説明

熱交換ダクト

【課題】組立の容易性を確保しつつ、外管内の所定位置に内管を保持できるようにする。
【解決手段】外管1の内部に可撓性の内管2を配置し、外管1と内管2の間に形成される通気路3と、内管2の内部の通気路4との間で熱交換を行なう熱交換ダクトDにおいて、前記内管2を外管1内の所定位置に保持するスペーサ5を、内管2を包囲する線材6に取り付けて内管2の外周に沿って配置し、スペーサ5の形状を、球状等、外管1の軸方向に曲がった曲面を有するものとし、その曲面部分でスペーサ5が外管1の内面に当接するようにする。組み立てに際し、外管1に内管2を挿入する際、スペーサ5が外管1内面の凹凸に引っ掛かることなく乗り越えるので、スムーズに挿入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換機能を備えた多層管構造の通気ダクトであって、少なくとも内管がフレキシブルなものに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やオフィスビル、工場等の建築物には、換気装置が設けられているが、換気装置で単に換気を行なうだけでは、空調に供したエネルギーが排出されてしまうため、換気系統中に全熱交換器を設け、これにより給排気間で全熱交換を行なう場合がある。
【0003】
ところが、このような全熱交換器を設置しようとすると、コストがかかるほか、大きな設置スペースを要する等の問題があるため、全熱交換器の普及率は低く、エネルギーの有効利用があまり図られていないという事情がある。
【0004】
一方で、空調用のダクトは、ほとんどの建物や施設に設けられていることから、これに熱交換機能を付与することができれば、熱交換器付きの換気装置を導入することなく、また、ダクト設置工事以外の工事を行なうことなく、容易にエネルギーを有効利用することができるものと考えられる。
【0005】
このような熱交換機能を備えた多層管構造のダクトとして、下記特許文献1には、図6に示すように、外管51の内部に内管52を配置し、外管51と内管52の間に形成される通気路53と、内管52の内部の通気路54との間で熱交換を行なう熱交換ダクトが記載されている。
【0006】
ここで、内管52は、例えば特殊加工紙等の水透過性及び熱伝導性を有する材料を筒状に巻いて形成され、可撓性を有するものとなっており、外管51は、例えば亜鉛鉄板等の水透過性を有さない適宜の材料で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−288367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような熱交換ダクトでは、熱交換性能を確保するため、内管を外管内の所定位置に保持する必要があるが、内管が自重により撓んで、内管の外管内における位置が偏ってしまうという問題がある。
【0009】
その対策として、外管と内管の間の通気路にスペーサを設け、このスペーサにより内管を所定位置に保持することが考えられるが、この場合、ダクトの組み立てに際し、内管の外周にスペーサを配置した状態で、外管に内管を挿入しようとすると、外管内面の凹凸にスペーサが引っ掛かって、スムーズに挿入できなくなるおそれがある。
【0010】
また、ダクトが設置される天井裏は、上階の床面や梁等の障害物が存在するため、ダクトの高さ方向の寸法をあまり大きくすることができないという問題もある。
【0011】
そこで、この発明は、組立の容易性を確保しつつ、外管内の所定位置に内管を保持できるようにし、また、設置に際して高さの制限を受けにくくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような課題を解決するため、この発明は、外管の内部に可撓性の内管を配置し、外管と内管の間に形成される通気路と、内管の内部の通気路との間で熱交換を行なう熱交換ダクトにおいて、前記内管を外管内の所定位置に保持するスペーサを、内管を包囲する線材に取り付けて内管の外周に沿って配置し、スペーサの形状を、外管の長さ方向に曲がった曲面を有するものとし、その曲面部分でスペーサが外管の内面に当接するようにしたのである。
【0013】
なお、具体的には、前記スペーサを球状とし、その中心部に内管を包囲する環状の金属線材を貫通させるとよい。
【0014】
また、設置空間の条件に応じて、前記外管の高さ方向の寸法を、幅方向の寸法よりも小さくしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
この熱交換ダクトでは、組み立てに際し、外管に内管を挿入する際、スペーサが外管内面の凹凸に引っ掛かることなく乗り越えるので、スムーズに挿入することができ、組立作業を容易に行なうことができる。
【0016】
また、スペーサを球状とすれば、スペーサの方向性を意識することなく、ダクトを組み立ることができる。
【0017】
また、外管を高さ方向の寸法を幅方向の寸法よりも小さくすれば、天井裏のように高さが制限された空間にも設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係る熱交換ダクトの第1実施形態を示す一部切欠斜視図
【図2】同上の一部切欠縦断面図
【図3】同上の横断面図
【図4】同上の組立過程を示す概略縦断面図
【図5】(a)同上の第2実施形態の概略横断面図、(b)同上の第3実施形態の概略横断面図
【図6】従来の熱交換ダクトの使用状態を示す概略縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、この発明に係る熱交換ダクトDは、外管1の内部に1本の内管2を配置し、外管1と内管2の間に形成される通気路3と、内管2の内部の通気路4との間で全熱交換を行なうものである。
【0021】
