説明

熱交換器の冷却装置

【課題】電力消費を低減させ、かつ熱交換器へのスケール付着を防止できる熱交換器の冷却装置を提供する。
【解決手段】室内機と室外機を組み合わせた冷房装置の運転時において、前記室外機が有する熱交換器15a〜15eを冷却するための冷却装置10であって、逆浸透膜処理装置12と、前記逆浸透膜処理装置により処理した電気伝導度が4〜10μS/cmの処理水を前記熱交換器に対して散水する散水手段を備えている、熱交換器の冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷房効率を上げて消費電力を著しく減少させることができる熱交換器の冷却方法と、その実施に適した装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷房装置は、室内機と、室内の熱を外に放熱するための室外機の組み合わせからなっており、室外機には、放熱のための熱交換器が備えられている。
【0003】
通常、都会のオフィスビルでは、屋上に室外機が設置されていることが多く、大型のビルでは、屋上の限られたスペース内に多数の室外機(熱交換器)が集中した状態で配置されていることが多い。屋上は、夏季には強い日差しに曝されることから、室外機(熱交換器)自体の温度が上昇して、放熱特性が低下する。特に多数の室外機(熱交換器)が狭いスペースに集中配置されているような場合には、各室外機から発せられる熱が狭い空間にこもり室外機設置場所雰囲気の更なる温度上昇を招くため、放熱特性が大きく低下する。また、他の設置物等が近接配置されており、空気の流通が悪くなっているような場合には、室外機全体から発せられる熱により、設置雰囲気の温度がより上昇して、放熱特性が大きく低下するという問題もある。このようにして放熱特性が低下すると、室内での冷房が不十分となり、更に冷房能力を上げて消費電力を増加させるという悪循環を招く。
【0004】
また大規模工場では、建物の北側に室外機を設置していたとしても、冷房空間が余りに大きいため、やはり夏季には冷房効率が落ちてしまうことがあり、食品加工や食品材料加工の工場のように、一定温度に維持する必要がある場合には、冷房設定温度を低くして冷房運転しなければならないこともある。
【0005】
特許文献1の発明には、室外機(熱交換器)に水を噴霧することで、冷房効率を高めるための制御装置が開示されており、特許文献2の発明には、同様に室外機(熱交換器)への水の噴霧を制御できる冷房装置が開示され、特許文献3の発明には、同様に室外機(熱交換器)に軟水を噴霧する冷房システムが開示されている。その他、特許文献4〜7の発明においても、水を噴霧することによる熱交換器を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−65409号公報
【特許文献2】特開2001−317821号公報
【特許文献3】特開2004−317064号公報
【特許文献4】特開平5−223364号公報
【特許文献5】特開平10−213361号公報
【特許文献6】特開平11−142022号公報
【特許文献7】特許第3739530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明では、使用する水源についての記載は全くないが、常識的には水道水であると考えられる。例えば、夏季中、水道水を熱交換器に噴霧し続ければ、熱交換器の表面には、水道水に含まれるCaイオンやMgイオン、シリカ成分等に由来する多量のスケールが付着してしまう。そうすると、熱交換器の放熱特性が低下し正常に機能しなくなることから、それを防止するために、引用文献1の発明では、水の噴霧に際して厳密な制御が必要となっているのであり、そのための装置も複雑なものとなっている。このため、装置自体の価格も高くなるほか、装置を運転するための消費電力も大きくなってしまう。また、熱交換器にスケールが付着したり、水道水中の塩素イオンにより熱交換器が腐食されたりするという問題も残っている。
【0008】
特許文献2の発明では、段落〔0027〕、〔0039〕に水道代についての記載があることから考えて、熱交換器に水道水を噴霧することは明らかである。そうすると、既に述べたとおり、スケールが付着する問題のほか、水道水中の塩素イオンにより熱交換器が腐食するという問題もある。
