説明

熱交換器とこの熱交換器を有する冷凍装置を備えた機器

【課題】自動販売機等の機器本体の庫外に設置される冷凍装置の凝縮器となる熱交換器にあって、フィン間の目詰まりを軽減する。
【解決手段】多数枚を並設した板状のフィン10と、このフィン10を貫通し、かつ内部を冷媒が流動する複数の管12とを備え、前記フィン10は空気流入側端面13に、上向端面15とこの真下に位置する下向端面16を有する複数の埃付着軽減部14を設け、空気流入側端面13の全体を鋸歯状に形成している。フィン10間に流入する空気中の埃で、上向端面15にあたった大半はその傾斜面に沿って流れるうちにフィン10間に入って通過し、また下向端面16は埃が堆積し難いが、堆積しても重力で落ちてしまう。そして、下向端面16は長い間に上向端面15に埃が堆積してフィン10間に目詰まりが生じた際でも空気流の側路の役目をするので長期間に亘り目詰まりし難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動販売機,業務用冷蔵庫等に備える冷凍装置におけるコンデンサ等に使用され、多数枚の板状のフィンとこれを貫通した複数の冷媒管を備えた熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に自動販売機等にあっては、冷凍装置を構成するコンデンサは機器本体の下部である庫外に、そして蒸発器は機器本体内の庫内にそれぞれ設置される。一方、自動販売機等は店頭先,事務所等で設置されることが多いため、機器本体の下部はどうしても床面の埃等を吸い込み易い状態になる。
【0003】
また一般に分離型ヒートポンプ式空気調和機の熱交換器としては、図8,図9に示すように、冷媒管1の貫通しているフィン2の少なくとも風上側端面3を、冷媒管1の断面形状に沿わせて波形形状、または一部に直線部を組合わせた形状にしたものが知られている。そして、前記形状にすることで、寒冷地での暖房運転の際にフィンの風上側端面3に付着した霜や氷をホットガスで溶かした時に、その熱伝導を向上させるとともに凹部分4に残った霜や氷が直線状の傾斜面5を滑り落ち易くしたものである。
【0004】
また空調機器,冷蔵庫に使用される従来の熱交換器では、図10に示すように冷媒管1の貫通しているフィン2を、冷媒管列方向において冷媒管1同士の距離の約半分の距離で、曲線または屈曲線6を冷媒管段方向に連続させ、全体として凹凸が互いに噛み合うようにフィン2を切断7している。そして、前記形状にすることで、フィン2の面積を変えることなくそれぞれの冷媒管1からフィン2の縁までの熱伝導距離のバラツキを小さくしてフィン効率を向上させるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したように自動販売機,業務用冷蔵庫は、構造面,設置場所等からコンデンサの板状のフィン間には、この間を流動する空気中の埃、特に綿状の埃が詰まるのであった。そして、フィン間に埃がだんだんと詰まってくると、フィン間の通風抵抗が増大してコンデンサの効率が低下し、これに伴い冷凍サイクルを構成する蒸発器の冷却効率も低下するのである。そこで、自動販売機はもちろん、スーパーの食品売場等の業務用冷蔵庫ではコンデンサの埃詰まりを除去するメンテナンスが必要であった。
【0006】
また、上記したように図8〜図10に示す従来の熱交換器では、除霜の改善、フィン効率の向上を図るだけで、前記の自動販売機,業務用冷蔵庫等のコンデンサで発生する、フィン間の埃詰まりを防止してメンテナンスの軽減はもちろん、長期間に亘って機器本体の能力、つまり熱交換能力を安定させる改善は行われていなかった。
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決する熱交換器に係るものであり、フィン間の埃詰まりを軽減させてメンテナンスの軽減を図るとともに、熱交換能力を長期に亘り安定させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、空気が流動する間隔を有して多数枚を並設した板状のフィンと、このフィンを貫通し、かつ内部を冷媒が流動する複数の管とを備え、前記フィンは空気流入側端面に複数の埃付着軽減部を形成し、前記埃付着軽減部は、形状的に流入空気に対する角度の異なる上向端面と下向端面とし、前記上向端面と下向端面とを交互に組合わせてなり、全体を鋸歯状に形成したものである。