熱交換ダクトDの両端部には、継手10が取り付けられている。継手10は、T字管であり、外管1が接続される端部の反対側の接続口11では通気路4が開口し、これと直角をなす接続口12では通気路3が開口する。
【0022】
図2及び図3に示すように、外管1は、長手方向に間隔をあけて螺旋状に巻いた線状の亜鉛メッキ鋼板から成る保持部材11と、これにより保持されるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの防湿用内装材12と、グラスウール製の断熱材13と、その外周を被覆するポリエチレン系樹脂フィルムの外装材14とから構成される。
【0023】
なお、熱交換ダクトD自体の可撓性が要求されない場合には、外管1として、一般的に使用される亜鉛鋼板製のものを用いてもよい。
【0024】
内管2は、図2及び図3に示すように、長手方向に間隔をあけて螺旋状に巻いた線状の亜鉛メッキ鋼板から成る保持部材21と、これにより保持される熱交換性を有する膜状部材22とから構成され、保持部材21のピッチごとに、螺旋状に巻いた帯状の膜状部材22の隣接する側部同士を少し重ね、その重合部をナイロン糸23と共に抱き込むように保持部材21で挟持して、膜状部材22を円筒状に形成したものとされている。
【0025】
ここで、内管2の膜状部材22として、紙又は不織布にセルロース膜を形成した透湿膜を使用すると、ガスバリア性と高い透湿性を持ちながら、製造、施工及び使用に際し、十分な強度を得ることができる。
【0026】
そして、このような内管2は、外管1の通気路3内に設けたスペーサ5によって、外管1と軸線を一致させて支持されている。
【0027】
スペーサ5は、球状の発泡スチロールから成り、その中心部を貫通する環状の金属線材6を内管2の外周に嵌めることにより、内管2の外周に3個間隔をあけて配置され、内管2の外周に沿って線材6を中心に回転可能となっている。
【0028】
上記のような熱交換ダクトDでは、組み立て作業において、図4に示すように、内管2の先端に紐を取り付け、その紐を外管1に挿通した後、紐を引っ張り、外管1に内管2を挿入する際、スペーサ5が外管1の内面の凹凸に引っ掛かることなく乗り越えるので、スムーズに挿入することができる。
【0029】
また、現場での施工時においても、外管1と内管2とを相対的に移動させて、配管作業を容易に行うことができる。
【0030】
ここで、スペーサ5は、上記実施形態のように球状であれば、線材6を中心に内管2に対して転動させつつ、内管2の外周の所定位置に容易に配置することができ、また、外管1への内管2の挿入に際し、あらゆる方向に対して、外管1の内面の凹凸を乗り越えることができる。
【0031】
しかしながら、スペーサ5は、円柱状や半球状等、球状以外の形状であっても、外管1の長さ方向に曲がった曲面が外管1の内面に対向するように配置すれば、外管1の内面の凹凸を乗り越えることができる。
【0032】
また、上記実施形態では、外管1及び内管2の断面形状が円形のものを例示したが、図5(a)、(b)に示すように、外管1を、高さ方向の寸法が幅方向の寸法に対して小さいものとすると、天井裏のように高さが制限された空間にも設置することができる。この場合、スペーサ5を取り付けた線材6により、複数本の内管2を抱持すると、外管1に容易に挿通できるので、組立性が向上する。
【0033】
なお、外管1内に複数本の内管2を配置する場合、外管1と内管2の間だけでなく、内管2同士の間にも通気路が確保されるように、スペーサ5を配置し、これに挿通した線材6で内管2を固定する必要がある。
【0034】
ところで、上記各実施形態では、内管2の膜状部材22として、透湿性を有するものを用いることにより、全熱交換型としているが、浴室やトイレ等、湿度が高い室内や臭気が気になる室内の換気に使用する場合には、膜状部材22として、透湿性のないものを使用し、顕熱交換型としてもよい。
【符号の説明】
【0035】
D 熱交換ダクト
1 外管
2 内管
3,4 通気路
5 スペーサ
6 線材
10 継手
11,12 接続口
11 保持部材
12 内装材
13 断熱材
14 外装材
21 保持部材
22 膜状部材
23 ナイロン糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管(1)の内部に可撓性の内管(2)を配置し、外管(1)と内管(2)の間に形成される通気路(3)と、内管(2)の内部の通気路(4)との間で熱交換を行なう熱交換ダクトにおいて、前記内管(2)を外管(1)内の所定位置に保持するスペーサ(5)を、内管(2)を包囲する線材(6)に取り付けて内管(2)の外周に沿って配置し、スペーサ(5)の形状を、外管(1)の長さ方向に曲がった曲面を有するものとし、その曲面部分でスペーサ(5)が外管(1)の内面に当接するようにしたことを特徴とする熱交換ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換ダクトにおいて、前記スペーサ(5)を球状とし、その中心部に内管(2)を包囲する環状の金属線材(6)を貫通させたことを特徴とする熱交換ダクト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱交換ダクトにおいて、前記外管(1)の高さ方向の寸法を、幅方向の寸法よりも小さくしたことを特徴とする熱交換ダクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−159247(P2012−159247A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19788(P2011−19788)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】