【0009】
特許文献3の発明では、熱交換器に対して、軟水生成器により得られた軟水を噴霧することが記載されているから、CaイオンやMgイオンに由来するスケールの問題はある程度解決できるがシリカ成分によるスケール付着問題は解消されず、更に、前記軟水生成器はイオン交換樹脂を用いたものであるため、生成した軟水中のCaイオンやMgイオン量は減少されるものの、イオン交換により生じたCaイオンとMgイオンの合計モル等量のNaイオンが混入し、塩素イオンと結合して生成した塩(NaCl)の作用により、より高い腐食が進行するおそれがある。
【0010】
以上のとおり、特許文献1〜3の発明では、熱交換器に対するスケールの付着や熱交換器の腐食の問題が解決できておらず、消費電力の削減効果にも悪影響を及ぼす。また、スケールの除去や錆落としの維持管理も煩雑となり、熱交換器の寿命を短くすることから、全体のコスト削減にも十分な寄与ができていない。
【0011】
上記の特許文献1〜7の発明は、いずれも温度や電力等の各種センサーにより所定要素を検出し、間歇的に水(水道水)を噴霧し、熱交換器を個別に冷却するものである。しかしながら、このような冷却方法では、特許文献2の段落番号38に記載され、図5に示されているとおり、水量を増加して行った場合、ある特定量に到達すると、そこで冷却効果がそれ以上向上されず、横這い状態になることが知られている。
【0012】
本願発明は、消費電力を著しく抑制することができ、熱交換器の寿命も散水しない場合と同等にすることができる、熱交換器の冷却方法と、前記方法を実施するために適した装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、課題の解決手段として、室内機と室外機を組み合わせた冷房装置の運転時において、前記室外機が有する熱交換器を冷却する方法であって、少なくとも前記熱交換器に対して、逆浸透膜処理装置による処理水を散水する熱交換器の冷却方法を提供する。
【0014】
本願発明は、他の課題の解決手段として、室内機と室外機を組み合わせた冷房装置の運転時において、前記室外機が有する熱交換器を冷却するための冷却装置であって、
逆浸透膜処理装置と、前記逆浸透膜処理装置による処理水を前記熱交換器に対して散水する散水手段と、必要に応じて前記室外機を配置するための水回収トレイを備えている、熱交換器の冷却装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱交換器の冷却方法を適用することにより、
(I)従来、冷房に要していた消費電力を著しく減少させることができるため、電力料
金を大きく減少させることができるほか、二酸化炭素の発生量も大幅に削減できること、
(II)熱交換機にスケールが付着することがなく、熱交換機を腐食させることもないため、散水しない場合と同程度の装置寿命が得られること、
(III)スケール付着の問題のない散水が可能となり熱交換機の冷却と同時に、熱交換
機を備えた室外機の周辺も散水による冷却で、室外機設置場所全体の温度を低下させることができる。ビル屋上等に多数台の室外機が集中配置されている場合は、設置場所雰囲気の温度低下効果も大きく、都会におけるヒートアイランド現象の緩和にも有効であること、の各効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】冷房装置の運転方法の実施に適している、室外機(熱交換器)の冷却装置の概念図である。
【図2】冷房装置の運転方法の他実施形態の実施に適している、室外機(熱交換器)の冷却装置の概念図である。
【図3】試験例1において、RO処理水を14日間散水した後の熱交換器の状態を示す写真。
【図4】試験例1において、水道水を14日間散水した後の熱交換器の状態を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<図1に示す室外機(熱交換器)の冷却装置による冷却方法>
図1は、本発明の熱交換器の冷却方法の実施に適している、室外機(熱交換器)の冷却装置10の概念図である。
【0018】
