110)。
【0267】
続いて、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上であるか否かを判定する(S120)。ここで、基準温度差ΔTTthとしては、例えば、第1実施形態で説明した第1基準温度T1と第2基準温度T2との温度差(10℃)程度に設定されている。
【0268】
ステップS120の判定処理の結果、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTthより小さいと判定された場合(S120:NO)には、冷却水ポンプ41の吐出流量が中間流量G2となるように制御して(S130)、吐出冷媒の有する熱および冷却水の有する熱の双方を外気に放熱する。
【0269】
一方、ステップS120の判定処理の結果、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上であると判定された場合(S120:YES)には、さらに、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2以上であるか否かを判定する(S140)。
【0270】
ステップS130の判定処理の結果、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2以上であると判定された場合(S140:YES)には、冷却水ポンプ41の吐出流量が小流量G1となるように制御する(S150)。これにより、ラジエータ43における冷却水と外気との熱交換が抑制されるので、冷却水の温度の上昇を図ることができる。なお、小流量G1は、中間流量G2よりも少ない流量に設定されている(G1<G2)。
【0271】
一方、ステップS130の判定処理の結果、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2よりも低いと判定された場合(S140:NO)には、冷却水ポンプ41の吐出流量が大流量G3となるように制御する(S160)。これにより、ラジエータ43に流入する冷却水が有する熱の外気への放熱を促進して、冷却水の温度の低下を図ることができる。なお、大流量G3は、中間流量G2よりも多い流量に設定されている(G2<G3)。
【0272】
以上説明した本実施形態では、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2以上となり、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となる際に、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量G1としているので、ラジエータ43における冷却水と外気との熱交換を抑制して、冷却水の温度の上昇を図ることができる。これにより、ラジエータ43へ流入する冷却水の温度TT2と、冷媒放熱器12に流入する吐出冷媒の温度TT1との温度差ΔTTを縮小させることが可能となる。この結果、冷媒放熱器12およびラジエータ43にて、吐出冷媒の有する熱および冷却水の有する熱の双方を外気に放熱させるための適切な熱交換の実現を図ることができる。
【0273】
また、本実施形態では、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2より低くなり、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となる際に、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量G3としているので、ラジエータ43にて冷却水が有する熱の外気への放熱を促進して、冷却水の温度の低下を図ることができる。これにより、ラジエータ43へ流入する冷却水の温度TT2と、冷媒放熱器12に流入する吐出冷媒の温度TT1との温度差ΔTTを縮小させることが可能となる。この結果、冷媒放熱器12およびラジエータ43にて、吐出冷媒の有する熱および冷却水の有する熱の双方を外気に放熱させるための適切な熱交換の実現を図ることができる。
【0274】
以上の如く、本実施形態では、上述の各実施形態の熱交換システムと同様に、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0275】
なお、本実施形態では、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となる際に、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度関係に応じて冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量G1、および大流量G3に変更しているが、これに限定されない。
【0276】
例えば、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となり、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2以上となる際にだけ、冷却水ポンプ41の吐出流量を変更するようにしてもよい。
【0277】
逆に、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となり、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2より低くなる際にだけ、冷却水ポンプ41の吐出流量を変更するようにしてもよい。
【0278】
(第7実施形態)
本実施形態の図15の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して、熱交換システムの構成を変更している。本実施形態の熱交換システムは、第1実施形態におけるヒートポンプサイクル10および冷却水循環回路40に加えて、ヒートポンプサイクル10の冷媒放熱器12を流通する冷媒を冷却する冷媒用冷却水が循環する第1冷却水循環回路60を備えている。なお、説明の便宜のため、本実施形態では、例えば、走行用電動モータMGを冷却する冷却水をモータ用冷却水とし、当該モータ用冷却水が循環する回路を第2冷却水循環回路40、第2冷却水循環回路40に設けられた冷却水ポンプを第2冷却水ポンプ41、ラジエータ43の熱媒体用チューブを第2熱媒体用チューブ43a等とする。
【0279】
まず、本実施形態のヒートポンプサイクル10について説明すると、ヒートポンプサイクル10の冷媒放熱器12は、第2冷却水循環回路40のラジエータ43と別体で構成されている。具体的には、本実施形態の冷媒放熱器12は、圧縮機11から吐出された吐出冷媒と第1冷却水循環回路60を循環する冷媒用冷却水とを熱交換させて、吐出冷媒の有する熱を冷媒用冷却水に放熱させる水冷式の放熱用熱交換器で構成されている。従って、本実施形態では、送風ファン13を廃止している。
【0280】
第1冷却水循環回路60は、冷媒放熱器12の内部に形成された冷却水流路に、第1熱媒体としての冷媒用冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を流通させて、冷媒放熱器12を流通する冷媒を冷却する第1熱媒体循環回路である。
【0281】
第1冷却水循環回路60には、冷媒放熱器12の冷却水流路に冷媒用冷却水を圧送する第1冷却水ポンプ61が配置されている。この第1冷却水ポンプ61は、電動式の水ポンプであり、制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。
【0282】
また、第1冷却水循環回路60には、冷媒放熱器12の内部に形成された冷却水流路の出口側に第1冷却水用放熱器63が配置されている。この第1冷却水用放熱器63は、冷媒放熱器12から流出した冷媒用冷却水(第1流体)と、後述する送風ファン64から送風された外気(第3流体)と熱交換させて冷媒用冷却水の有する熱を外気に放熱させる放熱用熱交換器である。
【0283】
ここで、送風ファン64は、制御装置から出力される制御電圧によって稼動率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。また、第1冷却水用放熱器63の入口部には、第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度を検出する冷媒用冷却水温度センサ65が配置されている。
【0284】
このように構成される第1冷却水循環回路60は、制御装置が第1冷却水ポンプ61を作動させると、冷媒用冷却水が、図15の白抜き矢印で示すように、第1冷却水ポンプ61→第1冷却水用放熱器63→冷媒放熱器12→第1冷却水ポンプ61の順に循環する。
【0285】
本実施形態の第1冷却水用放熱器63は、第2冷却水循環回路40のラジエータ43と一体的に構成されており、一体化された第1冷却水用放熱器63およびラジエータ43で熱交換器構造体50を構成している。なお、本実施形態の送風ファン64は、第1冷却水用放熱器63およびラジエータ43の双方に向けて外気を送風する室外送風手段を構成している。
【0286】
本実施形態の熱交換器構造体50は、前述の各実施形態における熱交換器構造体50の冷媒放熱器12の構成部品を第1冷却水用放熱器63の構成部品に変更することで実現可能である。
【0287】
具体的には、前述の各実施形態における冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12a、および冷媒用ヘッダタンク部12bを、第1冷却水用放熱器63における冷媒用冷却水が流通する第1熱媒体用チューブ63a、および第1熱媒体用ヘッダタンク部(図示略)に変更すればよい。例えば、第1冷却水用放熱器63の第1熱媒体用チューブ63aとラジエータ43の第2熱媒体用チューブ43aを、所定の間隔をあけて交互に積層配置し、各チューブ63a、43aとの間に形成される空間によって、送風ファン64によって送風された外気が流通する外気通路50aを形成すればよい。さらに、外気通路50aに、各チューブ63a、43aの外表面同士を接合するように、アウターフィン50bを配置すればよい。
【0288】
ここで、本実施形態では、冷媒用冷却水が第1熱媒体(第1流体)、第1冷却水用放熱器63が第1熱媒体放熱器を構成し、モータ用冷却水が第2熱媒体(第2流体)、ラジエータ43が第2熱媒体放熱器を構成している。また、本実施形態の第2冷却水ポンプ41が第2熱媒体流量調整手段を構成している。
【0289】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。操作パネルの作動スイッチが投入された状態で、車両用空調装置の作動スイッチが投入されると、制御装置が各制御対象機器の作動を制御する。
【0290】
具体的には、制御装置は、第1実施形態と同様に、ヒートポンプサイクル10の各制御対象機器の作動を制御する。これにより、ヒートポンプサイクル10では、冷媒が図15の実線矢印で示すように流れる。
【0291】
また、第1冷却水循環回路60については、冷媒放熱器12に冷媒用冷却水を圧送するために、制御装置が予め定めた所定吐出流量となるように第1冷却水ポンプ61の作動を制御する。これにより、冷媒用冷却水が、図15の白抜き矢印で示すように流れる。
【0292】
従って、第1冷却水循環回路60では、冷媒用冷却水が冷媒放熱器12を通過する際に、冷媒放熱器12を流通する冷媒から吸熱して、冷媒放熱器12を流通する冷媒を冷却する。さらに、冷媒放熱器12を流通する冷媒から吸熱して昇温した冷媒用冷却水は、第1冷却水用放熱器63へ流入して外気に放熱して冷却される。
【0293】
次に、第2冷却水循環回路40については、制御装置が、ラジエータ43に流入するモータ用冷却水の温度に応じて、所定の吐出流量となるように第2冷却水ポンプ41の作動を制御する。
【0294】
具体的には、本実施形態では、走行用電動モータMGが作動している際には、第1実施形態と同様に、モータ用冷却水の温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際には、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量としてラジエータ43へ流入するモータ用冷却水の流入流量を減少させ、最高保護温度Thiを超えた際には、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量としてモータ用冷却水の流入流量を増加させる。これにより、走行用電動モータMGが作動している際には、モータ用冷却水の温度を、最低保護温度Tlw〜最高保護温度Thiの範囲に制御することができる。
【0295】
また、走行用電動モータMGが作動していない際には、冷媒用冷却水温度センサ65の検出値(第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度)が予め定めた第1熱媒体基準温度Tα(例えば、60℃〜65℃)以上となっており、モータ用冷却水の温度が予め定めた第5基準温度T5(具体的には、50℃)以上、かつ、予め定めた第4基準温度T4(60℃)以下となっている場合には、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量に減少させる。
【0296】
これにより、モータ用冷却水の温度が第4基準温度T4以下となって、冷媒用冷却水の温度とモータ用冷却水の温度との温度差が拡大しても、冷媒用冷却水とモータ用冷却水との不必要な熱交換を抑制して、冷媒用冷却水の有する熱を外気へ効率的に放熱させることができる。
【0297】
さらに、モータ用冷却水の温度が第5基準温度T5よりも低い温度になっている場合には、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とする。これにより、モータ用冷却水の温度が第5基準温度T5を下回って、冷媒用冷却水の温度とモータ用冷却水の温度との温度差が大幅に拡大した際には、冷媒用冷却水とモータ用冷却水との熱交換を促進させて、冷媒用冷却水の有する熱を外気およびモータ用冷却水の双方に放熱させることができる。
【0298】
ここで、本実施形態では、第4基準温度T4を第1実施形態の第1基準温度T1と同様の値とし、第5基準温度T5を第1実施形態の第2基準温度T2と同様の値としている。なお、第4基準温度T4としては、第1冷却水用放熱器63へ流入する冷媒用冷却水の温度(例えば、冷媒用冷却水の取り得る温度範囲の最大値)よりも低い値であって、ラジエータ43に流入する外気の温度よりも低い値に設定すればよい。また、第5基準温度T5は、第4基準温度T4よりも低い温度に設定すればよい。
【0299】
以上の如く、本実施形態では、第1冷却水循環回路60を介して、圧縮機11の吐出冷媒の有する熱を放熱する構成を採用しているが、第1実施形態の熱交換システムと実質的に同様の作用効果を奏することができる。つまり、本実施形態では、モータ用冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒用冷却水、モータ用冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0300】
なお、本実施形態に係る熱交換システムは、以下のように変形可能である。
【0301】
本実施形態では、第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度を、冷媒用冷却水温度センサ65で検出するようにしているが、これに限定されない。第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度は、冷媒放熱器12を流通する冷媒から吸熱して昇温することから、圧縮機11の吐出冷媒の圧力や温度から推定するようにしてもよい。
【0302】
また、本実施形態では、制御装置が、冷媒用冷却水温度センサ65の検出値が第1熱媒体基準温度Tα以上となっており、モータ用冷却水の温度が第5基準温度以上、かつ、第4基準温度T4以下となっている場合に、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量に減少させる例について説明したが、これに限定されない。
【0303】
例えば、第4実施形態の如く、モータ用冷却水の温度が第6基準温度T6以上、かつ、第4基準温度T4以下となっている場合に、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とし、さらに、モータ用冷却水の温度が第4基準温度T4よりも低い温度になるに伴って、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させるようにしてもよい。なお、第6基準温度T6は、第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度から予め定めた所定温度ΔT(本実施形態では、10℃)を減算した値としている。
【0304】
これによれば、モータ用冷却水の温度が第6基準温度T6以上、かつ、第4基準温度T4以下となっている場合に、第2冷却水ポンプ41の吐出流量が低下するので、アウターフィン50bが冷媒用冷却水の有する熱を外気に放熱させるために利用され、冷媒用冷却水の有する熱を外気に効率的に放熱させることができる。
【0305】
この際、第6基準温度T6が第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度から予め定めた温度ΔTを減算した値として設定されているので、第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度に応じて、第6基準温度T6を設定できる。
【0306】
これにより、冷媒用冷却水の温度が低くなり、冷媒用冷却水の有する熱によって外気を加熱しにくくなるに伴って、第6基準温度T6と第4基準温度T4との温度差を各際することでき、より一層、冷媒用冷却水とモータ用冷却水との不必要な熱交換を抑制して、冷媒用冷却水と外気との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0307】
さらに、モータ用冷却水の温度が第4基準温度T4よりも低い温度になるに伴って、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させるので、冷媒用冷却水の有する熱を外気に放熱させるだけでなく、モータ用冷却水にも放熱させて冷媒用冷却水の放熱量を徐々に増大させることができる。
【0308】
従って、モータ用冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒用冷却水、モータ用冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0309】
なお、本実施形態における第2冷却水ポンプ41の制御のうち、モータ用冷却水の温度が第4基準温度T4よりも低い温度になるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させる制御を実行することが望ましいが、当該制御を廃止してもよい。
【0310】
また、第2冷却水ポンプ41の制御のうち、モータ冷却水の温度が第6基準温度T6よりも低い温度になっている場合に、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とする制御を実行することが望ましいが、当該制御を廃止してもよい。
【0311】
また、本実施形態では、第6実施形態の如く、熱交換器構造体50に流入する冷媒用冷却水の温度、モータ用冷却水の温度、および各冷却水の温度差に応じて、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を変更するようにしてもよい。これによっても、モータ用冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒用冷却水、モータ用冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0312】
また、本実施形態の第2冷却水循環回路40を第2実施形態で説明した冷却水循環回路40に変更してもよい。具体的には、図16の全体構成図のように、第2冷却水循環回路40に、電気式の三方弁42、およびラジエータ43を迂回させて第2冷却水を流すバイパス通路44を設ければよい。この場合、三方弁42が第2熱媒体流量調整手段を構成する。
【0313】
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10を第3実施形態で説明した冷媒回路の切替可能なヒートポンプサイクル10に変更してもよい。
【0314】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0315】
(1)上述の実施形態では、第1流体としてヒートポンプサイクル10の冷媒が採用され、第2流体として走行用電動モータMGの冷却水が採用され、第3流体として外気(空気)が採用された熱交換システムについて説明したが、第1〜第3流体はこれに限定されない。本発明は、第1流体の温度が第3流体よりも温度が高く、第2流体には比較的大きな温度変化を伴う複数種の流体の熱交換に適用して有効である。
【0316】
例えば、車両のエンジンを冷却する冷却水を第1流体としてもよい。また、車両がNOx低減のために排気ガス再循環システム(EGRシステム)を採用している場合、循環させる排ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラから流出した高温冷却水を第1流体としてもよい。また、車両が過給器(ターボ)を有する場合、過給器にて圧縮された空気を冷却するインタークーラから流出した高温冷却水を第1流体としてもよい。
【0317】
また、エンジンの冷却水、インバータの冷却水、高圧バッテリの冷却水、EGRクーラに流入させる低温冷却水、インタークーラに流入させる低温冷却水等を第2流体としてもよい。この場合、第1、第4基準温度T1、T4を、熱交換器構造体50に流入する流体の温度以下に設定される。
【0318】
なお、例えば、第2冷却水として、EGRクーラに流入させる低温冷却水を採用する場合、第1、第4基準温度T1、T4を冷却水の取り得る温度範囲の最高温度(約300℃)以下に設定すればよい。また、第2冷却水として、インタークーラに流入させる低温冷却水を採用する場合、第1、第4基準温度T1、T4を冷却水の取り得る温度範囲の最高温度(約150℃)以下に設定すればよい。
【0319】
(2)上述の実施形態では、第2流体である冷却水を加熱する外部熱源として、走行用電動モータMGを採用した例を説明したが、外部熱源はこれに限定されない。例えば、ヒートポンプサイクル10を車両用空調装置1に適用する場合は、エンジン、走行用電動モータMGに電力を供給するインバータ等の電気機器を外部熱源として採用できる。
【0320】
また、エンジンを外部熱源とする際には、エンジン冷却水のみならず、エンジン排気の有する熱を外部熱源として採用してもよい。さらに、ヒートポンプサイクル10を据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用する場合は、ヒートポンプサイクル10の圧縮機の駆動減としてのエンジン、電動モータおよびその他の電気機器を外部熱源として採用できる。
【0321】
(3)上述の第1、第2実施形態では、室内空調ユニット30において、送風空気を加熱する加熱手段として電気ヒータ36を採用した例を説明したが、加熱手段は電気ヒータ36に限定されない。第3実施形態の如く、ヒートポンプサイクルの高圧冷媒を熱源として送風空気を加熱する加熱手段を採用してもよいし、他の熱源流体を循環させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器(ヒータコア)等を採用してもよい。
【0322】
(4)上述の第1実施形態では、走行用電動モータMGが作動していないときであって、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際に、冷却水ポンプ41の吐出流量を減少させて、ラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を減少させた例を説明しているが、もちろん、走行用電動モータMGの作動、非作動にかかわらず、冷却水温度Twに応じて流入流量を減少させてもよい。このことは、他の実施形態においても同様である。
【0323】
(5)上述の実施形態では、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12a、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aおよびアウターフィン50bをアルミニウム(金属)で形成し、ろう付け接合した例を説明したが、もちろん、アウターフィン50bを、他の伝熱性に優れる材質(例えば、カーボンナノチューブ等)で形成して、接着等の接合手段によって接合してもよい。
【0324】
(6)上述の第1、第5実施形態では、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置した熱交換器構造体50について説明したが、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの積層配置はこれに限定されない。
【0325】
図17は、熱交換器構造体50のヘッダタンク部長手方向の模式的な断面図である。図17では、図示の明確化のため、冷媒用チューブ12aを点ハッチングとし、熱媒体用チューブ43aを網掛ハンチングで示している。
【0326】
例えば、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの積層配置を、複数本の冷媒用チューブ12aを連続して積層配置した後に、複数本の熱媒体用チューブ43aを連続して積層配置してもよい。具体的には、図17(a)に示すように、2本の冷媒チューブ12aおよび2本の熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置するようにしてもよい。なお、連続して積層配置する冷媒チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの数は、同数であってもよいし、異なる数であってもよい。
【0327】
また、図17(b)に示すように、上流側チューブ群50cにて冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置し、下流側チューブ群50dにて、外気の流れ方向Xに冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aが重ならないように、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置するようにしてもよい。このように、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを千鳥状に積層配置してもよい。
【0328】
また、図17(c)に示すように、上流側チューブ群50cに熱媒体用チューブ43aだけを積層配置し、下流側チューブ群50dにて冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置するようにしてもよい。
【0329】
このような各チューブ12a、43aの積層態様は、第7実施形態で説明した第1熱媒体用チューブ63aおよび第2熱媒体用チューブ43aを有する熱交換器構造体に適用することができる。
【0330】
(7)上述の実施形態において、制御装置にて、冷却水ポンプ41(第2冷却水ポンプを含む)の吐出流量を制御することで、ヒートポンプサイクル10の冷凍能力を向上させるようにしてもよい。
【0331】
例えば、ヒートポンプサイクル10を起動してから所定時間が経過するまでの間、冷却水ポンプ41の吐出流量を増大させるようにしてもよい。これによれば、熱交換器構造体50における吐出冷媒の放熱量を増加させることができるので、ヒートポンプサイクル10の起動時におけるヒートポンプサイクル10の冷凍能力を増大できる。
【0332】
(8)上述の各実施形態では、制御装置にて、熱交換器構造体50に流入する各流体の温度等に応じて、冷却水ポンプ41(第2冷却水ポンプを含む)の吐出流量を制御する例を説明したが、これに加えて、熱交換器構造体50における冷媒または第1冷却水の放熱量を調整するようにしてもよい。
【0333】
例えば、第1〜第6実施形態において、ラジエータ43に流入する冷却水の温度が、予め第1基準温度T1より高い値に定めた保護基準温度Tβよりも高い温度となった際に、熱交換器構造体50における冷媒の放熱量を低下させるようにしてもよい。
【0334】
このように、吐出冷媒の温度を低下させることで、冷却水の有する熱を外気に放熱させることができる。これにより、吐出冷媒の温度と冷却水の温度との温度差の拡大を抑制することができ、吐出冷媒の有する熱および冷却水の有する熱の双方を外気に放熱させることができる。なお、保護基準温度Tβは、例えば、最高保護温度Thiに設定すればよい。
【0335】
ここで、熱交換器構造体50における冷媒の放熱量を低下させる具体的な方法について説明すると、例えば、圧縮機11の回転数を低くして、圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させることで、熱交換器構造体50における冷媒の放熱量の低下を実現することができる。この場合、圧縮機11の回転数を調整する電動モータ11bが放熱量調整手段を構成する。
【0336】
また、室内空調ユニット30の内外気切替装置33にて、空調対象空間である車室内に循環導入される内気と空調対象空間の外部の外気との導入割合を、内気が増加するように変更するようにしてもよい。この場合、外気よりも温度低い内気の導入割合が増加することで、ヒートポンプサイクル10の蒸発器16にて必要な冷媒の吸熱量を少なくすることができ、ヒートポンプサイクル10の熱負荷を低下させることができる。この結果、熱交換器構造体50における冷媒の放熱量の低下を実現することができる。この場合、内外気切替装置33が放熱量調整手段を構成する。
【0337】
また、第7実施形態の熱交換システムにおいても、圧縮機11の回転数の低下や、内気の導入割合の増加による吐出冷媒の温度低下に伴って、冷媒用冷却水の温度も低下するので、熱交換器構造体50における冷媒用冷却水の放熱量を低下させることが可能である。
【0338】