【0009】
この技術手段によれば、フィンの空気流入側端面に設けた複数の埃付着軽減部が、フィン間を流動する空気中の埃の付着を少なくし、埃詰まりを軽減できるとともに、安定した熱交換能力を長く発揮できる。
【0010】
そして、フィンの空気流入側端面を形状的に流入空気に対する角度の異なる上向端面と下向端面とすることで、埃付着に時間的なずれが生じ、埃詰まりが生じた際でも空気流をバイパスさせ、埃詰まりを一層軽減できるとともに、安定した熱交換能力をより長く発揮できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に記載の発明は、空気が流動する間隔を有して多数枚を並設した板状のフィンと、このフィンを貫通し、かつ内部を冷媒が流動する複数の管とを備え、前記フィンは空気流入側端面に複数の埃付着軽減部を形成し、前記埃付着軽減部は、形状的に流入空気に対する角度の異なる上向端面と下向端面とし、前記上向端面と下向端面とを交互に組合わせてなり、全体を鋸歯状に形成したことにより、従来より長期に亘り熱交換能力を安定して発揮できるとともに、フィン間の目詰まり除去のメンテナンスを軽減できる。
【0012】
更にフィン間に目詰まりが生じても、埃付着軽減部の埃付着の時間的なずれによる空気側路作用で、風量の低下を防止し熱交換能力を安定してより長く発揮でき、かつ目詰まり除去のメンテナンスもより軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
請求項1に記載の発明は、空気が流動する間隔を有して多数枚を並設した板状のフィンと、このフィンを貫通し、かつ内部を冷媒が流動する複数の管とを備え、前記フィンは空気流入側端面に複数の埃付着軽減部を形成し、前記埃付着軽減部は、形状的に流入空気に対する角度の異なる上向端面と下向端面とし、前記上向端面と下向端面とを交互に組合わせてなり、全体を鋸歯状に形成したことにより、フィンの空気流入側端面の埃付着を埃付着軽減部の複数により効率よく低減でき、更には、空気流との角度が小さくなり埃がより目詰まりしにくくなることから、目詰まりに達する迄の時間を従来よりも長くすることができ、フィン間の埃詰まりを軽減させてメンテナンスの軽減を図るとともに、熱交換能力を長期に亘り安定させる。
【0014】
そして、フィンの空気流入側端面を形状的に流入空気に対する角度の異なる上向端面と下向端面とすることで、埃付着に時間的なずれが生じ、埃詰まりが生じた際でも空気流をバイパスさせ、埃詰まりを一層軽減できるとともに、安定した熱交換能力をより長く発揮できる。
【0015】
さらには、空気流入側端面の鋸歯状における下向端面が上向端面より、埃が付着し難いため、一方の上向端面間が目詰まりした時に他方の下向端面間が空気側路の作用を発揮しやすくなるのである。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記下向端面の流入空気に対する角度を前記上向端面の流入空気に対する角度より小さくしたことにより、下向き端面はさらに埃が堆積しにくく、堆積しても落ちやすくなり、埃付着の時間的なずれによる空気側路作用が一層高まり、目詰まりに達する迄の時間をより長くすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記フィンの鋸歯状の先端にアールを設けたことにより、取り扱い時の安全性の向上を図ることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明の熱交換器を有する冷凍装置を備えた機器としたことにより、フィン間を通る空気の流れを長期に亘って阻害しないので、コンデンサとしての効率は低下するまでの長期間に亘り安定した熱交換能力を発揮し、それに伴い蒸発器による冷却で食品を安全に護るとともに、機器として、この効果は極めて大きな意味をもつものである。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1は本発明熱交換器の実施の形態1の発明におけるフィンの要部側面図で、図2はその熱交換器を使用した冷凍サイクルの冷媒回路図を示すものである。
【0021】