水源11は、水道の取水口がある場合は、それを利用してもよいし、ビル等であれば、屋上に設置されている貯水タンクを利用してもよい。水源11自体は、室外機(熱交換器)の冷却装置10には含まれない。
【0019】
水源(上水道水、工業用水又は井水)11からライン21を経て、ポンプを備えた逆浸透膜処理装置(RO処理装置)12に水道水を送って処理し、処理水(RO処理水)を得る。このときの処理水は、電気伝導度が20μS/cm未満であることが好ましく、より好ましくは4〜10μS/cmであり、Caイオン、Mgイオン、Naイオン、Clイオン、イオン状シリカ等が実質的に除かれたものである。
【0020】
RO処理装置12は、公知のものを用いることができ、例えば、ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社より販売されている、装置型式VCR40シリーズ、VCR80シリーズ、NER40シリーズ、NER80シリーズ、SHRシリーズ等を用いることができる。
【0021】
次に、RO処理装置12から送水ライン22を経て、循環ライン23にRO処理水を送る。このとき、必要に応じて設置した制御バルブ13により、送水の停止と開始、送水量の制御等をすることができる。
【0022】
図示していないラインで室内機と連結された複数の室外機(熱交換器)15a〜15e(まとめて「熱交換器15」と称することもある)は、適当な台座上に置かれ、図示するように水回収トレイ20を設けて散水された水を回収する。
【0023】
循環ライン23には、多数の散水ノズル14が設けられており、散水ノズル14は、熱交換器15の冷却フィンがある側面側の上部に正対できるように配置されている。循環ライン23は、図示していない支持材で支持するようにしてもよいし、室外機(熱交換器)15a〜15eに直接固定してもよいし、単に室外機(熱交換器)15a〜15e上に置いた状態でもよい。
【0024】
図1の装置10では、制御バルブ13、散水ノズル14、送水ライン22、循環ライン23、回収ライン24、ポンプが散水手段となる。
【0025】
図1では、循環ライン23は、熱交換器15の側面側に配置されているが、熱交換器15の天井面を通るように(熱交換器15の真上を通るように)して配置してもよく、その場合には、散水ノズル14も熱交換器15の真上に位置することになる。その他、このような熱交換器15の真上を通る循環ラインと、図1に示すような熱交換器15の側面側を通る循環ライン23を組み合わせて設けてもよい。
【0026】
冷房運転中、循環ライン23を流れるRO処理水を放熱により温度が上昇している熱交換器15に散水する。本発明でいう散水は、特許文献1〜3の発明の噴霧も含むが、噴霧よりも放水量の多いシャワー状の散水までも含む概念である。
【0027】
散水量は、気温や日光の強度等に応じて適宜増減することができる。また、散水は、冷房運転中は継続して散水することが望ましいが、時間帯や気象条件等に応じて一時的に停止してもよい。熱交換器15に対する冷却効果は、主として水が蒸発して気化熱を奪うことによるものであるが、冷房運転中に継続して散水した場合には、熱交換器15の熱が水に移行することによっても冷却されることになるため、より冷却効果が高められる。
【0028】
散水されたRO処理水は、水回収トレイ20内に溜まるため、これを回収ライン24により回収して、再度、RO処理装置12に送って再処理する。再処理して得られたRO処理水は、再度送水ライン22を経て、循環ライン23に供給する。回収ライン24の途中には、砂や埃等を取り除くためのフィルタを設置することもできる。
【0029】
水回収トレイ20は、底面部20aと底面部の周囲に形成された側壁部20bからなるものであり、熱交換器15aから熱交換器15e側に向かって緩やかな傾斜を付けておくことで、溜まった水の回収が容易になるようにしてもよい。水回収トレイ20の深さは10cm以下が好ましく、水回収トレイ20内の水深で1〜5cm程度が好ましい。水回収トレイ20の底面部の長さ及び幅は室外機の設置状況に合わせて適宜設定してよい。例えば、図1に示すように、室外機(熱交換器)15a〜15eの長さ方向の全体長さの1.2〜1.5倍程度の長さ、幅方の長さの1.5〜2倍程度の幅にすることができる。