このように、冷媒用冷却水の温度を低下させることで、モータ用冷却水の有する熱を外気に放熱させることができる。これにより、冷媒用冷却水の温度とモータ用冷却水の温度との温度差の拡大を抑制することができ、冷媒用冷却水の有する熱およびモータ用冷却水の有する熱の双方を外気に放熱させることができる。
【0339】
(9)上述の各実施形態では、2つの放熱用熱交換器(冷媒放熱器12とラジエータ43、第1冷却水用放熱器63とラジエータ43)を一体化して熱交換器構造体50を構成する例について説明したが、これに限定されない。熱交換器構造体50を3つの放熱用熱交換器を一体化して構成してもよい。
【0340】
(10)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0341】
12 冷媒放熱器、室外熱交換器(第1熱交換器)
12a 冷媒用チューブ(第1チューブ)
41 冷却水ポンプ
42 三方弁
43 ラジエータ(第2熱交換器)
43a 熱媒体用チューブ(第2チューブ)
44 バイパス通路
50 熱交換器構造体
50a 外気通路(第3流体通路、熱交換対象流体通路)
50b アウターフィン
MG 走行用電動モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の流体を熱交換させる熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2に、圧縮機から吐出された吐出冷媒(第1流体)と車室内へ送風される送風空気(第3流体)とを熱交換させて送風空気を加熱するヒートポンプサイクルを備える車両用空調装置が開示されている。さらに、特許文献1、2の車両用空調装置には、吐出冷媒とは異なる熱媒体(第2流体)と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する構成についても記載されている。
【0003】
つまり、特許文献1、2の車両用空調装置には、複数種の流体(吐出冷媒、熱媒体、送風空気)を熱交換させる熱交換システムが適用されている。より詳細には、2種類の流体(第1、第2流体)の有する熱を別の流体(第3流体)に放熱させる熱交換システムが適用されていると表現することができる。
【0004】
具体的には、特許文献1では、吐出冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する暖房用熱交換器、および、燃焼式ヒータにて加熱された熱媒体であるブラインと送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱するヒータコアを、1つの熱交換器として一体的に構成した複合型の熱交換器を採用することによって、吐出冷媒およびブラインの有する熱を送風空気に放熱させる熱交換システムを実現している。
【0005】
さらに、特許文献1の複合型の熱交換器では、吐出冷媒よりも温度の高いブラインが流通するヒータコアを、暖房用熱交換器に対して送風空気流れ下流側に配置することによって、吐出冷媒と送風空気との温度差およびブラインと送風空気との温度差を確保している。これにより、暖房用熱交換器にて吐出冷媒の有する熱を確実に放熱させ、ヒータコアにてブラインの有する熱を確実に放熱させるようにしている。
【0006】
また、特許文献2では、特許文献1と同様の暖房用熱交換器、および、エンジンを冷却する冷却水(第2流体)と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱するヒータコアを、1つの熱交換器として一体的に構成した複合型の熱交換器を採用することによって、吐出冷媒および冷却水の有する熱を送風空気に放熱させる熱交換システムを実現している。
【0007】
さらに、特許文献2の複合型の熱交換器では、暖房用熱交換器にて冷媒を流通させる断面扁平形状の冷媒チューブ、および、ヒータコアにて冷却水を流通させる断面扁平形状の冷却水チューブの扁平面同士を接合することによって、熱交換器全体としての大型化の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3275415号公報
【特許文献2】特許第4311115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両では、車両燃費を向上させるために、車両走行中あるいは車両停車中にエンジンを停止させることがあるため、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両では、常時エンジンが作動する通常の車両に対して、エンジンの冷却水の温度が上昇しにくくなっている。
【0010】
そのため、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両に、特許文献1に開示された熱交換システムを適用し、ヒータコアのブラインとして、エンジンの冷却水を採用すると、吐出冷媒の温度よりも冷却水の温度が低くなっている際に、暖房用熱交換器では送風空気を加熱することができるものの、ヒータコアでは送風空気を加熱することができなくなってしまう。
【0011】
つまり、ヒータコアでは、温度の低い冷却水の有する熱を暖房用熱交換器に加熱された送風空気に放熱させることができず、逆に、暖房用熱交換器にて加熱された送風空気の熱が冷却水に放熱されてしまうという不必要な熱交換が行われてしまう。
【0012】
また、ハイブリッド車両やアイドリングストップ車両に、特許文献2に開示された熱交換システムを適用すると、吐出冷媒の温度よりも冷却水の温度が低くなっている際に、ヒータコアのみならず、暖房用熱交換器においても送風空気を充分に加熱することができなくなってしまうことがある。
【0013】
その理由は、特許文献2の熱交換器では、冷媒チューブと冷却水チューブとを直接接合しているので、吐出冷媒と送風空気との間の熱伝達率および冷却水と送風空気との間の熱伝達率よりも、冷媒と冷却水との間の熱伝達率が高くなってしまうからである。
【0014】
このように冷却水と送風空気との間の熱伝達率よりも、冷媒と冷却水との間の熱伝達率が高くなっていると、冷却水の温度が低下して吐出冷媒と冷却水との温度差が大きくなった際に、冷却水の温度が送風空気より高くなっていたとしても、吐出冷媒の有する熱の殆どが冷却水に放熱されてしまい、送風空気を充分に加熱することができなくなってしまう。
【0015】
以上の如く、特許文献1、2に開示された熱交換システムでは、2種類の流体(第1、第2流体)のうち、一方の流体に温度変化が生じると、2種類の流体(第1、第2流体)の有する熱を別の流体(第3流体)へ適切に放熱させることができなくなってしまい、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができなくなってしまう。
【0016】
本発明は、上記点に鑑み、複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1流体と第3流体とを熱交換させて前記第1流体の有する熱を前記第3流体に放熱させる第1熱交換器(12)と、第2流体と第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、
第1熱交換器(12)を流通する第1流体と第2熱交換器(43)を流通する第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、第1熱交換器(12)へ流入する第1流体の温度は、第1熱交換器(12)へ流入する第3流体の温度よりも高い値になっており、
第2流体流量調整手段(41、42)は、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が予め定めた第2基準温度(T2)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および第2基準温度(T2)よりも低い温度になっている際よりも第2流体の流入流量を減少させ、
さらに、第1基準温度(T1)および第2基準温度(T2)は、いずれも第1熱交換器(12)へ流入する第1流体の温度以下に設定されているとともに、第1基準温度(T1)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第3流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0018】
これによれば、第2流体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度となっている際には、第1熱交換器(12)にて第1流体の有する熱を第3流体に放熱させることができ、第2熱交換器(43)にて第2流体の有する熱を第3流体に放熱させることができる。すなわち、第1、第2熱交換器(12、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0019】
さらに、第2流体流量調整手段(41、42)が、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が第2基準温度(T2)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、第2流体の流入流量を減少させるので、第2流体の温度が第1基準温度(T1)以下となっている際にも第1、第2流体の有する熱を適切に放熱させることができる。
【0020】
つまり、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が第1基準温度(T1)以下となって第1流体の温度と第2流体の温度との温度差が拡大しても、第2流体の流入流量を減少させることによって、第1流体と第2流体との不必要な熱交換を抑制して、第1流体の有する熱を第3流体へ効率的に放熱させることができる。
【0021】
さらに、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が第2基準温度(T2)よりも低くなって第1流体の温度と第2流体の温度との温度差がさらに拡大した際には、第2流体の流入流量を減少させず、第1流体と第2流体との熱交換を促進させるので、第1流体の有する熱を第2流体および第3流体の双方へ放熱させて、第1流体の放熱量を増大させることができる。
【0022】
従って、第2流体の温度変化によらず、複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。なお、請求項に記載された「流入流量を減少させ」という用語には、単に流量を減少させることのみを意味するだけでなく流量を0とすること、すなわち、熱交換器へ流体を流入させないことを含む意味である。
【0023】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の熱交換システムにおいて、第1熱交換器(12)は、第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a)を有し、第2熱交換器(43)は、第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、複数の第1チューブ(12a)および複数の第2チューブ(43a)の外周には、第3流体を流通させる第3流体通路(50a)が形成されており、
第1チューブ(12a)の外表面および第2チューブ(43a)の外表面には、双方の熱交換器(12、43)における熱交換を促進するとともに、第1チューブ(12a)を流通する第1流体と第2チューブ(43a)を流通する第2流体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする。
【0024】
これによれば、第1チューブ(12a)の外表面および第2チューブ(43a)の外表面に、アウターフィン(50b)が接合されているので、極めて容易に、第1熱交換器(12)を流通する第1流体と第2熱交換器(43)を流通する第2流体との間の熱移動を可能とすることができる。
【0025】
しかも、第1流体と第2流体との間の熱移動は、アウターフィン(50b)を介して行われるので、第1流体の有する熱はアウターフィン(50b)に伝熱する際に第2流体よりも第3流体に放熱されやすくなる。従って、流入流量を減少させた際に、第1流体と第3流体とを効率的に熱交換させることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明のように、複数の第1チューブ(12a)のうち、少なくとも1つを、複数の第2チューブ(43a)の間に配置し、複数の第2チューブ(43a)のうち、少なくとも1つを、複数の第1チューブ(12a)の間に配置し、少なくとも第1チューブ(12a)と第2チューブ(43a)との間に形成される空間が第3流体通路(50a)を形成する構成とすることが望ましい。
【0027】
請求項4に記載の発明のように、第1熱交換器(12)に、第1チューブ(12a)を流通する第1流体の集合あるいは分配を行う第1タンク部(12b)を設け、第2熱交換器(43)に、第2チューブ(43a)を流通する第2流体の集合あるいは分配を行う第2タンク部(43b)を設け、さらに、複数の第1チューブ(12a)および複数の第2チューブ(43a)を、第3流体の流れ方向の上流側に位置する上流側チューブ群(50c)、および第3流体の流れ方向の下流側に位置する下流側チューブ群(50d)で構成することが望ましい。
【0028】
請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、第2熱交換器(43)を迂回させるように第2流体を流すバイパス通路(44)を備え、第2流体流量調整手段(41、42)が、第2流体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、第2流体の流入流量を減少させるようになっていてもよい。
【0029】
請求項6に記載の発明では、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を調整する放熱量調整手段(11b、33)を備え、放熱量調整手段(11b、33)は、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が予め第1基準温度(T1)以上に定められた保護基準温度よりも高い温度となる際に、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を低下させることを特徴とする。
【0030】
これによれば、第2流体の温度が保護基準温度より高い温度となっている際に、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を低下させることで、第2熱交換器(43)にて第2流体が有する熱の第3流体への放熱を促進して、第2流体の温度の低下を図ることができる。従って、第1、第2熱交換器(12、63、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0031】
請求項7、8に記載の発明のように、第1流体を、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒や、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体とすることが極めて有効である。
【0032】
また、請求項9に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度は、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が予め定めた第2基準温度(T2)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および第2基準温度(T2)よりも低い温度になっている際よりも熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、第1基準温度(T1)および第2基準温度(T2)は、いずれも冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、第1基準温度(T1)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0033】
これによれば、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以上となっている際には、請求項1に記載の発明と同様に、冷媒放熱器(12)にて冷媒の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、熱媒体放熱器(43)にて熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0034】
さらに、熱媒体流量調整手段(41、42)が、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第2基準温度(T2)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体の流入流量を減少させるので、請求項1に記載の発明と同様に、熱媒体の温度が第2基準温度(T2)より低い温度となっている際にも吐出冷媒、熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0035】
その結果、冷媒、熱媒体および熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。
【0036】
特に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第2基準温度(T2)よりも低くなった際に、吐出冷媒と熱媒体との熱交換を促進させて、吐出冷媒の放熱量を増大できることは、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる点で極めて有効である。
【0037】
請求項10に記載の発明では、請求項9に記載の熱交換システムにおいて、熱媒体流量調整手段(41、42)は、冷媒放熱器(12)における冷媒圧力が予め定めた基準冷媒圧力(P1)以上となっている際に、熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする。
【0038】
これによれば、基準冷媒圧力(P1)として、その飽和温度が冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体よりも高くなる圧力を設定しておくことで、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度を、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも確実に高い値とすることができる。また、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第2基準温度(T2)よりも低下した際に、吐出冷媒の温度と熱媒体の温度との温度差を充分に確保することもできる。
【0039】
請求項11に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度は、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した第3基準温度(T3)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および第3基準温度(T3)よりも低い温度になっている際よりも熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、第1基準温度(T1)および第3基準温度(T3)は、いずれも冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、第1基準温度(T1)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0040】
これによれば、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以上となっている際には、請求項1に記載の発明と同様に、冷媒放熱器(12)にて冷媒の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、熱媒体放熱器(43)にて熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0041】
さらに、熱媒体流量調整手段(41、42)が、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第3基準温度(T3)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体の流入流量を減少させるので、請求項1に記載の発明と同様に、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より低い温度となっている際にも吐出冷媒、熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0042】
また、第3基準温度(T3)が冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した値として設定されているので、冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の温度に応じて第3基準温度(T3)を設定できる。つまり、冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の温度が低くなるに伴って、熱媒体の流入流量を減少させる熱媒体の温度範囲、すなわち第3基準温度(T3)と第1基準温度(T1)との温度差を拡大することができる。
【0043】
従って、吐出冷媒の温度が低くなり、吐出冷媒の有する熱によって熱交換対象流体を加熱しにくくなるに伴って、熱媒体の流入流量を減少させる第3基準温度(T3)と第1基準温度(T1)との温度差を拡大することができ、より一層、吐出冷媒と熱媒体との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒と熱交換対象流体との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0044】
その結果、冷媒、熱媒体および熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。さらに、請求項9に記載の発明と同様に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第3基準温度(T3)よりも低くなった際に、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる。
【0045】
請求項12に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度は、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が予め定めた第1基準温度(T1)以下となった際に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際よりも熱媒体の流入流量を減少させるとともに、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)よりも低くなるに伴って、熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、第1基準温度(T1)は、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0046】
これによれば、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以上となっている際には、請求項1に記載の発明と同様に、冷媒放熱器(12)にて冷媒の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、熱媒体放熱器(43)にて熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0047】
さらに、熱媒体流量調整手段(41、42)が、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以下となった際に、熱媒体の流入流量を減少させるので、吐出冷媒と熱媒体との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒の有する熱を熱交換対象流体へ効率的に放熱させることができる。
【0048】
その後、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度がさらに低下するに伴って、熱媒体の流入流量を増加させるので、吐出冷媒の有する熱を熱媒体および熱交換対象流体の双方へ放熱させて、吐出冷媒の放熱量を増大させることができる。従って、請求項9に記載の発明と同様に、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる。
【0049】
その結果、冷媒、熱媒体および熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。
【0050】
請求項13に記載の発明では、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度は、冷媒放熱器(12)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した第3基準温度(T3)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および第3基準温度(T3)よりも低い温度になっている際よりも熱媒体の流入流量を減少させるとともに、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)よりも低くなるに伴って、熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、第1基準温度(T1)および第3基準温度(T3)は、いずれも冷媒放熱器(12)へ流入する吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、第1基準温度(T1)は、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されている熱交換システムを特徴とする。
【0051】
これによれば、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)以上となっている際には、請求項1に記載の発明と同様に、冷媒放熱器(12)にて冷媒の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、熱媒体放熱器(43)にて熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0052】
さらに、熱媒体流量調整手段(41、42)が、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第3基準温度(T3)以上、かつ、第1基準温度(T1)以下となっている際に、熱媒体の流入流量を減少させるので、請求項1に記載の発明と同様に、熱媒体の温度が第1基準温度(T1)より低い温度となっている際にも吐出冷媒、熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0053】
また、第3基準温度(T3)が冷媒放熱器(12)における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した値として設定されているので、請求項11に記載の発明と同様に、吐出冷媒と熱媒体との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒と熱交換対象流体との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0054】
また、熱媒体放熱器(43)へ流入する熱媒体の温度が第1基準温度(T1)よりも低下するに伴って、熱媒体の流入流量を増加させるので、請求項12に記載の発明と同様に、吐出冷媒の有する熱を熱媒体および熱交換対象流体の双方へ放熱させて、吐出冷媒の放熱量を増大させることができる。従って、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる。
【0055】
その結果、冷媒、熱媒体および熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。
【0056】
請求項14に記載の発明では、請求項9ないし13のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、冷媒放熱器(12)は、冷媒が流通する複数の冷媒用チューブ(12a)を有し、熱媒体放熱器(43)は、熱媒体が流通する複数の熱媒体用チューブ(43a)を有し、複数の冷媒用チューブ(12a)および複数の熱媒体用チューブ(43a)の外周には、熱交換対象流体を流通させる熱交換対象流体通路(50a)が形成されており、冷媒用チューブ(12a)の外表面および熱媒体用チューブ(43a)の外表面には、双方の放熱器(12、43)における熱交換を促進するとともに、冷媒用チューブ(12a)を流通する冷媒と熱媒体用チューブ(43a)を流通する熱媒体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする。
【0057】
これによれば、冷媒用チューブ(12a)の外表面および熱媒体用チューブ(43a)の外表面に、アウターフィン(50b)が接合されているので、極めて容易に、冷媒放熱器(12)を流通する吐出冷媒と熱媒体放熱器(43)を流通する熱媒体との間の熱移動を可能とすることができる。
【0058】
しかも、吐出冷媒と熱媒体との間の熱移動は、アウターフィン(50b)を介して行われるので、吐出冷媒の有する熱はアウターフィン(50b)に伝熱する際に熱媒体よりも熱交換対象流体に放熱されやすくなる。従って、流入流量を減少させた際に、吐出冷媒と熱交換対象流体とを効率的に熱交換させることができる。