10は熱交換器Aを構成するアルミニウム合金で形成した薄い板状の縦長のフィンで、空気が流動する間隔11を有して多数枚を並設している。12は前記フィン10を貫通し、かつ内部を冷媒が流動する複数の管で、熱交換器Aを構成するとともに、管段方向に数段の管を、そして管列方向に3列の管を連続して配管している。13は熱交換器Aの空気流入側端面で、上下方向の全体に連続して複数の埃付着軽減部14を形成している。この複数の埃付着軽減部14は、特に綿状の埃が付き難いように形状的に工夫してフィン10の間の埃目詰まりによる熱交換器Aの風量低下を防止するもので、角度の異なる複数の直線端面としての上向傾斜端面15とこれより短くして真下に位置する下向水平端面16とで埃の付き難い形状の三角形状に構成し、これを連続させて空気流入側端面13の全体を鋸歯状に形成している。また、複数の埃付着軽減部14は空気側路16aの作用を有しており、一方の上向傾斜端面15におけるフィン10間の目詰まりが先に起こり易いので、それ以降は目詰まりのなかなか起こり難い他方の下向水平端面16におけるフィン10間が空気側路16aとして点線矢印で示す空気流をバイパスする構成にしてある。17は埃付着軽減部14の先端の安全部で、鋸歯状の尖った先を無くし略垂直端面とし、熱交換器Aを取り扱い易くしている。従って、前記安全部17としての略垂直端面は、上向傾斜端面15や下向水平端面16より、はるかに短く形成してあり、また鋸歯状の尖った先にアールをつけて安全部を形成しても良い。そして、この熱交換器Aは、特に店頭先,事務所等で設置され機器本体の下部が、どうしても床面の埃を吸い込み易い状態になる自動販売機,業務用冷蔵庫等の機器本体の下部である庫外に設置される冷凍装置のコンデンサとして使用される。
【0022】
図2は前記冷凍装置の冷凍サイクルの冷媒回路を示すもので、圧縮機18、本発明の熱交換器A、減圧器19、機器本体の庫内に設置される蒸発器20を順番に配管している。
【0023】
上記実施の形態1において、圧縮機18を運転すれば、冷媒は圧縮されて高圧となって熱交換器Aである凝縮器に流れ、ファン等の吸引作用、その他により空気流入側端面13より入り間隔11を流れる空気、この空気と熱交換したフィン10を介して管12が熱交換して凝縮される。更に冷媒は減圧器19で減圧されて蒸発器20にて蒸発し機器本体の庫内を冷却する。
【0024】
そして、熱交換器Aのフィン10間を空気が流れる毎に大気中の埃、特に綿状の埃がフィン10の空気流入側端面13に多く堆積し始める(引っかかる)と間隔11が目詰まりを起こすことになる。
【0025】
然るに本発明では複数の埃付着軽減部14が空気流入側端面13に埃の付着をし難くするのである。上向傾斜端面15、下向水平端面16は、実線矢印で示す流入空気に対する角度が小さくなり、埃が付き難いのである。すなわち、フィン10間に流入する空気中の埃で、上向傾斜端面15にあたった大半は上向傾斜端面15に沿って流れ、鋸歯状の谷間に集中して堆積するとともに、上向傾斜端面15が長いので全体に薄く堆積した状態になり、空気抵抗は上昇しづらい。また下向水平端面16は埃が堆積し難いが、堆積したとしても重力で落ちてしまう。
【0026】
そして、長い使用期間を経て一方の上向傾斜端面15に埃が徐々に堆積してフィン10間に目詰まりを生じ始めると他方の下向水平端面16では埃の堆積がそれほど進んでいないので、下向水平端面16におけるフィン10間である空気側路16aを点線矢印で示す空気が流れる。
【0027】
図7は埃付着経過時間を横軸に、埃が付着した熱交換器の空気抵抗を測定し、これと前面の任意面積を覆った場合の空気抵抗とを等価として表現した目詰まり率を縦軸に示して、フィンの空気流入側端面を直線にした従来品と本発明の実施の形態1,実施の形態2,参考例1の各品とを比較したグラフである。この図7から明らかなように実施の形態1の発明品は、従来品に比べ長期に亘り目詰まりを起こり難くできる。特に目詰まり率が高くなった際に、前述した空気側路16aの影響で、目詰まり率が上昇しづらい。
【0028】
このようにして、フィン10間を通る空気の流れを長期に亘って阻害しないので、コンデンサとしての効率は低下するまでの長期間に亘り安定した熱交換能力を発揮し、それに伴い蒸発器による冷却で食品を安全に護るとともに、食品を販売する自動販売機として、この効果は極めて大きな意味をもつものである。また、フィン間の目詰まりを除去するメンテナンスも従来より少なくできて、その管理コストを大幅に削減できるものである。