【0030】
水回収トレイ20を使用した場合には、溜まった水を回収して再利用できることから、水資源の有効利用の観点から好ましく、水源を水道水とした場合には水道料金の節約ができる観点からも好ましい。
【0031】
水回収トレイ20を使用した場合には、水回収トレイ20に溜まった水が蒸発することでも気化熱が奪われるため、熱交換器15全体が設置されている空間全体の温度も低下させることができ、個々の熱交換器に対する冷却効果も高められる。
【0032】
また、このような水回収トレイ20に溜まった水の気化熱を利用することで、散水量を減少させても必要な冷却効果を維持できるようになる。このため、例えば30秒間散水し、30秒間散水を停止するサイクルを繰り返す間歇散水を実施した場合であっても、散水停止の間も水回収トレイ20に溜まった水の蒸発により気化熱が奪われるため、冷却効果が維持できると共に、節水もできるようになる。
【0033】
運転開始初期に水回収トレイ20内に水が溜まっていないか、水量が少ない場合には、運転開始から水が溜まるまでは連続的に散水し、水が溜まってから、環境温度等の要因を考慮して、適宜、連続散水と間歇散水を組み合わせて実施するようにしてもよい。
【0034】
水回収トレイ20は、側壁部20bの一部に孔を形成したり、窪んだ箇所を形成したりしておき、意図的に散水後の水を溢れさせることで、熱交換器15だけでなく、その周辺(水回収トレイ20の外側)にも散水されるようにしてもよい。また、循環ライン23の複数箇所に外側に向けた散水ノズルを設けておき、水回収トレイ20の外側にも散水できるようにしてもよい。
【0035】
図1に示す冷却装置10は水回収トレイ20を備えているが、水回収トレイ20を使用せずに、熱交換器15a〜15eが置かれた床面に対して、散水ノズル14から直接散水して冷却する方法も適用できる。このような床面に対して直接散水する方法の場合には、水回収トレイ20を使用しないので装置の設置が容易であり、水回収トレイ20を使用した場合と同等の高い冷却効果を発揮できる。
【0036】
<図2に示す室外機(熱交換器)の冷却装置による冷却方法>
図2は、本発明の他実施形態である熱交換器の冷却方法の実施に適している、室外機(熱交換器)の冷却装置100の概念図である。図1と同じ番号で示すものは、図1と同じものであることを意味する。なお、図2の装置では、図1に示す水回収トレイ20は備えていない。
【0037】
冷却装置100では、熱交換器15a〜15eと熱交換器16a〜16eが、床面30上に置かれた台座上に2列に配置されている。
【0038】
冷却装置100では、送水ライン22と循環ライン23の接続部分に開閉バルブ(電磁弁等)等を設けて、RO処理装置12から送水ライン22を経て、循環ライン23にRO処理水を送るとき、いずれか一方向(図2中、左回りか、右回り)に送水したり、両方向に交互に送水したりするようにしてもよい。
【0039】
冷却装置100では、熱交換器の数が10台と多くなり、それぞれの熱交換器から発せられる熱量で、図1に示す装置の場合と比べると、設置場所全体の温度(気温)上昇の程度が大きくなる。その気温上昇が、それぞれの熱交換器の熱交換効率を低下させる。また、設置状況によっては、熱交換器15a〜15eや熱交換器16a〜16eの正面に壁や他の設置物があることも考えられ、その場合には、反射した熱気による温度上昇分も考慮しなければならない。このため、従来技術(特許文献1〜7)のように個々の熱交換器ごとに水を間歇噴霧して冷却する方法であると、十分な冷却が困難である。
【0040】
しかし、図2に示す冷却装置100では、複数の散水ノズル14から熱交換器15a〜15eや熱交換器16a〜16eに対して散水するので、流れ落ちた水は、熱交換器が設置された床面30(循環ライン23で囲まれた床面)も濡らすことになる。このため、床面30と床面30上の空間を同時に冷却できることになり、室外機設置場所周辺の雰囲気温度を低下させることができるので、熱交換器自体の冷却効果も高めることができる。
【0041】