【0059】
請求項15に記載の発明のように、請求項9ないし14のいずれか1つに記載の熱交換システムにおいて、さらに、熱媒体放熱器(43)を迂回させるように熱媒体を流すバイパス通路(44)を備え、熱媒体流量調整手段(41、42)は、熱媒体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、流入流量を減少させるようになっていてもよい。
【0060】
請求項16ないし請求項20に記載の発明は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、冷媒放熱器(12)から流出した第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、第2熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、第1熱媒体放熱器(63)を流通する第1熱媒体と第2熱媒体放熱器(43)を流通する第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度は、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値になっている熱交換システムを対象としている。
【0061】
請求項16に記載の発明では、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が予め定めた第5基準温度(T5)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に第2熱媒体の流入流量を減少させ、さらに、前記第4基準温度(T4)および前記第5基準温度(T5)は、いずれも前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第4基準温度(T1)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする。
【0062】
これによれば、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以上となっている際には、第1熱媒体放熱器(63)にて第1熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させ、第2熱媒体放熱器(43)にて第2熱媒体の有する熱を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0063】
さらに、第2熱媒体流量調整手段(41、42)が、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第5基準温度(T5)以上、かつ、第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるので、第2熱媒体の温度が第5基準温度(T5)より低い温度となっている際にも第1、第2熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0064】
従って、第1、第2熱媒体、熱交換対象流体といった複数種の流体を熱交換させる熱交換システムにおいて、第2熱媒体の温度によらず、複数種の流体間の適切な熱交換を実現することができる。
【0065】
特に、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第5基準温度(T5)よりも低くなった際に、各熱媒体の熱交換を促進させて、第1熱媒体の放熱量を増大できることは、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力を増大できる点で極めて有効である。
【0066】
請求項17に記載の発明のように、第2熱媒体流量調整手段(41、42)にて、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度が予め定めた第1熱媒体基準温度(Tα)以上となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させることが望ましい。
【0067】
請求項18に記載の発明では、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度から予め定めた温度を減算した第6基準温度(T6)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に第2熱媒体の流入流量を減少させ、さらに、第4基準温度(T4)は、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする。
【0068】
これによれば、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以上となっている際には、第1熱媒体の有する熱および第2熱媒体の有する熱の双方を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0069】
さらに、第2熱媒体流量調整手段(41、42)が、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第6基準温度(T6)以上、かつ、第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるので、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)より低い温度となっている際にも第1、第2熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0070】
また、第6基準温度(T6)が第1熱媒体放熱器(63)における第1熱媒体の温度から所定温度を減算した値として設定されているので、第1熱媒体の有する熱によって熱交換対象流体を加熱しにくくなるに伴って、第6基準温度(T6)と第4基準温度(T4)との温度差を拡大することができ、各熱媒体における不必要な熱交換を抑制して、第1熱媒体と熱交換対象流体との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0071】
請求項19に記載の発明では、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が予め定めた第4基準温度(T4)以下となった際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)よりも低くなるに伴って、第2熱媒体の流入流量を増加させ、さらに、第4基準温度(T4)は、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする。
【0072】
これによれば、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以上となっている際には、第1熱媒体の有する熱および第2熱媒体の有する熱の双方を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0073】
さらに、第2熱媒体流量調整手段(41、42)が、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるので、第1、第2熱媒体における不必要な熱交換を抑制して、第1熱媒体の有する熱を熱交換対象流体へ効率的に放熱させることができる。
【0074】
その後、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度がさらに低下するに伴って、第2熱媒体の流入流量を増加させるので、第1熱媒体の有する熱を第2熱媒体および熱交換対象流体の双方へ放熱させて、第1熱媒体の放熱量を増大させることができる。この結果、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力の増大を図ることができる。
【0075】
請求項20に記載の発明では、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第1熱媒体放熱器(63)に流入する第1熱媒体の温度から予め定めた温度を減算した第6基準温度(T6)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)よりも低くなるに伴って、第2熱媒体の流入流量を増加させ、さらに、第4基準温度(T4)は、第1熱媒体放熱器(63)へ流入する第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする。
【0076】
これによれば、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)以上となっている際には、第1熱媒体の有する熱および第2熱媒体の有する熱の双方を熱交換対象流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0077】
また、第2熱媒体流量調整手段(41、42)が、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度が第6基準温度(T6)以上、かつ、第4基準温度(T4)以下となっている際に、第2熱媒体の流入流量を減少させるので、第2熱媒体の温度が第4基準温度(T4)より低い温度となっている際にも各熱媒体、熱交換対象流体の間で、適切な熱交換を行うことができる。
【0078】
さらに、第6基準温度(T6)が第1熱媒体放熱器(63)における第1熱媒体の温度から所定温度を減算した値として設定されているので、各熱媒体における不必要な熱交換を抑制して、第1熱媒体と熱交換対象流体との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0079】
さらにまた、第2熱媒体放熱器(43)へ流入する第2熱媒体の温度がさらに低下するに伴って、第2熱媒体の流入流量を増加させるので、第1熱媒体の有する熱を第2熱媒体および熱交換対象流体の双方へ放熱させて、第1熱媒体の放熱量を増大させることができる。この結果、ヒートポンプサイクル(10)の冷凍能力の増大を図ることができる。
【0080】
請求項21に記載の発明のように、第1熱媒体放熱器(63)を構成する第1熱媒体用チューブ(63a)の外表面、および第2熱媒体放熱器(43)を構成する第2熱媒体用チューブ(43a)の外表面に、アウターフィン(50b)を接合することで、極めて容易に、第1熱媒体放熱器(63)を流通する第1熱媒体と第2熱媒体放熱器(43)を流通する第2熱媒体との間の熱移動を可能とすることができる。
【0081】
特に、第1熱媒体と第2熱媒体との間の熱移動は、アウターフィン(50b)を介して行われるので、第1熱媒体の有する熱はアウターフィン(50b)に伝熱する際に第2熱媒体よりも熱交換対象流体に放熱されやすくなる。従って、第2熱媒体の流入流量を減少させた際に、第1熱媒体と熱交換対象流体とを効率的に熱交換させることができる。
【0082】
請求項22に記載の発明のように、さらに、第2熱媒体放熱器(43)を迂回させるように第2熱媒体を流すバイパス通路(44)を備え、第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、第2熱媒体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、第2熱媒体の流入流量を減少させるようになっていてもよい。
【0083】
請求項23および24に記載の発明は、第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a、63a)を有し、第1流体と第3流体とを熱交換させて第1流体の有する熱を第3流体に放熱させる第1熱交換器(12、63)と、第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、第2流体と第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、第1熱交換器(12、63)を流通する第1流体と第2熱交換器(43)を流通する第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、複数の第1チューブ(12a、63a)のうち少なくとも1つは、複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、複数の第2チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、複数の第1チューブ(12a、63a)の間に配置され、第1チューブ(12a、63a)と第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、第3流体が流通する第3流体通路(50a)を形成しており、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度、および第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度は、第1、第2熱交換器(12、63、43)へ流入する前の第3流体の温度よりも高い値になっている熱交換システムを対象としている。
【0084】
請求項23に記載の発明は、第2流体流量調整手段(41、42)は、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度が第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度以上となり、かつ、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体と第2熱交換器(41、42)へ流入する第2流体との温度差が予め定めた基準温度差(ΔTTth)以上となる際に、第2流体の流入流量を減少させることを特徴とする。
【0085】
これによれば、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度が第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度以上となる場合に、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度と、第1熱交換器(12)に流入する温度との温度差が基準温度差(ΔTTth)以上に拡大した際には、第2流体の流入流量を減少させるので、第2熱交換器(43)における第2流体と第3流体との熱交換を抑制して、第2流体の温度の上昇を図ることができる。これにより、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度と、第1熱交換器(12)に流入する第1流体の温度との温度差を縮小させることが可能となる。この結果、第1、第2熱交換器(12、63、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換の実現を図ることができる。
【0086】
請求項24に記載の発明は、第2流体流量調整手段(41、42)は、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度が第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度よりも低くなり、かつ、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体と第2熱交換器(43)へ流入する第2流体との温度差が予め定めた基準温度差(ΔTTth)以上となる際に、第2流体の流入流量を増加させることを特徴とする。
【0087】
これによれば、第1熱交換器(12、63)へ流入する第1流体の温度が第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度より低くなる場合に、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度と、第1熱交換器(12)に流入する温度との温度差が基準温度差(ΔTTth)以上に拡大した際には、第2流体の流入流量を増加させるので、第2熱交換器(43)にて第2流体が有する熱の第3流体への放熱を促進して、第2流体の温度の低下を図ることができる。これにより、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度と、第1熱交換器(12、63)に流入する第1流体の温度との温度差を縮小させることが可能となる。この結果、第1、第2熱交換器(12、63、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換の実現を図ることができる。
【0088】
請求項25に記載の発明では、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を調整する放熱量調整手段(11b、33)を備え、放熱量調整手段(11b、33)は、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が予め定められた保護基準温度よりも高い温度となる際に、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を低下させることを特徴とする。
【0089】
これによれば、第2流体の温度が保護基準温度より高い温度となっている際に、第1熱交換器(12、63)における第1流体が有する熱の放熱量を低下させることで、第2熱交換器(43)にて第2流体が有する熱の第3流体への放熱を促進して、第2流体の温度の低下を図ることができる。従って、第1、第2熱交換器(12、63、43)にて、第1、第2流体の有する熱を第3流体に放熱させるための適切な熱交換を実現することができる。
【0090】
請求項26に記載の発明ように、第1流体が、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒である場合、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が保護基準温度よりも高い温度となる際に、放熱量調整手段(11b)にて圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させるようにしてもよい。これによれば、第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることができる。
【0091】
請求項27に記載の発明のように、第1流体が、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体である場合、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が保護基準温度よりも高い温度となる際に、放熱量調整手段(11b)にて圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させるようにしてもよい。これによれば、第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることができる。
【0092】
請求項28に記載の発明のように、ヒートポンプサイクル(10)の蒸発器(16)にて空調対象空間に送風する送風空気と冷媒とを熱交換させて、前記送風空気を冷却する空調装置に適用され、第1流体がヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体、または、圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒である場合、第2熱交換器(43)へ流入する第2流体の温度が保護基準温度よりも高い温度となる際に、蒸発器(16)へ流入する空調対象空間から循環導入される内気と空調対象空間の外部から導入される外気との導入割合を、内気が増加するように変化させることで、蒸発器(16)の熱負荷を低下させるようにしてもよい。
【0093】
これによれば、外気よりも温度低い内気の導入割合を増加させることで、蒸発器(16)にて必要な冷媒の吸熱量を少なくすることができ、蒸発器(16)の熱負荷を低下させることができる。この結果、圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させることができ、第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることができる。
【0094】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図2】第1実施形態の熱交換器構造体の外観斜視図である。
【図3】第1実施形態の熱交換器構造体の模式的な一部分解斜視図である。
【図4】第1実施形態の熱交換器構造体における冷媒の流れおよび冷却水の流れを説明するための模式的な斜視図である。
【図5】(a)は、冷却水温度が所定の温度となっている際のアウターフィンの温度分布を示す温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィンの温度分布を模式的に表した説明図である。
【図6】(a)は、冷却水温度が別の所定の温度となっている際のアウターフィンの温度分布を示す温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィンの温度分布を模式的に表した説明図である。
【図7】(a)は、冷却水温度が別の温度条件となっている際のアウターフィンの温度分布を示す温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィンの温度分布を模式的に表した説明図である。
【図8】(a)は、冷却水温度がさらに別の温度条件となっている際のアウターフィンの温度分布を示す温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィンの温度分布を模式的に表した説明図である。
【図9】第2実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図10】第3実施形態の車両用空調装置の全体構成図である。
【図11】第4実施形態の冷却水ポンプの作動を説明するための説明図である。
【図12】第5実施形態の熱交換器構造体の模式的な一部分解斜視図である。
【図13】第5実施形態に係る熱交換器構造体のヘッダタンク部長手方向の模式的な断面図である。
【図14】第6実施形態に係る制御装置が実行する冷却水ポンプの吐出流量制御の流れを示すフローチャートである。
【図15】第7実施形態に係る車両用空調装置の全体構成図である。
【図16】第7実施形態に係る車両用空調装置の一部を変更した全体構成図である。
【図17】他の実施形態に係る熱交換器構造体のヘッダタンク部長手方向の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
(第1実施形態)
図1〜8により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の熱交換システムを、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータMGから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。図1は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。
【0097】
ハイブリッド車両は、車両の走行負荷等に応じてエンジンを作動あるいは停止させて、エンジンおよび走行用電動モータMGの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータMGのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、ハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力をエンジンのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させることができる。
【0098】
本実施形態の車両用空調装置1に適用される熱交換システムは、蒸気圧縮式の冷凍サイクルで構成されるヒートポンプサイクル10、および、走行用電動モータMGを冷却する冷却水が循環する冷却水循環回路40等によって構成されている。
【0099】
まず、ヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却する機能を果たす。このヒートポンプサイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。なお、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0100】
圧縮機11は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。固定容量型圧縮機11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0101】
電動モータ11bは、後述する制御装置から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ11bが圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0102】
圧縮機11の冷媒吐出口には、冷媒放熱器12の冷媒入口側が接続されている。冷媒放熱器12は、エンジンルーム内に配置されて、圧縮機から吐出された吐出冷媒(第1流体)と送風ファン13から送風された熱交換対象流体としての外気(第3流体)とを熱交換させて、吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させる放熱用熱交換器である。
【0103】
また、送風ファン13は、制御装置から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。さらに、本実施形態の冷媒放熱器12は、走行用電動モータMGを冷却する熱媒体である冷却水(第2流体)と送風ファン13から送風された外気とを熱交換させる後述するラジエータ(熱媒体放熱器)43と一体的に構成されている。
【0104】
このため、本実施形態の送風ファン13は、冷媒放熱器12およびラジエータ43の双方に向けて外気を送風する室外送風手段を構成している。なお、一体化された冷媒放熱器12およびラジエータ43(以下、熱交換器構造体50という)の詳細構成については後述する。
【0105】
冷媒放熱器12の冷媒出口側には、冷媒放熱器12から流出した冷媒の気液を分離して、余剰液相冷媒を蓄えるレシーバ14が配置されている。さらに、レシーバ14の液相冷媒出口には、温度式膨張弁15の入口側が接続され、温度式膨張弁15の出口側には、冷媒蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。
【0106】
温度式膨張弁15は、冷媒蒸発器16出口側の冷媒通路に配置された図示しない感温部を有し、冷媒蒸発器16出口側冷媒の温度と圧力とに基づいて、冷媒蒸発器16出口側冷媒の過熱度を検知し、冷媒蒸発器16出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定範囲の値となるように機械的機構により弁開度(冷媒流量)を調整する減圧手段である。
【0107】
冷媒蒸発器16は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、温度式膨張弁15によって減圧膨張された低圧冷媒と車室内へ送風される送風空気と熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。冷媒蒸発器16の冷媒出口側には、圧縮機11の冷媒吸入口が接続されている。
【0108】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の冷媒蒸発器16、電気ヒータ36等を収容したものである。
【0109】
ケーシング31は、その内部に車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
【0110】
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0111】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0112】
送風機32の空気流れ下流側には、冷媒蒸発器16および電気ヒータ36が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、冷媒蒸発器16は、電気ヒータ36に対して、送風空気の流れ方向上流側に配置されている。電気ヒータ36は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、制御装置がPTC素子に電力を供給することによって発熱して、冷媒蒸発器16通過後の空気を加熱する加熱手段である。
【0113】
さらに、冷媒蒸発器16の空気流れ下流側であって、かつ、電気ヒータ36の空気流れ上流側には、冷媒蒸発器16通過後の送風空気のうち、電気ヒータ36を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。また、電気ヒータ36の空気流れ下流側には、電気ヒータ36にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気と電気ヒータ36を迂回して加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間35が設けられている。
【0114】
ケーシング31の空気流れ最下流部には、混合空間35にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的には、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
【0115】