【0029】
更に、埃付着軽減部14は複数設け、鋸歯状にしているので、空気流入側端面13の上から下までの距離が一段と長くなるので、境界層前縁効果が増して能力を向上できる。また、埃付着軽減部14は直線端面の角度を変えて形成するので、フィン10の加工を容易にできる。
【0030】
なお、実施の形態1ではフィン10の空気流入側端面13と反対側の端面(空気出口側端面)を上から下まで直線に加工して埃付着能力に影響なくコンパクト化と生産工程でのフィンの前後関係を明確にできる利点を図っているが、空気流入側端面13と同じ鋸歯状に加工してもよいものである。
【0031】
また、実施の形態1では埃付着軽減部14を構成する下向水平端面16は水平にしているが、これを先端より奥の方へ行くに従い上方へ傾斜させた端面にしても、効果上では何ら変わらないものである。
【0032】
(実施の形態2)
図3は本発明熱交換器の実施の形態2の発明におけるフィンの要部側面図を示すものである。この発明は、複数の埃付着軽減部を、下向傾斜端面とこれの真上に位置する上向水平端面とで三角形状に構成し、これを連続させて空気流入側端面の全体を鋸歯状に形成した点で実施の形態1の発明と異なるだけで、それ以外の同一構造,作用効果を奏する部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0033】
14aは、フィン10の空気流入側端面13に設けた複数の埃付着軽減部で、角度の異なる複数の直線端面としての下向傾斜端面21とこれより短くして真上に位置する上向水平端面22とで埃の付き難い形状の三角形状に構成し、これを連続させて空気流入側端面13の全体を鋸歯状に形成している。また、複数の埃付着軽減部14aは空気側路21aの作用を有しており、一方の上向水平端面22におけるフィン10間の目詰まりが先に起こり易いので、それ以降は目詰まりのなかなか起こり難い他方の下向傾斜端面21におけるフィン10間が空気側路21aとして点線矢印で示す空気流がバイパスする構成にしてある。
【0034】
上記実施の形態2において、複数の埃付着軽減部14が空気流入側端面13に埃の付着をし難くする作用を説明する。下向傾斜端面21、上向水平端面22は、実線矢印で示す流入空気に対する角度が小さくなり、埃が付き難いのである。すなわち、フィン10の間に流入する空気中の埃で、下向傾斜端面21にあたった大半はその傾斜端面に沿って流れるうちにフィン10間に入って通過し、また上向水平端面22は埃が堆積し難いが、下向傾斜端面21に沿って流れ落ちるうちにフィン10間に入らず残った一部の埃が徐々に堆積してしまう。そして、長い使用期間を経て一方の上向水平端面22に埃が先に堆積してフィン10間に目詰まりを生じ始める。しかし、他方の下向傾斜端面21では埃の堆積がそれほど進んでいないので、下向傾斜端面21におけるフィン10間である空気側路21aを点線矢印で示す空気が流れる。そして、実施の形態1で示した埃付着経過時間と目詰まり率との関係を示す図7から明らかなように実施の形態2の発明品も、従来品に比べ長期に亘り目詰まりを起こり難くできる。
【0035】
このようにして、フィン10間を通る空気の流れを長期に亘って阻害しないので、上記した実施の形態1と同じ作用効果を得ることができる。特に実施の形態1と比較した場合は全体的に埃が薄く堆積するために目詰まり初期での目詰まり率の上昇が抑えられる。
【0036】
(参考例1)
図4は本発明熱交換器の参考例1の発明におけるフィンの側面図を示すものである。この発明は、複数の埃付着軽減部を、下向傾斜端面と上向傾斜端面とで三角形状に構成し、これを連続させて空気流入側端面の全体を鋸歯状に形成した点で実施の形態1および実施の形態2の発明と異なるだけで、それ以外の同一構造,作用効果を奏する部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0037】