さらに図2に示す冷却装置100では、複数の散水ノズル14の一部又は全部から循環ライン23の内側と外側の両方に散水できるようにして、循環ライン23の内外に対して同時又は交互に散水することで、水で濡れる床面積をより増加できるようにしてもよい。このようにすることにより、上記の冷却効果をより高めることができる。
【0042】
図2に示す冷却装置100では、図1に示す冷却装置10と同様に周りを囲むように1つの循環ライン23が配置されているが、熱交換器の台数の増加に応じて、2系統、3系統の循環ラインを配置することができ、循環ラインの増加に応じて、ポンプの台数も増加させることができる。
【0043】
本発明の熱交換器の冷却方法は、例えば、図1又は図2に示す冷却装置を用いてRO処理水を散水するため、従来技術のように熱交換器にスケールが付着したり、熱交換器を腐食させたりすることがない。このため、夏季の冷房運転期間中、スケール除去や錆落としのような維持管理が不要となるほか、熱交換器の寿命も散水しない場合と同程度にすることができる。
【0044】
また、本発明の熱交換器の冷却方法は、スケールの付着や熱交換器を腐食させることがなく、従来技術のような「噴霧」ではなくシャワー状に散水でき、冷房運転中は継続して散水できるため、熱交換器の冷却効果も大きく向上させることができる。
【0045】
本発明の熱交換器の冷却方法は、図1に示す冷却装置のように水回収トレイを組み合わせることにより、水回収トレイ内に溜まった水の蒸発で気化熱が奪われ、熱交換器が設置された場所全体を冷却することができるので、熱交換器自体の冷却効果も高めることができる。さらに水回収トレイを組み合わせることにより、前記気化熱の利用により、散水量も減少させることができる。
【0046】
また本発明の熱交換器の冷却方法は、図2に示す冷却装置のように、床面に直接散水することにより、熱交換器が設置された場所全体を冷却することができるので、熱交換器自体の冷却効果も高めることができる。
【0047】
更に、本発明の熱交換器の冷却方法は、RO処理装置の消費電力と、本発明を適用することで削減される冷房用の消費電力の差は非常に大きく、冷房規模が大きくなるほど、消費電力の削減効果が大きくなる。冬季の暖房には代替手段が多数あるが(灯油、ガス等)、夏季の冷房の代替手段としては最近普及しつつあるガスヒートポンプが知られている程度であり、本発明の熱交換器の冷却方法を適用することにより、夏季における消費電力のピーク値が大きく引き下げられることになるため、より少ない電力量にて電力会社と契約することができるようになり、基本料金の節約にもつながる。なお、ガスヒートポンプも熱交換器を備えていることから、本発明の冷却方法を適用することにより、エネルギー消費量を削減できることが期待できる。
【0048】
更に本発明の熱交換器の冷却方法を広い地域にて実施することにより、地域全体の二酸化炭素の削減効果や温度低下(例えば、ヒートアイランド現象の緩和)にも有効となる。
【0049】
本発明の熱交換器の冷却方法は、都会のビルのように、建物の屋上に集中設置された多数の室外機を冷却する場合(特に10台以上の室外機が2列又は3列以上で集中配置されている場合)、大規模工場等の大きな空間を冷房するような冷房装置の室外機を冷却する場合において特に適している。
【実施例】
【0050】
実施例1
下記の条件にて、本発明を適用しない場合の冷房用の消費電力と契約電気料金の基礎となる最大需要電力、本発明を適用した場合の冷房用の消費電力と最大需要電力を試算した。
【0051】
場所:長野県内の食品工場,室外機40台,総消費電力272kwh
期間:2008年5月15日から9月30日までの4.5ヶ月間
時間:午前7時から午後7時まで
散水設定温度:25℃
RO処理装置:ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製(処理量:3000L/hr,電気伝導度6〜8μS/cm)
本発明を適用しない場合の冷房に要する総使用電力量は約4,115,000KWであり、本発明を適用した場合の冷房に要する総使用電力量は約3,919,000KWである。その間のRO処理装置の消費電力は約9000KWである。また、本発明を適用しない場合の最大需要電力は、850KWであり、本発明を適用した場合の最大需要電力は、755KWである。