従って、エアミックスドア34が電気ヒータ36を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間35にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。なお、エアミックスドア34は、制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0116】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0117】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0118】
次に、冷却水循環回路40について説明する。冷却水循環回路40は、作動時に発熱を伴う車載機器である走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路に、熱媒体としての冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を流通させて走行用電動モータMGを冷却する熱媒体循環回路である。この冷却水循環回路40には、冷却水ポンプ41、ラジエータ43が配置されている。
【0119】
冷却水ポンプ41は、冷却水循環回路40において、冷却水を走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路へ圧送する電動式の水ポンプであり、制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。
【0120】
そして、制御装置が冷却水ポンプ41を作動させると、冷却水は、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→ラジエータ43→冷却水ポンプ41の順に循環する。従って、冷却水ポンプ41は、ラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(第2流体流量調整手段)を構成している。
【0121】
ラジエータ43は、エンジンルーム内に配置されて、走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路から流出した冷却水(第2流体)と送風ファン13から送風された外気(第3流体)とを熱交換させて、冷却水の有する熱を外気に放熱させる放熱用熱交換器である。
【0122】
従って、この冷却水循環回路40では、制御装置が冷却水ポンプ41を作動させると、冷却水が走行用電動モータMGを通過する際に、走行用電動モータMGの廃熱を吸熱して走行用電動モータMGを冷却する。さらに、走行用電動モータMGの廃熱を吸熱して昇温した冷却水は、ラジエータ43へ流入して外気に放熱して冷却される。換言すると、走行用電動モータMGは、冷却水を加熱する外部熱源としての機能を果たしている。
【0123】
次に、図2〜図4を用いて、熱交換器構造体50の詳細構成について説明する。なお、図2は、熱交換器構造体50の外観斜視図であり、図3は、熱交換器構造体50の模式的な一部分解斜視図であり、図4は、熱交換器構造体50における冷媒の流れおよび冷却水の流れを説明するための模式的な斜視図である。
【0124】
まず、熱交換器構造体50は、冷媒放熱器12およびラジエータ43を1つの熱交換器として一体的に構成した複合型の熱交換器である。冷媒放熱器12およびラジエータ43は、それぞれ冷媒または冷却水を流通させる複数本のチューブ12a、43a、この複数本のチューブの両端側に配置されてそれぞれのチューブを流通する冷媒または冷却水の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用タンク12b、43b等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器として構成されている。
【0125】
具体的には、冷媒放熱器12は、第1流体としての冷媒が流通する複数本の冷媒用チューブ(第1チューブ)12a、および、複数本の冷媒用チューブ12aの積層方向に延びて冷媒用チューブ12aを流通する冷媒の集合あるいは分配を行う冷媒用ヘッダタンク部(第1タンク部)12bを有し、冷媒用チューブ12aを流通する冷媒と冷媒用チューブ12aの周囲を流れる第3流体としての空気(送風ファン13から送風された外気)とを熱交換させる第1熱交換器である。
【0126】
一方、ラジエータ43は、第2流体としての冷却水が流通する複数本の熱媒体用チューブ43a、および、熱媒体用チューブ(第2チューブ)43aの積層方向に延びて熱媒体用チューブ43aを流通する冷却水の集合あるいは分配を行う熱媒体用ヘッダタンク部(第2タンク部)43bを有し、熱媒体用チューブ43aを流通する冷却水と熱媒体用チューブ43aの周囲を流れる空気(送風ファン13から送風された外気)とを熱交換させる第2熱交換器である。
【0127】
また、これらの冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aは、その板面に凹凸部が設けられた一対の板状部材同士を最中合わせ状に接合することによって形成された、いわゆるプレートチューブで構成されている。さらに、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aは、伝熱性に優れる金属(本実施形態では、アルミニウム合金)で形成されている。
【0128】
さらに、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aは、図2、図3に示すように、冷媒用ヘッダタンク部12bと熱媒体用ヘッダタンク部43bとの間に配置されている。つまり、冷媒用ヘッダタンク部12bは、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの長手方向一端側に配置されており、熱媒体用ヘッダタンク部43bは、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの長手方向他端側に配置されている。
【0129】
冷媒用チューブ12aの内部には、冷媒用チューブ12aの長手方向(送風ファン13から送風された外気の流れ方向に直交する方向)に延びる冷媒流路が、送風ファン13から送風された外気の流れ方向Xに沿って2列に並べて設けられている。この冷媒流路の断面形状は、外気の流れ方向Xに沿って延びる扁平形状になっている。
【0130】
さらに、図3に示すように、2列に並べて設けられた双方の冷媒流路の冷媒用ヘッダタンク部12b側の端部は、冷媒用チューブ12a側の端部で外部に開口している。本実施形態では、この冷媒流路の開口する側の端部に冷媒用ヘッダタンク部12bを配置することで、冷媒用ヘッダタンク部12bの内部空間と双方の冷媒流路とを連通させている。
【0131】
一方、2列に並べて設けられた冷媒流路の双方の熱媒体用ヘッダタンク部43b側の端部は、冷媒用チューブ12aの外部に開口することなく、2列の冷媒流路同士が冷媒用ターン部12cによって接続されている。これにより、熱媒体用ヘッダタンク部43bの内部空間と冷媒用チューブ12aは連通することなく、2列の冷媒流路同士が互いに連通している。
【0132】
従って、本実施形態の冷媒用チューブ12aでは、図4の実線矢印に示すように、冷媒用ヘッダタンク部12bから2列に並べて設けられた一方の冷媒流路へ流入した冷媒が、冷媒用ターン部12cにて、その流れ方向を転換させて他方の冷媒流路へ流入し、冷媒用ヘッダタンク部12bへ戻る。
【0133】
熱媒体用チューブ43aの基本的構成は、冷媒用チューブ12aと同様である。従って、熱媒体用チューブ43aの内部には、熱媒体用チューブ43aの長手方向に延びる断面扁平形状の熱媒体流路が、送風ファン13から送風された外気の流れ方向Xに沿って2列に並べて設けられている。
【0134】
さらに、熱媒体用チューブ43aの熱媒体流路は、熱媒体用ヘッダタンク部43b側の端部にて熱媒体用ヘッダタンク部43bの内部空間と連通しており、双方の熱媒体流路の冷媒用ヘッダタンク部12b側の端部が、冷媒用ターン部12cと同様の構成の熱媒体用ターン部43cによって接続されている。
【0135】
従って、本実施形態の熱媒体用チューブ43aでは、図4の破線矢印に示すように、熱媒体用ヘッダタンク部43bから2列に並べて設けられた一方の熱媒体流路へ流入した冷媒が、熱媒体用ターン部43cにて、その流れ方向を転換させて他方の熱媒体流路へ流入し、熱媒体用ヘッダタンク部43bへ戻る。
【0136】
また、それぞれの冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aは、その外表面の平面同士が互いに平行に、所定の間隔を開けて交互に積層配置されている。つまり、冷媒用チューブ12aは、熱媒体用チューブ43aの間に配置され、逆に、熱媒体用チューブ43aは、冷媒用チューブ12aの間に配置されている。
【0137】
そして、冷媒用チューブ12aと熱媒体用チューブ43aとの間に形成される空間は、送風ファン13によって送風された外気が流通する外気通路50a(第3流体通路、熱交換対象流体通路)を形成している。換言すると、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの外周には、外気を流通させる外気通路50aが形成されている。
【0138】
さらに、外気通路50aには、冷媒放熱器12における冷媒と外気との熱交換およびラジエータ43における冷却水と外気との熱交換を促進するとともに、冷媒用チューブ12aを流通する冷媒と熱媒体用チューブ43aを流通する冷却水との間の熱移動を可能とするアウターフィン50bが、対向する冷媒用チューブ12aの外表面および熱媒体用チューブ43aの外表面に接合された状態で配置されている。
【0139】
なお、本実施形態の冷媒用ヘッダタンク部12b、熱媒体用ヘッダタンク部43bおよびアウターフィン50bは、冷媒用チューブ12a、熱媒体用チューブ43aと同一の金属材料で形成されており、ろう付け接合されることにより一体化されている。また、図3では、図示の明確化のため、アウターフィン50bの記載を省略している。
【0140】
本実施形態では、この熱交換器構造体50を採用していることにより、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で熱交換を行う熱交換システムが構成されている。より詳細には、2種類の流体(冷媒、冷却水)の有する熱を別の流体(空気)に放熱させる熱交換システムが構成されている。
【0141】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。本実施形態の制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器11、13、41等の作動を制御する。
【0142】
また、制御装置の入力側には、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、冷媒蒸発器16の吹出空気温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度センサ、圧縮機11吐出冷媒温度を検出する吐出冷媒温度センサ、圧縮機11吐出冷媒圧力を検出する吐出圧力検出手段としての吐出圧力センサ、冷媒放熱器12における冷媒温度を検出する冷媒温度検出手段としての冷媒温度センサ、走行用電動モータMGから流出する冷却水温度Twを検出する冷却水温度検出手段としての冷却水温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0143】
なお、走行用電動モータMGから流出する冷却水温度Twは、ラジエータ43へ流入する冷却水の温度でもあるので、走行用電動モータMGの冷却水通路出口側からラジエータ43の冷却水入口側へ至る範囲の冷却水温度を検出するように配置されていてもよい。
【0144】
さらに、制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、車両用空調装置の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ等が設けられている。
【0145】
なお、制御装置は、圧縮機11の電動モータ11b等を制御する制御手段が一体に構成され、これらの作動を制御するものであるが、本実施形態では、制御装置のうち、各制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御対象機器の制御手段を構成している。例えば、圧縮機11の作動を制御する構成が吐出能力制御手段を構成し、熱媒体流量調整手段である冷却水ポンプ41の作動を制御する構成が熱媒体流量制御手段を構成している。
【0146】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。図示しない車両起動スイッチが投入(ON)された状態で、操作パネルの車両用空調装置の作動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が予め記憶回路に記憶されている空調制御用のプログラムを実行する。このプログラムが実行されると、制御装置が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。
【0147】
そして、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、制御装置の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
【0148】
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置に記憶された制御マップを参照して、冷媒蒸発器16の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。
【0149】
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された冷媒蒸発器16からの吹出空気温度Teとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて冷媒蒸発器16からの吹出空気温度が目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
【0150】
また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、目標吹出温度TAOおよび冷媒蒸発器16からの吹出空気温度に基づいて、予め制御装置に記憶された制御マップを参照して、車室内へ吹き出される空気の温度が車室内温度設定スイッチによって設定された乗員の所望の温度となるように決定される。
【0151】
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。
【0152】
従って、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された吐出冷媒が冷媒放熱器12へ流入して、送風ファン13から送風された外気と熱交換して放熱する。なお、本発明者の試験検討によれば、このヒートポンプサイクル10では、通常運転時には、吐出冷媒の圧力が基準冷媒圧力P1(具体的には、約1.5MPa)以上となり、この際の冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度(壁面温度)は、圧縮機11から吐出された高温冷媒によって、60℃〜65℃程度まで上昇することが判っている。
【0153】
冷媒放熱器12から流出した冷媒は、レシーバ14にて気液分離される。レシーバ14から流出した液相冷媒は、温度式膨張弁15にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。この際、温度式膨張弁15では、冷媒蒸発器16出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定範囲の値となるように弁開度が調整される。
【0154】
温度式膨張弁15にて減圧膨張された低圧冷媒は、冷媒蒸発器16へ流入して、送風機32によって送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内へ送風される送風空気が冷却される。冷媒蒸発器16から流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0155】
一方、冷媒蒸発器16にて冷却された送風空気(冷風)は、エアミックスドア34の開度に応じた風量の送風空気(冷風)が電気ヒータ36にて加熱され、混合空間35にて電気ヒータ36を迂回して流れた送風空気と混合されて温度調整される。そして、温度調整された空調風が、混合空間35から各吹出口を介して車室内に吹き出される。
【0156】
この車室内に吹き出される空調風によって車室内の内気温が外気温より低く冷やされる場合には、車室内の冷房が実現され、内気温が外気温より高く加熱される場合には、車室内の暖房が実現されることになる。
【0157】
次に、冷却水循環回路40の冷却水ポンプ41の作動について説明する。前述の如く、本実施形態のハイブリッド車両では、制御装置が車両の走行負荷等に応じて、エンジンあるいは走行用電動モータMGを作動させる。走行用電動モータMGは作動時に発熱を伴う車載機器なので、制御装置が走行用電動モータMGを作動させることによって、冷却水の温度が上昇する。
【0158】
さらに、走行用電動モータMGの温度(冷却水温度)は、走行用電動モータMGの内部に封入された潤滑用オイルの粘度増加によるフリクションロスを低減するために設定された最低保護温度Tlw(本実施形態では、60℃)以上となり、走行用電動モータMGのオーバーヒートを抑制するために設定された最高保護温度Thi(本実施形態では、65℃)以下となっていることが望ましい。
【0159】
そこで、本実施形態では、走行用電動モータMGが作動している際には、冷却水温度センサによって検出された冷却水温度Twが最低保護温度Tlw以上、かつ、最高保護温度Thi以下となるように、制御装置が冷却水ポンプ41の作動を制御する。
【0160】
具体的には、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際には、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量としてラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を減少させ、最高保護温度Thiを超えた際には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量として流入流量を増加させる。これにより、走行用電動モータMGが作動している際には、冷却水温度Twは、最低保護温度Tlw〜最高保護温度Thiの範囲に制御される。
【0161】
なお、走行用電動モータMGの作動時であって、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際には、ラジエータ43における冷却水の放熱を抑制するために、冷却水ポンプ41の作動を停止させることが望ましい。ところが、冷却水ポンプ41の作動を完全に停止させてしまうと、冷却水温度センサが走行用電動モータMGの冷却水通路から流出した冷却水温度Twの変化を適切に検出できなくなってしまう。
【0162】
そこで、本実施形態では、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とする際には、冷却水温度センサが冷却水通路から流出した冷却水温度Twの変化を適切に検出できる程度であって、ラジエータ43にて冷却水と外気との熱交換が殆ど行われない程度の流入流量としている。また、大流量とする際には、ラジエータ43にて冷却水と外気、あるいは、冷却水と吐出冷媒との熱交換を充分に行うことのできる流入流量としている。
【0163】
一方、走行用電動モータMGが作動していない際には、走行用電動モータMGは発熱していないので、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回ることがある。例えば、車両起動直後等には、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを大きく下回る。そこで、本実施形態の制御装置では、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際に、冷却水温度Twに応じて冷却水ポンプ41の吐出流量を変化させている。
【0164】
具体的には、吐出冷媒の圧力が前述の基準冷媒圧力P1以上となっており、冷却水温度Twが予め定めた第2基準温度T2(具体的には、50℃)以上、かつ、予め定めた第1基準温度T1(具体的には、60℃)以下となっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とし、さらに、冷却水温度Twが第2基準温度T2よりも低い温度になっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量としている。
【0165】
なお、本実施形態では、第1基準温度T1を最低保護温度Tlwと同じとしているが、この第1基準温度T1は、冷媒放熱器12へ流入する吐出冷媒の温度(例えば、吐出冷媒の取り得る温度範囲の最大値)よりも低い値であって、ラジエータ43へ流入する外気の温度よりも高い値に設定すればよい。また、第2基準温度T2は、第1基準温度T1よりも低い温度に設定すればよい。
【0166】
本実施形態では、以上の如く、制御装置が冷却水ポンプ41の作動を制御することによって、熱交換器構造体50では、以下のような熱交換が行われることになる。熱交換器構造体50における冷媒、冷却水および空気(外気)の熱交換については、図5〜図8を用いて説明する。
【0167】
(A)最低保護温度Tlw<冷却水温度Tw≦最高保護温度Thiの場合
まず、冷却水温度Twが最低保護温度Tlw(60℃)より高く、かつ、最高保護温度Thi(65℃)以下となっている際の熱交換器構造体50における冷媒、冷却水および空気(外気)の熱交換については、図5、図6を用いて説明する。
【0168】
なお、図5(a)は、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aの表面温度(壁面温度)が65℃となっており、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度(壁面温度)が65℃となっており、さらに、外気温が35℃となっている際のアウターフィン50bにおける温度分布のシミュレーション結果を三次元的に示した温度分布図であり、(b)は、同温度条件における外気の流れ方向Xから見た際のアウターフィン50bにおける温度分布を模式的に表した説明図である。
【0169】
また、図6は、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aの表面温度が60℃となり、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度が65℃となっている際の図5と同様の温度分布図(a)と説明図(b)である。さらに、図5、図6では、熱の移動を破線矢印で示している。
【0170】
図5に示すように、熱媒体用チューブ43aの表面温度と冷媒用チューブ12aの表面温度が同じとなっている際には、冷却水の有する熱と圧縮機11から吐出された吐出冷媒の有する熱がアウターフィン50bを介して外気通路50aを流れる外気に放熱される。この際、アウターフィン50bのうち、熱媒体用チューブ43a側の50%が冷却水の有する熱を外気に放熱させるために利用され、残余の冷媒用チューブ12a側の50%が吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用される。
【0171】
また、図6に示すように、熱媒体用チューブ43aの表面温度と冷媒用チューブ12aの表面温度が5℃の差があっても、冷却水の有する熱と吐出冷媒の有する熱がアウターフィン50bを介して外気に放熱される。この際、アウターフィン50bのうち、熱媒体用チューブ43a側の65%程度が冷却水の有する熱を外気に放熱させるために利用され、残余の冷媒用チューブ12a側の35%程度が吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用される。
【0172】
つまり、冷却水温度Twが60℃より高く、かつ、65℃以下となっている際のように、熱媒体用チューブ43aの表面温度と冷媒用チューブ12aの表面温度との温度差が所定温度差(本実施形態では、5℃)以下になっていれば、アウターフィン50bのうち、冷却水の有する熱を外気に放熱させるために利用される範囲と冷媒の有する熱を外気に放熱させる範囲が温度差に応じて調整されて、冷却水の有する熱および吐出冷媒の有する熱が適切に外気に放熱される。
【0173】
すなわち、冷媒放熱器12では、吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させることができ、ラジエータ43では、冷却水の有する熱を外気に放熱させることができる。その結果、複数種の流体間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0174】
(B)第2基準温度T2≦冷却水温度Tw≦第1基準温度T1の場合
次に、吐出冷媒の圧力が前述の基準冷媒圧力P1以上となっており、さらに、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)以上となっており、かつ、第1基準温度T1(60℃)以下となっている際の熱交換器構造体50における冷媒、冷却水および空気(外気)の熱交換について、図7を用いて説明する。
【0175】
なお、図7は、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aの表面温度が55℃となっており、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度が65℃となっている際の図5と同様の温度分布図(a)と説明図(b)である。
【0176】
図7に示すように、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)以上となっており、かつ、第1基準温度T1(60℃)以下となっている際には、冷却水ポンプ41の吐出流量が小流量となり、実質的に冷却水ポンプ41の作動が停止しているので、冷却水の有する極僅かな熱が外気に放熱され、吐出冷媒の有する熱が外気に放熱される。つまり、アウターフィン50bのほぼ全域(99%)が吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用される。
【0177】
従って、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下となって、吐出冷媒の温度と冷却水の温度との温度差が拡大しても、吐出冷媒と冷却水との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒の有する熱を外気へ効率的に放熱させることができる。
【0178】
すなわち、冷媒放熱器12では、吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させることができ、ラジエータ43では、冷却水と外気あるいは冷却水と吐出冷媒との熱交換を抑制できる。その結果、複数種の流体間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0179】
(C)冷却水温度Tw<第2基準温度T2の場合
次に、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)を下回っている際の熱交換器構造体50における冷媒、冷却水および空気(外気)の熱交換について、図8を用いて説明する。なお、図8は、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aの表面温度が45℃となり、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aの表面温度が65℃となっている際の図5と同様の温度分布図(a)と説明図(b)である。
【0180】
図8に示すように、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)を下回っている際には、冷却水ポンプ41の吐出流量が大流量となるものの、冷却水の有する熱が外気に放熱されることはなく、吐出冷媒の有する熱が外気に放熱されるとともに、ラジエータ43にて、冷却水と吐出冷媒との熱交換がなされる。この際、吐出冷媒側からは、冷却水循環回路40全体の熱量分の吐出冷媒が有する熱量を冷却水側へ移動させることができるため、吐出冷媒と冷却水の温度差が大きく、かつ、冷却水の温度が低い場合、吐出冷媒の有する熱を非常に多く冷却水循環回路40側へ移動させることができる。
【0181】
つまり、アウターフィン50bの全域が吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用されるとともに、アウターフィン50bを介して、吐出冷媒の有する熱が冷却水へも放熱される。従って、冷却水温度Twが第2基準温度T2を下回って、吐出冷媒と冷却水との温度差が大幅に拡大した際には、吐出冷媒と冷却水との熱交換を促進させて、吐出冷媒の有する熱を外気および冷却水の双方に放熱させることができ、結果として吐出冷媒側の熱交換量(放熱量)を大きくすることができる。
【0182】
特に、車両起動時に行うクールダウン運転時等において有効である。すなわち、走行用電動モータMGの発熱量が小さく、冷却水の温度が低い場合、冷却水循環回路40における走行用電動モータMGの冷却性能は必要とされないが、ヒートポンプサイクル10側では、最大冷房能力で運転する必要があるため、吐出冷媒の有する熱をより多く放熱することができることで、効率的な空調運転を実現できるからである。
【0183】
以上の如く、本実施形態では、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。特に、吐出冷媒と冷却水との温度差が拡大した際に、吐出冷媒と冷却水との熱交換を促進させて、吐出冷媒の放熱量を増大できることは、ヒートポンプサイクル10の冷凍能力を増大できる点で極めて有効である。
【0184】
従って、第2基準温度T2については、第1基準温度T1よりも低い温度であって、かつ、吐出冷媒と冷却水との熱交換を促進させた際に、吐出冷媒の放熱量を増大させてヒートポンプサイクル10の冷凍能力を増大できる温度に設定すればよい。