14bは、フィン10の空気流入側端面13に設けた複数の埃付着軽減部で、角度の異なる複数の直線端面としての下向傾斜端面21と上向傾斜端面15とで埃の付き難い形状の三角形状に構成し、これを連続させて空気流入側端面13の全体を鋸歯状に形成している。そして、下向傾斜端面21と上向傾斜端面15は上下対称形状にしてあり、水平面に対する角度θ1は約30°にしてあり、また鋸歯状の谷間は最風上に位置する管12の中心まで切れ込んである。また、複数の埃付着軽減部14bは空気側路21aの作用を有しており、一方の上向傾斜端面15におけるフィン10間の目詰まりが先に起こり易いので、それ以降は目詰まりのなかなか起こり難い他方の下向傾斜端面21におけるフィン10間が空気側路21aとして点線矢印で示す空気流をバイパスする構成にしてある。
【0038】
上記参考例1において、複数の埃付着軽減部14bが空気流入側端面13に埃の付着をし難くする作用を説明する。上向傾斜端面15、下向傾斜端面21は、実線矢印で示す流入空気に対する角度が小さくなり、埃が付き難いのである。すなわち、フィン10の間に流入する空気中の埃で、下向傾斜端面21にあたった大半はその傾斜端面に沿って流れるうちにフィン10間に入って通過し、また上向傾斜端面15にあたった大半も、その傾斜端面に沿って流れるうちにフィン10間に入って通過し、それぞれに埃の堆積がし難い。そして、上向傾斜端面15には、下向傾斜端面21に沿って流れ落ちてきてフィン10間に入らず残った一部の埃が徐々に堆積してしまう。そして、長い使用期間を経て一方の上向傾斜端面15に埃が先に堆積してフィン10間に目詰まりを生じ始める。しかし、他方の下向傾斜端面21には埃の堆積がそれほど進んでいないので、下向傾斜端面21におけるフィン10間である空気側路21aを点線矢印で示す空気が流れる。
【0039】
そして、実施の形態1で示した埃付着経過時間と目詰まり率との関係を示す図7から明らかなように参考例1の発明品も、従来品に比べ長期に亘り目詰まりを起こり難くできる。特に実施の形態1と実施の形態2の中間的な特性を示すのである。
【0040】
このようにして、フィン10間を通る空気の流れを長期に亘って阻害しないので、上記実施の形態1および2と同じ作用効果を得ることができる。
【0041】
なお、参考例1でフィン10の安全部17が略垂直端面としているものの、図4では若干、窪んでいるのは、フィンの成形方法にある。すなわち、フィン材料に、鋸歯状の先端になる位置に縦方向に長孔を明けておき、それから長孔に合わせて上下の傾斜端面となる線上をプレス成形して全体を鋸歯状に形成するからである。
【0042】
(参考例2)
図5は本発明熱交換器の参考例2の発明におけるフィンの側面図を示すものである。この発明は、実質的に上記参考例1の発明と同じで、フィン10の空気流入側端面13に設けた複数の埃付着軽減部14cを三角形状に構成する水平面に対しての角度θ2を約45゜にした上向傾斜端面15とこれに対し上下対称形状の下向傾斜端面21との長さを短くして滑らかな鋸歯状にしただけで、それ以外の構成は実質的に同じであり、当然作用効果も同じで、詳細な説明を省略する。
【0043】
ただ、この参考例2は、参考例1の発明と比べ埃付着の軽減効果は若干劣るものの、熱交換器をコンパクトにできる利点を備えている。
【0044】
(参考例3)
図6は本発明熱交換器の参考例3の発明におけるフィンの側面図を示すものである。この発明は、複数の埃付着軽減部を、垂直端面とこれを間にして上下に位置する上向水平端面および下向水平端面とで矩形形状の凹凸に構成し、これを連続させて空気流入側端面の全体を凹凸状に形成した点で実施の形態1の発明と異なるだけで、それ以外の同一構造、作用効果を奏する部分には同じ符号を付して詳細な説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
【0045】
14dは、フィン10の空気流入側端面13に設けた複数の埃付着軽減部で、角度の異なる複数の直線端面としての垂直端面23とこれを間にして上下に位置する上向水平端面22および下向水平端面16とで埃の付き難い形状としての矩形形状の凹凸に構成し、これを連続させて空気流入側端面13の全体を凹凸状に形成している。また、複数の埃付着軽減部14dは空気側路16aの作用を有しており、一方の垂直端面23,上向水平端面22におけるフィン10間の目詰まりが先に起こり易いので、それ以降は目詰まりのなかなか起こり難い他方の下向水平端面16におけるフィン10間が空気側路16aとして点線矢印で示す空気流をバイパスする構成にしてある。
【0046】