【0052】
実施例2
温度27.4℃(表1に示す外気温度)に調節した実験室内に、前記実験室外に設置した冷房装置(三菱電機株式会社社製のMBZ−J228)の室外機と水回収トレイを設置した。この状態で冷房運転を行いながら、下記条件にて室外機にRO処理水を散水した。結果を表1に示す。
【0053】
(散水条件)
水:水道水(水温約25℃)
散水量:400ml/min
室外機に散水するノズル数:2個
散水形式:常時散水
RO装置:NRX20−P(ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)
RO膜:SW02200−DRA982P
RO透過水電導度:5μS/cm
【表1】

なお、冷風温度は、生鮮食品を扱う加工工場にて実施することを想定した温度である。
【0054】
実施例3
2つの同じ製品の室外機(熱交換器)に対して、14日間(合計で約100時間)、同じ散水条件でRO処理水(実施例2と同じ装置で得られたもの。電気伝導度6〜8μS/cm)と水道水(東京都の水道水)を4個の散水ノズルを用いて散水(1ノズル当たり7.2L/hr×4個=28.8L/hr)したときのスケールの付着状態を試験した。RO処理水を散水したものは、図3に示すとおり、フィン表面にはスケールの付着は認められなかった。水道水を散水したものは、図4に示すとおり、フィン表面に白色のスケールが付着していることが確認された。水道水を散水した場合には、14日間の散水であってもスケールの付着が認められたため、夏季期間中散水を継続した場合には、適宜スケールを除去しないと、冷房効率が低下することが容易に推測される。
【0055】
実施例4
下記の試験方法及び条件にて、本発明の熱交換器の冷却方法を実施した。
【0056】
使用機器(ルームエアコン)
室内機:MSZ−J228−W(三菱電機(株)製)
室外機:MUZ−J228(三菱電機(株)製)
ルームエアコンの定格:単相100V,435W,50−60Hz,定格冷房能力2.2kW
冷媒配管長さ:5m(室内側2m,室外側3m)
冷媒種類:R410A(総冷媒量:0.75kg)
【0057】
運転モード:通常運転モード(50 Hz),設定温度16℃,風量 急,風向き 固定
【0058】
室内機は、乾球温度29±0.2℃(湿球温度19±0.2℃)雰囲気中に設置し、室外機は、乾球温度46±0.2℃(湿球温度24±0.2℃)雰囲気中に設置した状態で運転した。
室外機の熱交換器に対して、RO処理水(実施例2と同じ装置で得られた電気伝導度8μS/cmのもの)を20秒噴霧(噴霧量400ml/分)、30秒休止を1サイクルとして、これを1.5時間繰り返したものと、RO処理水を噴霧しなかったものについて、表2に示す項目の測定を行った。
【表2】

実施例5
実施例4と同じ方法及び条件にて実施した。但し、室外機の熱交換器に対して、RO処理水を20秒噴霧(噴霧量400ml/分)、60秒休止を1サイクルとして、これを1.5時間繰り返した。結果を表3に示す。
【表3】

【0059】
実施例6
静岡県の食品工場にて、2009年5月〜9月にかけての約5ヶ月の間、本発明の熱交換器の冷却方法を実施した。結果は、日照条件を同じにすることを考慮して、2009年と2008年の同じ日付で、気温条件が近似した3日について表4に示した。
【0060】
工場床面積:約9600m2
空調機:室外機80台(工場建物の南西側に設置)
RO処理装置及び処理水:ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製のEmizu−3000(処理量:3000L/hr,電気伝導度6〜8μS/cm)
散水条件:室外機80台を40台ずつの2系列に分け、最初の40台に対して20秒間散水後、次の40台に20秒間散水することを1サイクルとして、これを繰り返した。
散水時間:午前6時〜午後10時(16時間)
室外機1台当たりの散水量:0.8L/分(散水ノズル2個/台)
散水条件(外気温度により、次のように変動させた)
1)20℃〜25℃未満:20秒散水−60秒休止
2)25℃〜27℃未満:20秒散水−50秒休止
3)27℃〜29℃未満:20秒散水−40秒休止
4)29℃〜21℃未満:20秒散水−30秒休止