【0185】
さらに、本実施形態では、制御装置が吐出冷媒の圧力が基準冷媒圧力P1以上となっている際に、冷却水の流量を低下させるので、吐出冷媒の温度が確実に60℃〜65℃程度となり、冷却水温度Twが第2基準温度T2(50℃)を下回っている際に、吐出冷媒の温度と冷却水の温度との温度差を充分に確保することができる。
【0186】
さらに、本実施形態では、冷媒放熱器12およびラジエータ43を熱交換器構造体50として構成しているので、極めて容易に、吐出冷媒と冷却水との間の熱移動を可能とすることができる。
【0187】
しかも、吐出冷媒と冷却水との間の熱移動は、アウターフィン50bを介して行われるので、吐出冷媒の有する熱はアウターフィン50bに伝熱する際に冷却水よりも外気に放熱されやすくなる。従って、冷却水の流入流量を減少させた際に、吐出冷媒の有する熱を効率的に外気に放熱することができる。
【0188】
(第2実施形態)
本実施形態では、図9の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して冷却水循環回路40の構成を変更している。具体的には、この冷却水循環回路40には、冷却水ポンプ41、ラジエータ43の他に、電気式の三方弁42、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流すバイパス通路44が設けられている。なお、図9では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
【0189】
三方弁42は、冷却水ポンプ41の入口側とラジエータ43の出口側とを接続して冷却水をラジエータ43へ流入させる熱媒体回路、および、冷却水ポンプ41の入口側とバイパス通路44の出口側とを接続して冷却水をラジエータ43を迂回させて流す熱媒体回路を切り替える機能を果たす。また、この三方弁42は、制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
【0190】
つまり、本実施形態の冷却水循環回路40では、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→ラジエータ43→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる熱媒体回路と、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→バイパス通路44→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる熱媒体回路とを切り替えることができる。
【0191】
そして、三方弁42が、冷却水をラジエータ43を迂回させて流す熱媒体回路に切り替えると、冷却水はラジエータ43へ流入しなくなる。すなわち、ラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を減少させることができる。従って、本実施形態の三方弁42は、熱媒体流量調整手段を構成している。
【0192】
さらに、本実施形態では、車両起動スイッチが投入(ON)されると、制御装置が予め定めた所定吐出流量となるように、冷却水ポンプ41を作動させる。そして、走行用電動モータMGが作動している際には、冷却水温度Twが最低保護温度Tlw以上、かつ、最高保護温度Thi以下となるように、制御装置が三方弁42の作動を制御する。
【0193】
具体的には、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際には、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流す熱媒体回路に切り替え、最高保護温度Thiを超えた際には、ラジエータ43に冷却水を流入させる熱媒体回路に切り替える。なお、本実施形態では、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流す熱媒体回路に切り替えても冷却水ポンプ41の吐出流量を変化させないので、冷却水温度Twの変化を確実に検出できる。
【0194】
さらに、走行用電動モータMGが作動していない際には、吐出冷媒の圧力が前述の基準冷媒圧力P1以上となっており、冷却水温度Twが第1実施形態と同様に決定された第2基準温度T2以上、かつ、第1実施形態と同様に決定された第1基準温度T1以下となっている場合に、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流す熱媒体回路に切り替え、さらに、冷却水温度Twが第2基準温度T2よりも低い温度になっている場合には、ラジエータ43に冷却水を流入させる熱媒体回路に切り替える。
【0195】
その他の構成および作動は第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の熱交換システムにおいても、第1実施形態の熱交換システムと実質的に同様に作動させることができ、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0196】
(第3実施形態)
本実施形態では、図10の全体構成図に示すように、第2実施形態のヒートポンプサイクル10の構成を変更している。本実施形態のヒートポンプサイクル10では、車室内へ送風される送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房運転(加熱運転)および送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転(冷却運転)における冷媒回路を切替可能に構成されている。
【0197】
具体的には、本実施形態の圧縮機11の冷媒吐出口には、室内凝縮器37の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器37は、車両用空調装置1の室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する高温高圧冷媒と冷媒蒸発器16通過後の車室内送風空気とを熱交換させる加熱手段(加熱用熱交換器)である。従って、本実施形態では、電気ヒータ36を廃止している。
【0198】
室内凝縮器37の冷媒出口側には、暖房運転時に室内凝縮器37から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房運転用の減圧手段としての暖房用固定絞り17が接続されている。この暖房用固定絞り17としては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用できる。暖房用固定絞り17の出口側には、冷媒放熱器12の冷媒入口側が接続されている。
【0199】
なお、本実施形態では、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路を切り替えることによって、冷房運転時には冷媒の有する熱を外気へ放熱させる放熱用熱交換器として冷媒放熱器12を機能させ、暖房運転時には、冷媒に外気の有する熱を吸熱させる吸熱用熱交換器として冷媒放熱器12を機能させる。そこで、本実施形態の以下の説明では、「冷媒放熱器12」を「室外熱交換器12」と表現する。
【0200】
さらに、室内凝縮器37の冷媒出口側には、室内凝縮器37から流出した冷媒を、暖房用固定絞り17を迂回させて室外熱交換器12側へ導く固定絞り迂回用通路17aが接続されている。この固定絞り迂回用通路17aには、固定絞り迂回用通路17aを開閉する開閉弁17bが配置されている。開閉弁17bは、制御装置から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0201】
また、冷媒が開閉弁17bを通過する際に生じる圧力損失は、固定絞り17を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、室内凝縮器37から流出した冷媒は、開閉弁17bが開いている場合には固定絞り迂回用通路17a側を介して室外熱交換器12へ流入し、開閉弁17bが閉じている場合には暖房用固定絞り17を介して室外熱交換器12へ流入する。
【0202】
これにより、開閉弁17bは、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の開閉弁17bは、冷媒流路切替手段としての機能を果たす。なお、このような冷媒流路切替手段としては、室内凝縮器37出口側と暖房用固定絞り17入口側とを接続する冷媒回路および室内凝縮器37出口側と固定絞り迂回用通路17a入口側とを接続する冷媒回路を切り替える電気式の三方弁等を採用してもよい。
【0203】
室外熱交換器12の出口側には、電気式の三方弁17cが接続されている。この三方弁17cは、制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、上述した開閉弁17bとともに、冷媒流路切替手段を構成している。
【0204】
より具体的には、三方弁17cは、暖房運転時には、室外熱交換器12の出口側と後述するアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時には、室外熱交換器12の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0205】
冷房用固定絞り19は、冷房運転時に室外熱交換器12から流出した冷媒を減圧膨張させる冷房運転用の減圧手段であり、その基本的構成は、暖房用固定絞り17と同様である。さらに、冷房用固定絞り19の出口側には、冷媒蒸発器16の冷媒入口側が接続され、冷媒蒸発器16の冷媒出口側には、アキュムレータ18の入口側が接続されている。
【0206】
アキュムレータ18は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える低圧側冷媒用の気液分離器である。アキュムレータ18の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入側が接続されている。従って、このアキュムレータ18は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されてしまうことを抑制して、圧縮機11の液圧縮を防止する機能を果たす。その他の構成は、第2実施形態と同様である。
【0207】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態の車両用空調装置1では、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路を切り替えることによって、車室内を暖房する暖房運転(加熱運転)および車室内を冷房する冷房運転(冷却運転)を行うことができる。
【0208】
まず、暖房運転について説明する。暖房運転は、図示しない車両起動スイッチが投入(ON)された状態で、操作パネルの車両用空調装置の作動スイッチが投入(ON)され、さらに、操作パネルに設けられた選択スイッチによって暖房運転モードが選択されると開始される。
【0209】
暖房運転時には、制御装置が、開閉弁17bを閉じるとともに、三方弁17cを室外熱交換器12の出口側とアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10は、図10の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。
【0210】
この冷媒流路の構成で、制御装置が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。そして、第1実施形態と同様に、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、制御装置の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
【0211】
そして、決定された作動状態が得られるように制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。
【0212】
そして、暖房運転時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が室内凝縮器37へ流入する。室内凝縮器37へ流入した冷媒は、送風機32から送風されて冷媒蒸発器16を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する。これにより、車室内送風空気が加熱される。
【0213】
室内凝縮器37から流出した高圧冷媒は、開閉弁17bが閉じているので、暖房用固定絞り17へ流入して減圧膨張される。暖房用固定絞り17にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換器12へ流入する。室外熱交換器12へ流入した低圧冷媒は、送風ファン13によって送風された外気から吸熱して蒸発する。
【0214】
室外熱交換器12から流出した冷媒は、三方弁17cが、室外熱交換器12の出口側とアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、アキュムレータ18へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ18にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0215】
この際、冷却水循環回路40では、走行用電動モータMGの作動時には、第2実施形態と同様に、冷却水温度Twが最低保護温度Tlw以上、かつ、最高保護温度Thi以下となるように三方弁42の作動が制御される。従って、走行用電動モータMGが作動している際には、室外熱交換器12へ流入した低圧冷媒は、アウターフィン50bを介して冷却水の有する熱を効率的に吸熱することができる。
【0216】
また、走行用電動モータMGが作動していない時であって、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwよりも低く、かつ、冷媒温度センサによって検出された室外熱交換器12における冷媒温度が0℃より高くなっている際に、制御装置が三方弁42の作動を制御して、ラジエータ43を迂回させて冷却水を流す熱媒体回路に切り替える。
【0217】
従って、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwよりも低く、かつ、冷媒温度センサによって検出された室外熱交換器12における冷媒温度が0℃より高くなっている際には、冷却水が室外熱交換器12を流通する冷媒に放熱することや、冷却水が室外熱交換器12を流通する冷媒から吸熱することはない。
【0218】
一方、走行用電動モータMGが作動していない時であって、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwより低く、かつ、冷媒温度センサによって検出された室外熱交換器12における冷媒温度が0℃以下の場合には、室外熱交換器12の外表面に着霜が生じている可能性があるので、制御装置が三方弁42の作動を制御して、ラジエータ43へ冷却水を流入させる熱媒体回路へ切り替える。
【0219】
これにより、冷却水の有する熱がアウターフィン50bを介して室外熱交換器12へ伝熱され、室外熱交換器12の除霜を行うことができる。
【0220】
次に、冷房運転について説明する。冷房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって冷房運転モードが選択されると開始される。冷房運転時には、制御装置が、開閉弁17bを開くとともに、三方弁17cを室外熱交換器12の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0221】
これにより、ヒートポンプサイクル10は、図10の破線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。つまり、第1、第2実施形態と同等の冷媒流路構成に切り替えられる。さらに、冷房運転時には、制御装置が第2実施形態と同様に、各制御対象機器の作動を制御する。
【0222】
従って、本実施形態の熱交換システムにおいても、第2実施形態と同様に、冷房運転時に、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0223】
(第4実施形態)
第1実施形態では、制御装置が、吐出冷媒の圧力が基準冷媒圧力P1以上となっており、冷却水温度Twが第2基準温度T2以上、かつ、第1基準温度T1以下となっている場合に、冷却水ポンプ41の吐出流量を減少させた例について説明したが、本実施形態では、制御装置による冷却水ポンプ41の制御態様を変更している。なお、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0224】
まず、本実施形態では、走行用電動モータMGが作動している際には、第1実施形態と同様に、冷却水温度センサによって検出された冷却水温度Twが最低保護温度Tlw以上、かつ、最高保護温度Thi以下となるように、制御装置が冷却水ポンプ41の作動を制御する。
【0225】
一方、走行用電動モータMGが作動していない際には、冷却水温度Twが第3基準温度T3以上、かつ、第1実施形態と同様に決定された第1基準温度T1(具体的には、60℃)以下となっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とし、さらに、冷却水温度Twが第1基準温度T1よりも低い温度になるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させている。
【0226】
さらに、冷却水温度Twが第3基準温度T3よりも低い温度になっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量としている。また、第3基準温度T3は、吐出圧力センサおよび冷媒温度センサによって検出された圧縮機11吐出冷媒圧力および冷媒放熱器12における冷媒温度に基づいて求められる冷媒放熱器12における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた所定温度ΔT(本実施形態では、10℃)を減算した値としている。
【0227】
なお、本実施形態では、より正確な冷媒放熱器12における吐出冷媒の飽和温度を求めるために、吐出圧力センサおよび冷媒温度センサの双方のセンサの検出値を用いているが、もちろん、吐出圧力センサおよび冷媒温度センサのうちいずれか一方のみを採用して飽和温度を求めてもよい。
【0228】
従って、本実施形態では、図11の説明図に示すように、冷却水ポンプ41の作動が制御されて、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換が行われる。
【0229】
具体的には、走行用電動モータMGが作動している際、すなわち、図11の斜線ハッチングに示す領域では、冷却水温度Twが最低保護温度Tlw〜最高保護温度Thiの範囲に制御されるので、第1実施形態の「(A)最低保護温度Tlw<冷却水温度Tw≦最高保護温度Thiの場合」の欄で説明したように、冷却水の有する熱および吐出冷媒の有する熱が適切に外気に放熱される。
【0230】
また、冷却水温度Twが第3基準温度T3以上であって、かつ、第1基準温度T1以下になっている際、すなわち、図11の網掛ハッチングに示す領域では、冷却水ポンプ41の吐出流量が低下するので、第1実施形態の「(B)第2基準温度T2≦冷却水温度Tw≦第1基準温度T1の場合」の欄で説明したように、アウターフィン50bが吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるために利用され、吐出冷媒の有する熱を外気へ効率的に放熱させることができる。
【0231】
この際、第3基準温度T3が冷媒放熱器12における吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した値として設定されているので、冷媒放熱器12における吐出冷媒の温度に応じて第3基準温度T3を設定できる。つまり、冷媒放熱器12における吐出冷媒の温度が低くなるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を減少させる温度範囲、すなわち第3基準温度T3と第1基準温度T1との温度差を拡大することができる。
【0232】
従って、吐出冷媒の温度が低くなり、吐出冷媒の有する熱によって熱交換対象流体を加熱しにくくなるに伴って、第3基準温度T3と第1基準温度T1との温度差を拡大することができ、より一層、吐出冷媒と冷却水との不必要な熱交換を抑制して、吐出冷媒と外気との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0233】
さらに、本実施形態では、冷却水温度Twが第1基準温度T1以下となって、さらに温度低下するに伴って、冷却水をラジエータ43へ流入させる流入流量を徐々に増加させるので、第1実施形態の「(C)冷却水温度Tw<第2基準温度T2の場合」の欄で説明したように、吐出冷媒の有する熱を外気に放熱させるだけでなく、冷却水にも放熱させて吐出冷媒の放熱量を徐々に増大させることができる。
【0234】
また、冷却水温度Twが第3基準温度T3より下回った際、すなわち、図11の点ハッチングに示す領域では、再び冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とするので、第1実施形態の「(C)冷却水温度Tw<第2基準温度T2の場合」の欄で説明したように、吐出冷媒と冷却水との熱交換を促進させ、吐出冷媒の有する熱を外気および冷却水の双方に放熱させて、吐出冷媒の放熱量を増大させることができる。
【0235】
以上の如く、本実施形態では、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。さらに、第3基準温度T3を冷媒放熱器12における吐出冷媒の温度に応じて第3基準温度T3を設定しているので、ヒートポンプサイクル10の作動状態が変化しても、複数種の流体間で適切な熱交換を行うことができる。
【0236】
なお、本実施形態の冷却水ポンプ41の制御のうち、冷却水温度Twが第1基準温度T1よりも低い温度になるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させる制御を廃止してもよい。
【0237】
つまり、冷却水温度Twが第3基準温度T3以上、かつ、第1実施形態と同様に決定された第1基準温度T1(具体的には、60℃)以下となっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とし、冷却水温度Twが第3基準温度T3よりも低い温度になっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とする制御を行うようにしてもよい。
【0238】
また、本実施形態の冷却水ポンプ41の制御のうち、冷却水温度Twが第3基準温度T3よりも低い温度になっている場合には、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とする制御を廃止してもよい。
【0239】
つまり、冷却水温度Twが第1基準温度T1(具体的には、60℃)以下となっている場合には、一旦、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量に減少させて、その後、冷却水温度Twが第1基準温度T1よりもさらに低い温度になるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させる制御を行うようにしてもよい。
【0240】
また、本実施形態にて説明した制御態様を第2、第3実施形態の車両用空調装置1に適用してもよい。この場合は、第2、第3実施形態の三方弁42を廃止して、ラジエータ43へ流入させる流入流量とバイパス通路44へ流入させる迂回流量との流量比を調整する流量調整弁を採用すればよい。
【0241】
そして、制御装置が流量調整弁の作動を制御して、本実施形態にて説明した制御態様と同様にラジエータ43へ流入させる冷却水の流入流量を変化させることで、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0242】
(第5実施形態)
本実施形態では、図12の熱交換器構造体50の模式的な一部分解斜視図に示すように、熱交換器構造体50の構成を変更している。
【0243】
本実施形態の冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12aおよびラジエータ43の熱媒体用チューブ43aは、長手方向垂直断面の形状が偏平形状の偏平チューブが採用されている。そして、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aが、それぞれ送風ファン13によって送風された外気の流れ方向Xに沿って2列配置されている。
【0244】
図13は、熱交換器構造体50のヘッダタンク部長手方向の模式的な断面図である。なお、図13では、図示の明確化のため、冷媒用チューブ12aを点ハッチングとし、熱媒体用チューブ43aを網掛ハンチングで示している。
【0245】
図13に示すように、各チューブ12a、43aにおける外気の流れ方向Xの上流側(風上側)に位置する上流側チューブ群50cは、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの外表面の平坦面同士が互いに平行に、かつ、対向するように所定の間隔をあけて交互に積層配置されている。同様に、各チューブ12a、43aにおける外気の流れ方向Xの下流側(風下側)に位置する下流側チューブ群50dについても、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aが所定の間隔をあけて交互に積層配置されている。
【0246】
冷媒用チューブ12aと熱媒体用チューブ43aとの間に形成される空間は、送風ファン13によって送風された外気が流通する外気通路50a(第3流体通路)を形成している。この外気通路50aには、アウターフィン50bが配置されている。
【0247】
次に、冷媒用ヘッダタンク部12bおよび熱媒体用ヘッダタンク部43bについて説明する。これらタンク部12b、43bの基本構成は同様である。冷媒用ヘッダタンク部12bは、2列に配置された冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの双方が固定される冷媒側固定プレート部材121、冷媒側固定プレート部材121に固定される冷媒側中間プレート部材122、および冷媒側タンク形成部材123を有している。
【0248】
冷媒側中間プレート部材122には、冷媒側固定プレート部材121に固定されることで、冷媒側固定プレート部材121との間に熱媒体用チューブ43aに連通する複数の空間を形成する複数の凹み部122bが形成されている。この空間は、外気の流れ方向Xに2列並んだ熱媒体用チューブ43a同士を互いに連通させる連通空間としての機能を果たす。
【0249】
また、冷媒側中間プレート部材122のうち、冷媒用チューブ12aに対応する部位には、その表裏を貫通する連通穴122aが設けられ、この連通穴122aには冷媒用チューブ12aが貫通している。これにより、冷媒用チューブ12aが冷媒側タンク形成部材123に形成される空間に連通している。
【0250】
冷媒側タンク形成部材123は、冷媒側固定プレート部材121および冷媒側中間プレート部材122に固定されることによって、その内部に冷媒の集合を行う集合空間123a、および冷媒の分配を行う分配空間123bを形成するものである。具体的には、冷媒側タンク形成部材123は、平板金属にプレス加工を施すことで、その長手方向から見たとき、二山状(W字状)に形成されている。
【0251】
そして、冷媒側タンク形成部材123の二山状の中央部が冷媒側中間プレート部材122に接合されることで、集合空間123aおよび分配空間123bが区画されている。この中央部は、冷媒側中間プレート部材122に形成された凹み部122bに適合する形状に形成され、集合空間123aおよび分配空間123bは、冷媒側固定プレート部材121および冷媒側中間プレート部材122の接合部位から内部の冷媒が漏れないように区画されている。
【0252】
さらに、冷媒用チューブ12aは、冷媒側中間プレート部材122の連通穴122aを貫通して、冷媒側タンク形成部材123の内部に形成される集合空間123aまたは分配空間123bへ突出していることにより、外気の流れ方向Xの風上側に配置された冷媒用チューブ12aが集合空間123aに連通し、外気の流れ方向Xの風下側に配置された冷媒用チューブ12aが分配空間123bに連通している。
【0253】
一方、熱媒体用ヘッダタンク部43bについても、冷媒用ヘッダタンク部12bと同様の構成の熱媒体側固定プレート部材431、熱媒体側固定プレート部材431に固定される熱媒体側中間プレート部材432、並びに、熱媒体側タンク形成部材433を有している。
【0254】
さらに、熱媒体側固定プレート部材431と熱媒体側中間プレート部材432との間には、熱媒体側中間プレート部材432に設けられた凹み部432bによって、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷媒用チューブ12a同士を互いに連通させる冷媒用連通空間が形成されている。
【0255】
また、熱媒体側中間プレート部材432のうち熱媒体用チューブ43aに対応する部位にはその表裏を貫通する連通穴432aが設けられ、この連通穴432aには熱媒体用チューブ43aが貫通している。
【0256】
さらに、熱媒体側タンク形成部材433は、熱媒体側固定プレート部材431および熱媒体側中間プレート部材432に固定されることによって、内部に熱媒体側タンク形成部材433の中央部によって区画された冷却水の集合空間433aおよび冷却水の分配空間433bを形成している。なお、本実施形態では、外気の流れ方向Xの風上側に分配空間433bが配置され、外気の流れ方向Xの風下側に集合空間433aが配置されている。
【0257】
従って、本実施形態の熱交換器構造体50では、冷媒側ヘッダタンク部12bの分配空間123bへ流入した冷媒が、2列に並んだ冷媒用チューブ12aのうち、外気の流れ方向Xの風下側に配列された各冷媒用チューブ12aへ流入する。