上記参考例3において、複数の埃付着軽減部14dが空気流入側端面13に埃の付着をし難くする作用を説明する。上向水平端面22,下向水平端面16は、実線矢印で示す流入空気に対する角度が小さくなり、埃が付き難いのである。すなわち、フィン10の間に流入する空気中の埃で、下向水平端面16に沿って流れる大半は、下向水平端面16に沿って流れるうちにフィン10間に入って通過し、また同じように上向水平端面22に沿って流れる大半の埃も、上向水平端面22に沿って流れるうちにフィン10間に入って通過し、それぞれに埃の堆積がし難い。そして、内側と外側の垂直端面23には埃があたって徐々に堆積し、更に内側に位置する垂直端面23に沿って落ちてきてフィン10間に入らず残った一部の埃も徐々に上向水平端面22に堆積してしまう。そして、長い使用期間を経て一方の上向水平端面22および内側と外側の垂直端面23に埃が堆積して、その部分のフィン10間に目詰まりを生じ始める。しかし、他方の下向水平端面16には埃の堆積がそれほど進んでいないので、下向水平端面16におけるフィン10間である空気側路16aを点線矢印で示す空気が流れる。
【0047】
このようにして、フィン10間を通る空気の流れを長期に亘って阻害しないので、上記実施の形態1と同じ作用効果を得ることができる。
【0048】
以上のように実施の形態1〜実施の形態2、参考例1〜参考例3の形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、同じように実施形態ではコンデンサに適用する熱交換器で説明したが、これに限定されるものでなく、蒸発器にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の熱交換器の実施の形態1におけるフィンの要部側面図
【図2】同熱交換器を使用した冷凍サイクルの冷媒回路図
【図3】同熱交換器の実施の形態2におけるフィンの要部側面図
【図4】同熱交換器の参考例1におけるフィンの側面図
【図5】同熱交換器の参考例2におけるフィンの側面図
【図6】同熱交換器の参考例3におけるフィンの側面図
【図7】同熱交換器の実施の形態1、実施の形態2、参考例1と従来の熱交換器のフィンの目詰まり率を比較したグラフ
【図8】従来技術の熱交換器におけるフィンの側面図
【図9】他の従来技術の熱交換器におけるフィンの側面図
【図10】他の従来技術の熱交換器におけるフィンの側面図
【符号の説明】
【0050】
10 フィン
11 間隔
12 管
13 空気流入側端面
14,14a 埃付着軽減部
15 上向傾斜端面(上向端面)
16 下向水平端面(下向端面)
16a,21a 空気側路
21 下向傾斜端面(下向端面)
22 上向水平端面(上向端面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が流動する間隔を有して多数枚を並設した板状のフィンと、このフィンを貫通し、かつ内部を冷媒が流動する複数の管とを備え、前記フィンは空気流入側端面に複数の埃付着軽減部を形成し、
前記埃付着軽減部は、形状的に流入空気に対する角度の異なる上向端面と下向端面とし、
前記上向端面と下向端面とを交互に組合わせてなり、全体を鋸歯状に形成してなる熱交換器。
【請求項2】
前記下向端面の流入空気に対する角度を前記上向端面の流入空気に対する角度より小さくした請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記フィンの鋸歯状の先端にアールを設けた請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器を有する冷凍装置を備えた機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−349340(P2006−349340A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216896(P2006−216896)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【分割の表示】特願2005−263411(P2005−263411)の分割
【原出願日】平成11年7月21日(1999.7.21)
【出願人】(000004488)松下冷機株式会社 (25)