5)31℃以上 :30秒散水−30秒休止
【表4】

約5ヶ月間の実施後、80台の室外機の全ての熱交換器について、目視及び指触りの両方で観察したが、全ての室外機において、スケールの付着は全く認められなかった。この事実は、実施中のスケール除去処理が不要であることは勿論、本発明の実施終了後においても、熱交換器に対してスケール除去処理を全くする必要が無いこと、さらに来年(2010年)にはそのまま本発明を実施できることを示している。従来技術の水道水を散水する方法を実施した場合には、5ヶ月の間に必ず3、4度はスケール除去処理をするか、熱交換器の部品交換が必要であることと比べると、運転コストの低減効果は非常に大きくなる。
【符号の説明】
【0061】
10 室外機(熱交換器)の冷却装置
11 水源
12 RO処理装置
13 制御バルブ
14 散水ノズル
15a〜15d 室外機(熱交換器)
16a〜16d 室外機(熱交換器)
20 水回収トレイ
23 循環ライン
24 水回収ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内機と室外機を組み合わせた冷房装置の運転時において、前記室外機が有する熱交換器を冷却するための冷却装置であって、
逆浸透膜処理装置と、前記逆浸透膜処理装置により処理した電気伝導度が4〜10μS/cmの処理水を前記熱交換器に対して散水する散水手段を備えている、熱交換器の冷却装置。
【請求項2】
室内機と室外機を組み合わせた冷房装置の運転時において、前記室外機が複数であり、それらが有する熱交換器を冷却するための冷却装置であって、
逆浸透膜処理装置と、前記逆浸透膜処理装置により処理した電気伝導度が4〜10μS/cmの処理水を前記熱交換器に対して散水する散水手段を備えており、
前記散水手段が、散水ラインと、前記散水ラインと接続された、散水ノズルを有する循環ラインとを備えているものであり、
前記散水ラインが前記逆浸透膜処理装置に接続され、
前記循環ラインが、前記複数の室外機の側面側でかつ前記複数の室外機の周りを囲むように配置されているものである、熱交換器の冷却装置。
【請求項3】
前記散水ノズルが、循環ラインの内側の室外機と外側の床面の両方に散水できるようになっている、請求項2記載の熱交換器の冷却装置。
【請求項4】
さらに水回収トレイと、前記水回収トレイ内に溜まった水を回収して前記逆浸透膜処理装置に送るための回収ラインを備えており、
前記水回収トレイ内に前記室外機が配置されており、
前記室外機に散水した水を前記水回収トレイに溜め、その水を回収ラインで回収して再利用することができる、請求項1〜3のいずれか1項記載の熱交換器の冷却装置。
【請求項5】
さらに水回収トレイと、前記水回収トレイ内に溜まった水を回収して前記逆浸透膜処理装置に送るための回収ラインを備えており、
前記水回収トレイが、底面部と、底面部の周囲に形成された側壁部からなるもので、前記側壁部が、孔又は窪んだ箇所を有しているものであり、
前記水回収トレイ内に前記室外機が配置されており、
前記室外機に散水した水を前記水回収トレイに溜め、その水を回収ラインで回収して再利用することができ、前記水回収トレイ内に溜まった水が前記孔又は窪んだ箇所から溢れさせることができるようになっている、請求項1〜3のいずれか1項記載の熱交換器の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−177539(P2012−177539A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−96479(P2012−96479)
【出願日】平成24年4月20日(2012.4.20)
【分割の表示】特願2009−280391(P2009−280391)の分割
【原出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(508365768)株式会社ウオーターテクノカサイ (7)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【出願人】(508365883)株式会社M・Support (2)
【Fターム(参考)】