【0258】
そして、風下側に配列された各冷媒用チューブ12aから流出した冷媒が、熱媒体用ヘッダタンク部43bの熱媒体側固定プレート部材431と熱媒体側中間プレート部材432との間に形成された冷媒用連通空間を介して、外気の流れ方向Xの風上側に配列された各冷媒用チューブ12aへ流入する。
【0259】
さらに、風上側に配列された各冷媒用チューブ12aから流出した冷媒は、冷媒側ヘッダタンク部12bの集合空間123aにて集合して、外部に流出していく。つまり、本実施形態の熱交換器構造体50では、冷媒が、風下側の冷媒用チューブ12a→熱媒体用ヘッダタンク部43bの冷媒用連通空間→風上側の冷媒用チューブ12aの順にUターンしながら流れることになる。
【0260】
同様に、冷却水については、風上側の熱媒体用チューブ43a→冷媒側ヘッダタンク部12bの冷却媒体用連通空間→風下側の熱媒体用チューブ43aの順にUターンしながら流れることになる。従って、隣り合う冷媒用チューブ12aを流通する冷媒と熱媒体用チューブ43aを流通する冷却水とは、その流れ方向が互いに対向する方向となる。
【0261】
なお、冷媒側中間プレート部材122を挟み込んだ状態で冷媒側固定プレート部材121と冷媒側タンク形成部材133がかしめによって固定され、また、熱媒体側中間プレート部材432を挟み込んだ状態で熱媒体側固定プレート部材431と熱媒体側タンク形成部材433が、かしめによって固定されている。
【0262】
さらに、かしめ固定された状態の熱交換器構造体50全体を加熱炉内へ投入して加熱し、各構成部品表面に予めクラッドされたろう材を融解させ、さらに、再びろう材が凝固するまで冷却することで、各構成部品が一体にろう付けされる。これにより、冷媒放熱器12とラジエータ43とが一体化されている。
【0263】
その他のヒートポンプサイクル10の構成および作動については、上述の各実施形態と同様である。従って、本実施形態の熱交換器構造体50を用いた熱交換システムにおいても、上述の各実施形態の熱交換システムと同様に、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
(第6実施形態)
本実施形態では、熱交換器構造体50に流入する吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTの拡大によって、熱交換器構造体50にて各流体(冷媒、冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことが困難となることに着眼し、上述の各実施形態に対して制御装置による冷却水ポンプ41の制御態様を変更している。なお、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成は、第1実施形態の図1と同様である。
【0264】
本実施形態では、吐出冷媒の温度TT1、冷却水の温度TT2との温度差ΔTT、および吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTに応じて、冷却水ポンプ41の吐出流量を変化させている。
【0265】
図14は、本実施形態に係る制御装置が実行する冷却水ポンプ41の吐出流量制御の流れを示すフローチャートである。図14に示す制御ルーチンは、操作パネルの車両用空調装置の作動スイッチが投入されると実行される。
【0266】
図14に示すように、制御装置では、吐出冷媒温度センサの検出信号や冷却水温度センサの検出信号といった各種信号を読み込む(S100)。そして、ステップS100にて読み込んだ吐出冷媒温度センサの検出信号や冷却水温度センサの検出信号から吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTT(絶対値)を算出する(S110)。
【0267】
続いて、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上であるか否かを判定する(S120)。ここで、基準温度差ΔTTthとしては、例えば、第1実施形態で説明した第1基準温度T1と第2基準温度T2との温度差(10℃)程度に設定されている。
【0268】
ステップS120の判定処理の結果、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTthより小さいと判定された場合(S120:NO)には、冷却水ポンプ41の吐出流量が中間流量G2となるように制御して(S130)、吐出冷媒の有する熱および冷却水の有する熱の双方を外気に放熱する。
【0269】
一方、ステップS120の判定処理の結果、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上であると判定された場合(S120:YES)には、さらに、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2以上であるか否かを判定する(S140)。
【0270】
ステップS130の判定処理の結果、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2以上であると判定された場合(S140:YES)には、冷却水ポンプ41の吐出流量が小流量G1となるように制御する(S150)。これにより、ラジエータ43における冷却水と外気との熱交換が抑制されるので、冷却水の温度の上昇を図ることができる。なお、小流量G1は、中間流量G2よりも少ない流量に設定されている(G1<G2)。
【0271】
一方、ステップS130の判定処理の結果、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2よりも低いと判定された場合(S140:NO)には、冷却水ポンプ41の吐出流量が大流量G3となるように制御する(S160)。これにより、ラジエータ43に流入する冷却水が有する熱の外気への放熱を促進して、冷却水の温度の低下を図ることができる。なお、大流量G3は、中間流量G2よりも多い流量に設定されている(G2<G3)。
【0272】
以上説明した本実施形態では、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2以上となり、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となる際に、冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量G1としているので、ラジエータ43における冷却水と外気との熱交換を抑制して、冷却水の温度の上昇を図ることができる。これにより、ラジエータ43へ流入する冷却水の温度TT2と、冷媒放熱器12に流入する吐出冷媒の温度TT1との温度差ΔTTを縮小させることが可能となる。この結果、冷媒放熱器12およびラジエータ43にて、吐出冷媒の有する熱および冷却水の有する熱の双方を外気に放熱させるための適切な熱交換の実現を図ることができる。
【0273】
また、本実施形態では、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2より低くなり、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となる際に、冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量G3としているので、ラジエータ43にて冷却水が有する熱の外気への放熱を促進して、冷却水の温度の低下を図ることができる。これにより、ラジエータ43へ流入する冷却水の温度TT2と、冷媒放熱器12に流入する吐出冷媒の温度TT1との温度差ΔTTを縮小させることが可能となる。この結果、冷媒放熱器12およびラジエータ43にて、吐出冷媒の有する熱および冷却水の有する熱の双方を外気に放熱させるための適切な熱交換の実現を図ることができる。
【0274】
以上の如く、本実施形態では、上述の各実施形態の熱交換システムと同様に、冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒、冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0275】
なお、本実施形態では、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となる際に、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度関係に応じて冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量G1、および大流量G3に変更しているが、これに限定されない。
【0276】
例えば、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となり、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2以上となる際にだけ、冷却水ポンプ41の吐出流量を変更するようにしてもよい。
【0277】
逆に、吐出冷媒の温度TT1と冷却水の温度TT2との温度差ΔTTが予め定められた基準温度差ΔTTth以上となり、吐出冷媒の温度TT1が冷却水の温度TT2より低くなる際にだけ、冷却水ポンプ41の吐出流量を変更するようにしてもよい。
【0278】
(第7実施形態)
本実施形態の図15の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して、熱交換システムの構成を変更している。本実施形態の熱交換システムは、第1実施形態におけるヒートポンプサイクル10および冷却水循環回路40に加えて、ヒートポンプサイクル10の冷媒放熱器12を流通する冷媒を冷却する冷媒用冷却水が循環する第1冷却水循環回路60を備えている。なお、説明の便宜のため、本実施形態では、例えば、走行用電動モータMGを冷却する冷却水をモータ用冷却水とし、当該モータ用冷却水が循環する回路を第2冷却水循環回路40、第2冷却水循環回路40に設けられた冷却水ポンプを第2冷却水ポンプ41、ラジエータ43の熱媒体用チューブを第2熱媒体用チューブ43a等とする。
【0279】
まず、本実施形態のヒートポンプサイクル10について説明すると、ヒートポンプサイクル10の冷媒放熱器12は、第2冷却水循環回路40のラジエータ43と別体で構成されている。具体的には、本実施形態の冷媒放熱器12は、圧縮機11から吐出された吐出冷媒と第1冷却水循環回路60を循環する冷媒用冷却水とを熱交換させて、吐出冷媒の有する熱を冷媒用冷却水に放熱させる水冷式の放熱用熱交換器で構成されている。従って、本実施形態では、送風ファン13を廃止している。
【0280】
第1冷却水循環回路60は、冷媒放熱器12の内部に形成された冷却水流路に、第1熱媒体としての冷媒用冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を流通させて、冷媒放熱器12を流通する冷媒を冷却する第1熱媒体循環回路である。
【0281】
第1冷却水循環回路60には、冷媒放熱器12の冷却水流路に冷媒用冷却水を圧送する第1冷却水ポンプ61が配置されている。この第1冷却水ポンプ61は、電動式の水ポンプであり、制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。
【0282】
また、第1冷却水循環回路60には、冷媒放熱器12の内部に形成された冷却水流路の出口側に第1冷却水用放熱器63が配置されている。この第1冷却水用放熱器63は、冷媒放熱器12から流出した冷媒用冷却水(第1流体)と、後述する送風ファン64から送風された外気(第3流体)と熱交換させて冷媒用冷却水の有する熱を外気に放熱させる放熱用熱交換器である。
【0283】
ここで、送風ファン64は、制御装置から出力される制御電圧によって稼動率、すなわち、回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。また、第1冷却水用放熱器63の入口部には、第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度を検出する冷媒用冷却水温度センサ65が配置されている。
【0284】
このように構成される第1冷却水循環回路60は、制御装置が第1冷却水ポンプ61を作動させると、冷媒用冷却水が、図15の白抜き矢印で示すように、第1冷却水ポンプ61→第1冷却水用放熱器63→冷媒放熱器12→第1冷却水ポンプ61の順に循環する。
【0285】
本実施形態の第1冷却水用放熱器63は、第2冷却水循環回路40のラジエータ43と一体的に構成されており、一体化された第1冷却水用放熱器63およびラジエータ43で熱交換器構造体50を構成している。なお、本実施形態の送風ファン64は、第1冷却水用放熱器63およびラジエータ43の双方に向けて外気を送風する室外送風手段を構成している。
【0286】
本実施形態の熱交換器構造体50は、前述の各実施形態における熱交換器構造体50の冷媒放熱器12の構成部品を第1冷却水用放熱器63の構成部品に変更することで実現可能である。
【0287】
具体的には、前述の各実施形態における冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12a、および冷媒用ヘッダタンク部12bを、第1冷却水用放熱器63における冷媒用冷却水が流通する第1熱媒体用チューブ63a、および第1熱媒体用ヘッダタンク部(図示略)に変更すればよい。例えば、第1冷却水用放熱器63の第1熱媒体用チューブ63aとラジエータ43の第2熱媒体用チューブ43aを、所定の間隔をあけて交互に積層配置し、各チューブ63a、43aとの間に形成される空間によって、送風ファン64によって送風された外気が流通する外気通路50aを形成すればよい。さらに、外気通路50aに、各チューブ63a、43aの外表面同士を接合するように、アウターフィン50bを配置すればよい。
【0288】
ここで、本実施形態では、冷媒用冷却水が第1熱媒体(第1流体)、第1冷却水用放熱器63が第1熱媒体放熱器を構成し、モータ用冷却水が第2熱媒体(第2流体)、ラジエータ43が第2熱媒体放熱器を構成している。また、本実施形態の第2冷却水ポンプ41が第2熱媒体流量調整手段を構成している。
【0289】
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。操作パネルの作動スイッチが投入された状態で、車両用空調装置の作動スイッチが投入されると、制御装置が各制御対象機器の作動を制御する。
【0290】
具体的には、制御装置は、第1実施形態と同様に、ヒートポンプサイクル10の各制御対象機器の作動を制御する。これにより、ヒートポンプサイクル10では、冷媒が図15の実線矢印で示すように流れる。
【0291】
また、第1冷却水循環回路60については、冷媒放熱器12に冷媒用冷却水を圧送するために、制御装置が予め定めた所定吐出流量となるように第1冷却水ポンプ61の作動を制御する。これにより、冷媒用冷却水が、図15の白抜き矢印で示すように流れる。
【0292】
従って、第1冷却水循環回路60では、冷媒用冷却水が冷媒放熱器12を通過する際に、冷媒放熱器12を流通する冷媒から吸熱して、冷媒放熱器12を流通する冷媒を冷却する。さらに、冷媒放熱器12を流通する冷媒から吸熱して昇温した冷媒用冷却水は、第1冷却水用放熱器63へ流入して外気に放熱して冷却される。
【0293】
次に、第2冷却水循環回路40については、制御装置が、ラジエータ43に流入するモータ用冷却水の温度に応じて、所定の吐出流量となるように第2冷却水ポンプ41の作動を制御する。
【0294】
具体的には、本実施形態では、走行用電動モータMGが作動している際には、第1実施形態と同様に、モータ用冷却水の温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際には、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量としてラジエータ43へ流入するモータ用冷却水の流入流量を減少させ、最高保護温度Thiを超えた際には、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量としてモータ用冷却水の流入流量を増加させる。これにより、走行用電動モータMGが作動している際には、モータ用冷却水の温度を、最低保護温度Tlw〜最高保護温度Thiの範囲に制御することができる。
【0295】
また、走行用電動モータMGが作動していない際には、冷媒用冷却水温度センサ65の検出値(第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度)が予め定めた第1熱媒体基準温度Tα(例えば、60℃〜65℃)以上となっており、モータ用冷却水の温度が予め定めた第5基準温度T5(具体的には、50℃)以上、かつ、予め定めた第4基準温度T4(60℃)以下となっている場合には、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量に減少させる。
【0296】
これにより、モータ用冷却水の温度が第4基準温度T4以下となって、冷媒用冷却水の温度とモータ用冷却水の温度との温度差が拡大しても、冷媒用冷却水とモータ用冷却水との不必要な熱交換を抑制して、冷媒用冷却水の有する熱を外気へ効率的に放熱させることができる。
【0297】
さらに、モータ用冷却水の温度が第5基準温度T5よりも低い温度になっている場合には、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とする。これにより、モータ用冷却水の温度が第5基準温度T5を下回って、冷媒用冷却水の温度とモータ用冷却水の温度との温度差が大幅に拡大した際には、冷媒用冷却水とモータ用冷却水との熱交換を促進させて、冷媒用冷却水の有する熱を外気およびモータ用冷却水の双方に放熱させることができる。
【0298】
ここで、本実施形態では、第4基準温度T4を第1実施形態の第1基準温度T1と同様の値とし、第5基準温度T5を第1実施形態の第2基準温度T2と同様の値としている。なお、第4基準温度T4としては、第1冷却水用放熱器63へ流入する冷媒用冷却水の温度(例えば、冷媒用冷却水の取り得る温度範囲の最大値)よりも低い値であって、ラジエータ43に流入する外気の温度よりも低い値に設定すればよい。また、第5基準温度T5は、第4基準温度T4よりも低い温度に設定すればよい。
【0299】
以上の如く、本実施形態では、第1冷却水循環回路60を介して、圧縮機11の吐出冷媒の有する熱を放熱する構成を採用しているが、第1実施形態の熱交換システムと実質的に同様の作用効果を奏することができる。つまり、本実施形態では、モータ用冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒用冷却水、モータ用冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0300】
なお、本実施形態に係る熱交換システムは、以下のように変形可能である。
【0301】
本実施形態では、第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度を、冷媒用冷却水温度センサ65で検出するようにしているが、これに限定されない。第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度は、冷媒放熱器12を流通する冷媒から吸熱して昇温することから、圧縮機11の吐出冷媒の圧力や温度から推定するようにしてもよい。
【0302】
また、本実施形態では、制御装置が、冷媒用冷却水温度センサ65の検出値が第1熱媒体基準温度Tα以上となっており、モータ用冷却水の温度が第5基準温度以上、かつ、第4基準温度T4以下となっている場合に、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量に減少させる例について説明したが、これに限定されない。
【0303】
例えば、第4実施形態の如く、モータ用冷却水の温度が第6基準温度T6以上、かつ、第4基準温度T4以下となっている場合に、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を小流量とし、さらに、モータ用冷却水の温度が第4基準温度T4よりも低い温度になるに伴って、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させるようにしてもよい。なお、第6基準温度T6は、第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度から予め定めた所定温度ΔT(本実施形態では、10℃)を減算した値としている。
【0304】
これによれば、モータ用冷却水の温度が第6基準温度T6以上、かつ、第4基準温度T4以下となっている場合に、第2冷却水ポンプ41の吐出流量が低下するので、アウターフィン50bが冷媒用冷却水の有する熱を外気に放熱させるために利用され、冷媒用冷却水の有する熱を外気に効率的に放熱させることができる。
【0305】
この際、第6基準温度T6が第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度から予め定めた温度ΔTを減算した値として設定されているので、第1冷却水用放熱器63に流入する冷媒用冷却水の温度に応じて、第6基準温度T6を設定できる。
【0306】
これにより、冷媒用冷却水の温度が低くなり、冷媒用冷却水の有する熱によって外気を加熱しにくくなるに伴って、第6基準温度T6と第4基準温度T4との温度差を各際することでき、より一層、冷媒用冷却水とモータ用冷却水との不必要な熱交換を抑制して、冷媒用冷却水と外気との適切かつ効率的な熱交換を実現することができる。
【0307】
さらに、モータ用冷却水の温度が第4基準温度T4よりも低い温度になるに伴って、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させるので、冷媒用冷却水の有する熱を外気に放熱させるだけでなく、モータ用冷却水にも放熱させて冷媒用冷却水の放熱量を徐々に増大させることができる。
【0308】
従って、モータ用冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒用冷却水、モータ用冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0309】
なお、本実施形態における第2冷却水ポンプ41の制御のうち、モータ用冷却水の温度が第4基準温度T4よりも低い温度になるに伴って、冷却水ポンプ41の吐出流量を増加させる制御を実行することが望ましいが、当該制御を廃止してもよい。
【0310】
また、第2冷却水ポンプ41の制御のうち、モータ冷却水の温度が第6基準温度T6よりも低い温度になっている場合に、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を大流量とする制御を実行することが望ましいが、当該制御を廃止してもよい。
【0311】
また、本実施形態では、第6実施形態の如く、熱交換器構造体50に流入する冷媒用冷却水の温度、モータ用冷却水の温度、および各冷却水の温度差に応じて、第2冷却水ポンプ41の吐出流量を変更するようにしてもよい。これによっても、モータ用冷却水の温度変化によらず、複数種の流体(冷媒用冷却水、モータ用冷却水、空気)の間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換システムを実現することができる。
【0312】
また、本実施形態の第2冷却水循環回路40を第2実施形態で説明した冷却水循環回路40に変更してもよい。具体的には、図16の全体構成図のように、第2冷却水循環回路40に、電気式の三方弁42、およびラジエータ43を迂回させて第2冷却水を流すバイパス通路44を設ければよい。この場合、三方弁42が第2熱媒体流量調整手段を構成する。
【0313】
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10を第3実施形態で説明した冷媒回路の切替可能なヒートポンプサイクル10に変更してもよい。
【0314】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0315】
(1)上述の実施形態では、第1流体としてヒートポンプサイクル10の冷媒が採用され、第2流体として走行用電動モータMGの冷却水が採用され、第3流体として外気(空気)が採用された熱交換システムについて説明したが、第1〜第3流体はこれに限定されない。本発明は、第1流体の温度が第3流体よりも温度が高く、第2流体には比較的大きな温度変化を伴う複数種の流体の熱交換に適用して有効である。
【0316】
例えば、車両のエンジンを冷却する冷却水を第1流体としてもよい。また、車両がNOx低減のために排気ガス再循環システム(EGRシステム)を採用している場合、循環させる排ガス(EGRガス)を冷却するEGRクーラから流出した高温冷却水を第1流体としてもよい。また、車両が過給器(ターボ)を有する場合、過給器にて圧縮された空気を冷却するインタークーラから流出した高温冷却水を第1流体としてもよい。
【0317】
また、エンジンの冷却水、インバータの冷却水、高圧バッテリの冷却水、EGRクーラに流入させる低温冷却水、インタークーラに流入させる低温冷却水等を第2流体としてもよい。この場合、第1、第4基準温度T1、T4を、熱交換器構造体50に流入する流体の温度以下に設定される。
【0318】
なお、例えば、第2冷却水として、EGRクーラに流入させる低温冷却水を採用する場合、第1、第4基準温度T1、T4を冷却水の取り得る温度範囲の最高温度(約300℃)以下に設定すればよい。また、第2冷却水として、インタークーラに流入させる低温冷却水を採用する場合、第1、第4基準温度T1、T4を冷却水の取り得る温度範囲の最高温度(約150℃)以下に設定すればよい。
【0319】
(2)上述の実施形態では、第2流体である冷却水を加熱する外部熱源として、走行用電動モータMGを採用した例を説明したが、外部熱源はこれに限定されない。例えば、ヒートポンプサイクル10を車両用空調装置1に適用する場合は、エンジン、走行用電動モータMGに電力を供給するインバータ等の電気機器を外部熱源として採用できる。
【0320】
また、エンジンを外部熱源とする際には、エンジン冷却水のみならず、エンジン排気の有する熱を外部熱源として採用してもよい。さらに、ヒートポンプサイクル10を据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用する場合は、ヒートポンプサイクル10の圧縮機の駆動減としてのエンジン、電動モータおよびその他の電気機器を外部熱源として採用できる。
【0321】
(3)上述の第1、第2実施形態では、室内空調ユニット30において、送風空気を加熱する加熱手段として電気ヒータ36を採用した例を説明したが、加熱手段は電気ヒータ36に限定されない。第3実施形態の如く、ヒートポンプサイクルの高圧冷媒を熱源として送風空気を加熱する加熱手段を採用してもよいし、他の熱源流体を循環させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器(ヒータコア)等を採用してもよい。
【0322】
(4)上述の第1実施形態では、走行用電動モータMGが作動していないときであって、冷却水温度Twが最低保護温度Tlwを下回った際に、冷却水ポンプ41の吐出流量を減少させて、ラジエータ43へ流入する冷却水の流入流量を減少させた例を説明しているが、もちろん、走行用電動モータMGの作動、非作動にかかわらず、冷却水温度Twに応じて流入流量を減少させてもよい。このことは、他の実施形態においても同様である。
【0323】
(5)上述の実施形態では、冷媒放熱器12の冷媒用チューブ12a、ラジエータ43の熱媒体用チューブ43aおよびアウターフィン50bをアルミニウム(金属)で形成し、ろう付け接合した例を説明したが、もちろん、アウターフィン50bを、他の伝熱性に優れる材質(例えば、カーボンナノチューブ等)で形成して、接着等の接合手段によって接合してもよい。
【0324】
(6)上述の第1、第5実施形態では、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置した熱交換器構造体50について説明したが、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの積層配置はこれに限定されない。
【0325】
図17は、熱交換器構造体50のヘッダタンク部長手方向の模式的な断面図である。図17では、図示の明確化のため、冷媒用チューブ12aを点ハッチングとし、熱媒体用チューブ43aを網掛ハンチングで示している。
【0326】
例えば、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの積層配置を、複数本の冷媒用チューブ12aを連続して積層配置した後に、複数本の熱媒体用チューブ43aを連続して積層配置してもよい。具体的には、図17(a)に示すように、2本の冷媒チューブ12aおよび2本の熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置するようにしてもよい。なお、連続して積層配置する冷媒チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aの数は、同数であってもよいし、異なる数であってもよい。
【0327】
また、図17(b)に示すように、上流側チューブ群50cにて冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置し、下流側チューブ群50dにて、外気の流れ方向Xに冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aが重ならないように、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置するようにしてもよい。このように、冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを千鳥状に積層配置してもよい。
【0328】
また、図17(c)に示すように、上流側チューブ群50cに熱媒体用チューブ43aだけを積層配置し、下流側チューブ群50dにて冷媒用チューブ12aおよび熱媒体用チューブ43aを交互に積層配置するようにしてもよい。
【0329】
このような各チューブ12a、43aの積層態様は、第7実施形態で説明した第1熱媒体用チューブ63aおよび第2熱媒体用チューブ43aを有する熱交換器構造体に適用することができる。
【0330】
(7)上述の実施形態において、制御装置にて、冷却水ポンプ41(第2冷却水ポンプを含む)の吐出流量を制御することで、ヒートポンプサイクル10の冷凍能力を向上させるようにしてもよい。
【0331】
例えば、ヒートポンプサイクル10を起動してから所定時間が経過するまでの間、冷却水ポンプ41の吐出流量を増大させるようにしてもよい。これによれば、熱交換器構造体50における吐出冷媒の放熱量を増加させることができるので、ヒートポンプサイクル10の起動時におけるヒートポンプサイクル10の冷凍能力を増大できる。
【0332】
(8)上述の各実施形態では、制御装置にて、熱交換器構造体50に流入する各流体の温度等に応じて、冷却水ポンプ41(第2冷却水ポンプを含む)の吐出流量を制御する例を説明したが、これに加えて、熱交換器構造体50における冷媒または第1冷却水の放熱量を調整するようにしてもよい。
【0333】
例えば、第1〜第6実施形態において、ラジエータ43に流入する冷却水の温度が、予め第1基準温度T1より高い値に定めた保護基準温度Tβよりも高い温度となった際に、熱交換器構造体50における冷媒の放熱量を低下させるようにしてもよい。
【0334】
このように、吐出冷媒の温度を低下させることで、冷却水の有する熱を外気に放熱させることができる。これにより、吐出冷媒の温度と冷却水の温度との温度差の拡大を抑制することができ、吐出冷媒の有する熱および冷却水の有する熱の双方を外気に放熱させることができる。なお、保護基準温度Tβは、例えば、最高保護温度Thiに設定すればよい。
【0335】
ここで、熱交換器構造体50における冷媒の放熱量を低下させる具体的な方法について説明すると、例えば、圧縮機11の回転数を低くして、圧縮機11の冷媒吐出能力を低下させることで、熱交換器構造体50における冷媒の放熱量の低下を実現することができる。この場合、圧縮機11の回転数を調整する電動モータ11bが放熱量調整手段を構成する。
【0336】
また、室内空調ユニット30の内外気切替装置33にて、空調対象空間である車室内に循環導入される内気と空調対象空間の外部の外気との導入割合を、内気が増加するように変更するようにしてもよい。この場合、外気よりも温度低い内気の導入割合が増加することで、ヒートポンプサイクル10の蒸発器16にて必要な冷媒の吸熱量を少なくすることができ、ヒートポンプサイクル10の熱負荷を低下させることができる。この結果、熱交換器構造体50における冷媒の放熱量の低下を実現することができる。この場合、内外気切替装置33が放熱量調整手段を構成する。
【0337】
また、第7実施形態の熱交換システムにおいても、圧縮機11の回転数の低下や、内気の導入割合の増加による吐出冷媒の温度低下に伴って、冷媒用冷却水の温度も低下するので、熱交換器構造体50における冷媒用冷却水の放熱量を低下させることが可能である。
【0338】
このように、冷媒用冷却水の温度を低下させることで、モータ用冷却水の有する熱を外気に放熱させることができる。これにより、冷媒用冷却水の温度とモータ用冷却水の温度との温度差の拡大を抑制することができ、冷媒用冷却水の有する熱およびモータ用冷却水の有する熱の双方を外気に放熱させることができる。
【0339】
(9)上述の各実施形態では、2つの放熱用熱交換器(冷媒放熱器12とラジエータ43、第1冷却水用放熱器63とラジエータ43)を一体化して熱交換器構造体50を構成する例について説明したが、これに限定されない。熱交換器構造体50を3つの放熱用熱交換器を一体化して構成してもよい。
【0340】
(10)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0341】
12 冷媒放熱器、室外熱交換器(第1熱交換器)
12a 冷媒用チューブ(第1チューブ)
41 冷却水ポンプ
42 三方弁
43 ラジエータ(第2熱交換器)
43a 熱媒体用チューブ(第2チューブ)
44 バイパス通路
50 熱交換器構造体
50a 外気通路(第3流体通路、熱交換対象流体通路)
50b アウターフィン
MG 走行用電動モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と第3流体とを熱交換させて前記第1流体の有する熱を前記第3流体に放熱させる第1熱交換器(12)と、
第2流体と前記第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、
前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱交換器(12)を流通する前記第1流体と前記第2熱交換器(43)を流通する前記第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱交換器(12)へ流入する前記第1流体の温度は、前記第1熱交換器(12)へ流入する前記第3流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2流体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が予め定めた第2基準温度(T2)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および前記第2基準温度(T2)よりも低い温度になっている際よりも前記第2流体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)および前記第2基準温度(T2)は、いずれも前記第1熱交換器(12)へ流入する前記第1流体の温度以下に設定されているとともに、前記第1基準温度(T1)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第3流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
前記第1熱交換器(12)は、前記第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a)を有し、
前記第2熱交換器(43)は、前記第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、
前記複数の第1チューブ(12a)および前記複数の第2チューブ(43a)の外周には、前記第3流体を流通させる第3流体通路(50a)が形成されており、
前記第1チューブ(12a)の外表面および前記第2チューブ(43a)の外表面には、双方の熱交換器(12、43)における熱交換を促進するとともに、前記第1チューブ(12a)を流通する前記第1流体と前記第2チューブ(43a)を流通する前記第2流体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記複数の第1チューブ(12a)のうち、少なくとも1つは、前記複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、
前記複数の第2チューブ(43a)のうち、少なくとも1つは、前記複数の第1チューブ(12a)の間に配置され、
少なくとも前記第1チューブ(12a)と前記第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、前記第3流体通路(50a)を形成していることを特徴とする請求項2に記載の熱交換システム。
【請求項4】
前記第1熱交換器(12)は、前記第1チューブ(12a)を流通する前記第1流体の集合あるいは分配を行う第1タンク部(12b)を有し、
前記第2熱交換器(43)は、前記第2チューブ(43a)を流通する前記第2流体の集合あるいは分配を行う第2タンク部(43b)を有し、
前記複数の第1チューブ(12a)および前記複数の第2チューブ(43a)は、前記第3流体の流れ方向の上流側に位置する上流側チューブ群(50c)、および前記第3流体の流れ方向の下流側に位置する下流側チューブ群(50d)で構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の熱交換システム。
【請求項5】
さらに、前記第2熱交換器(43)を迂回させるように前記第2流体を流すバイパス通路(44)を備え、
前記第2流体流量調整手段(41、42)は、前記第2流体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、前記第2流体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項6】
前記第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を調整する放熱量調整手段(11b、33)を備え、
前記放熱量調整手段(11b、33)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が予め前記第1基準温度(T1)以上に定められた保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項7】
前記第1流体は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項8】
前記第1流体は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項9】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、
前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記冷媒放熱器(12)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体放熱器(43)を流通する前記熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が予め定めた第2基準温度(T2)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および前記第2基準温度(T2)よりも低い温度になっている際よりも前記熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)および前記第2基準温度(T2)は、いずれも前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、前記第1基準温度(T1)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項10】
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記冷媒放熱器(12)における冷媒圧力が予め定めた基準冷媒圧力(P1)以上となっている際に、前記熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項9に記載の熱交換システム。
【請求項11】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、
前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記冷媒放熱器(12)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体放熱器(43)を流通する前記熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記冷媒放熱器(12)における前記吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した第3基準温度(T3)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および前記第3基準温度(T3)よりも低い温度になっている際よりも前記熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)および前記第3基準温度(T3)は、いずれも前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、前記第1基準温度(T1)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項12】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、
前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記冷媒放熱器(12)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体放熱器(43)を流通する前記熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が予め定めた第1基準温度(T1)以下となった際に、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際よりも前記熱媒体の流入流量を減少させるとともに、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)よりも低くなるに伴って、前記熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項13】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、
前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記冷媒放熱器(12)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体放熱器(43)を流通する前記熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記冷媒放熱器(12)における前記吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した第3基準温度(T3)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および前記第3基準温度(T3)よりも低い温度になっている際よりも前記熱媒体の流入流量を減少させるとともに、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)よりも低くなるに伴って、前記熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)および前記第3基準温度(T3)は、いずれも前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、前記第1基準温度(T1)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項14】
前記冷媒放熱器(12)は、前記冷媒が流通する複数の冷媒用チューブ(12a)を有し、
前記熱媒体放熱器(43)は、前記熱媒体が流通する複数の熱媒体用チューブ(43a)を有し、
前記複数の冷媒用チューブ(12a)および前記複数の熱媒体用チューブ(43a)の外周には、前記熱交換対象流体を流通させる熱交換対象流体通路(50a)が形成されており、
前記冷媒用チューブ(12a)の外表面および前記熱媒体用チューブ(43a)の外表面には、双方の放熱器(12、43)における熱交換を促進するとともに、前記冷媒用チューブ(12a)を流通する前記冷媒と前記熱媒体用チューブ(43a)を流通する前記熱媒体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項15】
さらに、前記熱媒体放熱器(43)を迂回させるように前記熱媒体を流すバイパス通路(44)を備え、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、前記熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項16】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
前記冷媒放熱器(12)から流出した前記第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、
第2熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、
前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱媒体放熱器(63)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体放熱器(43)を流通する前記第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が予め定めた第5基準温度(T5)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)より高い温度になっている際および前記第5基準温度(T5)よりも低い温度になっている際よりも前記第2熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第4基準温度(T4)および前記第5基準温度(T5)は、いずれも前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第4基準温度(T1)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項17】
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度が予め定めた第1熱媒体基準温度(Tα)以上となっている際に、前記第2熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項16に記載の熱交換システム。
【請求項18】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
前記冷媒放熱器(12)から流出した前記第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、
第2熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、
前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱媒体放熱器(63)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体放熱器(43)を流通する前記第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度から予め定めた温度を減算した第6基準温度(T6)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)より高い温度になっている際および前記第6基準温度(T6)よりも低い温度になっている際よりも前記第2熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第4基準温度(T4)は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項19】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
前記冷媒放熱器(12)から流出した前記第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、
第2熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、
前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱媒体放熱器(63)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体放熱器(43)を流通する前記第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が予め定めた第4基準温度(T4)以下となった際に、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)より高い温度になっている際よりも前記第2熱媒体の流入流量を減少させるとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)よりも低くなるに伴って、前記第2熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、前記第4基準温度(T4)は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項20】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
前記冷媒放熱器(12)から流出した前記第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、
第2熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、
前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱媒体放熱器(63)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体放熱器(43)を流通する前記第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第1熱媒体放熱器(63)に流入する前記第1熱媒体の温度から予め定めた温度を減算した第6基準温度(T6)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)より高い温度になっている際および前記第6基準温度(T6)よりも低い温度になっている際よりも前記第2熱媒体の流入流量を減少させるとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)よりも低くなるに伴って、前記第2熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、前記第4基準温度(T4)は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項21】
前記第1熱媒体放熱器(63)は、前記第1熱媒体が流通する複数の第1熱媒体用チューブ(63a)を有し、
前記第2熱媒体放熱器(43)は、前記第2熱媒体が流通する複数の第2熱媒体用チューブ(43a)を有し、
前記複数の第1熱媒体用チューブ(63a)および前記複数の第2熱媒体用チューブ(43a)の外周には、前記熱交換対象流体を流通させる熱交換対象流体通路(50a)が形成されており、
前記第1熱媒体用チューブ(63a)の外表面および前記第2熱媒体用チューブ(43a)の外表面には、双方の放熱器(63、43)における熱交換を促進するとともに、前記第1熱媒体用チューブ(63a)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体用チューブ(43a)を流通する前記第2熱媒体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする請求項16ないし20のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項22】
さらに、前記第2熱媒体放熱器(43)を迂回させるように前記第2熱媒体を流すバイパス通路(44)を備え、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、前記第2熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項16ないし21のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項23】
第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a、63a)を有し、前記第1流体と第3流体とを熱交換させて前記第1流体の有する熱を前記第3流体に放熱させる第1熱交換器(12、63)と、
第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、前記第2流体と前記第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、
前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱交換器(12、63)を流通する前記第1流体と前記第2熱交換器(43)を流通する前記第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記複数の第1チューブ(12a、63a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、
前記複数の第2チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第1チューブ(12a、63a)の間に配置され、
前記第1チューブ(12a、63a)と前記第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、前記第3流体が流通する第3流体通路(50a)を形成しており、
前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体の温度、および前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度は、前記第1、第2熱交換器(12、63、43)へ流入する前の前記第3流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2流体流量調整手段(41、42)は、前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体の温度が前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度以上となり、かつ、前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体と前記第2熱交換器(41、42)へ流入する前記第2流体との温度差が予め定めた基準温度差(ΔTTth)以上となる際に、前記第2流体の流入流量を減少させることを特徴とする熱交換システム。
【請求項24】
第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a、63a)を有し、前記第1流体と第3流体とを熱交換させて前記第1流体の有する熱を前記第3流体に放熱させる第1熱交換器(12、63)と、
第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、前記第2流体と前記第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、
前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱交換器(12、63)を流通する前記第1流体と前記第2熱交換器(43)を流通する前記第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記複数の第1チューブ(12a、63a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、
前記複数の第2チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第1チューブ(12a、63a)の間に配置され、
前記第1チューブ(12a、63a)と前記第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、前記第3流体が流通する第3流体通路(50a)を形成しており、
前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体の温度、および前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度は、前記第1、第2熱交換器(12、63、43)へ流入する前の前記第3流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2流体流量調整手段(41、42)は、前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体の温度が前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度よりも低くなり、かつ、前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体と前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体との温度差が予め定めた基準温度差(ΔTTth)以上となる際に、前記第2流体の流入流量を増加させることを特徴とする熱交換システム。
【請求項25】
前記第1熱交換器(12、63a)における前記第1流体が有する熱の放熱量を調整する放熱量調整手段(11b、33)を備え、
前記放熱量調整手段(11b、33)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が予め定められた保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることを特徴とする請求項23または24に記載の熱交換システム。
【請求項26】
前記第1流体は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒であり、
前記放熱量調整手段(11b)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が前記保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させることを特徴とする請求項25に記載の熱交換システム。
【請求項27】
前記第1流体は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体であり、
前記放熱量調整手段(11b)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が前記保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させることを特徴とする請求項25に記載の熱交換システム。
【請求項28】
ヒートポンプサイクル(10)の蒸発器(16)にて空調対象空間に送風する送風空気と冷媒とを熱交換させて、前記送風空気を冷却する空調装置に適用され、
前記第1流体は、前記ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体、または、前記圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒であり、
前記放熱量調整手段(33)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が前記保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記蒸発器(16)へ流入する前記空調対象空間から循環導入される内気と前記空調対象空間の外部から導入される外気との導入割合を、前記内気が増加するように変化させることで、前記蒸発器(16)の熱負荷を低下させることを特徴とする請求項25に記載の熱交換システム。
【請求項1】
第1流体と第3流体とを熱交換させて前記第1流体の有する熱を前記第3流体に放熱させる第1熱交換器(12)と、
第2流体と前記第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、
前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱交換器(12)を流通する前記第1流体と前記第2熱交換器(43)を流通する前記第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱交換器(12)へ流入する前記第1流体の温度は、前記第1熱交換器(12)へ流入する前記第3流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2流体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が予め定めた第2基準温度(T2)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および前記第2基準温度(T2)よりも低い温度になっている際よりも前記第2流体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)および前記第2基準温度(T2)は、いずれも前記第1熱交換器(12)へ流入する前記第1流体の温度以下に設定されているとともに、前記第1基準温度(T1)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第3流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
前記第1熱交換器(12)は、前記第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a)を有し、
前記第2熱交換器(43)は、前記第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、
前記複数の第1チューブ(12a)および前記複数の第2チューブ(43a)の外周には、前記第3流体を流通させる第3流体通路(50a)が形成されており、
前記第1チューブ(12a)の外表面および前記第2チューブ(43a)の外表面には、双方の熱交換器(12、43)における熱交換を促進するとともに、前記第1チューブ(12a)を流通する前記第1流体と前記第2チューブ(43a)を流通する前記第2流体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換システム。
【請求項3】
前記複数の第1チューブ(12a)のうち、少なくとも1つは、前記複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、
前記複数の第2チューブ(43a)のうち、少なくとも1つは、前記複数の第1チューブ(12a)の間に配置され、
少なくとも前記第1チューブ(12a)と前記第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、前記第3流体通路(50a)を形成していることを特徴とする請求項2に記載の熱交換システム。
【請求項4】
前記第1熱交換器(12)は、前記第1チューブ(12a)を流通する前記第1流体の集合あるいは分配を行う第1タンク部(12b)を有し、
前記第2熱交換器(43)は、前記第2チューブ(43a)を流通する前記第2流体の集合あるいは分配を行う第2タンク部(43b)を有し、
前記複数の第1チューブ(12a)および前記複数の第2チューブ(43a)は、前記第3流体の流れ方向の上流側に位置する上流側チューブ群(50c)、および前記第3流体の流れ方向の下流側に位置する下流側チューブ群(50d)で構成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の熱交換システム。
【請求項5】
さらに、前記第2熱交換器(43)を迂回させるように前記第2流体を流すバイパス通路(44)を備え、
前記第2流体流量調整手段(41、42)は、前記第2流体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、前記第2流体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項6】
前記第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を調整する放熱量調整手段(11b、33)を備え、
前記放熱量調整手段(11b、33)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が予め前記第1基準温度(T1)以上に定められた保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項7】
前記第1流体は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項8】
前記第1流体は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項9】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、
前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記冷媒放熱器(12)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体放熱器(43)を流通する前記熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が予め定めた第2基準温度(T2)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および前記第2基準温度(T2)よりも低い温度になっている際よりも前記熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)および前記第2基準温度(T2)は、いずれも前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、前記第1基準温度(T1)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項10】
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記冷媒放熱器(12)における冷媒圧力が予め定めた基準冷媒圧力(P1)以上となっている際に、前記熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項9に記載の熱交換システム。
【請求項11】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、
前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記冷媒放熱器(12)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体放熱器(43)を流通する前記熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記冷媒放熱器(12)における前記吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した第3基準温度(T3)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および前記第3基準温度(T3)よりも低い温度になっている際よりも前記熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)および前記第3基準温度(T3)は、いずれも前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、前記第1基準温度(T1)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項12】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、
前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記冷媒放熱器(12)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体放熱器(43)を流通する前記熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が予め定めた第1基準温度(T1)以下となった際に、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際よりも前記熱媒体の流入流量を減少させるとともに、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)よりも低くなるに伴って、前記熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項13】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる熱媒体放熱器(43)と、
前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の流入流量を調整する熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記冷媒放熱器(12)を流通する前記吐出冷媒と前記熱媒体放熱器(43)を流通する前記熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度は、前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記冷媒放熱器(12)における前記吐出冷媒の飽和温度から予め定めた温度を減算した第3基準温度(T3)以上、かつ、予め定めた第1基準温度(T1)以下となっている際に、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)より高い温度になっている際および前記第3基準温度(T3)よりも低い温度になっている際よりも前記熱媒体の流入流量を減少させるとともに、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱媒体の温度が前記第1基準温度(T1)よりも低くなるに伴って、前記熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、前記第1基準温度(T1)および前記第3基準温度(T3)は、いずれも前記冷媒放熱器(12)へ流入する前記吐出冷媒の温度以下に設定されているとともに、前記第1基準温度(T1)は、前記熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項14】
前記冷媒放熱器(12)は、前記冷媒が流通する複数の冷媒用チューブ(12a)を有し、
前記熱媒体放熱器(43)は、前記熱媒体が流通する複数の熱媒体用チューブ(43a)を有し、
前記複数の冷媒用チューブ(12a)および前記複数の熱媒体用チューブ(43a)の外周には、前記熱交換対象流体を流通させる熱交換対象流体通路(50a)が形成されており、
前記冷媒用チューブ(12a)の外表面および前記熱媒体用チューブ(43a)の外表面には、双方の放熱器(12、43)における熱交換を促進するとともに、前記冷媒用チューブ(12a)を流通する前記冷媒と前記熱媒体用チューブ(43a)を流通する前記熱媒体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする請求項9ないし13のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項15】
さらに、前記熱媒体放熱器(43)を迂回させるように前記熱媒体を流すバイパス通路(44)を備え、
前記熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記熱媒体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、前記熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項16】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
前記冷媒放熱器(12)から流出した前記第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、
第2熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、
前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱媒体放熱器(63)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体放熱器(43)を流通する前記第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が予め定めた第5基準温度(T5)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)より高い温度になっている際および前記第5基準温度(T5)よりも低い温度になっている際よりも前記第2熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第4基準温度(T4)および前記第5基準温度(T5)は、いずれも前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第4基準温度(T1)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項17】
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度が予め定めた第1熱媒体基準温度(Tα)以上となっている際に、前記第2熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項16に記載の熱交換システム。
【請求項18】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
前記冷媒放熱器(12)から流出した前記第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、
第2熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、
前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱媒体放熱器(63)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体放熱器(43)を流通する前記第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度から予め定めた温度を減算した第6基準温度(T6)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)より高い温度になっている際および前記第6基準温度(T6)よりも低い温度になっている際よりも前記第2熱媒体の流入流量を減少させ、
さらに、前記第4基準温度(T4)は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項19】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
前記冷媒放熱器(12)から流出した前記第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、
第2熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、
前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱媒体放熱器(63)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体放熱器(43)を流通する前記第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が予め定めた第4基準温度(T4)以下となった際に、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)より高い温度になっている際よりも前記第2熱媒体の流入流量を減少させるとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)よりも低くなるに伴って、前記第2熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、前記第4基準温度(T4)は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項20】
ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒を、第1熱媒体と熱交換させて放熱させる冷媒放熱器(12)と、
前記冷媒放熱器(12)から流出した前記第1熱媒体を、熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第1熱媒体放熱器(63)と、
第2熱媒体を、前記熱交換対象流体と熱交換させて放熱させる第2熱媒体放熱器(43)と、
前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の流入流量を調整する第2熱媒体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱媒体放熱器(63)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体放熱器(43)を流通する前記第2熱媒体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第1熱媒体放熱器(63)に流入する前記第1熱媒体の温度から予め定めた温度を減算した第6基準温度(T6)以上、かつ、予め定めた第4基準温度(T4)以下となっている際に、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)より高い温度になっている際および前記第6基準温度(T6)よりも低い温度になっている際よりも前記第2熱媒体の流入流量を減少させるとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記第2熱媒体の温度が前記第4基準温度(T4)よりも低くなるに伴って、前記第2熱媒体の流入流量を増加させ、
さらに、前記第4基準温度(T4)は、前記第1熱媒体放熱器(63)へ流入する前記第1熱媒体の温度以下に設定されているとともに、前記第2熱媒体放熱器(43)へ流入する前記熱交換対象流体の温度よりも高い値に設定されていることを特徴とする熱交換システム。
【請求項21】
前記第1熱媒体放熱器(63)は、前記第1熱媒体が流通する複数の第1熱媒体用チューブ(63a)を有し、
前記第2熱媒体放熱器(43)は、前記第2熱媒体が流通する複数の第2熱媒体用チューブ(43a)を有し、
前記複数の第1熱媒体用チューブ(63a)および前記複数の第2熱媒体用チューブ(43a)の外周には、前記熱交換対象流体を流通させる熱交換対象流体通路(50a)が形成されており、
前記第1熱媒体用チューブ(63a)の外表面および前記第2熱媒体用チューブ(43a)の外表面には、双方の放熱器(63、43)における熱交換を促進するとともに、前記第1熱媒体用チューブ(63a)を流通する前記第1熱媒体と前記第2熱媒体用チューブ(43a)を流通する前記第2熱媒体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50b)が接合されていることを特徴とする請求項16ないし20のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項22】
さらに、前記第2熱媒体放熱器(43)を迂回させるように前記第2熱媒体を流すバイパス通路(44)を備え、
前記第2熱媒体流量調整手段(41、42)は、前記第2熱媒体をバイパス通路(44)へ流入させることによって、前記第2熱媒体の流入流量を減少させることを特徴とする請求項16ないし21のいずれか1つに記載の熱交換システム。
【請求項23】
第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a、63a)を有し、前記第1流体と第3流体とを熱交換させて前記第1流体の有する熱を前記第3流体に放熱させる第1熱交換器(12、63)と、
第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、前記第2流体と前記第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、
前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱交換器(12、63)を流通する前記第1流体と前記第2熱交換器(43)を流通する前記第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記複数の第1チューブ(12a、63a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、
前記複数の第2チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第1チューブ(12a、63a)の間に配置され、
前記第1チューブ(12a、63a)と前記第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、前記第3流体が流通する第3流体通路(50a)を形成しており、
前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体の温度、および前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度は、前記第1、第2熱交換器(12、63、43)へ流入する前の前記第3流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2流体流量調整手段(41、42)は、前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体の温度が前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度以上となり、かつ、前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体と前記第2熱交換器(41、42)へ流入する前記第2流体との温度差が予め定めた基準温度差(ΔTTth)以上となる際に、前記第2流体の流入流量を減少させることを特徴とする熱交換システム。
【請求項24】
第1流体が流通する複数の第1チューブ(12a、63a)を有し、前記第1流体と第3流体とを熱交換させて前記第1流体の有する熱を前記第3流体に放熱させる第1熱交換器(12、63)と、
第2流体が流通する複数の第2チューブ(43a)を有し、前記第2流体と前記第3流体とを熱交換させる第2熱交換器(43)と、
前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の流入流量を調整する第2流体流量調整手段(41、42)とを備え、
前記第1熱交換器(12、63)を流通する前記第1流体と前記第2熱交換器(43)を流通する前記第2流体は、互いに熱移動可能に構成され、
前記複数の第1チューブ(12a、63a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、
前記複数の第2チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第1チューブ(12a、63a)の間に配置され、
前記第1チューブ(12a、63a)と前記第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、前記第3流体が流通する第3流体通路(50a)を形成しており、
前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体の温度、および前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度は、前記第1、第2熱交換器(12、63、43)へ流入する前の前記第3流体の温度よりも高い値になっており、
前記第2流体流量調整手段(41、42)は、前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体の温度が前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度よりも低くなり、かつ、前記第1熱交換器(12、63)へ流入する前記第1流体と前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体との温度差が予め定めた基準温度差(ΔTTth)以上となる際に、前記第2流体の流入流量を増加させることを特徴とする熱交換システム。
【請求項25】
前記第1熱交換器(12、63a)における前記第1流体が有する熱の放熱量を調整する放熱量調整手段(11b、33)を備え、
前記放熱量調整手段(11b、33)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が予め定められた保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記第1熱交換器(12、63)における前記第1流体が有する熱の放熱量を低下させることを特徴とする請求項23または24に記載の熱交換システム。
【請求項26】
前記第1流体は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒であり、
前記放熱量調整手段(11b)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が前記保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させることを特徴とする請求項25に記載の熱交換システム。
【請求項27】
前記第1流体は、ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体であり、
前記放熱量調整手段(11b)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が前記保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記圧縮機(11)の冷媒吐出能力を低下させることを特徴とする請求項25に記載の熱交換システム。
【請求項28】
ヒートポンプサイクル(10)の蒸発器(16)にて空調対象空間に送風する送風空気と冷媒とを熱交換させて、前記送風空気を冷却する空調装置に適用され、
前記第1流体は、前記ヒートポンプサイクル(10)の圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒が有する熱によって加熱された熱媒体、または、前記圧縮機(11)から吐出された吐出冷媒であり、
前記放熱量調整手段(33)は、前記第2熱交換器(43)へ流入する前記第2流体の温度が前記保護基準温度よりも高い温度となる際に、前記蒸発器(16)へ流入する前記空調対象空間から循環導入される内気と前記空調対象空間の外部から導入される外気との導入割合を、前記内気が増加するように変化させることで、前記蒸発器(16)の熱負荷を低下させることを特徴とする請求項25に記載の熱交換システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−144245(P2012−144245A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272273(P2011−272273)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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